(第1実施形態)以下、本発明の電動工具の実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る電動工具は、切替え可能な複数の動作モードを有するハンマドリルである。本実施形態に係るハンマドリルが有する動作モードには、少なくとも「ドリルモード」,「ハンマモード」および「ハンマドリルモード」の3つの動作モードが含まれる。ドリルモードでは先端工具に回転力のみが付与され、ハンマモードでは先端工具に打撃力のみが付与される。また、ハンマドリルモードでは、先端工具に回転力および打撃力の両方が付与される。ハンマドリルに装着される先端工具の一例としては、ドリルビットが挙げられる。ドリルビットは、例えば、コンクリートや石材などに穴を開けるときに用いられる。もっとも、ハンマドリルに装着される先端工具はドリルビットに限られず、対象物や対象物に対する作業の種類などに応じて適宜交換される。
図1,図2に示されるように、本実施形態に係るハンマドリル1Aは、本体ハウジング10と,本体ハウジング10の一端側に設けられたハンドルハウジング20と、本体ハウジング10の他端側に設けられたギヤハウジング30と、からなるケーシング2を有する。
図3に示されるように、本体ハウジング10には、先端工具3の駆動源である電動モータ40が収容されている。そこで、以下の説明では、本体ハウジング10を「モータハウジング10」と呼ぶ場合がある。
ハンドルハウジング20の一部は、モータハウジング10を部分的に覆っており、ハンドルハウジング20の他の一部は、作業者に把持される把持部(ハンドル21)を形成している。ギヤハウジング30には、電動モータ40から出力される駆動力を先端工具3に伝達する動力伝達系を構成するギヤ等が収容されている。
再び図2を参照する。モータハウジング10は、相対的に径の小さな小径部10aと相対的に径の大きな大径部10bとを有し、全体として略筒形の外観を呈している。モータハウジング10の開口部11にはインナーカバー12が装着されており、このインナーカバー12のフランジ部12aを挟んでモータハウジング10とギヤハウジング30とが突き合わされている。
つまり、ハンドルハウジング20はモータハウジング10の軸方向一端側に設けられ、ギヤハウジング30はモータハウジング10の軸方向他端側に設けられている。言い換えれば、モータハウジング10は、ハンドルハウジング20とギヤハウジング30との間に挟まれている。以下の説明では、モータハウジング10を基準として、ハンドルハウジング20が設けられている側を「後方」、ギヤハウジング30が設けられている側を「前方」とする。つまり、ハンドルハウジング20,モータハウジング10およびギヤハウジング30は、後方から前方に向かってこの順で並んでいる。
図3に示されるように、モータハウジング10に収容されている電動モータ40は、固定子(ステータ41)と、ステータ41の内側に回転可能に設けられた回転子(ロータ42)と、ロータ42に固定された出力軸(出力シャフト43)と、を有するブラシレスモータである。電動モータ40の大部分は、モータハウジング10の小径部10aに収容されている。
電動モータ40の出力シャフト43はロータ42を貫通して前後方向に延びている。言い換えれば、前後方向とは、出力シャフト43の方向と平行な方向(図3の紙面左右方向)である。また、前後方向とは、先端工具3の長手方向に沿う方向でもある。出力シャフト43の後端側は、モータハウジング10の底部に設けられている軸受44により回転可能に支持されており、出力シャフト43の先端側は、インナーカバー12に保持されている軸受45により回転可能に支持されている。モータハウジング10内には、電動モータ40に加えて、第1回路基板46,第2回路基板47および冷却ファン48が収容されている。これら第1回路基板46,第2回路基板47および冷却ファン48は、モータハウジング10の大径部10bに収容されている。
電動モータ40の出力シャフト43の先端側は、第1回路基板46,第2回路基板47および冷却ファン48をこの順で貫通して軸受45に至っている。さらに、出力シャフト43の先端側は、インナーカバー12を貫通してギヤハウジング30内に進入している。ギヤハウジング30内に進入している出力シャフト43の先端には第1ギヤ49が設けられている。
モータハウジング10に収容されている第1回路基板46にはスイッチング素子を含む駆動回路が搭載され、第2回路基板47にはホール素子を含む制御回路が搭載されている。また、冷却ファン48は出力シャフト43に対して相対回転不能に固定されており、出力シャフト43が回転すると冷却ファン48も回転する。ここで、ハンドルハウジング20およびモータハウジング10には複数の風窓が設けられている。冷却ファン48が回転すると、ハンドルハウジング20に設けられている風窓を通してハンドルハウジング20内に空気が流入する。ハンドルハウジング20内に流入した空気は、モータハウジング10に設けられている風窓を通してモータハウジング10内に流入する。モータハウジング10内に流入した空気は、電動モータ40,第1回路基板46および第2回路基板47をこの順で通過する。つまり、出力シャフト43の回転に伴って冷却ファン48が回転すると、ケーシング2内を後方から前方に向かって流れる冷却風が発生し、電動モータ40,第1回路基板46および第2回路基板47が冷却される。尚、ハンドルハウジング20内には、電解コンデンサ26aと繋がる整流回路が搭載された第3回路基板26(図4)も収容されており、これら電解コンデンサ26aや第3回路基板26も上記冷却風によって冷却される。
図2に示されるように、ハンドルハウジング20は、モータハウジング10の一部(小径部10a)を挟んで対向する2つのハウジング部材(第1ハウジング部材22,第2ハウジング部材23)から構成されている。ここで、第1ハウジング部材22と第2ハウジング部材23の対向方向と平行な方向を左右方向と定義する。また、左右方向および前後方向の双方と交差する方向を上下方向と定義する。つまり、図示されているハンドル21は、上下方向に延在している。
図3に示されるように、ハンドル21にはトリガレバー24が設けられており、トリガレバー24の背後(ハンドルハウジング20の内部)には、トリガスイッチ25が設けられている。トリガレバー24の操作に伴ってトリガスイッチ25がONされると、電動モータ40に電力が供給され、ロータ42および出力シャフト43が回転する。一方、トリガレバー24の操作に伴ってトリガスイッチ25がOFFされると、電動モータ40に対する電力供給が停止され、ロータ42および出力シャフト43の回転が停止する。図1,図2に示されるように、ギヤハウジング30は略円筒形状を有する。図3に示されるように、ギヤハウジング30内には、出力シャフト43と平行に中間シャフト50が収容されている。中間シャフト50の後端は軸受51により回転可能に支持され、先端は軸受52により回転可能に支持されている。中間シャフト50の後端側には、出力シャフト43に設けられている第1ギヤ49と常に噛合う第2ギヤ53が設けられている。
中間シャフト50上には、当該中間シャフト50の回転運動を往復運動に変換する変換機構54が設けられている。変換機構54は、内輪,外輪,転動体および連結棒から構成されている。内輪は中間シャフト50に取り付けられ、外輪は内輪の周囲に設けられ、転動体は内輪と外輪との間に介在し、連結棒は外輪に一体成形されている。内輪の外周面および外輪の内周面には、互いに交差する断面円弧状の溝がそれぞれ形成されている。転動体は、一部が内輪に形成されている溝に嵌合し、他の一部が外輪に形成されている溝に嵌合した状態で内輪と外輪との間に介在している。言い換えれば、内輪と外輪とは転動体を介して相対回転可能に連結されている。
また、中間シャフト50上には、当該中間シャフト50から変換機構54に動力が伝達される締結状態と、中間シャフト50から変換機構54に動力が伝達されない解放状態と、に切り替え可能なクラッチ55が設けられている。
