JP7058009B2 - 鋼材成分識別装置及びそのプログラム - Google Patents

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Description

特許法第30条第2項適用 発行者 一般社団法人日本鉄鋼協会 刊行物名 CAMP-ISIJ,vol.31(2018)p238 発行日 2018年3月20日
本発明は、鋼材成分識別装置及びそのプログラムに関する。
鋼の製造工程では異材を鑑別して排除するために火花試験が広く用いられている。火花試験とは鋼塊、鋼片、鋼材及びその他の鋼製品をグラインダを使用して研削し、発生する火花の特徴を観察することによって、鋼種の推定又は異材の鑑別を行なう試験のことをいい、JIS G 0566に規定されている(例えば、非特許文献1参照)。
図14は、鋼の火花の形及び名称を示す図である。図に示すように、火花はその位置から「根本」「中央」「先端」の各部に区別され、火花の各部において流線や破裂の形状や密度は変化する。
従来、火花試験は鉄鋼材の検査工程などで熟練した経験をもった検査員が目視観察にて官能検査として行われてきたが、個人差や環境の変動によって判定結果がばらついて適正検査結果を得ることが困難であった。また、官能検査の必然性として検査結果が記録できないため、検査技術はもっぱら経験もしくは伝承によるところが大きく、技術改善を評価することが困難であった。尚、人による炭素成分重量比率〔C〕値の誤差は0.20~0.50%程度ともいわれている。
このような火花試験を目視観察によらず、装置により自動的に行なう技術としては、鋼の火花試験により生じる火花を画像処理することにより鋼材成分を識別する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2012-247206号公報
日本工業規格、JIS G 0566 鋼の火花試験方法、日本規格協会
しかしながら、特許文献1の手法において、得られた破裂密度がばらつく場合がある。これは、何らかの現場環境等が影響していると考えられる。
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、鋼の火花試験により生じる火花を画像処理して鋼材の成分を識別する手法において、破裂密度のばらつきによる影響を低減することが可能な装置及び方法を提供することである。
本発明は、鋼材のSi含有量を取得するSi含有量取込部と、鋼材を研削して発生する火花の画像をグレースケールの火花画像に変換する輝度変換処理部と、グレースケールの火花画像の画素毎に所定の閾値で二値化を行う二値化処理部と、二値化された火花画像に対し、複数の角度に相当する短直線を表す複数のテンプレートを各々マッチングし、マッチングされたテンプレートの種類と位置を記憶する短直線マッチング処理部と、マッチングされたテンプレートが任意の火花画像の範囲において所定の数以上である場合に火花の破裂部とみなして破裂部を抽出し、火花画像全体の前記破裂部の総数である破裂数、及び、火花画像全体のマッチングされたテンプレートの総数である短直線数をカウントする破裂部抽出処理部と、破裂数を短直線数で除した破裂密度と、Si含有量と、に基づいて鋼材を識別する鋼材識別処理部とを有する鋼材成分識別装置である。
また、本発明は、コンピュータを、鋼材のSi含有量を取得するSi含有量取込手段と、鋼材を研削して発生する火花の画像をグレースケールの火花画像に変換する輝度変換処理手段と、グレースケールの火花画像の画素毎に所定の閾値で二値化を行う二値化処理手段と、二値化された火花画像に対し、複数の角度に相当する短直線を表す複数のテンプレートを各々マッチングし、マッチングされたテンプレートの種類と位置を記憶する短直線マッチング処理手段と、マッチングされたテンプレートが任意の火花画像の範囲において所定の数以上である場合に火花の破裂部とみなして破裂部を抽出し、火花画像全体の破裂部の総数である破裂数、及び、火花画像全体の前記マッチングされたテンプレートの総数である短直線数をカウントする破裂部抽出処理手段と、破裂数を短直線数で除した破裂密度と、Si含有量とに基づいて鋼材を識別する鋼材識別処理手段と、として機能させる鋼材成分識別プログラムである。
本発明の鋼材成分識別装置及びその方法によれば、破裂密度を鋼材のSi含有量で補正することにより、鋼材の種類を精度よく認識することが可能となる。
