以下、図面を参照して、本発明の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
(第1の実施の形態)
まず、図1および図2を用いて、本発明の第1の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
図1に示すように、二酸化炭素回収システム1は、燃焼排ガス2に含有される二酸化炭素を、アミンを含有する吸収液に吸収させる吸収塔20と、吸収塔20から供給される二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素を放出させて、吸収液を再生する再生塔30と、を備えている。吸収塔20において二酸化炭素を吸収液に吸収させた燃焼排ガス2は、脱炭酸燃焼排ガス3(後述)として吸収塔20から排出される。また、再生塔30から二酸化炭素が蒸気と共に二酸化炭素含有ガス8(二酸化炭素含有蒸気)として排出される。なお、吸収塔20に供給される燃焼排ガス2は、特に限定されるものではないが、例えば火力発電所のボイラー(図示せず)の燃焼排ガスや、プロセス排ガス等であってもよく、必要に応じて冷却処理後に吸収塔20に供給されるようにしてもよい。
吸収液は、吸収塔20と再生塔30とを循環し、吸収塔20において二酸化炭素を吸収してリッチ液4となり、再生塔30において二酸化炭素を放出してリーン液5となる。吸収液には、特に限られるものではないが、例えば、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールのようなアルコール性水酸基含有1級アミン類、ジエタノールアミン、2-メチルアミノエタノールのようなアルコール性水酸基含有2級アミン類、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミンのようなアルコール性水酸基含有3級アミン類、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ジエチレントリアミンのようなポリエチレンポリアミン類、ピペラジン類、ピペリジン類、ピロリジン類のような環状アミン類、キシリレンジアミンのようなポリアミン類、メチルアミノカルボン酸のようなアミノ酸類等及びこれらの混合物を用いることができる。これらのアミン化合物は通常10~70重量%の水溶液として使用される。また、吸収液には二酸化炭素吸収促進剤あるいは腐食防止剤、更には、その他の媒体としてメタノール、ポリエチレングリコール、スルフォラン等を加えることができる。
吸収塔20は、二酸化炭素回収部20a(充填層または棚段、以下、充填層等と記す)と、二酸化炭素回収部20aの上方に設けられた液分散器20bと、二酸化炭素回収部20aおよび液分散器20bを収容する吸収塔容器20cと、を有している。
二酸化炭素回収部20aは、向流型気液接触装置として構成されている。すなわち、二酸化炭素回収部20aは、一例として充填層等からなり、充填された充填物や粒子等の気液接触面積を増やすための内部構造物の表面に再生塔30から供給されるリーン液5を流下させながら、燃焼排ガス2に含有される二酸化炭素と気液接触させ、この二酸化炭素をリーン液5に吸収させるようになっている。言い換えると、燃焼排ガス2から二酸化炭素が回収(または除去)される。液分散器20bは、リーン液5を二酸化炭素回収部20aに向けて分散させて落下させ、二酸化炭素回収部20aの表面にリーン液5を供給する。液分散器20bに供給されるリーン液5の圧力は吸収塔20内の圧力に対してそれほど高くない圧力であり、液分散器20bは、実質的には強制的ではなく主に重力の作用によってリーン液5を二酸化炭素回収部20aに落下させる。吸収塔容器20cには、二酸化炭素回収部20aおよび液分散器20bとともに、後述する第1洗浄部21、第2洗浄部22、第3洗浄部23、および各デミスター81、82、83、84が収容されている。吸収塔容器20cは、吸収塔容器20cの下部から燃焼排ガス2を受け入れ、燃焼排ガス2を吸収塔容器20cの頂部から、後述する脱炭酸燃焼排ガス3として排出するようになっている。
吸収塔20の下部には、上述したボイラーなどの二酸化炭素回収システム1の外部から排出された二酸化炭素を含有する燃焼排ガス2が、送風機Bによって供給される。供給された燃焼排ガス2は、吸収塔20内を二酸化炭素回収部20aに向かって上昇する。一方、再生塔30からのリーン液5が液分散器20bに供給されて落下し、二酸化炭素回収部20aに供給されてその表面を流下する。二酸化炭素回収部20aにおいて、燃焼排ガス2とリーン液5とが気液接触して、燃焼排ガス2に含有される二酸化炭素がリーン液5に吸収されてリッチ液4が生成される。
生成されたリッチ液4は、吸収塔容器20cの下部に一端貯留され、当該下部から排出される。リーン液5と気液接触した燃焼排ガス2は、二酸化炭素が回収されて、脱炭酸燃焼排ガス3として二酸化炭素回収部20aから吸収塔20内を更に上昇する。
吸収塔20と再生塔30との間には熱交換器31が設けられている。吸収塔20と熱交換器31との間にはリッチ液用ポンプ32が設けられており、吸収塔20から排出されたリッチ液4は、リッチ液用ポンプ32によって熱交換器31を介して再生塔30に供給される。熱交換器31は、吸収塔20から再生塔30に供給されるリッチ液4を、再生塔30から吸収塔20に供給されるリーン液5と熱交換させる。このことにより、リーン液5が熱源となって、リッチ液4が所望の温度まで加熱される。言い換えると、リッチ液4が冷熱源となって、リーン液5が所望の温度まで冷却される。
再生塔30は、アミン再生部30a(充填層等)と、アミン再生部30aの上方に設けられた液分散器30bと、アミン再生部30aおよび液分散器30bを収容する再生塔容器30cと、を有している。このうちアミン再生部30aは、向流型気液接触装置として構成されている。すなわち、アミン再生部30aは、一例として充填層等からなり、充填された充填物や粒子等の気液接触面積を増やすための内部構造物の表面に吸収塔20から供給されるリッチ液4を流下させながら、後述する蒸気7と気液接触させ、リッチ液4から二酸化炭素を放出させるようになっている。液分散器30bに供給されるリッチ液4の圧力は再生塔30内の圧力に対してそれほど高くない圧力であり、液分散器30bは、リッチ液4をアミン再生部30aに向けて分散させて落下させ、アミン再生部30aの表面にリッチ液4を供給する。液分散器30bに供給されるリッチ液4の圧力は高くないため、液分散器30bは、実質的には強制的ではなく主に重力の作用によってリッチ液4をアミン再生部30aに落下させる。再生塔容器30cには、アミン再生部30aおよび液分散器30bとともに、後述する再生塔洗浄部37、および各デミスター86、87が収容されている。再生塔容器30cは、リッチ液4から放出された二酸化炭素含有ガス8を、再生塔容器30cの頂部から排出するようになっている。
再生塔30には、リボイラー33が連結されている。このリボイラー33は、加熱媒体6によって、再生塔30から供給されるリーン液5を加熱して蒸気7を発生させ、発生した蒸気7を再生塔30に供給する。より具体的には、リボイラー33には、再生塔30の下部から排出されるリーン液5の一部が供給されるとともに、例えばタービン(図示せず)などの外部から加熱媒体6としての高温の蒸気が供給される。リボイラー33に供給されたリーン液5は、加熱媒体6と熱交換することによって加熱されて、リーン液5から蒸気7が生成される。生成された蒸気7は再生塔30の下部に供給され、再生塔30内のリーン液5を加熱する。なお、加熱媒体6は、タービンからの高温の蒸気に限られることはない。
再生塔30の下部には、リボイラー33から蒸気7が供給され、再生塔30内をアミン再生部30aに向って上昇する。一方、吸収塔20からのリッチ液4は、液分散器30bに供給されて落下し、アミン再生部30aに供給されてその表面を流下する。アミン再生部30aにおいて、リッチ液4と蒸気7とが気液接触して、リッチ液4から二酸化炭素ガスを放出してリーン液5が生成される。このようにして再生塔30において吸収液が再生される。
生成されたリーン液5は、再生塔30の下部から排出され、リッチ液4と気液接触した蒸気7は、二酸化炭素を含有して、二酸化炭素含有ガス8として再生塔30の頂部から排出される。排出される二酸化炭素含有ガス8には蒸気も含有される。
再生塔30と熱交換器31との間には、リーン液用ポンプ34が設けられている。再生塔30から排出されたリーン液5は、リーン液用ポンプ34によって上述した熱交換器31を介して吸収塔20に供給される。熱交換器31は、上述したように、再生塔30から吸収塔20に供給されるリーン液5を、吸収塔20から再生塔30に供給されるリッチ液4と熱交換させて冷却する。また、熱交換器31と吸収塔20との間には、リーン液用冷却器35が設けられている。リーン液用冷却器35は、外部から冷却水(例えば、クリーングタワーの冷却水や、海水)等の冷却媒体が供給され、熱交換器31において冷却されたリーン液5を所望の温度まで更に冷却する。
リーン液用冷却器35において冷却されたリーン液5は、吸収塔20の液分散器20bに供給されて落下し、二酸化炭素回収部20aに供給されてその表面を流下する。二酸化炭素回収部20aにおいて、リーン液5は燃焼排ガス2と気液接触して燃焼排ガス2に含有される二酸化炭素がリーン液5に吸収されてリッチ液4となる。このようにして、二酸化炭素回収システム1では、吸収液がリーン液5となる状態とリッチ液4となる状態とを繰り返しながら循環するようになっている。
図1に示す二酸化炭素回収システム1は、再生塔30の頂部から排出された二酸化炭素含有ガス8を冷却して蒸気を凝縮して凝縮水9を生成するガス用冷却器40と、ガス用冷却器40により生成された凝縮水9を二酸化炭素含有ガス8から分離する気液分離器41と、を更に備えている。このようにして、二酸化炭素含有ガス8に含有される水分が低減され、二酸化炭素含有ガス8が、二酸化炭素ガス10として気液分離器41から排出されて、図示しない設備に供給されて貯蔵される。一方、気液分離器41において分離された凝縮水9は、凝縮水用ポンプ42によって再生塔30に供給され、吸収液に混入される。なお、ガス用冷却器40には、外部から、二酸化炭素含有ガス8を冷却するための冷却媒体(例えば、クリーングタワーの冷却水や、海水)が供給されるようになっている。
ところで、吸収塔20内には、第1洗浄部21と、第2洗浄部22と、第3洗浄部23と、が設けられている、このうち第1洗浄部21は、二酸化炭素回収部20aから排出された脱炭酸燃焼排ガス3を第1洗浄液11(第1洗浄水)で洗浄して、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴する吸収液成分であるアミンを回収する。第2洗浄部22は、第1洗浄部21から排出された脱炭酸燃焼排ガス3を、第2洗浄液12(第2洗浄水)で洗浄して、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを回収する。第3洗浄部23は、第2洗浄部22から排出された脱炭酸燃焼排ガス3を、第3洗浄液13(第3洗浄水)で洗浄して、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを回収する。このうち第1洗浄部21は、液分散器20bの上方に設けられ、第2洗浄部22は、第1洗浄部21の上方に設けられ、第3洗浄部23は、第2洗浄部22の上方に設けられている。
第1洗浄部21は、第1回収空間21dと、第1回収空間21dの上方に設けられた第1噴射器21eと、第1回収空間21dの下方に設けられた第1受け部21cと、を有している、
