以下、本開示の実施形態に係るヒータについて、図面を参照しつつ説明する。以下で参照する図面は、説明の便宜上の模式的なものである。従って、細部は省略されていることがあり、また、寸法比率は必ずしも現実のものとは一致していない。また、ヒータは、各図に示されていない周知の構成要素をさらに備えていても構わない。
以下の説明において、各部材の材料について主成分と言うとき、主成分は、例えば、その材料の50質量%以上又は80質量%以上を占める成分である。また、各部材の形状について円形又は多角形等と表現するとき、特に断りが無い限り、厳密に円形又は多角形である必要は無い。例えば、多角形の角部は面取りされていてよいし、外縁に比較的小さな突部又は凹部等が形成されていてよい。
(ヒータの概略構成)
図1(a)は、実施形態に係るヒータ1の構成を示す模式的な分解斜視図である。図1(b)は、図1(a)のヒータ1を含むヒータシステム101の構成を示す模式図である。図1(b)において、ヒータ1については、図1(a)のIb-Ib線断面図が示されている。
図1(a)及び図1(b)において紙面上方は、例えば、鉛直上方である。ただし、ヒータ1は、必ずしも紙面上方を実際の上方として利用される必要はない。以下では、便宜上、紙面上方が実際の上方であるものとして、上面及び下面等の用語を用いることがある。また、特に断りがない限り、単に平面視という場合、図1(a)及び図1(b)の紙面上方から見ることを指すものとする。
ヒータシステム101は、ヒータ1と、ヒータ1に電力を供給する電力供給部103と、電力供給部103を制御する制御部105と、を有している。ヒータ1と電力供給部103とは配線部材7によって接続されている。なお、配線部材7は、ヒータ1の一部と捉えられても構わない。また、ヒータシステム101は、上記に挙げた構成の他、例えば、ヒータ1に気体及び/又は液体を供給する流体供給部を有していてもよい。
ヒータ1は、例えば、概略板状(図示の例では円盤状)のヒータプレート3と、ヒータプレート3から下方へ延びているパイプ5とを有している。ヒータプレート3は、その上面3aに加熱対象物の一例としてのウェハWf(図1(b))が載置され(重ねられ)、ウェハWfの加熱に直接に寄与する。パイプ5は、例えば、ヒータプレート3の支持及び配線部材7の保護に寄与する。
(ヒータプレートの概略構成)
ヒータプレート3の上面3a及び下面3bは、例えば、概ね平面である。ヒータプレート3の平面形状及び各種の寸法は、加熱対象物の形状及び寸法等を考慮して適宜に設定されてよい。例えば、平面形状は、円形(図示の例)又は多角形(例えば矩形)である。寸法の一例を示すと、直径は20cm以上35cm以下、厚さは5mm以上30mm以下である。
ヒータプレート3は、例えば、絶縁性の基体9と、基体9に埋設されている抵抗発熱体11と、抵抗発熱体11に電力を供給するための端子13とを備えている。抵抗発熱体11に電流が流れることによって、ジュールの法則に従って熱が発生し、ひいては、基体9の上面3aに載置されているウェハWfが加熱される。
(基体の概略構成)
基体9の外形は、ヒータプレート3の外形を構成している。従って、上述のヒータプレート3の形状及び寸法に係る説明は、そのまま基体9の外形及び寸法の説明と捉えられてよい。基体9の材料は、例えば、セラミックである。セラミックは、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al2O3、アルミナ)、炭化珪素(SiC)、及び窒化珪素(Si3N4)等を主成分とする焼結体である。
また、基体9を構成するセラミックは、希土類を含んでいてよい。希土類としては、スカンジウム(Sc)及びイットリウム(Y)の2元素と、ランタノイドの15元素との合計で17元素を挙げることができる。これらの希土類は、適宜な化合物としてセラミックに含まれていてよい。一例を挙げると、例えば、希土類がイットリウム(Y)である場合において、イットリウム(Y)の化合物として、酸化イットリウム(Y2O3)及びYAG(Y3Al5O12)を挙げることができる。
(抵抗発熱体の概略構成)
図2は、ヒータプレート3の平面透視図である。図3は、図2の領域IIIを拡大及び透視して示す斜視図である。
抵抗発熱体11は、コイル15を有している。コイル15は、線材17がコイル軸CA(図2及び図3において一部のみ示す。)の回りに螺旋状に巻き回されて構成されている。そして、抵抗発熱体11は、コイル軸CAが上面3aに沿って(例えば平行に)延びるように基体9内に埋設されている。基体9を構成する材料は、コイル15の全体を覆っているとともにコイル15の内側(コイル軸CA側)に充填されており、ひいては、線材17の外周面の全面に接している。
なお、図3では、当該図3と後述する図4及び図5との対応関係の把握を容易にするために、直交座標系XYZを付している。Y軸は、図3に示した範囲において、コイル軸CAが概ね直線であると仮定したときに、コイル軸CAに平行な軸である。Z軸は、基体9の上面3aに直交する軸である。X軸は、Y軸及びZ軸に直交する軸(コイル15に対して側方に延びる軸)である。
線材17は、細長い部材であり、その長さは、横断面の寸法に比較して十分に長い。なお、以下の説明において、単に「線材17の横断面」という場合、特に断りが無い限り、当該横断面は、線材17が延びる方向に直交する断面(線材17の中心線CL(図6(a)及び図6(b)参照)に直交する断面)を指すものとする。線材17の横断面の形状及び寸法は、線材17の概ね全長に亘って、概略、一定である。ただし、後述するように、厳密には、線材17の横断面の形状及び寸法は、長さ方向の位置によって異なっていてよい。
線材17の横断面の形状は、円形、楕円形、又は多角形(例えば矩形)等の適宜な形状とされてよい。ただし、本実施形態の説明では、主として、線材17の横断面の形状が概ね円形又は楕円形である場合を例に取る。線材17の横断面の寸法は、適宜に設定されてよい。一例を挙げると、線材17の横断面の直径は、0.2mm以上1mm以下、又は0.3mm以上0.6mm以下である。横断面の形状が円形でない場合、ここでいう直径は、例えば、円相当径であってもよいし、最大径であってもよい。
なお、線材17の円相当径について確認的に説明する。図6(a)に示すように、円相当径Dは、線材17の横断面の面積と同等の面積の真円18を仮定したときの真円18の直径である。このような円相当径Dは、例えば、線材17の横断面の撮像画像から当該横断面の面積を特定し、円の面積の公式から直径が逆算されることによって特定されてよい。また、線材17の横断面の形状が概ね楕円であるときは、長軸と短軸との積の平方根の2倍を円相当径Dとしてもよい。
図3に戻って、コイル15の、コイル軸CA方向に見たときの形状(コイル軸CA方向に見たときの線材17の経路)は、円形(図示の例)、楕円形、又は多角形(例えば矩形)等の適宜な形状とされてよい。なお、以下の説明では、便宜上、当該形状をコイル15の横断面の形状ということがある。本実施形態の説明では、主として、コイル15の横断面の形状が概ね円形又は楕円形である場合を例に取る。
なお、図2に示されているように、平面視又は側面視においては、コイル軸CA回りに螺旋状に巻き回されている線材17は、コイル軸CAを中心として振動する波状に見える。また、図1(b)では、コイル15は、内部に基体9の材料が充填されていない円筒状であるかのように模式的に示されている。図1(b)を厳密に示した場合においては、コイル軸CAの回りの円周上の一部に表れる線材17の断面が上面3aに沿う複数位置に示される。
コイル15の各種の寸法は、適宜に設定されてよい。例えば、平面視及び/又は側面視において、コイル15の波高(波の谷から隣の山までの高さ、振幅の2倍)は、1mm以上10mm、又は2mm以上5mm以下である。ただし、コイル軸CAが屈曲するような特異部分においては、この限りではない。また、例えば、コイル15のピッチ(平面視及び/又は側面視における波長)は、1mm以上10mm以下、又は2mm以上5mmである。ただし、コイル軸CAが屈曲するような特異部分においては、この限りではない。
コイル軸CAの平面視における経路(パターン)は、適宜な形状とされてよい。例えば、コイル15は、ヒータプレート3において1つのみ設けられており、コイル軸CAは、その一端から他端まで自己に対して交差することなく延びている。ひいては、コイル15及び線材17も平面視において自己に対して重複していない。
