JP7057532B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

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Description

本開示は、スクロール圧縮機に関するものである。
一般に、スクロール圧縮機は、ケーシングの内部の上部に圧縮機構を備えている。圧縮機構の下方にはモータが配置されている。モータと圧縮機構は駆動軸で連結されている。例えば特許文献1のスクロール圧縮機では、駆動軸は、圧縮機構との連結部の下方において、転がり軸受で支持されている。
転がり軸受に供給された潤滑油は、転がり軸受の下部から油排出用の通路を通じて、ケーシングの下部に設けられている油溜まり部へ戻される。
特開2013-036409号公報
特許文献1のスクロール圧縮機では、転がり軸受を潤滑した後の潤滑油が、冷媒が充満するケーシング内の高圧空間に排出されるように構成されている。そして、ケーシングには、この高圧空間に連通する吐出管が設けられている。
この構成では、ケーシングの下部の油溜まり部へ戻る途中の潤滑油が高圧の吐出ガス冷媒と混じって吐出管から吐出されることがある。その結果、ケーシング内の潤滑油の量が減少し(油上がりが生じ)、スクロール圧縮機の性能や信頼性が低下するおそれがある。
本開示の目的は、転がり軸受を潤滑した後の潤滑油が吐出ガスに混じって吐出管から吐出され難くなるようにし、スクロール圧縮機の性能や信頼性の低下を抑えることである。
本開示の第1の態様は、
スクロール圧縮機であって、
圧縮機構(30)と、
上記圧縮機構(30)から吐出される高圧流体の圧力になる第1空間(16,54)と、該第1空間(16,54)よりも低圧の圧力になる第2空間(80,31b)とが形成されたケーシング(11)と、
上記圧縮機構(30)に連結された駆動軸(23)と、
上記第1空間(54)の内部で上記駆動軸(23)を支持する転がり軸受(62)と、
上記転がり軸受(62)へ潤滑油を供給する軸受給油路(78,79)と、
上記第1空間(54)の内部で上記転がり軸受(62)の下方に配置され、該転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油を回収する油回収部材(70)と、
上記第1空間(54)の油回収部材(70)から潤滑油を上記第2空間(80,31b)に導入する油回収路(71)と、
を備えていることを特徴とする。
第1の態様では、高圧空間である第1空間(54)にある転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油は、その下方にある油回収部材(70)から、第1空間(54)よりも低圧の第2空間(80,31b)へ、油回収路(71)を通って流出する。油回収路(71)を通った潤滑油は、高圧の第1空間(16,54)へは流出しないので、潤滑油が第1空間からスクロール圧縮機の機外へ流出し難くなる。したがって、スクロール圧縮機の性能や信頼性の低下を抑えられる。
本開示の第2の態様は、第1の態様において、
上記圧縮機構(30)と上記駆動軸(23)との連結部(38)に設けられて該駆動軸(23)のクランクピン(25)を支持するピン軸受(61)と、
上記ピン軸受(61)に潤滑油を供給する主給油路(27)と、を備え、
上記軸受給油路(78,79)は、上記主給油路(27)から上記転がり軸受(62)へ潤滑油を供給する通路である
ことを特徴とする。
第2の態様では、主給油路(27)と軸受給油路(78,79)を通ってピン軸受(61)と転がり軸受(62)に供給された潤滑油が、油回収路(71)を通って第2空間(80,31b)に回収される。主給油路(27)を通った潤滑油が第1空間(16,54)へ流出しないので、潤滑油が第1空間(16,54)からスクロール圧縮機の機外へ流出するのを効果的に抑制できる。
本開示の第3の態様は、第1または第2の態様において、
上記ケーシング(11)内の下部空間に形成され、潤滑油が貯留されて上記高圧流体の圧力が作用する油溜まり部(17)と、
上記圧縮機構(30)と上記駆動軸(23)との連結部(38)の高圧の潤滑油を、上記ケーシング(11)内の第1空間(16)を介して上記油溜まり部(17)へ排出する排油通路(90)と、
を備えていることを特徴とする。
第3の態様では、転がり軸受(62)への潤滑油の供給量が油回収路(71)による潤滑油の回収量よりも多い場合に、排油通路(90)により、潤滑油が第1空間(16)を介して上記油溜まり部(17)へ排出され、潤滑油の供給量と排出量(回収量)とがバランスする。
本開示の第4の態様は、第1から第3の態様の何れか1つにおいて、
上記第2空間(80,31b)は、上記圧縮機構(30)が有する固定スクロール(40)に対して可動スクロール(35)の自転を阻止して公転を許容する自転阻止機構(84)が配置された空間(80)により構成されている
ことを特徴とする。
本開示の第5の態様は、第4の態様において、
上記自転阻止機構(84)がオルダムリング(85)を備え、
上記油回収路(71)は、上記オルダムリング(85)が摺動するオルダムリング摺動面(88)に開口部(72a)が形成された通路である
ことを特徴とする。
第4,第5の態様では、転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油が、オルダムリング(85)などの自転阻止機構(84)が設けられる第2空間(80)に供給されるので、自転阻止機構(84)が円滑に動作をする。
本開示の第6の態様は、第5の態様において、
上記油回収路(71)の開口部(72a)は、上記オルダムリング摺動面(88)において、該オルダムリング(85)の可動範囲内に形成され、動作中のオルダムリング(85)で覆われる
ことを特徴とする。
