JP7063511B1 - 半炭化装置、亜臨界水処理ユニットおよび半炭化物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】内包塩素が十分に低減された半炭化物が得られる半炭化装置、亜臨界水処理ユニットおよび半炭化物の製造方法を提供すること。【解決手段】本発明の一態様によれば、有機性廃棄物を低分子化して処理物を得る亜臨界水処理装置とともに使用される半炭化装置が提供される。この半炭化装置は、処理物を含む原料を、300℃以上の温度で熱処理することにより半炭化する。【選択図】図1

Description

本発明は、半炭化装置、亜臨界水処理ユニットおよび半炭化物の製造方法に関する。
有機性廃棄物を低分子化して処理物を得る亜臨界水処理装置と、この処理物を含むペレット原料を半炭化する半炭化装置とを有する廃棄物処理システムが知られている(特許文献1参照)。本発明者らの検討によれば、半炭化装置における処理温度が200℃程度の低温では、半炭化後のペレット原料(半炭化物)に内包される塩素を十分に低減し得ないことが判明した。
特許第6893673号
本発明では上記事情に鑑み、内包塩素が十分に低減された半炭化物が得られる半炭化装置、亜臨界水処理ユニットおよび半炭化物の製造方法を提供することとした。
本発明の一態様によれば、有機性廃棄物を低分子化して処理物を得る亜臨界水処理装置とともに使用される半炭化装置が提供される。この半炭化装置は、処理物を含む原料を、300℃以上の温度で熱処理することにより半炭化する。
本発明の一態様によれば、有機性廃棄物を低分子化した処理物を含む原料を、所定の温度での熱処理により半炭化するので、内包塩素が十分に低減された半炭化物を得ることができるという有利な効果を奏する。
亜臨界水処理装置の実施形態を部分的に断面で示す概念図である。 隔離板の構成を示す平面図である。 亜臨界水処理ユニットの実施形態を示す概念図である。 熱処理の温度の変化に伴う全塩素分の質量分率の変化を示すグラフである。
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組合せ可能である。
<亜臨界水処理装置>
まず、本発明の半炭化装置とともに使用される亜臨界水処理装置の実施形態について説明する。
図1は、亜臨界水処理装置の実施形態を部分的に断面で示す概念図である。図2は、隔離板の構成を示す平面図である。
本発明の亜臨界水処理装置は、有機性廃棄物を低分子化して処理物を得る装置である。
ここで、亜臨界水処理とは、水の臨界温度以下の高温であり、かつ、飽和水蒸気圧以上の高圧である高温かつ高圧下で、気体状の亜臨界水を有機性廃棄物に接触させて低分子化する方法である。この低分子化により、有機性廃棄物が分解されて処理物が得られる。
有機性廃棄物としては、例えば、紙類、布類、衣類、プラスチック類、皮革類、木竹類、ワラ類、厨芥類、医療廃棄物類、パッケージされたままの廃棄食品類等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を含んでいてよい。
図1に示す亜臨界水処理装置1は、圧力容器2と、圧力容器2に収容された有機性廃棄物を撹拌する撹拌機構3と、有機性廃棄物を加熱する加熱機構4とを有する。なお、以下の説明において、周方向とは、中心線回りの方向を、径方向とは、中心線を中心とした半径の方向を意味する。
圧力容器2は、容器本体21と、有機性廃棄物を容器本体21内に投入する投入口22と、処理物を容器本体21内から排出する排出口23と、有機性廃棄物の亜臨界水処理に使用する液体Lを収容する液体収容部24とを備える。
本実施形態の圧力容器2は、容器本体21の中心線O21が鉛直方向に沿うように、架台(不図示)によって支持された縦置き型の圧力容器である。この容器本体21は、半球状(ドーム状)の上部鏡板2111を有する上側容器本体211と、半球状(ドーム状)の下部鏡板2121を有する下側容器本体212とを有する。
上側容器本体211の下端部には、径方向外側に向かって突出するフランジ部2112が設けられ、下側容器本体212の上端部には、径方向外側に向かって突出するフランジ部2122が設けられている。
下側容器本体212に上側容器本体211を重ね合わせ、フランジ部2112とフランジ部2122とを、例えば、ボルト等で締め付けることにより、これらの間を気密的に封止して固定することができる。
なお、上側容器本体211は、下側容器本体212に対して開閉可能なクラッチドアとして構成することもできる。