図2に示す例では、コイル軸CAは、ヒータプレート3を2分割した各領域において、円周方向に往復するように(ミアンダ状に)延びている。換言すれば、コイル軸CAは、円周方向に沿って湾曲しつつ互いに並列(例えば平行)に延びている複数の並列部CA1と、互いに隣り合う並列部CA1の一方から他方へ折り返す部分を構成している折返し部CA2とを有している。ミアンダ状に延びるコイル軸CAにおいて、ヒータプレート3を2分割した半円内における並列部CA1の本数(図示の例では7本)及び径方向の間隔(ピッチ)は適宜に設定されてよい。
なお、コイル軸CAは、図示の例の他、例えば、渦巻状に延びていてもよい。また、コイル軸CAは、一の半径方向において直線状に往復するように延びていてもよい。別の観点では、図示の例とは異なり、並列部CA1は、直線状に延びていてもよい。折返し部CA2の形状は、例えば、隣り合う並列部CA1の端部間を直線的に延びる形状であってもよいし、全体として湾曲する形状であってもよい。
コイル軸CAの基体9の厚み方向における位置は適宜に設定されてよい。例えば、コイル軸CAは、基体9の厚み方向の中央位置(上面3aと下面3bとの中間位置)に位置していてもよいし、前記中央位置よりも上面3a側に位置していてもよいし、前記中央位置よりも下面3b側に位置していてもよい。
線材17の横断面の形状及び寸法、コイル15の横断面の形状及び寸法、並びにコイル15のピッチ(平面視において波状に見える線材17の波長)は、コイル軸CAの全長に亘って一定であってもよいし、コイル軸CAの位置に応じて異なっていてもよい。例えば、特に図示しないが、最も内周の並列部CA1及び最も外周の並列部CA1においては、コイル15のピッチが他の並列部CA1におけるコイル15のピッチよりも小さくされていてもよい。
抵抗発熱体11の材料は、電流が流れることによって熱を生じる導体(例えば金属)である。導体は、適宜に選択されてよく、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、プラチナ(Pt)若しくはインジウム(In)又はこれらを主成分とする合金である。また、抵抗発熱体11の材料は、前記のような金属を含む導電ペーストを焼成して得られるものであってもよい。すなわち、抵抗発熱体11の材料は、ガラス粉末及び/又はセラミック粉末等の無機絶縁物を含むものであってもよい。
(端子)
図1(b)及び図2に示すように、端子13は、例えば、抵抗発熱体11の長さ方向両端に接続されているとともに、当該両端の位置にて、基体9のうちの下面3b側の部分を貫通して下面3bから露出している。これにより、ヒータプレート3の外部から抵抗発熱体11へ電力を供給可能になっている。1対の端子13(抵抗発熱体11の両端)は、例えば、ヒータプレート3の中央側に位置している。端子13と抵抗発熱体11との接合は適宜な方法によってなされてよい。例えば、端子13は、導電ペーストが焼成されることによって抵抗発熱体11と共に一体的に形成されてもよいし、端子13となる部材の一部をかしめて抵抗発熱体11に圧着してもよい。
(パイプ)
図1(a)及び図1(b)に示すパイプ5は、上下(軸方向両側)が開口している中空状である。別の観点では、パイプ5は、上下に貫通する空間5sを有している。パイプ5の横断面(軸方向に直交する断面)及び縦断面(軸方向に平行な断面。図1(b)に示す断面)の形状は適宜に設定されてよい。図示の例では、パイプ5は、軸方向の位置に対して径が一定の円筒形状である。もちろん、パイプ5は、高さ方向の位置によって径が異なっていてもよい。また、パイプ5の寸法の具体的な値は適宜に設定されてよい。特に図示しないが、パイプ5には、気体又は液体が流れる流路が形成されていてもよい。
パイプ5は、セラミック等の絶縁材料から構成されていてもよいし、金属(導電材料)から構成されていてもよい。セラミックの具体的な材料としては、例えば、基体9の説明で挙げたもの(AlN等)が利用されてよい。また、パイプ5の材料は、パイプ5と現に接合されている基体9の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
基体9とパイプ5との固定は、適宜な方法によってなされてよい。例えば、両者は、両者の間に介在する接着剤(不図示)によって固定されてもよいし、両者の間に接着材を介在させずに、固相接合によって固定されてもよいし、ボルト及びナット(いずれも不図示)を利用して機械的に固定されてもよい。
(配線部材)
配線部材7は、パイプ5の空間5s内に挿通されている。平面透視において、ヒータプレート3のうちパイプ5の空間5s内に露出する領域では、複数の端子13が基体9から露出している。そして、配線部材7は、その一端が複数の端子13に接続されている。
複数の配線部材7は、可撓性の電線であってもよいし、可撓性を有さないロッド状のものであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。また、複数の可撓性の電線は、纏められて1本のケーブルのようになっていてもよいし、纏められていなくてもよい。
配線部材7と端子13との接続も適宜なものとされてよい。例えば、両者は、導電性の接合材によって接合されてよい。また、例えば、両者は、一方に雄ねじ部が形成され、他方に雌ねじ部が形成されることにより、螺合されていてもよい。
(線材及びその周囲の構成の詳細)
図4は、線材17及びその周囲について、線材17の横断面(既に述べたように線材17の中心線CLに直交する断面)を示す図である。より詳細には、図4は、線材17のうちコイル軸CAに対して上面3a側に位置している部分の横断面を示しており、また、図4の紙面上方(+Z方向)は、上面3a側に対応している。図5は、図4の領域Vの拡大図である。ヒータプレート3の鏡面加工された断面をSEM(Scanning Electron Microscope)によって撮像することによって、図4及び図5と同様の写真を得ることができる。
線材17の横断面の概略形状は、既述のように、また、図4に示されているように、真円でなくてよい。また、線材17は、微視的には、その表面に凹凸(別の観点では図5に示す複数の突部17p)を有していてよい。基体9は、線材17からの距離に応じて成分比率が変化してよい。より詳細には、例えば、図4及び図5に対応する写真において、所定の成分からなる粒(第1粒子19及び第2粒子21)が観察されてよい。以下、線材17の横断面の概略形状、表面の凹凸及び基体9の成分比率の変化等について順に説明する。
(線材の横断面の概略形状)
線材17は、コイル軸CA回りに巻き回されているから、例えば、コイル軸CAに対して、上面3a側に位置する部分、下面3b側に位置する部分、及び、側方に位置する部分(上記2つの部分をつなぐ部分)を有していると捉えることができる。
線材17のうちコイル軸CAに対して上面3a側又は下面3b側に位置する部分の横断面の形状は、図4に示すように、コイル15の径方向(図4では上下方向)における径が、コイル15の径方向に直交する方向(図4では左右方向)の径よりも短い形状とされてよい。換言すれば、上記横断面の形状は、所定の長手方向(ここでは図4の左右方向)における径(長径)よりも長手方向に直交する短手方向における径(短径)が短い形状とされてよい。すなわち、上記横断面の形状は、扁平な形状とされてよい。ただし、ここでいう扁平は、扁平率が比較的0に近いものであっても構わない。確認的に記載すると、扁平率は、長半径(長径の1/2)をa、短半径(短径の1/2)をbとしたときに、(a-b)/aである。扁平率は、真円では0であり、扁平であるほど1に近づく。より詳細には、例えば、線材17の横断面の形状は楕円状又は長方形とされてよい。また、扁平率は、例えば、0.1以上とされてよい。
また、特に図示しないが、線材17のうちコイル軸CAに対して側方に位置する部分の横断面の形状は、例えば、コイル15の径方向における径と、コイル15の径方向に直交する方向の径とが同等の形状とされてよい。又は、線材17において、コイル軸CAに対して側方に位置する部分の横断面の形状は、コイル軸CAに対して上面3a側又は下面3b側に位置する部分の横断面の形状よりも扁平率が0に近い形状とされてよい。より詳細には、例えば、線材17の横断面の形状は真円、又はコイル軸CAに対して上面3a側又は下面3b側に位置する部分よりも真円に近い楕円状とされてよい。
(線材の表面の凹凸)