第6の態様では、動作中のオルダムリング(85)で覆われる油回収路(71)の開口部(72a)から第2空間(80)へ潤滑油が流出し、潤滑油がオルダムリング(85)の摺動面に直接に供給されるので、オルダムリング(85)が円滑に動作する。
本開示の第7の態様は、第1から第3の態様の何れか1つにおいて、
上記第2空間(80,31b)は、上記圧縮機構(30)が有する固定スクロール(40)と可動スクロール(35)との間に形成される流体室(31)のうち、流体を圧縮中の圧縮室(31b)により構成されている
ことを特徴とする。
第7の態様では、転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油が、第1空間よりも低圧の第2空間である、流体を圧縮途中の圧縮室(31b)に導入される。したがって、固定スクロール(40)と可動スクロール(35)の摺動面に潤滑油が供給され、圧縮機構(30)が円滑に動作をする。
本開示の第8の態様は、第7の態様において、
上記第2空間(80,31b)は、吸入行程と圧縮行程と吐出行程とが繰り返して行われる上記流体室(31)のうち、吸入行程が完了して圧縮行程が開始された直後の圧縮室(31b)により構成されている。
第8の態様では、転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油が、圧縮室(31b)が最も低圧になっている圧縮行程の開始直後に圧縮室(31b)へ導入される。このときは第1空間との圧力差が大きい状態であるため、圧縮室(31b)へ十分な量の潤滑油を導入できる。
本開示の第9の態様は、第1から第3の態様の何れか1つにおいて、
上記第1空間(54)と上記第2空間(80)が、上記圧縮機構(30)が有する固定部材(50)と可動スクロール(35)及び固定スクロール(40)との間に形成され、
上記圧縮機構(30)は、上記第1空間(54)と上記第2空間(80)とを仕切るシール部材(55)と、該シール部材(55)を収容するシール凹部(56)とを有し、
上記油回収路(71)は、上記シール凹部(56)に連通する連通路(77)を有する
ことを特徴とする。
第9の態様では、転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油が、油回収路(71)の連通路(77)を通ってシール凹部(56)に供給される。この潤滑油は、シール凹部(56)から、第1空間(54)よりも低圧の第2空間(80)へ流出する。この第9の態様においても、軸受(62)を潤滑した潤滑油は、その下方にある油回収部材(70)から高圧の第1空間へ流出し難いので、潤滑油が第1空間からスクロール圧縮機の機外へ流出し難くなる。よって、スクロール圧縮機の性能や信頼性の低下を抑えられる。
第10の態様は、第9の態様において、
上記シール凹部(56)は、その内部に収容されるシール部材(55)に対して第1空間(54)側に位置する第1面(57)と、該シール部材(55)に対して第2空間(80)側に位置する第2面(58)とを有し、
上記連通路(77)は、上記シール凹部(56)の第2面(58)に連通する
ことを特徴とする。
第10の態様では、連通路(77)がシール凹部(56)の第2面(58)に連通しているので、シール凹部(56)から第2空間(80)へ流出しやすくなる。よって、潤滑油が油回収部材(70)から第1空間(54)へ、ひいてはスクロール圧縮機の機外へ流出し難くなり、スクロール圧縮機の性能の低下や信頼性の低下を抑えられる。
図1は、実施形態1に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。 図2は、図1の圧縮機構の部分拡大図である。 図3は、ハウジングの平面図である。 図4は、実施形態1の変形例に係る圧縮機構の部分拡大図である。 図5は、実施形態2に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。 図6は、実施形態3に係るスクロール圧縮機の縦断面図である。 図7は、図6の圧縮機構の部分拡大図である。
《実施形態1》
実施形態1について説明する。
図1は、実施形態1に係るスクロール圧縮機の構成を示す縦断面図である。スクロール圧縮機(10)は、例えば、空気調和装置で蒸気圧縮式冷凍サイクルを行う冷媒回路に接続されるものである。スクロール圧縮機(10)は、ケーシング(11)と、回転式の圧縮機構(30)と、圧縮機構(30)を回転駆動する駆動機構(20)とを備えている。圧縮機構(30)と駆動機構(20)はケーシング(11)に収容されている。
ケーシング(11)は、両端が閉塞された縦長円筒状の密閉容器で構成されている。ケーシング(11)の内部は、ケーシング(11)の内周面に接合されたハウジング(50)によって上下に区画されている。ハウジング(50)よりも上側の空間が上部空間(15)を構成し、ハウジング(50)よりも下側の空間は、下部空間(第1空間)(16)を構成する。なお、本実施形態において、第1空間は、圧縮機構(30)から吐出される高圧流体の圧力になる空間を表し、後述の第2空間は第1空間よりも低圧になる空間を表す。下部空間(16)は、後述するが、圧縮機構(30)から吐出された高圧冷媒(高圧流体)で満たされる高圧空間になる。つまり、このスクロール圧縮機(10)は高圧ドーム型(高圧チャンバ型)のスクロール圧縮機である。
ケーシング(11)における下部空間(16)の底部には、スクロール圧縮機(10)の摺動部分を潤滑する潤滑油が貯留される油溜まり部(17)が設けられている。下部空間(16)が高圧空間になるので、下部空間(16)の油溜まり部(17)に貯留された潤滑油にも高圧冷媒の圧力が作用する。
ケーシング(11)には、吸入管(18)及び吐出管(19)が取り付けられている。吸入管(18)の一端部は、吸入管継手(47)に接続されている。吐出管(19)は、スクロール圧縮機(10)を断面にした図1の切断面とは異なる位置で胴部(12)を貫通しており、図1では仮想線で示している。吐出管(19)のケーシング(11)内の端部は、ケーシング(11)の下部空間(16)に開口する。
