JP7061640B2 - 活性炭吸着剤の製造方法 - Google Patents
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Description
試作例の活性炭吸着剤を調製するに際し、はじめに各試作例に対応する複合フェノール樹脂を合成した。そして、合成したそれぞれの複合フェノールを炭化し、賦活して試作例の活性炭吸着剤を得た。
90%フェノール300.0重量部に、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)163.0重量部、酸性触媒としてのシュウ酸1.4重量部、乳化剤としてのアラビアゴム2.7重量部、水132.3重量部をさらに加えて95℃以上に加熱して適宜重合した(ノボラック樹脂合成工程)。次に、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)93.2重量部、塩基性触媒としてのヘキサメチレンテトラミン18.9重量部とトリエチレンテトラミン8.1重量部、水40.6重量部を同セパラブルフラスコ内に投入し60℃を維持しながら1時間加熱して反応を進めた(複合フェノール樹脂調製工程)。その後、95℃以上に加熱し4時間還流して試作例1に対応する複合フェノール樹脂を調製した。
ノボラック樹脂合成工程におけるアラビアゴムの添加量を3.0重量部、複合フェノール樹脂調製工程における37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)の添加量を139.9重量部とした以外は試作例1と同様の条件として試作例2に対応する複合フェノール樹脂を得た。
ノボラック樹脂合成工程において、90%フェノール280.0重量部、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)153.1重量部、シュウ酸1.3重量部、アラビアゴム3.0重量部、複合フェノール樹脂調製工程における37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)174.0重量部、ヘキサメチレンテトラミン17.6重量部とトリエチレンテトラミン7.6重量部とした以外は試作例1と同様の条件として試作例3に対応する複合フェノール樹脂を得た。
ノボラック樹脂合成工程において、90%フェノール225.0重量部、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)122.2重量部、シュウ酸1.0重量部、アラビアゴム2.6重量部、複合フェノール樹脂調製工程における37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)192.3重量部、ヘキサメチレンテトラミン21.3重量部とトリエチレンテトラミン9.1重量部とした以外は試作例1と同様の条件として試作例4に対応する複合フェノール樹脂を得た。
ノボラック樹脂合成工程において、90%フェノール280.0重量部、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)186.9重量部、シュウ酸1.3重量部、アラビアゴム3.3重量部、複合フェノール樹脂調製工程における37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)139.2重量部、ヘキサメチレンテトラミン17.6重量部とトリエチレンテトラミン7.6重量部とした以外は試作例1と同様の条件として試作例5に対応する複合フェノール樹脂を得た。
ノボラック樹脂合成工程において、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)116.4重量部、アラビアゴム2.0重量部、複合フェノール樹脂調製工程における37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)186.5重量部とした以外は試作例1と同様の条件として試作例6に対応する複合フェノール樹脂を得た。