図5に示すように、線材17は、その表面に凹凸を有している。この凹凸に含まれる突部のうち、突出量H及び根元径Wのそれぞれが30μm以上のものを突部17pというものとする。
突出量Hは、例えば、図5のような断面において、突部17pの両側の谷のうち最も低い位置(両側の谷同士で最も低い位置が異なる場合は高い方)から突部17pの頂部までの線材17の径方向の長さとされてよい。また、根元径Wは、例えば、図5のような断面において、突部17pの両側の谷のうち最も低い位置同士の距離とされてよい。両側の谷の最も低い位置の線材17の径方向における位置のずれが大きい場合においては、谷の最も低い位置が高い方の谷における最も低い位置における突部17pの幅(線材17の概略形状の輪郭に沿う方向における長さ)を根元径Wとしてよい。
なお、線材17の径方向及び概略形状の輪郭に沿う方向は、線材17の横断面の形状から合理的に判断されてよい。これらの方向の特定についての多少のずれは、突出量H及び根元径Wの実測値に大きくは影響しない。
突部17pの形状、寸法、数及び密度等は適宜に設定されてよい。例えば、突部17p又はその両側の谷において、その表面は、滑らかではなく、微細な凹凸を含んでいてよい。なお、このような微細な凹凸に含まれる突部を突部17pの一部としてみなすか、突部17pとは別個の突部(突部17pと同列に突出量H及び根元径Wが30μm以上である否かが判定される突部)としてみなすかは、微細な凹凸の大きさ、形状、及び線材17の横断面の径方向に対する向き等に基づいて合理的に判断されてよい。
また、例えば、図4に示すような線材17に直交する断面において、複数の突部17pは、突出量H及び根元径Wそれぞれが、後述する複数の第1粒子19の径(例えば円相当径。以下、特に断りが無い限り、同様。後述する第2粒子21についても、また、粒径等という場合も同様。)の代表値よりも大きいものを含んでいてよい。代表値は、例えば、平均値、中央値又は最頻値であり、これらは個数基準であってもよいし、又は面積基準であってもよい(特に断りが無い限り、以下、同様。)。
より詳細には、例えば、複数の突部17pの5割以上、8割以上又は全部において、突出量H及び根元径Wそれぞれが、第1粒子19の径の代表値よりも大きくてよい。
突部17pの突出量H及び根元径Wの上限値は特に存在しない。ただし、例えば、線材17の横断面が矩形である場合における当該矩形の角部のように、線材17の横断面の概略形状の一部として捉えられるような大きな突部は、当然に、突部17pから排除されてよい。その判断は、線材17の横断面の形状及び突部の大きさから合理的に判断されてよい。また、例えば、複数の突部17pの全部又は大部分(例えば8割以上)において、突出量H及び根元径Wそれぞれは、線材17の円相当径の1/10以下又は1/20以下とされてよい。
図6(a)は、図4と同様の横断面を模式的に示している。この図は、図4と同様に、線材17のうちコイル軸CAに対して上面3a側の部分の横断面を示しており、この図において、紙面下方(-Z側)はコイル軸CA側である。線材17の表面(横断面においては外縁)を4つの面に分けて考える。4つの面の1つは、コイル軸CA側の内側面17aである。他の1つは、コイル軸CAとは反対側の外側面17bである。残りの2つは、内側面17aと外側面17bとをつなぐ軸方向面17cである。軸方向面17cは、別の観点では、コイル軸CAが延びる方向に面している面である。なお、4つの面の境界は適宜に設定されてよい。例えば、コイル軸CAと線材17の中心線CLとを最短で結ぶ線と、線材17の表面の法線とが成す角度が45°となる位置を4つの面の境界としてよい。
上記のように4つの面を考えたとき、複数の突部17pの単位面積当たりの数(以下、密度という。)は、4つの面同士において互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。後者の場合において、密度が相対的に高い、又は低い面は、4つの面のうちのいずれの面とされてもよく、また、密度の差の具体的な大きさも適宜に設定されてよい。
例えば、上記密度は、外側面17bにおいて最も高くされてよい。この場合、内側面17aにおける密度及び1つの軸方向面17cにおける密度は、互いに同等であってもよいし、異なっていてもよい。また、内側面17a及び/又は軸方向面17cは、突部17pを有していなくてもよい。より詳細には、例えば、外側面17bにおける密度は、内側面17a及び/又は1つの軸方向面17cにおける密度(ここでは0でないものと仮定する)の1.5倍以上、2倍以上又は5倍以上とされてよい。
また、上記のように外側面17bにおける密度が最も高い場合において、内側面17aにおける密度が2番目に高くされてもよい。この場合、2つの軸方向面17cにおける密度は、互いに同等であってもよいし、異なっていてもよい。また、2つの軸方向面17cの一方又は双方は、突部17pを有していなくてもよい。より詳細には、例えば、内側面17aにおける密度は、1つの軸方向面17cにおける密度(ここでは0でないものと仮定する)の1.5倍以上、2倍以上又は5倍以上とされてよい。
図5に示すように、線材17は、その表面に複数の溝17eを有している。ここでいう溝は、例えば、図5に示すような断面において、複数の凹部のうち幅よりも深さが大きいものをいうものとする。複数の溝17eは、突部17pの表面に形成されているもの、複数の突部17p間の凹部を形成するもの、及び前記凹部の表面に形成されているものを含んでよい。複数の溝のうち、深さが線材17の円相当径の1/30以下のものをここでいう溝17eとして定義してもよい。なお、既述のように、本実施形態の説明では、突部17pは、突出量Hが30μm以上であるから、複数の溝のうち深さが10μm以下のものをここでいう溝17eとして定義した場合においては、溝17eには、突部17p間の凹部は含まれない。
複数の突部17pの間の凹部及び/又はそれ以外の凹部(例えば比較的小さな溝17e)の内部には、例えば、基体9の材料が位置している。基体9の材料は、基本的に、凹部に充填されている。なお、基体9内には気孔が形成されていてよく、当該気孔が凹部内の一部又は全部に位置していても構わない。
(基体の成分比率の変化)
図4に示すように、線材17の周囲においては、基体9を構成する成分のうちのいずれかからなる複数の第1粒子19及び第2粒子21が観察されてよい。複数の第1粒子19は、例えば、線材17から離れた位置にて線材17を囲むように帯状に分布している。すなわち、線材17の横断面において、複数の第1粒子19は、線材17を囲む帯20を構成している。なお、帯20は、3次元的に見たときには、線材17を囲む筒状である。複数の第2粒子21は、例えば、帯20から外側へ離れた位置から、線材17から離れる方向へ広がっている。複数の第2粒子21の線材17から離れる方向への広がりは、線材17の径及び/又はコイル15の径に比較して十分な広さで広がってよく、例えば、基体9の表面又はその付近まで広がっていてよい。換言すれば、複数の第2粒子21は、線材17の周囲を除いて基体9の全体に分布してよい。
第1粒子19及び第2粒子21の材料は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、後者の場合において、互いに異なる材料は、互いに同一の元素(例えば互いに同一の希土類元素)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、第1粒子19及び第2粒子21は、例えば、結晶からなるものであってよい。第1粒子19及び第2粒子21は、1つの元素からなるものであってもよいし、化合物からなるものであってもよい。
本実施形態の説明では、第1粒子19及び第2粒子21それぞれが希土類元素を含む態様を例に取る。また、第1粒子19及び第2粒子21は、体積当たりの希土類元素の含有割合が同程度である態様を例に取る。従って、第1粒子19及び/又は第2粒子21が占める体積%又は面積%が相対的に大きい領域は、希土類元素の含有割合が相対的に高い領域とみなされてよい。このような態様としては、例えば、第1粒子19及び第2粒子21が互いに同一の化合物からなる態様を挙げることができる。第1粒子19及び第2粒子21を構成する化合物は、適宜なものとされてよく、例えば、既述のY2O3及びY3Al5O12を挙げることができる。
