実施の形態1.
図2は、3GPPにおいて議論されているLTE方式の通信システム200の全体的な構成を示すブロック図である。図2について説明する。無線アクセスネットワークは、E-UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network)201と称される。通信端末装置である移動端末装置(以下「移動端末(User Equipment:UE)」という)202は、基地局装置(以下「基地局(E-UTRAN NodeB:eNB)」という)203と無線通信可能であり、無線通信で信号の送受信を行う。
ここで、「通信端末装置」とは、移動可能な携帯電話端末装置などの移動端末装置だけでなく、センサなどの移動しないデバイスも含んでいる。以下の説明では、「通信端末装置」を、単に「通信端末」という場合がある。
移動端末202に対する制御プロトコル、例えばRRC(Radio Resource Control)と、ユーザプレイン、例えばPDCP(Packet Data Convergence Protocol)、RLC(Radio Link Control)、MAC(Medium Access Control)、PHY(Physical layer)とが基地局203で終端するならば、E-UTRANは1つあるいは複数の基地局203によって構成される。
移動端末202と基地局203との間の制御プロトコルRRC(Radio Resource Control)は、報知(Broadcast)、ページング(paging)、RRC接続マネージメント(RRC connection management)などを行う。RRCにおける基地局203と移動端末202との状態として、RRC_IDLEと、RRC_CONNECTEDとがある。
RRC_IDLEでは、PLMN(Public Land Mobile Network)選択、システム情報(System Information:SI)の報知、ページング(paging)、セル再選択(cell re-selection)、モビリティなどが行われる。RRC_CONNECTEDでは、移動端末はRRC接続(connection)を有し、ネットワークとのデータの送受信を行うことができる。またRRC_CONNECTEDでは、ハンドオーバ(Handover:HO)、隣接セル(Neighbour cell)の測定(メジャメント(measurement))などが行われる。
基地局203は、eNB207と、Home-eNB206とに分類される。通信システム200は、複数のeNB207を含むeNB群203-1と、複数のHome-eNB206を含むHome-eNB群203-2とを備える。またコアネットワークであるEPC(Evolved Packet Core)と、無線アクセスネットワークであるE-UTRAN201とで構成されるシステムは、EPS(Evolved Packet System)と称される。コアネットワークであるEPCと、無線アクセスネットワークであるE-UTRAN201とを合わせて、「ネットワーク」という場合がある。
eNB207は、移動管理エンティティ(Mobility Management Entity:MME)、あるいはS-GW(Serving Gateway)、あるいはMMEおよびS-GWを含むMME/S-GW部(以下「MME部」という場合がある)204とS1インタフェースにより接続され、eNB207とMME部204との間で制御情報が通信される。一つのeNB207に対して、複数のMME部204が接続されてもよい。eNB207間は、X2インタフェースにより接続され、eNB207間で制御情報が通信される。
Home-eNB206は、MME部204とS1インタフェースにより接続され、Home-eNB206とMME部204との間で制御情報が通信される。一つのMME部204に対して、複数のHome-eNB206が接続される。あるいは、Home-eNB206は、HeNBGW(Home-eNB GateWay)205を介してMME部204と接続される。Home-eNB206とHeNBGW205とは、S1インタフェースにより接続され、HeNBGW205とMME部204とはS1インタフェースを介して接続される。
一つまたは複数のHome-eNB206が一つのHeNBGW205と接続され、S1インタフェースを通して情報が通信される。HeNBGW205は、一つまたは複数のMME部204と接続され、S1インタフェースを通して情報が通信される。
MME部204およびHeNBGW205は、上位装置、具体的には上位ノードであり、基地局であるeNB207およびHome-eNB206と、移動端末(UE)202との接続を制御する。MME部204は、コアネットワークであるEPCを構成する。基地局203およびHeNBGW205は、E-UTRAN201を構成する。
さらに3GPPでは、以下のような構成が検討されている。Home-eNB206間のX2インタフェースはサポートされる。すなわち、Home-eNB206間は、X2インタフェースにより接続され、Home-eNB206間で制御情報が通信される。MME部204からは、HeNBGW205はHome-eNB206として見える。Home-eNB206からは、HeNBGW205はMME部204として見える。
Home-eNB206が、HeNBGW205を介してMME部204に接続される場合および直接MME部204に接続される場合のいずれの場合も、Home-eNB206とMME部204との間のインタフェースは、S1インタフェースで同じである。
基地局203は、1つのセルを構成してもよいし、複数のセルを構成してもよい。各セルは、移動端末202と通信可能な範囲であるカバレッジとして予め定める範囲を有し、カバレッジ内で移動端末202と無線通信を行う。1つの基地局203が複数のセルを構成する場合、1つ1つのセルが、移動端末202と通信可能に構成される。
図3は、図2に示す移動端末202の構成を示すブロック図である。図3に示す移動端末202の送信処理を説明する。まず、プロトコル処理部301からの制御データ、およびアプリケーション部302からのユーザデータが、送信データバッファ部303へ保存される。送信データバッファ部303に保存されたデータは、エンコーダー部304へ渡され、誤り訂正などのエンコード処理が施される。エンコード処理を施さずに、送信データバッファ部303から変調部305へ直接出力されるデータが存在してもよい。エンコーダー部304でエンコード処理されたデータは、変調部305にて変調処理が行われる。変調されたデータは、ベースバンド信号に変換された後、周波数変換部306へ出力され、無線送信周波数に変換される。その後、アンテナ307から基地局203に送信信号が送信される。
また、移動端末202の受信処理は、以下のように実行される。基地局203からの無線信号がアンテナ307により受信される。受信信号は、周波数変換部306にて無線受信周波数からベースバンド信号に変換され、復調部308において復調処理が行われる。復調後のデータは、デコーダー部309へ渡され、誤り訂正などのデコード処理が行われる。デコードされたデータのうち、制御データはプロトコル処理部301へ渡され、ユーザデータはアプリケーション部302へ渡される。移動端末202の一連の処理は、制御部310によって制御される。よって制御部310は、図3では省略しているが、各部301~309と接続している。
図4は、図2に示す基地局203の構成を示すブロック図である。図4に示す基地局203の送信処理を説明する。EPC通信部401は、基地局203とEPC(MME部204など)、HeNBGW205などとの間のデータの送受信を行う。他基地局通信部402は、他の基地局との間のデータの送受信を行う。EPC通信部401および他基地局通信部402は、それぞれプロトコル処理部403と情報の受け渡しを行う。プロトコル処理部403からの制御データ、ならびにEPC通信部401および他基地局通信部402からのユーザデータおよび制御データは、送信データバッファ部404へ保存される。
送信データバッファ部404に保存されたデータは、エンコーダー部405へ渡され、誤り訂正などのエンコード処理が施される。エンコード処理を施さずに、送信データバッファ部404から変調部406へ直接出力されるデータが存在してもよい。エンコードされたデータは、変調部406にて変調処理が行われる。変調されたデータは、ベースバンド信号に変換された後、周波数変換部407へ出力され、無線送信周波数に変換される。その後、アンテナ408より一つもしくは複数の移動端末202に対して送信信号が送信される。
また、基地局203の受信処理は以下のように実行される。一つもしくは複数の移動端末202からの無線信号が、アンテナ408により受信される。受信信号は、周波数変換部407にて無線受信周波数からベースバンド信号に変換され、復調部409で復調処理が行われる。復調されたデータは、デコーダー部410へ渡され、誤り訂正などのデコード処理が行われる。デコードされたデータのうち、制御データはプロトコル処理部403あるいはEPC通信部401、他基地局通信部402へ渡され、ユーザデータはEPC通信部401および他基地局通信部402へ渡される。基地局203の一連の処理は、制御部411によって制御される。よって制御部411は、図4では省略しているが、各部401~410と接続している。
図5は、MMEの構成を示すブロック図である。図5では、前述の図2に示すMME部204に含まれるMME204aの構成を示す。PDN GW通信部501は、MME204aとPDN GWとの間のデータの送受信を行う。基地局通信部502は、MME204aと基地局203との間のS1インタフェースによるデータの送受信を行う。PDN GWから受信したデータがユーザデータであった場合、ユーザデータは、PDN GW通信部501から、ユーザプレイン通信部503経由で基地局通信部502に渡され、1つあるいは複数の基地局203へ送信される。基地局203から受信したデータがユーザデータであった場合、ユーザデータは、基地局通信部502から、ユーザプレイン通信部503経由でPDN GW通信部501に渡され、PDN GWへ送信される。
PDN GWから受信したデータが制御データであった場合、制御データは、PDN GW通信部501から制御プレイン制御部505へ渡される。基地局203から受信したデータが制御データであった場合、制御データは、基地局通信部502から制御プレイン制御部505へ渡される。
HeNBGW通信部504は、HeNBGW205が存在する場合に設けられ、情報種別によって、MME204aとHeNBGW205との間のインタフェース(IF)によるデータの送受信を行う。HeNBGW通信部504から受信した制御データは、HeNBGW通信部504から制御プレイン制御部505へ渡される。制御プレイン制御部505での処理の結果は、PDN GW通信部501経由でPDN GWへ送信される。また、制御プレイン制御部505で処理された結果は、基地局通信部502経由でS1インタフェースにより1つあるいは複数の基地局203へ送信され、またHeNBGW通信部504経由で1つあるいは複数のHeNBGW205へ送信される。
制御プレイン制御部505には、NASセキュリティ部505-1、SAEベアラコントロール部505-2、アイドルステート(Idle State)モビリティ管理部505-3などが含まれ、制御プレインに対する処理全般を行う。NASセキュリティ部505-1は、NAS(Non-Access Stratum)メッセージのセキュリティなどを行う。SAEベアラコントロール部505-2は、SAE(System Architecture Evolution)のベアラの管理などを行う。アイドルステートモビリティ管理部505-3は、待受け状態(アイドルステート(Idle State);LTE-IDLE状態、または、単にアイドルとも称される)のモビリティ管理、待受け状態時のページング信号の生成および制御、傘下の1つあるいは複数の移動端末202のトラッキングエリアの追加、削除、更新、検索、トラッキングエリアリスト管理などを行う。
MME204aは、1つまたは複数の基地局203に対して、ページング信号の分配を行う。また、MME204aは、待受け状態(Idle State)のモビリティ制御(Mobility control)を行う。MME204aは、移動端末が待ち受け状態のとき、および、アクティブ状態(Active State)のときに、トラッキングエリア(Tracking Area)リストの管理を行う。MME204aは、UEが登録されている(registered)追跡領域(トラッキングエリア:Tracking Area)に属するセルへ、ページングメッセージを送信することで、ページングプロトコルに着手する。MME204aに接続されるHome-eNB206のCSGの管理およびCSG-IDの管理、そしてホワイトリスト管理は、アイドルステートモビリティ管理部505-3で行われてもよい。
次に通信システムにおけるセルサーチ方法の一例を示す。図6は、LTE方式の通信システムにおいて通信端末(UE)が行うセルサーチから待ち受け動作までの概略を示すフローチャートである。通信端末は、セルサーチを開始すると、ステップST601で、周辺の基地局から送信される第一同期信号(P-SS)、および第二同期信号(S-SS)を用いて、スロットタイミング、フレームタイミングの同期をとる。
P-SSとS-SSとを合わせて、同期信号(Synchronization Signal:SS)という。同期信号(SS)には、セル毎に割り当てられたPCIに1対1に対応するシンクロナイゼーションコードが割り当てられている。PCIの数は504通りが検討されている。この504通りのPCIを用いて同期をとるとともに、同期がとれたセルのPCIを検出(特定)する。
次に同期がとれたセルに対して、ステップST602で、基地局からセル毎に送信される参照信号(リファレンスシグナル:RS)であるセル固有参照信号(Cell-specific Reference Signal:CRS)を検出し、RSの受信電力(Reference Signal Received Power:RSRP)の測定を行う。参照信号(RS)には、PCIと1対1に対応したコードが用いられている。そのコードで相関をとることによって他セルと分離できる。ステップST1で特定したPCIから、該セルのRS用のコードを導出することによって、RSを検出し、RSの受信電力を測定することが可能となる。
次にステップST603で、ステップST602までで検出された一つ以上のセルの中から、RSの受信品質が最もよいセル、例えば、RSの受信電力が最も高いセル、つまりベストセルを選択する。
