以下、本発明のエルボ及びサイフォン雨樋システムの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は模式的なものである。
(第一実施形態)
図1に示すように、本発明を適用した第一実施形態のサイフォン雨樋システム101は、略水平になるよう軒先に固定された軒樋10、軒樋10の下流側に接続されたエルボ(第1エルボ)114、エルボ114の下流側の端部と接続された呼び樋16、呼び樋16の下流側の端部16aと接続されたエルボ(第2エルボ)118、エルボ118の下流側の端部18bと接続された竪樋20、を備える。
軒樋10は、不図示の建築物の軒下に設けられる。軒樋10は、上方に向けて開口し、D1方向に延在する。軒樋10は、D1方向に直交する断面視において、底部10bと、底部10bの幅方向(図1のD2方向)の両側から上方に立ち上がる側壁10s,10sとを有する。サイフォン雨樋システム101は、工場や駅舎などの大きな屋根面積を有する非住宅建築物に用いられることが想定される。このような想定では、大面積の屋根から流れ込む雨水を排水するのに十分な流量を確保するため、底部10bの幅(D2方向の長さ)は少なくとも100mm以上が好ましく、120mm以上がより好ましく、150mm以上がさらに好ましい。底部10bの幅の上限は特に限定されないが、底部10bの幅は300mm以下が好ましい。
底部10bのD1方向(長手方向)の所定の位置には、底部10bを貫通する集水口12が形成されている。D1方向において、底部10bの上面(即ち、軒樋10において内側の面)は、集水口12に向かってわずかに下降する。なお、底部10bの下面は略水平に形成され、且つ底部10bの上面のみが集水口12に向かって下降してもよく、底部10bの厚みはほぼ一定であり、且つ底部10bそのものが集水口12に向かって下降してもよい。
集水口12には、サイフォン雨樋システム101にサイフォン現象を発生させるためのサイフォン発生部50が設けられる。サイフォン発生部50の具体的な構成例としては、図2に示すサイフォンドレン部材51や図3に示すサイフォンドレン部材52が挙げられる。サイフォン発生部50は、集水口12の開口を覆う蓋部材を備えることが好ましい。
図2に示すように、サイフォンドレン部材51は、集水口12の上方に配置される網(蓋部材)61と、落し口70を有して集水口12から下方に延びる装着筒62と、D3方向において網61と装着筒62とを接続し、上面視で落し口70に重ならない位置で周方向に間隔をあけて配置された複数の縦リブ(蓋部材)63と、網61と装着筒62との接続部分から径方向外側に拡径するフランジ上部64と、を備える。網61及び縦リブ63は、集水口12にゴミ等が流入しないようにするためのゴミ除けである。装着筒62の外側の直径は、集水口12に嵌入可能な大きさに設定される。装着筒62の外周面には、雄ねじが形成されている。フランジ上部64は、集水口12の周囲の底部10bの上面に上方から係止する。
サイフォンドレン部材51は、連結部材95を介してエルボ14の受け口30Aに接続される。連結部材95は、上端から径方向の外側に拡径するフランジ下部44と、上端からD3方向に沿って所定の高さだけ下降した位置で内壁面から径方向の内側に突出するリブ46とを備える。フランジ下部44は、集水口12の周囲の底部10bの下面に下方から係止する。リブ46は、連結部材95の内径を一旦縮小するために設けられる。連結部材95の内径が縮小されることによって、ベンチュリ効果と類似した効果が発揮され、満流状態が発生し易くなり、サイフォン現象が良好に発生する。連結部材95の上端からリブ46までの連結部材95の内壁面には、装着筒62の外周面に螺合可能な雌ねじが形成されている。
サイフォンドレン部材51は、装着筒62の雄ねじを連結部材95の雌ねじに螺合させつつ、フランジ上部64とフランジ下部44との間に集水口12の周囲の底部10bを挟み込むことによって、集水口12に装着される。連結部材95の下部には、後述するエルボ114の受け口30Aが外嵌される。連結部材95の下部と受け口30Aは、接着剤等によって接着されてもよく、融着されてもよい。