駆動機構(20)は、モータ(21)と駆動軸(23)とを備えている。モータ(21)は、ケーシング(11)の下部空間(16)に収容されている。モータ(21)は、円筒状に形成されたステータ(21a)及びロータ(21b)を備えている。ステータ(21a)は、ケーシング(11)の内周面に固定されている。
ステータ(21a)の中空部には、ロータ(21b)が配置されている。ロータ(21b)の中空部には、ロータ(21b)を貫通するように駆動軸(23)が固定され、ロータ(21b)と駆動軸(23)が一体に回転するようになっている。
圧縮機構(30)は、可動スクロール(35)と、固定スクロール(40)と、ハウジング(50)とを備えた、いわゆるスクロール型の圧縮機構である。ハウジング(50)及び固定スクロール(40)は、互いにボルト(図示せず)で締結されており、その間の空間に、可動スクロール(35)が、偏心回転動作が可能に収容されている。
可動スクロール(35)は、略円板状の可動側鏡板部(36)を有している。この可動側鏡板部(36)の上面に可動側ラップ(37)が立設している。この可動側ラップ(37)は、可動側鏡板部(36)の中心付近から径方向外方へ渦巻き状に延びる壁体である。また、可動側鏡板部(36)の下面にはボス部(38)が突設されている。
固定スクロール(40)は、略円板状の固定側鏡板部(41)を有している。この固定側鏡板部(41)の下面に固定側ラップ(42)が立設している。この固定側ラップ(42)は、固定側鏡板部(41)の中心付近から径方向外方へ渦巻き状に延び、且つ可動スクロール(35)の可動側ラップ(37)と噛み合うように形成された壁体である。この固定側ラップ(42)と可動側ラップ(37)との間に流体室(31)が形成される。流体室(31)は、固定側ラップ(42)と可動側ラップ(37)との間で、固定側ラップ(42)の内周側に形成される複数の第1流体室と固定側ラップ(42)の外周側に形成される複数の第2流体室とを有し、第1室と第2室は、それそれ、吸入管(18)から流体が流入する吸入行程中に形成される吸入室(31a)と、吸入行程が終了して圧縮行程が開始されてから吐出行程が終了するまでの間に形成される圧縮室(31b)とに交互に切り換わる。
固定スクロール(40)は、固定側ラップ(42)の最外周壁から径方向外方へ連続する外縁部(43)を有している。この外縁部(43)の下端面がハウジング(50)の上端面に固定される。また、この外縁部(43)には、上述した吸入管継手(47)が接続される吸入ポート(34)が形成されている。この吸入ポート(34)は、流体室(31)の吸入位置に開口し、吸入室(31a)と連通する。
また、固定スクロール(40)の固定側鏡板部(41)には、固定側ラップ(42)の中心付近に位置して上下方向へ貫通する吐出ポート(32)と、圧縮室(31b)の圧力が上昇しすぎると冷媒を逃がすリリーフポート(33)とが形成され、リリーフポート(33)にはリリーフ弁(33a)が装着されている。吐出ポート(32)の下端は、圧縮室(31b)の吐出位置に開口している。吐出ポート(32)の上端は、固定スクロール(40)の上部に区画された吐出室(46)に開口している。図示していないが、この吐出室(46)は、固定スクロール(40)とハウジング(50)の内部に形成された吐出通路を介して、ケーシング(11)の下部空間(16)に連通している。したがって、スクロール圧縮機(10)の運転中に、下部空間(16)は、圧縮機構(30)から吐出される高圧冷媒と実質的に同じ圧力になる。
ハウジング(50)は、略円筒状に形成されている。ハウジング(50)の外周面は、その下側部分に対して上側部分が大径の筒状部になるように形成されている。そして、この外周面の上側部分がケーシング(11)の内周面に固定されている。
ケーシング(11)の内部を上下に区画する部材であり、かつ軸受保持部材であるハウジング(50)の中空部には、駆動軸(23)が挿入されている。この中空部は、図1の部分拡大図である図2にも示されているように、ハウジング(50)の下方側の部分が上方側の部分よりも大径の孔になるように形成されている。中空部の下方側の大径の部分により、上部軸受部(53)が構成されている。上部軸受部(53)には、上部軸受(主軸受)として、転がり軸受(62)が装着されている。転がり軸受(62)は、高圧空間(第1空間)の内部で駆動軸(23)を支持する。
図3は、ハウジングの平面図である。ハウジング(50)の上面にはシール部材(55)が装着され、シール部材(55)は、ハウジング(50)の上面と可動スクロール(35)の背面との間をシールしている。ハウジング(50)の中空部の上側部分は、シール部材(55)に仕切られてクランク室(第1空間)(54)を構成する。
クランク室(54)は、可動スクロール(35)の背面に面している。クランク室(54)には、可動スクロール(35)のボス部(38)が位置している。ボス部(38)は、圧縮機構(30)に駆動軸(23)が連結される連結部を構成している。ボス部(38)には、第1滑り軸受(ピン軸受)(61)が装着されている。第1滑り軸受(61)は、圧縮機構(30)と上記駆動軸(23)との連結部であるボス部(38)において、該駆動軸(23)の偏心部(クランクピン)(25)を回転可能に支持する。
シール部材(55)の外周側には、固定スクロール(40)とハウジング(50)との間に、中間圧の背圧空間(第2空間)(80)が形成されている。この背圧空間(80)には、可動スクロール(35)の自転を規制して公転を許容する自転阻止機構として、オルダムリング(85)が配置されている。オルダムリング(85)は、可動スクロール(35)に形成された可動側キー溝(86)とハウジング(50)に形成された固定側キー溝(87)とに係合する複数のキーを有している。キーは、オルダムリング(85)の上面に形成されて可動側キー溝(86)と係合する2つの可動スクロール側キー(85a)と、オルダムリング(85)の下面に形成されて固定側キー溝(87)と係合する2つのハウジング側キー(85b)とから構成されている。