次にステップST604で、ベストセルのPBCHを受信して、報知情報であるBCCHを得る。PBCH上のBCCHには、セル構成情報が含まれるMIB(Master Information Block)がマッピングされる。したがってPBCHを受信してBCCHを得ることで、MIBが得られる。MIBの情報としては、例えば、DL(ダウンリンク)システム帯域幅(送信帯域幅設定(transmission bandwidth configuration:dl-bandwidth)とも呼ばれる)、送信アンテナ数、SFN(System Frame Number)などがある。
次にステップST605で、MIBのセル構成情報をもとに該セルのDL-SCHを受信して、報知情報BCCHの中のSIB(System Information Block)1を得る。SIB1には、該セルへのアクセスに関する情報、セルセレクションに関する情報、他のSIB(SIBk;k≧2の整数)のスケジューリング情報が含まれる。また、SIB1には、トラッキングエリアコード(Tracking Area Code:TAC)が含まれる。
次にステップST606で、通信端末は、ステップST605で受信したSIB1のTACと、通信端末が既に保有しているトラッキングエリアリスト内のトラッキングエリア識別子(Tracking Area Identity:TAI)のTAC部分とを比較する。トラッキングエリアリストは、TAIリスト(TAI list)とも称される。TAIはトラッキングエリアを識別するための識別情報であり、MCC(Mobile Country Code)と、MNC(Mobile Network Code)と、TAC(Tracking Area Code)とによって構成される。MCCは国コードである。MNCはネットワークコードである。TACはトラッキングエリアのコード番号である。
通信端末は、ステップST606で比較した結果、ステップST605で受信したTACが、トラッキングエリアリスト内に含まれるTACと同じならば、該セルで待ち受け動作に入る。比較して、ステップST605で受信したTACがトラッキングエリアリスト内に含まれなければ、通信端末は、該セルを通して、MMEなどが含まれるコアネットワーク(Core Network,EPC)へ、TAU(Tracking Area Update)を行うためにトラッキングエリアの変更を要求する。
コアネットワークを構成する装置(以下「コアネットワーク側装置」という場合がある)は、TAU要求信号とともに通信端末から送られてくる該通信端末の識別番号(UE-IDなど)をもとに、トラッキングエリアリストの更新を行う。コアネットワーク側装置は、通信端末に更新後のトラッキングエリアリストを送信する。通信端末は、受信したトラッキングエリアリストに基づいて、通信端末が保有するTACリストを書き換える(更新する)。その後、通信端末は、該セルで待ち受け動作に入る。
スマートフォンおよびタブレット型端末装置の普及によって、セルラー系無線通信によるトラフィックが爆発的に増大しており、世界中で無線リソースの不足が懸念されている。これに対応して周波数利用効率を高めるために、小セル化し、空間分離を進めることが検討されている。
従来のセルの構成では、eNBによって構成されるセルは、比較的広い範囲のカバレッジを有する。従来は、複数のeNBによって構成される複数のセルの比較的広い範囲のカバレッジによって、あるエリアを覆うように、セルが構成されている。
小セル化された場合、eNBによって構成されるセルは、従来のeNBによって構成されるセルのカバレッジに比べて範囲が狭いカバレッジを有する。したがって、従来と同様に、あるエリアを覆うためには、従来のeNBに比べて、多数の小セル化されたeNBが必要となる。
以下の説明では、従来のeNBによって構成されるセルのように、カバレッジが比較的大きいセルを「マクロセル」といい、マクロセルを構成するeNBを「マクロeNB」という。また、小セル化されたセルのように、カバレッジが比較的小さいセルを「スモールセル」といい、スモールセルを構成するeNBを「スモールeNB」という。
マクロeNBは、例えば、非特許文献7に記載される「ワイドエリア基地局(Wide Area Base Station)」であってもよい。
スモールeNBは、例えば、ローパワーノード、ローカルエリアノード、ホットスポットなどであってもよい。また、スモールeNBは、ピコセルを構成するピコeNB、フェムトセルを構成するフェムトeNB、HeNB、RRH(Remote Radio Head)、RRU(Remote Radio Unit)、RRE(Remote Radio Equipment)またはRN(Relay Node)であってもよい。また、スモールeNBは、非特許文献7に記載される「ローカルエリア基地局(Local Area Base Station)」または「ホーム基地局(Home Base Station)」であってもよい。
図7は、マクロeNBとスモールeNBとが混在する場合のセルの構成の概念を示す図である。マクロeNBによって構成されるマクロセルは、比較的広い範囲のカバレッジ701を有する。スモールeNBによって構成されるスモールセルは、マクロeNB(マクロセル)のカバレッジ701に比べて範囲が小さいカバレッジ702を有する。
複数のeNBが混在する場合、あるeNBによって構成されるセルのカバレッジが、他のeNBによって構成されるセルのカバレッジ内に含まれる場合がある。図7に示すセルの構成では、参照符号「704」または「705」で示されるように、スモールeNBによって構成されるスモールセルのカバレッジ702が、マクロeNBによって構成されるマクロセルのカバレッジ701内に含まれる場合がある。
また、参照符号「705」で示されるように、複数、例えば2つのスモールセルのカバレッジ702が、1つのマクロセルのカバレッジ701内に含まれる場合もある。移動端末(UE)703は、例えばスモールセルのカバレッジ702内に含まれ、スモールセルを介して通信を行う。
また図7に示すセルの構成では、参照符号「706」で示されるように、マクロeNBによって構成されるマクロセルのカバレッジ701と、スモールeNBによって構成されるスモールセルのカバレッジ702とが複雑に重複する場合が生じる。
また、参照符号「707」で示されるように、マクロeNBによって構成されるマクロセルのカバレッジ701と、スモールeNBによって構成されるスモールセルのカバレッジ702とが重複しない場合も生じる。
さらには、参照符号「708」で示されるように、多数のスモールeNBによって構成される多数のスモールセルのカバレッジ702が、1つのマクロeNBによって構成される1つのマクロセルのカバレッジ701内に構成される場合も生じる。
多素子アンテナでのスループットを向上させるためには、以下の(1),(2)の問題がある。
(1)アンテナ素子間の位相差および振幅差を合わせないと、(a)ビームの指向性が、向かわせたい方向に制御できなくなる、(b)等価等方放射電力(Equivalent Isotropic Radiated Power;略称:EIRP)などで表される利得が低下する、(c)サイドローブの電力が増加し、他のユーザへの干渉が増加する、などの問題がある。
(2)アンテナ素子間の位相差および振幅差は、温度変化および経年変化におけるばらつきも無くす必要がある。しかし、広帯域通信となり、周波数帯域幅が増加することになるので、温度変化および経年変化の変化量は、増幅器およびフィルタなどによる影響が大きくなるという問題がある。
本実施の形態では、多素子アンテナを構成する複数のアンテナ素子間におけるビームの位相差および振幅差を合わせるためのキャリブレーションを精度良く行う方法について開示する。
図8は、通信システムにおける通信装置の構成を示すブロック図である。通信装置は、基地局であってもよいし、移動端末であってもよい。すなわち、本実施の形態の通信システムは、基地局と移動端末とを備えて構成され、基地局および移動端末のうち、少なくとも一方は、図8に示す通信装置によって実現される。
通信装置は、PHY(Physical layer)処理部801と、複数のアンテナ素子802~805と、制御部806とを備えて構成される。複数のアンテナ素子802~805は、具体的には第1アンテナ素子802、第2アンテナ素子803、第3アンテナ素子804、・・・、第nアンテナ素子805のn(nは自然数)個のアンテナ素子802~805である。第1アンテナ素子801から第nアンテナ素子805は、PHY処理部801に接続されている。第1アンテナ素子801から第nアンテナ素子805は、多素子アンテナを構成する。
PHY処理部801は、制御部806から与えられる指示に従って、送信信号の生成、マッピング、受信信号の抽出、およびデマッピングの各処理を行う。制御部806は、送受信に関するタイミング制御、時間・周波数・符号のリソース割り当て制御、送信電力制御、ならびにアンテナ素子への位相および振幅値の制御を行う。
PHY処理部801は、信号を送受信するときにアンテナ素子802~805が形成するビームの位相および振幅のキャリブレーションを行うキャリブレーション部に相当する。PHY処理部801は、複数のアンテナ素子802~805間において、ビームの位相および振幅が同一になるように、各アンテナ素子802~805におけるビームの位相および振幅の補正値を求め、求めた補正値に基づいてキャリブレーションを行う。
次に、信号の流れに沿って、通信装置における制御処理の手順の一例を説明する。制御部806は、キャリブレーションを行う必要があるかどうかを判断する。制御部806は、キャリブレーションを行う必要があると判断すると、キャリブレーションを実行するタイミング、周波数および送信電力を決定し、PHY処理部801に通知する。
PHY処理部801は、具体的には以下のようにしてキャリブレーションを行う。PHY処理部801は、制御部806から与えられる指示に従って、キャリブレーション用RS(以下「cal-RS」という場合がある)のマッピングおよび送信電力値の設定を行い、予め定めるアンテナ素子を用いて、予め定めるタイミングで信号を送信する。
またPHY処理部801は、制御部806から与えられる指示に従って、送信した信号を、予め定めるアンテナ素子で受信する。PHY処理部801は、受信した信号に対して、キャリブレーション用RSのデマッピング処理を行い、デマッピング処理によって得られた値から伝搬特性を算出して、制御部806に通知する。
制御部806は、各アンテナ素子802~805の間の相対値を解析するか、または、出荷前などの事前に電波暗室などで測定した伝搬特性の理想値との差分を解析し、その解析値または差分値から、各アンテナ素子802~805の位相および振幅の補正値を算出して、PHY処理部801に通知する。
PHY処理部801は、制御部806から与えられる補正値を設定し、以降の信号にオフセットが加算されるようにする。
制御部806において、キャリブレーションを行う必要があるかどうかの判断としては、周期的(定期的)に、前述の制御部806およびPHY処理部801における各処理を実行し、制御部806によって算出される各アンテナ素子802~805の位相および振幅の補正値の結果と、現在設定している値との差分に基づいて決定してもよい。
通信装置が基地局である場合、通信装置は、上位の保守管理装置からの指示に従って、キャリブレーションを開始してもよい。これによって、例えば、上位の保守管理装置では、基地局のセルカバレッジで重なりのある複数の基地局で同時にキャリブレーションを行う状態(以下「キャリブレーション状態」という場合がある)になることを防ぎ、サービスの停止エリアが発生することを回避することができる。
同様に、通信装置である基地局は、周辺の基地局からキャリブレーション状態になっているかどうかの通知を受けて、周辺の基地局がキャリブレーション状態になっていないとき、自局がキャリブレーションを開始するようにしてもよい。逆に、基地局は、周辺の基地局のために、自局がキャリブレーション状態になっているかどうかを周辺の基地局に通知してもよい。
あるいは、基地局に温度センサを設け、温度変化が予め定める値以上になったときに基地局がキャリブレーションを開始するようにしてもよい。送信電力増幅器、位相器および所要周波数を分離して抽出するフィルタでは、温度特性があり、送信電力増幅器、位相器および所要周波数にばらつきが生じることが知られている。前述のように温度変化が予め定める値以上になったときに基地局がキャリブレーションを開始するようにすることによって、これら送信電力増幅器、位相器および所要周波数のばらつきによるビーム制御の不正確さを修正することができる。
あるいは、通信装置は、対向装置からの要求に従って、キャリブレーションを開始してもよい。通信装置が基地局であり、対向装置が基地局またはリピータである場合、対向装置は、通常運転時の適切な指向性のときの搬送波対雑音比(Carrier to Noise Ratio;略称:CNR)または信号対雑音比(Signal to Noise Ratio;略称:SNR)を知っているまたは学習することができる。したがって、例えば、温度変化および経年変化などで、CNRまたはSNRが予め定める値以下になったときに、対向装置から通信装置にキャリブレーションの開始を指示するようにするとよい。
キャリブレーション用の移動端末を設けて、例えば、いつでも特定の位置に移動端末がある、あるいは、特定の位置に移動してきたものをキャリブレーション用移動端末とする場合、前述と同様に、移動端末から通信装置にキャリブレーションの開始を指示するようにしてもよい。
あるいは、移動端末が、MDT(Minimum Drive Test)機能などを用いて収集したGPS(Global Positioning System)位置情報とともに受信電力およびSNRなどの品質情報をEPC(Evolved Packet Core)に送信し、EPCが、受信した品質情報に基づいて、通常運転からの差異を検出し、差異があるときにEPCから基地局にキャリブレーションの開始の指示を通知するようにしてもよい。
特に、制御部806において、キャリブレーションを実行するタイミングは、例えば送信系では、対向装置との通信に供するデータを送信していないタイミングとして、送信系の位相および振幅の補正値を設定するとよい。また、受信系では、対向装置との通信に供するデータを受信していないタイミングとして、受信系の位相および振幅の補正値を設定するとよい。時分割複信(Time Division Duplex;略称:TDD)の場合には、送受信の切替時間であるギャップ期間に、キャリブレーションを行ってもよい。
また、制御部806において、キャリブレーションを実行する周波数を、ある一部に限定、すなわちサブバンド化してもよい。これによって、キャリブレーションしていないリソースで、通常の通信(サービス)が可能になる。また、送信電力増幅器、位相器およびフィルタなどが、温度などであまりばらつきが発生しないことが分かっているとき、キャリブレーションを行ったサブバンド間はキャリブレーションが不要となり、補間することで性能が保証できる。