図3に示すように、サイフォンドレン部材52は、板状に形成された蓋71と、落し口80を構成し、上面視で落し口80に重ならない位置で蓋71の外周に沿って間隔をあけて配置され、かつ蓋71の底面から下方に延びて蓋71を支持する複数の縦リブ73と、蓋71の底面から垂下すると共に径方向に沿って上面視で放射状に形成されたガイド部78と、蓋71の外周に沿って間隔をあけて配置され、かつ蓋71の上面から上方に突出するように設けられた位置決めリブ77と、を備える。ガイド部78の下端は、側面視で蓋71の径方向中心から外側に進むに従って漸次、蓋71に近づくように形成され、テーパー状又はベルマウス形状をなす。蓋71によって、エルボ114ひいては竪樋20への空気の巻き込みが少なくなるため、満流状態が発生し易くなり、サイフォン現象がより良好に発生する。
サイフォンドレン部材52は、連結部材90を介してエルボ14の受け口30Aに接続される。連結部材90は、受け口30Aに内嵌可能な筒状部92と、筒状部92の上端から拡径するフランジ94と、を備える。連結部材90は、筒状部92が集水口12に挿通すると共に、フランジ94の底面が集水口12の周囲の底部10bに載った状態で、底部10bに係止される。複数の縦リブ73の底面は、フランジ94の上面に沿った形状に加工されている。複数の縦リブ73とフランジ94、及び筒状部92と受け口30Aは、それぞれ、接着剤等によって接着されてもよく、融着されてもよい。
エルボ114は、サイフォン発生部50の下流側に設置される継手である。図1に示すように、サイフォン発生部50が設けられた軒樋10の下流側(即ち、雨水が集まる側)の集水口12には、エルボ14の一方の受け口(一端)30Aが接続される。
図4に示すように、エルボ114は、曲管部132と、曲管部132の両端に設けられた受け口30A,30Bとを備える。曲管部132は、側面視でほぼ90°に屈曲する。
曲管部132の管軸Aを含む断面(平面、図4の紙面)で見たときの曲管部132の内周側の内壁面133の曲率半径R1及び外壁面134の曲率半径R2は、少なくとも64mmより大きく、且つ125mよりも小さい。受け口30Aから流入した雨水Wの流速を低下させず、雨水Wをより円滑に流動させる点をふまえたうえで、曲率半径R1,R2は、収まりや輸送などの点からは64mmよりも大きく、且つ90mmよりも小さいことが好ましく、排水性能の点からは80mmよりも大きく、且つ100mmよりも小さいことが好ましい。
受け口30Aの中心C1を通る軸線J2と受け口30Bの中心C2を通る軸線J3は、側面視において所定の角度θで交差する。角度θは90°以上135°以下が好ましく、例えば91.1°とされている。角度θを前述のように設定することによって、雨水Wの流れをスムーズにできる。
中心C1,C2同士の直線距離をHとし、受け口30A,30Bの中空部の直径をDとし、曲管部132の中空部の直径をEとする。距離Hは、例えば99mm以上263mm以下とされ、130mm以上190mm以下が好ましい。直径Dは、88.65mmを一例として、52mm以上155mm以下が好ましく、75mm以上110mm以下がより好ましい。直径Eは、直径Eに起因する曲管部132の断面積が呼び樋16の中空部の断面積を超えないように、77.55mmを一例として適宜設定される。
エルボ114は、工場や駅舎などの大きな屋根面積を有する非住宅建築物に用いられるサイフォン雨樋システム101の一部である。曲管部132の開口面積は、50cm2以上150cm2以下が好ましく、65cm2以上125cm2以下がより好ましく、75cm2以上100cm2以下がさらに好ましい。距離H及び直径D,Eをそれぞれ前述の範囲内に設定することによって、上述した内壁面133の曲率半径を達成しつつ、排水に最低限必要な流量及びエルボ114の寸法を確保し、サイフォン雨樋システム101の収まりを良くすることができる。
曲管部132の外周側の内壁面135の曲率半径R3及び外壁面136の曲率半径R4は、曲率半径R1,R2及び距離H及び直径D,E等に合わせて適宜設定されている。例えば、直径D=88.65mm、直径E=77.55mm、曲率半径R2=83.7mm、受け口30A,30Bの外周面の直径を96.25mmとした場合、曲率半径R4=163.3mmに設定できる。軸線J1に沿った受け口30Aの長さ及び軸線J2に沿った受け口30Bの長さをTとする。長さTは、40mmを一例として、25mm以上80mm以下が好ましく、35mm以上55mm以下がより好ましい。長さTが前述の上限値以下であることによって、エルボ114を射出成型で成形した際に、コアを抜きやすく、エルボ114が良好に製造可能になる。また、長さTが前述の下限値以下であることによって、サイフォン作用が発生した際の高い圧力や振動によって呼び樋16が外れる、あるいは受け口30Bと呼び樋16との間の隙間から水が漏れるのを防ぐことができる。なお、エルボ114の各パラメータは例示した数値に限定されず、前述のように好ましい範囲内に適宜設定されることが重要である。