90%フェノール1450.0重量部、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)563.0重量部、酸性触媒としてのシュウ酸6.5重量部を、攪拌機、還流冷却器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に投入して90~100℃で4時間反応した。反応終了後、反応容器内を減圧し、水分と及び未反応物を除去した。その後、95℃まで昇温し、滴下漏斗により水を投入し低重合物を除去する操作を繰り返して洗浄した。こうして、「Nov1」のノボラック樹脂分を合成した。
反応原料を90%フェノール1400.0重量部、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)753.0重量部に変更した以外は、Nov1と同様の条件下で反応して「Nov2」のノボラック樹脂分を合成した。
ノボラック樹脂分(Nov1)122.0重量部、90%フェノール135.0重量部、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)157.0重量部、乳化剤としてのヒドロキシエチルセルロース1.2重量部、水148重量部を、攪拌機、還流冷却器を備えた1Lのセパラブルフラスコ内に投入して70℃で溶解した。次に、塩基性触媒としてのヘキサメチレンテトラミン42.5重量部、水56.7重量部を同セパラブルフラスコ内に投入し80~90℃を維持しながら3時間加熱して反応を進めた。その後、95℃以上に加熱し4時間還流してレゾール樹脂分の合成とともに比較例1に対応する複合フェノール樹脂を合成した。
ノボラック樹脂分(Nov2)120.0重量部、90%フェノール140.0重量部、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)108.0重量部、ヒドロキシエチルセルロース1.6重量部、ヘキサメチレンテトラミン37.8重量部とした以外は比較例1と同様として比較例2に対応する複合フェノール樹脂を得た。
90%フェノール200.0重量部、37%ホルムアルデヒド(ホルマリン)202.0重量部、乳化剤としてのヒドロキシエチルセルロース0.6重量部、水148重量部を、攪拌機、還流冷却器を備えた1Lのセパラブルフラスコ内に投入して70℃で溶解した。次に、塩基性触媒としてのトリエチレンテトラミン16.2重量部、水56.7重量部を同セパラブルフラスコ内に投入し40~60℃を維持しながら1時間加熱して反応を進めた。その後、95℃以上に加熱し4時間還流して比較例3に対応するフェノール樹脂を合成した。
試作例1~6及び比較例1,2の複合フェノール樹脂と比較例3のレゾール樹脂について、それぞれを円筒状のレトルト電気炉に収容し炉内を窒素により充たした後、600℃まで100℃/1時間で昇温し、600℃を1時間維持して炉内のフェノール樹脂を炭化した。その後、フェノール樹脂の炭化物を900℃に加熱し炉内に水蒸気を注入して900℃で1時間維持して賦活して各試作例及び比較例の活性炭吸着剤を得た。
各試作例及び比較例のフェノール樹脂並びに活性炭吸着剤に関し、樹脂収率(%)、ノボラック・レゾール重量比、揮発分(%)、樹脂平均粒子径(μm)、樹脂充填密度(g/mL)、活性炭収率(%)、活性炭平均粒子径(μm)、BET比表面積(m2/g)、水銀細孔容積(VM)(mL/g)、窒素細孔容積(VH)、容積比(RV)、平均細孔直径(nm)、活性炭充填密度(g/mL)を測定した。結果を表3,4に示す。
樹脂収率(%)は、フェノール樹脂の乾燥後重量を、原料として用いたフェノール及びホルマリンから水分を除いて合計した重量からの割合とした。
ノボラック・レゾール重量比は、試作例及び比較例の複合フェノール樹脂中に含有されたノボラック樹脂分とレゾール樹脂分の互いの重量を反応量から算定した比率である。
フェノール樹脂の揮発分(%)の測定は、前述の「活性炭吸着剤の調製」において、当初の樹脂の重量と窒素雰囲気中での炭化後の重量を測定し、両者から炭化の前後の重量変化を求めた。樹脂は炭化すると重量は減少する。そこで当該重量減少は揮発による減少量とし、当初の樹脂重量からの割合とした。
樹脂平均粒子径(μm)は、フェノール樹脂の平均粒子径(μm)であって、レーザー光散乱式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、「SALD3000S」)を使用して測定し、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%における粒径とした。