また、同様に、温度変化が大きくなる前にキャリブレーションを行うことによって、サブバンドでのキャリブレーションで性能保証が可能となる。
また、制御部806において、アンテナ素子間で様々な距離となる場合、距離に応じて、いくつかのグループ分けを行い、相対的に遠いアンテナ素子のグループには、相対的に近いアンテナ素子のグループよりも送信電力を大きくするとSNRが向上するので、有効である。このとき、いくつかのアンテナ素子は、複数のグループに属してもよい。
また、制御部806において、電波暗室など、出荷時に測定したキャリブレーション値、および過去の補正値の記録から大幅に異なる値となるときは、補正を行わないようにすることも有効である。例えば、目の前を大きなトラックが通過するような場合、その回のキャリブレーションは行わずに、次回にキャリブレーションを行うと、正常にキャリブレーションを行うことが可能となる。
また、補正値が、変更が許容される最大の値である変更許容値を超えた場合、マルチパスの検出および分離を行う。主波のみでキャリブレーションを行うときには、許容値内の場合、その値でキャリブレーションを行うことも有効である。例えば、近くに大きな看板が設置されて、定常的にマルチパスが発生した場合に有効となる。
図9および図10を用いて、PHY処理部801および制御部806の信号の流れの一例を説明する。図9および図10は、PHY処理部901、制御部9411およびn個のアンテナ素子909,922,・・・,935の構成の一例を示すブロック図である。図9と図10とは、境界線BL1の位置で、つながっている。
PHY処理部901は、複数のエンコーダー部と、複数の変調部と、複数の切替部と、複数の復調部と、複数のデコーダー部と、制御部9411とを備えて構成される。PHY処理部901は、キャリブレーション部に相当する。
複数のエンコーダー部は、具体的には第1エンコーダー部902、第2エンコーダー部915、・・・、第nエンコーダー部928のn個(nは自然数)のエンコーダー部である。複数の変調部は、具体的には第1変調部907、第2変調部920、・・・、第n変調部933のn個(nは自然数)の変調部である。複数の切替部は、具体的には第1切替部908、第2切替部921、・・・、第n切替部934のn個(nは自然数)の切替部である。
複数の復調部は、具体的には第1復調部910、第2復調部923、・・・、第n復調部936のn個(nは自然数)の復調部である。複数のデコーダー部は、具体的には第1デコーダー部911、第2デコーダー部924、・・・、第nデコーダー部937のn個(nは自然数)のデコーダー部である。
また、複数のエンコーダー部902,915,928および複数のデコーダー部911,924,937にそれぞれ対応して、複数のアンテナ素子、具体的には第1アンテナ素子909、第2アンテナ素子922、・・・、第nアンテナ素子935のn個(nは自然数)のアンテナ素子が設けられる。
第1エンコーダー部902は、第1送信データ生成部903、第1キャリブレーション用RSマッピング部904、第1送信電力設定部905、および第1送信補正処理部9061を備える。第1デコーダー部911は、第1受信補正処理部9121、第1キャリブレーション用RS抽出部913、および第1応答特性算出部914を備える。
第2エンコーダー部915は、第2送信データ生成部916、第2キャリブレーション用RSマッピング部917、第2送信電力設定部918、および第2送信補正処理部9191を備える。第2デコーダー部924は、第2受信補正処理部9251、第2キャリブレーション用RS抽出部926、および第2応答特性算出部927を備える。
第nエンコーダー部928は、第n送信データ生成部929、第nキャリブレーション用RSマッピング部930、第n送信電力設定部931、および第n送信補正処理部9321を備える。第nデコーダー部937は、第n受信補正処理部9381、第nキャリブレーション用RS抽出部939、および第n応答特性算出部940を備える。
図9および図10において、第1エンコーダー部902、第1変調部907、第1切替部908および第1アンテナ素子909は、第1送信系を構成する。第2エンコーダー部915、第2変調部920、第2切替部921および第2アンテナ素子922は、第2送信系を構成する。第nエンコーダー部928、第n変調部933、第n切替部934および第nアンテナ素子935は、第n送信系を構成する。
図9および図10において、第1アンテナ素子909、第1切替部908、第1復調部910および第1デコーダー部911は、第1受信系を構成する。第2アンテナ素子922、第2切替部921、第2復調部923および第2デコーダー部924は、第2受信系を構成する。第nアンテナ素子935、第n切替部934、第n復調部936および第nデコーダー部937は、第n受信系を構成する。
図9および図10では、TDD方式における相対キャリブレーションの一例を示している。図9および図10に示す例では、第1送信系が送信し、第2受信系から第n受信系が受信することによって、第2受信系から第n受信系における応答特性を算出する。
制御部9411において、キャリブレーションの実行が決定されると、PHY処理部901は、制御部9411からの指示に従って、以下の処理を行う。
第1送信データ生成部903は、送信データを生成し、第1キャリブレーション用RSマッピング部904に与える。第1キャリブレーション用RSマッピング部904は、第1送信データ生成部903から与えられた送信データに対して、制御部9411から指示されたタイミングおよび周波数で送信するcal-RSのマッピング(挿入)を行う。第1キャリブレーション用RSマッピング部904は、cal-RSをマッピングした送信データを、第1送信電力設定部905に与える。
第1送信電力設定部905は、予め定めるキャリブレーションによる補正値の精度に達するために、必要に応じて、送信用のアンテナ素子(以下「送信アンテナ」という場合がある)と受信用のアンテナ素子(以下「受信アンテナ」という場合がある)との間の距離に対応した送信電力値を設定する。第1送信電力設定部905は、設定した送信電力値を第1送信補正処理部9061に与える。
第1送信補正処理部9061は、現状、設定されている位相および振幅の補正値のまま、送信するべき信号を第1変調部907に与える。第1変調部907は、第1送信補正処理部9061から与えられた信号に対して、OFDMなどの変調を行う。第1変調部907は、変調した信号を第1切替部908に与える。
第1切替部908は、TDDの送受信を切り替える。第1切替部908は、第1変調部907から与えられた、変調された信号を第1アンテナ素子909に与える。第1アンテナ素子909は、第1変調部907から与えられた、変調された信号を送信する。
第1アンテナ素子909によって送信された信号は、第2アンテナ素子922から第nアンテナ素子935で受信される。このとき、第2切替部922から第n切替部934は、第1切替部908とは異なり、第2受信系から第n受信系で受信できるように接続される。
第2アンテナ素子922から第nアンテナ素子935で受信された信号は、第2復調部923から第n復調部936によって、OFDMなどに復調される。第2復調部923から第n復調部936によって復調された信号は、第2受信補正処理部9251から第n受信補正処理部9381に与えられる。
第2受信補正処理部9251から第n受信補正処理部9381は、現状設定されている位相および振幅のまま、第2キャリブレーション用RS抽出部926から第nキャリブレーション用RS抽出部939に与えられる。
第2キャリブレーション用RS抽出部926から第nキャリブレーション用RS抽出部939は、cal-RS部を抽出し、第2応答特性算出部927から第n応答特性算出部940に与える。
第2応答特性算出部927から第n応答特性算出部940は、送信したcal-RSが既知であることを用いて、既知信号の変動により伝搬特性を算出する。第2応答特性算出部927から第n応答特性算出部940は、算出した伝搬特性を制御部9411に通知する。
制御部9411は、例えば、第2アンテナ素子922を基準として、第2アンテナ素子922に対して位相および振幅が同一になるように補正値を算出する。このとき、第2アンテナ素子922から第nアンテナ素子935の距離を考慮して補正値を算出する。
制御部9411は、算出した補正値を、第2受信補正処理部9251から第n受信補正処理部9381に設定すると、第2アンテナ素子922から第nアンテナ素子935での受信信号の位相および振幅を合わせることができる。
同じ処理を第2送信系から送信して、第1受信系および第3受信系のキャリブレーションを行うと、第1受信補正処理部9121用の補正値も算出することができ、第2受信系と、第1受信系との位相および振幅も合わせることができる。
以上の例では、全てのアンテナ素子で同一の平均受信電力を受信する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、アンテナ素子をテーパー形状として、アンテナ素子毎に平均受信電力を変えることによって、サイドローブを低減させてもよい。この場合、出荷前などの正常に動作していたときの所望の振幅値と比較することによって、受信信号の振幅値を所望の値にすることができる。
図11および図12は、PHY処理部901、制御部9411およびn個のアンテナ素子909,922,・・・,935の構成の一例を示すブロック図である。図11と図12とは、境界線BL2の位置で、つながっている。図11および図12の構成は、前述の図9および図10の構成と同一であるので、同一の部分に同一の参照符号を付して、共通する説明を省略する。図11および図12では、図9および図10に示す受信系のキャリブレーションに続いて、同じ構成を用いて、TDD方式における相対キャリブレーション時の送信系のキャリブレーションを行う例を示している。
制御部9411において、キャリブレーションの実行が決定されると、PHY処理部901は、制御部9411からの指示に従って、以下の処理を行う。
第1送信データ生成部903は、送信データを生成し、第1キャリブレーション用RSマッピング部904に与える。第1キャリブレーション用RSマッピング部904は、第1送信データ生成部903から与えられた送信データに対して、制御部9411から指示されたタイミングおよび周波数で送信するcal-RSのマッピング(挿入)を行う。第1キャリブレーション用RSマッピング部904は、cal-RSをマッピングした送信データを、第1送信電力設定部905に与える。
第1送信電力設定部905は、予め定めるキャリブレーションによる補正値の精度に達するために、必要に応じて、送信アンテナと受信アンテナとの間の距離に対応した送信電力値を設定する。第1送信電力設定部905は、設定した送信電力値を第1送信補正処理部9061に与える。
第1送信補正処理部9061は、現状、設定されている位相および振幅の補正値のまま、送信するべき信号を第1変調部907に与える。第1変調部907は、第1送信補正処理部9061から与えられた信号に対して、OFDMなどの変調を行う。第1変調部907は、変調した信号を第1切替部908に与える。
第1切替部908は、TDDの送受信を切り替える。第1切替部908は、第1変調部907から与えられた、変調された信号を第1アンテナ素子909に与える。第1アンテナ素子909は、第1変調部907から与えられた、変調された信号を送信する。
前述の処理は、第2送信系、第3送信系、・・・、第n送信系の順に行ってもよいし、一部の処理を複数の送信系で同時に行ってもよい。一部の処理を複数の送信系で同時に行うことによって、キャリブレーションに要する時間を短縮することができる。
また、REV法のように、第2送信系、第2送信系+第3送信系、・・・、第2送信系+第3送信系+・・・+第n送信系のように、処理を行う送信系を順次追加してもよい。
第1アンテナ素子909によって送信された信号は、第2アンテナ素子922から第nアンテナ素子935で受信される。このとき、第2切替部922から第n切替部934は、第1切替部908とは異なり、第2受信系から第n受信系で受信できるように接続される。
第2アンテナ素子922から第nアンテナ素子935で受信された信号は、第2復調部923から第n復調部936によって、OFDMなどに復調される。第2復調部923から第n復調部936によって復調された信号は、第2受信補正処理部9251から第n受信補正処理部9381に与えられる。
第2受信補正処理部9251から第n受信補正処理部9381は、現状設定されている位相および振幅のまま、第2キャリブレーション用RS抽出部926から第nキャリブレーション用RS抽出部939に与えられる。
第2キャリブレーション用RS抽出部926から第nキャリブレーション用RS抽出部939は、cal-RS部を抽出し、第2応答特性算出部927から第n応答特性算出部940に与える。
第2応答特性算出部927から第n応答特性算出部940は、送信したcal-RSが既知であることを用いて、既知信号の変動により伝搬特性を算出する。第2応答特性算出部927から第n応答特性算出部940は、算出した伝搬特性を制御部9411に通知する。
制御部9411は、例えば、第1アンテナ素子909を含む受信系を基準として、第2アンテナ素子922から第nアンテナ素子935を介して送信される第2~第n送信信号の位相が同一になるように補正値を算出する。このとき、第1アンテナ素子909から第nアンテナ素子935の距離を考慮(距離分位相回転、振幅減衰)して補正値を算出する。
制御部9411は、算出した補正値を、現状の補正値に加算して第2送信補正処理部9191から第n送信補正処理部9321に設定すると、第2アンテナ素子922から第nアンテナ素子935での送信信号の位相および振幅を合わせることができる。
同じ処理を第1送信系から送信して、第2受信系でキャリブレーションを行うと、第1送信系の位相および振幅も合わせることができる。
以上の例では、全てのアンテナ素子で同一の平均送信電力を送信する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、アンテナ素子をテーパー形状として、アンテナ素子毎に平均送信電力を変えることによって、サイドローブを低減させてもよい。この場合、既知である所望の振幅値と比較することによって、送信信号の振幅値を所望の値にすることができる。
図13および図14は、PHY処理部901A、制御部9412およびn個のアンテナ素子909,922,・・・,935の構成の他の例を示すブロック図である。図13と図14とは、境界線BL3の位置で、つながっている。