クラッチ55は、中間シャフト50に対して相対回転不能であるとともに、中間シャフト50に沿って前後に移動可能である。クラッチ55が所定位置まで後退すると(内輪に近接すると、)、中間シャフト50と内輪とがクラッチ55を介して接続され、中間シャフト50から内輪に動力が伝達される。一方、クラッチ55が所定位置まで前進すると(内輪から離間すると、)、中間シャフト50と内輪との接続が解除され、中間シャフト50から内輪への動力伝達が遮断される。かかるクラッチ55の切り替えは、作業者によるモード切替操作に応じて実現される。クラッチ55が締結状態のときに中間シャフト50が回転すると内輪が回転する。すると、内輪の表面に沿って外輪が転動し、これに伴って連結棒が前後に揺動する。
中間シャフト50上であってクラッチ55の前方には、第3ギヤ56が設けられている。第3ギヤ56は中間シャフト50に沿って前後に移動可能である。第3ギヤ56が所定位置まで前進すると、第3ギヤ56と中間シャフト50とがスプライン嵌合する。一方、第3ギヤ56が所定位置まで後退すると、第3ギヤ56と中間シャフト50とのスプライン嵌合が解除される。つまり、第3ギヤ56は、中間シャフト50に沿って前後に移動可能であり、中間シャフト50と一体的に回転する連結状態と、中間シャフト50が回転しても回転しない非連結状態と、に切り替わる。かかる第3ギヤ56の切り替えは、作業者によるモード切替操作に応じて実現される。
ギヤハウジング30内には、出力シャフト43および中間シャフト50と平行にシリンダ60が収容されている。シリンダ60には、ピストン61,打撃子62,中間子63が収容されている。これらピストン61,打撃子62,中間子63は、後方から前方に向かってこの順で一列に並んでおり、ピストン61と打撃子62との間には空気室64が設けられている。シリンダ60の前方には、保持部としてのリテーナスリーブ65が設けられている。リテーナスリーブ65の後端部はシリンダ60の先端部に連結されており、シリンダ60とリテーナスリーブ65とは相対回転不能に固定されている。リテーナスリーブ65には、先端工具3の根元部が挿入される。リテーナスリーブ65は、挿入された先端工具の根元部を所定範囲内で直動可能に保持する。
ピストン61の背面には、変換機構54の連結棒が回動可能に連結されており、連結棒が前後に揺動すると、ピストン61がシリンダ60内で前後に往復動する。また、シリンダ60の外周面には、中間シャフト50に設けられている第3ギヤ56と選択的に噛合う第4ギヤ66が設けられている。具体的には、作業者によるモード切替操作によって第3ギヤ56が連結状態に切り替えられると、当該第3ギヤ56と第4ギヤ66とが噛み合う。すると、中間シャフト50の回転力が第3ギヤ56および第4ギヤ66を介してシリンダ60に伝達され、シリンダ60が回転する。一方、作業者によるモード切替操作によって第3ギヤ56が非連結状態に切り替えられると、第3ギヤ56と第4ギヤ66との噛み合いが解除される。すると、中間シャフト50からシリンダ60への回転力の伝達が遮断される。
本実施形態では、作業者によるモード切替操作によってドリルモードが選択されると、クラッチ55が解放状態となり、第3ギヤ56が連結状態となる。この状態で中間シャフト50が回転すると、変換機構54の内輪は回転しない一方、シリンダ60は回転する。この結果、リテーナスリーブ65に保持されている先端工具3に回転力のみが付与される。
一方、作業者によるモード切替操作によってハンマモードが選択されると、クラッチ55が締結状態となり、第3ギヤ56が非連結状態となる。この状態で中間シャフト50が回転すると、内輪は回転する一方、シリンダ60は回転しない。よって、静止しているシリンダ60内でピストン61が往復動し、空気室64の圧力が変動する。すると、空気室64の圧力変動によって打撃子62が駆動され、打撃子62によって中間子63が打撃され、中間子63によって先端工具3が打撃される。この結果、リテーナスリーブ65に保持されている先端工具3に打撃力のみが付与される。
また、作業者によるモード切替操作によってハンマドリルモードが選択されると、クラッチ55が締結状態となり、第3ギヤ56が連結状態となる。この状態で中間シャフト50が回転すると、変換機構54の内輪が回転し、かつ、シリンダ60も回転する。よって、回転するシリンダ60内でピストン61が往復動する。この結果、リテーナスリーブ65に保持されている先端工具3に回転力および打撃力の両方が付与される。
次に、本実施形態に係るハンマドリル1Aに採用されている防振構造について説明する。図1に示されているモータハウジング10とハンドルハウジング20とは、出力シャフト43(図3)の方向に相対移動可能に連結されている。言い換えれば、ハンドルハウジング20は、モータハウジング10に対して前後方向に進退可能である。図4に示されるように、モータハウジング10とハンドルハウジング20との間には約3.0mmの隙間D1が設けられており、ハンドルハウジング20は、隙間D1の範囲内でモータハウジング10に対して進退可能である。
一方、モータハウジング10とハンドルハウジング20との間には、第1の弾性体としてのコイルばね70と、第2の弾性体としてのゴム71,72と、が介在している。ゴム71とゴム72は、上下方向において互いに異なる位置に配置されている。具体的には、ゴム71はモータハウジング10の上部に配置されており、上側弾性体に相当する。一方、ゴム72はモータハウジング10の下部に配置されており、下側弾性体に相当する。そこで、以下の説明では、ゴム71を「上側ゴム71」、ゴム72を「下側ゴム72」と呼ぶ場合がある。尚、コイルばね70は、下側ゴム72と略同一の高さに配置されている。
コイルばね70は、ハンドルハウジング20内のリブとモータハウジング10の底部との間に配置されている。コイルばね70の一端(先端)は、モータハウジング10の底部に当接し、コイルばね70の他端(後端)はハンドルハウジング20のリブに当接している。つまり、コイルばね70の一端(先端)はモータハウジング10に常時当接し、コイルばね70の他端(後端)はハンドルハウジング20に常時当接している。よって、コイルばね70は、モータハウジング10に対するハンドルハウジング20の進退に伴って伸縮する。また、コイルばね70にはプリロードが与えられている。言い換えれば、コイルばね70は、モータハウジング10とハンドルハウジング20との間に圧縮状態で配置されている。このため、モータハウジング10およびハンドルハウジング20には、これらを互いに離間させる方向に作用する力が加えられている。つまり、ハンドルハウジング20は後方に向けて付勢されており、モータハウジング10は前方に向けて付勢されている。よって、ハンドルハウジング20に、当該ハンドルハウジング20をモータハウジング10に近接させる方向(前方)に作用する押付力が加えられていないとき、隙間D1が最大となる。言い換えれば、ハンドルハウジング20に押付力が加えられていないとき、当該ハンドルハウジング20はモータハウジング10に対して最も後退する。以下の説明では、ハンドルハウジング20に押付力が加えられておらず、よって隙間D1が最大である状態を「無負荷状態」と呼ぶ場合がある。また、無負荷状態におけるコイルばね70の全長を「セット長」と呼ぶ場合がある。もっとも、コイルばね70にはプリロードが与えられているので、コイルばね70の「セット長」はコイルばね70の「自然長」よりも短い。本実施形態では、コイルばね70に2.5Kgfのプリロードが与えられている。この結果、コイルばね70は、自然長に対して1.0mm圧縮されている。つまり、コイルばね70のセット長は、自然長-1.0mmである。
図4に示されるように、上側ゴム71および下側ゴム72の一端(先端)はモータハウジング10に常時当接している。具体的には、上側ゴム71および下側ゴム72の一部(先端側)は、モータハウジング10に設けられている保持穴13にそれぞれ嵌合されている。一方、無負荷状態のとき、上側ゴム71および下側ゴム72の後端側には何も当接していない。
図2を参照する。図示されている第1ハウジング部材22および第2ハウジング部材23は、モータハウジング10を横断して第1ハウジング部材22と第2ハウジング部材23とを連結する2つの連結部材(上側連結部材80,下側連結部材81)を介して互いに固定され、一体化されている。上側連結部材80および下側連結部材81は、ハンドルハウジング20の進退方向(前後方向)と直交する左右方向に延びる柱状に形成されており、その外面の一部には平坦部80a,81aが設けられている。