投入口22は、筒状の胴部221を有し、上部鏡板2111に形成された上部貫通孔2113に連通するように、上側容器本体211に接続されている。したがって、投入口22(胴部221)の中心線O22は、容器本体21の中心線O21に対して傾斜し、上部鏡板2111と反対側の開口222は、鉛直方向斜め上側を向いている。また、投入口22は、胴部221の開口222を気密的に封止する蓋部(クラッチドア)223を有する。
排出口23は、筒状の胴部231を有し、下部鏡板2121に形成された下部貫通孔2123に連通するように、下側容器本体212に接続されている。したがって、排出口23(胴部231)の中心線O23は、容器本体21の中心線O21に対して、投入口22と反対側に向かって傾斜し、下部鏡板2121と反対側の開口232は、鉛直方向斜め下側を向いている。また、排出口23は、胴部231の開口232を気密的に封止する蓋部(クラッチドア)233を有する。
かかる圧力容器2では、蓋部233を閉塞した状態で蓋部223を開放することにより、投入口22の胴部221を介して有機性廃棄物を容器本体21内に投入することができる。その後、蓋部223を閉塞した状態とし、容器本体21内で有機性廃棄物に対して亜臨界水処理を行う。この有機性廃棄物の亜臨界水処理により生成した処理物は、蓋部233を開放することにより、排出口23の胴部231を介して容器本体21から取り出すことができる。
特に、投入口22の中心線O22および排出口23の中心線O23のそれぞれが、容器本体21の中心線O21に対して傾斜しているので、有機性廃棄物の容器本体21内への投入作業および処理物の容器本体21内からの排出(取出)作業を行い易い。
本実施形態の亜臨界水処理装置1は、さらに、有機性廃棄物を加熱する加熱機構4と、有機性廃棄物の亜臨界水処理に使用する液体Lを収容する液体収容部24とを有する。
圧力容器2の内側の液体収容部24に、上記液体Lを収容した状態で、圧力容器2を密閉し、加熱機構4により有機性廃棄物の加熱を開始する。これにより、液体収容部24に収容された液体Lから、気体状の亜臨界水が生成され、この亜臨界水を容器本体21の内側に供給し、有機性廃棄物に接触させることで、有機性廃棄物の低分子化が進行する。
ここで、上記液体Lは、水を主成分とすればよく、その他の成分を含んでいてもより。その他の成分としては、例えば、過酸化水素、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
かかる亜臨界水処理装置1によれば、高圧ボイラーを付帯しないので、亜臨界水処理装置1の小型化を図ることができる。したがって、亜臨界水処理装置1を比較的狭いスペースに設置することができる。このため、後述するように亜臨界水処理装置1を移動可能に構成し、市街地のコンビニエンスストアに隣接して配置すれば、廃棄される賞味期限切れの日配品(主に、弁当類)を簡便に亜臨界水処理することができる。
また、高圧ボイラーを付帯しないので、亜臨界水処理装置1の運転および操作は、ボイラー技士の有資格者によらず、コンビニエンスストアのレジ担当でも行うことができる。したがって、亜臨界水処理装置1の操作性および利便性が極めて高い。
本実施形態では、排出口23の内側空間の一部が、液体収容部24として機能するように構成されている。かかる構成によれば、圧力容器2の部品点数の増大や、圧力容器2の構成の複雑化を防止することができる。したがって、亜臨界水処理装置1の更なる小型化に寄与する。
なお、排出口23の設置位置の変更、排出口23の中心線O23の容器本体21の中心線O21に対する角度の調整等により、排出口23の内部空間の全体を、液体収容部24として機能させることもできる。
また、液体収容部24は、排出口23から独立して構成されてもよい。かかる構成としては、例えば、下部鏡板2121の内面に凹没形成した凹部、上部鏡板2111の内面に固定または内面から吊下された容器等が挙げられる。
さらに、本実施形態では、加熱機構4は、容器本体21の鉛直方向下側の部分(下側容器本体212)を覆うように設けられている。かかる構成によれば、容器本体21の内側空間のみならず、排出口23の内側空間も効率よく加熱することができ、よって、液体Lの蒸気(気体状の亜臨界水)を円滑に生成させることができる。以下、「液体Lの蒸気」を「気体状の亜臨界水」とも記載する。
加熱機構4としては、例えば、アルミナヒーター式、オイルヒータ式、光加熱(赤外線)式、IHヒータ式等を使用することができる。
また、容器本体21の所定箇所には、容器本体21の内部(気体状の亜臨界水)の温度および圧力をそれぞれ測定可能な温度センサおよび圧力センサ(いずれも不図示)が接続される。