PHY処理部901Aは、複数のエンコーダー部と、複数の変調部と、複数の切替部と、複数の復調部と、複数のデコーダー部と、制御部9412とを備えて構成される。PHY処理部901Aは、キャリブレーション部に相当する。
複数のエンコーダー部は、具体的には第1エンコーダー部902A、第2エンコーダー部915A、・・・、第nエンコーダー部928Aのn個(nは自然数)のエンコーダー部である。複数の変調部は、具体的には第1変調部907、第2変調部920、・・・、第n変調部933のn個(nは自然数)の変調部である。複数の切替部は、具体的には第1切替部908、第2切替部921、・・・、第n切替部934のn個(nは自然数)の切替部である。
複数の復調部は、具体的には第1復調部910、第2復調部923、・・・、第n復調部936のn個(nは自然数)の復調部である。複数のデコーダー部は、具体的には第1デコーダー部911A、第2デコーダー部924A、・・・、第nデコーダー部937Aのn個(nは自然数)のデコーダー部である。
また、複数のエンコーダー部902A,915A,928Aおよび複数のデコーダー部911A,924A,937Aにそれぞれ対応して、複数のアンテナ素子、具体的には第1アンテナ素子909、第2アンテナ素子922、・・・、第nアンテナ素子935のn個(nは自然数)のアンテナ素子が設けられる。
第1エンコーダー部902Aは、第1送信データ生成部903、第1キャリブレーション用RSマッピング部904、第1送信電力設定部905、および第1送信位相回転部9062を備える。第1デコーダー部911Aは、第1受信位相回転部9122、第1キャリブレーション用RS抽出部913、および第1応答特性算出部914を備える。
第2エンコーダー部915Aは、第2送信データ生成部916、第2キャリブレーション用RSマッピング部917、第2送信電力設定部918、および第2送信位相回転部9192を備える。第2デコーダー部924Aは、第2受信位相回転部9252、第2キャリブレーション用RS抽出部926、および第2応答特性算出部927を備える。
第nエンコーダー部928Aは、第n送信データ生成部929、第nキャリブレーション用RSマッピング部930、第n送信電力設定部931、および第n送信位相回転部9322を備える。第nデコーダー部937Aは、第n受信位相回転部9382、第nキャリブレーション用RS抽出部939、および第n応答特性算出部940を備える。
図13および図14において、第1エンコーダー部902A、第1変調部907、第1切替部908および第1アンテナ素子909は、第1送信系を構成する。第2エンコーダー部915A、第2変調部920、第2切替部921および第2アンテナ素子922は、第2送信系を構成する。第nエンコーダー部928A、第n変調部933、第n切替部934および第nアンテナ素子935は、第n送信系を構成する。
図13および図14において、第1アンテナ素子909、第1切替部908、第1復調部910および第1デコーダー部911Aは、第1受信系を構成する。第2アンテナ素子922、第2切替部921、第2復調部923および第2デコーダー部924Aは、第2受信系を構成する。第nアンテナ素子935、第n切替部934、第n復調部936および第nデコーダー部937Aは、第n受信系を構成する。
図13および図14は、前述の図9および図10と同一の構成を含んでいるので、同一の部分に同一の参照符号を付して、共通する説明を省略する。図13および図14では、TDD方式におけるREV法の例である。図13および図14では、第1送信系が送信し、第2受信系から第n受信系で受信しつつ、第2受信位相回転部9252から第n受信位相回転部9382によって位相を順次回転させ、制御部9412で受信電力が最大になる位相を求める例を示している。
図15および図16は、PHY処理部901A、制御部9412およびn個のアンテナ素子909,922,・・・,935の構成の他の例を示すブロック図である。図15と図16とは、境界線BL4の位置で、つながっている。図15および図16の構成は、前述の図13および図14の構成と同一であるので、同一の部分に同一の参照符号を付して、共通する説明を省略する。
図15および図16では、図13および図14における受信系のキャリブレーションに続いて、同じ構成を用いて、TDD方式におけるREV法時の送信系のキャリブレーションを行う例を示す。図15および図16では、第2送信位相回転部9192から第n送信位相回転部9322によって位相を順次回転させ、制御部9412で送信電力が最大になる位相を求める例を示している。
各キャリブレーション用RSマッピング部904~930によって、cal-RSを送信しているときには、当該サブフレームまたはスロットがキャリブレーションに使われていることを示す情報ビットを無線送信し、移動端末、周辺のリピータおよび周辺のセルに判別できるようにしてもよい。
移動端末において、キャリブレーションを行うタイミング(以下「キャリブレーションタイミング」という場合がある)を避けて、ランダムアクセスを行うことができる。周辺のリピータおよび周辺のセルでは、同時にキャリブレーションを行うことを回避することができる。あるいは、有線で周辺のリピータおよび周辺のセルに通知してもよい。あるいは、有線で周辺のリピータおよび周辺のセルを経由して、周辺の移動端末に通知してもよい。
キャリブレーションが正常に行われているか否かを通知するのも有効である。キャリブレーションが正常に行われない場合としては、例えば、いくつかのアンテナ素子が電気的または物理的に損傷し、機能が欠損していることが考えられる。そのために、何回測定しても補正値が過去に設定した値(直前に設定した値も含む)よりも大幅に大きくなるかどうか検出する機能を有することも有効である。
キャリブレーションがうまくいかないことが検出された場合、例えば、送受信の可逆性(reciprocity)が保証できなくなり、ビーム制御によるプリコーディング/ポストコーディング(precoding/postcoding)が正常に動作しなくなる可能性があり、SNRが悪くなる。これによって、正常に通信ができなくなり、正常に動作しているセルに干渉を発生させる。
したがって、キャリブレーションが正常に行われていないことを、報知情報でエリアに存在するRRC_IDLEの移動端末に通知することが有効である。また、通信中の移動端末に対しては、RRC(Radio Resource Control)を用いて個別に通知することが有効である。また、ハンドオーバで移ってくる移動端末に対しては、セルの設定(configuration)情報として通知することが有効である。
キャリブレーションの状態としては、以下の(1)~(5)の5つの状態がある。
(1)状態1:キャリブレーション未実行。
(2)状態2: キャリブレーション中。
(3)状態3:キャリブレーション失敗。
(4)状態4:一定時間後、キャリブレーションを開始する状態。
(5)状態5:キャリブレーションが正常に完了。
前記(1)~(5)のキャリブレーションの状態を表す情報も、キャリブレーションがうまくいっているかどうかの情報とは別に通知するのが有効である。あるいは、前記(1)~(5)のうち複数をまとめて通知すると、情報量を低減することができ、有効である。
キャリブレーションのレベル、具体的には、可逆性(reciprocity)の対応可/不可、および到来方向の把握可/不可などの情報を通知することも有効である。この情報は、報知情報でエリアに存在するRRC_IDLEの移動端末に通知することが有効である。また、通信中の移動端末に対しては、RRC接続セットアップ(RRC connection setup)メッセージおよびRRC接続再設定(RRC connection reconfiguration)メッセージなどのRRCメッセージを用いて個別に通知することが有効である。また、ハンドオーバで移ってくる移動端末に対しても、セルの設定(configuration)情報として通知することが有効である。
同様に、移動端末におけるキャリブレーションが正常に行われているか否か、あるいは、キャリブレーションの状態を、RRC(Radio Resource Control)を用いて個別に基地局に通知することも有効である。
以上のように本実施の形態によれば、キャリブレーション部であるPHY処理部は、複数のアンテナ素子間において、ビームの位相および振幅が同一になるように、各アンテナ素子におけるビームの位相および振幅の補正値を求め、求めた補正値に基づいてキャリブレーションを行う。これによって、キャリブレーションを精度良く行うことができるので、多素子アンテナを構成する複数のアンテナ素子間におけるビームの位相差および振幅差を合わせることができる。したがって、比較的高いスループットで通信を行うことが可能な通信システムを実現することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、多素子アンテナのアンテナ素子間の位相差および振幅差を合わせることによって、スループットを向上できる方法について説明した。実施の形態2では、キャリブレーションのために必要となるアンテナ素子毎のcal-RSのマッピングが、時間的にばらつきがあると、同数のcal-RSを送信するときにも、多くの時間を要するという問題を解決する方法を開示する。
キャリブレーション用のリファレンスシグナル(cal-RS)を送信するアンテナ素子において、同一のサブフレームにcal-RSを配置する方法である。
図17は、第1アンテナ素子の送信データにおけるマッピングの一例を示す図である。図18は、第2アンテナ素子から第nアンテナ素子の送信データにおけるマッピングの一例を示す図である。図17および図18において、横軸は時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。図17および図18では、リソースブロックを参照符号「1306」で示す。
図17に示す例では、第1アンテナ素子で、先頭のスロット1303、サブフレーム1304に集中してcal-RS1302を送信し、その他は通常のOFDMシンボル1301を送信している。
この場合、第2アンテナ素子から第nアンテナ素子では、図18に示すように、同じ時間帯の送信データをヌル(null)1307にしている。すなわち、第2アンテナ素子から第nアンテナ素子では、第1アンテナ素子でcal-RS1302が送信される時間帯のスロット1308およびサブフレーム1309の送信データをヌル1307とし、その他は通常のOFDMシンボル1305を送信している。
ここで、スロットとは、7OFDMシンボル分の時間を指し、サブフレームとは、14OFDMシンボル分の時間を指しているが、ある特定のユーザ単位に割り当てられる最小スロットであればよい。
図17に示す例では、特定の時間帯に、cal-RS1302を配置しているので、この時間帯でキャリブレーションが可能となり、キャリブレーションに要する時間を短縮することができる。
図17に示す例では、第1アンテナ素子が、第2OFDMシンボルと、第3OFDMシンボルでcal-RS1302を送信しているが、同じスロットまたは同じサブフレームの第4OFDMシンボルおよび第5OFDMシンボルを用いて、他のアンテナ素子のcal-RSを送信することも有効である。
また、アンテナ素子毎のcal-RSを直交化して分離できるようにするために、時間をずらすだけでなく、異なる直交符号を用いることも有効である。符号は、位相回転しても直交する符号にすることがより望ましい。
同様に、第1アンテナ素子によって、一部の周波数でcal-RSを送信し、他のアンテナ素子によって、異なる周波数でcal-RSを送信することも有効である。
符号多重しないときには、全てのアンテナ素子でcal-RSは同一の信号でもよい。
以上のようにすることによって、全ての周波数領域のエネルギーを使うことができるので、SNRを増加させることができ、キャリブレーションの精度を向上させることができる。また、他のアンテナ素子では、何も送信していないので、干渉を低減することができ、キャリブレーションの精度を向上させることができる。
特定の周波数領域でcal-RSを送信する方法は、SNRが十分良好である場合に有効である。この方法を用いることによって、同時に複数のアンテナ素子のキャリブレーションを行うことができるので、キャリブレーションに要する時間を短縮することができる。
REV法を用いる場合は、ヌル(null)の代わりに、第1アンテナ素子と同一の信号を、第2アンテナ素子から第nアンテナ素子でもマッピングしてもよい。
図19は、第1アンテナ素子の送信データにおけるマッピング、および、周波数毎の受信電力の一例を示す図である。図19(a)は、第1アンテナ素子の送信データにおけるマッピングの一例を示す図であり、図19(b)は、第1アンテナ素子の送信データにおける周波数毎の受信電力の一例を示す図である。
図19に示す例では、図17に示す例と同様に、第1アンテナ素子で、先頭のスロット1403、サブフレーム1404に集中してcal-RS1402を送信し、その他は通常のOFDMシンボル1401を送信している。
この場合、全ての周波数領域を使っているので、周波数毎の応答特性を算出することができる。したがって、周波数毎の振幅および位相の変動を検出することができる。検出した振幅および位相から受信電力の変動が算出される。図19に示すように、OFDMシンボル1401毎の受信電力Pの変動が大きい場合、周波数選択性のマルチパスフェージングがあると判断することができる。
キャリブレーションを行うための送信用アンテナ素子および受信用アンテナ素子が移動していない場合、マルチパスの存在を検出した場合は、近くに散乱体が存在するなどの通常とは異なる状態となっていると判断することができ、そのサブバンドでは、キャリブレーションを行わないようにすることが有効である。このときは、前回のキャリブレーションによる補正値および位相回転を使用するのが望ましい。
また、通常、近くに発生した散乱体は、予め定める時間で遠くに移動するので、ある程度の時間経過後、再度、周波数毎の振幅および位相の変動を検出するようにすることが有効である。
また、あるいは、近傍のバンドでの補正値および位相回転から算出して設定してもよい。線形補間などの補間を行うことも有効である。
また、マルチパスの存在を検出した場合は、遅延プロファイルの算出など、主波と遅延波との分離を行い、主波のみでキャリブレーションを行うことが有効である。これによって、マルチパスの影響を除去することができ、適切なキャリブレーションを行うことが可能となる。
以上のように本実施の形態によれば、キャリブレーション部であるPHY処理部は、複数のアンテナ素子から、それぞれ、cal-RSを送信するとき、cal-RSを同一のサブフレームに配置する。これによって、全てのアンテナ素子のキャリブレーションを同一の時間帯で行うことができるので、キャリブレーションに要する時間を短縮することができる。
実施の形態3.