第1回収空間21dは、第1圧力で供給されて第1噴射器21eから噴射された第1洗浄液11がミストの状態で自由落下(すなわち、空間内の構造物等の表面に接触することがないまま落下)しながら、第1受け部21cを通過して上昇する脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触する空間であって、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミン(主として、ミスト状アミン、吸収液のミスト)を回収する空間である。第1回収空間21dは、第1噴射器21eから第1受け部21cにわたって形成されている。
本実施の形態では、第1噴射器21eと第1受け部21cとの間には、第1洗浄液11が表面を流下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と接触させるための充填層や棚段等の構造物は設けられていない。すなわち、第1噴射器21eと第1受け部21cとの間には、第1洗浄液11が表面を流下するような構造物等の部材は設けられておらず、第1噴射器21eから第1受け部21cにわたって第1回収空間21dが形成されていることにより、第1回収空間21dは、第1洗浄液11が自由落下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触するように構成されている。第1噴射器21eから噴射された第1洗浄液11のミストは、脱炭酸燃焼排ガス3が上昇する第1回収空間21dを落下して、第1受け部21cに直接的に達するようになっている。すなわち、第1回収空間21dを通過した第1洗浄液11は、直接的に第1受け部21cにより受け取られるように構成されている。落下している間、第1洗浄液11が脱炭酸燃焼排ガス3と接触し、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンが第1洗浄液11に衝突して回収される。
第1噴射器21eは、第1圧力で供給される第1洗浄液11を第1回収空間21dに向けて噴射して落下させる。第1噴射器21eは、複数のスプレーノズル孔(図示せず)を含み、後述する第1循環ポンプ51によって圧力が高められて第1圧力で供給された第1洗浄液11をスプレーノズル孔から噴射(スプレー)する。これにより、第1洗浄液11は、ミスト状となって第1噴射器21eから高速噴射され、第1回収空間21dに均等に行き渡りながら自由落下する。すなわち、第1噴射器21eは、第1洗浄液11に鉛直方向の速度成分として第1鉛直方向初速度を与えて第1回収空間21d内を鉛直方向の速度成分を持たせて強制的に自由落下させる(噴射する)。
第1受け部21cは、第1回収空間21dを落下した第1洗浄液11を受け取って貯留するとともに、二酸化炭素回収部20aから排出されて上昇する脱炭酸燃焼排ガス3が通過可能に構成されている。すなわち、第1受け部21cは、第1洗浄液11を受け取って貯留する受け部本体と、受け部本体の間に設けられた、脱炭酸燃焼排ガス3が通過する開口部と、開口部を上方から覆い、第1洗浄液11が開口部を通過することを防止するためのカバーと、によって構成されている。
第1洗浄部21には、第1洗浄液11を循環させる第1循環ライン50が連結されている。すなわち、第1循環ライン50には、第1循環ポンプ51が設けられており、第1受け部21cに貯留されている第1洗浄液11を抜き出して第1噴射器21eに第1圧力となるように供給し、第1洗浄液11を循環させる。
第2洗浄部22は、第2回収部22a(充填層等)と、第2回収部22aの上方に設けられた第2洗浄液分散器22bと、第2回収部22aの下方に設けられた第2受け部22cと、を有している。
第2回収部22aは、向流型気液接触装置として構成されている。すなわち、第2回収部22aは、一例として充填層等からなり、充填された充填物や粒子等の気液接触面積を増やすための内部構造物の表面に第2洗浄液12を流下させながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触させて脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミン(主としてガス状アミン)を回収し、脱炭酸燃焼排ガス3からアミンを除去する。第2洗浄液分散器22bは、第2圧力で供給される第2洗浄液12を第2回収部22aに向けて分散させて落下させ、第2回収部22aの内部にある構造物の表面を流下するように第2洗浄液12を供給する。第2圧力は、第1洗浄部21の第1噴射器21eに供給される第1洗浄液11の圧力である第1圧力よりも低い。第2洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の圧力(第2圧力)は、吸収塔20内の圧力に対してそれほど高くない圧力である。第2洗浄液分散器22bが分散させる第2洗浄液12に与える鉛直方向の速度成分である第2鉛直方向初速度は、第1洗浄部21の第1噴射器21eが第1洗浄液11に与える鉛直方向の速度成分である第1鉛直方向初速度よりも小さい。実質的には第2洗浄液12に与えられる鉛直方向の速度成分である第2鉛直方向初速度はほぼ0(ゼロ)であり、第2洗浄液分散器22bは、重力の作用によって非強制的に第2洗浄液12を第2回収部22aに自由落下させる。第2受け部22cは、第2回収部22aで内部構造物の表面を流下した第2洗浄液12を受け取って貯留するとともに、第1洗浄部21の第1回収空間21dから排出されて上昇する脱炭酸燃焼排ガス3が通過可能に構成されている。第2受け部22cは、第1受け部21cと同様に構成されている。
第2洗浄部22には、第2洗浄液12を循環させる第2循環ライン54が連結されている。すなわち、第2循環ライン54には、第2循環ポンプ55が設けられており、第2受け部22cに貯留されている第2洗浄液12を抜き出して第2洗浄液分散器22bに供給し、第2洗浄液12を循環させる。
本実施の形態では、第2循環ライン54に、第2洗浄液12を冷却する第2洗浄液冷却器56が設けられている。第2洗浄液冷却器56には、第2洗浄液12を冷却するための冷却媒体として、二酸化炭素回収システム1の外部から冷却媒体(例えば、クリーングタワーの冷却水や、海水)が供給される。このようにして、第2洗浄液冷却器56は、第2循環ライン54を流れる第2洗浄液12を冷却するようになっており、第2洗浄液12の温度を、第1洗浄液11の温度よりも低くしている。なお、第2洗浄液12の温度と第1洗浄液11の温度は、ほぼ同等となるように構成してもよい。
第3洗浄部23は、第3回収部23a(充填層等)と、第3回収部23aの上方に設けられた第3洗浄液分散器23bと、第3回収部23aの下方に設けられた第3受け部23cと、を有している。
第3回収部23aは、向流型気液接触装置として構成されている。すなわち、第3回収部23aは、一例として充填層等からなり、充填された充填物や粒子等の気液接触面積を増やすための内部構造物の表面に第3洗浄液13を流下させながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触させて脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミン(主としてガス状アミン)を回収し、脱炭酸燃焼排ガス3からアミンを除去する。第3洗浄液分散器23bは、第3圧力で供給される第3洗浄液13を第3回収部23aに向けて分散させて落下させ、第3回収部23aの内部にある構造物の表面を流下するように第3洗浄液13を供給する。第3圧力は、第1洗浄部21の第1噴射器21eに供給される第1洗浄液11の圧力である第1圧力よりも低い。第3洗浄液分散器23bに供給される第3洗浄液13の圧力(第3圧力)は、吸収塔20内の圧力に対してそれほど高くない圧力である。第3洗浄液分散器23bが分散させる第3洗浄液13に与える鉛直方向の速度成分である第3鉛直方向初速度は、第1洗浄部21の第1噴射器21eが第1洗浄液11に与える鉛直方向の速度成分である第1鉛直方向初速度よりも小さい。実質的には第3洗浄液13に与えられる鉛直方向の速度成分である第3鉛直方向初速度はほぼ0(ゼロ)であり、第3洗浄液分散器23bは、重力の作用によって非強制的に第3洗浄液13を第3回収部23aに自由落下させる。第3受け部23cは、第3回収部23aで内部構造物の表面を流下した第3洗浄液13を受け取って貯留するとともに、第2洗浄部22の第2回収部22aから排出されて上昇する脱炭酸燃焼排ガス3が通過可能に構成されている。第3受け部23cは、第1受け部21cおよび第2受け部22cと同様に構成されている。第3洗浄液分散器23bに供給される第3洗浄液13の圧力である第3圧力は、例えば、第2洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の圧力である第2圧力と等しくすることができる。同様に、第3洗浄液分散器23bが分散させる第3洗浄液13に与える鉛直方向の速度成分である第3鉛直方向初速度を、第2洗浄液分散器22bが分散させる第2洗浄液12に与える鉛直方向の速度成分である第2鉛直方向初速度と等しくなるように構成することもできる。
第3洗浄部23には、第3洗浄液13を循環させる第3循環ライン57が連結されている。すなわち、第3循環ライン57には、第3循環ポンプ58が設けられており、第3受け部23cに貯留されている第3洗浄液13を抜き出して第3洗浄液分散器23bに供給し、第3洗浄液13を循環させる。
本実施の形態では、第3循環ライン57に、第3洗浄液13を冷却する第3洗浄液冷却器59が設けられている。第3洗浄液冷却器59には、第3洗浄液13を冷却するための冷却媒体として、二酸化炭素回収システム1の外部から冷却媒体(例えば、クリーングタワーの冷却水や、海水)が供給される。このようにして、第3洗浄液冷却器59は、第3循環ライン57を流れる第3洗浄液13を冷却するようになっている。
ところで、第1洗浄部21の第1噴射器21eから噴射される第1洗浄液11の単位面積・単位時間当たりの流量(第1流量)は、第2洗浄部22の第2洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12の単位面積・単位時間当たりの流量(第2流量)よりも大きくなっているとともに、第3洗浄部23の第3洗浄液分散器23bの第3洗浄液13の単位面積・単位時間当たりの流量(第3流量)よりも大きくなっている。第1噴射器21eから噴射される第1洗浄液11の流量は、上述した第1循環ポンプ51(流量調整部)により調整される。同様に、第2洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12の流量は、上述した第2循環ポンプ55により調整され、第3洗浄液分散器23bから分散される第3洗浄液13の流量は、上述した第3循環ポンプ58により調整される。
なお、ここで示した単位面積とは、第1噴射器21eが第1洗浄液11を噴射する水平断面積(または第1洗浄部21の水平断面積)、第2洗浄液分散器22bが第2洗浄液12を分散する水平断面積(または第2洗浄部22の水平断面積)、および第3洗浄液分散器23bが第3洗浄液13を分散する水平断面積(または第2洗浄部22の水平断面積)に対する単位面積である。本実施の形態においては第1洗浄部21、第2洗浄部22および第3洗浄部23の水平断面積は実質的に等しいため各洗浄部(第1洗浄部21、第2洗浄部22および第3洗浄部23)の水平断面積の違いは考慮せず、単位時間当たりの流量により第1流量、第2流量および第3流量を設定しても構わない。