本実施形態において、固定スクロール(40)に対して可動スクロール(35)の自転を阻止して公転を許容するオルダムリング(85)が配置された背圧空間(80)は、上記第1空間よりも圧力が低い第2空間である。
図1において、ケーシング(11)における胴部(12)の下端付近には、下部軸受部(28)が固定されている。下部軸受部(28)には、下部軸受(副軸受)として、第2滑り軸受(63)が装着されている。
駆動軸(23)は、上下方向に延びる主軸部(24)と、主軸部(24)の上端側に設けられた上述の偏心部(25)とを有し、これらが一体的に形成された軸である。偏心部(25)は、主軸部(24)の最大径よりも小径に形成されており、偏心部(25)の軸心は、主軸部(24)の軸心に対して所定距離だけ偏心している。偏心部(25)は、ボス部(38)の第1滑り軸受(61)に係合している。これにより、駆動軸(23)の回転駆動に伴って可動スクロール(35)が公転運動する。その際、上記オルダムリング(85)により、可動スクロール(35)の自転は阻止される。
駆動軸(23)の内部には、軸心方向に沿ってのびる主給油路(27)が形成されている。主給油路(27)は、駆動軸(23)の上端面と可動側鏡板部(36)の間に形成された第1軸受給油路(ピン軸軸受給油路)(78)から第1滑り軸受(61)へ潤滑油を供給するように構成されている。なお、主給油路(27)は、図示していないが、途中で第2滑り軸受(63)に向かって分岐している。
駆動軸(23)の下端部には、給油ノズル(26)が設けられている。給油ノズル(26)の吸込口は、ケーシング(11)の油溜まり部(17)に開口している。給油ノズル(26)の吐出口は、駆動軸(23)の内部の主給油路(27)に接続されている。給油ノズル(26)によってケーシング(11)の油溜まり部(17)から吸い上げられた潤滑油は、第2滑り軸受(63)、第1滑り軸受(61)、及び圧縮機構(30)などの摺動部分へ供給される。
駆動軸(23)の主軸部(24)の上端部分は、ハウジング(50)の上部軸受部(53)の転がり軸受(62)に回転自在に支持されている。主軸部(24)の下端部分は、下部軸受部(28)の第2滑り軸受(63)に回転自在に支持されている。主軸部(24)にはバランスウェイト(29)が固定されている。このバランスウェイト(29)の上端部は、転がり軸受(62)の内輪とほぼ同一の外径の軸受支持部(リテーナ)(29a)として構成されている。軸受支持部(29a)には、油回収リング(油回収部材)(70)が装着されている。
油回収リング(油回収部材)(70)は、転がり軸受(62)の下方に配置されている。油回収リング(70)は、軸受支持部(29a)に嵌合する嵌合部(70a)と、嵌合部(70a)の外周側に形成されたリング本体部(70b)とから、全体としては、ほぼフラットな環状の部材に構成されている。油回収リング(70)は、転がり軸受(62)の下方の高圧空間(第1空間)に配置され、転がり軸受(62)を潤滑した後の潤滑油を受けて回収する部材である。
ハウジング(50)には、油回収リング(70)の上方の空間(軸受下部空間(53a))と連通する油回収路(71)が形成されている。油回収路(71)は、潤滑油を油回収リング(70)部材から背圧空間(第2空間)(80)に導入する通路である。油回収路(71)は、本体通路(72)と導入通路(73)とを有している。本体通路(72)は、オルダムリング(85)が油膜を介して摺動するハウジング(50)のオルダムリング摺動面(88)に開口部(72a)が形成された通路である。導入通路(73)は、転がり軸受(62)の下方に位置する軸受下部空間(53a)から本体通路(72)へ潤滑油を導入する通路である。油回収路(71)の開口部(72a)は、上記オルダムリング摺動面(88)において、オルダムリング(85)の可動領域の範囲内に形成され、動作中のオルダムリング(85)に常に覆われる。
本体通路(72)には、本体通路(72)との間に微細な螺旋状の通路を形成する螺旋溝(74a)を有する絞り部材(74)が装着されている。本体通路(72)に絞り部材(74)を装着することにより、軸受下部空間(53a)の潤滑油は、高圧空間である軸受下部空間(53a)から中間圧空間である背圧空間(80)へ、上記螺旋溝(74a)を通って流出する。
本実施形態では、第1滑り軸受(61)を潤滑した潤滑油は、クランクピン(61)の下端から転がり軸受(62)へ供給される(図2の第2軸受給油路(79)を参照)。第2軸受給油路(79)は、主給油路(27)からピン軸軸受給油路(78)を通って第1滑り軸受(61)に供給された潤滑油が、第1滑り軸受(61)から、さらにクランク室(54)の内部で転がり軸受(62)へ流れる経路である。
主給油路(27)から第1滑り軸受(61)に供給された潤滑油は、転がり軸受(62)へ供給されるときにクランク室(54)に流れ込む。したがって、このクランク室(54)は、ケーシング(11)の下部空間(16)と同じ圧力の高圧空間となる。このクランク室(54)の圧力が、背圧空間の圧力とともに可動スクロール(35)の背面に作用して、可動スクロール(35)が固定スクロール(40)へ押し付けられる。
ハウジング(50)には、クランク室(54)に溜まる潤滑油をケーシング(11)の下部の油溜まり部(17)へ排出する排油通路(90)が形成されている。排油通路(90)は、クランク室(54)からハウジング(50)の外周縁部まで径方向外側へのびる横通路(91)と、横通路(91)の外周端から下方へのびる縦通路(92)とから構成されている。排油通路(90)の縦通路(92)の下端から流出した潤滑油は、ハウジング(50)の下方に配置されたガイド板(93)により、ロータ(21b)の外周面に上下方向へ連続して形成されているコアカット(22)へ案内され、コアカット(22)を通ってケーシング(11)の下部の油溜まり部(17)へ戻る。