実施の形態2では、キャリブレーションのために必要となるアンテナ素子毎のcal-RSのマッピングを時間的に集中させることによって、キャリブレーションに要する時間を短縮できる方法について示した。しかし、他のCHまたは他のRSと送信が重なる場合があり、このような規定は現在の規格になく、回避することができないという問題がある。実施の形態3では、新たなマッピング方法を提供することによって、前述の問題を解決する方法を開示する。
図20は、第1アンテナ素子の送信データにおけるマッピングの他の例を示す図である。図21は、第2アンテナ素子から第nアンテナ素子の送信データにおけるマッピングの他の例を示す図である。図20および図21では、キャリブレーション用のスロット、もしくは、サブフレーム、または、リソースブロック1504,1508を設ける下りの送信ビットのマッピングの一例を示す。
図20に示すように、第1アンテナ素子では、cal-RS1502を送信するサブフレームにおいて、CRS1503を一部送信しない特別なマッピングとしている。その他では、通常のOFDMシンボル1501が送信されている。
図21に示すように、第2アンテナ素子から第nアンテナ素子では、ヌル(null)1506を送信するサブフレームにおいて、CRS1507を一部送信しない特別なマッピングとしている。その他では、通常のOFDMシンボル1505が送信されている。
図22は、第1アンテナ素子の送信データにおけるマッピングのさらに他の一例を示す図である。図23は、第2アンテナ素子の送信データにおけるマッピングのさらに他の例を示す図である。図24は、第3アンテナ素子の送信データにおけるマッピングのさらに他の例を示す図である。図25は、第4アンテナ素子の送信データにおけるマッピングのさらに他の例を示す図である。
図22~図25では、リソースブロックをそれぞれ、参照符号「1604」、「1608」、「1612」、「1616」で示し、通常のOFDMシンボルをそれぞれ、参照符号「1601」、「1605」、「1609」、「1613」で示す。
図22~図25に示すように、予めcal-RS1602,1606,1610,1614を配置可能な位置を定義し、CRS1603,1607,1611,1615と重ならないタイミングのみに限定してもよい。この場合、例えば、各スロットの第1~第3OFDMシンボル、または、第4および第5OFDMシンボルのみcal-RSを配置可能とする。
図26は、第1アンテナ素子の送信データにおける送信データのマッピングのさらに他の例を示す図である。図27は、第2アンテナ素子から第nアンテナ素子の送信データにおけるマッピングのさらに他の例を示す図である。図26および図27では、リソースブロックをそれぞれ、参照符号「1704」、「1708」で示し、通常のOFDMシンボルをそれぞれ、参照符号「1701」、「1705」で示す。また図27では、ヌル(null)を参照符号「1706」で示す。
図26および図27に示すように、CRS1703,1707のマッピング位置と重ならない位置に、cal-RS1702をマッピングしてもよい。これによって、衝突を回避することができる。
あるいは、図20および図21に示すように、cal-RSと、他のCHまたは他のRSとが重なった場合、cal-RSを優先して配置してもよい。
以上のように本実施の形態によれば、キャリブレーション部であるPHY処理部は、cal-RSを、サブフレームの他の参照信号および物理チャネルが配置されていない位置に配置する。これによって、cal-RSが送信されるタイミングが、他の参照信号および物理チャネルが送信されるタイミングと重なることを防ぐことができるので、cal-RSが、他の参照信号および物理チャネルと衝突することを回避することができる。
実施の形態4.
実施の形態3では、キャリブレーション用のサブフレームを設け、該サブフレームでキャリブレーション用のRS(cal-RS)を送信することを開示した。基地局は、該サブフレームで、他のチャネル(略称:CH)、他のRSを送信しないとしてもよい。他のCH、他のRSを送信しないキャリブレーション用サブフレームをキャリブレーション専用サブフレームとする。
しかし、通常、基地局は、毎サブフレーム、キャリブレーション用では無い何らかの物理CHまたはRSを送信している。したがって、何も工夫がなされないと、キャリブレーション専用サブフレームを構成することができないという問題がある。本実施の形態では、このような問題を解決する方法を開示する。
基地局は、送信するデータが無いサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。スケジューリングするデータが無いサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定してもよい。基地局は、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームのうち、一つまたは複数のサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。一つまたは複数のサブフレームは、キャリブレーション専用サブフレームの必要性に応じて決定してもよい。
基地局は、キャリブレーション専用サブフレームを設定する無線リンクを決定する。例えば、DLのサブフレームでスケジューリングするデータが無い場合、該DLサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。あるいは、ULのサブフレームでスケジューリングするデータが無い場合、該ULサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定してもよい。あるいは、DLのサブフレームと、該サブフレームのタイミングのULのサブフレームとの両方でスケジューリングするデータが無い場合、DLおよびULの少なくとも一方のサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定してもよい。
基地局は、キャリブレーションを行う無線リンクを予め決めておいてもよい。例えば、DLと予め決めておく。この場合、DLのサブフレームでスケジューリングするデータが無い場合に、該DLサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。たとえULのサブフレームでスケジューリングするデータが無い場合でも、該ULサブフレームをキャリブレーション専用サブフレームに設定しない。キャリブレーション専用サブフレームの設定にULを使用しない。
キャリブレーションを行う無線リンクをDLに設定した場合、UEからのULの干渉の影響を無くすことが可能となる。例えば、TDDをサポートする基地局は、キャリブレーションを行う無線リンクをDLに設定することによって、キャリブレーションを行うアンテナを有するセルの傘下のUE、および他のセルもしくは他の基地局の傘下のUEから送信される上り送信による干渉の影響を受けることなく、キャリブレーションを実行することが可能となる。上り送信として、LTEでは、SR、PRACHなどがある。このように、キャリブレーションにDLを用いることによって、さらにキャリブレーションの精度の向上を図ることができる。
他の例として、FDDをサポートする基地局は、キャリブレーションを行う無線リンクをDLとULとに設定する。そして、DLサブフレームと、該サブフレームのタイミングのULサブフレームとの両方でスケジューリングするデータが無い場合、該DLサブフレームとULのサブフレームとの両方を、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。このようにすることによって、アンテナ素子の送信系と受信系のキャリブレーションを、それらのサブフレーム内で行うことが可能となり、キャリブレーションに要する時間の短縮を図ることができる。
基地局は、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームを検出し、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。
送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームの検出を行う主体の例として、以下の(1)~(4)の4つを開示する。
(1)スケジューラ。
例えば、スケジューラがスケジューリングする場合に適用するとよい。スケジューラに、送信またはスケジューリングするデータの有無を検出する機能を設けることは容易である。
(2)MAC。
例えば、MACがスケジューリングする場合に適用するとよい。MACに、送信またはスケジューリングするデータの有無を検出する機能を設けることは容易である。
(3)PHY処理部。
例えば、送信するデータが無いサブフレームを検出する場合に適用するとよい。PHY処理部に、送信するデータの有無を検出する機能を設けることは容易である。
(4)RRC。
例えば、RRCがDRXなどの設定を行っている場合に適用するとよい。RRCは、DRXによって、データの送信またはスケジューリングを行わないサブフレームを認識している。したがって、RRCに、送信またはスケジューリングするデータの有無を検出する機能を設けることは容易である。
検出したサブフレームをキャリブレーション専用サブフレームに設定する主体の例として、以下の(1)~(4)の4つを開示する。
(1)スケジューラ。
例えば、スケジューラ、MAC、またはRRCで送信またはスケジューリングするデータの有無を検出した場合に適用するとよい。スケジューラ、MAC、またはRRCは、該データが無いことを検出した場合、スケジューラに該データが無いことを通知する。スケジューラは、該情報を用いて検出したサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。
(2)MAC。
前述の(1)で記載したスケジューラの代わりにMACとしてもよい。
(3)PHY処理部。
例えば、スケジューラ、MAC、PHY処理部、またはRRCで送信またはスケジューリングするデータの有無を検出した場合に適用するとよい。スケジューラ、MAC、PHY処理部、またはRRCは、該データが無いことを検出した場合、PHY処理部に該データが無いことを通知する。PHY処理部は、該情報を用いて検出したサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。
(4)RRC。
例えば、RRCで送信またはスケジューリングするデータの有無を検出した場合に適用するとよい。RRCは、該データが無いことを検出した場合、該情報を用いて検出したサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。
これらの他にも、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームを検出する主体と、キャリブレーション専用サブフレームに設定する主体とを、適宜組み合せてもよい。基地局の構成および要求される性能に応じて組み合わせてもよい。
基地局は、どのアンテナ素子のキャリブレーションを行うかを判断する。基地局は、どのアンテナ素子をキャリブレーション用送信アンテナ素子とするか、どのアンテナ素子をキャリブレーション用受信アンテナ素子とするかを判断する。
基地局は、キャリブレーション専用サブフレームに、キャリブレーション用送信アンテナ素子のキャリブレーション用RS(cal-RS)をマッピングする。一つのキャリブレーション専用サブフレームに、複数のアンテナ素子のcal-RSをマッピングしてもよい。PHY処理部が、キャリブレーション専用サブフレームの情報を用いてcal-RSをマッピングするとよい。
キャリブレーション専用サブフレームを設定した主体は、PHY処理部に対して、キャリブレーション専用サブフレームに関する情報を通知するとよい。基地局は、キャリブレーション専用サブフレームでキャリブレーション用送信アンテナのcal-RSを送信する。
キャリブレーション用のRSとして、キャリブレーション専用でなくてもよい。他の用途に用いてもよい。または、既存のRSを用いてもよい。既存のRSとしては、例えば、CRS、CSI-RS、SRS(Sounding Reference Signal)などがある。予め、どのRSを用いるか決めておき、該RSをキャリブレーション専用サブフレームにマッピングすればよい。既存のRSは、既にシーケンスまたはマッピングされるリソースが決められている。したがって、新たなRSを設定することが無く、通信システムが複雑化することを回避することができる。
また、キャリブレーション専用サブフレームを他の用途に用いてもよい。他の用途に用いるRSを、キャリブレーション専用サブフレームにマッピングしてもよい。本実施の形態で開示した方法を適用することができる。
キャリブレーション専用サブフレームで、キャリブレーション用送信アンテナ素子からcal-RSを送信した基地局は、キャリブレーション用受信アンテナ素子で、該キャリブレーション専用サブフレームのcal-RSを受信する。基地局は、キャリブレーション用送信アンテナ素子毎のcal-RSの受信結果を用いて、アンテナ素子送信系のキャリブレーション値を導出する。
同様の方法で、基地局は、アンテナ素子受信系のキャリブレーションを行ってもよい。キャリブレーション専用サブフレームで、キャリブレーション用送信アンテナ素子からcal-RSを送信した基地局は、キャリブレーション用受信アンテナ素子で、該キャリブレーション専用サブフレームのcal-RSを受信する。基地局は、キャリブレーション用受信アンテナ素子毎の、該cal-RSの受信結果を用いて、アンテナ素子受信系のキャリブレーション値を導出する。
図28は、実施の形態4の通信システムにおけるキャリブレーション処理に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。図28では、一例として、基地局でのセルフキャリブレーションを示している。
ステップST4101において、基地局は、キャリブレーションの実行を決定する。この判断に、実施の形態1で開示した判断指標を用いてもよい。
ステップST4102において、基地局は、送信するデータが無いサブフレーム(以下「無送信データサブフレーム」という場合がある)が有るか否かを判断する。この判断は、例えば、一つのサブフレーム単位で行われる。複数のサブフレーム単位で行われてもよい。無送信データサブフレームが有ると判断された場合は、ステップST4103に移行し、無送信データサブフレームが無いと判断された場合は、無送信データサブフレームが有ると判断されるまで待機する。
ステップST4103において、基地局は、ステップST4102で検出したサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。
ステップST4104において、基地局は、キャリブレーション専用サブフレームに、キャリブレーション用送信アンテナ素子のキャリブレーション用RS(cal-RS)をマッピングする。このとき、基地局は、どのアンテナ素子をキャリブレーション用送信アンテナ素子とするか、どのアンテナ素子をキャリブレーション用受信アンテナ素子とするかを判断するとよい。さらに述べると、ステップST4104において、基地局は、キャリブレーション専用サブフレームで、キャリブレーション用送信アンテナのcal-RSを送信する。
ステップST4105において、基地局は、キャリブレーション用受信アンテナ素子で、該キャリブレーション専用サブフレームのcal-RSを受信する。
ステップST4106において、基地局は、キャリブレーション用送信アンテナ素子毎のcal-RSの受信結果を用いて、アンテナ素子送信系のキャリブレーション値を導出する。
ステップST4107において、基地局は、全アンテナ素子のキャリブレーションが終了したか否かを判断する。全アンテナ素子のキャリブレーションが終了したと判断された場合は、ステップST4108に移行する。全アンテナ素子のキャリブレーションが終了していないと判断された場合は、ステップST4102に戻り、キャリブレーションを行っていないアンテナ素子について、前述の処理を行う。全アンテナ素子の送信系および受信系のキャリブレーションが終了するまで実行するとよい。
ステップST4108において、通常動作に戻る。通常動作では、キャリブレーションを終了し、通常の通信サービスを、傘下の移動端末に対して提供する。ステップST4108の処理を終了した後は、全ての処理手順を終了する。
本実施の形態で開示した方法を用いることによって、基地局が多素子アンテナのキャリブレーションを行うためのサブフレームを設けることができる。このようにすることによって、基地局は、アンテナ素子のキャリブレーションを実行することが可能となる。したがって、多素子アンテナを用いたMIMOおよびビームフォーミングの性能を向上させることが可能となる。
本実施の形態では、基地局は、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定することを開示した。他の方法として、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームとせずに、送信またはスケジューリングするデータが、予め定めるデータ量以下となるサブフレームとしてもよい。少しのデータ量がある場合には、キャリブレーションを優先して実行することが可能となる。
予め定めるデータ量は、予め決められていてもよいし、運用環境および運用状態によって設定されるようにしてもよい。例えば、周囲温度によって予め定めるデータ量を設定する。または、基地局の負荷によって、予め定めるデータ量を設定するなどがある。予め定めるデータ量以下とした場合、送信またはスケジューリングするデータが存在することになる。この送信データの扱いは、実施の形態4の変形例2で開示する、送信しないデータを記憶しておき、以後のデータの送信が可能なタイミングで記憶したデータの送信を行う方法を適用するとよい。
このようにすることによって、運用環境に応じて柔軟にキャリブレーションを実行することが可能となる。したがって、多素子アンテナを用いたMIMOおよびビームフォーミングの性能を向上させることが可能となる。
以上のように本実施の形態によれば、キャリブレーション部であるPHY処理部は、送信するべきデータまたはスケジューリングするべきデータが無いサブフレームを、cal-RSを配置するサブフレームであるcal専用サブフレームに設定する。これによって、送信するべきデータまたはスケジューリングするべきデータがある場合でも、cal専用サブフレームを構成することができる。したがって、前述のように精度の良いキャリブレーションを実現することができる。
実施の形態4 変形例1.
