JP2006070047A - 経口投与用吸着剤、並びに腎疾患治療又は予防剤、及び肝疾患治療又は予防剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】経口投与用吸着剤は、熱硬化性樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01〜1mmであり、そしてラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m 2/g以上である球状活性炭からなるか、又は、熱硬化性樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01〜1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m2/g以上であり、全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり、そして全塩基性基が0.40〜1.10meq/gである表面改質球状活性炭からなる。
【選択図】なし
Description
本発明による経口投与用吸着剤は、消化酵素等の体内の有益成分の吸着性が少ないにもかかわらず、有毒な毒性物質(Toxin)の吸着性能が多いという選択吸着特性を有し、更に、特異な細孔構造を有するので、従来の経口投与用吸着剤と比較すると、前記の選択吸着特性が著しく向上する。従って、特に、肝腎疾患者用の経口投与用吸着剤として有効である。
背景技術
腎機能や肝機能の欠損患者らは、それらの臓器機能障害に伴って、血液中等の体内に有害な毒性物質が蓄積したり生成したりするので、尿毒症や意識障害等の脳症をひきおこす。これらの患者数は年々増加する傾向を示しているため、これら欠損臓器に代わって毒性物質を体外へ除去する機能をもつ臓器代用機器あるいは治療薬の開発が重要な課題となっている。現在、人工腎臓としては、血液透析による有毒物質の除去方式が最も普及している。しかしながら、このような血液透析型人工腎臓では、特殊な装置を用いるために、安全管理上から専門技術者を必要とし、また血液の体外取出しによる患者の肉体的、精神的及び経済的負担が高いなどの欠点を有していて、必ずしも満足すべきものではない。
近年、これらの欠点を解決する手段として、経口的な服用が可能で、腎臓や肝臓の機能障害を治療することができる経口吸着剤が注目されている。具体的には、特公昭62−11611号公報に記載の吸着剤は、特定の官能基を有する多孔性の球形炭素質物質(以後、表面改質球状活性炭とよぶ)からなり、生体に対する安全性や安定性が高く、同時に腸内での胆汁酸の存在下でも有毒物質の吸着性に優れ、しかも、消化酵素等の腸内有益成分の吸着が少ないという有益な選択吸着性を有し、また、便秘等の副作用の少ない経口治療薬として、例えば、肝腎機能障害患者に対して広く臨床的に利用されている。なお、前記特公昭62−11611号公報に記載の吸着剤は、石油ピッチなどのピッチ類を炭素源とし、球状活性炭を調製した後、酸化処理、及び還元処理を行うことにより製造されていた。
発明の開示
本発明者は、ピッチ類から球状活性炭を調製し、酸化還元することにより得られる従来の多孔性球状炭素質物質からなる経口吸着剤よりも一層優れた選択的吸着性を示す経口投与用吸着剤の探求を進めていたところ、驚くべきことに、熱硬化性樹脂を炭素源として調製した球状活性炭は、酸化処理及び還元処理を実施する前の状態であるにもかかわらず、生体内の尿毒症性物質のひとつと考えられるβ−アミノイソ酪酸の吸着性に優れており、しかも有益物質である消化酵素(例えば、α−アミラーゼ)等に対する吸着性が少ないという有益な選択吸着性を有することを見出し、更に、その選択吸着性の程度が、前記特公昭62−11611号公報に記載の吸着剤よりも優れていることを見出した。熱硬化性樹脂を炭素源として調製した前記球状活性炭は、β−アミノイソ酪酸に対して優れた吸着性を示すので、同様の分子サイズを有する他の毒性物質、例えば、オクトパミンやα−アミノ酪酸、更に腎臓病での毒性物質及びその前躯体であるジメチルアミン、アスパラギン酸、あるいはアルギニン等の水溶性の塩基性及び両性物質に対しても優れた吸着性を示すものと考えられる。
従来の多孔性球状炭素質物質、すなわち、前記特公昭62−11611号公報に記載の吸着剤で用いる表面改質球状活性炭では、ピッチ類から調製される球状活性炭を更に酸化処理及び還元処理して官能基を導入することによって、前記の選択吸着性が発現されることになると考えられていたので、酸化処理及び還元処理を実施する前の球状活性炭の状態で選択的吸着能を発現すること、及びその吸着能が従来の経口投与用吸着剤よりも優れているという本発明者による前記の発見は、驚くべきことである。
また、本発明者は、前記の球状活性炭を更に酸化処理及び還元処理することによって調製した表面改質球状活性炭は、生体内の尿毒症性物質のひとつと考えられるβ−アミノイソ酪酸の吸着性に優れており、しかも有益物質である消化酵素(例えば、α−アミラーゼ)等に対する吸着性が少ないという前記の有益な選択吸着性が、前記特公昭62−11611号公報に記載の吸着剤よりも一層向上することを見出した。従って、β−アミノイソ酪酸と同様の分子サイズを有する他の毒性物質、例えば、オクトパミンやα−アミノ酪酸、更に腎臓病での毒性物質及びその前躯体であるジメチルアミン、アスパラギン酸、あるいはアルギニン等の水溶性の塩基性及び両性物質に関しても一層優れた選択吸着性を示すものと考えられる。
