JP7064898B2 - 防液堤の構築方法 - Google Patents
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Description
内型枠(セグメント)の組み立ては、仮設の支持部材等によりセグメントを支持しながら仮設足場において作業員が組み立てている。ところが、仮設足場および仮設支持部材の設置には手間がかかる。また、仮設足場および仮設支持部材は、地上部から組み立てるため、壁体の周囲に十分なスペースを確保する必要がある。
そのため、本出願人は、特許文献1に示すように、壁体内に残存させる多目的ポストを用いた防液堤の構築方法を開発し、実用化に至っている。この防液堤の構築方法では、予め所定の位置に立設された多目的ポストによりセグメントおよび足場を支持することで、仮設足場や仮設支持部材等の設置、撤去に要する手間を省略している。また、この防液堤の構築方法では、壁体の周囲に仮設部材を設置するための用地を確保する必要がない。
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、経済性に優れた防液堤の構築方法を提案することを課題とする。
かかる防液堤の構築方法によれば、内型枠を形成する際に使用する仮設の鋼材(支持部材)を壁体の内部に残置させることがないため、鋼材量の低減化が可能となる。また、設置治具は、内型枠に取り付けられるため、壁体の周囲に仮設部材を設置するための用地を確保する必要がない。また、設置治具を利用することで、内型枠の組み立てを精度よく行うことができる。なお、設置治具を構成する材料としてアルミニウム合金等を使用すれば、設置治具の軽量化を図ることができる。設置治具が軽量であれば、足場上において人力により着脱することができる。
さらに、前記内型枠形成工程では、所定数以上の前記セグメントを連結した後、当該セグメントのうちの1つのセグメントから前記設置治具を撤去するとともに、当該設置治具を新設のセグメントを支持する際に使用するのが望ましい。かかる防液堤の構築方法は、複数のセグメントを連結することで形状を安定させた後、既設のセグメントを支持する際に利用した設置治具を他のセグメントの支持に使用するものである。こうすることで、設置治具の数量を減らすことが可能となり、材料費の低減化を図ることができる。
コンクリート壁部1の内部には、図1の(b)に示すように、壁筋11,11が埋設されている。壁筋11は、縦筋と横筋とを格子状に組み合わせたものである。また、コンクリート壁部1には、必要に応じて、周方向PC鋼材12や縦方向PC鋼材14などが埋設されている。
内型枠形成工程は、複数のセグメント3,3,…を周方向に連結して内型枠2を形成する工程である。内型枠2(残存型枠)は、図2(a)に示すように、平面視リング状を呈している。内型枠形成工程では、立設作業、支持作業および連結作業を繰り返すことにより内型枠2を形成する。
立設作業では、まず、地上部(作業ヤード)に平置きされたセグメント3の背面に設置治具4、4を取り付ける(図4参照)。
本実施形態の本体部41は、セグメント3の高さよりも大きな長さを有したH形鋼により形成されている。本体部41の断面寸法は、セグメント3を支持し得るような大きさとする。なお、本体部41を構成する部材はH形鋼に限定されるものではなく、例えば、溝形鋼やL形鋼であってもよい。また、本体部41を構成する材料は鋼材に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム合金等の比較的軽量な材料であってもよい。
本体部41の下部には、図5(b)に示すように、上下2段のボルト孔(図示せず)が形成されている。ボルト孔には、セグメント3が上載された既設内型枠2a(土台)に設置治具4を固定するための固定ボルト43を挿通する。なお、ボルト孔の数は限定されない。ボルト孔同士の間隔は、セグメント3の中央部に形成された設置治具用ナット31同士の上下方向の間隔と同一とする。
本体部41の上端部では、セグメント3側のフランジの一部(図5(b)において右側部分)が除去されている。
調整板45は、本体部41の上端部において、ウェブの一方の面(図5(b)において右側面)の中央部に接合されている。本実施形態では、本体部41の2つのフランジのうち、本体部41のセグメント3の反対側のフランジと調整板45との間に補強用の板材が横架されている。図6(a)に示すように、調整板45には、調整ボルト44を螺合するためのナット(固定ナット46)が固定されている。調整板45は、補強材を適宜配設することで、本体部41の上端部に強固に固定されている。調整ボルト44は、調整板45に対して進退可能に設けられている。
設置治具4は、セグメント3の外面の左右端上部に形成された設置治具用ナット31に調整ボルト44を螺着することで、セグメント3に取り付けられる。調整ボルト44には、ボルト先端側の固定用ナット47と、固定用ナット47と調整板45との間に配設された二つの調整ナット48,48とが間隔をあけて螺着されている。調整ボルト44をセグメント3に螺着したら、固定用ナット47をセグメント3の背面に密着させる。図4に示すように、設置治具4をセグメント3に取り付けると、本体部41の下部(ボルト孔が形成された部分)がセグメント3の下端から突出した状態となる。なお、調整部42の構成は限定されるものではない。例えば、ジャッキベースであってもよいし、チェーンブロックを取り付ける係止部であってもよい。
次に、揚重機を利用してセグメント3を所定の位置に移動させる。そして、このセグメント3を吊持した状態でコンクリート壁部1の既設部分の内側面に残置された既設内型枠2a(土台)の上にセグメント3を立設する。
なお、セグメント3は、設置治具4を取り付けることなく、揚重機を利用して既設内型枠2a上に立設させてもよい。この場合の吊金物6は、直接または治具を介してセグメント3に取り付ける。