各洗浄部21~23の水平断面積が異なる場合も含めて一般化すると、例えば、第1噴射器21eから噴射される第1洗浄液11の単位面積・単位時間当たりの流量(第1流量)を、300L/分/m2以上とし、第2洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12の単位面積・単位時間当たりの流量(第2流量)および第3洗浄液分散器23bから分散される第3洗浄液13の単位面積・単位時間当たりの流量(第3流量)を、50L/分/m2~150L/分/m2(図2に示す通常流量範囲)としてもよい。
第1洗浄部21の第1噴射器21eに供給される第1洗浄液11の第1圧力(第1噴射器21e内の圧力)は、第2洗浄部22の第2洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の第2圧力(第2洗浄液分散器22b内の圧力)よりも高くなっているとともに、第3洗浄部23の第3洗浄液分散器23bに供給される第3洗浄液13の第3圧力(第3洗浄液分散器23b内の圧力)よりも高くなっている。第1噴射器21eに供給される第1洗浄液11の第1圧力は、上述した第1循環ポンプ51(圧力調整部)により調整される。同様に、第2洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の第2圧力は、上述した第2循環ポンプ55により調整され、第3洗浄液分散器23bに供給される第3洗浄液13の第3圧力は、上述した第3循環ポンプ58により調整される。例えば、第1噴射器21eに供給される第1洗浄液11の第1圧力は、0.1MPa~0.8MPaとしてもよい。第2洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の第2圧力および第3洗浄液分散器23bに供給される第3洗浄液13の第3圧力は、0.1MPa以下であってもよい。例えば、第1循環ポンプ51、第2循環ポンプ55および第3循環ポンプ58の吐出圧を、第1噴射器21e、第2洗浄液分散器22bおよび第3洗浄液分散器23bまでのそれぞれの揚程(水頭)を考慮して設定することにより、第1圧力、第2圧力および第3圧力をそれぞれ上記のように適切に設定することができる。
第1洗浄部21の第1噴射器21eから噴射される第1洗浄液11の粒径は、小さい方がよい。同一流量で考えた場合、第1洗浄液11のミストの粒径を小さくした方が、ミストの個数を増やすことができるからである。この場合、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの物理的な衝突確率を高めることができる。例えば、この第1洗浄液11の中心粒径を、100μm~1000μm、好ましくは200μm~800μmとしてもよい。上述した第1噴射器21eのスプレーノズル孔は、このような中心粒径を有する第1洗浄液11のミストを形成可能に構成されている。ここで中心粒径とは、第1噴射器21eから噴射される第1洗浄液11の粒径の平均値としている。中心粒径については、粒径の平均値のほか、中央値や、もしくはこれらの平均値や中央値に加えて分散や画標準偏差などをさらに用いた関数などにより適宜定義しても構わない。
ところで、二酸化炭素回収部20aの上方には、回収部出口デミスター81が設けられている。より詳細には、回収部出口デミスター81は、二酸化炭素回収部20aと第1洗浄部21との間(液分散器20bと第1受け部21cとの間)に設けられている。このことにより、二酸化炭素回収部20aから排出された脱炭酸燃焼排ガス3は、回収部出口デミスター81を通過して上昇する。回収部出口デミスター81は、通過する脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト(主としてミスト状アミン)を捕捉する。
第1洗浄部21の上方には、第1洗浄部出口デミスター82が設けられている。より詳細には、第1洗浄部出口デミスター82は、第1洗浄部21と第2洗浄部22との間(第1噴射器21eと第2受け部22cとの間)に設けられている。このことにより、第1洗浄部21から排出された脱炭酸燃焼排ガス3は、第1洗浄部出口デミスター82を通過して上昇する。第1洗浄部出口デミスター82は、通過する脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト(主としてミスト状アミンおよび第1洗浄液11のミスト)を捕捉する。
第2洗浄部22の上方には、第2洗浄部出口デミスター83が設けられている。より詳細には、第2洗浄部出口デミスター83は、第2洗浄部22と第3洗浄部23との間(第2洗浄液分散器22bと第3受け部23cとの間)に設けられている。このことにより、第2洗浄部22から排出された脱炭酸燃焼排ガス3は、第3洗浄部出口デミスター84を通過して上昇する。第2洗浄部出口デミスター83は、通過する脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト(主としてミスト状アミンおよび第2洗浄液12のミスト)を捕捉する。
第3洗浄部23の上方には、第3洗浄部出口デミスター84が設けられている。より詳細には、第3洗浄部出口デミスター84は、第3洗浄部23の第3洗浄液分散器23bの上方(第3洗浄液分散器23bと吸収塔容器20cの頂部との間)に設けられている。このことにより、第3洗浄部23から排出された脱炭酸燃焼排ガス3は、第3洗浄部出口デミスター84を通過して上昇する。第3洗浄部出口デミスター84は、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト(主としてミスト状アミンおよび第3洗浄液13のミスト)を捕捉する。
本実施の形態では、第3洗浄部出口デミスター84は、第2洗浄部出口デミスター83よりも疎に形成されている。
デミスターが疎または密に形成されているということは、例えば、デミスターの空間率で説明することができる。より具体的には、デミスターの空間率の大小をデミスターの疎または密に対応させてもよい。この場合、第3洗浄部出口デミスター84が第2洗浄部出口デミスター83よりも疎に形成されているということは、第3洗浄部出口デミスター84の空間率が、第2洗浄部出口デミスター83の空間率よりも大きくなっていることと同義となる。このことにより、第3洗浄部出口デミスター84のうち脱炭酸燃焼排ガス3が通過する空間が増え、脱炭酸燃焼排ガス3が通過しやすくなっている。このため、脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を低減することができる。例えば、第2洗浄部出口デミスター83および第3洗浄部出口デミスター84がメッシュ状のデミスターである場合には、第3洗浄部出口デミスター84のメッシュを、第2洗浄部出口デミスター83のメッシュよりも粗くしてもよい。同様にして、第3洗浄部出口デミスター84は、第1洗浄部出口デミスター82よりも疎に形成されていてもよい。
また、デミスターが疎または密に形成されているということは、例えば、デミスターによるミストの除去(または回収)率特性で説明することもできる。より具体的には、所定の粒径範囲(例えば、0.1μm~10μm)におけるミストの除去率でデミスターの特性が示されている場合には、除去率の大小をデミスターの疎または密に対応させてもよい。この場合、第3洗浄部出口デミスター84が第2洗浄部出口デミスター83よりも疎に形成されているということは、第3洗浄部出口デミスター84における所定の粒径範囲のミストの除去率が、第2洗浄部出口デミスター83の除去率よりも小さいことと同義となる。
また、本実施の形態では、回収部出口デミスター81は、第3洗浄部出口デミスター84と同様に、第1洗浄部出口デミスター82および/または第2洗浄部出口デミスター83よりも疎に形成されていてもよい。
また、図1に示すように、再生塔30は、上述したアミン再生部30aから排出された二酸化炭素含有ガス8を、凝縮水9で洗浄して、二酸化炭素含有ガス8に同伴するアミンを回収する再生塔洗浄部37を有している。再生塔洗浄部37は、アミン再生部30aの上方に設けられている。
再生塔洗浄部37は、再生塔回収部37a(充填層等)と、再生塔回収部37aの上方に設けられた液分散器37bと、を有している。このうち再生塔回収部37aは、向流型気液接触装置として構成されている。すなわち、再生塔回収部37aは、一例として充填層等からなり、充填された充填物や粒子等の気液接触面積を増やすための内部構造物の表面に凝縮水9を流下させながら二酸化炭素含有ガス8と気液接触させて二酸化炭素含有ガス8からアミンを回収する。液分散器37bは、凝縮水9を再生塔回収部37aに向けて分散させて落下させ、再生塔回収部37aの表面に凝縮水9を供給する。液分散器37bは、強制的ではなく重力の作用で、凝縮水9を落下させる。
ところで、再生塔30のアミン再生部30aの上方には、第1再生塔デミスター86が設けられている。より詳細には、第1再生塔デミスター86は、アミン再生部30aと再生塔洗浄部37との間(液分散器30bと再生塔回収部37aとの間)に設けられている。このことにより、アミン再生部30aから排出された二酸化炭素含有ガス8は、第1再生塔デミスター86を通過して上昇する。第1再生塔デミスター86は、通過する二酸化炭素含有ガス8に同伴するミスト(主としてミスト状アミン)を捕捉する。
再生塔洗浄部37の上方には、第2再生塔デミスター87が設けられている。より詳細には、第2再生塔デミスター87は、再生塔洗浄部37の液分散器37bの上方(液分散器37bと再生塔容器30cの頂部との間)に設けられている。このことにより、再生塔洗浄部37から排出された二酸化炭素含有ガス8は、第2再生塔デミスター87を通過して上昇する。第2再生塔デミスター87は、通過する二酸化炭素含有ガス8に同伴するミスト状アミンや凝縮水9のミストを捕捉する。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
図1に示す二酸化炭素回収システムの運転中、吸収塔20の二酸化炭素回収部20aにおいて、リーン液用冷却器35から供給されたリーン液5は液分散器20bから分散落下して、二酸化炭素回収部20aの表面を流下しながら燃焼排ガス2と気液接触する。燃焼排ガス2に含有される二酸化炭素は、リーン液5に吸収される。燃焼排ガス2は、脱炭酸燃焼排ガス3として二酸化炭素回収部20aから排出される。排出された脱炭酸燃焼排ガス3は、吸収塔容器20c内を上昇し、回収部出口デミスター81を通過する。
回収部出口デミスター81では、主として、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンのうち粒径が大きいミスト状アミンが捕捉される。
すなわち、回収部出口デミスター81は、液分散器20bの直上に設けられており、二酸化炭素回収部20aから排出された脱炭酸燃焼排ガス3が最初に通過するデミスターになっている。このため、回収部出口デミスター81を通過する脱炭酸燃焼排ガス3には粒径が比較的大きいミスト状アミンが同伴している可能性がある。粒径が大きいミスト状アミンが第1洗浄部21に達すると、第1洗浄液11のアミン濃度が高まり、第1洗浄液11の洗浄能力が大きく低下する恐れがある。このため、回収部出口デミスター81は、粒径が大きいミスト状アミンを回収することを目的として設けられている。このことから、回収部出口デミスター81は、上述したように疎に形成されている。この場合、回収部出口デミスター81を通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を低減することができる。
回収部出口デミスター81を通過した脱炭酸燃焼排ガス3は、第1洗浄部21の第1受け部21cを通過して第1回収空間21dに達する。
一方、第1受け部21cに貯留された第1洗浄液11は、第1循環ポンプ51によって第1受け部21cから抜き出され、第1循環ライン50を通って第1噴射器21eに第2圧力や第3圧力よりも高い第1圧力で供給される。本実施の形態では、第1循環ライン50には、後述する加熱器52、53(図3、図4参照)や冷却器などは設けられていないことから、第1循環ライン50を通過する第1洗浄液11は、積極的に加熱も冷却もされていない。