ここで、内壁面133,135の曲率中心Qを通って水平方向に沿う面を、基準面S1とする。曲率中心Qを通って鉛直方向に沿う面を、基準面S1とする。側面視において、水平方向に沿う面と鉛直方向に沿う面のそれぞれと45°をなし、曲率中心Qを通る面を基準面S3とする。基準面S3と内壁面133が交差する位置を基準位置P1とする。側面視において、曲率中心Qと基準位置P1とを結ぶ仮想線L1と、曲率中心Qと内壁面133の上流側の端部の位置P2とを結ぶ仮想線L2とのなす角度をα1とする。仮想線L1と、曲率中心Qと内壁面133の下流側の端部の位置P3とを結ぶ仮想線L3とのなす角度をα2とする。角度α1,α2はそれぞれ、10°以上30°以下が好ましい。角度α1,α2は、等しいことが好ましい。
基準面S3と内壁面135が交差する位置を基準位置P4とする。側面視において、曲率中心Qと基準位置P4とを結ぶ仮想線L4と、曲率中心Qと内壁面135の上流側の端部の位置P5とを結ぶ仮想線L5とのなす角度をβ1とする。仮想線L1と、曲率中心Qと内壁面135の下流側の端部の位置P6とを結ぶ仮想線L6とのなす角度をβ2とする。角度β1,β2はそれぞれ、44.25°を一例として、10°以上45°以下が好ましい。角度β1,β2は、互いに等しいことが好ましい。
断面視において、曲率中心Qを中心として基準面S3と上流側の受け口30Aの開口面141とのなす角度をφ1とする。曲率中心Qを中心として基準面S3と下流側の受け口30Bの開口面142とのなす角度をφ2とする。角度φ1,φ2は、それぞれ、10°以上45°以下が好ましい。
上述の構成を備えることによって、エルボ114では、十分な排水量とスムーズな排水流れが実現されると同時に、継手全体の寸法が適度に抑えられる。また、サイフォン現象発生時の振動や強風などによって呼び樋16に外力がかかった場合でも、軒樋10とエルボ114との接合部や、エルボ114自体等にかかる応力を小さくでき、軒樋10やエルボ114の損傷を防止できる。具体的には、底部10bと呼び樋16の中心軸との距離(最短距離)は、140mm未満であることが好ましく、130mm未満であることがより好ましい。
図1に示すように、エルボ114の受け口30Bには、呼び樋16の上流側の端部16aが接続される。呼び樋16は、エルボ114を流下した雨水Wを横引きする部材であり、D2方向に沿って伸びる、又は下流側に進むほどD2方向から離れるようにわずかに離れる直管である。端部16aから呼び樋16の下流側の端部16bまでの長さF1は、0mより大きく、2.0m以下であり、0.6m以上1.5m以下が好ましく、0.6m以上1.0m以下がより好ましい。長さG1が前述の範囲内であることによって、エルボ114から流下した雨水が満水状態で円滑に流下する。
呼び樋16の下流側の端部(他端)16bには、エルボ118の受け口30Aが接続されている。エルボ118は、エルボ114と同一の構成を備える。
エルボ118の受け口30Bには、竪樋20の上流側の端部20aが接続される。竪樋20は、エルボ118を流下した雨水Wを縦引きする部材であり、D3方向(鉛直方向及びその逆の方向)に沿って延びる直管である。竪樋20の下流側の端部20bは、地面Gに接続され、地中に埋設された公知の集水マス(排水機構)180に接続される。集水マス180は、連結管182を介して、下水管184等の排水構造に接続される。集水マス180は、竪樋20より大きな幅を有する。端部20aから端部20bまでの長さF2は、2.0m以上であり、3.0m以上が好ましく、4.0m以上がより好ましい。長さF2が前述の範囲内であることによって、竪樋20におけるサイフォン現象が良好に発生及び維持される。
竪樋20の長さF2が長くなると、下流側の端部20bに流下する雨水Wの排水量が多くなり、集水マス180の内部に雨水Wが勢いよく流入する。この点をふまえ、図5に示すように、下流側の端部20bに、エルボ141と、D2方向に沿って延びる直管142、拡径継手144及び直管146と、エルボ120がこの順に接続されることが好ましい。