以上のような材料の第1粒子19及び第2粒子21が図4のように観察される場合においては、基体9の断面を以下のように複数の領域に分類してその成分比率を特徴付けることが可能である。及び/又は、以下のように複数の領域を定義してその成分比率を互いに異ならせるように各領域の成分を積極的に調整したときに、その結果として第1粒子19及び第2粒子21が観察されてよい。
図6(b)は、ヒータプレート3における線材17に直交する横断面(図4に相当)を模式的に示す図である。この図では、線材17及び基体9を示すとともに、第1粒子19によって構成される帯20も示されている。
線材17の円相当径Dの2倍の距離を2Dとする。そして、線材17の輪郭から距離2Dまでの範囲を第1領域R1とする。第1領域R1を囲む領域(第1領域R1の外側の領域)を第2領域R2とする。このとき、第1領域R1における希土類の含有割合は、第2領域R2における希土類の含有割合よりも小さい。なお、本実施形態の説明において、含有割合は、質量%と同様のものであるものとする。
上記のように第1領域R1及び第2領域R2を定義した場合においては、第1領域R1には、帯20(第1粒子19)と、帯20よりも内側(線材17側)の領域と、帯20と複数の第2粒子21との間の領域とが含まれる。帯20においては、希土類の含有割合が比較的大きい。しかし、その内側(線材17側)及び外側においては、希土類の含有割合が小さい。従って、第1領域R1全体としては、複数の第2粒子21が分布している第2領域R2における希土類の含有割合よりも希土類の含有割合が小さくなる。
第1領域R1において、線材17に接している領域を第3領域R3とする。第3領域R3を囲む領域を第4領域R4とする。第4領域R4を囲み、第2領域R2に囲まれている(接している)領域を第5領域R5とする。
第3領域R3と第4領域R4との境界、及び第4領域R4と第5領域R5との境界は適宜に設定されてよい。例えば、これらの境界は、第4領域R4に帯20(複数の第1粒子19)の全部又は大部分(例えば8割以上)が含まれるように、図4のような写真の目視に基づいて、又は画像解析に基づいて設定されてよい。また、例えば、第3領域R3を線材17の輪郭からの距離が20μmまで又は30μmまでの領域としてよく、第4領域R4を線材17の輪郭からの距離がD/2又はDまでの領域としてよく、前記の第3領域R3の外縁の具体例と第4領域R4の外縁の具体例とは適宜に組み合わされてよい。このように定義すると、帯20の大部分は第4領域R4に含まれる。
上記のように第3領域R3~第5領域R5を設定した場合においては、第4領域R4における希土類の含有割合は、第3領域R3及び第5領域R5における希土類の含有割合よりも大きい。なお、第4領域R4における希土類の含有割合が第3領域R3及び/又は第5領域R5における希土類の含有割合よりも大きいという場合には、第3領域R3及び/又は第5領域R5における希土類の含有割合が0である場合も含まれる。
第1領域R1に含まれる希土類のうち第1領域R1における質量濃度(及び/又は質量%。本段落において、以下、同様。)が最も高い元素と、第2領域R2に含まれる希土類のうち第2領域R2における質量濃度が最も高い元素と、第4領域R4に含まれる希土類のうち第4領域R4における質量濃度が最も高い元素とは、互いに異なっていてもよいし、互いに同一であってもよい。本実施形態では、互いに同一である場合を例に取る。この互いに同一の希土類元素は、既述の種々の希土類元素のいずれでもよく、例えば、イットリウム(Y)である。
なお、各領域においては、上記の希土類のうち質量濃度が最も高い元素以外の希土類元素が含まれていてもよい。例えば、希土類がYである場合、Yの他にEr及び/又はHoなどが少量含まれていてよい。このような少量含まれる希土類は、意図的に基体9に添加されたものであってもよいし、意図せずに混入したものであってもよい。後者としては、例えば、基体9に添加される希土類酸化物粉末(例えばY2O3粉末)に精製過程で含まれる複数の希土類が挙げられる。
各領域における希土類の含有割合の具体的な値は適宜に設定されてよい。基体9(各領域)に含まれる希土類元素の全部又は略全部をイットリウム(Y)が占める場合について、Y2O3に換算した値での含有割合(別の観点では希土類の化合物換算での含有割合)の一例を以下に挙げる。例えば、第1領域R1におけるY2O3の含有割合は、2質量%以下(0でもよい。)とされてよい。第2領域R2におけるY2O3の含有割合は、第1領域R1における含有割合よりも大きいことを条件として、1質量%以上6質量%以下、又は2質量%以上5質量%以下とされてよい。第4領域R4におけるY2O3の含有割合は、7質量%以上30質量%以下、又は15質量%以上30質量%以下とされてよい。別の観点では、第4領域R4におけるY2O3の含有割合は、第2領域R2におけるY2O3の含有割合の3倍以上とされてよい。
各領域における希土類及び/又は各種の元素の含有割合(質量%)及び質量濃度等の測定は、適宜な方法によってなされてよい。例えば、希土類の含有割合は、EDS(Energy dispersive X-ray spectrometry)によって測定されてよい。測定倍率は、例えば、500倍以上1000倍以下とされてよい。また、例えば、適宜な大きさの視野における測定を複数の視野(複数の位置)に対して行い、その平均が求められてよい。1つの視野は、例えば、50μm四方の矩形又は直径50μmの円形とされてよい。
なお、上記では、第1粒子19及び第2粒子21が観察できる場合について述べたが、第1粒子19及び第2粒子21が観察できない場合においても、上記の複数の領域同士の希土類の含有割合の相違が成立してよい。
希土類の化合物の粒子(第1粒子19)が分布している帯20(第4領域R4を帯20と同じと定義した場合は第4領域R4。以下、同様。)の形状及び大きさは適宜に設定されてよい。例えば、図4のように線材17の横断面が扁平な形状である場合においては、帯20は、長手方向(図4では紙面左右方向)における線材17の輪郭からの距離が、短手方向(図4では紙面上下方向)における線材17の輪郭からの距離よりも長くされてよい。別の観点では、帯20の線材17側の縁部(内縁)によって形成される形状(ここでは楕円)は、線材17が潰れている方向と同じ方向に潰れている形状とされてよい。
上記の距離等は適宜に設定されてよい。例えば、帯20の内縁によって形成される形状の扁平率は、線材17の扁平率よりも1に近くされてよく、また、例えば、0.2以上とされてよい。また、例えば、線材17の横断面の短手方向における線材17と帯20との距離(最短距離)は、突部17pが無いものとしたときに(別の観点では突部17pの根本を線材17の輪郭として)20μm以上又は30μm以上とされてよく、また、100μm以下又は50μm以下とされてよく、前記の下限と上限とは適宜に組み合わされてよい。一方で、線材17の横断面の長手方向における線材17と帯20との距離は、上記の短手方向における距離よりも長いことを条件として、D/5以上又はD/3以上とされてよく、また、D以下又は2/3D以下とされてよく、前記の下限と上限とは適宜に組み合わされてよい。
第1粒子19及び第2粒子21の形状及び大きさは適宜に設定されてよい。例えば、第1粒子19の円相当径の代表値(既述のように平均値等)は、第2粒子21の円相当径の代表値よりも大きい。その差の程度は適宜に設定されてよい。例えば、第1粒子19の円相当径の代表値は、第2粒子21の円相当径の代表値の2倍以上、5倍以上又は10倍以上とされてよい。また、上記代表値の具体的な値も適宜に設定されてよい。例えば、第1粒子19の円相当径の代表値は、既に触れたように、例えば、突部17pを定義している突出量H及び根元径Wの大きさ(30μm)よりも小さくされてよい。ただし、前者は後者以上とされても構わない。また、例えば、第1粒子19の円相当径の代表値は、5μm以上又は10μm以上とされてよい。