撹拌機構3は、容器本体21の中心線O21に沿って配置された回転軸31と、回転軸31の鉛直方向下側の端部に設けられ、径方向外側に伸びる少なくとも1枚(本実施形態では4枚)の撹拌翼32と、回転軸31を回転駆動させるモータ33とを備える。回転軸31は、好ましくは、マグネットカップリング型の回転軸とされる。4枚の撹拌翼32は、回転軸31の周方向に沿ってほぼ等間隔で配置されている。
撹拌機構3は、さらに、下部鏡板2121の内面に固定された4枚の固定翼34を備える。4枚の固定翼34は、容器本体21の中心線O21を中心として周方向に沿ってほぼ等間隔で配置されている。また、4枚の固定翼34は、撹拌翼32から若干離間して配置されている。
かかる構成の撹拌機構3によれば、有機性廃棄物を容器本体21の鉛直上方に確実に跳ね上げ、有機性廃棄物に対して必要かつ十分に亜臨界水処理を行うことができる。
本実施形態では、撹拌翼32の径方向外側端の回転周速は、5m/秒以上に設定されることが好ましく、6m/秒以上に設定されることがより好ましい。なお、回転周速の上限値は、通常、7m/秒程度である。かかる回転周速(回転速度)で撹拌翼32を回転させることにより、液体Lの蒸気(気体状の亜臨界水)と有機性廃棄物とを必要かつ十分に接触させ、有機性廃棄物の低分子化を十分に促進させることができる。また、上記効果を得つつも、高出力の高価なモータ33の使用を回避することができる。
また、容器本体21の亜臨界水処理下での必要空間率は、30%以上であることが好ましく、30~50%程度であることがより好ましい。この場合、1回の亜臨界水処理で処理し得る有機性廃棄物が少なくなり過ぎることを防止しつつ、撹拌翼32の径方向外側端の回転周速を所定の値に確実に維持することができる。結果として、有機性廃棄物の低分子化をさらに促進させることができる。
ここで、「容器本体21の亜臨界水処理下での必要空間率」とは、亜臨界水処理の開始時点において、容器本体21の容積に対して、容器本体21の容積と有機性廃棄物の体積との差分(すなわち、容器本体21内の有機性廃棄物が存在しない空間の体積)が占める割合を100分率で表した値である。
なお、撹拌翼32および固定翼34の設置数は、互いに異なっていてもよい。撹拌翼32および固定翼34の設置数は、それぞれ独立して、1つ、2つ、3つまたは5つ以上であってもよい。
また、複数枚の撹拌翼32および固定翼34の設置間隔は、周方向に沿って不均一であってもよい。さらに、撹拌翼32は、回転軸31の軸方向(鉛直方向)に沿った複数箇所(複数段)に配置するようにしてもよい。
さらに、亜臨界水処理装置1は、容器本体21と排出口23との境界部に設けられた隔離板25を有する。この隔離板25は、液体Lの蒸気の通過を許容するが、有機性廃棄物の通過を阻止する機能を備える。かかる構成によれば、排出口23(液体収容部24)内に収容された液体Lに、有機性廃棄物が混入するのを防止または抑制することができる。すなわち、亜臨界水処理前において、圧力容器2内で有機性廃棄物と液体Lとを隔離した状態(接触しない状態)とすることができる。一方、生成された液体Lの蒸気(気体状の亜臨界水)を有機性廃棄物に十分に接触させ、その低分子化を確実に促進することができる。
図2に示す隔離板25は、複数枚の扇状の仕切り板材251を中心部で互いに展開可能に固定することにより、全体として円形状をなしている。各仕切り板材251には、その厚さ方向に貫通する複数の貫通孔2511が形成されている。貫通孔2511を介して液体Lを排出口23の内側空間(液体収容部24)に供給し、液体Lの蒸気は貫通孔2511を介して容器本体21内に移動することができる。
容器本体21の容積は、20~350L程度であることが好ましく、50~300L程度であることがより好ましく、100~300L程度であることがさらに好ましく、143~286L程度であることが特に好ましい。かかる容積の容器本体21を使用すれば、有機性廃棄物の亜臨界水処理(低分子化)の程度が極端に低下するのを防止しつつ、亜臨界水処理装置1を十分に小型化することができる。
また、後述するようにコンテナ内に収容することができるようになり、この状態で目的とする場所にまで搬送することができる。
使用する液体Lの量は、特に限定されないが、容器本体21の容積の0.001~0.1倍程度であることが好ましく、0.005~0.05倍程度であることがより好ましい。かかる量の液体Lを使用すれば、有機性廃棄物を低分子化するのに十分な気体状の亜臨界水を生成することができる。