上側連結部材80は、モータハウジング10の上部に設けられているトンネル状の穴部としての上側ガイド部14に挿通されており、その一端は第1ハウジング部材22に固定され、その他端は第2ハウジング部材23に固定されている。下側連結部材81は、モータハウジング10の下部に設けられているトンネル状の他の穴部としての下側ガイド部15(図4)に挿通されており、その一端は第1ハウジング部材22に固定され、その他端は第2ハウジング部材23に固定されている。より具体的には、上側連結部材80の一方の端部は、第1ハウジング部材22の内側に設けられている凹部に嵌合しており、上側連結部材80の他方の端部は、第2ハウジング部材23の内側に設けられている凹部に嵌合している。また、平坦部80aを含む上側連結部材80の中間部は、上側ガイド部14の挿通穴14a(図4)を貫通している。
同様に、下側連結部材81の一方の端部は、第1ハウジング部材22の内面に設けられている凹部に嵌合しており、下側連結部材81の他方の端部は、第2ハウジング部材23の内面に設けられている凹部に嵌合している。また、平坦部81aを含む下側連結部材81の中間部は、下側ガイド部15の挿通穴15a(図4)を貫通している。
第1ハウジング部材22は、当該第1ハウジング部材22を貫通して上側連結部材80および下側連結部材81の一方の端部にそれぞれねじ結合された固定具(ねじ)によってそれぞれの連結部材80,81に固定されている。第2ハウジング部材23は、当該第2ハウジング部材23を貫通して上側連結部材80および下側連結部材81の他方の端部にそれぞれねじ結合された固定具(ねじ)によってそれぞれの連結部材80,81に固定されている。つまり、第1ハウジング部材22および第2ハウジング部材23は、共通の連結部材80,81に固定されることによって一体化されている。
上記のように、本実施形態における上側連結部材80および下側連結部材81は、第1ハウジング部材22および第2ハウジング部材23とは別体である。言い換えれば、上側連結部材80および下側連結部材81は、ハンドルハウジング20とは別体である。しかし、第1ハウジング部材22と第2ハウジング部材23とは上記のような固定構造によって互いに固定されている。つまり、上側連結部材80および下側連結部材81は、第1ハウジング部材22および第2ハウジング部材23と共にハンドルハウジング20を形成しており、ハンドルハウジング20の一部である。
再び図4を参照する。上側連結部材80の平坦部80aは、ハンドルハウジング20の進退方向において上側ゴム71の後端面と対向する押圧面を形成している。一方、下側連結部材81の平坦部81aは、ハンドルハウジング20の進退方向において下側ゴム72の後端面と対向する押圧面を形成している。言い換えれば、上側ゴム71は、上側ガイド部14の挿通穴14aの内側において、上側連結部材80の平坦部80aと対向している。また、下側ゴム72は、下側ガイド部15の挿通穴15aの内側において、下側連結部材81の平坦部81aと対向している。つまり、上側ゴム71および下側ゴム72は、ハンドルハウジング20の進退方向(前後方向)において、連結部材(上側連結部材80,下側連結部材81)とモータハウジング10との間に配置されている。
もっとも、無負荷状態では、上側連結部材80の平坦部80aと上側ゴム71との間、および下側連結部材81の平坦部81aと下側ゴム72との間には約1.5mmの隙間D2が存在している。つまり、無負荷状態では、上側連結部材80は上側ゴム71に接触しておらず、下側連結部材81は下側ゴム72に接触していない。一方、ハンドルハウジング20に押付力が加えられ、上側連結部材80および下側連結部材81を含むハンドルハウジング20がコイルばね70の付勢に抗して前進すると、隙間D2が減少し、上側連結部材80の平坦部80aが上側ゴム71に、下側連結部材81の平坦部81aが下側ゴム72に、それぞれ当接する。
しかし、ハンドルハウジング20は、コイルばね70によって後方に向けて付勢されている。具体的には、圧縮状態のコイルばね70の先端はモータハウジング10に常時当接し、後端はハンドルハウジング20に常時当接している。よって、ハンドルハウジング20が前進すると(モータハウジング10に近接すると、)、これに伴ってコイルばね70がさらに圧縮される。つまり、コイルばね70の全長は、ハンドルハウジング20の前方への移動距離と同じ長さだけ減少する。そして、全長が所定長に達するまでコイルばね70が圧縮されると、上側連結部材80の平坦部80aが上側ゴム71に当接し、下側連結部材81の平坦部81aが下側ゴム72に当接する。
ここで、挿通穴14aおよび挿通穴15aの内寸は、上下方向の幅が前後方向の幅よりも小さい(狭い)。このため、上側連結部材80のおよび下側連結部材81は、挿通穴14aおよび挿通穴15aによって上下方向への移動が規制され、専ら前後方向に移動する。尚、上下方向の幅とは、前後方向(進退方向)および左右方向と直交する方向の幅である(図4の紙面上下方向の幅である。)。
本実施形態では、図4に示される隙間D1が約3.0mm、隙間D2が約1.5mmに設定されている。よって、図5に示されるように、隙間D1が約1.5mmに減少するまでハンドルハウジング20が前進すると(モータハウジング10に近接すると、)、上側連結部材80が上側ゴム71に当接し、下側連結部材81が下側ゴム72に当接する。その後、図6に示されるように、ハンドルハウジング20がさらに前進すると(モータハウジング10にさらに近接すると、)、上側連結部材80によって上側ゴム71が圧縮され、下側連結部材81によって下側ゴム72が圧縮される。
言い換えれば、全長が所定長(セット長-1.5mm)に達するまでコイルばね70が圧縮されると、上側連結部材80が上側ゴム71に当接し、下側連結部材81が下側ゴム72に当接する。その後、コイルばね70がさらに圧縮され、コイルばね70の全長が上記所定長を下回ると、上側連結部材80によって上側ゴム71が圧縮され、下側連結部材81によって下側ゴム72が圧縮される。尚、全長が所定長(セット長-1.5mm)に達するまでコイルばね70を圧縮するのに必要な押付力の大きさは、コイルばね70のばね定数に基づいて予め設定することができる。本実施形態におけるコイルばね70のばね定数は2.5kgf/mmであり、プリロードは2.5kgfである。よって、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が2.5kgfに達すると、コイルばね70の圧縮が開始される。また、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が6.5kgfに達すると、上側連結部材80が上側ゴム71に当接し、下側連結部材81が下側ゴム72に当接する。さらに、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が6.5kgfを上回ると、上側連結部材80によって上側ゴム71が圧縮され、下側連結部材81によって下側ゴム72が圧縮される。言い換えれば、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が2.5kgfを超えて6.5kgfに達するまではコイルばね70のみが圧縮され、押付力が6.5kgfを上回った後は、コイルばね70に加えて上側ゴム71および下側ゴム72が圧縮される。
尚、図7に示されるように、モータハウジング10の両側には、長手方向に沿って延びる凸部16a,16bが形成されている。一方、第1ハウジング部材22の内側には、凸部16aを受け入れる溝27が形成されており、第2ハウジング部材23の内側には、凸部16bを受け入れる溝28が形成されている。第1ハウジング部材22および第2ハウジング部材23から構成されるハンドルハウジング20は、モータハウジング10に設けられている一対の凸部16a,16bに案内されて、当該モータハウジング10に対して前後に移動する。