実施の形態4では、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定することを開示した。しかし、システムによっては、送信データに関係なく送信される信号およびCHがマッピングされるサブフレームがある場合も存在する。
送信データに関係なく送信される信号およびCHとしては、例えば、UEが初期サーチするときに必要とする同期用信号、報知情報送信用CHおよび制御CHなどがある。LTEでは、SS、PBCHおよびPDCCHなどである。
このような信号およびCHがある場合、たとえ実施の形態4の方法を行ったとしても、キャリブレーション専用サブフレームを構成することができなくなってしまうという問題がある。本変形例では、このような問題を解決する方法を開示する。
基地局は、送信データに関係なく送信される信号およびCHがマッピングされないサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。基地局は、送信データに関係なく送信される信号およびCHがマッピングされないサブフレームのうち、一つまたは複数のサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。一つまたは複数のサブフレームは、キャリブレーション専用サブフレームの必要性に応じて決定してもよい。
送信データに関係なく送信される信号およびCHの中でも、例えば、予めスケジューリングされるサブフレームが決められている信号およびCH、周期的もしくは断続的にスケジューリングされる信号およびCHの場合に適用するとよい。これらの信号およびCHとして、LTEでは、SSおよびPBCHがある。これらの信号およびCHがマッピングされないサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定するとよい。
他の方法を開示する。基地局は、送信するデータが無い、またはスケジューリングするデータが無いサブフレームがある場合、送信データに関係なく送信される信号およびCHを該サブフレームで送信しない。送信データに関係なく送信される信号およびCHの中でも、予めスケジューリングされるサブフレームが決められていない信号およびCH、または、毎サブフレーム送信される信号およびCHの場合に適用するとよい。
これらの信号およびCHとして、LTEでは、PDCCH、PCFICH、CRSなどがある。基地局は、送信するデータが無い、またはスケジューリングするデータが無いサブフレームのうち、一つまたは複数のサブフレームで、送信データに関係なく送信される信号およびCHを該サブフレームで送信しないとしてもよい。
基地局は、送信データに関係なく送信される信号およびCHを該サブフレームで送信しないサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。また、この方法は、予めスケジューリングされるサブフレームが決められている信号およびCH、周期的もしくは断続的にスケジューリングされる信号およびCHの場合に適用してもよい。例えば、送信データが無いタイミングでキャリブレーションの実行が求められる場合などに適用する。これによって、キャリブレーションタイミングを最適化することができ、キャリブレーションの精度を向上させることが可能となる。
基地局は、送信するデータが無い、またはスケジューリングするデータが無いサブフレームがある場合、該サブフレームをキャリブレーション専用サブフレームに設定する場合には、送信データに関係なく送信される信号およびCHを該サブフレームで送信しない、としてもよい。このようにすることによって、キャリブレーション専用サブフレームに設定しない場合は、送信データに関係なく送信される信号およびCHを、該サブフレームで送信することができ、通常の動作を保つことが可能となる。
前述の2つの方法を組み合わせてもよい。このようにすることによって、予めスケジューリングされるサブフレームが決められている信号およびCH、周期的もしくは断続的にスケジューリングされる信号およびCH、さらには、予めスケジューリングされるサブフレームが決められていない信号およびCH、または、毎サブフレーム送信される信号およびCHが存在する場合でも、キャリブレーション専用サブフレームを設定することが可能となる。
キャリブレーション専用サブフレームを設定する無線リンクを決定する方法、送信データに関係なく送信される信号およびCHがマッピングされないサブフレームの検出方法およびキャリブレーション専用サブフレームの設定方法は、実施の形態4の方法を適用するとよい。送信データの代わりに、送信データに関係なく送信される信号およびCHとすればよい。
図29は、実施の形態4の変形例1の通信システムにおけるキャリブレーション処理に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。図29では、一例として、基地局でのセルフキャリブレーションを示している。図29に示すフローチャートは、前述の図28に示すフローチャートと同一のステップを含んでいるので、同一のステップについては同一のステップ番号を付して、共通する説明を省略する。
基地局は、ステップST4101において、キャリブレーションの実行を決定した後、ステップST4102において、無送信データサブフレームが無いと判断された場合は、無送信データサブフレームが有ると判断されるまで待機する。ステップST4102において、無送信データサブフレームが有ると判断された場合は、ステップST4201に移行する。
ステップST4201において、基地局は、ステップST4102で検出したサブフレームでSSとPBCHの送信が無いか否かを判断する。検出したサブフレームでSSとPBCHの送信が無いと判断された場合は、ステップST4103に移行する。検出したサブフレームでSSとPBCHの送信が有ると判断された場合は、ステップST4102に戻り、無送信データサブフレームが有ると判断されるまで待機する。
ステップST4103において、基地局は、ステップST4102で検出したサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。検出したサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定すると、ステップST4202に移行する。
ステップST4202において、基地局は、ステップST4103で設定したキャリブレーション専用サブフレームで、PDCCH、PCFICHおよびCRSの送信を停止する。ステップST4202の処理が終了した後は、ステップST4104に移行する。
ステップST4104において、基地局は、キャリブレーション専用サブフレームに、キャリブレーション用送信アンテナ素子のキャリブレーション用RS(cal-RS)をマッピングする。このとき、基地局は、どのアンテナ素子をキャリブレーション用送信アンテナ素子とするか、どのアンテナ素子をキャリブレーション用受信アンテナ素子とするかを判断するとよい。
さらに述べると、ステップST4104において、基地局は、キャリブレーション専用サブフレームで、キャリブレーション用送信アンテナのcal-RSを送信する。ステップST4104の処理を終了した後は、ステップST4105~ステップST4108の処理を行う。
本変形例で開示した方法を用いることによって、送信データに関係なく送信される信号およびCHがマッピングされるサブフレームがある場合でも、多素子アンテナのキャリブレーションを行うためのサブフレームを設けることができる。
このようにすることによって、実施の形態1に比べて、さらにキャリブレーション用サブフレームを柔軟に設定することが可能となる。例えば、温度変化が急に大きくなった場合など、必要なタイミングで、キャリブレーション用サブフレームを設定することが可能となる。
したがって、基地局は、アンテナ素子のキャリブレーションを、必要なタイミングで行うことが可能となるので、多素子アンテナを用いたMIMOおよびビームフォーミングの性能をさらに向上させることが可能となる。
前述の方法では、基地局は、送信するデータが無い、またはスケジューリングするデータが無いサブフレームがある場合、送信データに関係なく送信される信号およびCHを該サブフレームで送信しない、としたが、他の方法として、該信号およびCHをミュートする、としてもよい。また、送信電力をゼロ(0)としてもよい。
基地局は、送信するデータが無い、またはスケジューリングするデータが無いサブフレームがある場合、送信データに関係なく送信される信号およびCHを該サブフレームでミュートする。
該信号およびCHを送信しない場合、該信号およびCHがマッピングされる予定であったシンボルにも、cal-RSをマッピングすることが可能となり、cal-RS用のリソースを多くすることが可能となる。
該信号およびCHをミュートする場合、該信号およびCHの送信電力はゼロ(0)であるが、マッピングが行われるので、そのリソースをcal-RSに用いることはできない。したがって、cal-RS用のリソースを多くすることはできないが、送信電力の調整だけで済むので、キャリブレーション機能を設けるための構成および制御を容易にすることが可能となる。
前述の方法では、基地局は、送信するデータが無い、またはスケジューリングするデータが無いサブフレームがある場合、送信データに関係なく送信される信号およびCHを該サブフレームで送信しない、あるいはミュートする、としたが、以下のようにしてもよい。すなわち、cal-RSを送信するリソースと重なる該信号およびCHを送信しない、またはミュートするとしてもよい。
実施の形態3で開示したように、cal-RSと、送信データに関係なく送信される信号およびCHとが重なった場合に、該リソースにcal-RSを優先してマッピングするようにしてもよい。このようにすることによって、cal-RSに必要なリソース量が少ない場合は、送信データに関係なく送信される信号およびCHを送信することが可能となり、該信号およびCHが必要な場合の通信性能の低下を防ぐことが可能となる。
実施の形態4 変形例2.
実施の形態4では、送信データの無いサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定した。しかし、基地局の傘下に多数のUEが存在する場合、膨大な量のデータを通信している場合、および送信データが無くなるタイミングが、必要なタイミングで生じない場合がある。この場合、送信データが無くなるタイミングを待っていると、キャリブレーションが遅れ、性能の劣化を招くという問題がある。本変形例では、このような問題を解決する方法を開示する。
基地局は、キャリブレーションが必要なタイミングで、キャリブレーション専用サブフレームを設定可能とするように、データの送信タイミングを制御する。例えば、基地局は、キャリブレーションが必要なタイミングで、データの送信を行わず、キャリブレーション専用サブフレームを設定する。基地局は、送信しないデータを記憶しておき、以後のデータの送信が可能なタイミングで、記憶したデータの送信を行う。
基地局は、キャリブレーションが必要なタイミングを検出する。例えば、実施の形態1で開示した、制御部806が検出してもよい。
基地局は、キャリブレーションが必要なタイミングで、データの送信を停止する必要があるか否かを判断してもよい。判断基準として、該タイミングで送信するデータが有るか無いかで判断するとよい。例えば、該タイミングで送信するデータが無い場合、データの送信を停止する必要が無いと判断する。
判断主体としては、実施の形態4で開示した、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームを検出する主体とするとよい。該主体は、キャリブレーションが必要なタイミングに関する情報を制御部806から取得することによって可能となる。
データの送信を停止する必要が無い場合、該タイミングでキャリブレーション専用サブフレームの設定を行う。実施の形態4の方法を適用するとよい。キャリブレーションが必要なタイミングで送信するデータが有る場合、基地局は、データの送信を停止し、キャリブレーション専用サブフレームを設定する。
基地局は、キャリブレーションが必要なタイミングで、送信データに関係なく送信される信号およびCHの有無を判断してもよい。該判断およびキャリブレーション専用サブフレームの設定に、実施の形態4の変形例1で開示した方法を適用してもよい。
実施の形態4の変形例1の場合、例えば、予めスケジューリングされるサブフレームが決められている信号およびCH、周期的もしくは断続的にスケジューリングされる信号およびCHが有る場合は、これらの信号およびCHがマッピングされないサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定するとよいことを示した。
キャリブレーションが必要なタイミングが、これらの信号およびCHがマッピングされないサブフレームで間に合えばよいが、そうでない場合も発生する可能性がある。この場合、これらの信号およびCHの送信を停止し、キャリブレーション専用サブフレームを設定するとよい。
基地局は、キャリブレーションが必要なタイミングで、キャリブレーション専用サブフレームを設定する。基地局は、キャリブレーションが終了するまで、データの送信を行わない。データの送信を保留するとしてもよい。
基地局は、データの送信を行わない間に、キャリブレーション専用サブフレームを設定する。データの送信を行わない期間は、サブフレーム単位としてもよいし、TTI(Transmission Time Interval)単位としてもよい。
他の方法として、設定したキャリブレーション専用サブフレームを含む、予め定める期間、データの送信を行わないとしてもよい。予め定める期間を出来る限り短く設定することによって、データの送信における遅延を削減することができる。また、送信データに関係なく送信される信号およびCHの送信を早期に再開することができ、傘下のUEにおける同期および制御処理の欠落を最小限にすることができる。
予め定める期間をキャリブレーション専用サブフレームよりも大きくした場合、キャリブレーションが必要なタイミングの検出とデータの送信タイミングとがずれて、誤動作が発生するような事態を低減することができる。予め定める期間は、予め静的に決めておいてもよいし、基地局が準静的または動的に決定してもよい。
基地局は、送信しないデータを記憶しておき、以後のデータの送信が可能なタイミングで、記憶したデータの送信を行う。送信しないデータの記憶処理は、例えば、スケジューラまたはMACが行ってもよい。または、PHY処理部が行ってもよい。スケジューラ、MACまたはPHY処理部は、内部または外部の記憶デバイスに送信しないデータを記憶させ、以後のデータの送信が可能なタイミングまでに、記憶した送信データを取り出す処理を行うとよい。
基地局は、設定したキャリブレーション専用サブフレームに、キャリブレーション用送信アンテナのcal-RSをマッピングして送信する。基地局は、キャリブレーション専用サブフレームを用いて、キャリブレーションを行う。この方法は、実施の形態4で開示した方法を適用するとよい。
基地局は、予め定める期間の終了後、データの送信が可能なタイミングで、データの送信を開始する。また、基地局は、予め定める期間の終了後、送信データに関係なく送信される信号およびCHの送信を開始する。これによって、基地局は、通常動作に戻る。