本発明はこうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、熱硬化性樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01〜1mmであり、そしてラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m2/g以上である球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤に関する。
また、本発明は、熱硬化性樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01〜1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m2/g以上であり、全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり、そして全塩基性基が0.40〜1.10meq/gである表面改質球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤にも関する。
更に、本発明は、前記の経口投与用吸着剤を有効成分とする腎疾患治療又は予防剤、及び肝疾患治療又は予防剤にも関する。
(3)水銀圧入法による細孔容積
水銀ポロシメーター(例えば、MICROMERITICS社製「AUTOPORE
9200」)を用いて細孔容積を測定することができる。試料である球状活性炭又は表面
改質球状活性炭を試料容器に入れ、2.67Pa以下の圧力で30分間脱気する。次いで
、水銀を試料容器内に導入し、徐々に加圧して水銀を球状活性炭試料又は表面改質球状活
性炭試料の細孔へ圧入する(最高圧力=414MPa)。このときの圧力と水銀の圧入量
との関係から以下の各計算式を用いて球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の細孔
容積分布を測定する。
具体的には、細孔直径22μmに相当する圧力(0.06MPa)から最高圧力(41
4MPa:細孔直径3nm相当)までに球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料に圧
入された水銀の体積を測定する。細孔直径の算出は、直径(D)の円筒形の細孔に水銀を
圧力(P)で圧入する場合、水銀の表面張力を「γ」とし、水銀と細孔壁との接触角を「
θ」とすると、表面張力と細孔断面に働く圧力の釣り合いから、次式:
−πDγcosθ=π(D/2)2・P
が成り立つ。従って
D=(−4γcosθ)/P
となる。
本明細書においては、水銀の表面張力を484dyne/cmとし、水銀と炭素との接
触角を130度とし、圧力PをMPaとし、そして細孔直径Dをμmで表示し、下記式:
D=1.27/P
により圧力Pと細孔直径Dの関係を求める。例えば、本発明における細孔直径20〜10
00nmの範囲の細孔容積とは、水銀圧入圧1.27MPaから63.5MPaまでに圧
入された水銀の体積に相当し、細孔直径7.5〜15000nmの範囲の細孔容積とは、
水銀圧入圧0.085MPaから169MPaまでに圧入された水銀の体積に相当する。
(4)全酸性基
0.05規定のNaOH溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した球状活性炭
試料又は表面改質球状活性炭試料1gを添加し、48時間振とうした後、球状活性炭試料
又は表面改質球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるNaOHの消費量であ
る。
(5)全塩基性基
0.05規定のHCl溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した球状活性炭試
料又は表面改質球状活性炭試料1gを添加し、24時間振とうした後、球状活性炭試料又
は表面改質球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるHClの消費量である。
本発明の経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭は、後述す
る実施例において示すように、肝疾患憎悪因子や腎臓病での毒性物質の吸着性に優れてい
るにもかかわらず、有益物質である消化酵素等に対する吸着性が少ないという選択吸着性
に優れているので、腎疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いるか、あるい
は、肝疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いることができる。
腎疾患としては、例えば、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢
性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、
腎硬化症、間質性腎炎、細尿管症、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧
、若しくは高血圧症候群、あるいは前記の原疾患に伴う続発性腎疾患、更に、透析前の軽
度腎不全を挙げることができ、透析前の軽度腎不全の病態改善や透析中の病態改善にも用
いることができる(「臨床腎臓学」朝倉書店、本田西男、小磯謙吉、黒川清、1990年
版及び「腎臓病学」医学書院、尾前照雄、藤見惺編集、1981年版参照)。
また、肝疾患としては、例えば、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性