-運転動作-
次に、上述したスクロール圧縮機(10)の運転動作について説明する。図1において、スクロール圧縮機(10)のモータ(21)に通電すると、ロータ(21b)とともに駆動軸(23)が回転し、可動スクロール(35)が公転運動する。この可動スクロール(35)の公転運動に伴い、流体室(31)において吸入室(31a)と圧縮室(31b)の容積が周期的に増減を繰り返す。
具体的に、駆動軸(23)が回転すると、吸入ポート(34)から吸入室(31a)へ冷媒が吸入される。そして、駆動軸(23)の回転に伴い、吸入室(31a)が閉じ切られ、吸入室(31a)が圧縮室(31b)になる。さらに、駆動軸(23)の回転が進むことで、圧縮室(31b)の容積が縮小し始め、圧縮室(31b)における冷媒の圧縮が開始される。
その後、圧縮室(31b)の容積がさらに縮小し、この圧縮室(31b)の容積が所定容積まで縮小したときに、圧縮室(31b)が吐出ポート(32)と連通する。この吐出ポート(32)を通じて、圧縮室(31b)で圧縮された高圧の冷媒が固定スクロール(40)の吐出室(46)へ吐出される。吐出室(46)の冷媒は、ケーシング(11)の下部空間(16)へ流出した後、吐出管(19)から機外へ吐出される。
-給油動作の油の流れ-
スクロール圧縮機(10)の運転時は、給油ノズル(26)によってケーシング(11)の油溜まり部(17)から吸い上げられた潤滑油が主給油路(27)を上昇し、偏心部(25)の上端から流出する。潤滑油は、第1軸受給油路(78)を通って第1滑り軸受(61)に供給され、その後にクランク室(54)に流入する。潤滑油は、クランク室(54)内で図2に矢印で示す第2軸受給油路(79)の方向へ流れて転がり軸受(62)を潤滑した後、油回収リング(70)の上面へ流出する。
油回収リング(70)の上面の空間は、油溜まり空間になっている高圧の軸受下部空間(53a)である。この軸受下部空間(53a)は油回収路(71)を介して中間圧の背圧空間(第2空間)(80)に連通している。したがって、潤滑油は、これら2つの空間の圧力差により、軸受下部空間(53a)から絞り部材(74)の螺旋溝(74a)を通って背圧空間(80)へ流出する。背圧空間(80)の潤滑油は、オルダムリング(85)の摺動面に広がり、オルダムリング(85)を潤滑する。また、背圧空間(80)の潤滑油は、固定スクロール(40)と可動スクロール(35)が摺動するスラスト摺動面(45)にも広がり、スラスト摺動面(45)を潤滑するとともにスラスト摺動面(45)をシールして流体室(31)からの冷媒の漏れを抑制する。
一方、クランク室(54)には、主給油路(27)から連続して潤滑油が流入するので、その流入量が、油回収路(71)から背圧空間(80)への潤滑油の流出量よりも多くなると、動作不良が生じることが考えられる。本実施形態では、そのような場合は、クランク室(54)に溜まる潤滑油が、排油通路(90)を通って下部空間(16)へ押し出される。排油通路(90)の縦通路(92)の下端から流出した潤滑油は、ハウジング(50)の下方に配置されたガイド板(93)及びロータ(21b)のコアカット(22)を通り、ケーシング(21b)の下部の油溜まり部(17)へ戻る。
-実施形態1の効果-
この実施形態1では、高圧ドーム型のスクロール圧縮機(10)において、高圧圧力になる第1空間であるクランク室(54)の圧力が作用する転がり軸受(62)の下方で、転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油を回収する油回収部材(70)を設け、潤滑油を、高圧雰囲気の油回収部材(70)から、第2空間である中間圧の背圧室(80)に導入する油回収路(71)を設けている。
従来のスクロール圧縮機では、転がり軸受を潤滑した後の潤滑油が、冷媒が充満するケーシング内の高圧空間に排出され、ケーシングには高圧空間に連通する吐出管が設けられているため、ケーシングの下部の油溜まり部へ戻る途中の潤滑油が高圧の吐出ガス冷媒と混じって吐出管から吐出されるおそれがあった。その結果、ケーシング内の潤滑油の量が減少し、スクロール圧縮機の性能や信頼性が低下するおそれがあった。
これに対して、実施形態1の上記の構成によれば、高圧空間であるクランク室(54)の下部に設けられた転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油は、その下方に配置された油回収リング(70)の上面の軸受下部空間(油溜まり部)(53a)から、クランク室(54)よりも低圧の背圧室(80)へ、圧力差によって、油回収路(71)を通って流出する。つまり、軸受下部空間(53a)の潤滑油が強制的に背圧空間(80)に回収される。
油回収路(71)を通った潤滑油は、高圧の第1空間である下部空間(16)へは流出しないので、油回収リング(70)からの潤滑油の漏れ量が少なくなり、潤滑油が吐出空間である下部空間(16)から吐出管(19)を通ってスクロール圧縮機(10)の機外へ流出し難くなる。したがって、スクロール圧縮機(10)の油上がり率を低く抑えることができ、スクロール圧縮機(10)性能の低下や油切れによる信頼性の低下を抑えられる。
この実施形態1では、第1滑り軸受(61)に潤滑油を供給する主給油路(27)と、主給油路(27)から転がり軸受(62)へ潤滑油を供給する第1,第2軸受給油路(78,79)とを設けているので、主給油路(27)と各軸受給油路(78,79)を通って第1滑り軸受(61)と転がり軸受(62)に供給された潤滑油が、油回収路(71)を通って背圧空間(80)に回収される。このように、主給油路(27)を通って転がり軸受(62)に供給された潤滑油が下部空間(16)へ流出しないので、潤滑油が下部空間(16)からスクロール圧縮機(10)の機外へ流出するのを効果的に抑制できる。