図30は、実施の形態4の変形例2の通信システムにおけるキャリブレーション処理に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。図30では、一例として、基地局でのセルフキャリブレーションを示している。図30に示すフローチャートは、前述の図28に示すフローチャートと同一のステップを含んでいるので、同一のステップについては同一のステップ番号を付して、共通する説明を省略する。
基地局は、ステップST4101において、キャリブレーションの実行を決定した後、ステップST4301において、キャリブレーションを行うタイミングか否かを判断する。キャリブレーションを行うタイミングであると判断された場合は、ステップST4302に移行する。キャリブレーションを行うタイミングでないと判断された場合は、キャリブレーションを行うタイミングであると判断されるまで待機する。
ステップST4302において、基地局は、送信データが有るか否かを判断する。送信データが有ると判断された場合は、ステップST4303に移行し、送信データが無いと判断された場合は、ステップST4103に移行する。
ステップST4303において、基地局は、キャリブレーションを行うタイミングにおけるデータの送信を停止し、送信データを記憶する。ステップST4303の処理を終了した後は、ステップST4103に移行する。
ステップST4303で送信データの記憶を行った基地局は、ステップST4103において、キャリブレーションのタイミングで、無送信データサブフレームを検出し、検出したサブフレームをキャリブレーション専用サブフレームに設定する。ステップST4103の処理を終了した後は、ステップST4104に移行する。
ステップST4104において、基地局は、設定したキャリブレーション専用サブフレームに、キャリブレーション用送信アンテナのcal-RSをマッピングして送信し、キャリブレーションを行う。この方法は、図28と同様であるので、説明を省略する。
ステップST4105およびステップST4106の処理を行った後、ステップST4107において、全アンテナのキャリブレーションが終了したと判断された場合は、ステップST4304に移行する。全アンテナ素子のキャリブレーションが終了していないと判断された場合は、ステップST4302に戻り、キャリブレーションを行っていないアンテナ素子について、前述の処理を行う。
ステップST4304において、基地局は、データの送信が可能なタイミングで、記憶したデータも含めて、データの送信を再開する。これによって、基地局は、通常動作に戻る。ステップST4304の処理を終了した後は、全ての処理手順を終了する。
本変形例で開示した方法を用いることによって、キャリブレーションが必要なタイミングに合わせてキャリブレーション専用サブフレームを設定することができ、該サブフレームでキャリブレーションを実行することができる。
これによって、基地局の傘下に多数のUEが存在する場合、および膨大な量のデータを通信している場合でも、キャリブレーションが遅れることによる性能の劣化を防ぐことが可能となる。したがって、多素子アンテナを用いたMIMOおよびビームフォーミングの性能をさらに向上させることが可能となる。
キャリブレーションが必要なタイミングで、送信データに関係なく送信される信号およびCHがある場合、実施の形態4の変形例1の方法を適用してもよい。送信データに関係なく送信される信号およびCHがある場合でも、キャリブレーションが必要なタイミングに合わせてキャリブレーション専用サブフレームを設定することができ、該サブフレームでキャリブレーションを実行することが可能となる。
前述の方法では、基地局は、送信しないデータを記憶しておき、以後のデータの送信が可能なタイミングで、記憶したデータの送信を行うことを開示したが、他の方法でもよい。他の方法として、送信しないデータを記憶せずに送信しないようにしてもよい。また、送信しないデータを記憶せずに廃棄するようにしてもよい。
例えば、重要度の低いデータは、記憶せずに送信しないようにする。または、許容遅延量が小さいような送信データは、記憶せずに送信しないようにしてもよい。許容遅延量が小さいデータとしては、例えば、音声データおよびリアルタイムゲーム用データなどがある。または、再送データは、記憶せずに送信しないようにしてもよい。再送が行われているので、再送データが一回程度抜けたとしても、問題になる可能性は低いためである。以上のようにすることによって、必要とする記憶容量を減らすことが可能となる。
また、保留可能な送信データの場合は、実施の形態4の変形例2の方法を行う、としてもよい。また、保留不可能な送信データの場合は、実施の形態4の方法を行う、としてもよい。
保留可能な送信データの例としては、許容遅延量が大きいデータがある。または、低いQoS、または、QCI(QoS Class Identifier)の値が大きい場合としてもよい。例えば、バッファードストリーミングのビデオデータ、およびファイル転送プロトコル(File Transfer Protocol;略称:FTP)のデータなどである。
保留不可能な送信データの例としては、許容遅延量が小さいデータがある。または、高いQoS、または、QCIの値が小さい場合としてもよい。例えば、音声データおよびリアルタイムゲーム用データなどがある。
このようにすることによって、送信データに応じて、キャリブレーションの実行のタイミングを変えることが可能となる。これによって、通信中のキャリブレーションを、より柔軟に実行することが可能となる。
保留可能な送信データの場合は、実施の形態4の変形例2の方法を行い、保留不可能な送信データの場合は、実施の形態4の方法を行う、としたが、これに限らない。キャリブレーションを実行する方が、データの送信よりも優先順位が高い場合は、実施の形態4の変形例2の方法を行う、としてもよい。また、データの送信の方が、キャリブレーションを実行することよりも優先順位が高い場合は、実施の形態4の方法を行う、としてもよい。同様に、送信データに応じて、キャリブレーションの実行のタイミングを変えることが可能となる。これによって、通信中のキャリブレーションを、より柔軟に実行することが可能となる。
以上のように本変形例によれば、キャリブレーション部であるPHY処理部は、cal-RSを配置するサブフレームを設定可能とするように、データを送信するタイミングを制御する。これによって、キャリブレーションが必要なタイミングで、cal専用サブフレームを設定可能となる。したがって、キャリブレーションの遅れを防ぎ、キャリブレーションの遅れによる性能の劣化を防ぐことができる。
実施の形態4 変形例3.
実施の形態4の変形例2の課題を解決する他の方法を開示する。基地局は、データ、および送信データに無関係な信号またはCHを送信しないサブフレームを設ける。何も送信しないサブフレームを設ける。以下の説明では、何も送信しないサブフレームを、CBS(Complete Blank Subframe)という場合がある。基地局は、CBSに、キャリブレーション用のRSのみをマッピングする。
CBSを構成するためのパラメータの例として、以下の(1)~(6)の6つを開示する。
(1)オフセット。開始タイミングを表す。例えば、開始無線フレームおよび開始サブフレームの少なくともいずれか一方を設定するとよい。
(2)期間。CBSが発生する期間である。例えば、一つまたは複数のサブフレーム数を設定するとよい。
(3)周期。CBSが発生する周期である。CBSを周期的に発生させる場合に有用である。例えば、無線フレーム数およびサブフレーム数の少なくともいずれか一方を設定するとよい。
(4)終了タイミング。例えば、終了無線フレームおよび終了サブフレームの少なくともいずれか一方を設定するとよい。他の方法として、開始から終了までの期間を設定してもよい。無線フレーム数およびサブフレーム数の少なくともいずれか一方を設定するとよい。また、CBSを長期に設定する場合は、年、日、時などの設定を行ってもよい。また、終了タイミングを設定しなくてもよい。この場合、一旦CBSが設定されると、セルのスイッチがオフ(OFF)されるまでCBSを構成する。例えば、セルのスイッチがオフ(OFF)されるまでキャリブレーションを実行し続ける場合に有効である。
(5)CBSを構成する無線リンク。例えば、DLおよびULの少なくともいずれか一方で設定するとよい。
(6)前記(1)~(5)の組合せ。
これらのパラメータを設定することによって、CBSの構成を特定することができる。これらの構成は変更されてもよい。以下の説明では、CBSを構成するためのパラメータを、CBSの設定情報という場合がある。
CBSを構成する主体の例として、以下の(1)~(3)の3つを開示する。
(1)RRC。
(2)MAC。
(3)PHY処理部。
基地局は、まずCBSを構成する。CBSの構成には、前述したパラメータを設定するとよい。これによって、CBSが構成されるサブフレームが特定される。基地局は、キャリブレーションの実行を決定した場合、CBSでキャリブレーション専用サブフレームを設定する。他の方法として、基地局は、キャリブレーションが必要なタイミングに応じて、CBSを設定してもよい。キャリブレーションが必要な開始タイミング、終了タイミング、周期、および期間をCBSの設定に用いるとよい。また、キャリブレーションを行う無線リンクをCBSの設定に用いるとよい。基地局は、CBSでキャリブレーション専用サブフレームを設定する。
基地局は、設定したキャリブレーション専用サブフレームに、キャリブレーション用送信アンテナのcal-RSをマッピングして送信する。CBSには、cal-RSの他の信号またはCHがマッピングされないので、キャリブレーション専用のサブフレームを構成することが可能となる。キャリブレーション用に多くのリソースを使用することが可能となる。
CBSで送信データが発生した場合、基地局は、データの送信を停止する。送信データを保留するとしてもよい。この方法は、実施の形態4の変形例2で開示した方法を適用するとよい。また、送信データに関係なく送信される信号およびCHが発生するような場合も、これらの信号およびCHを停止するとよい。
図31は、実施の形態4の変形例3の通信システムにおけるキャリブレーション処理に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。図31では、一例として、基地局でのセルフキャリブレーションを示している。また、図31では、キャリブレーションが必要なタイミングに応じて、CBSを設定する場合を示している。図31に示すフローチャートは、前述の図28および図30に示すフローチャートと同一のステップを含んでいるので、同一のステップについては同一のステップ番号を付して、共通する説明を省略する。
ステップST4101においてキャリブレーションの実行を決定した基地局は、ステップST4401において、CBSの設定を行う。このときに、基地局は、キャリブレーションが必要なタイミングおよびキャリブレーションを行う無線リンクに応じて、CBSの設定を行う。ステップST4401の処理を終了した後は、ステップST4402に移行する。
ステップST4402において、基地局は、CBSのタイミングか否かを判断する。CBSのタイミングであると判断された場合は、ステップST4302に移行する。CBSのタイミングでないと判断された場合は、次のCBSのタイミングまでステップST4402の処理を繰り返す。
ステップST4302において、基地局は、送信データが有るか否かを判断する。送信データが有ると判断された場合は、ステップST4303に移行し、送信データが無いと判断された場合は、ステップST4403に移行する。
ステップST4303において、基地局は、キャリブレーションを行うタイミングにおけるデータの送信を停止し、送信データを記憶する。ステップST4303の処理を終了した後は、ステップST4403に移行する。
ステップST4303で送信データの記憶を行った基地局は、ステップST4403において、キャリブレーションが必要なタイミングのCBSにcal-RSをマッピングして送信する。キャリブレーションが必要なタイミングのCBSを、キャリブレーション専用サブフレームに設定してもよい。設定したキャリブレーション専用サブフレームに、キャリブレーション用送信アンテナのcal-RSをマッピングして送信する。ステップST4403の処理を終了した後は、ステップST4105に移行する。
ステップST4105およびステップST4106の処理を行った後、ステップST4107において、全アンテナのキャリブレーションが終了したと判断された場合は、ステップST4304に移行する。全アンテナのキャリブレーションが終了していないと判断された場合は、ステップST4302に戻り、キャリブレーションを行っていないアンテナ素子について、前述の処理を行う。
ステップST4304において、基地局は、CBSではないサブフレームのデータの送信が可能なタイミングで、記憶したデータも含めて、データの送信を再開する。CBS終了タイミングが設定されている場合は、該設定に従ってCBSを構成することを終了する。ステップST4304の処理を終了した後は、全ての処理手順を終了する。
本変形例で開示した方法を用いることによって、予めCBSを構成しておくことにより、キャリブレーション専用サブフレームの設定を容易に行うことができる。また、キャリブレーションが必要なタイミングに合わせてCBSを設定しておくことによって、キャリブレーションを、必要なタイミングで行うことができる。
したがって、基地局の傘下に多数のUEが存在する場合、および膨大な量のデータを通信している場合でも、キャリブレーションが遅れることによる性能の劣化を防ぐことが可能となる。これによって、多素子アンテナを用いたMIMOおよびビームフォーミングの性能をさらに向上させることが可能となる。
キャリブレーションが必要なタイミングで、送信データに関係なく送信される信号およびCHがある場合、実施の形態4の変形例1の方法を適用してもよい。送信データに関係なく送信される信号およびCHがある場合でも、キャリブレーションが必要なタイミングに合わせてキャリブレーション専用サブフレームを設定することができ、該サブフレームでキャリブレーションを実行することが可能となる。
なお、本変形例では、CBSを構成し、キャリブレーションに用いることを開示したが、CBSを、キャリブレーションに限らずに他の用途に使用することも可能である。例えば、セル間の干渉を抑制するために、何も送信しないサブフレームを設けるようにしてもよい。
実施の形態4から実施の形態4の変形例3では、基地局のキャリブレーションについて示したが、実施の形態4から実施の形態4の変形例3で開示した方法は、UEのキャリブレーションにも適用することができる。実施の形態4から実施の形態4の変形例3で開示した方法をUEのキャリブレーションに適用することによって、UEにおいて運用中にキャリブレーションを実行することが可能となる。
実施の形態4から実施の形態4の変形例3で開示した方法は、アクセス方式としてOFDMだけでなく、他のアクセス方式にも適用することができる。実施の形態4から実施の形態4の変形例3で開示した方法を他のアクセス方式に適用することによって、他のアクセス方式を用いたシステムにおいても、運用中にキャリブレーションを実行することが可能となる。
実施の形態5.