肝炎、肝線維症、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝炎、薬剤アレルギー性肝障害、原発性胆汁
性肝硬変、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常を挙げることができる。その他、体内
に存在する有害物質による病気、すなわち、精神病等の治療にも用いることができる。
従って、本発明による経口投与用吸着剤を腎臓疾患治療薬として用いる場合には、前記
の球状活性炭及び/又は表面改質球状活性炭を有効成分として含有する。本発明の経口投
与用吸着剤を腎臓疾患治療薬又は肝臓疾患治療薬として用いる場合、その投与量は、投与
対象がヒトであるかあるいはその他の動物であるかにより、また、年令、個人差、又は病
状などに影響されるので、場合によっては下記範囲外の投与量が適当なこともあるが、一
般にヒトを対象とする場合の経口投与量は1日当り1〜20gを3〜4回に分けて服用し
、更に症状によって適宜増減することができる。投与形態は、散剤、顆粒、錠剤、糖衣錠
、カプセル剤、懸濁剤、スティック剤、分包包装体、又は乳剤等であることができる。カ
プセル剤として服用する場合は、通常のゼラチンの他に、必要に応じて腸溶性のカプセル
を用いることもできる。錠剤として用いる場合は、体内でもとの微小粒体に解錠されるこ
とが必要である。更に他の薬剤であるアルミゲルやケイキサレートなどの電解質調節剤と
配合した複合剤の形態で用いることもできる。
実施例
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定する
ものではない。
以下の実施例において、α−アミラーゼ吸着試験及びDL−β−アミノイソ酪酸吸着試
験は以下の方法で実施し、選択吸着率は以下の方法で計算した。
(1)α−アミラーゼ吸着試験
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料を乾燥した後、乾燥試料0.125gを正
確に量って共栓付三角フラスコにとる。一方、α−アミラーゼ(液化型)0.100gを
正確に秤量して、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて溶かし、正確に1000mLとし
た液(原液)50mLを、前記の共栓付三角フラスコに正確に加え、37±1℃で3時間
振り混ぜる。フラスコの内容物をろ孔0.65μmのメンブランフィルターで吸引ろ過し
、はじめのろ液約20mLを除き、次のろ液約10mLを取って試料溶液とする。
一方、pH7.4のリン酸塩緩衝液を用いて同じ操作を行い、そのろ液を補正液とする
。試料溶液及び補正液につき、pH7.4のリン酸塩緩衝液を対照とし、吸光度測定法に
より試験を行い、波長282nmにおける吸光度を測定する。試料溶液の吸光度と補正液
の吸光度の差を試験吸光度とする。
検量線はα−アミラーゼ原液を0mL、25mL、50mL、75mL、及び100m
Lの量でメスフラスコに正確に分取し、pH7.4リン酸塩緩衝液で100mLにメスア
ップして波長282nmにおける吸光度を測定することにより作成した。
試験吸光度と検量線より、α−アミラーゼ残存量(mg/dL)を計算した。
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の量の依存性を測定するため、球状活性炭
試料又は表面改質球状活性炭試料の量を0.500gとし、上記方法と同様の方法で試験
吸光度を測定し、α−アミラーゼ残存量を計算した。
(2)DL−β−アミノイソ酪酸吸着試験
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料を乾燥した後、乾燥試料2.500gを正
確に量って共栓付三角フラスコにとる。一方、DL−β−アミノイソ酪酸0.100gを
正確に量り、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて溶かし、正確に1000mLとした液
(原液)50mLを、前記の共栓付三角フラスコに正確に加え、37±1℃で3時間振り
混ぜる。フラスコの内容物をろ孔0.65μmのメンブランフィルターで吸引ろ過し、は
じめのろ液約20mLを除き、次のろ液約10mLを取って試料溶液とする。
試料溶液0.1mLを試験管に正確に取り、pH8.0のリン酸塩緩衝液5mLを正確
に加えて混合した後、フルオレスカミン0.100gを非水滴定用アセトン100mLに
溶かした液1mLを正確に加えて混合した後で、15分間静置する。この液につき、蛍光
光度法により試験を行い、励起波長390nm、及び蛍光波長475nmで蛍光強度を測
定する。
DL−β−アミノイソ酪酸原液を0mL、15mL、50mL、75mL、及び100
mLの量とpH7.4リン酸塩緩衝液とで100mLにして攪拌し、ろ過し、ろ液0.1
mLを試験管に正確に取り、pH8.0のリン酸塩緩衝液5mLを正確に加えて混合した
後、フルオレスカミン0.100gを非水滴定用アセトン100mLに溶かした液1mL
を正確に加えて混合した後で、15分間静置する。これらの液につき、蛍光光度法により
試験を行い、励起波長390nm、及び蛍光波長475nmで蛍光強度を測定し、検量線
を作成する。最後にDL−β−アミノイソ酪酸の残存量(mg/dL)を上記検量線を用
いて計算する。
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の量の依存性を測定するため、球状活性炭
試料又は表面改質球状活性炭試料の量を0.500gとして上記方法と同様の方法で試験
蛍光強度を測定し、DL−β−アミノイソ酪酸の残存量を計算した。
(3)選択吸着率