第1洗浄液11は、第1噴射器21eのスプレーノズル孔から噴射されて第1回収空間21d内を落下し、第1受け部21cに直接的に達する。この間、第1洗浄液11はミストの状態で落下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触し、脱炭酸燃焼排ガス3が第1洗浄液11で洗浄される。このことにより、主として、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンが第1洗浄液11に回収される。第1受け部21cに達した第1洗浄液11は、第1受け部21cに受け取られて貯留される。
ここで、二酸化炭素回収システム1において、脱炭酸燃焼排ガス3を洗浄する際の一般的な課題について説明する。
一般に、二酸化炭素回収システム1において、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを回収するために、表面に洗浄液を流下させる充填層や棚段が設けられる場合がある。この場合、脱炭酸燃焼排ガス3と洗浄液との接触面積が増加し、効率良くアミンを回収することが可能になる。
脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンは、ガス状アミンとミスト状アミンとに大別される。このうちガス状アミンは、洗浄液と充填層等を用いた洗浄で回収されやすい。一方、ミスト状アミンは、洗浄液と充填層等を用いた洗浄では回収されにくい。ミスト状アミンは、デミスターで捕捉されやすいが、ミストの粒径が5μm以下になるとデミスターでも捕捉されにくくなる。
そこで、本実施の形態では、洗浄液をミスト化することで、ミスト状アミンの回収効率の向上を図っている。すなわち、本実施の形態では、第1洗浄部21の第1噴射器21eに供給される第1洗浄液11の圧力が高められ、第1噴射器21eのスプレーノズル孔から第1洗浄液11が、(噴射直後は特に)高速で噴射される。このことにより、第1洗浄液11のミストが、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンに物理的に衝突し、ミスト状アミンが第1洗浄液11のミストに捕捉されて回収される。ミスト状アミンを回収した第1洗浄液11は第1受け部21cに落下する。このようにして、洗浄液と充填層等を用いた洗浄では捕捉されにくいミスト状アミンが、第1洗浄液11に回収され、脱炭酸燃焼排ガス3が効率良く洗浄される。
また、上述したように、第1噴射器21eから噴射された第1洗浄液11は、充填層等が設けられていない第1回収空間21d内を構造物等の表面に接触することなく自由落下する。この場合、第1洗浄液11のミストが、構造物等の部材に衝突することなく、第1受け部21cに直接的に達するため、第1洗浄液11のミストが微細化されることを防止できる。
すなわち、第1洗浄部21が、第2洗浄部22または第3洗浄部23のように充填層等により構成される回収部(後述する図9に示す第1回収部21a)を有している場合、第1噴射器21eから高速で噴射された第1洗浄液11のミストが充填層等に衝突し、微細化される。この場合、第1洗浄液11のミストの粒径が小さくなり、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴しやすくなる。このため、アミンを回収した第1洗浄液11が脱炭酸燃焼排ガス3に同伴して大気に排出されることになり、洗浄効率が低下するという問題がある。
しかしながら、本実施の形態では、第1噴射器21eの下方に第1回収空間21dが形成されており、充填層等の構造物等の部材が設けられていない。このため、第1洗浄液11のミストが微細化されることを防止でき、洗浄効率の低下を防止できる。例えば、第1噴射器21eから第1受け部21cまでの距離を少なくとも1m以上、好ましくは1.5m以上にすることで、十分な第1回収空間21dを設けることができる。この場合、第1洗浄液11のミストが第1受け部21cに達する際には減速することができ、第1受け部21cに衝突して微細化されることを防止できる。
ところで、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率の向上には、第1洗浄液11のミストの噴射速度や粒径も寄与し得る。このため、第1噴射器21eに供給される第1洗浄液11の第1圧力は、例えば、0.1MPa~0.8MPaに高められていることが好ましい。第1洗浄液11の第1圧力を0.1MPa以上にすることにより、第1洗浄液11のミストの噴射速度を高めることができる。一方、第1洗浄液11の第1圧力を0.8MPa以下にすることにより、噴射された第1洗浄液11のミストの粒径が、ブロードになる(広い粒径分布を持つ)ことを防止でき、洗浄性能を安定化させることができる。また、第1循環ポンプ51の容量(必要動力)の増大を抑制でき、運転コストの増大を抑制できる。
噴射される第1洗浄液11の中心粒径は、100μm~1000μm、特に200μm~800μmであることが好ましい。ここで、中心粒径を100μm以上にすることにより、脱炭酸燃焼排ガス3の流れにアミンを含有する第1洗浄液11のミストが同伴して、洗浄効率が低下することを防止できる。第1洗浄液11のミストが脱炭酸燃焼排ガス3に同伴することをより一層防止するためには、第1噴射器21eから噴射される第1洗浄液11の粒径を、200μm以上にしてもよい。一方、中心粒径を1000μm以下にすることにより、第1洗浄液11のミストの粒径を小さくすることができ、第1洗浄液11のミストの個数を増やして、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの衝突確率を高めることができる。脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの衝突確率をより一層高めるためには、第1噴射器21eから噴射される第1洗浄液11の粒径を、800μm以下にしてもよい。
また、第1噴射器21eから噴射される第1洗浄液11の単位面積・単位時間当たりの流量(第1流量)は、300L/分/m2以上にしてもよい。ここで、第2洗浄部22の第2洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12の単位面積・単位時間当たりの流量(第2流量)は、50L/分/m2~150L/分/m2に設定されている。第3洗浄液13の単位面積・単位時間当たりの流量(第3流量)も同様である。第2洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12は、充填層等により構成される第2回収部22aの表面を流下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触する。このため、第2洗浄液12の単位面積・単位時間当たりの流量を150L/分/m2より大きくしても、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率向上への貢献は限られてしまう。また必要以上に第2洗浄液12の流量を増大させることは第2循環ポンプ55の容量を増大させ、運転コストを増大させることになり、好ましくない。しかしながら、第1洗浄部21では、充填層等の部材を設けずに、第1噴射器21eから噴射された第1洗浄液11をミストの状態で脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触させている。このことにより、第1洗浄液11の単位面積・単位時間当たりの流量を増大させることは、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの物理的な衝突確率を高めることに寄与することができ、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率を高めることができる。このことが、図2に示されている。
図2は、第1洗浄液11の流量と、ミスト状アミンの回収効率との関係を示したグラフである。このデータは、以下に示す試験条件下で得られた。
・試験装置内径(吸収塔容器20cの内径に相当)・・・157mm
・処理ガス流速(脱炭酸燃焼排ガス3の流速に相当)・・・0.7m/s
・ミスト状アミン個数濃度(粒径0.61μm~0.95μm)
・・・約10000個/cc
・洗浄水ミスト中心粒径・・・約0.5mm
・噴射圧力・・・0.2MPa
図2に示されているように、第2洗浄液12や第3洗浄液13の通常流量範囲では、回収効率は低いが、この範囲を超えると回収効率は増大していく。流量が300L/分/m2以上になると回収効率が70%を越え、ミスト状アミンの回収効率を高めることができる。
また、上述したように、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンは、ガス状アミンとミスト状アミンとに大別されるが、一般的には、ミスト状アミンの方が、アミン量としての比率が多い。このことにより、二酸化炭素回収部20aから排出された脱炭酸燃焼排ガス3を最初に洗浄する第1洗浄液11が第1噴射器21eから噴射してミスト状アミンを回収することにより、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンを効果的に回収することが可能になる。この場合、第2洗浄液12が洗浄する際には、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミンの量が低減され、第3洗浄液13が洗浄する際には更に低減される。このため、第1洗浄液11のアミン濃度よりも第2洗浄液12のアミン濃度が低くなり、第2洗浄液12よりも第3洗浄液13のアミン濃度が更に低くなる。
図1に示すように、第1洗浄液11で洗浄された脱炭酸燃焼排ガス3は、第1洗浄部21の第1回収空間21dから排出される。そして、脱炭酸燃焼排ガス3は、吸収塔容器20c内を更に上昇し、第1洗浄部出口デミスター82を通過する。
第1洗浄部出口デミスター82では、主として、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンおよび第1洗浄液11のミストが捕捉される。このうちミスト状アミンについて述べると、第1洗浄部出口デミスター82は、回収部出口デミスター81よりも密に形成されている。このため、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するガス状アミンのうち粒径が大きいミスト状アミンとともに粒径が小さいミスト状アミンが第1洗浄部出口デミスター82に捕捉される。第1回収空間21dで回収しきれなかったミスト状アミンは、第1洗浄部出口デミスター82で捕捉される。
第1洗浄部出口デミスター82を通過した脱炭酸燃焼排ガス3は、第2洗浄部22の第2受け部22cを通過して第2回収部22aに達する。
一方、第2受け部22cに貯留された第2洗浄液12は、第2循環ポンプ55によって第2受け部22cから抜き出され、第2循環ライン54を通って第2洗浄液分散器22bに供給される。この間、第2洗浄液12は、第2洗浄液冷却器56によって冷却され、第2洗浄液12の温度が、第1洗浄液11の温度よりも低くなる。
第2回収部22aにおいて、冷却された第2洗浄液12が第2回収部22aの表面を流下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触し、脱炭酸燃焼排ガス3が洗浄される。このことにより、主として、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するガス状アミンが第2洗浄液12に回収される。第2回収部22aにおいて脱炭酸燃焼排ガス3を洗浄した第2洗浄液12は、第2回収部22aから落下して第2受け部22cに受け取られて貯留される。