第1粒子19及び第2粒子21の径の測定は適宜な方法によりなされてよい。例えば、まず、線材17を含む基体9の断面を鏡面に加工する。加工した断面を倍率500~1000倍程度で、金属顕微鏡またはSEMにより撮影する。撮影した画像のうち、希土類元素及び/又は希土類を含む化合物が現れている部分を黒色で白紙にトレースする。なお、希土類元素及び/又は希土類を含む化合物と画像中の色相との対応関係は、EDS及び/又はEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)等を用いた回析によって特定されてよい。トレースした用紙を電子化画像に変換する。変換した画像を画像解析ソフト「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)の粒子解析という手法を用いて解析する。解析条件としては、例えば粒子の明度を「暗」、2値化の方法を「自動」、小図形除去面積を「1μm」、閾値を画像内の各点(各ピクセル)が有する明るさを示すヒストグラムのピーク値の1.2~1.6倍に設定すればよい。なお、金属顕微鏡またはSEMで撮影した画像をそのまま用いて(トレースせずに)、「A像くん」の粒子抽出及び粒子解析という手法で解析してもよい。「A像くん」の粒子解析という手法によって、各粒子の径の各種の代表値が得られる。
(気孔率)
特に図示しないが、基体9内には複数の気孔が存在してよい。図4のような横断面において、単位面積当たりの気孔の面積率は、一様であってもよいし、変化していてもよい。例えば、気孔の面積率は、線材17の近くにおいて相対的に高くなっていてよい。例えば、線材17の輪郭から距離3D(距離Dの3倍)までの領域における気孔の面積率は、その外側(線材17から離れる側)の領域における気孔の面積率よりも高くされてよい。この場合において、前記外側の領域における気孔の面積率は0であってもよい。気孔率の面積率の具体的な値は適宜に設定されてよい。一例を挙げると、線材17から距離3Dまでの領域における気孔の面積率は、3%以上14%以下とされてよい。気孔の面積率は、例えば、上述した粒子の径の測定方法において、粒子に代えて気孔を測定対象としてトレースし、「A像くん」の粒子解析によって解析して算出すればよい。
(ヒータの製造方法)
ヒータ1の製造方法においては、例えば、ヒータプレート3、パイプ5及び配線部材7等が互いに別個に作製される。その後、これらの部材が互いに固定される。ただし、ヒータプレート3及びパイプ5は一部又は全部が共に作製されてもよい。パイプ5及び配線部材7の製造方法は、例えば、公知の種々の方法と同様とされてよい。
ヒータプレート3の製造方法は、例えば、線材17の表面に凹凸を形成するための工程、及び線材17の周囲において希土類の含有割合を変化させるための工程を除いて、公知の種々の方法と概略同様とされてよい。例えば、ホットプレスを用いた方法により、ヒータプレート3を製造することができる。具体的には、例えば、以下のとおりである。
図7は、ヒータプレート3の製造方法の手順の一例を示すフローチャートである。図8(a)及び図8(b)は、図7のフローチャートを補足する模式図である。
ステップST1では、コイル15を有する抵抗発熱体11を作製する。この作製方法は、線材17の表面に凹凸(突部17p等)を形成する以外は、公知の種々の方法と同様とされてよい。例えば、直線状に延びる軸状部材に線材17を巻き回し、その後、軸状部材を引き抜くことによってコイル15が形成されてよい。線材17の表面の凹凸は、例えば、上記のように線材17を軸状部材に巻き回すときに、熱間加工を行うことによって形成してよい。また、熱間加工後に、機械的加工、流体研磨、放電加工などの公知の加工方法を用いて、コイルの表面に突部17pを形成してもよい。これらの加工を施す位置及び/又は向き毎に加工条件を変えることなどによって、任意の位置において突部17pの大きさ及び/又は数を調整することができる。
ステップST2~ST4では、図8(a)に示すように、線材17の外周面に第1被覆層31、第2被覆層33及び第3被覆層35を順に形成する。これらの被覆層は、基体9のうちの線材17の周囲部分を構成するものである。従って、これらの被覆層の材料は、例えば、基体9の材料において、希土類の含有割合が適宜に調整されたものとされている。例えば、第3領域R3、第4領域R4及び第5領域R5において、希土類の含有割合が相対的に「小」、「大」及び「小」となっていることに対応して、第1被覆層31、第2被覆層33及び第3被覆層35における希土類の含有割合は「小」、「大」及び「小」とされる。これにより、希土類の含有割合が互いに異なる第3領域R3、第4領域R4及び第5領域R5が実現される。
ステップST5では、図8(b)に示すように、ホットプレスを行う。すなわち、抵抗発熱体11(図1(b)と同様に模式的に示す)とセラミック原料粉末25とを型27の内部に配置し(ステップST6)、型27を介して抵抗発熱体11及びセラミック原料粉末25を加熱及び加圧する(ステップST7)。加圧は、例えば、上型27aと下型27bとがヒータプレート3の厚さ方向に接近することによってなされる。そして、第1被覆層31、第2被覆層33、第3被覆層35及びセラミック原料粉末25は、焼成されて基体9となる。
ステップST2~ST4において、第1被覆層31、第2被覆層33及び第3被覆層35の具体的な材料及びその作製方法は適宜なものとされてよい。以下に、一例を示す。窒化アルミニウム粉末と、酸化イットリウム粉末と、有機溶媒(例えばテルピネオール)と、バインダー溶液(例えばエチルセルロース系又はアクリル系)とを攪拌脱泡装置内の収納容器に投入する。焼結助剤(例えば炭酸カルシウム粉末)が少量添加されてもよい。そして、収納容器内の上記の種々の材料を攪拌・脱泡して、流動性のあるペーストを作製する。このとき、窒化アルミニウム粉末、酸化イットリウム粉末、有機溶媒及びバインダー溶液の合計100質量%に対して、有機溶媒の含有量は15質量%以上30質量%以下とされてよく、バインダー溶液の含有量は5質量%以上15質量%以下とされてよい。
上記のペーストにおいて、窒化アルミニウム粉末と酸化イットリウム(Y2O3)粉末の合計を100質量%とするとき、第1被覆層31、第2被覆層33及び第3被覆層35におけるY2O3粉末の質量%は、例えば、第3領域R3、第4領域R4及び第5領域R5におけるY2O3の質量%(この範囲の一例については既に述べた。)と概ね同等又はこれよりも少しずれた値とされてよい。例えば、一例を挙げると、上記のように定義したY2O3粉末の質量%は、第1被覆層31においてゼロ、第2被覆層33において5質量%、第3被覆層35において1質量%とされてよい。
ステップST6におけるセラミック原料粉末25は、例えば、窒化アルミニウム粉末と、酸化イットリウム(Y2O3)粉末とを含んでいる。上記のペーストと同様に、窒化アルミニウム粉末と酸化イットリウム(Y2O3)粉末の合計を100質量%とするとき、Y2O3粉末の質量%は、例えば、第3被覆層35(第5領域R5)におけるY2O3粉末の質量%と、第2被覆層33(第4領域R4)におけるY2O3粉末の質量%との間の大きさとされてよい。
Y2O3粉末は、焼成中に窒化アルミニウムの結晶の粒界に広がってY化合物を形成する。Y2O3粉末の添加量が多いほど、Y化合物の粒径が大きくなる。Y化合物が粒成長するためである。従って、第2被覆層33(第4領域R4)及びセラミック原料粉末25(第2領域R2)においてY2O3粉末の添加量が多いことによって、図4又は図5のような写真において観察可能な大きさで第1粒子19及び第2粒子21が形成される。また、第2被覆層33(第4領域R4)におけるY2O3粉末の添加量がセラミック原料粉末25(第2領域R2)におけるY2O3粉末の添加量よりも多いことによって、第1粒子19の径は第2粒子21の径よりも大きくなる。
ステップST2~ST4における具体的手順も適宜なものとされてよい。例えば、ステップST2では、線材17の表面に第1被覆層31となる材料(例えばペースト)を塗布して乾燥させる。次に、ステップST3では、第1被覆層31の表面に第2被覆層33となる材料(例えばペースト)を塗布して乾燥させる。次に、第2被覆層33の表面に第3被覆層35となる材料(例えばペースト)を塗布して乾燥させる。
このように多層の被覆層を順次塗布する場合、各層の粘着性を上げて、各層間の混じり合いを少なくするため、バインダー溶液を添加してもよい。各層は若干混じり合うので、各層の境界は最終的には不鮮明となる。この不鮮明さ(焼結助剤の含有量の緩やかな濃度変化)により、基体9においては、線材17に接する領域から線材17から遠ざかる方向に向かって希土類及び/又はその化合物の急激な組成変化が抑制される。その結果、例えば、焼成過程で各層間においてクラックが発生する蓋然性が低減される。
被覆層となるペーストの塗布は、例えば、スプレー方式とされてよい。この場合、例えば、被覆層の厚みの制御が容易である。また、例えば、抵抗発熱体11のパターン(経路)上の互いに異なる部位同士(例えば並列部CA1及び折返し部CA2)で、及び/又は線材17がコイル軸CAを1周する間における互いに異なる部位同士で被覆層の厚みを互いに異ならせることも容易である。スプレー方式の他、ペーストの塗布は、例えば、抵抗発熱体11全体をペースト中に浸漬させてから引き上げる方式とされてもよい。