本実施形態では、図7(a)~(c)に示すように、セグメント3を列状に配置(いわゆるいも継配置)する。
なお、セグメント3を既設内型枠2a上に配置してから設置治具4を取り付ける場合には、セグメント3と既設のセグメント3とに跨って設置治具4を配設した状態でボルト(固定ボルト43、調整ボルト44)を締着する。このとき、組立式足場または可搬式足場52上で作業を行う(図9参照)。
内型枠2を設置したら、必要な壁筋11の配筋および周方向PC鋼材12や縦方向PC鋼材14の設置を行う。壁筋11は、施工現場内の鉄筋加工場において組み立てておき、鉄筋網あるいは鉄筋籠の状態で建て込むとよい。壁筋11の下端部は、コンクリート壁部1の既設部分から突出する既設の壁筋11に適宜な鉄筋継手(重ね継手や機械式継手など)を介して連結する。周方向PC鋼材12は、壁筋11の配筋後、外側の壁筋11に沿って配設された横シース13に挿入する。周方向PC鋼材12の端部には、ピラスター(図示略)に定着される定着具を装着する。また、縦方向PC鋼材14の下端部は、コンクリート壁部1の既設部分から突出する既設の縦方向PC鋼材に適宜な機械式継手を介して連結する。縦方向PC鋼材14の設置位置は、内型枠2からのオフセット量を計測することによって確認する。
外型枠7は、セパレータ(図示せず)を介して内型枠2に連結する。本実施形態では、上下2段のセパレータを配設するが、セパレータの段数や配設ピッチ等は限定されない。なお、外型枠7は、コンクリートの側圧により変形することがない強度を有している。また、外型枠7は、既設の外型枠7の上面に固定する。外型枠7の設置は、外型枠7の外側に配設された足場51を利用して行う。
打設工程では、まず、内型枠2から設置治具4を撤去する。次に、タンク(内型枠2)の中心軸を挟んで対向する2カ所からコンクリートを打設する(図2の(a)参照)。コンクリートの打設は、コンクリート圧送管を利用して、外型枠7の天端よりも低い位置までコンクリートを打ち込むものとする。なお、コンクリートの打設方法は限定されるものではない。コンクリートの打設が終了したら、コンクリートを養生する。 全てのロットが終了したら、周方向PC鋼材12および縦方向PC鋼材14引張力を付与し、壁体Wにプレストレスを導入する。
仮設支持部材として利用した設置治具4を残置させないため、鋼材量の低減化が可能となる。また、設置治具4を順次転用することで、さらなる鋼材料の低減を可能としている。また、壁体W内に仮設支持部材を残存させないため、壁厚を最小限に抑えることが可能となり、ひいては、壁体Wおよび基礎部のコンクリート量の低減化を図ることができる。また、設置治具4は、内型枠2に取り付けられるため、壁体Wの周囲に仮設部材を設置するための用地を確保する必要がない。
内型枠2には、コンクリートの側圧がタンクの中心方向に均等に作用するため、内型枠2にはリングコンプレッションが働き、内型枠2の移動や変形が抑制される。そのため、壁体Wの施工を高品質に行うことができる。
前記実施形態では、立設作業において、セグメント3に設置治具4を取り付けてから所定の位置に移送させるものとしたが、設置治具4は、既設内型枠(土台)2aの上においてセグメント3に取り付けてもよい。設置治具4が、アルミニウム合金等、軽量な材料により形成されていれば、足場51上の作業員が人力により着脱することができる。
また、セグメント3の傾き調整は必要に応じて行えばよい。例えば、既設内型枠2a上に立設させた状態で、セグメント3が垂直である場合には、傾き調整は省略してもよい。
前記実施形態では、設置治具4(本体部41)の長さをセグメント3の高さ以上としたが、設置治具4の長さは限定されるものではない。すなわち、設置治具4(本体部41)の長さは、セグメント3の高さ以下であってもよい。
前記実施形態では、セグメント3をいも継配置としているが、セグメント3は、いわゆる千鳥配置としてもよい。
前記実施形態では、調整ボルトを利用して、セグメントの傾きを調整する場合について説明したが、セグメントの傾き調整方法は限定されるものではない。例えば、既設内型枠2aに固定された設置治具の調整部42に設けられたジャッキやチェーンブロックを利用して、傾きを調整してもよい。
2 内型枠
2a 既設内型枠
3 セグメント
31 設置治具用ナット
4 設置治具
41 本体部
42 調整部
43 固定ボルト
44 調整ボルト
45 調整板
5 ブラケット
51 足場
6 吊金物
7 外型枠
Claims (3)
- 複数のセグメントを連結して内型枠を形成する内型枠形成工程と、
前記内型枠から隙間をあけて、当該内型枠の外側に外型枠を設置する外型枠形成工程と、
前記内型枠と前記外型枠との間にコンクリートを打設してコンクリート壁部を形成する打設工程と、を備える防液堤の構築方法であって、
前記内型枠形成工程では、
コンクリート壁部の既設部分の内側面に残置された既設内型枠の上に前記セグメントを立設する立設作業と、
前記既設内型枠に固定された設置治具により前記セグメントを支持する支持作業と、
隣り合う前記セグメント同士を連結する連結作業と、
を繰り返すことにより前記内型枠を形成し、
前記打設工程では、前記内型枠から前記設置治具を撤去してからコンクリートを打設することを特徴とする、防液堤の構築方法。 - 前記支持作業では、前記既設内型枠に前記設置治具を固定した後、当該設置治具を利用して前記セグメントの傾きを調整することを特徴とする、請求項1に記載の防液堤の構築方法。
- 前記内型枠形成工程において、所定数以上の前記セグメントを連結した後、当該セグメントのうちの1つのセグメントから前記設置治具を撤去するとともに、当該設置治具を新設のセグメントを支持する際に使用することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の防液堤の構築方法。
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