本実施形態の鋼材成分識別装置の構成を示す図である。 本実施形態の鋼材成分識別ルーチンを示すフローチャートである。 本実施形態の鋼材成分識別装置により処理された火花画像を示す図である。 本実施形態の十字二値化を説明する図である。 本実施形態の鋼材成分識別装置で用いる短直線を表すテンプレートを示す図である。 本実施形態の短直線マッチング処理の方法を示す図である。 本実施形態の破裂部を抽出する範囲を示す図である。 破裂密度とSi含有量の関係を示す図である。 本実施形態の鋼材成分識別装置の構成を示す図である。 本実施形態の鋼材成分識別ルーチンを示すフローチャートである。 本実施形態の短直線マッチング処理の方法を示す図である。 本実施形態の複数のテンプレートを用いた短直線マッチング処理の方法を示す図である。 本実施形態の破裂部を抽出する範囲を示す図である。 鋼の火花の形及び名称を示す図である。
以下、本発明の第1実施形態である鋼材成分識別装置及びその方法について、図を参照して詳細に説明をする。
図1は、本発明の第1実施形態の鋼材成分識別装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の鋼材成分識別装置は、検査対象の鋼材BとグラインダCとが接触して発生した火花を撮像するカメラ11と、鋼材のSi含有量を取得するSi含有量取込部12と、カメラ11で撮像された火花画像及び湿度検出部12で計測された湿度に基づいて火花を定量化するコンピュータ13と、を備える。コンピュータ13は、演算処理を行うCPU131と、データのワークエリアであるRAM132と、CPU131の制御プログラムを記憶するROM133を備えている。以上のように構成された本実施形態の鋼材成分識別装置は、次の処理を行うことにより、鋼材の火花の定量化を行う。
図2は、コンピュータ13のCPU131が実行する鋼材成分識別ルーチンを示すフローチャートである。本実施形態の鋼材成分識別装置は、ROM133に格納された制御プログラムをCPU131が実行することにより、Si含有量取込部と、画像取込処理部と、輝度変換処理部と、二値化処理部と、細線化処理部と、短直線マッチング処理部と、破裂部抽出処理部と、鋼材識別処理部とを有する装置として動作する。
以下、上記各ステップS11からS18の詳細な処理について説明する。
(Si含有量取込)
ステップS11では、コンピュータ13のCPU131は、Si含有量取込部12により取得された鋼材のSi含有量の情報をRAM132に取り込んで、ステップS12に進む。鋼材のSi含有量は、鋼材の製造過程で得られる情報であり、火花試験の前に既に得られている情報である。
(画像取込)
ステップS12では、コンピュータ13のCPU131は、カメラ11により撮像された火花画像をカラー画像としてRAM132に取り込んで、ステップS13に進む。
定量的な鋼材分類を行うためには、同種の鋼材の火花に差異が発生しないよう、常に同条件で火花を発生させることが好ましい。本実施形態では、定荷重バネや,引張りバネなどの機械的要素(不図示)により、グラインダCに鋼材Bを押し当てる機構を採用した。定荷重バネや,引張りバネなどの機械的要素により、一定の力で、一定の位置で、かつ、一定の角度での鋼材の押し当てを可能とした。
撮影環境は周囲が薄暗い環境の中、明るい火花を撮影するという特殊な環境であるため、カメラ11にはシャッタースピードや絞りなどをマニュアルで設定できるカメラを使用することが好ましい。また、鋼材BがグラインダCに削られることにより、鋼材BとグラインダCの接触面積が増加して押し当て圧が下がり火花の発生が時間変化するという問題がある。本実施形態のカメラ11では、火花の発生の時間変化の影響を低減するために、短時間で高速の連続撮影(例えば、60fps)が可能なカメラを用いる。
同様に時間経過による火花の変化を避けるため、撮影時間を短くすることが好ましい(例えば1.0秒以下)。また、画像で確認できる火花の流線長さや破裂の数は、シャッタースピードに依存し変化する。このため、解析に適するシャッタースピードの選定(例えば、1/160sなど)をすることが好ましい。
(輝度変換)
ステップS13では、CPU131は、火花画像の各画素の輝度を変換処理して画像を輝度値のみのグレースケール画像に変換し、画像をRAM132に格納して、ステップS14に進む。