線材17の横断面の形状は、例えば、当初(ステップST1)においては、概ね真円、又は真円よりもコイル15の径方向に潰れた形状とされてよい。また、線材17の横断面においては、線材17を軸状部材の回りに巻いたときの変形によって、コイル15の径方向への潰れが生じてもよい。ホットプレス(ステップST5)において、線材17に圧縮力が加えられるときは、上型27a及び下型27bによる接近方向(基体9の厚さ方向、Z方向)に圧縮力が加えられやすい。また、線材17は、ホットプレスがなされている間は高温となるため、塑性変形しやすくなっている。このホットプレスの際に、線材17は上下方向に潰れてもよい。
なお、上記の製造方法の例では、ホットプレスを行う態様を例示したが、ホットプレスに代えて、ホットプレスよりも圧力の方向が均等化されたホットアイソスタティックプレスが行われてもよい。
各領域の形状は、上記の説明から理解されるように、例えば、第1被覆層31、第2被覆層33及び第3被覆層35の厚みを線材17の中心線CL回りの位置に応じて適宜に調整することによって制御できる。また、各領域の形状は、ホットプレス等の圧力によって複数の被覆層及びその外側のセラミック原料粉末25の少なくとも1つが所定方向に潰れることによって実現されてもよい。上記所定方向としては、例えば、型27による圧縮方向が挙げられる。
以上のとおり、本実施形態では、ヒータ1は、基体9と、抵抗発熱体11とを有している。基体9は、希土類を含むセラミックスからなり、第1面(上面3a)を有している。抵抗発熱体11は、基体9の内部に位置している。また、抵抗発熱体11は、線材17がコイル軸CAの回りに螺旋状に巻き回されて構成されたコイルを含む。コイル軸CAは上面3aに沿って延びている。線材17の中心線CLに直交する断面(図4等)において、当該断面における線材17の円相当径をDとしたときに、基体9は、線材17の輪郭から距離2Dまでの第1領域R1と、第1領域R1を囲んでいる第2領域R2と、を有している。第1領域R1における希土類の含有割合は、前記第2領域における希土類の含有割合よりも小さい。
従って、例えば、基体9にクラックが生じる蓋然性を低減することができる。具体的には、例えば、以下のとおりである。
抵抗発熱体11の温度が上昇したとき、線材17の熱膨張によって基体9の線材17に接する部分(第1領域R1)に応力が加えられる。このとき、第1領域R1にクラックが生じる可能性がある。一見、第1領域R1の熱膨張係数が大きい(線材17の熱膨張係数に近い)と、線材17と第1領域R1との熱膨張差が低減されてクラックの発生が抑制されるように思われる。しかし、抵抗発熱体11の熱が第1領域R1から第2領域R2へ伝わるまでには時間を要する。その結果、第1領域R1は、外周側への変形が第2領域R2によって規制され、第1領域R1の熱膨張は内周側(線材17側)への応力を大きくする作用を奏する可能性がある。この場合、第1領域R1の熱膨張係数が大きいほど上記応力が大きくなる。一方、第1領域R1は、希土類の含有割合が相対的に小さくされている。希土類の含有割合が小さい程、セラミックの熱膨張係数は小さくなる。これにより、応力の上昇が緩和され、第1領域R1にクラックが生じる蓋然性が低減される。
また、上記のように抵抗発熱体11の熱が第1領域R1から第2領域R2へ伝わるには時間を要するから、加熱(特に昇温)中において、第1領域R1の温度が第2領域R2の温度よりも高くなりやすい。すなわち、第1領域R1と第2領域R2との間で温度差が生じる。そして、第1領域R1の熱膨張量が第2領域R2の熱膨張量よりも大きくなり、第2領域R2にクラックが生じる可能性がある。一方、本実施形態では、第1領域R1における希土類の含有割合は、第2領域R2における希土類の含有割合よりも小さくされている。通常、希土類の含有割合が小さい程、セラミックの熱膨張係数は小さくなる。従って、第1領域R1の熱膨張係数は第2領域R2の熱膨張係数よりも小さくなる。その結果、第1領域R1と第2領域R2との間の熱膨張差が低減され、クラックが生じる蓋然性が低減される。
また、本実施形態では、第1領域R1は、第3領域R3と、第4領域R4とを有している。第3領域R3は、線材17に接して線材17を囲んでいる領域である。第4領域R4は、第3領域R3を囲んでおり、第3領域R3よりも希土類の含有割合が大きい領域である。
この場合、例えば、第1領域R1にクラックが生じた場合に、クラックの進展を低減することができる。その理由は次の通りである。焼結助剤としての希土類の含有量が多いほど、機械的強度は向上する傾向がある。このため、抵抗発熱体11に接する第3領域R3においてクラックが生じたとしても、第4領域R4でクラックの進展が抑制される。より正確には、クラックが第4領域R4まで進展しても、第4領域R4に沿って(線材17を周回する方向に沿って)クラックの進展方向が変わるため、クラックの進展が抑制される。
また、本実施形態では、第4領域R4及び第2領域R2は、希土類を含む化合物からなる粒子(第1粒子19及び第2粒子21)を複数有している。第1粒子19の円相当径の第4領域R4における平均値が、第2粒子21の円相当径の第2領域R2における平均値よりも大きい。
この場合、例えば、上述した第4領域R4におけるクラックの進展を抑制する効果が向上する。具体的には、第3領域R3で生じたクラックが第4領域R4へ向かって進展したときに、クラックが第1粒子19に到達すると、クラックは第1粒子19を迂回して第5領域R5へ向かって進展しようとする。このとき、第1粒子19の径が相対的に大きいことによって、クラックが第1粒子19を迂回しにくくなる。その結果、クラックの進展を抑制する効果が向上する。
また、本実施形態では、第1領域R1に含まれる希土類のうち第1領域R1における質量濃度が最も高い元素(例えばY)と、第2領域R2に含まれる希土類のうち第2領域R2における質量濃度が最も高い元素と、第4領域R4に含まれる希土類のうち第4領域R4における質量濃度が最も高い元素とは同じである。
この場合、例えば、ホットプレスのときに焼成収縮カーブが上記の領域間で同等となる。焼成収縮カーブは、温度の上昇に伴って成形体の寸法が収縮するときの温度と収縮率との対応関係を示すグラフにおける曲線である。従って、基体9にクラックが生じる蓋然性が低減される。
また、本実施形態では、前記質量濃度が最も高い元素はイットリウムである。
この場合、例えば、クラックが生じる蓋然性を低減する効果を向上させることができる。より具体的には、例えば、以下のとおりである。ヒータ1がウェハWfに対して薄膜を形成するCVD(chemical vapor deposition)装置に利用された場合を考える。このとき、例えば、成膜のためにフッ素系の腐食性ガスが使用される。その結果、基体9において、主成分(例えば窒化アルミニウム)の結晶の粒界に位置する希土類が腐食する可能性がある。一方、Yの化合物は、希土類の化合物の中でも、フッ素を含む腐食性ガスに対する耐食性に優れている。従って、基体9の腐食を抑制することができる。その結果、腐食に起因する基体9の強度低下、及び/又はクラックの発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、線材17は、当該線材17に直交する断面(図4参照)における形状が所定の長手方向における径よりも前記長手方向に直交する短手方向における径が短い形状である第1部分(図4に例示した部分)を有している。上記断面において、希土類を含む化合物からなる複数の粒子(第1粒子19)が帯状に分布している領域(帯20)を第4領域R4とする。このとき、前記第1部分を囲んでいる第4領域R4は、前記長手方向における線材17の輪郭からの距離が、前記短手方向における線材17の輪郭からの距離よりも長い。
