JP7058466B2 - ノズルキャップ及び医療用プレフィルドシリンジ - Google Patents

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本発明は、ノズルキャップ及び医療用プレフィルドシリンジに関する。
医療用途に用いられる注射器として、予め薬液が充填された注射器(プレフィルドシリンジ)がある。プレフィルドシリンジは、薬液を移しかえる必要がないことから、簡便に使用でき、また、薬液を移しかえる際の医療過誤を防止できるという利点があり、近年使用が増大している。
プレフィルドシリンジのノズルには、ゴム製のノズルキャップが装着される(例えば、特許文献1参照)。このノズルキャップには、保管時にシリンジと強固に嵌合して薬液を封止すること(シール性に優れること)、使用時に取り外しが容易なこと(摺動性に優れること)が求められる。しかしながら、シール性と摺動性とは互いに背反する関係にあり、通常、両立は困難である。ノズルキャップの内表面にシリコーンを塗布することで、ゴム弾性と摺動性とをある程度両立させることが可能となるものの、近年では、更なる改善が求められている。
特表2010-534546号公報
本発明は、前記課題を解決し、シール性と摺動性とを高次元で両立させることが可能なノズルキャップ、及び該ノズルキャップが装着されている医療用プレフィルドシリンジを提供することを目的とする。
本発明は、医療用プレフィルドシリンジのノズルに装着されるノズルキャップであって、前記ノズルキャップの内表面にシリコーンが塗布されており、かつ、該内表面の表面粗さRaが0.8μm以上、2.0μm未満であるノズルキャップに関する。
本発明はまた、前記ノズルキャップが装着されている医療用プレフィルドシリンジに関する。
本発明によれば、内表面にシリコーンが塗布されており、かつ、該内表面の表面粗さRaが特定の範囲に調整されたノズルキャップであるので、シール性と摺動性とを高次元で両立させることができる。
本発明のノズルキャップの一形態を示す模式図である。 図1に示したノズルキャップの縦断面図である。
以下に実施形態を掲げ、図面を参照して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
図1は、本発明のノズルキャップの一形態を示す模式図であり、図2は、その縦断面図である。
図1、2に示されているように、ノズルキャップ1は、円筒状の周側壁2と、周側壁2の一端(図1、2では上端)を塞ぐ端壁3とを備えており、周側壁2及び端壁3は、ゴム部材によって一体成形されている。
また、ノズルキャップ1の内表面4は、プレフィルドシリンジのノズル(不図示)に装着したとき、ノズルの外周面と接触する摺動部4a(周側壁2の内側)と、ノズルの先端と接触する先端接触部4b(端壁3の内側)とで構成されている。
内表面4には、シリコーンが塗布されている。シリコーンとしては、プレフィルドシリンジに充填される薬液に悪影響を与えないことが確認されている、シリコーンオイル、硬化型シリコーン、オイル系溶液型シリコーン、エマルジョン型シリコーンなどを用いることができる。
なお、内表面4において、シリコーンは、一部に塗布されていてもよいし、全体に塗布されていてもよいが、より良好なシール性及び摺動性が得られるという理由から、少なくとも、摺動部4aに塗布されることが好ましい。
内表面4の表面粗さRaは、0.8μm以上、2.0μm未満である。より良好なシール性及び摺動性が得られるという理由から、内表面4の表面粗さRaは、1.0μm以上、1.5μm以下が好ましい。
なお、本明細書において、表面粗さRaは、JIS B0601:1994の「製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラメータ」に準拠して算出される算術平均粗さである。
また、内表面4において、表面粗さRaが上記範囲内の領域は、一部であってもよいし、全体であってもよいが、より良好なシール性及び摺動性が得られるという理由から、少なくとも、摺動部4aの表面粗さRaが上記範囲内であることが好ましい。
周側壁2及び端壁3の構成材料であるゴム部材としては特に限定されないが、例えば、熱硬化型ゴム、熱可塑性エラストマーが挙げられる。耐熱性が要求される用途では、熱硬化型ゴムや、熱可塑性エラストマーのうち、架橋点を有する動的架橋型熱可塑性エラストマーが好ましい。
ゴム部材に使用されるゴム成分も特に限定されないが、成形性の面では、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ブタジエンゴムが好ましく、耐ガス透過性の面では、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムが好ましい。
ゴム部材に使用される架橋剤としては、例えば、硫黄や、2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン等のトリアジン誘導体が挙げられる。
ゴム部材には、前記成分以外に、一般的に使用される充填材、可塑剤、加工助剤などを配合してもよいが、医療用途において必須事項とされている清浄性への影響が大きいため、配合量はできるだけ少なくすることが好ましい。
充填材としては、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、タルクなどの無機充填材やカーボンブラックなどが使用できる。より良好なシール性及び摺動性が得られるという理由から、充填材の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20~70質量部、より好ましくは30~60質量部である。
可塑剤としては、ミネラルオイルなどの鉱物油、液状ポリイソブチレンなどの低分子量ポリマーなどが使用できるが、アロマオイルなどの芳香環構造を有するものは、清浄性が低下するため、好ましくない。可塑剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
ゴム部材(架橋後)の硬度は、より良好なシール性及び摺動性が得られるという理由から、好ましくは40~70、より好ましくは50~60である。
なお、本明細書において、硬度は、JIS K6253-3:2012の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」に準拠し、23℃において、タイプAデュロメーターによって測定される値である。
本発明のノズルキャップは、例えば、以下の方法で製造することができる。
まず、前述のゴム部材に使用する各成分を、インターミックス、バンバリーミキサー、ニーダー等の密閉式混練機やオープンロール等を用いて混練してから、温度150℃~220℃、時間0.5~60分間などの条件で、プレスなどによる圧縮成形、トランスファー成形、射出成形などによって加熱成形し、ゴム部材を架橋(加硫)させる。そして、得られた成形体の内表面にシリコーンを塗布した後、洗浄工程を経て、本発明のノズルキャップが得られる。
なお、ノズルキャップの内表面の表面粗さRaは、ブラスト加工等により、加熱成形時に使用する金型の表面粗さを調整することで変更可能である。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
[使用材料]
<ゴム成分>
ハロゲン化ブチルゴム
<架橋剤>
2-ジ-n-ブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-s-トリアジン
三協化成株式会社製のジスネットDB(登録商標)
<充填材>
日本ミストロン株式会社製のミストロンベーパー
<可塑剤>
出光興産株式会社製のダイアナプロセスオイルPW380
<シリコーン>
硬化型シリコーン
[実施例及び比較例の製造条件]
ゴム成分、架橋剤、充填材、可塑剤を混練した後、温度180℃、時間8分、圧力20MPaの条件で圧縮成形し、得られた成形体の内表面の全体にシリコーンを塗布することで、図1に示す形状のノズルキャップを作製した。ノズルキャップを構成するゴム部材の硬度(23℃)は、50であった。
各例のノズルキャップの内表面における表面粗さRaについては、比較例1を基準とし、圧縮成形に使用する金型の表面をブラスト加工することで狙いの粗さに調整した。
上記ノズルキャップを用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
<表面粗さRa測定>
上記ノズルキャップについて、中心からカッターナイフで縦に2分割し、図2に示したような状態とした。そして、超深度カラー3D形状測定顕微鏡((株)キーエンス製のVK-9510)を用いて測定した内表面の表面性状から、JIS B0601:1994に準拠し、カットオフ0.08mmで、内表面の摺動部の表面粗さRaを算出した。
<シール性(液漏れ試験)>
別途用意したガスケットをバレル(シクロオレフィン樹脂製、内径φ6.35mm)に挿入後、試験液(水に色素(メチレンブルー、シグマアルドリッチジャパン合同会社製)を0.2g/L加えたもの)を充填し、反対側のノズルに上記ノズルキャップを装着した。70℃で1週間静置後、ビデオマイクロスコープ(ライカマイクロシステムズ社製、DVM5000)を用い、対物レンズ50倍で観察し、キャップが浮き上がり、試験液に接触している部分の面積が初期状態から2倍以上に広がったサンプルを液漏れと判定した。20個のサンプルを観察し、液漏れの発生数をカウントした。2未満を良好と評価した。
<摺動性(引き抜き強度試験)>
上記ノズルキャップをバレル(シクロオレフィン樹脂製、内径φ6.35mm)のノズルに装着後、オートグラフ((株)島津製作所製、オートグラフ-1000D型)にバレル側を固定し、50mm/分の速度でノズルキャップを引き抜いた際の最大応力を測定した。測定は、5個のサンプルについて実施し、その平均値を算出した。結果は、実施例2の平均値を100として指数表示した。指数が50~150のものを良好とし、50未満、及び、150を超えるものを不良と評価した。
Figure 0007058466000001
内表面にシリコーンが塗布されており、かつ、内表面の表面粗さRaが特定の範囲内である実施例は、シール性及び摺動性の両方が良好であった。
一方、比較例1は、内表面が平滑すぎて、ノズルキャップとノズルとが強固に嵌合し、摺動性が悪かった。比較例2は内表面が粗すぎて、ノズルキャップとノズルとの嵌合が緩くなり、シール性が悪かった。
1 ノズルキャップ
2 周側壁
3 端壁
4 ノズルキャップの内表面
4a 摺動部(周側壁の内側)
4b 先端接触部(端壁の内側)