各試作例及び比較例の樹脂の充填密度(g/mL)は、JIS K 1474(2014)に準拠して測定した。
活性炭収率(%)は、炭化前の樹脂段階の重量と、炭化、賦活、洗浄、篩別を終えて最終的に分取した活性炭吸着剤の重量を計測して減少量を求めた。そして、当初の樹脂重量からの割合とした。
活性炭吸着剤の平均粒子径(μm)は、前述の樹脂平均粒子径と同様に、レーザー光散乱式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、「SALD3000S」)を使用して測定し、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%における粒径とした。
各試作例及び比較例の活性炭吸着剤のBET比表面積(m2/g)は、77Kにおける窒素吸着等温線を「BELSORP mini」(日本ベル株式会社製)により測定し、BET法により求めた。
各試作例及び比較例の活性炭吸着剤の水銀細孔容積(VM)は、「オートポア9500」(株式会社島津製作所製)を使用し、接触角130°、表面張力484ダイン/cm(4.84mN/m)に設定し、細孔直径7.5~15000nmの水銀圧入法による細孔容積値(mL/g)を求めた。
各試作例及び比較例の活性炭吸着剤の窒素細孔容積(VH)は、Gurvitschの法則を適用し、「BELSORP mini」(日本ベル株式会社製)を使用し、相対圧0.953における液体窒素換算した窒素吸着量(Vads)を(iv)式から液体状態の窒素体積(VH)に換算して求めた。(iv)式において、Mgは吸着質の分子量(窒素:28.020)、ρg(g/cm3)は吸着質の密度(窒素:0.808)である。
容積比(RV)は、(v)式のとおり、水銀細孔容積(VM)を窒素細孔容積(VH)により除した商とした。
各試作例及び比較例の活性炭吸着剤の平均細孔直径(nm)は、細孔の形状を円筒形と仮定し、細孔容積(mL/g)及び比表面積(m2/g)の値を用いて下記の(vi)式より求めた。
各試作例及び比較例の活性炭吸着剤の充填密度(g/mL)は、JIS K 1474(2014)に準拠して測定した。
試作例1~6の複合フェノール樹脂の結果より、ノボラック樹脂合成工程段階において、フェノールの当量(P)とホルムアルデヒドの当量(FN)との当量比(R1)は0.5~0.9範囲からの合成を確認した。試作例の複合フェノール樹脂の揮発分は、比較例1,2の複合フェノール樹脂と同等である。また、平均粒子径も同様である。
前述のとおり、試作例の複合フェノール樹脂の炭化、賦活の工程を経て調製した活性炭吸着剤はマクロ孔の相体割合が大きい。この点を踏まえ、発明者は、尿毒症等の原因となり得る窒素を含有する化合物に対する吸着性能の良否を検討した。そこで、含窒素低分子化合物から毒性物質として「インドール、インドール酢酸、インドキシル硫酸及びトリプトファン」の4種類の物質を選択し、また、有用物質として「トリプシン」を、試作例及び比較例の活性炭吸着剤について、当該5種の分子の吸着率(%)を測定した。結果を表5,6に示す。
インドールの標準溶液50mLに試作例、比較例の球状活性炭をそれぞれ0.01g添加し、37℃の温度で3時間接触振とうした。
インドール酢酸の標準溶液50mLに試作例、比較例の球状活性炭をそれぞれ0.01g添加し、37℃の温度で3時間接触振とうした。
インドキシル硫酸の標準溶液50mLに試作例、比較例の球状活性炭をそれぞれ0.01g添加し、37℃の温度で3時間接触振とうした。
トリプトファンの標準溶液50mLに試作例、比較例の球状活性炭をそれぞれ0.01g添加し、37℃の温度で3時間接触振とうした。
トリプシンの標準溶液50mLに試作例、比較例の球状活性炭をそれぞれ0.125g添加し、21℃の温度で3時間接触振とうした。
さらに、各試作例の活性炭吸着剤は、吸着性能評価に供した毒性物質5種類の含窒素化合物のいずれについて、比較例3よりも高い吸着性能を発揮した。また、比較例1,2と比較しても、同等ないし高い吸着性能を発揮した。また、各試作例の活性炭吸着剤は有用物質については比較的吸着せず、優れた選択性を示した。この結果より、実際の投与後の消化管内においても迅速な吸着が進み、体外への排泄が期待できる。そこで、本発明により製造された活性炭吸着剤は腎機能、肝機能障害等の治療、予防に有効な経口投与用吸着剤となり得る。