上記のように、本実施形態に係るハンマドリル1Aに採用されている防振構造では、ハンドルハウジング20に押付力が加えられていないとき、またはハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさを下回っているときには、第1の弾性体(コイルばね70)のみがモータハウジング10からハンドルハウジング20へ伝わる振動を吸収ないし減衰させる。一方、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさを上回ると、第1の弾性体(コイルばね70)および第2の弾性体(上側ゴム71,下側ゴム72)がモータハウジング10からハンドルハウジング20へ伝わる振動を吸収ないし減衰させる。よって、本実施形態に係るハンマドリル1Aに採用されている防振構造は、ハンドル21に加えられる力の有無や大きさが変化しても十分な防振効果を発揮する。
モータハウジング10からハンドルハウジング20へ伝わる振動を上記防振構造によって効果的に低減または減衰させるためには、モータハウジング10に対するハンドルハウジング20の円滑な移動を確保する必要がある。具体的には、モータハウジング10とハンドルハウジング20との間に隙間(クリアランス)を設ける必要がある。
しかし、モータハウジング10とハンドルハウジング20との間に隙間が存在すると、モータハウジング10とハンドルハウジング20との間でガタが生じる。かかるガタは、ハンドル21に押付力が加えられていない無負荷状態において生じ易い一方、ハンドル21に押付力が加えられている負荷状態においては生じ難い。
そこで、本実施形態に係るハンマドリル1Aには、少なくとも無負荷状態のときに機能し、モータハウジング10とハンドルハウジング20との間におけるガタの発生を抑制または防止する規制手段が設けられている。尚、無負荷状態のとき、ハンドルハウジング20はモータハウジング10に対して最も後退している。言い換えれば、無負荷状態のとき、図4等に示されている隙間D1は最大となる。
本実施形態に係るハンマドリル1Aが備える規制手段は、モータハウジング10およびハンドルハウジング20に設けられた複数の規制面から構成されている。具体的には、図8,図9に示されるように、ハンドルハウジング20には複数のハンドル側規制面90が設けられている。一方、図10,図11に示されるように、モータハウジング10には複数の本体側規制面100が設けられている。以下、ハンドルハウジング20に設けられているハンドル側規制面90について詳細に説明し、次いで、モータハウジング10に設けられている本体側規制面100について詳細に説明する。
ハンドル側規制面90には、ハンドルハウジング20の内側に突設されたリブの表面の一部によって形成される第1ハンドル側規制面と、連結部材80,81の外面の一部によって形成される第2ハンドル側規制面と、が含まれる。図8に示されるように、第1ハウジング部材22の内側には2つの第1ハンドル側規制面91a,91bが設けられている。また、図9に示されるように、第2ハウジング部材23の内側には2つの第1ハンドル側規制面91c,91dが設けられている。以下の説明では、第1ハウジング部材22に設けられている第1ハンドル側規制面91a,91bを「ハンドル右側規制面91a,91b」と呼び、第2ハウジング部材23に設けられている第1ハンドル側規制面91c,91dを「ハンドル左側規制面91c,91d」と呼ぶ場合がある。
ハンドル右側規制面91aとハンドル左側規制面91cとは同じ高さに位置しており、ハンドル右側規制面91bとハンドル左側規制面91dとは同じ高さに位置している。ハンドル右側規制面91aとハンドル右側規制面91bとは、第1ハウジング部材22における、本体ハウジング10を覆う一部の内面に形成される。ハンドル左側規制面91cとハンドル左側規制面91dとは、第2ハウジング部材23における、本体ハウジング10を覆う一部の内面に形成されているる。また、第1ハンドル側規制面91a~91dは同じ方向に傾斜している。具体的には、第1ハンドル側規制面91a~91dは、前後方向および左右方向に対して傾斜している一方、上下方向に対しては平行である。
図8、図9に示されるように、第1ハウジング部材22及び第2ハウジング部材23における、本体ハウジング10を覆う一部の内面には、複数のハンドル側レール部が設けられる。具体的には、第1ハウジング部材22における、本体ハウジング10を覆う一部の内面には、左側に向かって突出する上側レール部93および下側レール部94が形成されている。また、第2ハウジング部材23における、本体ハウジング10を覆う一部の内面には、右側に向かって突出する上側レール部95および下側レール部96が形成されている。上側レール部93、95および下側レール部94、96は、後述する本体ハウジングに設けられた複数の本体側レール部と対応する位置に配置されており、互いに摺動するように組み合わされる。
図8に示されるように、上側連結部材80には、押圧面(平坦部80a)を形成している外面の一部とは異なる他の一部によって第2ハンドル側規制面92が形成されている。同様に、下側連結部材81には、押圧面(平坦部81a)を形成している外面の一部とは異なる他の一部によって第2ハンドル側規制面92が形成されている。以下の説明では、上側連結部材80に設けられている第2ハンドル側規制面92を「ハンドル上側規制面92」と呼び、下側連結部材81に設けられている第2ハンドル側規制面92を「ハンドル下側規制面92」と呼ぶ場合がある。
図15(a),(b)に示されるように、ハンドル上側規制面92およびハンドル下側規制面92には、後方から前方に向かって上り傾斜の上向き規制面92aと、後方から前方に向かって下り傾斜の下向き規制面92bと、が含まれる。そして、上側連結部材80に設けられている上向き規制面92a(図15(a))と、下側連結部材81に設けられている上向き規制面92a(図15(b))と、は同じ方向に傾斜している。具体的には、それぞれの上向き規制面92aは、前後方向および上下方向に対して傾斜している一方、左右方向に対しては平行である。また、上側連結部材80に設けられている下向き規制面92b(図15(a))と、下側連結部材81に設けられている下向き規制面92b(図15(b))と、は同じ方向に傾斜している。具体的には、それぞれの下向き規制面92bは、前後方向および上下方向に対して傾斜している一方、左右方向に対しては平行である。
以上のように、ハンドルハウジング20には複数のハンドル側規制面90が設けられている。そして、複数のハンドル側規制面90には、第1ハウジング部材22に設けられている第1ハンドル側規制面(ハンドル右側規制面)91a,91bと、第2ハウジング部材23に設けられている第1ハンドル側規制面(ハンドル左側規制面)91c,91dと、それぞれの連結部材80,81に設けられている第2ハンドル側規制面92と、が含まれる。さらに、それぞれの第2ハンドル側規制面92には、上向き規制面92aおよび下向き規制面92bが含まれる。
第1ハウジング部材22または第2ハウジング部材23に設けられている第1ハンドル側規制面91a~91dは、前後方向および左右方向に対して傾斜し、かつ、上下方向に対して平行である。一方、それぞれの連結部材80,81に設けられている第2ハンドル側規制面92は、前後方向および上下方向に対して傾斜し、かつ、左右方向に対して平行である。
次に、モータハウジング10に設けられている本体側規制面100について説明する。本体側規制面100には、モータハウジング10の外側に突設されたリブの表面の一部によって形成される第1本体側規制面と、モータハウジング10の上側ガイド部14および下側ガイド部15の内面の一部によって形成される第2本体側規制面と、が含まれる。
図10に示されるように、第1ハウジング部材22(図8)に覆われるモータハウジング10の右側面には、2つの第1本体側規制面101a,101bが設けられている。また、図11に示されるように、第2ハウジング部材23(図9)に覆われるモータハウジング10の左側面には、2つの第1本体側規制面101c,101dが設けられている。以下の説明では、モータハウジング10の右側面に設けられている第1本体側規制面101a,101bを「本体右側規制面101a,101b」と呼び、モータハウジング10の左側面に設けられている第1本体側規制面101c,101dを「本体左側規制面101c,101d」と呼ぶ場合がある。