第2回収部22aには、冷却された第2洗浄液12が供給されるため、第2回収部22aの温度は第1回収空間21dの温度よりも低くなる。このため、脱炭酸燃焼排ガス3は第2洗浄液12によって冷却され、脱炭酸燃焼排ガス3の温度は低下する。脱炭酸燃焼排ガス3の温度の低下により、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴していた水蒸気が凝縮して、凝縮した水分が、第2洗浄液12に捕捉される。このことにより、第2洗浄液12のアミン濃度が低減する。
また、第1洗浄部出口デミスター82で回収しきれなかったミスト状アミンは、第2洗浄部22の第2回収部22aに供給されて、第2回収部22aにおいて冷却される。第2回収部22aでは、凝縮した水分がミスト状アミンにも捕捉される。このことにより、ミスト状アミンの粒径が増大し、ミスト状アミンが、第2回収部22aの上方に設けられた第2洗浄部出口デミスター83で捕捉されやすくなる。
第2洗浄液12で洗浄された脱炭酸燃焼排ガス3は、第2回収部22aから排出されて、吸収塔容器20c内を更に上昇し、第2洗浄部出口デミスター83を通過する。
第2洗浄部出口デミスター83では、主として、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンおよび第2洗浄液12のミストが捕捉される。このうちミスト状アミンについて述べると、第2洗浄部出口デミスター83は、回収部出口デミスター81よりも密に形成されている。このため、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するガス状アミンのうち粒径が大きいミスト状アミンとともに粒径が小さいミスト状アミンが第2洗浄部出口デミスター83に捕捉される。第1回収空間21dや第1洗浄部出口デミスター82で回収しきれなかったミスト状アミンは、第2洗浄部出口デミスター83で捕捉される。
第2洗浄部出口デミスター83を通過した脱炭酸燃焼排ガス3は、第3洗浄部23の第3受け部23cを通過して、第3回収部23aに達する。
一方、第3受け部23cに貯留された第3洗浄液13は、第3循環ポンプ58によって第3受け部23cから抜き出され、第3循環ライン57を通って第3洗浄液分散器23bに供給される。この間、第3洗浄液13は、第3洗浄液冷却器59によって冷却される。
第3回収部23aにおいて、冷却された第3洗浄液13が第3回収部23aの表面を流下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触し、脱炭酸燃焼排ガス3が洗浄される。このことにより、主として、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するガス状アミンが第3洗浄液13に回収される。第3回収部23aにおいて脱炭酸燃焼排ガス3を洗浄した第3洗浄液13は、第3回収部23aから落下して第3受け部23cに受け取られて貯留される。
また、第3回収部23aに冷却された第3洗浄液13が供給される場合、第3回収部23aの温度は第2洗浄部22の温度よりも低くなる。このため、脱炭酸燃焼排ガス3は第3洗浄液13によって冷却され、脱炭酸燃焼排ガス3の温度は低下する。脱炭酸燃焼排ガス3の温度の低下により、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴していた水蒸気が凝縮して、凝縮した水分が、第3洗浄液13に捕捉される。このことにより、第3洗浄液13のアミン濃度が低減する。
また、第1洗浄部21および第2洗浄部22で回収しきれなかったミスト状アミンは、第3洗浄部23の第3回収部23aに供給されて、第3回収部23aにおいて冷却される。第3回収部23aでは、凝縮した水分がミスト状アミンにも捕捉される。このことにより、ミスト状アミンの粒径が増大し、ミスト状アミンが、第3回収部23aの上方に設けられた第3洗浄部出口デミスター84で捕捉されやすくなる。
第3洗浄液13で洗浄された脱炭酸燃焼排ガス3は、第3回収部23aから排出されて、吸収塔容器20c内を更に上昇し、第3洗浄部出口デミスター84を通過する。
第3洗浄部出口デミスター84では、主として、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンおよび第3洗浄液13のミストが捕捉される。一般的に第3洗浄部出口デミスター84が設けられている目的の一つは、第2洗浄部出口デミスター83のバックアップであり、第2洗浄部出口デミスター83で回収しきれなかったミスト状アミンを捕捉することである。しかしながら、ミスト状アミンは、回収部出口デミスター81や第1洗浄部出口デミスター82、第2洗浄部出口デミスター83で捕捉される。このため、第2洗浄部出口デミスター83で十分にミスト状アミンが捕捉されるとみなせる場合には、第3洗浄部出口デミスター84の捕捉対象を、第3洗浄液13のミストに絞ることができる。第3洗浄液13に由来するミストは、ミスト状アミンに比べると粒径が大きい傾向にある。このため、脱炭酸燃焼排ガス3の圧力損失を考慮して、第3洗浄部出口デミスター84は、疎に形成されている。
第3洗浄部出口デミスター84を通過した脱炭酸燃焼排ガス3は、吸収塔容器20cの頂部から排出される。
このように本実施の形態によれば、第1洗浄部21が、第1洗浄液11を噴射して落下させる第2噴射器22eを有している。このことにより、第1洗浄液11をミスト化することができ、第1洗浄液11のミストが、二酸化炭素回収部20aから排出された脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンに物理的に衝突することができる。このため、第1洗浄液11にミスト状アミンを効率良く回収することができ、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率を向上させることができる。この結果、アミンの大気中への放出量を低減することができる。
また、本実施の形態によれば、第1洗浄部21の第1噴射器21eから第1受け部21cにわたって、第1洗浄液11がミストの状態で自由落下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触する第1回収空間21dが形成されている。このことにより、第1噴射器21eから噴射された第1洗浄液11のミストが第1受け部21cに達する前に、構造物等の部材に衝突することを防止できる。このため、第1洗浄液11のミストが微細化されて脱炭酸燃焼排ガス3に同伴することを防止できる。
また、本実施の形態によれば、第1洗浄部21の第1噴射器21eから噴射される第1洗浄液11の単位面積・単位時間当たりの流量(第1流量)は、第2洗浄部22の第2洗浄液分散器22bから分散される第2洗浄液12の単位面積・単位時間当たりの流量(第2流量)よりも大きくなっている。このことにより、第1噴射器21eから噴射される第1洗浄液11のミストの個数を増やすことができ、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの物理的な衝突確率を高めることができる。このため、ミスト状アミンをより一層効率良く回収することができる。
また、本実施の形態によれば、第1洗浄部21の第1噴射器21eに供給される第1洗浄液11の第1圧力は、第2洗浄部22の第2洗浄液分散器22bに供給される第2洗浄液12の第2圧力よりも高くなっている。このことにより、第1噴射器21eからの第1洗浄液11のミストの噴射速度のうちの特に鉛直方向の速度成分である第1鉛直方向初速度を高めることができる。このため、第1洗浄液11のミストを第1回収空間21d内に迅速にかつ均一に供給することができ、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンを効率良く回収することができる。また、第1洗浄液11のミストが脱炭酸燃焼排ガス3に同伴することを防止できる。
また、本実施の形態によれば、第3洗浄部出口デミスター84が、第2洗浄部出口デミスター83よりも疎に形成されている。このことにより、第3洗浄部出口デミスタ-84でミスト状アミンおよび第3洗浄液13のミストを捕捉しながらも、第3洗浄部出口デミスター84を通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を低減することができる。この場合、吸収塔20に燃焼排ガス2を供給するための送風機Bの動力を低減することができる。
また、本実施の形態によれば、回収部出口デミスター81が、第2洗浄部出口デミスター83よりも疎に形成されている。このことにより、回収部出口デミスター81でミスト状アミンを捕捉しながらも、回収部出口デミスター81を通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を低減することができる。この場合、吸収塔20に燃焼排ガス2を供給するための送風機Bの動力を低減することができる。
なお、上述した本実施の形態においては、回収部出口デミスター81および第3洗浄部出口デミスター84が、第1洗浄部出口デミスター82および第2洗浄部出口デミスター83よりもそれぞれ疎に形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、各デミスター81~84は、同様の空間率または除去率で形成されていてもよい。後述する各実施の形態においても同様である。
また、上述した本実施の形態においては、第1洗浄部21の第1噴射器21eが、圧力が高められた第1洗浄液11がスプレーノズル孔から噴射される、いわゆる1流体ノズルとして構成されている例について説明した。しかしながら、これに限られることはなく、第1洗浄液11を噴射することができれば、第1噴射器21eは、2流体ノズルとして構成されていてもよい。この場合、第1洗浄液11を噴射させることができれば、第1噴射器21eに供給される第1洗浄液11の圧力は、0.1MPaよりも低くてもよい。
(第2の実施の形態)
次に、図3を用いて、本発明の第2の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
図3に示す第2の実施の形態においては、第1洗浄液を加熱する第1加熱器が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1および図2に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図3において、図1および図2に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、図3に示すように、第1循環ライン50に、第1洗浄液11を加熱する第1加熱器52(第1加熱部)が設けられている。第1加熱器52は、第1洗浄液11の温度を、二酸化炭素回収部20aの上端部の温度より高く、かつ第2洗浄液12の温度より高くする。なお、図3に示す形態では、第1加熱器52は、第1循環ライン50において第1循環ポンプ51の下流側(第1噴射器21eの側)に設けられているが、このことに限られることはない。
第1加熱器52において第1洗浄液11を加熱するための熱源は、再生塔30から排出されて熱交換器31を通過したリーン液5になっている。すなわち、本実施の形態では、熱交換器31を通過したリーン液5は、第1加熱器52に供給されて第1洗浄液11を加熱するようになっている。