竪樋20の下流側の端部20bには、エルボ141(エルボ140A)の一方の受け口30Aが接続される。エルボ141は、組み合わせエルボであり、二つのエルボ140A,140Bを備える。図6に示すように、エルボ140A,140Bのそれぞれの曲管部32は、側面視で略45°に屈曲する。即ち、受け口30A,30Bのそれぞれを通る軸線J3,J4は、側面視において挟角45°で交差する。図5に示すように、二つのエルボ140A,140Bの組み合わせによって、エルボ140Aの受け口30Aを通る軸線J3とエルボ140Bの受け口30Bを通る軸線J4とが側面視において90°で交差し、全体として90°曲がりのエルボ141が構成される。
エルボ141(エルボ140B)の他方の受け口30Bには、直管142の上流側の端部が接続される。直管142の下流側の端部には、拡径継手144の上流側の受け口が接続される。拡径継手144の下流側の受け口には、直管146の上流側の端部が接続される。直管146の中空部の直径は、直管142の中空部の直径より大きい。直管146は、D2方向に沿う長手方向の途中で集水マス180を貫通する。直管146の下流側の端部は、集水マス180の内部に配置される。直管146の下流側の端部には、エルボ120の受け口30Aが接続される。エルボ120は、エルボ114と同一の構成を備える。エルボ120の受け口30Bは、下側に開口する。
図5に示す構成では、D3方向の下流側に向けて竪樋20を流下した雨水W(図5では省略)が、エルボ141によってD2方向の下流側に向けて曲がりつつ流下し、直管142、拡径継手144、及び直管146をD2方向の下流側に向けて略水平に流下する。さらに、雨水Wは、エルボ120からD3方向の下流側、即ち下方に放出され、集水マス180に貯留される。図5に示す構成によれば、エルボ141、直管142、拡径継手144、及び直管146を備えることによって、高速で竪樋20を流下した雨水Wの流速及び排水量を適度に抑えられる。また、図5に示す構成によれば、下流側の最先端にエルボ120を備え、エルボ120の受け口30Bが下方に向けて開口することによって、雨水Wが集水マス180の側壁に衝突するのを防ぎ、それによって集水マス180の側壁で上方に跳ね上げられることによる雨水Wの地上への噴出しを抑えられる。
例えば、サイフォン雨樋システム101が8階建ての建築物等に配置されると、竪樋20への排水量は20L/sec程度に達する場合がある。図5に示す構成では、竪樋20の中空部の直径が75mm、直管146の中空部の直径が100mm、連結管182の中空部の直径が150mmで、連結管182のD2方向における長さが8mである場合でも、エルボ120の受け口30Bから集水マス180に放出された雨水Wが集水マス180の上方に噴き出さず、連結管182からも良好に排水されることが確認されている。
また、図5に示す構成のうちエルボ120は、図7に示すように、エルボ140Cであるとより好ましい。エルボ140Cは、エルボ140A,140Bと同一の構成を備える。エルボ140の受け口30Bは、軸線J4(図6参照)の向きに応じて斜め下側に開口する。エルボ140の受け口30Bが斜め下側に開口しているので、エルボ140Cから放出される雨水Wの勢いによって直管142、拡径継手144、及び直管146がD3方向の上側に浮き上がるのを防止し、エルボ141への負荷を軽減できる。
また、図7に示す構成において、図8に示すように、エルボ140Cの受け口30Bは、D2方向(即ち、受け口30Aの軸線J3(図6参照)に沿う方向)から見て、斜め下側に開口してもよい。このように斜め下側に開口することによって、エルボ120の受け口30Bから集水マス180に放出された雨水Wが集水マス180の内部で旋回し、旋回した雨水Wによって集水マス180の底に溜まったゴミや泥が巻き上がり、雨水Wと共にゴミや泥が連結管182を通って集水マス180の外部に効率良く排出される。なお、同様の作用効果から、図5に示す構成においても、エルボ120の受け口30Bは、D2方向から見て、斜め下側に開口してもよい。