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の使用量が0.500gの場合のα−アミ
ラーゼ吸着試験におけるα−アミラーゼ残存量、及び同様に、球状活性炭試料又は表面改
質球状活性炭試料の使用量が0.500gの場合のDL−β−アミノイソ酪酸吸着試験に
おけるDL−β−アミノイソ酪酸残存量のそれぞれのデータに基づいて、以下の計算式:
A=(10−Tr)/(10−Ur)
(ここで、Aは選択吸着率であり、TrはDL−β−アミノイソ酪酸の残存量であり、U
rはα−アミラーゼの残存量である)
から計算した。
実施例1
球状のフェノール樹脂(粒子径=10〜700μm:商品名「高機能真球樹脂マリリン
HF500タイプ」;群栄化学株式会社製)を目開き250μmの篩で篩分し、微粉末を
除去した後、微粉除去した球状のフェノール樹脂150gを目皿付き石英製縦型反応管に
入れ、窒素ガス気流下1.5時間で350℃まで昇温し、更に900℃まで6時間で昇温
した後、900℃で1時間保持して、球状炭素質材料68.1gを得た。その後、窒素ガ
ス(3NL/min)と水蒸気(2.5NL/min)との混合ガス雰囲気中、900℃
で賦活処理を行った。球状活性炭の充填密度が0.5mL/gまで減少した時点で賦活処
理を終了とし、球状活性炭29.9g(収率19.9wt%)を得た。
得られた球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
実施例2
実施例1で用いたフェノール樹脂(群栄化学株式会社製)に代えて、住友ベークライト
株式会社製の球状のフェノール樹脂(平均粒径=700μm:商品名「フェノール樹脂球
状硬化物 ACSシリーズ PR−ACS−2−50C」)を使用したこと以外は、実施
例1に記載の方法を繰り返して、球状活性炭を得た。収率は26.5%であった。
得られた球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
実施例3
実施例1で得られた球状活性炭を更に流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と
酸素との混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分間酸化処理し、次に流動床にて窒素ガ
ス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
実施例4
出発材料として、実施例2で得られた球状活性炭を使用したこと以外は、実施例3に記
載の方法を繰り返して、表面改質球状活性炭を得た。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
実施例5
フェノール樹脂に替えてイオン交換性樹脂(スチレン系;有効径=0.50〜0.65
mm:商品名「Amberlite15WET」;オルガノ株式会社製)を使用したこと
以外は、実施例3に記載の方法を繰り返して、表面改質球状活性炭を得た。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
また、得られた表面改質球状活性炭の表面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(50倍)
を図1に示す。更に、得られた表面改質球状活性炭の断面構造を示す走査型電子顕微鏡写
真(200倍)を図2に示す。
比較例1
石油系ピッチ(軟化点=210℃;キノリン不溶分=1重量%以下;H/C原子比=0
.63)68kgと、ナフタレン32kgとを、攪拌翼のついた内容積300Lの耐圧容
器に仕込み、180℃で溶融混合を行った後、80〜90℃に冷却して押し出し、紐状成
形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が約1〜2になるように破砕した
。
0.23重量%のポリビニルアルコール(ケン化度=88%)を溶解して93℃に加熱
した水溶液中に、前記の破砕物を投入し、攪拌分散により球状化した後、前記のポリビニ
ルアルコール水溶液を水で置換することにより冷却し、20℃で3時間冷却し、ピッチの
固化及びナフタレン結晶の析出を行い、球状ピッチ成形体スラリーを得た。
大部分の水をろ過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍重量のn−ヘキサンでピ
ッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流
動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温した後、235℃にて1時間保
持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。得られた多孔性球状酸
化ピッチの酸素含有率は14重量%であった。
続いて、多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用い、50vol%の水蒸気を含む窒素ガ
ス雰囲気中900℃で170分間賦活処理して球状活性炭を得、更にこれを流動床にて、
酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で470℃で3時間15分
間、酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、
表面改質球状活性炭を得た。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