本体右側規制面101aと本体左側規制面101cとは同じ高さに位置しており、本体右側規制面101bと本体左側規制面101dとは同じ高さに位置している。さらに、本体右側規制面101aは、ハンドル右側規制面91a(図8)と同じ高さに位置し、当該ハンドル右側規制面91aと対向している。以下同様に、本体左側規制面101c(図11)は、ハンドル左側規制面91c(図9)と同じ高さに位置し、当該ハンドル左側規制面91cと対向している。本体右側規制面101b(図10)は、ハンドル右側規制面91b(図8)と同じ高さに位置し、当該ハンドル右側規制面91bと対向している。本体左側規制面101d(図11)は、ハンドル左側規制面91d(図9)と同じ高さに位置し、当該ハンドル左側規制面91dと対向している。
図10、図11に示されるように、モータハウジング10には、複数の本体側レール部が設けられている。具体的には、モータハウジング10は、右側に向かって突出する右上側レール部103および右下側レール部104と、左側に向かって突出する左上側レール部105および左下側レール部106と、が設けられている。本体側レール部とハンドル側レール部とは、それぞれが対応する位置に配置され、互いに摺動するように組み合わされる。具体的には、右上側レール部103は上側レール部93と、右下側レール部104は下側レール部94と、左上側レール部105は上側レール部95と、左下側レール部106は下側レール部96と、それぞれ対応する位置に配置されており、互いに摺動可能に組み合わされている。このように、規制面の傾斜方向と同一方向に突出する本体側レール部およびハンドル側レール部を設けることで、本体ハウジング(モータハウジング)10に対するハンドルハウジング20の進退をスムーズにするとともに、規制面とレール部を単一の型で成形できるため、安価に製造できる。また、本体ハウジング10を覆うハンドルハウジング20の内面に規制面と複数のハンドル側レール部とを設けることで、ハンドルハウジング20に別途規制面と複数のハンドル側レール部を設ける構成と比較して、ハンドルハウジング20の大型化を抑制でき、強度も確保できる。
また、図10,図11に示されるように、第1本体側規制面101a~101dは同じ方向に傾斜している。具体的には、第1本体側規制面101a~101dは、前後方向および左右方向に対して傾斜している一方、上下方向に対しては平行である。かかる第1本体側規制面101a~101dの傾斜は、図8,図9に示される第1ハンドル側規制面91a~91dの傾斜と同様である。つまり、第1本体側規制面101a~101dは、第1ハンドル側規制面91a~91dに沿う傾斜面である。言い換えれば、第1ハンドル側規制面91a~91dは、第1本体側規制面101a~101dに沿う傾斜面である。
図10,図11に示されるように、上側ガイド部14の内側には、その内面の平坦な一部によって第2本体側規制面102が形成されている。下側ガイド部15の内側にも、その内面の平坦な一部によって第2本体側規制面102が形成されている。以下の説明では、上側ガイド部14に設けられている第2本体側規制面102を「本体上側規制面102」と呼び、下側ガイド部15に設けられている第2本体側規制面102を「本体下側規制面102」と呼ぶ場合がある。
図15(a),(b)に示されるように、上側ガイド部14および下側ガイド部15に設けられている本体上側規制面102には、後方から前方に向かって上り傾斜の上向き規制面102aと、後方から前方に向かって下り傾斜の下向き規制面102bと、がそれぞれ含まれる。上側ガイド部14に設けられている上向き規制面102a(図15(a))と、下側ガイド部15に設けられている上向き規制面102a(図15(b))と、は同じ方向に傾斜している。具体的には、それぞれの上向き規制面102aは、前後方向および上下方向に対して傾斜している一方、左右方向に対しては平行である。また、上側ガイド部14に設けられている下向き規制面102b(図15(a))と、下側ガイド部15に設けられている下向き規制面102b(図15(b))と、は同じ方向に傾斜している。具体的には、それぞれの下向き規制面102bは、前後方向および上下方向に対して傾斜している一方、左右方向に対しては平行である。
ここで、上側ガイド部14に設けられている本体上側規制面102(上向き規制面102aおよび下向き規制面102b)の傾斜は、上側連結部材80に設けられているハンドル上側規制面92(上向き規制面92aおよび下向き規制面92b)の傾斜に対応している。また、下側ガイド部15に設けられている本体下側規制面102(上向き規制面102aおよび下向き規制面102b)の傾斜は、下側連結部材81に設けられているハンドル下側規制面92(上向き規制面92aおよび下向き規制面92b)の傾斜に対応している。さらに、上側ガイド部14の上向き規制面102aおよび下向き規制面102bと、上側連結部材80の上向き規制面92aおよび下向き規制面92bと、は互いに対向している。同じく、下側ガイド部15の上向き規制面102aおよび下向き規制面102bと、下側連結部材81の上向き規制面92aおよび下向き規制面92bと、は互いに対向している。つまり、第2本体側規制面102は、第2ハンドル側規制面92に沿って傾斜する平面である。言い換えれば、第2ハンドル側規制面92は、第2本体側規制面102に沿って傾斜する平面である。
以上のように、モータハウジング10には複数の本体側規制面100が設けられている。そして、複数の本体側規制面100には、モータハウジング10の右側面に設けられている第1本体側規制面(本体右側規制面)101a,101bと、モータハウジング10の左側面に設けられている第1本体側規制面(本体左側規制面)101c,101dと、上側ガイド部14および下側ガイド部15にそれぞれ設けられている第2本体側規制面102と、が含まれる。さらに、それぞれの第2本体側規制面102には、上向き規制面102aおよび下向き規制面102bが含まれる。
また、第1本体側規制面101a~101dは、前後方向および左右方向に対して傾斜し、かつ、上下方向に対して平行である。一方、第2本体側規制面102は、前後方向および上下方向に対して傾斜し、かつ、左右方向に対して平行である。
図12,図13は、無負荷状態のときの、ハンドル側規制面90(図8,図9)と本体側規制面100(図10,図11)との位置関係を示す図である。既述のとおり、無負荷状態のとき、ハンドルハウジング20は、コイルばね70(図4)の付勢により、モータハウジング10に対して最も後退している。
図12(a)に示されるように、無負荷状態のとき、ハンドル右側規制面91aは本体右側規制面101aに当接し、ハンドル左側規制面91cは本体左側規制面101cに当接している。図12(b)に示されるように、無負荷状態のとき、ハンドル右側規制面91bは本体右側規制面101bに当接し、ハンドル左側規制面91dは本体左側規制面101dに当接している。
図13(a)に示されるように、無負荷状態のとき、ハンドル上側規制面92は本体上側規制面102に当接している。より詳細には、ハンドル上側規制面92の上向き規制面92aは、本体上側規制面102の上向き規制面102aに当接し、ハンドル上側規制面92の下向き規制面92bは、本体上側規制面102の下向き規制面102bに当接している。
図13(b)に示されるように、無負荷状態のとき、ハンドル下側規制面92は本体下側規制面102に当接している。より詳細には、ハンドル下側規制面92の上向き規制面92aは、本体下側規制面102の上向き規制面102aに当接し、ハンドル下側規制面92の下向き規制面92bは、本体下側規制面102の下向き規制面102bに当接している。