一方、この実施形態1では、ケーシング(11)内の下部空間に、潤滑油が貯留されて高圧冷媒の圧力が作用する油溜まり部(17)を設け、圧縮機構(30)と駆動軸(23)とを連結する連結部であるボス部(38)の高圧の潤滑油を、ケーシング(11)内の下部空間(16)を介して油溜まり部(17)へ排出する排油通路(90)をハウジング(50)に設けている。
この構成によれば、転がり軸受(62)への潤滑油の供給量が、油回収路(71)による潤滑油の回収量よりも多い場合などに、排油通路(90)を通って、潤滑油が下部空間(16)から油溜まり部(17)へ排出される。したがって、潤滑油の供給量と排出量(回収量)とがバランスし、油回収路(71)による潤滑油の回収量が不足して動作不良が生じるのを抑制できる。
この実施形態1では、圧縮機構(30)が有する固定スクロール(40)に対して可動スクロール(35)の自転を阻止して公転を許容する自転阻止機構(84)としてオルダムリング(85)を設け、油回収路(71)を、オルダムリング(85)が摺動するオルダムリング摺動面(88)に開口部(72a)が形成された通路にして、油回収路(71)の開口部(72a)が背圧空間(第2空間)(80)に開口するようにしている。
この構成によれば、転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油が、自転阻止機構(84)を構成するオルダムリング(85)が設けられる背圧空間(80)に供給されるので、オルダムリング(85)が円滑に動作をする。また、潤滑油は、背圧空間(80)から、固定スクロール(40)と可動スクロール(35)が摺動するスラスト摺動面(45)にも広がるため、スラスト摺動面(45)を潤滑するとともにシールして冷媒の漏れが抑制され、圧縮機構(30)の動作が安定する。
特に、実施形態1では、油回収路(71)の開口部(72a)を、オルダムリング摺動面(88)において、オルダムリング(85)の可動範囲内に形成し、動作中のオルダムリング(85)で覆われるようにしているので、潤滑油がオルダムリング(85)の摺動面に直接に供給される。したがって、オルダムリング(85)の動作がより安定し、圧縮機構(30)の信頼性の向上を図ることができる。
-実施形態1の変形例-
油回収路は、図4に示すように構成してもよい。
図4の変形例では、油回収路(71)の導入通路(73)は、軸受下部空間(53a)から本体通路(72)まで、本体通路(72)と直角にのびる溝により構成されている。導入通路(73)の形状が異なる点を除き、この変形例は図2の実施形態1と同様に構成されている。
この変形例の構成を採用した場合でも、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
《実施形態2》
実施形態2について説明する。
図5に示す実施形態2は、油回収路(71)の構成を実施形態1とは異なるようにした例であり、油回収部材で回収した潤滑油を導入する第2空間として用いる空間も実施形態1とは異なる。
この実施形態2において、第2空間は、上記圧縮機構(30)が有する固定スクロール(40)と可動スクロール(35)との間に形成される流体室(31)のうち、流体を圧縮中の圧縮室(31b)により構成されている。油回収路(71)は、互いに連通するハウジング側回収路(75)と固定スクロール側回収路(76)とから構成されている。ハウジング側回収路(75)は、流入側が軸受下部空間(53a)に連通する一方、固定スクロール側回収路(76)と連通する部分に、直径の小さい絞り通路部(75a)が形成されている。固定スクロール側回収路(76)は、流出側に設けられた流出口(76a)が圧縮室(31b)に連通する。
流出口(76a)は、具体的には、吸入行程と圧縮行程と吐出行程とが繰り返して行われる上記流体室(31)のうち、吸入行程が完了して圧縮行程が開始された直後の圧縮室(31b)を第2空間として、この第2空間に連通している。
この実施形態2は、油回収路(71)として、図2の本体通路(72),導入通路(73),及び絞り部材(74)を設けずに、ハウジング側回収路(75)と固定スクロール側回収路(76)とを設けた点を除いては、実施形態1と同様に構成されている。そのため、他の部分の構成については具体的な説明を省略する。
この実施形態2では、転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油は、油回収リング(70)からハウジング側回収路(75)と固定スクロール側回収路(76)を通って、圧縮開始直後の比較的低圧の圧縮室(31b)へ潤滑油が回収される。圧縮室(31b)に流入した潤滑油は、圧縮室(31b)内で固定スクロール(40)と可動スクロール(35)の摺動部分の潤滑に用いられる。
以上説明したように、実施形態2では、油回収リング(70)で転がり軸受(62)から回収した潤滑油を導入する第2空間(31)として、固定スクロール(40)と可動スクロール(35)との間に形成される流体室(31)のうち、流体を圧縮中の圧縮室(31b)を用い、油回収路(71)として、ハウジング側回収路(75)と固定スクロール側回収路(76)を設けている。
この構成によれば、転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油が、軸受下部空間(53a)よりも低圧の、流体を圧縮途中の圧縮室(31b)に導入される。したがって、実施形態1と同様に、潤滑油は、高圧の第1空間である下部空間(16)へは流出しないので、油回収リング(70)からの潤滑油の漏れ量が少なくなり、潤滑油が吐出空間である下部空間(16)から吐出管(19)を通ってスクロール圧縮機(10)の機外へ流出し難くなる。よって、スクロール圧縮機(10)の油上がり率を低く抑えることができ、スクロール圧縮機(10)性能の低下や油切れによる信頼性の低下を抑えられる。また、この実施形態2によれば、固定スクロール(40)と可動スクロール(35)の摺動面に潤滑油が供給され、圧縮機構(30)が円滑に動作をする。