得られた表面改質球状活性炭の表面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(50倍)を図3
に示す。更に、得られた表面改質球状活性炭の断面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(2
00倍)を図4に示す。
比較例2
球状活性炭の酸化処理及び還元処理を行わないこと以外は、比較例1に記載の方法を繰
り返して、球状活性炭を得た。
得られた球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
表1
前記表1に記載の「細孔容積(Hg pore)」は、水銀圧入法により求めた細孔直
径20〜1000nmの範囲の細孔容積に相当する。
前記表1に記載の「SSA(BET式)」は、参考として記載した比表面積の測定値で
あり、以下の方法によって測定した。
ラングミュアの式による比表面積の測定と同様にして−196℃で球状活性炭試料又は
表面改質球状活性炭試料に窒素を吸着させ、窒素分圧と吸着量の関係(吸着等温線)を測
定する。
窒素の相対圧力をp、その時の吸着量をv(cm3/g STP)とし、BETプロッ
トを行う。すなわち、縦軸にp/(v(1−p))、横軸にpを取り、pが0.05〜0
.3の範囲でプロットし、そのときの傾きb(単位=g/cm3)、及び切片c(単位=
g/cm3)から、比表面積S(単位=m2/g)は下記の式により求められる。
ここで、MAは窒素分子の断面積で0.162nm2を用いた。
表2
薬理効果確認試験1:腎疾患の改善作用
腎臓の3/4を摘出して作製した腎不全モデルラットを用い、本発明の経口投与用吸着
剤の投与による腎不全に対する薬理効果確認試験を行った。試料としては、前記実施例1
及び実施例3で得られた経口投与用吸着剤を使用した。確認試験は、モデルラット作製か
ら6週間経過時点で群間に偏りのないように、対照群(6匹;以下C1群と呼ぶ)、実施
例1の経口投与用吸着剤投与群(6匹;以下P1群と呼ぶ)及び実施例3の経口投与用吸
着剤投与群(6匹;以下与P2群と呼ぶ)に分けた。
各群に粉末飼料を与えた。各群に対する給餌量はC1群の2〜3日間の平均摂餌量を基
準にして決めた。P1群及びP2群に対しては、前記C1群と同様の粉末飼料に、経口投
与用吸着剤5重量%を追加混合して与えた。経口投与用吸着剤の投与を開始してから8週
目に、血清中のクレアチニン、尿素窒素、尿中のクレアチニン、クレアチニン・クリアラ
ンス、及び蛋白排泄量を測定した。なお、腎臓を摘出していない正常ラット(6匹)につ
いても同様の実験を行った(正常群)。
結果を図5〜図8に示す。血清中のクレアチニン(図5)及び尿素窒素(図6)は、C
1群に比してP1群及びP2群において、投与開始から8週間経過時でそれぞれ有意に低
値を示した。腎機能の指標であるクレアチニン・クリアランス(図7)は、C1群におい
て低下が認められ、P1群及びP2群においては、C1群で認められた低下に対して有意
な抑制が認められた。一方、尿細管機能の指標となる蛋白排泄量(図8)は、C1群で増
加が認められたが、P1群及びP2群においては、その増加を有意に抑制することが認め
られた。なお、尿中のクレアチニンついても同様の結果が得られた。
以上の結果から、本発明の経口投与用吸着剤は、慢性腎不全の進行を抑制、あるいは改
善し、腎機能の低下を防止及び維持することができることが明らかとなった。
薬理効果確認試験2:肝疾患の改善作用
四塩化炭素誘発肝疾患モデルラットを用い、本発明の経口投与用吸着剤の投与による肝
疾患に対する薬理効果確認試験を行った。試料としては、前記実施例1及び実施例3で得
られた経口投与用吸着剤を用いた。
具体的には、Sprague−Dauleyラット(日本クレア製;雄性7週齢)を用
い、四塩化炭素を12mg/kgの量で、週2回の割合にて、本薬理効果確認試験の終了
時まで(約4ヵ月間)皮下投与を継続した。四塩化炭素の投与を開始してから2ヶ月後に
、肝機能の低下が確認されたので、病態が群間に偏りのないように、対照群(6匹;以下
C2群と呼ぶ)、実施例1の経口投与用吸着剤投与群(6匹;以下Q1群と呼ぶ)及び実
施例3の経口投与用吸着剤投与群(6匹;以下与Q2群と呼ぶ)に分けた。
各群に粉末飼料を与えた。各群に対する給餌量はC2群の2〜3日間の平均摂餌量を基
準にして決めた。Q1群及びQ2群に対しては、前記C2群と同様の粉末飼料に、経口投
与用吸着剤5重量%を追加混合して、群分け後2ヶ月間投与した。四塩化炭素を投与しな
い正常ラットについても同様の実験を行った(正常群)。
経口投与用吸着剤投与を開始してから投与実験が完了するまでの約2ヶ月間にわたり、
ICG(Indocyanine green:インドシアニングリーン)、GOT(g
lutamic−oxaloacetic transaminase;グルタミン酸−
オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)、及びGPT(glutamic−pyruvic
transaminase;グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ)を測定した
。経口投与用吸着剤の投与開始から2ヶ月後の結果を図9(ICG)、図10(GOT)
、及び図11(GPT)に示す。肝実質機能を反映するICGテストを比較すると、C2
群に比して、Q1群及びQ2群は、いずれも有意に低値を示した。更に、逸脱酵素である
GOT及びGPTでも、C2群に比して、Q1群及びQ2群は、いずれも有意に低値を示
した。
以上の結果から、本発明の経口投与用吸着剤は、肝機能の低下を改善することができる