図3(a)は、火花画像をグレースケール化した画像の例である。ステップS2では、ステップS1で得られたカラーの火花画像をグレースケール化する。本実施形態では、火花画像中の各画素のRGB値を所定の変換式によってグレースケール値Yへ変換している。例えば、変換式として、Y=R×0.299+G×0.587+B×0.114を用いる。
(二値化処理)
ステップS14では、CPU131は、火花画像の二値化処理を実行し、画像をRAM132に格納して、ステップS15に進む。
本実施形態では、二値化処理の対象となる画素毎に所定の閾値で二値化処理を行う。本実施形態では、抽出対象が火花のような線状の場合に適している十字二値化を用いる。
図4は、本実施形態のステップS14で用いる十字二値化を説明する図である。十字二値化法は、十字内の中心画素以外の画素の平均輝度値から十字の中心画素の輝度値を引き、その値が設定した閾値よりも大きい場合に、十字の中心画素を黒とし(図4(a))、そうでなければ白とする(図4(b))手法である。さらに、今回は火花を黒画素とするため、十字二値化画像の白黒の出力を反転させている。図3(b)に十字二値化して白黒反転させた画像の例を示す。
(細線化処理)
ステップS15では、CPU131は、火花画像の細線化処理を行い、画像をRAM132に格納して、ステップS16に進む。
図3(d)に細線化処理を行った画像の例を示す。細線化処理は、火花の中心線である芯線を抽出する処理である。本実施形態では、ステップS14で十字二値化処理された画像(図3(b)、(c))に対して細線化処理を行う。本実施形態の細線化処理では、火花の太さが1pixelとなるように、黒画素を外側から削り、線幅が1pixelになったらそれ以上削らない処理を行う。そして、端点を保存し、図形の連結性を保存する。この処理により、火花の芯線(中央線)が取得され、火花の流線形状の特徴が簡潔に表現される。
(短直線マッチング)
ステップS16では、CPU131は、火花画像の短直線マッチング処理を行い、マッチングされたテンプレートの種類と位置をRAM132に格納して、ステップS17に進む。
図5に示すように、本実施形態の鋼材成分識別装置では、28方向の角度(6.5度毎)に相当する短直線を表すテンプレートT1~T28を予め用意し、RAM132に格納している。
図6は、短直線マッチング処理の方法を示す図である。細線化画像I5内の細線群a~dに対し、パターン番号(T1~T28)の走査を行い、角度を示すパターンテンプレートをマッチングする。あるテンプレートにP(例えば70)[%]以上マッチングしたとき、そのパターン番号を記録する。図では、細線化画像I5内のa、b、c、d、e部に、パターンテンプレートT14、T22、T4、T8、T26の5つのパターンが各々マッチングされている。
(破裂部抽出処理)
ステップS17では、CPU131は、火花画像から火花の破裂部の抽出を行い、火花の破裂個数のカウントを行う。そして、画像全体の破裂部の数及び各破裂部に存在する短直線の総数をRAM132に格納して、ステップS18に進む。
火花の破裂部においては様々な方向に火花が飛ぶという形態的特徴がある。したがって、短直線の角度から火花が飛ぶ方向を確認することにより、破裂部を抽出することが可能である。本実施形態では、角度の異なる短直線が、例えば4種類以上存在する場合を破裂部とみなす。
図7に示すように、画像I6内の任意の火花画像の範囲(a×b [pixel])(今回は12×12)について、パターン番号の種類の合計を求め、合計値がm(今回は4)種類以上のとき、その範囲を破裂が存在する範囲とする。図では、T14、T22、T26、T4の4種類のパターンが含まれているため、破裂部と認定できる。そして画像全体で破裂部の数を数えることにより破裂の総数を求める。同時に、マッチングされたテンプレートの総数から画像全体に存在する短直線の総数をカウントする。
(鋼種の判別処理)
ステップS18では、CPU131は、火花の破裂密度の算出を行い、火花の破裂密度と湿度から鋼材中の炭素量を推定し、鋼材種類の認識を行う。
本発明者らの評価の結果、鋼中に含まれる炭素の量が変化した場合でも、破裂の数はほぼ同等であることが判明した。したがって、火花の破裂数だけでは炭素量の判別は難しい。一方、本発明者らの評価の結果、鋼中に含まれる炭素の量が少ない場合には、逆に、火花の量は増大することもわかった。
そこで、本実施形態では「破裂密度」という評価基準を定義する。本実施形態では破裂密度を以下の式で表し、この破裂密度の数値により、鋼材中の炭素量を確認する。