気体状の亜臨界水(液体Lの蒸気)の温度は、180~230℃程度であることが好ましく、190~220℃程度であることがより好ましい。また、その圧力は、15~25気圧程度であることが好ましく、18~22気圧程度であることがより好ましい。
気体状の亜臨界水の具体的な温度および圧力は、200℃程度、20気圧程度であることが好ましい。
亜臨界水処理における時間は、有機性廃棄物の種類等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、0.1~10時間程度であることが好ましく、0.5~5時間程度であることがより好ましい。
この亜臨界水は、誘電率が15~45であり、低極性溶媒の誘電率と同等である。このため、多くの有機物を溶解することができる。さらに、亜臨界水は、イオン積が1×10-12~1×10-11mol/kgであり、水素イオンと水酸化物イオンとに分離する割合が大きく、よって、強い加水分解作用を示す。
なお、室温かつ大気圧下での水の誘電率は、約80であり、温度約25℃かつ大気圧下での水のイオン積は、1×10-14mol/kgである。
低分子化された有機性廃棄物(すなわち、処理物)は、その可溶化率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
ここで、可溶化率とは、亜臨界水処理後の全有機物に対する可溶性有機物の比率であり、数値が高いほど有機物の低分子化が進んでいることを意味する。
有機性廃棄物の低分子化物の具体例としては、例えば、炭水化物、タンパク質、脂肪等が分解され、これらのそれぞれ対応する糖類、アミノ酸類、高級脂肪酸類等が挙げられる。
また、亜臨界水処理装置1での亜臨界水処理は、その性質上バッチ処理となるが、本発明では、数バッチ/日の割合で実施することができる。
<亜臨界水処理ユニット>
次に、本発明の亜臨界水処理ユニットについて説明する。
図3は、亜臨界水処理ユニットの実施形態を示す概念図である。
図3に示す亜臨界水処理ユニット100は、上記亜臨界水処理装置1と、この亜臨界水処理装置1に接続されたペレット化装置・半炭化装置10とを有する。
処理物を含む混合物(ペレット原料)は、処理物を含むペレット原料を半炭化する半炭化装置により半炭化した後、これをペレット化装置によりペレット化してもよく、この逆であってもよい。ここで、ペレット化装置は、ペレット原料または半炭化後のペレット原料をペレット化して、ペレットを得る装置である。
なお、ペレット化装置・半炭化装置10は、必要に応じて、処理物と木質バイオマスとを混合して、これらの混合物をペレット原料として得る混合装置(不図示)を備えていてもよい。
有機性廃棄物は、収集地域、時期により組成が異なり、亜臨界水処理により得られた処理物の発熱量も変動する。この発熱量の変動を補完(調整)すること等を目的として、木質バイオマスを処理物と混合することができる。これにより、石炭と同等の安定した発熱量を有し、RPFで定められた全塩素分の質量分率における品質区分と同等の品質を有するペレット(固形燃料)を極めて短時間で良好に製造することができる。
本発明において使用可能な木質バイオマスとしては、山から伐採した原木(丸太)を木材(板材、柱材等)に加工する際に発生する端の部分(いわゆる「端材(はざい)」)や、丸太の樹皮等の粉砕物および木材を原料とする廃棄紙が挙げられる。
得られるペレットは、燃焼させればCOを発生するが、木質バイオマスであれば、森林の木々が吸収したCOを大気中に戻すだけなので、カーボンニュートラルである。したがって、例えば、本実施形態で得られるペレットのような「バイオマスエネルギー燃料」は、エコロジーな燃料とも言える。
なお、得られるペレットは、目的の装置の燃料として好適に使用できれば、そのサイズ、形状等は、特に限定されるものではない。
また、半炭化により得られたペレットは、含水率および揮発性の有機成分の含有率が抑制されるとともに、純度の高い炭化物で構成される。したがって、ペレットは、その発熱量が増大し、自然環境での耐久性および保存安定性に優れる。
半炭化装置は、処理物を含むペレット原料を、所定の温度で熱処理することにより半炭化する。
半炭化処理の温度(ペレット原料を熱処理する際の温度)は、300℃以上であり、350℃以上であることが好ましく、400℃以上であることがより好ましい。半炭化処理の温度が300℃未満では、ペレット原料の半炭化により生成される半炭化物に内包される塩素を十分に低減することができない。
一方で、半炭化処理の温度を更に上昇させれば、内包される塩素をより低減させ得ると考えられるが、温度上昇に伴って半炭化物(半炭化後のペレット原料)からエネルギー成分が気化して燃焼することで、エネルギー成分の量が減少するおそれがある。このため、熱処理する際の温度の上限は、通常、700℃程度である。