前述の吸着性能の良否の評価に加えて、対象物質を吸着する速度の良否についても検討した。試作例の複合フェノール樹脂の炭化、賦活の工程を経て調製した活性炭吸着剤は、マクロ孔の相対割合が大きいことから、窒素を含有する化合物の吸着する速度が速いと考えられる。そこで、含窒素低分子化合物から毒性物質として「インドール及びトリプトファン」の2種類の物質を選択し、試作例及び比較例の活性炭吸着剤について、当該2種の分子の吸着率(%)を測定した。吸着速度を評価するために、0.5時間、1時間、2時間、3時間、20時間のそれぞれの時間が経過した時点における吸着率を測定するとともに、20時間経過時点での吸着率の半分量の吸着率となった時点での経過時間を求め、50%吸着に要した時間とした。インドールについての結果を表7及び表8、トリプトファンについての結果を表9,10に示す。
試作例1~6の活性炭吸着剤は、吸着速度評価に供した2種類の合窒素化合物のいずれについて、どの時間においても、比較例3よりも高い吸着性能を発揮した。特に、50%吸着時間の指標からも明らかである通り、初期段階において迅速に吸着性能を発現した。比較例1,2も高い吸着能力を示したものの、樹脂収率が低いことから各試作例の方が経済的に優れる。この結果より、実際に本発明に係る製造方法により製造された活性炭吸着剤が投与されると、消化管内における毒性物質の吸着は迅速に進み体外への排泄が期待できることが示された。そこで、活性炭吸着剤は腎機能、肝機能障害等の治療、予防に有効な経口投与用吸着剤になりうる。
本発明の製造方法により製造された各試作例の活性炭吸着剤は、レゾール樹脂分のみのフェノール樹脂よりなる比較例3の活性炭吸着剤よりも優れた吸着性能及び吸着速度を示したことから、ノボラック樹脂分及びレゾール樹脂分の両者を含有するフェノール樹脂を出発原料として活性炭吸着剤を製造すると良好な結果が得られることが示された。また、ノボラック樹脂分とレゾール樹脂分とを含むフェノール樹脂よりなる比較例1及び2と比較しても、おおよそ同等ないし良好な吸着性能及び吸着速度を示した。本発明の製造方法は、比較例1,2のフェノール樹脂の製造方法と比較して洗浄工程等を省略した簡易な工程であるにも関わらず、同等ないし良好な吸着性能を有する活性炭吸着剤を得られることが示された。また、樹脂の収率も非常に高いことから、少ない工程で歩留まりが良いため、経済的にとても有意であることも示された。
Claims (8)
- ノボラック樹脂とレゾール樹脂を含有する複合フェノール樹脂の製造方法であって、
フェノールと、ホルムアルデヒドと、酸性触媒と乳化剤とを混合しながら加熱してノボラック樹脂分を調製するノボラック樹脂合成工程と、
前記ノボラック樹脂合成工程により得た溶液中に、ホルムアルデヒドと、塩基性触媒とを混合しながら加熱してレゾール樹脂成分を合成するとともに前記ノボラック樹脂分も含有した複合フェノール樹脂を調製する複合フェノール樹脂調製工程と、
前記複合フェノール樹脂を炭化して樹脂炭化物を得る炭化工程と、
前記樹脂炭化物を賦活して活性炭吸着剤を得る賦活工程を有する
ことを特徴とする活性炭吸着剤の製造方法。 - 前記複合フェノール樹脂の揮発分が60%以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の活性炭吸着剤の製造方法。
- 前記複合フェノール樹脂が平均粒径200~500μmの粒状物ないし球状物である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の活性炭吸着剤の製造方法。
- 前記塩基性触媒が、アミン化合物である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の活性炭吸着剤の製造方法。
- 前記複合フェノール樹脂に含有されるノボラック樹脂分とレゾール樹脂分が9:1ないし5:5の重量比である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の活性炭吸着剤の製造方法。
- 前記活性炭吸着剤が、経口投与用腎疾患又は経口投与用肝疾患のための治療剤又は予防剤であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の複合フェノール樹脂の製造方法。
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