上述したように、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンは、洗浄液と充填層等を用いた洗浄では回収されにくい。このため、本実施の形態では、第1洗浄部21の第1噴射器21eから噴射された第1洗浄液11のミストを、ミスト状アミンに衝突させて、ミスト状アミンを第1洗浄液11のミストに回収している。しかしながら、ミスト状アミンの粒径が小さくなると(例えば、0.5μm以下になると)、ミスト状アミンの回収効率が低下する。このため、ミスト状アミンの回収効率を高めるためには、ミスト状アミンの粒径を大きくすることが効果的である。
ミスト状アミンの粒径を大きくする方法としては、第2洗浄部22の温度を第1洗浄部21の温度よりも低くして、両者に温度差を拡大させることが考えられる。この場合、第2洗浄部22内を脱炭酸燃焼排ガス3が通過する際に冷却されて、脱炭酸燃焼排ガス3が含有する水蒸気が凝縮し、凝縮した水分がミスト状アミンに捕捉されてミスト状アミンの粒径を増大させることができる。
第1洗浄部21の温度よりも第2洗浄部22の温度を低くする方法としては、2つ考えられる。一つ目は、第1洗浄部21を加熱する方法、二つ目は、第2洗浄部22を冷却する方法である。
洗浄液中のアミン蒸気圧を低減することを目的として、洗浄液を冷却することがある。しかしながら、一般的な洗浄液の運用温度が30℃~40℃程度であるのに対し、冷却された洗浄液の温度は20℃~30℃程度に留まり、冷却によって得られる温度差は小さくなる。このことから、第2洗浄液12を冷却することによって第1洗浄部21と第2洗浄部22との温度差を拡大させることは困難となる。また、温度差を拡大するために第2洗浄液12を冷却能力の高いチラーなどを用いて冷却した場合には、洗浄液の温度をより一層下げることができるものの、冷却に要するエネルギーが急増してしまう。二酸化炭素回収システム1の大きな課題の一つが、二酸化炭素を回収するために要するエネルギーをいかに低減するかである。このため、脱炭酸燃焼排ガス3を冷却するためのエネルギーが増大することは好ましくない。
そこで、本実施の形態では、二酸化炭素回収システム1の外部(周辺設備)での廃熱を活用する。すなわち、通常では常温でまたは冷却されて使用される第1洗浄液11を廃熱で加熱することで第1洗浄液11の温度を高めて、第1洗浄液11と第2洗浄液12との温度差を拡大させている。これにより第1洗浄部21と第2洗浄部22との温度差を拡大させて、第2洗浄部22における凝縮水分量を増大させている。第1洗浄部21の温度は、二酸化炭素回収部20aの上端部での温度よりも5℃~50℃高いことが好ましく、10℃~30℃高いことがより一層好ましい。
また、凝縮によりミスト状アミンの粒径を大きくする他に、凝縮水分を積極的に発生させることで、洗浄液と充填層等を用いた洗浄方法が抱える以下の2つの課題を回旋することができる。まず、洗浄液と充填層等を用いた洗浄方法が抱える課題について説明する。
[1]充填層表面を流下する洗浄液は偏流しやすい。このことにより、充填層表面の全体が濡れなくなるため(ショートパス発生)、脱炭酸燃焼排ガス3が洗浄液と接触せずに、洗浄されることなく充填層をすり抜けるという課題がある。
[2]充填層の表面を流下する洗浄液は、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴されるガス状アミンを吸収するが、その吸収速度は、気液接触界面における洗浄液のアミン濃度と、脱炭酸燃焼排ガス3のアミン濃度とに依存する。すなわち、気液接触界面における洗浄液のアミン濃度を常に低濃度に維持できれば、洗浄液がアミンを吸収する速度を高く維持することができる。しかしながら、気液接触界面における洗浄液のアミン濃度は、脱炭酸燃焼排ガス3中のアミンを吸収することによってすぐに上昇する。そして、洗浄液中のアミンの拡散速度が遅いため、気液接触界面で洗浄液に吸収されたアミンが洗浄液内へ拡散しにくい。このため、気液接触界面における洗浄液のアミン濃度は高濃度で維持され、アミン吸収速度の低下を招くという課題がある。
本実施の形態では、上述したように、凝縮水分を積極的に活用させることで、上述した2つの改題が解決される。
[1]凝縮は、充填層の空隙を流れる脱炭酸燃焼排ガス3から発生する。脱炭酸燃焼排ガス3は、充填層を均一に流れる。このため、凝縮された水分によって充填層の表面を均一に濡らすことができ、脱炭酸燃焼排ガス3が洗浄されることなく充填層をすり抜けることを抑制できる。
[2]凝縮水分量を増大させることにより、凝縮された水分が洗浄液に捕捉される。このことにより、凝縮が発生している間、洗浄液の気液接触界面が、凝縮された水分によって置き換わる。このため、気液接触界面における洗浄液のアミン濃度を低濃度に維持することができ、アミン吸収速度の低下を抑制することができる。
このようにして、上述した2つの課題を解決することができ、脱炭酸燃焼排ガス3からのアミンの吸収速度を高めてアミンを効果的に捕捉し、アミンの回収量が低下することを抑制できる。
図3に示す本実施の形態では、第1洗浄部21では、第1加熱器52で加熱された第1洗浄液11のミストが第1噴射器21eから噴射されて、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンが回収される。第1洗浄部21で回収しきれなかったミスト状アミンは、第1洗浄液11で加熱され、第2洗浄部22の第2回収部22aに供給されてから冷却される。このことにより、第2回収部22aにおいて、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴する水蒸気から多くの水分が凝縮し、多くの水分がミスト状アミンに捕捉される。このため、ミスト状アミンの粒径が増大し、ミスト状アミンが、第2回収部22aの上方に設けられた第2洗浄部出口デミスター83で捕捉されやすくなる。また、第2回収部22aでは、上述した[1]、[2]の課題が解決されるため、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するガス状アミンも効果的に回収することができる。
このように本実施の形態によれば、脱炭酸燃焼排ガス3が第1洗浄部21において加熱されるため、第1洗浄部21と第2洗浄部22との温度差を拡大することができる。このことにより、第2洗浄部22において脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンの粒径を増大させることができ、第2洗浄部出口デミスター83によって、ミスト状アミンを効率良く捕捉することができる。とりわけ、本実施の形態では、加熱された第1洗浄液11が噴射されるため、第1回収空間21dを通過する脱炭酸燃焼排ガス3の加熱を均等化させることができる。このため、第1回収空間21dから排出される脱炭酸燃焼排ガス3の温度を均等に上昇させることができ、第2洗浄部22における水分の凝縮を促進させることができる。この結果、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第1加熱器52の熱源は、再生塔30から排出されて熱交換器31を通過したリーン液5になっている。このことにより、第1洗浄液11の温度を、二酸化炭素回収部20aの上端部の温度より高く、かつ第2洗浄液12の温度より高くすることができる。このため、第1洗浄部21と第2洗浄部22との温度差を拡大させることができる。また、このような温度差を拡大させるための熱源に、熱交換器31を通過したリーン液5を使用しているため、廃熱を有効利用することができる。
なお、上述した本実施の形態においては、第1加熱器52の熱源が、再生塔30から排出された熱交換器31を通過したリーン液5になっている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第1加熱器52の熱源は、第1洗浄液11の温度を第2洗浄液12の温度より高くすることができれば、任意である。例えば、リボイラー33から排出された加熱媒体6であってもよく、あるいは、吸収塔20に供給される燃焼排ガス2であってもよい。いずれにおいても、廃熱を有効利用して第1洗浄液11を加熱することができる。このうち燃焼排ガス2は、通常、火力発電所のボイラーから脱硝装置、脱塵装置、脱硫装置などを通過した後に二酸化炭素回収システム1の吸収塔20に供給されて脱炭酸処理される。吸収塔20に供給される前の燃焼排ガス2の温度は、50℃~90℃程度の熱を有しているため、この廃熱を有効利用することができる。更には、第1加熱器52の熱源は、電気ヒータであってもよい。
(第3の実施の形態)
次に、図4を用いて、本発明の第3の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
図4に示す第3の実施の形態においては、第1加熱器により加熱された第1洗浄液を更に加熱する第2加熱器が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図3に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、図4において、図3に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、図4に示すように、第1循環ライン50に、第1加熱器52により加熱された第1洗浄液11を更に加熱する第2加熱器53(第2加熱部)が設けられている。図4に示す形態では、第2加熱器53は、第1循環ライン50において第1加熱器52の下流側(第1噴射器21eの側)に設けられている。
第2加熱器53において第1洗浄液11を加熱するための熱源は、第1加熱器52の熱源とは異なっており、リボイラー33から排出された加熱媒体6になっている。すなわち、本実施の形態では、リボイラー33から排出された加熱媒体6は、第2加熱器53に供給されて、第1加熱器52において加熱された第1洗浄液11を更に加熱するようになっている。リボイラー33を通過した加熱媒体6の温度は、熱交換器31から排出されたリーン液5の温度よりも高いため、この加熱媒体6によって、第1加熱器52で加熱された第1洗浄液11を更に加熱することができる。このため、第1洗浄液11の温度をより一層高くすることができる。
このように本実施の形態によれば、第2加熱器53が、第1加熱器52により加熱された第1洗浄液11を更に加熱する。このことにより、第1洗浄液11の温度をより一層高くすることができ、第1洗浄部21と第2洗浄部22との温度差をより一層拡大させることができる。このため、第2洗浄部22において脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンの粒径をより一層増大させることができ、第2洗浄部出口デミスター83によって、ミスト状アミンをより一層効率良く捕捉することができる。この結果、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率をより一層向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、第2加熱器53の熱源は、リボイラー33から排出された加熱媒体6になっている。このことにより、廃熱を有効利用して、第1洗浄部21と第2洗浄部22との温度差を拡大させることができる。
なお、上述した本実施の形態においては、第2加熱器53の熱源が、リボイラー33から排出された加熱媒体6になっている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、第2加熱器53の熱源は、第1洗浄液11を更に加熱することができれば、任意である。例えば、吸収塔20に供給される燃焼排ガス2であってもよい。更には、第2加熱器53の熱源は、電気ヒータであってもよい。