本実施形態では、有機性廃棄物の亜臨界水処理により、無機塩素化合物(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム)を除去し、その後の半炭化処理により、有機塩素化合物を分解により除去することができると考えられる。よって、得られる半炭化物は、内包される塩素の他、ナトリウムやカリウムも低減することができる。
また、半炭化処理の時間(ペレット原料を熱処理する際の時間)は、特に限定されないが、0.1~5時間程度であることが好ましく、0.3~3時間程度であることがより好ましく、0.5~2時間程度であることがさらに好ましい。
かかる条件で半炭化処理を行うことにより、内包される塩素の量をより低減しつつ、ペレット原料を確実に半炭化状態とすることができる。
ここで、半炭化状態とは、ペレット原料の半分程度が炭化物に変換された状態を言う。
さらに、半炭化処理の雰囲気(ペレット原料を熱処理する際の雰囲気)も、特に限定されないが、大気より酸素濃度が低い低酸素雰囲気であることが好ましい。かかる雰囲気でペレット原料を熱処理することにより、効率よく半炭化が進むとともに、本発明者の検討によれば、有機塩素化合物の分解も促進されるようである。
低酸素雰囲気中の酸素濃度は、0~18体積%程度であることが好ましく、0~5体積%程度であることがより好ましく。この場合、上記効果をより向上させることができる。
かかる低酸素雰囲気としては、例えば、窒素雰囲気、アルゴンガス雰囲気、ヘリウムガス雰囲気のような希ガス雰囲気、減圧雰囲気等が挙げられるが、窒素雰囲気であることが好ましい。窒素雰囲気中でペレット原料を熱処理することにより、半炭化物からエネルギー成分が気化して燃焼することを確実に防止することができる。
半炭化物の全塩素分の質量分率は、0.3%以下であることが好ましく、0.27%以下であることがより好ましく、0.25%以下であることがさらに好ましい。かかる範囲であれば、一般社団法人日本RPF工業会で規定されるRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)の最上級品質であるAランクの全塩素分の質量分率を満足することができる。
したがって、最終的に得られるペレットを燃焼温度600℃程度(具体的には、580~630℃)で燃焼しても、塩酸が生成されないか、生成されても生成量が少ないため、燃焼炉が劣化するのを防止または抑制することができる。
ペレット化装置には、例えば、ストランド方式の押出機、ホットカット方式の押出機等を使用することができる。
また、本実施形態の亜臨界水処理ユニット100は、図3に示すように、亜臨界水処理装置1、ペレット化装置・半炭化装置10を収容した状態で搬送可能なコンテナ200を有する。
コンテナ200は、亜臨界水処理装置1およびペレット化装置・半炭化装置10を収容した状態で、大型車両300に積載されている。これにより、亜臨界水処理ユニット100を、目的に応じて、所定の箇所に移動させることができる。
コンテナ200の容積は、10~50m程度であることが好ましく、15~40m程度であることがより好ましく、20~30m程度であることがさらに好ましい。かかるサイズのコンテナ200であれば、市街地であっても、その設置場所を確保し易い。
なお、高圧ボイラーが付帯された大型の亜臨界水処理装置では、これのみがコンテナに収容可能であり、ペレット化装置・半炭化装置を含むその他の設備は、異なるコンテナに収容せざるを得ず、亜臨界水処理ユニットを設置するための極めて広いスペースを確保する必要がある。したがって、かかる亜臨界水処理ユニットは、市街地に設置するのが困難である。
次に、本発明の半炭化物の製造方法について説明する。
この半炭化物の製造方法は、有機性廃棄物を亜臨界水処理することにより低分子化して処理物を得る第1工程と、ペレット原料(処理物を含む原料)を、300℃以上の温度で熱処理することにより半炭化して、半炭化物を得る第2工程とを有する。
第1工程および第2工程における条件等は、前述したのと同様である。
本発明の半炭化物の製造方法は、有機性廃棄物が無機塩素化合物を含有する場合、さらに、第1工程に先立って、有機性廃棄物を粉砕することにより粉砕物を得る工程と、粉砕物を水に接触させることにより、無機塩素化合物の少なくとも一部を除去する工程とを有することが好ましい。
ここで、無機塩素化合物としては、例えば、食塩、醤油、ソースのような調味料中に含まれる安定した塩素化合物が挙げられる。