破裂密度(D)=破裂数(E)/短直線数(L)
また、火花の形態は立体的かつ「発生」、「成長」、「破裂」及び「消滅」の動的かつ不安定な形態変化を伴うものであるため、図14に示す火花の根本部、中央部、及び、先端部の各部において火花の明度や密度などの特性には相違が生じる。特許文献1のごとく、特定の時点の火花画像1枚の全体から同時に特徴量を抽出した場合には、成分分析の有効精度を確保した撮像や画像処理を行なうことが困難な場合もある。
そこで、本実施形態では、複数の火花画像から各々破裂密度を算出し、それらを平均した平均破裂密度を鋼材中の炭素量の確認に使用する。これにより、1枚の火花画像から求めた破裂密度のみで炭素量を確認した場合と比較して、予測の誤差を小さくすることが可能となる。
画像の取得方法としては、複数枚の火花画像を取得する場合には所定の時間間隔で取得したり、火花発生後から所定の時間を経過した後に連続して複数枚の火花画像を取得したりするなどの手法を用いればよい。本実施形態では、評価対象の画像は、1つの鋼材につき10画像の連続撮影を4回行い平均して評価する。
図8は、所定の炭素含有量を有する鋼種における破裂密度とSi含有量との関係を示す図である。図8に示すように、破裂密度とSi含有量とが、所定の炭素含有量を有する鋼種(図中のS45C,S25C,SCR420,SCM435)に応じてほぼ直線状の相関関係となる。そして、破裂密度はSi含有量の増加と共に低下する。このようにして、所定の炭素含有量を有する鋼種に応じた検量線を作成することができる。破裂密度とSi含有量とSi含有量に応じた検量線とから、鋼種を特定することができる。なお、図8では、直線近似としているが、曲線近似等の他の近似手法を用いてもよい。
なお、本実施形態では、破裂密度とSi含有量と鋼種に応じた検量線とから、鋼種を直接的に特定しているが、これに限られない。例えば、実験により、破裂密度とSi含有量と鋼中の炭素含有量との相関を求め、炭素含有量に応じた検量線を作成し、破裂密度とSi含有量と炭素含有量に応じた検量線とから、炭素含有量を特定し、当該炭素含有量に対応する鋼種を特定することでもよい。
本実施形態では、予め実測した、所定の鋼材におけるSi含有量と破裂密度との関係を検量線とした、1以上の検量線データをRAM132にデータベースとして記憶し、CPU131は、算出された破裂密度と計測された周囲のSi含有量とを、RAM132に記憶された1以上の検量線データを参照して当てはめ、1以上の検量線データの内、該当する検量線データから鋼材を識別する。
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態である鋼材成分識別装置及びその方法について、図を参照して詳細に説明をする。なお、第1実施形態である鋼材成分識別装置及びその方法と構成及び処理が共通する部分については説明を適宜省略する。
図9は、本発明の実施形態の鋼材成分識別装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の鋼材成分識別装置は、検査対象の鋼材BとグラインダCとが接触して発生した火花を撮像するカメラ21と、鋼材のSi含有量を取得するSi含有量取込部22と、カメラ21で撮像された火花画像及びSi含有量取込部22で取得されたSi含有量に基づいて火花を定量化するコンピュータ23と、を備える。コンピュータ23は、演算処理を行うCPU231と、データのワークエリアであるRAM232と、CPU231の制御プログラムを記憶するROM233を備えている。以上のように構成された本実施形態の鋼材成分識別装置は、次の処理を行うことにより、鋼材の火花の定量化を行う。
図10は、コンピュータ23のCPU231が実行する鋼材成分識別ルーチンを示すフローチャートである。本実施形態の鋼材成分識別装置は、ROM233に格納された制御プログラムをCPU231が実行することにより、Si含有量取込処理部と、画像取込処理部と、輝度変換処理部と、二値化処理部と、短直線マッチング処理部と、破裂部抽出処理部と、鋼材識別処理部とを有する装置として動作する。
以下、上記各ステップS21からS27の詳細な処理について説明する。
(Si含有量取込)
ステップS21では、コンピュータ23のCPU231は、Si含有量取込部22により取込された鋼材のSi含有量をRAM232に取り込んで、ステップS22に進む。