以上のように、無負荷状態のときには、複数のハンドル側規制面90が、それぞれ対応する本体側規制面100に当接する。この結果、ハンドルハウジング20がモータハウジング10に対してガタつくことが防止され、又は抑制される。具体的には、第1ハンドル側規制面91a~91dが第1本体側規制面101a~101dに当接することにより、ハンドルハウジング20の左右方向のガタつきが防止または抑制され、第2ハンドル側規制面92が第2本体側規制面102に当接することにより、ハンドルハウジング20の上下方向のガタつきが防止または抑制される。尚、ハンドルハウジング20の前後方向のガタつきは、コイルばね70の付勢によって防止または抑制されている。
図14,図15は、負荷状態のときの、ハンドル側規制面90(図8,図9)と本体側規制面100(図10,図11)との位置関係を示す図である。負荷状態のとき、ハンドルハウジング20は、コイルばね70(図4)の付勢に抗してモータハウジング10に対して前進している。
図14(a)に示されるように、無負荷状態から負荷状態に移行すると、それまで本体右側規制面101aに当接していたハンドル右側規制面91aは、本体右側規制面101aから離間する。また、それまで本体左側規制面101cに当接していたハンドル左側規制面91cは、本体左側規制面101cから離間する。図14(b)に示されるように、無負荷状態から負荷状態に移行すると、それまで本体右側規制面101bに当接していたハンドル右側規制面91bは、本体右側規制面101bから離間する。また、それまで本体左側規制面101dに当接していたハンドル左側規制面91dは、本体左側規制面101dから離間する。
図15(a)に示されるように、無負荷状態から負荷状態に移行すると、それまで本体上側規制面102に当接していたハンドル上側規制面92は、本体上側規制面102から離間する。より詳細には、ハンドル上側規制面92の上向き規制面92aは、本体上側規制面102の上向き規制面102aから離間し、ハンドル上側規制面92の下向き規制面92bは、本体上側規制面102の下向き規制面102bから離間する。
図15(b)に示されるように、無負荷状態から負荷状態に移行すると、それまで本体下側規制面102に当接していたハンドル下側規制面92は、本体下側規制面102から離間する。より詳細には、ハンドル下側規制面92の上向き規制面92aは、本体下側規制面102の上向き規制面102aから離間し、ハンドル下側規制面92の下向き規制面92bは、本体下側規制面102の下向き規制面102bから離間する。
以上のように、無負荷状態から負荷状態に移行すると、ハンドル側規制面90が本体側規制面100から離間し、ハンドルハウジング20とモータハウジング10との間にクリアランスが生じる。言い換えれば、規制手段によるハンドルハウジング20の移動規制が解除される。この結果、モータハウジング10に対するハンドルハウジング20の円滑な移動が確保され、モータハウジング10からハンドルハウジング20へ伝わる振動が上記防振構造によって効果的に低減される。さらに、上記防振構造を構成する弾性体は、特別な支持部材や保持部材などを用いることなく所定の位置に配置されている。具体的には、コイルばね70は、モータハウジング10の底部とハンドルハウジング20のリブとの間に配置され、ハンドルハウジング20の移動に応じて圧縮される。モータハウジング10は、駆動源である電動モータ40を保持するために必要な部材であって、防振構造を備えていない電動工具にも必要な部材である。また、ハンドルハウジング20のリブは、当該ハンドルハウジング20を補強するために必要なものであり、防振構造を備えていない電動工具のハンドルハウジングにも設けられるものである。
また、ゴム71,72は、ハンドルハウジング20の一部である連結部材80,81と、モータハウジング10と、の間に配置されている。連結部材80,81は、第1ハウジング部材22と第2ハウジング部材23とを互いに固定して一体化させるために必要な部材であり、防振構造を備えていない電動工具にも必要な部材である。
つまり、本実施形態に係るハンマドリル1Aでは、部品点数を増やすことなく、作業者に伝わる振動の低減が実現されている。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、ハンドル側規制面90や本体側規制面100の数、形状、配置、傾斜などは適宜変更することができる。図16に、ハンドル側規制面90および本体側規制面100の比較例を示す。上記実施形態におけるハンドル側規制面90および本体側規制面100は、相手方に沿って傾斜する斜面であった。一方、図16に示されている第2ハンドル側規制面92および第2本体側規制面102は、相手方と平行な平面である。より具体的には、図示されている第2ハンドル側規制面92および第2本体側規制面102は、前後方向および左右方向に対して平行であり、かつ、上下方向に対して直交する平面である。尚、第1の弾性体としてのコイルばね70のばね定数は適宜変更することができる。そして、コイルばね70のばね定数を変更することによって、コイルばね70のみが防振に寄与する領域(押圧力の範囲)と、コイルばね70およびゴム71,72の双方が防振に寄与する領域(押圧力の範囲)と、を任意に設定することができる。
第1ハウジング部材と第2ハウジング部材とを連結する連結部材は、第1ハウジング部材または第2ハウジング部材と一体であってもよい。例えば、図示されている第1ハウジング部材22に一体成形された上側連結部材80および下側連結部材81に第2ハウジング部材23をそれぞれ固定することにより、第1ハウジング部材22と第2ハウジング部材23とを一体化させることもできる。
連結部材は本体ハウジングを貫通していなくともよい。例えば、図示されている上側連結部材80を、モータハウジング10の上方を通過(横断)させて第1ハウジング部材22と第2ハウジング部材23とに跨らせてもよい。また、下側連結部材81を、モータハウジング10の下方を通過(横断)させて第1ハウジング部材22と第2ハウジング部材23とに跨らせてもよい。
(第2実施形態)以下、本発明の電動工具の実施形態の他の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。もっとも、本実施形態に係る電動工具は、第1実施形態に係るハンマドリル1Aと実質的に同一の構造を備えるハンマである。そこで、既に説明した構成と同一または実質的に同一の構成については同一の符号を用い、重複する説明は適宜省略する。
図17に示されるハンマ1Bは、モータハウジング10,ハンドルハウジング20およびギヤハウジング30を含むケーシング2を備えている。ハンドルハウジング20は、側面視において概ねコ字形の外観を呈し、その上部はモータハウジング10の上部に連結され、その下部はモータハウジング10の下部に連結され、上部と下部との間の中間部はハンドル21を形成している。
図18に示されるように、ハンドルハウジング20の下部は、ヒンジ190を介してモータハウジング10に回動可能に連結されている。よって、ハンドルハウジング20は、押付力が付与されると、モータハウジング10に近接する方向(図中左方向)に回動する一方、押付力の付与が解除されると、モータハウジング10から離反する方向(図中右方向)に回動する。つまり、ハンドルハウジング20は、モータハウジング10に対して進退可能である。
図19(a)は、ハンドルハウジング20に押付力が加えられていないときのモータハウジング10とハンドルハウジング20との相対的位置関係を示している。つまり、無負荷状態のときのモータハウジング10とハンドルハウジング20との相対的位置関係を示している。図19(b)は、ハンドルハウジング20に所定の大きさの押付力が加えられたときのモータハウジング10とハンドルハウジング20との相対的位置関係を示している。図19(c)は、ハンドルハウジング20に所定の大きさを上回る押付力が加えられたときのモータハウジング10とハンドルハウジング20との相対的位置関係を示している。