粉砕物の平均粒径としては、15mm程度以下であることが好ましく、10mm程度以下であることがより好ましく、6mm程度以下であることがさらに好ましい。このように微細に粉砕した粉砕物に水を接触させることにより、無機塩素化合物を水に溶解して除去することができる。なお、粉砕物の平均粒径の下限値は、通常、1mm程度である。
粉砕物に水を接触させる方法としては、例えば、粉砕物を水に浸漬する方法、粉砕物に水を噴霧する方法等が挙げられる。
本発明の半炭化物の製造方法は、有機性廃棄物が無機塩素化合物を含有する場合、さらに、第1工程に先立って、有機性廃棄物に、有機性廃棄物より無機塩素化合物の含有量の少ない他の有機性廃棄物を混合する工程を有することも好ましい。
この場合、有機性廃棄物全体に含まれる無機塩素化合物の量を低減(希釈)することができる。このため、最終的に得られる半炭化物において、塩素、ナトリウム、カリウム等の量を低減することができる。その結果、半炭化物(ペレット)は、燃料としての品質が高まる。
本発明の半炭化物の製造方法は、有機性廃棄物が無機塩素化合物を含有する場合、さらに、第1工程と第2工程との間に、無機塩素化合物を塩素ガスに分解して除去する工程を有することも好ましい。
この場合、例えば、亜臨界水処理後の処理物を乾燥させずに液体に近い形状で取り出し、電解法(イオン交換膜法)等を使用して処理することにより、良好に塩素を除去することができる。
なお、以上のような追加の工程は、処理物の性質および特徴に応じて製造コストを勘案して、採用するか否か、あるいは採用する場合、どの工程(1又は2以上)を採用するかが判断される。
以上のように、本実施形態によれば、撹拌翼の径方向外側端の回転周速を設定することにより、有機性廃棄物の低分子化を十分に進行させ得る亜臨界水処理装置を提供することができる。
また、圧力容器2の内側に、有機性廃棄物の亜臨界水処理に使用する液体Lを収容する液体収容部24を設けることにより、高圧ボイラーを必要としない比較的小型の亜臨界水処理装置を提供することができる。この場合、高圧ボイラーを必要としないため、亜臨界水処理装置は、安全性が高く、操作が容易である。したがって、亜臨界水処理装置は、場所を選ばず、例えば、市街地のような目的とする場所に設置することができる。
また、圧力容器2は、容器本体21の中心線O21が水平方向(鉛直方向とほぼ直交する方向)に沿うように、架台によって支持された横置き型の圧力容器とすることもできる。
なお、亜臨界水処理装置には、高圧ボイラーを付帯させてもよい。この場合、圧力容器を大型化することで、有機性廃棄物の亜臨界水処理による処理量を大幅に増大させることができる。かかる大型の圧力容器が備える容器本体の容積は、0.5~7m程度であることが好ましく、1~5m程度であることがより好ましい。
また、この場合、加熱機構4を省略してもよい。
さらに、亜臨界水処理ユニット100は、目的に応じて、半炭化装置を省略してもよい、半炭化装置に代えて、あるいは、半炭化装置と組み合わせて、水処理装置・脱臭処理装置を有していてもよい。
ここで、水処理装置は、亜臨界水処理装置1から排出されたガスを水処理する装置であり、その処理方法は、水処理の目的や基準に応じて選定される。この水処理装置は、例えば、加圧浮上処理を行う装置等で構成することができる。また、脱臭処理装置は、亜臨界水処理装置1から排出されたガスを脱臭処理する装置であり、例えば、吸着フィルター装置等で構成することができる。
亜臨界水処理装置1から排出されたガスは、水処理装置により水処理した後、これを脱臭処理装置により脱臭処理してもよく、この逆であってもよい。
なお、亜臨界水処理ユニット100は、亜臨界水処理装置1と、半炭化装置と、ペレット化装置、水処理装置および脱臭処理装置のうちの少なくとも1つの装置とを有していればよい。この場合、コンテナ200は、亜臨界水処理装置1と、半炭化装置、ペレット化装置、水処理装置および脱臭処理装置のうちの少なくとも1つの装置とを収容する。
したがって、亜臨界水処理ユニット100を構成する複数の装置は、コンテナ200の容積(サイズ)に応じて、全ての装置を1つのコンテナ200に収容してもよく、複数のコンテナ200に分けて収容するようにしてもよい。後者の場合、複数のコンテナ200の容積は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記半炭化装置において、前記原料を熱処理する際の時間は、0.1~5時間である、半炭化装置。
前記半炭化装置において、前記原料を熱処理する際の雰囲気は、大気より酸素濃度が低い低酸素雰囲気である、半炭化装置。