ことが明らかとなった。
産業上の利用可能性
本発明による経口投与用吸着剤は、熱硬化性樹脂を炭素源として製造され、特異な細孔
構造を有しているので、経口服用した場合に、消化酵素等の体内の有益成分の吸着性が少
ないにもかかわらず、有毒な毒性物質(Toxin)の消化器系内における吸着性能が優
れるという選択吸着特性を有し、従来の経口投与用吸着剤と比較すると、前記の選択吸着
特性が著しく向上する。
本発明の経口投与用吸着剤は、腎疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用い
るか、あるいは、肝疾患の治療用又は予防用吸着剤として用いることができる。
腎疾患としては、例えば、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢
性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、
腎硬化症、間質性腎炎、細尿管症、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧
、若しくは高血圧症候群、あるいは前記の原疾患に伴う続発性腎疾患、更に、透析前の軽
度腎不全を挙げることができ、透析前の軽度腎不全の病態改善や透析中の病態改善にも用
いることができる(「臨床腎臓学」朝倉書店、本田西男、小磯謙吉、黒川清、1990年
版及び「腎臓病学」医学書院、尾前照雄、藤見惺編集、1981年版参照)。
また、肝疾患としては、例えば、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性
肝炎、肝線維症、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝炎、薬剤アレルギー性肝障害、原発性胆汁
性肝硬変、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常を挙げることができる。その他、体内
に存在する有害物質による病気、すなわち、精神病等の治療にも用いることができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の
範囲に含まれる。
Claims (11)
- 熱硬化性樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01〜1mmであり、そしてラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m2/g以上である球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤。
- 全塩基性基が0.40meq/g以上の球状活性炭からなる請求項1に記載の経口投与用吸着剤。
- 熱硬化性樹脂を炭素源として製造され、直径が0.01〜1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m2/g以上であり、全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり、そして全塩基性基が0.40〜1.10meq/gである表面改質球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、腎疾患治療又は予防剤。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、肝疾患治療又は予防剤。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤と薬剤学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、腎疾患治療又は予防剤。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤と薬剤学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、肝疾患治療又は予防剤。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤の有効量を、腎疾患治療又は予防が必要な患者に投与することを含む、腎疾患治療又は予防方法。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤の有効量を、肝疾患治療又は予防が必要な患者に投与することを含む、肝疾患治療又は予防方法。
- 腎疾患治療又は予防剤の製造のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤の使用。
- 肝疾患治療又は予防剤の製造のための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の経口投与用吸着剤の使用。
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CN113443625A (zh) * | 2021-06-30 | 2021-09-28 | 华东理工大学 | 一种聚苯乙烯树脂基球形活性炭的制备方法 |
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-
2005
- 2005-11-28 JP JP2005342670A patent/JP2006070047A/ja active Pending
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