次に、本実施形態に係るハンマ1Bに採用されている防振構造について説明する。図18に示されるように、モータハウジング10の上部とハンドルハウジング20の上部との間には、第1弾性体としてのコイルばね191と、第2弾性体としてのコイルばね192と、が介在している。さらに、第2弾性体としてのコイルばね192は、第1弾性体としてのコイルばね191の内側に挿通されている。言い換えれば、第1弾性体としてのコイルばね191は、第2弾性体としてのコイルばね192の外側に被せられている。そこで、以下の説明では、第1弾性体としてのコイルばね191を「外側コイルばね191」と呼び、第2弾性体としてのコイルばね192を「内側コイルばね192」と呼ぶ場合がある。
図18に示されるように、外側コイルばね191のモータハウジング10側の一端(先端)は、内側コイルばね192のモータハウジング10側の一端(先端)から突出している。一方、内側コイルばね192のハンドルハウジング20側の一端(後端)は、外側コイルばね191のハンドルハウジング20側の一端(後端)から突出している。
図19(a)~(c)に示されるように、モータハウジング10の上部には本体側保持部材193が設けられている。一方、ハンドルハウジング20の上部には、モータハウジング10(本体側保持部材193)に向かって延びるハンドル側保持部材194が設けられている。ハンドル側保持部材194は、ハンドルハウジング20に固定されており、モータハウジング10に対してハンドルハウジング20と一体的に移動する。
外側コイルばね191および内側コイルばね192は、本体側保持部材193とハンドル側保持部材194との間に配置されている。具体的には、ハンドル側保持部材194には円筒状または溝状の収容部195が形成されており、この収容部195に外側コイルばね191および内側コイルばね192の長手方向大部分が収容されている。収容部195の底には、外側コイルばね191の後端と対向する外側当接面195aと、内側コイルばね192の後端と対向する内側当接面195bと、が形成されている。外側当接面195aは内側当接面195bよりも一段高く形成されており、内側当接面195bを取り囲んでいる。つまり、収容部195の底は、外側コイルばね191の後端と内側コイルばね192の後端との高さの違いに応じた段付き形状となっている。一方、本体側保持部材193には、外側コイルばね191の先端と対向する外側当接面193aと、内側コイルばね192の先端と対向する内側当接面193bとが形成されている。外側当接面193aは内側当接面193bよりも一段低く形成されており、内側当接面193bを取り囲んでいる。つまり、本体側保持部材193は、外側コイルばね191の先端と内側コイルばね192の先端との高さの違いに応じた段付き形状を有する。
図19(a)に示されるように、無負荷状態では、外側コイルばね191の先端は本体側保持部材193の外側当接面193aに当接しており、外側コイルばね191の後端はハンドル側保持部材194の外側当接面195aに当接している。このとき、内側コイルばね192の先端は本体側保持部材193の内側当接面193bに当接しているが、内側コイルばね192の後端はハンドル側保持部材194の内側当接面195bに当接していない。尚、外側コイルばね191にはプリロードが与えられている。
図19(b)に示されるように、ハンドルハウジング20に押付力が加えられ、当該ハンドルハウジング20が前進すると(モータハウジング10に近接すると、)、これに伴って外側コイルばね191が圧縮される。つまり、外側コイルばね191の全長は、ハンドルハウジング20の前方への移動距離に応じて減少する。そして、全長が所定長に達するまで外側コイルばね191が圧縮されると、ハンドル側保持部材194の内側当接面195bが内側コイルばね192の後端に当接する。言い換えれば、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさに達すると、ハンドル側保持部材194の内側当接面195bが内側コイルばね192の後端に当接する。さらに言い換えれば、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさに達するまでは、ハンドル側保持部材194の内側当接面195bは内側コイルばね192の後端に当接せず、外側コイルばね191のみが圧縮される。つまり、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさに達するまでは、外側コイルばね191のみが防振に寄与する。
図19(c)に示されるように、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさを上回ると、外側コイルばね191に加えて、内側コイルばね192も圧縮される。つまり、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさを上回ると、外側コイルばね191および内側コイルばね192の両方が圧縮され、外側コイルばね191および内側コイルばね192の両方が防振に寄与する。
ここで、全長が所定長に達するまで外側コイルばね191を圧縮するのに必要な押付力の大きさは、外側コイルばね191のばね定数に基づいて予め設定することができる。よって、外側コイルばね191のばね定数を変更することによって、外側コイルばね191のみが防振に寄与する領域(押圧力の範囲)と、外側コイルばね191および内側コイルばね192の両方が防振に寄与する領域(押圧力の範囲)と、を任意に設定することができる。
上記のように、本実施形態に係るハンマ1Bに採用されている防振構造では、ハンドルハウジング20に押付力が加えられていないとき、またはハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさを下回っているときには、第1弾性体(外側コイルばね191)のみがモータハウジング10からハンドルハウジング20へ伝わる振動を吸収ないし減衰させる。一方、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさを上回ると、第1弾性体(外側コイルばね191)および第2弾性体(内側コイルばね192)がモータハウジング10からハンドルハウジング20へ伝わる振動を吸収ないし減衰させる。よって、本実施形態に係るハンマ1Bに採用されている防振構造は、ハンドル21に加えられる力の有無や大きさが変化しても十分な防振効果を発揮する。
(第3実施形態)以下、本発明の電動工具の実施形態のさらに他の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。もっとも、本実施形態に係る電動工具は、第1実施形態に係るハンマドリル1Aと実質的に同一の構造を備えるハンマドリルである。そこで、既に説明した構成と同一または実質的に同一の構成については同一の符号を用い、重複する説明は適宜省略する。
図20に示されるハンマドリル1Cは、モータハウジング10,ハンドルハウジング20およびギヤハウジング30を含むケーシング2を備えている。ハンドルハウジング20は、側面視において概ねコ字形の外観を呈し、その上部はモータハウジング10の上部に連結され、その下部はモータハウジング10の下部に連結され、上部と下部との間の中間部はハンドル21を形成している。
モータハウジング10内には、駆動源である電動モータ40や、電動モータ40から出力される回転駆動力を往復駆動力に変換する変換機構54などが収容されている。ギヤハウジング30にはシリンダ60が収容されており、シリンダ60内には、ピストン61,打撃子62および中間子63がこの順で収容されている。ピストン61と打撃子62との間には空気室64が設けられている。
ハンドルハウジング20の下部は、ヒンジ200を介してモータハウジング10に回動可能に連結されている。よって、ハンドルハウジング20は、押付力が付与されると、モータハウジング10に近接する方向(図中右方向)に回動する一方、押付力の付与が解除されると、モータハウジング10から離反する方向(図中左方向)に回動する。つまり、ハンドルハウジング20は、モータハウジング10に対して進退可能である。
図21に示されるように、モータハウジング10の上部には本体側受け部材201が設けられている。一方、ハンドルハウジング20の上部にはハンドル側受け部材202が設けられている。ハンドル側受け部材202は、ハンドルハウジング20に固定されており、モータハウジング10に対してハンドルハウジング20と一体的に移動する。