(第4の実施の形態)
次に、図5を用いて、本発明の第4の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
図5に示す第4の実施の形態においては、第2洗浄液の一部を第1洗浄液に混入させる第1バイパスラインが設けられるとともに、第3洗浄液の一部を第2洗浄液に混入させる第2バイパスラインが設けられている点が主に異なり、他の構成は、図3に示す第2の実施の形態と略同一である。なお、図5において、図3に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、図5に示すように、第2洗浄液12の一部を第1洗浄液11に混入させる第1バイパスライン61が設けられている。図5では、第1バイパスライン61の上流端部(第2洗浄部22の側の端部)は、第2洗浄部22の第2受け部22cに連結されている例が示されている。このことにより、第2受け部22cに貯留されている第2洗浄液12の一部が、第1バイパスライン61に流入するようになっている。第1バイパスライン61の下流端部(第1洗浄部21の側の端部)は、第1洗浄部21の第1受け部21cの上方近傍に配置されている例が示されている。このことにより、第1バイパスライン61を通過した第2洗浄液12が、第1受け部21cに供給されるようになっている。
第1バイパスライン61には、第1バイパス弁63が設けられていてもよい。例えば、第1バイパス弁63は、第2受け部22cに貯留されている第2洗浄液12の液面レベルに基づいて制御されるようにしてもよい。この場合、第2受け部22cに液面レベル計(図示せず)が設けられ、第2受け部22cに貯留されている第2洗浄液12の液面レベルが、所定の基準レベルより高い場合には、第1バイパス弁63の開度を大きくし、所定の基準レベルより低い場合には第1バイパス弁63の開度を小さくしてもよい。また、第2洗浄液12の液面レベルに応じて、第1バイパス弁63の開度を調整してもよい。
また、本実施の形態では、図5に示すように、第3洗浄液13の一部を第2洗浄液12に混入させる第2バイパスライン62が設けられている。図5では、第2バイパスライン62の上流端部(第3洗浄部23の側の端部)は、第3洗浄部23の第3受け部23cに連結されている例が示されている。このことにより、第3受け部23cに貯留されている第3洗浄液13の一部が、第2バイパスライン62に流入するようになっている。第2バイパスライン62の下流端部(第2洗浄部22の側の端部)は、第2洗浄部22の第2受け部22cの上方近傍に配置されている例が示されている。このことにより、第2バイパスライン62を通過した第3洗浄液13が、第2受け部22cに供給されるようになっている。
第2バイパスライン62には、第2バイパス弁64が設けられていてもよい。例えば、第2バイパス弁64は、第3受け部23cに貯留されている第3洗浄液13の液面レベルに基づいて制御されるようにしてもよい。この場合、第3受け部23cに液面レベル計(図示せず)が設けられ、第3受け部23cに貯留されている第3洗浄液13の液面レベルが、所定の基準レベルより高い場合には、第2バイパス弁64の開度を大きくし、所定の基準レベルより低い場合には第2バイパス弁64の開度を小さくしてもよい。また、第3洗浄液13の液面レベルに応じて、第2バイパス弁64の開度を調整してもよい。
このように本実施の形態によれば、第1バイパスライン61によって、第1洗浄液11よりもアミン濃度が低い第2洗浄液12の一部を第1洗浄液11に混入させることができる。このことにより、第1洗浄液11のアミン濃度を低減することができ、第1洗浄部21において、アミン回収性能が低下することを防止できる。また、第2洗浄液12は、第1洗浄液11として再利用できるため廃棄することを不要にでき、第1洗浄液11に新しい洗浄液を補給する頻度を減らすことができる。
また、本実施の形態によれば、第2バイパスライン62によって、第2洗浄液12よりもアミン濃度が低い第3洗浄液13の一部を第2洗浄液12に混入させることができる。このことにより、第2洗浄液12のアミン濃度を低減することができ、第2洗浄部22において、アミン回収性能が低下することを防止できる。また、第3洗浄液13は、第2洗浄液12として再利用できるため廃棄することを不要にでき、第2洗浄液12に新しい洗浄液を補給する頻度を減らすことができる。
なお、上述した本実施の形態においては、図5に示すように、第1循環ライン50に第1加熱器52が設けられている例が示されている。しかしながら、このことに限られることはなく、第1加熱器52は設けられていなくてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、図5に示すように、第3洗浄液13の一部を第2洗浄液12に混入させる第2バイパスライン62が設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、このような第2バイパスライン62は設けられていなくてもよい。
(第5の実施の形態)
次に、図6を用いて、本発明の第5の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
図6に示す第5の実施の形態においては、第1洗浄液が第1回収部の表面を流下しながら脱炭酸燃焼排ガスを洗浄し、第2洗浄液が回収空間をミストの状態で落下しながら脱炭酸燃焼排ガスを洗浄する点が主に異なり、他の構成は、図1および図2に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図6において、図1および図2に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、図6に示すように、概略的には、図1に示す第1洗浄部21が、図1に示す第2洗浄部22の上方に設けられている。
より具体的には、第1洗浄部21は、第1回収部21a(充填層等)と、第1回収部21aの上方に設けられた第1洗浄液分散器21bと、を有している。すなわち、第1回収空間21dの代わりに第1回収部21aが設けられ、第1噴射器21eの代わりに第1洗浄液分散器21bが設けられている。第1回収部21aは、第2回収部22aや第3回収部23aと同様に向流型気液接触装置として構成されている。すなわち、第1回収部21aは、一例として充填層等からなり、充填された充填物や粒子等の気液接触面積を増やすための内部構造物の表面に第1洗浄液11を流下させながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触させて脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミン(主としてガス状アミン)を回収し、脱炭酸燃焼排ガス3からアミンを除去する。第1洗浄液分散器21bは、第2洗浄液分散器22bや第3洗浄液分散器23bと同様に、第1洗浄液11を第1回収部21aに向けて分散させて落下させ、第1回収部21aの内部にある構造物の表面を流下するように第1洗浄液11を供給する。第1洗浄液分散器21bは、重力の作用によって非強制的に第1洗浄液11を第1回収部21aに自由落下させる。第1回収部21aで内部構造物の表面を流下した第1洗浄液11は第1受け部21cで受け取られて貯留される。
第2洗浄部22は、第2回収空間22dと、第2回収空間22dの上方に設けられた第2噴射器22eと、を有している、
第2回収空間22dは、第1回収空間21dと同様に、第2噴射器22eから噴射された第2洗浄液12がミストの状態で自由落下(すなわち、空間内の構造物等の表面に接触することがないまま落下)しながら、第2受け部22cを通過して上昇する脱炭酸燃焼排ガス3とが気液接触する空間であって、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するアミン(主として、ミスト状アミン)を回収する空間である。第2回収空間22dは、第2噴射器22eから第2受け部22cにわたって形成されている。第2回収空間22dは、上述した第1洗浄部21の第1回収空間21dと同様に構成されているため、ここでは詳細な説明は省略する。第2噴射器22eは、上述した第1洗浄部21の第1噴射器21eと同様に構成されているため、ここでは詳細な説明は省略する。
回収部出口デミスター81を通過した脱炭酸燃焼排ガス3は、第1洗浄部21の第1受け部21cを通過して、第1洗浄部21の第1回収部21aに達する。
一方、第1受け部21cに貯留された第1洗浄液11は、第1循環ポンプ51によって第1受け部21cから抜き出され、第1循環ライン50を通って第1洗浄液分散器21bに供給される。本実施の形態では、第1循環ライン50には、後述する加熱器52、53や冷却器などは設けられていないことから、第1循環ライン50を通過する第1洗浄液11は、積極的に加熱も冷却もされていない。
第1回収部21aにおいて、第1洗浄液11が第1回収部21aの表面を流下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触し、脱炭酸燃焼排ガス3が洗浄される。このことにより、主として、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するガス状アミンが第1洗浄液11に回収される。第1回収部21aにおいて脱炭酸燃焼排ガス3を洗浄した第1洗浄液11は、第1回収部21aから落下して第1受け部21cに受け取られて貯留される。
第1洗浄液11で洗浄された脱炭酸燃焼排ガス3は、第1回収部21aから排出されて、吸収塔容器20c内を更に上昇し、第1洗浄部出口デミスター82を通過する。
第1洗浄部出口デミスター82では、主として、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンおよび第1洗浄液11のミストが捕捉される。第1洗浄部出口デミスター82を通過した脱炭酸燃焼排ガス3は、第2洗浄部22の第2受け部22cを通過して第2回収部22aに達する。
一方、第2受け部22cに貯留された第2洗浄液12は、第2循環ポンプ55によって第2受け部22cから抜き出され、第2循環ライン54を通って第2洗浄液分散器22bに供給される。この間、第2洗浄液12は、第2洗浄液冷却器56によって冷却され、第2洗浄液12の温度が、第1洗浄液11の温度よりも低くなる。
第2洗浄液12は、第2噴射器22eのスプレーノズル孔から噴射されて第2回収空間22d内を落下し、第2受け部22cに直接的に達する。この間、第2洗浄液12はミストの状態で落下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触し、脱炭酸燃焼排ガス3が第2洗浄液12で洗浄される。このことにより、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンが第2洗浄液12に回収される。第2受け部22cに達した第2洗浄液12は、第2受け部22cに受け取られて貯留される。
第2回収空間22d内では、冷却された第2洗浄液12が第2噴射器22eから噴射されているため、第2回収空間22dの温度は第1回収部21aの温度よりも低くなる。このため、脱炭酸燃焼排ガス3は、第2洗浄液12によって冷却され、脱炭酸燃焼排ガス3の温度は低下する。脱炭酸燃焼排ガス3の温度の低下により、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴していた水蒸気が凝縮して、凝縮した水分が、第2洗浄液12に捕捉される。このことにより、ミスト状アミンの粒径が増大し、ミスト状アミンが、第2回収空間22dの上方に設けられた第2洗浄部出口デミスター83で捕捉される。また、第2回収空間22dでは、冷却された第2洗浄液12が噴射されていることにより、第2回収空間22dを通過する脱炭酸燃焼排ガス3の冷却を均等化させることができる。このため、ミスト状アミンへの凝縮を促進させることができ、ミスト状アミンの粒径の増大を均等化させることができる。さらに、粒径が増大したミスト状アミンを、第2回収空間22dにおいて第2噴射器22eから噴射された第2洗浄液12によって落とすことができるため、回収効率を向上させることができる。