また、図7に示す構成において、図9に示すように、平面視において、エルボ140C(特に、受け口30B)は、集水マス180の中心より径方向の外側に配置されることが好ましい。エルボ140Cがこのように配置されることによって、エルボ120の受け口30Bから集水マス180に放出された雨水Wによる集水マス180の内部での旋回流が起きやすく、雨水Wと共に集水マス180の内部に溜まったゴミや泥が連結管182を通って集水マス180の外部に効率良く排出される。なお、同様の作用効果から、図5に示す構成において、エルボ120の受け口30BがD2方向から見て、斜め下側に開口している場合、エルボ120(特に、受け口30B)は、集水マス180の中心より径方向の外側に配置されることが好ましい。
エルボ114,118をはじめとするサイフォン雨樋システム101の各構成要素の素材は、例えば塩化ビニルであり、特に硬質塩化ビニルが好ましい。
以上説明した第一実施形態のエルボ14,18及びサイフォン雨樋システム101によれば、内壁面133及び外壁面134の曲率半径が64mmよりも大きく、かつ、100mmよりも小さい。このことによって、集水口12からエルボ114,118のそれぞれの受け口30Aに流入した雨水Wを内壁面133で滞らせずに、受け口30Bに向かって円滑に流すことができる。
また、第一実施形態のサイフォン雨樋システム101では、角度α1,α2,β1,β2,φ1,φ2を前述の範囲内で適宜設定することによって、サイフォン発生部50からの雨水Wの流下方向を、D3方向からD2方向へと仮想線L1を基準としてほぼ同率で変えるので、管軸Aに直交する断面において流れの分布の対称性を高くし、流下する雨水Wの流速の低下を確実に抑えることができる。また、エルボ114,118の大きさを適度に抑え、サイフォン雨樋システム1の収まりを良くすることができる。
また、第一実施形態のサイフォン雨樋システム101では、集水口12にエルボ114の受け口30Aが接続され、呼び樋16の長さが0mより大きく、且つ2.0m以内であり、竪樋20の長さは2.0m以上である。このような構成によれば、軒樋10によって集水口12に集められた雨水Wを底部10bと網61や蓋71との間、且つ複数の縦リブ63,73の間から落し口70,80に導き、集水口12及びエルボ114に満水状態で流入させることができる。軒樋10における雨水Wの水位がサイフォン発生部50の蓋71より低い状態(以下、自然流下状態とする、図10参照)から、軒樋10における雨水Wの水位が蓋71以上である状態(以下、サイフォン発生状態とする)になるときに、サイフォン発生部50からの雨水Wがエルボ114に直接流入する。軒樋10における雨水Wの水位が蓋71とほぼ同じである初期のサイフォン発生状態では、図11に示すように、サイフォン発生部50でサイフォン現象が生じ、集水口12より下流側ではエルボ114が満水状態になり、エルボ114の上部に空気を残留させない。この後、図12に示すように、サイフォン発生部50からの排水量が最大になる(すなわち、軒樋10における雨水Wの水位が軒樋10で許容される最も高い水位付近になる)と、満水状態の雨水Wによってエルボの114,118の内部で自己サイフォンが発生する。また、下流側の雨水Wの引張力によって、上流側の雨水Wが下流側に引かれ、図12に示すように、雨水Wが呼び樋16、エルボ118及び竪樋20の内部を満水状態で流下する。
第一実施形態のサイフォン雨樋システム101では、サイフォン発生部50とエルボ114とが互いに近接するので、図12に例示したサイフォン発生状態から図13に示す自然流下状態になっても、サイフォン発生部50の径方向の外周から中心に進むに従って落ち込む空気の巻き込み部分が浅いので、サイフォン作用が途切れず、維持される。ゆえに、図13に示す自然流下状態と図14に示すサイフォン発生状態との移り変わりがあっても、エルボ114でのサイフォン作用を途切れさせることなく、良好に維持できる。従って、第一実施形態のエルボ114,118及びサイフォン雨樋システム101によれば、雨水Wを円滑に流下させることができる。
なお、第一実施形態のサイフォン雨樋システム101は、軒樋10と竪樋20との間に二つのエルボ114,118を備え、エルボ114、118間に一つの呼び樋16を備える。しかしながら、サイフォン雨樋システム101は、このような構成を備える雨樋システムに限られず、少なくとも二つのエルボと、二つ以上のエルボ間に少なくとも一つ以上の呼び樋16と、を備えればよい。軒樋10と竪樋20との間には、三つ以上のエルボと、三つ以上のエルボ同士で連結された二つ以上の呼び樋16と、を備えてもよい。
(第二実施形態)