図22(a)は、ハンドルハウジング20(図11,12)に押付力が加えられていないときのハンドル側受け部材202と本体側受け部材201との相対的位置関係を示している。つまり、無負荷状態のときのハンドル側受け部材202と本体側受け部材201との相対的位置関係を示している。図10(b)は、ハンドルハウジング20(図11,12)に所定の大きさの押付力が加えられたときのハンドル側受け部材202と本体側受け部材201との相対的位置関係を示している。図10(c)は、ハンドルハウジング20(図11,12)に所定の大きさを上回る押付力が加えられたときのハンドル側受け部材202と本体側受け部材201との相対的位置関係を示している。
図23に示されるように、ハンドル側受け部材202は平面視において略コ字形の形状を有しており、本体側受け部材201は、ハンドル側受け部材202の内側に配置されている。言い換えれば、本体側受け部材201は、ハンドル側受け部材202によって三方(後方,右側方および左側方)を囲まれている。
ハンドル側受け部材202は、後方から前方に向かって延びる右側腕部203および左側腕部204を有する。ハンドル側受け部材202の右側腕部203は、本体側受け部材201の右側壁205と隙間を隔てて対向しており、ハンドル側受け部材202の左側腕部204は、本体側受け部材201の左側壁206と隙間を隔てて対向している。
右側腕部203と右側壁205との間には、第1弾性体としての円柱状のゴム207aと、第2弾性体としての円柱状のゴム208aと、が配置されている。また、左側腕部204と左側壁206との間には、他の第1弾性体としての円柱状のゴム207bと、他の第2弾性体としての円柱状のゴム208bと、が配置されている。ゴム207aとゴム208aは、ハンドルハウジング20に加えられる押付力の方向に沿って前後に並んでおり、ゴム207bとゴム208bも同方向に沿って前後に並んでいる。そこで、以下の説明では、ゴム207a,207bを「後方ゴム207a,207b」と呼ぶ場合がある。また、ゴム208a,208bを「前方ゴム208a,208b」と呼ぶ場合がある。
右側腕部203の内面には、後方押圧面209aおよび前方押圧面210aがこの順で前後に設けられている。また、左側腕部204の内面には、後方押圧面209bおよび前方押圧面210bがこの順で前後に設けられている。一方、右側壁205の外面には、後方受圧面211aおよび前方受圧面212aがこの順で前後に設けられている。また、左側壁206の外面には、後方受圧面211bおよび前方受圧面212bがこの順で前後に設けられている。
後方押圧面209aと後方受圧面211aは同方向に傾斜しており、かつ、互いに対向している。以下同様に、後方押圧面209bと後方受圧面211bは同方向に傾斜しており、かつ、互いに対向している。前方押圧面210aと前方受圧面212aは同方向に傾斜しており、かつ、互いに対向している。前方押圧面210bと前方受圧面212bは同方向に傾斜しており、かつ、互いに対向している。
後方ゴム207aは、対向する後方押圧面209aと後方受圧面211aとの間に挟まれており、後方ゴム207bは、対向する後方押圧面209bと後方受圧面211bとの間に挟まれている。また、前方ゴム208aは、対向する前方押圧面210aと前方受圧面212aとの間に挟まれており、前方ゴム208bは、対向する前方押圧面210bと前方受圧面212bとの間に挟まれている。
再び図22(a)~(c)を参照する。図22(a)に示されるように、無負荷状態では、後方押圧面209a,209bは、後方ゴム207a,207bにそれぞれ当接している。一方、前方押圧面210a,210bと前方ゴム208a,208bとの間には隙間があり、前方押圧面210a,210bは、前方ゴム208a,208bに当接していない。
図22(b)に示されるように、ハンドルハウジング20(図23)に押付力が加えられ、当該ハンドルハウジング20が前進すると、これに伴って後方ゴム207a,207bが圧縮される。つまり、後方ゴム207a,207bは、ハンドルハウジング20の前方への移動距離に応じて圧縮される。そして、後方ゴム207a,207bの圧縮量が所定量に達するまでハンドルハウジング20が前進すると、前方押圧面210a,210bが前方ゴム208a,208bにそれぞれ当接する。言い換えれば、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさに達するまでは、前方ゴム208a,208bは圧縮されず、後方ゴム207a,207bのみが圧縮される。つまり、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさに達するまでは、第1弾性体である後方ゴム207a,207bのみが防振に寄与する。
図22(c)に示されるように、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさを上回ると、後方ゴム207a,207bに加えて、前方ゴム208a,208bも圧縮される。つまり、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさを上回ると、第1弾性体としての後方ゴム207a,207bおよび第2弾性体としての前方ゴム208a,208bの両方が圧縮され、これら全てのゴムが防振に寄与する。
上記のように、本実施形態に係るハンマドリル1Cに採用されている防振構造では、ハンドルハウジング20に押付力が加えられていないとき、またはハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさを下回っているときには、第1弾性体(後方ゴム207a,207b)のみがモータハウジング10からハンドルハウジング20へ伝わる振動を吸収ないし減衰させる。一方、ハンドルハウジング20に加えられる押付力が所定の大きさを上回ると、第1弾性体(後方ゴム207a,207b)および第2弾性体(前方ゴム208a,208b)がモータハウジング10からハンドルハウジング20へ伝わる振動を吸収ないし減衰させる。よって、本実施形態に係るハンマドリル1Cに採用されている防振構造は、ハンドル21に加えられる力の有無や大きさが変化しても十分な防振効果を発揮する。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第1実施形態におけるコイルばね70や第2実施形態における外側コイルばね191のばね定数は適宜変更することができる。コイルばね70のばね定数を変更することによって、コイルばね70のみが防振に寄与する領域(押圧力の範囲)と、コイルばね70およびゴム71,72の双方が防振に寄与する領域(押圧力の範囲)と、を任意に設定することができる。また、外側コイルばね191のばね定数を変更することによって、外側コイルばね191のみが防振に寄与する領域(押圧力の範囲)と、外側コイルばね191および内側コイルばね192の双方が防振に寄与する領域(押圧力の範囲)と、を任意に設定することができる。
第1ハウジング部材と第2ハウジング部材とを一体化させる連結部材は、第1ハウジング部材または第2ハウジング部材と一体であってもよい。例えば、図2に示されている第1ハウジング部材22に一体成形された上側連結部材80および下側連結部材81に第2ハウジング部材23をそれぞれ固定することにより、第1ハウジング部材22と第2ハウジング部材23とを一体化させることもできる。
連結部材は本体ハウジングを貫通していなくともよい。例えば、図2に示されている上側連結部材80を、モータハウジング10の上方を通過(横断)させて第1ハウジング部材22と第2ハウジング部材23とに跨らせてもよい。また、下側連結部材81を、モータハウジング10の下方を通過(横断)させて第1ハウジング部材22と第2ハウジング部材23とに跨らせてもよい。
本発明は、ハンマドリル以外の電動工具にも適用することができる。本発明は、ハンマドリル以外の電動工具に適用された場合にも上記と同一または実質的に同一の作用効果を奏する。