(画像取込)
ステップS22では、コンピュータ23のCPU231は、カメラ21により撮像された火花画像をカラー画像としてRAM232に取り込んで、ステップS23に進む。
(輝度変換)
ステップS23では、CPU231は、火花画像の各画素の輝度を変換処理して画像を輝度値のみのグレースケール画像に変換し、画像をRAM232に格納して、ステップS24に進む。
図3(a)は、火花画像をグレースケール化した画像の例である。図3(a)より、火花画像は火花の線(芯線)や破裂部を含むことがわかる。ステップS23では、ステップS22で得られたカラーの火花画像をグレースケール化する。本実施形態では、火花画像中の各画素のRGB値を所定の変換式によってグレースケール値Yへ変換している。例えば、変換式として、Y=R×0.299+G×0.587+B×0.114を用いる。
(二値化処理)
ステップS24では、CPU231は、火花画像の二値化処理を実行し、画像をRAM232に格納して、ステップS25に進む。
本実施形態では、二値化処理の対象となる画素毎に所定の閾値で二値化処理を行う。二値化を行うことにより火花の線(芯線)がより明瞭となる。本実施形態では、抽出対象が火花のような線状の場合に適している十字二値化を用いる。
図4は、本実施形態のステップS3で用いる十字二値化を説明する図である。十字二値化法は、十字内の中心画素以外の画素の平均輝度値から十字の中心画素の輝度値を引き、その値が設定した閾値よりも大きい場合に、十字の中心画素を黒とし(図4(a))、そうでなければ白とする(図4(b))手法である。さらに、今回は火花を黒画素とするため、十字二値化画像の白黒の出力を反転させている。図3(b)に十字二値化して白黒反転させた画像の例を示す。
(短直線マッチング)
ステップS25では、CPU231は、火花画像の短直線マッチング処理を行い、マッチングされたテンプレートの種類(パターン番号)と位置をRAM232に格納して、ステップS26に進む。
図5に示すように、本実施形態の鋼材成分識別装置では、28方向の角度(6.5度毎)に相当する短直線を表すテンプレートT1~T28を予め用意し、RAM22に格納している。本実施形態のテンプレートT1~T28は、太さ1pixel、長さ10pixelの短直線をそれぞれ含む。
図11は、短直線マッチング処理の方法を示す図である。図11の二値化画像I5は、ステップS25を説明するために、火花画像中の特定の火花の破裂位置を例示したものである。本実施形態のステップS25では、火花画像に存在する他の火花の芯線について、短直線マッチングを行う。
二値化画像I5内の芯線群a~dに対し、パターン番号(T1~T28)の走査を行い、角度を示すパターンテンプレートをマッチングする。なお、本実施形態のステップS4では、パターンテンプレートを用いたマッチングは、線の角度のみのマッチングを行い、線の長さのマッチングは行なわない。また、図11は、パターンテンプレートを用いたマッチング方法のいくつかの例を説明する図であり、図でパターンテンプレートがマッチングされていない芯線についてもマッチングを行う。
図12は、本実施形態の複数のテンプレートを用いた短直線マッチング処理の方法を示す図である。図5に示す、テンプレートT1~T28の短直線画像を用い、火花画像の芯線Aに当てはめることで火花情報の抽出を行う。マッチングする短直線が複数ある場合(例えば、図5のT1、T3、T5)には、各テンプレートの短直線を延長し、より合致するものを選択する。図12では、テンプレートT5の短直線延長したもののみ、芯線Aの幅からはみ出さず、芯線A内に留まるため、テンプレートT5が選択されることとなる。
各テンプレートの短直線の延長長さは、火花の芯線の幅に応じて決定すればよく、好ましくは、芯線の幅の0.5倍以上とするのがよい。それより短いと全方向のテンプレートを配置しても芯線内に留まり、一本もはみ出さない可能性があるからである。延長長さは、より好ましくは、芯線の幅の1倍以上、さらに好ましくは、2~3倍以上とするのがよい。
また、図12に示すように、各テンプレートの短直線の延長は、火花芯線内に任意の1点を配置し、芯線からはみ出した短直線(例えばT1)を選び、これを基準線とし、芯線からはみ出していない他の短直線(例えばT3、T5)に、基準線(T1)より長い短直線を配置することで、はみ出した短直線を基準にして他の短直線を延長することでもよい。また、短直線の延長は、既存の短直線を延長してもよいし、短直線をより長い直線に置換することや、より長い直線を重ね合わせてもよい。