次に、本発明を適用した第二実施形態のサイフォン雨樋システムについて説明する。図15に示すサイフォン雨樋システム102の構成要素において、サイフォン雨樋システム101の構成要素と同一のものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図15に示すように、第二実施形態のサイフォン雨樋システム102は、サイフォン雨樋システム101の構成に加え、竪樋20の下流側に接続される竪樋21及び合流管28と、竪樋20,21及び合流管28を連結するチーズ140とを備える。サイフォン雨樋システム102では、エルボ118の下流側の竪樋として、二本の竪樋20,21が設けられる。すなわち、竪樋20,21を一つの竪樋としてまとめると、サイフォン雨樋システム102では、竪樋20,21のうちの上流側の竪樋20の端部(一端)20aと下流側の竪樋21の下流側の端部(他端)21bとの間の合流位置X1でこれらの竪樋20,21に合流管28が交差する。端部20aから合流位置X1までの距離F3は、2.0m以上である。
チーズ140は、D3方向の下側に向けて竪樋20を流下した雨水W及び合流管28を流下した雨水Wを竪樋21に流下させるために設置される継手である。チーズ140は、D3方向に沿って直線状に延びる本管145と、本管145の両端に設けられた受け口130A,130Bと、本管145のD3方向の途中からD2方向に沿って分岐すると共に突出する分岐管143と、分岐管143の先端に設けられた受け口130Cとを備える。竪樋20の下流側の端部20bは、受け口130Aに接続される。竪樋21の上流側の端部21aは、受け口130Bに接続される。竪樋21の下流側の端部21bは、地面Gに接続され、地中に埋設された公知の集水マス180に接続される。
合流管28は、不図示の雨樋上流部を流下した雨水Wを横引きする部材であり、D2方向に沿って延びる。合流管28の下流側の端部28bは、受け口130Cに接続される。図示していないが、合流管28より上流側の構成は、特に限定されない。例えば、合流管28の上流側に、軒樋10、エルボ114、呼び樋16、エルボ118、竪樋20と同様の構成を備えてもよい。
第二実施形態のエルボ114,118は、第一実施形態のエルボ114,118と同様の構成を備えるので、同様の作用効果が得られる。また、第二実施形態のサイフォン雨樋システム102は、集水口12にエルボ114の受け口30Aが接続され、呼び樋16の長さが0mより大きく、且つ1.0m以内であり、竪樋20の上流側の端部20aから合流位置X1までの距離(すなわち、竪樋20の長さ)は2.0m以上である。このような構成によれば、図13に示す自然流下状態と図14に示すサイフォン発生状態との移り変わりがあっても、エルボ114でのサイフォン作用を途切れさせずに(図13及び図14)、良好に維持できる。従って、第二実施形態のエルボ114,118及びサイフォン雨樋システム102によれば、雨水を円滑に流下させることができる。
なお、第二実施形態と同様に、第二実施形態のサイフォン雨樋システム101においても、軒樋10と竪樋20との間に、両端にエルボ110を接続した呼び樋16を備え、上流側のエルボ110が軒樋10の底部10bと接続され、下流側のエルボ110と竪樋20とが接続されているが、これに限るものではなく、少なくとも二つのエルボ110と、当該二つ以上のエルボ110間に少なくとも一つ以上の呼び樋16とを備えていればよく、軒樋10と竪樋20との間に三つ以上のエルボ110と、当該三つ以上のエルボ110同士の間に二つ以上の呼び樋16と、を備えてもよい。
また、上述のサイフォン雨樋システム102では、合流位置X1は一か所のみであるが、合流位置Xは複数か所に設けられてもよい。合流位置Xが複数設けられた場合は、竪樋20の上流側の端部20aから、複数の合流位置Xのうち最も上流側の合流位置X1までの距離とする。なお、第一実施形態のサイフォン雨樋システム101及び第二実施形態のサイフォン雨樋システム102のように、本発明のサイフォン雨樋システムでは、竪樋20の上流側の端部20aから、雨水Wの流下方向に何らかの変化が生じる位置までの距離(すなわち、竪樋20の長さ)を2.0m以上とする。