特に、実施形態2では、第2空間(31b)として、流体室(31)のうち、吸入行程が完了して圧縮行程が開始された直後の圧縮室(31b)を用いているので、転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油が、圧縮室(31b)が最も低圧になっている圧縮行程の開始直後に圧縮室(31b)へ導入される。このときは第1空間との圧力差が大きい状態であるため、圧縮室(31b)へ十分な量の潤滑油を導入できるから、圧縮機構(30)の動作をより安定させることが可能になる。
なお、実施形態2では、吸入行程が完了して圧縮行程が開始された直後の圧縮室(31b)を第2空間として、油回収リング(70)から第2空間へ潤滑油を導入するようにしているが、第2空間として用いる圧縮室(31b)は、スクロール圧縮機(10)の運転中に高圧圧力になる第1空間(16,54)よりも圧力が低い状態であれば、圧縮行程の開始直後でなくてもよい。
《実施形態3》
実施形態3について説明する。
図6,図7に示す実施形態3は、油回収路(71)を、図4に示す実施形態1の変形例と異なるように構成した例である。この実施形態3では、油回収路(71)により、シール部材(55)へ油を供給するように構成されている。
この実施形態3においては、圧縮機構(30)がケーシング(11)内に有する固定部材であるハウジング(軸受ハウジング)(50)と、可動スクロール(35)及び固定スクロール(40)との間に形成された上記クランク室(54)が、圧縮機構(30)から吐出される高圧流体の圧力になる第1空間として機能する。また、クランク室(54)よりも低圧になる背圧空間(80)が第2空間として機能する。
圧縮機構(30)は、実施形態1及びその変形例と同様に、第1空間であるクランク室(54)と第2空間である背圧空間(80)とを仕切るシール部材(55)を有する。実施形態1及びその変形例では説明を省略したが、この実施形態3では、シール部材(55)を収容するシール凹部(56)を有する。シール凹部(56)は、上記ハウジング(50)の上面に形成されている。
シール部材(55)はリング状の弾性部材である。シール凹部(56)はシール部材(55)が装填される環状の溝である。シール凹部(56)は、その内部に収容されるシール部材(55)に対してクランク室(54)側に位置する第1面(57)と、該シール部材(55)に対して背圧空間(80)側に位置する第2面(58)とを有する。
この実施形態3では、油回収路(71)は、その上端がオルダムリング摺動面(88)に到達しない非貫通の孔で構成されている。言い換えると、この実施形態3の油回収路(71)には、図2,図4に示した開口部(72a)が形成されていない。一方、この実施形態3の油回収路(71)は、シール凹部(56)に連通する連通路(77)を有する。具体的には、連通路(77)は、シール凹部(56)の第2面(58)に連通している。
この実施形態3のその他の構成は、実施形態1の変形例と同様である。
この実施形態3では、転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油は、転がり軸受(62)の下方の油回収リング(70)から、油回収路(71)の連通路(77)を通ってシール凹部(56)に供給される。これは、シール凹部(56)の外周側の背圧空間(80)が第1空間(54)よりも低圧であり、潤滑油が、油回収リング(70)の上方の軸受下部空間(53a)と背圧空間(80)との差圧でシール凹部(56)に引き込まれるためである。シール凹部(56)に流入した潤滑油は、第1空間(54)と第2空間(80)とをシールする高低圧シール部(シール部材(55)の外周面と上面側の部分)の全体に広がり、さらにハウジング(50)の上面と可動スクロール(35)(可動側鏡板部(36))の下面とで構成される摺動部に広がり、上記高低圧シール部と上記摺動部を潤滑する。
シール凹部(56)の潤滑油は、シール凹部(56)、及びハウジング(50)と可動スクロール(35)の摺動部から、低圧の背圧空間(80)へ流出する。このように、潤滑油が、油回収リング(70)からシール凹部(56)へ流入するので、潤滑油は油回収リング(70)からケーシング(11)内の下部空間(16)へ漏れ難くなる。そのため、潤滑油は、下部空間(16)からスクロール圧縮機(10)の機外へ流出し難くなる。その結果、吐出される油の量が減少することでスクロール圧縮機(10)の性能が向上し、且つケーシング(11)内の油切れに起因する圧縮機(10)の信頼性の低下を抑制できる。また、上記高低圧シール部と上記摺動部に潤滑油が供給されるので、圧縮機構(30)の動作が安定し、圧縮機(10)の信頼性が向上する。
また、この実施形態3では、連通路(77)が、シール凹部(56)の第2面(58)に連通しているので、シール凹部(56)へ流入した潤滑油が背圧空間(80)へ流出しやすく、クランク室(54)へは流出し難い。このように潤滑油が第1空間(16,54)よりも低圧の背圧空間(80)へ流出しやすいため、潤滑油は機外へ流出し難い。よって、簡単な構成で、スクロール圧縮機(10)の性能の低下と、圧縮機(10)の信頼性の低下を抑制できる。
-実施形態3の変形例-