この場合、例えば、クラックが生じる蓋然性を低減することができる。具体的には、以下のとおりである。線材17の温度が上昇したとき、線材17の横断面において、熱膨張率は長手方向と短手方向とで概ね同等であるから、長手方向の熱膨張量は短手方向の熱膨張量よりも大きい。その結果、長手方向において線材17から基体9へ加えられる応力は、短手方向において線材17から基体9へ加えられる応力よりも大きくなりやすい。一方、帯20は、その長手方向において線材17からの距離が長くされている。既述のように、帯20よりも線材17側の第3領域R3は、希土類の含有割合が相対的に小さくされており、また、希土類の含有割合が小さい程、セラミックの熱膨張係数は小さくなる。従って、線材17の長手方向外側における基体9の熱膨張量が相対的に小さくされることによって、長手方向の熱応力の上昇が低減される。ひいては、クラックが生じる蓋然性が低減される。
[変形例]
ヒータの種々の変形例について以下に述べる。変形例の説明では、基本的に、実施形態又は先に説明された変形例との相違点についてのみ述べる。従って、特に言及がない事項については、実施形態又は先に説明された変形例と同様とされてよい。また、実施形態の構成と対応する構成については、実施形態の構成と差異があっても、便宜上、実施形態の構成に付した符号と同一の符号を付すことがある。
(第1変形例)
図9は、第1変形例の構成を示す、図6(b)と同様の模式的な断面図である。
この図において、紙面左右方向は、コイル軸CAに平行な方向である。そして、線材17のうち、コイル軸CAに平行な方向において互いに隣り合う2つの部位が図示されている。すなわち、図示されている2つの部位は、線材17のうちコイル軸CAが延びる方向にコイルの1ピッチで互いに離れた部位である。
この2つの部位を第1部位及び第2部位とする。このとき、本変形例では、第1部位を囲む帯20(第4領域R4)の第2部位側の一部と、第2部位を囲む帯20(第4領域R4)の第1部位側の一部とが互いに重複している。帯20が重複している部分における希土類の含有割合は、帯20が重複していない部分における希土類の含有割合に対して、同等であってもよいし、大きくなっていてもよい。このような構成は、例えば、第2被覆層33を形成するときに、第2被覆層33のうち、第1部位を囲む部分と第2部位を囲む部分とを接触又は近接させることによって実現されてよい。
このような構成では、例えば、帯20が重複している部分は、第1部位からのクラックの進展の抑制と、第2部位からのクラックの進展の抑制とに兼用されるから、希土類元素を含む化合物によるクラックの進展の抑制の効果が効率的に得られることになる。また、帯20が重複している部分における希土類の含有割合が、帯20が重複していない部分における希土類の含有割合よりも大きくなっている場合においては、重複している部分におけるクラックの進展の抑制の効果が向上する。これにより、例えば、第1部位からのクラックと第2部位からのクラックとがつながって大きなクラックが形成される蓋然性が低減される。
(第2変形例)
図10(a)は、抵抗発熱体11(コイル15)のうち、折返し部CA2(図2参照)及びその付近の拡大図となっている。
折返し部CA2は、既に述べたように、並列部CA1の端部間を直線的に延びる形状であってもよいし、全体として湾曲する形状であってもよい。図示の折返し部CA2は、2つの並列部CA1に概ね直交する交差部CA21と、この交差部CA21と並列部CA1とをつなぐように湾曲している角部CA22とを有している。換言すれば、コイル軸CAは、並列部CA1と、交差部CA21と、これらの曲率よりも大きい曲率で曲がって延びている角部CA22とを有している。
角部CA22において、角部CA22の外側におけるコイル15のピッチp3は、例えば、並列部CA1及び交差部CA21におけるコイル15のピッチp1及びp2よりも大きくなっている。なお、ピッチp2は、例えば、ピッチp1と概ね同等である。折返し部CA2付近及び/又は角部CA22付近においては、発熱密度が高くなりやすい。このような位置においてピッチが相対的に大きくされることによって、線材17から基体9へ加えられる応力を低減し、クラックが発生する蓋然性を低減することができる。
なお、ここでは、角部CA22のピッチp2について述べたが、折返し部CA2が全体として湾曲する形状(2つの並列部CA1の曲率よりも曲率が大きい形状)とされて、折返し部CA2におけるピッチが2つの並列部CA1におけるピッチよりも大きくされた場合も同様の効果が奏される。また、交差部CA21及び角部CA22は、全体として、2つの並列部CA1の曲率よりも曲率が大きい部分とみなされてよく、交差部CA21及び角部CA22の平均的なピッチが2つの並列部CA1におけるピッチよりも大きくされてもよい。また、図示の例とは異なり、交差部CA21におけるピッチp2は、並列部CA1におけるピッチp1よりも大きくされてよく、例えば、角部CA22におけるピッチp3と同程度とされてもよい。
図10(b)は、図10(a)のうち角部CA22付近の拡大図である。この図では、線材17の横断面において線材17を囲む帯20(第4領域R4)のうち、線材17に対してコイル軸CAとは反対側に位置する部分の平面視における形状が模式的に示されている。
この図に示すように、第2変形例においては、線材17のうち、角部CA22回りに巻き回されている部分は、他の部分に比較して、線材17と帯20との距離が長くされてもよい。なお、図4に示したように、線材17と帯20との距離は、線材17の中心線CL回りの位置によって異なる。従って、線材17と帯20との距離について、線材17のうち角部CA22回りの部分と、他の部分とで比較する場合は、線材17の中心線CL回りの位置が互いに同一の位置同士においてなされる。例えば、コイル軸CAに対して上面3a側に位置する部分同士、コイル軸CAに対して下面3b側に位置する部分同士、コイル軸CAに対して側方に位置する部分同士で比較が行われる。角部CA22における線材17と帯20との距離と、他の部分における線材17と帯20との距離との差は適宜に設定されてよい。例えば、前者は、後者の1.2倍以上、1.5倍以上又は2倍以上とされてよい。線材17と帯20との距離は、例えば、既述の製造方法の説明から理解されるように、第1被覆層31の厚さの調整によって調整されてよい。
上述のように、折返し部CA2付近及び/又は角部CA22付近においては、発熱密度が高くなりやすい。一方、これも既に述べたように、希土類の含有割合が少ないほど熱膨張係数は低い。そして、線材17と帯20との距離が長いほど、希土類の含有割合が少ない第3領域R3の内縁から外縁までの距離が長くなる。従って、角部CA22付近において線材17と帯20との距離が相対的に長いことによって、局所的に大きい熱応力が生じる蓋然性を低減することができる。
なお、ここでは、角部CA22における線材17と帯20(第4領域R4)との距離について述べたが、図示のような交差部CA21を含む折返し部CA2の全体、又は全体として湾曲する形状の折返し部CA2の全体において、並列部CA1に比較して、線材17と帯20との距離が長くされてもよい。
(第3変形例)
図11(a)は、第3変形例に係るヒータプレート303の一部の構成を示す断面図である。ヒータプレート303の上面303a及び下面303bが示されていることから理解されるように、この図において、紙面上下方向はヒータプレート303の厚み方向である。また、図11(b)は、ヒータプレート303の一部において抵抗発熱体11(11A及び11B)を平面透視して示す図である。この図では、波状に見える抵抗発熱体11の包絡線も図示している。
これらの図に示されているように、ヒータプレート303は、その厚さ方向に階層的に配置された複数(図示の例では2つ)の抵抗発熱体11(11A及び11B)を有していてもよい。平面視において、2つの抵抗発熱体11は、互いに同一のパターン(経路)であってもよいし、互いに異なるパターンであってもよい。また、両者は、互いに重なっていてもよいし、互い重なっていなくてもよい。コイル15の横断面の形状及び寸法、並びに線材17の横断面の形状、寸法及び材料等は、2つの抵抗発熱体11同士で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
図示の例では、ヒータプレート303は、平面透視において2つの抵抗発熱体11が互いに重なっている重複領域LP1と、互いに重なっていない非重複領域LP0とを有している。なお、図11(b)では、抵抗発熱体11が紙面上下方向に延びている部分に着目して、重複領域LP1及び非重複領域LP0の符号を示している。