このように本実施の形態によれば、第2洗浄部22が、第2回収空間22dと第2噴射器22eとを有している。このことにより、第2洗浄液12をミスト化することができ、第2洗浄液12のミストが、第1洗浄部21から排出された脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンに物理的に衝突することができる。このため、第2洗浄液12にミスト状アミンを効率良く回収することができ、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率を向上させることができる。とりわけ、第2洗浄液12は、第2洗浄液冷却器56によって冷却されているため、脱炭酸燃焼排ガス3の冷却を均等化させることができる。このため、脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンへの凝縮を均等に促進させることができ、ミスト状アミンの粒径の増大を均等化させることができる。この場合、第2洗浄部出口デミスター83において、効率良くミスト状アミンを捕捉することができ、アミンの大気中への放出量を低減することができる。
(第6の実施の形態)
次に、図7~図9を用いて、本発明の第6の実施の形態における二酸化炭素回収システムおよび二酸化炭素回収システムの運転方法について説明する。
図7~図9に示す第6の実施の形態においては、第1洗浄部出口デミスターが設けられていない点が主に異なり、他の構成は、図1および図2に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図7~図9において、図1および図2に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、図7に示すように、第1洗浄部21は、表面に第1洗浄液11を流下させながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触させてアミンを回収する第1回収部21a(充填層等)と、第1回収部21aに向けて第1洗浄液11を分散させて落下させる第1洗浄液分散器21bと、を有している。すなわち、第1回収空間21dの代わりに第1回収部21aが設けられ、第1噴射器21eの代わりに第1洗浄液分散器21bが設けられている。第1洗浄部21は、図6に示す第5の実施の形態と同様の構成を有しているため、ここでは詳細な説明は省略する。
また、図7に示すように、第1洗浄部21と第2洗浄部22との間には、図1等に示すような第1洗浄部出口デミスター82が設けられていない。このことにより、第1洗浄部21から排出された脱炭酸燃焼排ガス3は、第2洗浄部22に直接的に供給される。
そこで、本実施の形態では、デミスターの配列を工夫することで、ミスト状アミンの回収効率の向上を図っている。すなわち、本実施の形態では、回収部出口デミスター81、第2洗浄部出口デミスター83および第3洗浄部出口デミスター84を設けるが、第1洗浄部出口デミスター82は設けていない。
ここで、吸収塔容器20c内における脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンの粒径の変化の特性を、図8を用いて説明する。図8は、吸収塔容器20c内における脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンの粒径の推移を示すグラフである。横軸は、吸収塔容器20c内の高さ位置を無次元数で示している。図8においては、いずれのデミスターも配置していないとともに、各洗浄部21~23が、内部構造物の表面に洗浄液11~13を流下させる回収部を有しているという条件での粒径の変化を示している。
脱炭酸燃焼排ガス3に同伴するミスト状アミンは、二酸化炭素回収部20aにおいては、緩やかに粒径が増大する。
二酸化炭素回収部20aから排出されて第1洗浄部21に達した脱炭酸燃焼排ガス3は、第1洗浄液11で洗浄されるが、この第1洗浄液11の水分濃度は、リーン液5よりも高い。このため、第1洗浄部21では、気液平衡関係から、水蒸気分圧が二酸化炭素回収部20aよりも高くなる。このことにより、ミスト状アミンへの凝縮が生じ、ミスト状アミンの粒径が増大する。とりわけ、第1洗浄部21では、後述する第2洗浄部22および第3洗浄部23よりも、ミスト状アミンへの凝縮速度が大きくなり、ミスト状アミンの粒径の増大が促進される。
第1洗浄部21から排出されて第2洗浄部22に達した脱炭酸燃焼排ガス3は、第2洗浄液12で洗浄されるが、この第2洗浄液12の水分濃度は、第1洗浄液11よりも高い。このため、第2洗浄部22では、気液平衡関係から、水蒸気分圧が第1洗浄部21よりも高くなる。このことにより、ミスト状アミンへの凝縮が生じ、ミスト状アミンの粒径が増大する。しかしながら、第2洗浄部22におけるミスト状アミンの粒径の増大速度は、第1洗浄部21よりも小さくなる。この理由は、第2洗浄部22における水蒸気分圧は第1洗浄部21よりも高くなるものの、第1洗浄部21と第2洗浄部22とで水蒸気分圧の差はそれほど大きくはなく、二酸化炭素回収部20aと第1洗浄部21とでの水蒸気分圧の差よりも小さいことである。また、ミスト状アミンへの凝縮が生じた場合の粒径の増大の程度は、同一凝縮量で比較すると、ミスト状アミンの粒径が大きくなるほど小さくなることも理由として挙げられる。このようにして、第2洗浄部22におけるミスト状アミンの粒径の増大は、第1洗浄部21よりも緩やかになる。
第2洗浄部22から排出されて第3洗浄部23に達した脱炭酸燃焼排ガス3は、第3洗浄液13で洗浄されるが、この第3洗浄液13の水分濃度は、第2洗浄液12よりも高い。このため、第3洗浄部23では、気液平衡関係から、水蒸気分圧が第2洗浄部22よりも高くなる。このことにより、ミスト状アミンへの凝縮が生じ、ミスト状アミンの粒径が増大する。しかしながら、第2洗浄部22の説明で述べた理由と同様に、第3洗浄部23におけるミスト状アミンの粒径の増大速度は、第2洗浄部22よりも小さくなる。このため、第3洗浄部23におけるミスト状アミンの粒径の増大は、第2洗浄部22よりも緩やかになる。
このようなミスト状アミンの粒径の推移に基づいて、本実施の形態では、第1洗浄部出口デミスター82を設けていない。すなわち、図8によれば、第1洗浄部21におけるミスト状アミンの粒径は、概して5μm以下となっており、デミスターでは捕捉されにくい粒径になっている。また、第1洗浄部出口デミスター82を設けない場合には、粒径が小さいミスト状アミンを第2洗浄部22に送り、図8に示すように第2洗浄部22にて粒径を増大させることができる。図8によれば、第2洗浄部22においてミスト状アミンは、概して5μm以上に増大するため、デミスターで捕捉されやすい粒径となるまで成長する。このため、ミスト状アミンを第2洗浄部出口デミスター83で効率良く回収することができる。このように、ミスト状アミンの効率良い回収を考慮して、本実施の形態では、第1洗浄部出口デミスター82は設けられていない。この場合、吸収塔容器20c内における脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を低減することができ、上述した送風機B(図1参照)の動力を低減することができる。
このように本実施の形態によれば、第1洗浄部21と第2洗浄部22との間には、第1洗浄部出口デミスター82が設けられておらず、第1洗浄部21から排出される脱炭酸燃焼排ガス3が、デミスターを通過することなく、第2洗浄部22に直接的に供給される。このことにより、粒径が小さいミスト状アミンを第2洗浄部22に送って成長させ、第2洗浄部22において、デミスターで捕捉されやすくなるまで粒径を増大させることができる。このため、第2洗浄部出口デミスター83において、粒径が増大したミスト状アミンを、効率良く回収することができる。この結果、脱炭酸燃焼排ガス3の洗浄効率を向上させることができ、アミンの大気中への放出量を低減することができる。
また、本実施の形態においても、第3洗浄部出口デミスター84が、第2洗浄部出口デミスター83よりも疎に形成されている。このことにより、第3洗浄部出口デミスタ-84でミスト状アミンおよび第3洗浄液13のミストを捕捉しながらも、第3洗浄部出口デミスター84を通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を低減することができる。この場合、吸収塔20に燃焼排ガス2を供給するための送風機Bの動力を低減することができる。
また、本実施の形態においても、回収部出口デミスター81が、第2洗浄部出口デミスター83よりも疎に形成されている。このことにより、回収部出口デミスター81でミスト状アミンを捕捉しながらも、回収部出口デミスター81を通過する脱炭酸燃焼排ガス3の流れに生じる圧力損失を低減することができる。この場合、吸収塔20に燃焼排ガス2を供給するための送風機Bの動力を低減することができる。
なお、上述した本実施の形態においては、第1洗浄部21が、表面に第1洗浄液11を流下させながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触させてアミンを回収する第1回収部21aと、第1回収部21aに向けて第1洗浄液11を分散させて落下させる第1洗浄液分散器21bと、を有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図9に示すように、第1洗浄部21は、図1および図2に示す第1の実施の形態と同様に、第1洗浄液11がミストの状態で落下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触する第1回収空間21dと、第1回収空間21dに向けて第1洗浄液11を噴射する第1噴射器21eと、を有するように構成してもよい。この場合においても、上述した第6の実施の形態の効果を享受することができる。
以上述べた実施の形態によれば、燃焼排ガスを洗浄液で洗浄してアミンの大気中への放出量を低減することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
例えば、第2の実施の形態~第5の実施の形態では、第1洗浄部21が、第1洗浄液11がミストの状態で落下しながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触する第1回収空間21dと、第1回収空間21dに向けて第1洗浄液11を噴射する第1噴射器21eと、を有するように構成されている例を示している。しかしながら、図7に示す形態と同様にして、第1洗浄部21が、表面に第1洗浄液11を流下させながら脱炭酸燃焼排ガス3と気液接触させてアミンを回収する第1回収部21aと、第1回収部21aの上方に設けられた第1洗浄液分散器21bと、を有するように構成されていてもよい。この場合においても、各実施の形態の効果を享受することができる。
また、第2の実施の形態~第5の実施の形態では、第1洗浄部21と第2洗浄部22との間に第1洗浄部出口デミスター82が設けられている例を示している。しかしながら、図7および図9に示す形態と同様にして、第1洗浄部出口デミスター82が設けられていなくてもよい。この場合においても、各実施の形態の効果を享受することができる。