雨水Wの流下方向に何らかの変化が生じる例としては、第一実施形態のように「竪樋20より大きな幅を有する集水マス180に放射される」こと、第二実施形態のように「合流管28と合流する」こと、をはじめとし、「竪樋20の下流側の端部20bにエルボ114と同様の構成を備えたエルボや、エルボ141を接続する(図5及び図7参照)」、などが広く含まれる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、本発明における雨樋上流部は、軒樋10に限定されず、集水口が形成可能、且つサイフォン発生部を設けることができるものであればよく、あらゆる樋部材や集水器を含む。例えば、雨樋上流部は、コンクリート製の建築物の屋根スラブに形成された排水溝と、建築物の屋根スラブを貫通するように埋設されたエルボ114、呼び樋16、エルボ118および竪樋20と、を備えてもよい。このようなサイフォン排水システムでは、サイフォン発生部50が排水溝の底面且つエルボ114の上部に設けられてもよい。
また、サイフォン発生部50の構成は、上述のサイフォンドレン部材51,52に限定されず、雨水を集水口12に満水状態で流入させることができる構成であればよく、例えば、特開2012-132192に記載されたような水を貯留させる水溜め容器によってサイフォンを発生させる部材などが挙げられる。このような部材の下流側に、本発明のエルボを設置してもよい。任意の部材を設けなくとも雨水が集水口12に満水状態で流入可能であれば、集水口12がサイフォン発生部として機能し得る。
また、本発明のサイフォン雨樋システムは、軒樋10と呼び樋16との間、および呼び樋16と竪樋20との間に、必ずしもエルボ114,118を備えなくてもよく、雨水の流速を低下させなければ、その他のエルボや直角継手を備えてもよい。
続いて、本発明に係るエルボの実施例について説明する。なお、本発明に係るエルボの構成及び作用効果は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図16に示すように、第一実施形態のサイフォン雨樋システム101の実験用モデルを用意し、所定の量の水を軒樋10に流入させ、サイフォン発生の様子を観察すると共に、軒樋10における水位を測定した。軒樋10は、D1方向に沿って15mの長さを有する。サイフォン発生部50は、軒樋10のD1方向の一方の端部(図16では、D1方向の手前側の端部)近傍に設けた。軒樋10の限界水位は、150mmとした。軒樋10の水位は、水位測定計を用いて、サイフォン発生部50からD1方向に沿って距離Yだけ離れた位置で測定し、距離Yは、0.4m、5m、14mの3種類で変化させた。エルボ114,118の断面視における内壁面133の曲率半径を83.7mmとし、曲管部132の開口面積を5410mm2とした。サイフォン雨樋システム1の軒樋10、サイフォン発生部50、及びエルボ114の素材は、硬質塩化ビニルとした。軒樋10への排水量を4L/sec、8L/sec、12L/sec、16L/sec、20L/secの5種類で変化させた。呼び樋16の長さF1は、図16に実線で示す0.6mから、1.0m、1.5m、2.0mの4種類で変化させた。竪樋20の長さF2は、2.4mで固定した。竪樋20から排出された水は、容器で汲み取った。
図17は、軒樋10への排水量を5種類で変化させた際に、軒樋10の水位について、距離Y及び長さF1による変化を示すグラフである。図17に示すように、軒樋10の長さが15m確保されても、呼び樋16が長くなると、水を下流側へ引き込み難くなる。具体的には、呼び樋16の長さF1=0.6m,1.0mのそれぞれの場合では、軒樋10への排水量及び距離Yが大きくなる程、軒樋10における水位は上昇するものの、軒樋10の限界水位である150mm未満の範囲内に収まった。長さF1が1mを超えたあたりからやや排水性能が低下した。長さF1=1.5mの場合は、軒樋10への排水量が16L/secまでであれば、軒樋10における水位は150mm未満の範囲内に収まるが、20L/secになると水が軒樋10から溢れ、測定不可になった。長さF1=2.0mの場合は、軒樋10への排水量が12L/secまでであれば、軒樋10における水位は150mm未満の範囲内に収まるが、軒樋10への排水量が16L/secになると水が軒樋10から溢れ、測定不可になった。
すなわち、実施例1の結果から、呼び樋16の下流側の端部16bまでの長さF1は、少なくとも0mより大きく、2.0m以下であり、0.6m以上1.5m以下が好ましく、0.6m以上1.0m以下がより好ましいことを確認した。