前記半炭化装置において、前記低酸素雰囲気中の酸素濃度は、0~18体積%である、半炭化装置。
前記半炭化装置において、前記低酸素雰囲気は、窒素雰囲気である、半炭化装置。
亜臨界水処理ユニットであって、有機性廃棄物を低分子化して処理物を得る亜臨界水処理装置と、前記半炭化装置とを有する、亜臨界水処理ユニット。
半炭化物の製造方法であって、有機性廃棄物を亜臨界水処理することにより低分子化して処理物を得る第1工程と、前記処理物を含む原料を、300℃以上の温度で熱処理することにより半炭化して、前記半炭化物を得る第2工程とを有する、半炭化物の製造方法。
前記半炭化物の製造方法において、前記有機性廃棄物が無機塩素化合物を含有する場合、さらに、前記第1工程に先立って、前記有機性廃棄物を粉砕することにより粉砕物を得る工程と、前記粉砕物を水に接触させることにより、前記無機塩素化合物の少なくとも一部を除去する工程とを有する、半炭化物の製造方法。
前記半炭化物の製造方法において、前記有機性廃棄物が無機塩素化合物を含有する場合、さらに、前記第1工程に先立って、前記有機性廃棄物に、前記有機性廃棄物より無機塩素化合物の含有量の少ない他の有機性廃棄物を混合する工程を有する、半炭化物の製造方法。
前記半炭化物の製造方法において、前記有機性廃棄物が無機塩素化合物を含有する場合、さらに、前記第1工程と前記第2工程との間に、前記無機塩素化合物を塩素ガスに分解して除去する工程を有する、半炭化物の製造方法。
もちろん、この限りではない。
また、次に記載の各態様で提供することもできる。
前記亜臨界水処理ユニットにおいて、前記亜臨界水処理装置は、圧力容器と、前記圧力容器に収容された前記有機性廃棄物を撹拌する撹拌機構と、前記有機性廃棄物を加熱する加熱機構とを有し、前記圧力容器は、容器本体と、前記有機性廃棄物を前記容器本体内に投入する投入口と、前記処理物を前記容器本体内から排出する排出口と、前記有機性廃棄物の亜臨界水処理に使用する液体を収容する液体収容部とを備え、前記液体収容部に収容された前記液体から、前記有機性廃棄物を隔離した状態で前記容器本体に収容可能である、亜臨界水処理ユニット。
前記亜臨界水処理ユニットにおいて、前記排出口の内側空間の少なくとも一部が、前記液体収容部として機能する、亜臨界水処理ユニット。
前記亜臨界水処理ユニットにおいて、前記容器本体の中心線は、鉛直方向に沿っており、前記撹拌機構は、前記容器本体の中心線に沿って配置された回転軸と、前記回転軸の鉛直方向下側の端部に設けられ、径方向外側に伸びる少なくとも1枚の撹拌翼とを備える、亜臨界水処理ユニット。
前記亜臨界水処理ユニットにおいて、前記撹拌翼の径方向外側端の回転周速が5m/秒以上に設定される、亜臨界水処理ユニット。
前記亜臨界水処理ユニットにおいて、前記容器本体の容積は、20~350Lである、亜臨界水処理ユニット。
前記亜臨界水処理ユニットにおいて、さらに、前記原料または半炭化後の前記原料をペレット化して、ペレットを得るペレット化装置、前記亜臨界水処理装置から排出されたガスを水処理する水処理装置および前記亜臨界水処理装置から排出されたガスを脱臭処理する脱臭処理装置のうちの少なくとも1つの装置を有する、亜臨界水処理ユニット。
前記亜臨界水処理ユニットにおいて、さらに、前記亜臨界水処理装置と、前記半炭化装置、前記ペレット化装置、前記水処理装置および前記脱臭処理装置のうちの少なくとも1つの装置とを収容した状態で搬送可能なコンテナを有する、亜臨界水処理ユニット。
前記亜臨界水処理ユニットにおいて、前記コンテナの容積は、10~50mである、亜臨界水処理ユニット。
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
1.半炭化物の製造
(実施例1)
まず、図1に示す亜臨界水処理装置を準備した。なお、容器本体の容量は、286Lであった。
次に、圧力容器の排出口の内側空間に、15Lの水道水(亜臨界水を生成するための液体)を供給した。
次に、撹拌機を低速起動した後、投入口から200kgのシュレッダーゴミ(紙類の裁断物)を容器本体内に投入した。その後、投入口を閉塞した状態とし、加熱機構により加熱を開始した。加熱は、先に液体収納部の水道水を加熱した後に、生成する亜臨界水の温度を220℃、圧力を25気圧に設定し、2時間、亜臨界水処理を実施した。また、撹拌翼の径方向外側端の回転周速を5m/秒に設定して、撹拌翼を回転させた。
次に、処理物(ペレット原料)を半炭化装置に投入し、酸素濃度が0体積%の窒素雰囲気中で、300℃で0.5時間、熱処理(半炭化処理)を行った。これにより、半炭化物を得た。
(実施例2)