コイル15の2つの包絡線に挟まれた帯状の領域の幅を抵抗発熱体11の幅というものとする。このとき、重複領域LP1において、2つの抵抗発熱体11は、その幅の全部同士が重なっていてもよいし(図11(b)において抵抗発熱体11が紙面左右方向に延びている部分を参照)、一部同士が重なっていてもよい(図11(b)において抵抗発熱体11が紙面上下方向に延びている部分を参照)。なお、特に図示しないが、一方の抵抗発熱体11の幅が他方の抵抗発熱体11の幅よりも小さく、一方の幅の全部が他方の幅の一部に重なってもよい。
図11(b)では、2つの抵抗発熱体11の幅の一部同士が重なっている場合においても、その2つの抵抗発熱体11の幅全体を含む幅で重複領域LP1を定義している。ただし、2つの抵抗発熱体11の幅のうちの現に重なっている一部のみが重複領域LP1として定義されても構わない。図11(b)では、主として2つの抵抗発熱体11が並列に延びている部分について重複領域LP1及び非重複領域LP0を示している。ただし、2つの抵抗発熱体11が互いに交差する重複領域LP1が設けられてもよい。
図12は、2つの抵抗発熱体11及びその周囲(基体9)について、重複領域LP1及び非重複領域LP0における線材17の横断面を示す模式図である。図12の紙面上下方向は、2つの抵抗発熱体11の積層方向(上面303aに直交する方向)である。図示されている線材17の4つの横断面は、コイル軸CA回りの位置(例えば、コイル軸CAに対して上面3a側、下面3b側及び側方のいずれであるか等)が互いに同一であるものとする。
線材17の輪郭から帯20(第4領域R4)までの上下方向における距離をs1~s8とする。具体的には、非重複領域LP0、かつ上面303a側の抵抗発熱体11Aにおいて、線材17の上方側における上記距離をs1とし、線材17の下方側における上記距離をs2とする。非重複領域LP0、かつ下面303b側の抵抗発熱体11Bにおいて、線材17の上方側における上記距離をs3とし、線材17の下方側における上記距離をs4とする。重複領域LP1、かつ上面303a側の抵抗発熱体11Aにおいて、線材17の上方側における上記距離をs5とし、線材17の下方側における上記距離をs6とする。重複領域LP1、かつ下面303b側の抵抗発熱体11Bにおいて、線材17の上方側における上記距離をs7とし、線材17の下方側における上記距離をs8とする。
この場合において、距離s1~s8は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。例えば、距離s1~s4の合計が距離s5~s8の合計よりも大きくされてもよい。換言すれば、線材17の輪郭から帯20(第4領域R4)までの上面303aに直交する方向における距離(s1~s8)をd1とし、1つの線材17に直交する同一断面における、線材17に対して上面303a側の距離d1と線材17に対して下面303b側の距離d1との2つの合計(例えばs1+s2)の距離をd2とし、距離d2の2つの抵抗発熱体11(11A及び11B)における合計の距離(例えばs1+s2+s3+s4)をd3としたときに、非重複領域LP0における距離d3(s1+s2+s3+s4)は、重複領域LP1における距離d3(s5+s6+s7+s8)よりも長い。別の観点では、重複領域LP1においては、非重複領域LP0に対して、第3領域R3が小さくされてよい。
第3領域R3においては、希土類の含有割合が第4領域R4よりも小さいことから、例えば、熱伝導率が高い。従って、例えば、非重複領域LP0の第3領域R3を相対的に大きくして、非重複領域LP0における抵抗発熱体11の熱を迅速に上面303aへ伝えることができる。その結果、上面303aのうち重複領域LP1における部分が相対的に早期に昇温される蓋然性を低減できる。
(第4変形例)
図13(a)は、第4変形例に係るヒータプレート403の一部の構成を示す断面図であり、図11(a)に対応している。ただし、ここでは、重複領域LP1及び非重複領域LP0の符号から理解されるように、便宜上、非重複領域LP0についても、2つの抵抗発熱体11が同一断面に位置しているかのように示している。
ヒータプレート403は、ヒータプレート303と同様に、2つの抵抗発熱体11(11A及び11B)を有している。ただし、この変形例では、重複領域LP1における2つの抵抗発熱体11同士の上下方向(上面403aに直交する方向)における距離は、非重複領域LP0における2つの抵抗発熱体11同士の上下方向における距離よりも短い。なお、重複領域LP1における2つの抵抗発熱体11同士の上下方向における距離は、例えば、2つの抵抗発熱体11の現に重なっている部分同士の距離とされてよい。非重複領域LP0の2つの抵抗発熱体11同士の上下方向における距離は、例えば、平面視において互いに重なっていないながらも互いに隣り合っている部分同士の、上下方向に平行な距離とされてよい。当該距離は、ヒータプレート403を側面視したときの2つの抵抗発熱体11間の最短距離であってもよいし、2つの抵抗発熱体11の、コイル軸CA回りの互いに同一の位置同士の距離であってもよい。
別の観点では、上面403a側の抵抗発熱体11Aと上面403aとの距離を考えたときに、重複領域LP1における距離s11は、非重複領域LP1における距離s10よりも長い(s11>s10)。同様に、下面403b側の抵抗発熱体11Bと下面403bとの距離を考えたときに、重複領域LP1における距離s13は、非重複領域LP1における距離s12よりも長い(s13>s12)。なお、s11>s10及びs13>s12のうち一方のみが成立しても構わない。
重複領域LP1における2つの抵抗発熱体11同士の上下方向における距離と、非重複領域LP0における2つの抵抗発熱体11同士の上下方向における距離との差は適宜に設定されてよい。例えば、両者の差は、コイル15の直径の1/10以上、1/5以上、1/2以上又は1倍以上とされてよい。
重複領域LP1においては、発熱量が多い。一方、非重複領域LP0においては抵抗発熱体11同士の距離を長くすることにより、例えば、抵抗発熱体11の熱を基体9に伝えやすくなる(分散しやすくなる。)。その結果、例えば、上面403aの昇温について、重複領域LP1と非重複領域LP0との差を低減できる。また、例えば、重複領域LP1において上面403a側の抵抗発熱体11Aと上面403aとの距離s11を相対的に長くすることによって、抵抗発熱体11のうちの重複領域LP1に位置する部分の熱が上面403aに伝わる過程で、この熱を非重複領域LP0へ伝えやすくすることもできる。
2つの抵抗発熱体11同士の距離の調整は適宜な方法によってなされてよい。例えば、セラミック原料粉末25(図8(b)参照)の流動性を適宜に調整することなどによって、重複領域LP1におけるセラミック原料粉末25の密度を相対的に低くする。これにより、焼成時の基体9の収縮によって、2つの抵抗発熱体11同士の距離を重複領域LP1において相対的に短くすることができる。
上記のような製造方法を採用する場合においては、焼成直後において、基体9は、図13(b)に示すような形状となっていてもよい。すなわち、重複領域LP1の厚みが非重複領域LP0の厚みよりも薄くなってよい。そして、このような形状の基体9の上面及び下面を研磨することによって、最終的な上面403a及び下面403bが形成されてよい。
以上の実施形態及び変形例において、上面3a、303a及び403aはそれぞれ第1面の一例である。第1粒子19及び第2粒子21は粒子の一例である。図9に示した線材17の2つの部分は第1部位及び第2部位の一例である。並列部CA1及び交差部CA21は第1延在部及び第2延在部の一例であり、角部CA22は屈曲部の一例である。別の観点では、2つの並列部CA1は第1延在部及び第2延在部の一例であり、折返し部CA2は屈曲部の一例である。図4に示した扁平な部分は第1部分の一例である。
本開示に係るヒータは、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
ヒータは、ヒータとしての機能以外の機能を有していてもよい。例えば、基体内には、抵抗発熱体以外に、ヒータプレートを静電チャックとして機能させるための電極、及び/又はプラズマを発生させるための電極等が設けられていてもよい。このような電極は、例えば、抵抗発熱体に対して上面側に位置してよい。
また、例えば、(1層の)抵抗発熱体は、複数に分割されて、又は1本の抵抗発熱体の複数個所に給電点が設けられて、個別に発熱量を制御可能とされていてよい。ヒータは、抵抗発熱体及び端子に加えて、端子と抵抗発熱体とを接続する配線パターンを抵抗発熱体の層とは別個の層に有していてもよい。突部17p等の線材の表面の凹凸は設けられていなくてもよい。