図18は、サイフォン発生部50をNo.1からNo.7までの7種類で変えたときの初期安定性及び排水能力を観察した結果を示す図である。本観察では、距離Yを1.0m、長さF1を3.0mとした。初期安定性の評価については、軒樋10への排水量を12L/secとした時のサイフォン作用発生時水位が90mm以下であれば「〇」、90mmを超えて120mm以下であれば「△」、120mmを超えた場合は「×」とした。排水能力の評価については、軒樋10への排水量を12L/secとした時の最大水位が120mm以下であれば「〇」、120mmを超えて150mm以下であれば「△」、150mmを超えた場合は「×」とした。図18に示すように、7種類のサイフォン発生部の構成には、「ファンネル化」した簡易な構成から、比較的複雑な「蓋部メッシュ」まで種々あるが、例えば「支柱+渦抑止リブ」の初期安定性が「×」になった。一方、排水能力に関しては、例えば「支柱+渦抑止リブ」で「△」であったものの、その他の6種類のサイフォン発生部50の構成では、「〇」であった。このように、サイフォン雨樋システム101では、比較的簡易な構成のものからあらゆる種類のサイフォン発生部50の構成を用いた場合でも、良好な排水特性が得られることを確認した。
(実施例2)
図19に示すように、第二実施形態のサイフォン雨樋システム102の実験用モデルを用意し、所定の量の水を軒樋10A,10Bに流入させ、サイフォン発生の様子を観察すると共に、軒樋10における水位を測定した。合流管28の上流側には、近い方からエルボ119、竪樋20B、エルボ118B、呼び樋16B、エルボ114B、連結部材90、サイフォン発生部52B、軒樋10Bを接続した。エルボ119は、第一実施形態で説明したエルボ114と同じ構成を備える。
軒樋10A,10Bの水位は、前述の水位測定計(図19では省略)を用いて、サイフォン発生部50からD1方向に沿って距離0.4mだけ離れた位置で測定した。エルボ114A,114B,118A,118B,119の断面視における内壁面133の曲率半径を83.7mmとし、曲管部132の開口面積を5410mm2とした。軒樋10Aへの排水量を2L/sec、4L/sec、6L/sec、8L/sec、10L/sec、12L/sec、14L/secの7種類で変化させた。軒樋10Bへの排水量(すなわち、合流管28への排水量)を4L/sec、2L/sec、0L/sec(すなわち、合流管28からは水が流入しない状態)の3種類で変化させた。呼び樋16A,16Bの長さF1は、0.6mに固定した。竪樋20の上流側の端部から合流位置X1までの距離F3は、チーズ140の位置を竪樋の長手方向において変化させることによって、0m(すなわち、エルボ118Aの下流側の受け口に、短管を内嵌させてチーズ140の上流側の受け口が当接した状態)、3.0m、15mの3種類で変化させた。竪樋21から排出された水は、容器で汲み取った。
図20は、軒樋10A(本管)への排水量を7種類で変化させた際に、軒樋10Aの水位について、合流管28(枝管)への排水量及び距離F3による変化を示すグラフである。図20に示すように、合流管28への水の流入が少量であると、各種継手や樋部材の中空部の水中に空気が入ってしまい、本管側のサイフォン現象が発揮されない。具体的には、合流管28への排水量が小さくなる、又は距離Yが大きく程、軒樋10Aにおける水位は上昇した。合流管28への排水量が4L/secである場合は、距離F3が0m、3.0m、15mのいずれか、及び軒樋10Aへの排水量が7種類のいずれであっても、軒樋10Aにおける水位は150mm未満の範囲内に収まった。一方、合流管28への排水量が2L/secに減ると、軒樋10Aへの排水量が12L/sec以下であれば軒樋10Aにおける水位は150mm未満の範囲内に収まるが、軒樋10Aへの排水量が14L/secになると水が軒樋10Aから溢れ、測定不可になった。また、合流管28への排水量が0L/secに減ると、軒樋10Aへの排水量が8L/sec以下であれば軒樋10Aにおける水位は150mm未満の範囲内に収まるが、軒樋10Aへの排水量が10L/secになると水が軒樋10Aから溢れ、測定不可になった。
すなわち、実施例2の結果から、距離F3は2.0m以上が好ましいことを確認した。また、連結管28への排水量は、少なくとも4L/sec以上が好ましいことを確認した。