Claims (5)

  1. 医療用プレフィルドシリンジのノズルに装着されるノズルキャップであって、
    前記ノズルキャップの内表面にシリコーンが塗布されており、かつ、該内表面の表面粗さRaが0.8μm以上、2.0μm未満であり、
    前記ノズルキャップを構成するゴム部材は、JIS K6253-3:2012の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-」に準拠し、23℃において、タイプAデュロメーターによって測定される硬度が40~70であり、
    前記ノズルキャップは、円筒状の周側壁と、周側壁の一端を塞ぐ端壁とを備えており、前記周側壁及び前記端壁が前記ゴム部材によって一体成形されているノズルキャップ。
  2. 前記表面粗さRaが1.0μm以上、1.5μm以下、前記硬度が50~60である請求項1記載のノズルキャップ。
  3. 前記ゴム部材に使用されるゴム成分は、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム及び臭素化ブチルゴムからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記ゴム部材に使用される架橋剤は、硫黄及びトリアジン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記ゴム部材に使用される充填材は、無機充填材及びカーボンブラックからなる群より選択される少なくとも1種であり、
    前記ゴム部材に使用される可塑剤は、鉱物油及び低分子量ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載のノズルキャップ。
  4. 前記ゴム部材は、ゴム成分100質量部に対して、前記充填材の配合量が20~70質量部、前記可塑剤の配合量が0.1~10質量部である請求項3記載のノズルキャップ。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載のノズルキャップが装着されている医療用プレフィルドシリンジ。
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