上記実施形態では、油回収路(71)に図2,図4に示した開口部(72a)を形成しない構成にしているが、油回収路(71)は、図2,図4に示した開口部(72a)と、シール凹部(56)に連通する連通路(77)の両方を設けてもよい。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記各実施形態では、第1滑り軸受(61)を潤滑した後の潤滑油が転がり軸受(62)に供給されるようにしているが、転がり軸受(62)に供給された後に油回収リング(70)で回収される潤滑油は、他の経路で転がり軸受(62)に供給された油であってもよい。例えば、主給油路(27)を途中で分岐する構成にし、第1滑り軸受(61)と転がり軸受(62)に別々に潤滑油が供給される構成を採用し、その場合に転がり軸受を潤滑した後の潤滑油を回収するようにしてもよい。
上記実施形態では、自転阻止機構(84)としてオルダムリング(85)を用いているが、オルダムリング(85)を用いる代わりに、回り止めのピンなどを用いる構成を採用してもよい。
上記実施形態では、ハウジング(50)に排油通路(90)を設けているが、油回収路(71)だけで潤滑油の回収量が供給量とバランスする場合は、排油通路(90)は必ずしも設けなくてもよい。
実施形態1では、オルダムリング摺動面(88)に油回収路(71)が開口する構成を採用しているが、油回収路(71)は軸受下部空間(53a)と背圧空間(80)とを連通する空間であればよく、オルダムリング摺動面(88)に開口していなくてもよい。また、オルダムリング摺動面(88)に開口する構成にする場合でも、オルダムリング(85)で常に閉鎖される位置に油回収路(71)を形成しなくてもよい。
また、上記実施形態では、第2空間として背圧空間(80)や圧縮途中の圧縮室(31b)を用いているが、第1空間よりも低い圧力の空間であれば他の空間を用いてもよい。
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
以上説明したように、本開示は、スクロール圧縮機について有用である。
10 スクロール圧縮機
11 ケーシング
16 下部空間(第1空間)
17 油溜まり部
23 駆動軸
25 偏心部(クランクピン)
27 主給油路
30 圧縮機構
31 流体室
31b 圧縮室
35 可動スクロール
40 固定スクロール
50 ハウジング(固定部材)
54 クランク室(第1空間)
55 シール部材
56 シール凹部
57 第1面
58 第2面
61 第1滑り軸受(ピン軸受)
62 転がり軸受(上部軸受(主軸受))
70 油回収リング(油回収部材)
71 油回収路
72a 開口部
78 第1軸受給油路
79 第2軸受給油路
80 背圧空間(第2空間)
84 自転阻止機構
85 オルダムリング
88 オルダムリング摺動面
90 排油通路

Claims (6)

  1. スクロール圧縮機であって、
    固定スクロール(40)及び可動スクロール(35)と、固定スクロール(40)が締結される固定部材(50)とを有する圧縮機構(30)と、
    上記圧縮機構(30)から吐出される高圧流体の圧力になる第1空間(16,54)と、該第1空間(16,54)よりも低圧の圧力になる第2空間(80,31b)とが形成されたケーシング(11)と、
    上記圧縮機構(30)に連結された駆動軸(23)と、
    上記第1空間(54)の内部で上記駆動軸(23)を支持する転がり軸受(62)と、
    上記転がり軸受(62)へ潤滑油を供給する軸受給油路(78,79)と、
    上記第1空間(54)の内部で上記転がり軸受(62)の下方に配置され、該転がり軸受(62)を潤滑した潤滑油を回収する油回収部材(70)と、
    上記第1空間(54)の油回収部材(70)から潤滑油を上記第2空間(80,31b)に導入する油回収路(71)と、
    を備え、
    上記第2空間(80)が、上記固定スクロール(40)と上記固定部材(50)との間に形成された背圧空間(80)であり、
    上記軸受給油路(78,79)は、上記第1空間(54)内の潤滑油を上記転がり軸受(62)へ直接に供給するように構成されていることを特徴とするスクロール圧縮機。
  2. 請求項1において、
    上記圧縮機構(30)と上記駆動軸(23)との連結部(38)に設けられて該駆動軸(23)のクランクピン(25)を支持するピン軸受(61)と、
    上記ピン軸受(61)に潤滑油を供給する主給油路(27)と、を備え、
    上記軸受給油路(78,79)は、上記主給油路(27)から上記転がり軸受(62)へ潤滑油を供給する通路である
    ことを特徴とするスクロール圧縮機。
  3. 請求項1または2において、
    上記ケーシング(11)内の下部空間に形成され、潤滑油が貯留されて上記高圧流体の圧力が作用する油溜まり部(17)と、
    上記圧縮機構(30)と上記駆動軸(23)との連結部(38)の高圧の潤滑油を、上記ケーシング(11)内の第1空間(16)を介して上記油溜まり部(17)へ排出する排油通路(90)と、
    を備えていることを特徴とするスクロール圧縮機。
  4. 請求項1から3の何れか1つにおいて、
    上記第2空間(80,31b)は、上記圧縮機構(30)が有する固定スクロール(40)に対して可動スクロール(35)の自転を阻止して公転を許容する自転阻止機構(84)が配置された空間(80)により構成されている
    ことを特徴とするスクロール圧縮機。
  5. 請求項4において、
    上記自転阻止機構(84)がオルダムリング(85)を備え、
    上記油回収路(71)は、上記オルダムリング(85)が摺動するオルダムリング摺動面(88)に開口部(72a)が形成された通路である
    ことを特徴とするスクロール圧縮機。
  6. 請求項5において、
    上記油回収路(71)の開口部(72a)は、上記オルダムリング摺動面(88)において、該オルダムリング(85)の可動範囲内に形成され、動作中のオルダムリング(85)で覆われる
    ことを特徴とするスクロール圧縮機。
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