本実施形態では、短直線マッチング(テンプレートマッチング)を用いて火花の認識を行っている。従来の短直線マッチングでは、ある程度幅を持った芯線を認識する際に正確な傾きを採ることができず、誤認識を起こすことがある。本実施形態の短直線マッチングでは、角度の異なる複数のテンプレートが合致した場合、その短直線を仮想的に延長し、より合致するものを選択する。こうすることで、より正確な芯線の角度を得ることができる。
そして、マッチングしたテンプレートのパターン番号を記録する。図11では、上記図12に示す手法により、二値化画像I5内のa、b、c、d、e部に、パターンテンプレートT14、T22、T4、T8、T26の5つのパターンが各々マッチングされている。
(破裂部抽出処理)
ステップS26では、CPU231は、火花画像から火花の破裂部の抽出を行い、火花の破裂個数のカウントを行う。そして、画像全体の破裂部の数及び各破裂部に存在する短直線の総数をRAM232に格納して、ステップS27に進む。
火花の破裂部においては様々な方向に火花が飛ぶという形態的特徴がある。したがって、短直線の角度から火花が飛ぶ方向を確認することにより、破裂部を抽出することが可能である。本実施形態では、角度の異なる短直線が、例えば4種類以上存在する場合を破裂部とみなす。
図13の画像I6は、ステップS26を説明するために、火花画像中の特定の火花の破裂位置の芯線を例示したものである。図13に示すように、画像I6内の任意の火花画像の範囲(a×b [pixel])(今回は12×12)について、走査が行われたパターン番号の種類の合計を求め、合計値がm(今回は4)種類以上のとき、その範囲を破裂が存在する範囲とする。
なお、ここで、「任意」の火花画像の範囲としているのは、画像の倍率、サイズ、芯線の太さ等によって、選択された画像内に含まれる火花パターンが変わるためである(図3(b)参照)。「任意」の火花画像の範囲を選定する手段としては、図13のように画像からピクセル数を選ぶか、または、ピクセル数を予め複数選択して、図13と合わせ込みを行うということもできる。以上の作業は、画像全体から、火花画像を判断することによって予測精度を向上させるための前段階として、画像を分割する手段である。また、1つの選択された火花画像の範囲において、この範囲自体の上下左右への移動や、範囲のサイズ、芯線の太さによって、破裂数は変化するが、通常行う上記作業によって、選択範囲が原因となって、極端に破裂数が変化することはない。
図13では、T14、T22、T26、T4の4種類のパターンが含まれているため、破裂部と認定できる。そして画像全体で破裂部の数を数えることにより破裂の総数を求める。同時に、パターンテンプレートを用いてマッチングされたテンプレートの総数から火花画像全体に存在する短直線の総数をカウントする。
(鋼種の判別処理)
ステップS27では、CPU231は、火花の破裂密度の算出を行い、火花の破裂密度とSi含有量から鋼材中の炭素量を推定し、鋼材種類の認識を行う。
本実施形態では、予め実測した、所定の鋼材におけるSi含有量と破裂密度との関係を検量線とした、1以上の検量線データをRAM232にデータベースとして記憶し、CPU231は、算出された破裂密度と計測された周囲のSi含有量とを、RAM232に記憶された1以上の検量線データを参照して当てはめ、1以上の検量線データの内、該当する検量線データから鋼材を識別する。
以上、実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
11:カメラ
12:Si含有量取込部
13:コンピュータ
131:CPU
132:RAM
133:ROM

Claims (11)

  1. 鋼材のSi含有量の情報を取得するSi含有量取込部と、
    前記鋼材を研削して発生する火花の画像をグレースケールの火花画像に変換する輝度変換処理部と、
    前記グレースケールの火花画像の画素毎に所定の閾値で二値化を行う二値化処理部と、
    前記二値化された火花画像に対し、複数の角度に相当する短直線を表す複数のテンプレートを各々マッチングし、当該マッチングされたテンプレートの種類と位置を記憶する短直線マッチング処理部と、