熱処理の温度を350℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、半炭化物を得た。
(比較例1)
熱処理の温度を250℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、半炭化物を得た。
(比較例2)
熱処理の温度を200℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、半炭化物を得た。
(比較例3)
熱処理の温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、半炭化物を得た。
2.内包塩素の量の測定
処理物(ペレット原料)、各実施例および各比較例で得られた半炭化物に対して、JIS Z 7311:2010「廃棄物由来の紙,プラスチックなど固形化燃料(RPF)」に規定の方法に従って、全塩素分の質量分率を測定した。なお、処理物(ペレット原料)の全塩素分の質量分率は、0.55%であった。
また、各実施例および各比較例で得られた半炭化物の全塩素分の質量分率を図4に示す。すなわち、図4は、熱処理の温度の変化に伴う全塩素分の質量分率の変化を示すグラフである。
図4に示すように、熱処理の温度300℃で全塩素分の質量分率がRPFのAランクまで低下し、350℃で更に低下させ得ることが判った。
1 :亜臨界水処理装置
2 :圧力容器
21 :容器本体
211 :上側容器本体
2111 :上部鏡板
2112 :フランジ部
2113 :上部貫通孔
212 :下側容器本体
2121 :下部鏡板
2122 :フランジ部
2123 :下部貫通孔
22 :投入口
221 :胴部
222 :開口
223 :蓋部
23 :排出口
231 :胴部
232 :開口
233 :蓋部
24 :液体収容部
25 :隔離板
251 :仕切り板材
2511 :貫通孔
3 :撹拌機構
31 :回転軸
32 :撹拌翼
33 :モータ
34 :固定翼
4 :加熱機構
10 :ペレット化装置・半炭化装置
100 :亜臨界水処理ユニット
200 :コンテナ
300 :大型車両
L :液体
O21 :中心線
O22 :中心線
O23 :中心線

Claims (8)

  1. 半炭化物の製造方法であって、
    無機塩素化合物を含有する有機性廃棄物を亜臨界水処理することにより低分子化して処理物を得る工程と、
    前記処理物に含まれる前記無機塩素化合物を塩素ガスに分解して除去する工程と、
    前記処理物を含む原料を、300℃以上の温度で熱処理することにより半炭化して、前記半炭化物を得る工程とを有する、半炭化物の製造方法。
  2. 請求項1に記載の半炭化物の製造方法において、
    前記無機塩素化合物の前記塩素ガスへの分解および除去は、電解法により行われる、半炭化物の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の半炭化物の製造方法において、
    前記原料を熱処理する際の時間は、0.1~5時間である、半炭化物の製造方法
  4. 請求項1請求項3のいずれか1項に記載の半炭化物の製造方法において、
    前記原料を熱処理する際の雰囲気は、大気より酸素濃度が低い低酸素雰囲気である、半炭化物の製造方法
  5. 請求項に記載の半炭化物の製造方法において、
    前記低酸素雰囲気中の酸素濃度は、0~18体積%である、半炭化物の製造方法
  6. 請求項または請求項に記載の半炭化物の製造方法において、
    前記低酸素雰囲気は、窒素雰囲気である、半炭化物の製造方法
  7. 請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の半炭化物の製造方法において、
    さらに、前記有機性廃棄物を亜臨界水処理する工程に先立って、
    前記有機性廃棄物を粉砕することにより粉砕物を得る工程と、
    前記粉砕物を水に接触させることにより、前記無機塩素化合物の少なくとも一部を除去する工程とを有する、半炭化物の製造方法。
  8. 請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の半炭化物の製造方法において、
    さらに、前記有機性廃棄物を亜臨界水処理する工程に先立って、
    前記有機性廃棄物に、前記有機性廃棄物より無機塩素化合物の含有量の少ない他の有機性廃棄物を混合する工程を有する、半炭化物の製造方法。
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