    前記マッチングされたテンプレートが任意の火花画像の範囲において所定の数以上である場合に火花の破裂部とみなして破裂部を抽出し、前記火花画像全体の前記破裂部の総数である破裂数、及び、前記火花画像全体の前記マッチングされたテンプレートの総数である短直線数をカウントする破裂部抽出処理部と、
    前記破裂数を前記短直線数で除した破裂密度と、前記Si含有量と、に基づいて鋼材を識別する鋼材識別処理部と、
    を有することを特徴とする鋼材成分識別装置。
  2. 前記鋼材識別処理部は、
    前記破裂密度と前記Si含有量とに基づいて鋼材の炭素含有量を識別し、当該炭素含有量から鋼材を識別する、ことを特徴とする請求項1に記載の鋼材成分識別装置。
  3. 前記二値化処理部は、十字内の中心画素以外の画素の平均輝度値から十字の中心画素の輝度値を引いた値が、設定した閾値よりも大きい場合に十字の中心画素を黒とし、そうでなければ白とする十字二値化処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼材成分識別装置。
  4. 前記二値化処理部で二値化された火花画像の黒画素を外側から削り、所定のピクセル幅とする細線化処理部をさらに含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鋼材成分識別装置。
  5. 前記短直線マッチング処理部は、前記火花画像が所定の%以上マッチングしたテンプレートを記録することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の鋼材成分識別装置。
  6. 前記鋼材識別処理部は、複数の火花画像から各々前記破裂密度を算出し、それらを平均した平均破裂密度から鋼材を識別することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の鋼材成分識別装置。
  7. 前記輝度変換処理部は、
    鋼材を研削して発生する破裂部及び所定幅の芯線を含む火花の画像をグレースケールの火花画像に変換し、
    前記短直線マッチング処理部は、
    前記二値化された火花画像の所定幅の芯線に対し、複数の角度に相当する短直線を表す複数のテンプレートを、前記複数のテンプレートの短直線を延長して各々マッチングし、延長した短直線が芯線に収まるテンプレートの種類と位置を記憶する、
    ことを特徴とする請求項1に記載の鋼材成分識別装置。
  8. 前記短直線マッチング処理部は、前記芯線の幅に応じて、前記複数のテンプレートの短直線の延長長さを決定する、ことを特徴とする請求項7に記載の鋼材成分識別装置。
  9. 前記短直線マッチング処理部は、前記芯線内に任意の1点を配置し、前記複数のテンプレートの短直線の中より前記芯線からはみ出した短直線を選び、これを基準線とし、前記芯線からはみ出していない他の短直線に、前記基準線より長い短直線を配置することで、前記他の短直線を延長する、ことを特徴とする請求項7に記載の鋼材成分識別装置。
  10. 前記短直線の延長は、既存の短直線を延長する、短直線をより長い直線に置換する、または、より長い直線を重ね合わせる、ことを特徴とする請求項9に記載の鋼材成分識別装置。
  11. コンピュータを、
    鋼材のSi含有量の情報を取得するSi含有量取込手段と、
    鋼材を研削して発生する火花の画像をグレースケールの火花画像に変換する輝度変換処理手段と、
    前記グレースケールの火花画像の画素毎に所定の閾値で二値化を行う二値化処理手段と、
    前記二値化された火花画像に対し、複数の角度に相当する短直線を表す複数のテンプレートを各々マッチングし、当該マッチングされたテンプレートの種類と位置を記憶する短直線マッチング処理手段と、
    前記マッチングされたテンプレートが任意の火花画像の範囲において所定の数以上である場合に火花の破裂部とみなして破裂部を抽出し、前記火花画像全体の前記破裂部の総数である破裂数、及び、前記火花画像全体の前記マッチングされたテンプレートの総数である短直線数をカウントする破裂部抽出処理手段と、
    前記破裂数を前記短直線数で除した破裂密度と、前記Si含有量と、に基づいて鋼材を識別する鋼材識別処理手段と、
    して機能させることを特徴とする鋼材成分識別プログラム。
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