実施の形態3および実施の形態4では、キャリブレーション用サブフレームまたはキャリブレーション専用サブフレームを設けることを開示した。また、基地局は、該サブフレームで他のCHまたは他のRSを送信しないことを開示した。
通常、基地局は、毎DLサブフレームで、復調用RSおよび制御CHを送信する。例えば、LTEにおいては、CRS、PDCCHなどを送信する。復調用RSは、UEが同期および復調を行うための信号である。制御CHには、UEがデータを受信するために必要とする情報が含まれる。
復調用RSおよび制御CHが無いサブフレームが存在すると、該サブフレームでUEはデータを正常に受信できなくなる。したがって、UEがキャリブレーション用のサブフレームのタイミングを認識しない場合、UEは、該サブフレームで復調用RSおよび制御CHが存在すると認識し、該サブフレームを受信することになる。
この場合、UEは、該サブフレームでデータが実際送信されていないにも拘わらず、送信データが存在すると誤って受信してしまい、誤動作を生じる場合があるという問題がある。本実施の形態では、このような問題を解決する方法を開示する。
基地局は、UEに、キャリブレーション用信号に関する情報を通知する。基地局は、UEに、キャリブレーション専用サブフレームに関する情報を通知するとしてもよい。UEは、取得したキャリブレーション専用サブフレームに関する情報を用いて、キャリブレーション専用サブフレームの送信タイミングで受信不要とする。
キャリブレーション専用サブフレームに関する情報の例としては、キャリブレーション専用サブフレームが送信されるタイミングに関する情報がある。例えば、キャリブレーション専用サブフレームが送信されるサブフレームを示すインジケーション(indication)がある。
サブフレームナンバ、または、次のサブフレームなどのインジケーションであってもよい。第nサブフレーム以降のサブフレームを示すインジケーションとして、「n」としてもよい。また、連続するか否かを示すインジケーションであってもよい。また、連続するサブフレーム数を示すインジケーションであってもよい。これらを組み合わせた情報であってもよい。
これらの情報は、UEへの通知に即時性を必要とする場合に、より有効となる。例えば、送信データが無いサブフレームを検出して、検出したサブフレームでキャリブレーション専用サブフレームが設定されるような場合に、即時にUEに通知する方法として有効である。
キャリブレーション専用サブフレームに関する他の情報の例としては、実施の形態4の変形例3で開示したCBSの設定情報がある。これらのパラメータは、UEへの通知に即時性を必要としない場合に、より有効となる。例えば、予めキャリブレーションが必要なタイミングが認識できている場合、またはCBSが構成されている場合に、より有効となる。
キャリブレーション専用サブフレームに関する他の情報の例としては、タイムスタンプがある。SFN(System Frame Number)は、上限の数値が存在する。それを超えるような間隔でキャリブレーション専用サブフレームが構成されるような場合に有効である。タイムスタンプは、OAM(operation administration and maintenance)が管理するものであってもよいし、GPS(Global Positioning System)を用いて取得するものであってもよい。
基地局からUEへのキャリブレーション専用サブフレームに関する情報の通知方法について開示する。基地局は、キャリブレーションを実行するセルからUEに通知する。通知方法の具体例として、以下の(1)~(3)の3つを開示する。
(1)RRCシグナリングで通知。傘下のUEに報知してもよいし、傘下のUEに個別に通知してもよい。報知情報で報知する場合、一斉に多数のUEに対して通知することが可能となる。UEに個別に通知する場合は、再送機能によって確実に通知することが可能となる。この方法は、例えば、実施の形態4で開示した、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームを検出する主体およびキャリブレーション専用サブフレームに設定する主体、実施の形態4の変形例3で開示したCBSを構成する主体がRRCである場合に親和性が高い。また、キャリブレーション専用サブフレームに関する情報が、UEへの通知に即時性を必要としない場合に、より有効となる。
(2)MACシグナリングで通知。傘下のUEに個別に通知する。この方法は、例えば、実施の形態4で開示した、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームを検出する主体およびキャリブレーション専用サブフレームに設定する主体、実施の形態4の変形例3で開示したCBSを構成する主体がMACまたはスケジューラである場合に親和性が高い。また、キャリブレーション専用サブフレームの送信タイミングに関する情報が、UEへの通知に即時性を必要とする場合に、より有効となる。
(3)物理制御チャネルで通知。傘下のUEに個別に通知する。この方法は、例えば、実施の形態4で開示した、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームを検出する主体およびキャリブレーション専用サブフレームに設定する主体、実施の形態4の変形例3で開示したCBSを構成する主体がPHY処理部である場合に親和性が高い。また、キャリブレーション専用サブフレームの送信タイミングに関する情報が、UEへの通知に即時性を必要とする場合に、より有効となる。
図32は、実施の形態5の通信システムにおけるキャリブレーションに関するシーケンスの一例を示す図である。図32では、一例として、実施の形態4および実施の形態4の変形例1で開示した、送信またはスケジューリングするデータが無いサブフレームを検出してキャリブレーション専用サブフレームに設定する方法の場合を示している。
ステップST5101において、基地局とUEは、通常の通信を行っている。キャリブレーションを実行する基地局は、ステップST5102において、送信データが無いサブフレームである無送信データサブフレームを検出する。
ステップST5103において、基地局は、検出したサブフレームを、キャリブレーション専用サブフレームに設定する。
ステップST5104において、基地局は、UEに対して、設定したキャリブレーション専用サブフレームに関する情報(以下「キャリブレーション専用サブフレーム情報」という場合がある)を通知する。
ステップST5105において、基地局は、キャリブレーション専用サブフレームの間、該サブフレームにキャリブレーション用送信アンテナのcal-RSをマッピングし、送信する。
ステップST5106において、基地局は、キャリブレーション専用サブフレームでcal-RSの送信を終了した後、通常動作を行う。
UEは、ステップST5104で、キャリブレーション専用サブフレーム情報を取得する。ステップST5107において、UEは、取得したキャリブレーション専用サブフレーム情報を用いて、キャリブレーション専用サブフレームの間、受信を停止する。
ステップST5108において、UEは、キャリブレーション専用サブフレームの終了後、受信を再開する。
ステップST5109において、基地局とUEは、キャリブレーション専用サブフレーム終了後、通常の通信を行う。
図32に示すシーケンスは、UEへの通知に即時性を必要とする場合に、より有効となる。例えば、ステップST5102において、基地局は、スケジューラが、無送信データサブフレームを検出して、ステップST5103において、検出したサブフレームをキャリブレーション専用サブフレームに設定する。
スケジューラは、設定したキャリブレーション専用サブフレームに関する情報をPHY処理部に通知する。PHY処理部は、キャリブレーション専用サブフレーム情報を物理制御チャネルに制御情報として含めて、ステップST5104においてUEに通知する。スケジューラは、次のサブフレームで送るデータ量を認識しているので、スケジューラが検出して設定したキャリブレーション専用サブフレームに関する情報を、PHY処理部が該サブフレームの前のサブフレームの物理制御チャネルに、制御情報として含めてUEに通知することは可能である。
このようにすることによって、UEは、キャリブレーション専用サブフレームで、復調用RSおよび制御CHが送信されていないにも拘わらず、該サブフレームを受信してしまい、データが実際送信されていないにも拘わらず、送信データが存在すると誤って受信し、誤動作を生じてしまうことを防ぐことができる。したがって、基地局は、UEに誤動作を生じさせること無く、多素子アンテナのキャリブレーションを、必要なタイミングで行うことが可能となる。
図33は、実施の形態5の通信システムにおけるキャリブレーションに関するシーケンスの他の例を示す図である。図33では、一例として、実施の形態4の変形例3で開示した、CBSを構成する方法の場合を示している。
ステップST5201において、基地局とUEは、通常の通信を行っている。キャリブレーションを実行する基地局は、ステップST5202において、キャリブレーションタイミングに応じて、CBSの設定を行う。
ステップST5203において、基地局は、UEに対して、設定したCBSの情報(以下「CBS情報」という場合がある)を通知する。
ステップST5203においてCBS情報を受信したUEは、ステップST5204において、基地局に対して、CBS情報通知応答を通知する。ステップST5204のCBS情報通知応答は、省略してもよい。
ステップST5204においてCBS情報通知応答を受信した基地局は、ステップST5205において、CBSでcal-RSを送信する。具体的には、基地局は、CBSにキャリブレーション用送信アンテナのcal-RSをマッピングして送信する。
ステップST5206において、基地局は、CBS設定に従い、CBS終了後、通常動作を行う。
ステップST5204でCBS情報通知応答を基地局に通知したUEは、ステップST5207において、CBSで受信を停止する。具体的には、UEは、取得したCBS情報を用いて、CBSの間、受信を停止する。
ステップST5208において、UEは、CBS終了後、受信を再開する。ステップST5209において、基地局とUEは、CBS終了後、通常の通信を行う。
図33に示すシーケンスは、UEへの通知に即時性を必要としない場合に、より有効となる。例えば、ステップST5202において、基地局は、RRCによって、CBSの設定を行う。RRCは、CBS情報をRRCシグナリングに含めて、ステップST5203においてUEに通知する。
RRCシグナリングを受信したUEは、RRCによって、取得したCBS情報を用いて、CBSでの受信停止制御を行うとよい。UEのRRCが、MACまたはPHY処理部にCBSのタイミングを通知して、該サブフレームで受信の停止を実行させるとよい。このようにすることによって、RRCによる制御が可能となる。
なお、例えば、傘下のUEに個別に送る場合に、UEは、基地局にCBS情報通知応答を通知し、傘下のUEに報知する場合に、UEは、基地局にCBS情報通知応答を通知しないようにしてもよい。このようにすることによって、UEは、CBSの間受信を停止することができる。
これによって、CBSで復調用RSおよび制御CHが送信されていないにも拘わらず、該サブフレームを受信してしまい、データが実際送信されていないにも拘わらず、送信データが存在すると誤って受信し、誤動作を生じてしまうことを防ぐことができる。したがって、基地局は、UEに誤動作を生じさせること無く、多素子アンテナのキャリブレーションを、必要なタイミングで行うことが可能となる。
UEは、キャリブレーション専用サブフレームの間、他の基地局(セル)と通信を行ってもよい。または、他の基地局(セル)のメジャメントを行ってもよい。システムとして、キャリブレーション専用サブフレームの間のUEの動作を予め決めておいてもよい。または、基地局が、キャリブレーション専用サブフレームの間のUEの動作を決めて、UEに通知してもよい。この通知は、キャリブレーション専用サブフレームに関する情報とともに通知してもよい。このようにすることによって、該サブフレームを、UEにおいて他の用途に用いることが可能となる。
また、基地局は、隣接する基地局に対して、キャリブレーション専用サブフレームに関する情報を通知してもよい。この通知には、X2シグナリングを用いるとよい。このようにすることによって、隣接する基地局は、キャリブレーション専用サブフレームの存在、および時間軸上もしくは周波数軸上のリソースを認識することが可能となる。また、隣接する基地局は、該キャリブレーション専用サブフレームで送信データ、ならびに送信データに関係なく送信されるCHおよびRSが無いことを認識することができる。したがって、例えば、隣接する基地局への干渉を気にすることなく、該サブフレームを用いて、傘下のUEへのデータをスケジューリングすることが可能となる。
また、基地局は、コアネットワーク側ノードに対して、キャリブレーション専用サブフレームに関する情報を通知してもよい。コアネットワーク側ノードは、基地局がキャリブレーションを実行する間に、何らかの特別な動作を必要とする基地局に対して、該基地局から取得したキャリブレーション専用サブフレームに関する情報を通知するとよい。これらの通知には、S1シグナリングを用いるとよい。これによって、隣接する基地局に対して、キャリブレーション専用サブフレームに関する情報を通知する場合と同様の効果を得ることができる。
本実施の形態は、セルフキャリブレーションの場合だけでなく、OTAのキャリブレーションを行う場合にも適用してもよい。OTAの場合、例えば、基地局からキャリブレーション用の信号(cal-RS)を送信し、UEで該信号を受信してキャリブレーション値を導出する。したがって、基地局から、キャリブレーション用の信号に関する情報を送信することによって、UEは、該信号を受信し、受信した該信号からキャリブレーション値を導出することが可能となる。
例えば、図32では、UEは、ステップST5107において、キャリブレーション専用サブフレームの間、受信を停止するのではなく、キャリブレーション用信号を受信する、とすればよい。UEは、受信したキャリブレーション用信号を用いて、キャリブレーション値を導出する。
また、図33でも同様に、ステップST5207において、CBSで受信を停止するのではなく、CBSでキャリブレーション用信号を受信する、とすればよい。UEは、CBSにおいて受信したキャリブレーション用信号を用いて、キャリブレーション値を導出する。UEは、導出したキャリブレーション値を基地局に通知するとよい。このようにすることによって、基地局は、送信系アンテナのOTAによるキャリブレーションが可能となる。
受信系のキャリブレーションの場合、基地局は、キャリブレーション用信号を送信することを、UEに対して指示するとよい。基地局は、UEに対して、キャリブレーション用信号に関する情報に該指示の情報を含ませて通知してもよいし、キャリブレーション専用サブフレームに関する情報に含ませて通知してもよい。または、別のシグナリングで通知してもよい。
該指示の情報を受信したUEは、例えば、取得したキャリブレーション専用サブフレームに関する情報から導出したサブフレームで、キャリブレーション用信号を送信する。基地局は、該キャリブレーション専用サブフレームでUEから送信されたキャリブレーション用信号を受信することによって、キャリブレーション値を導出する。
例えば、図32では、基地局は、UEに対して、ステップST5104において、キャリブレーション専用サブフレームに関する情報に、該サブフレームでキャリブレーション用信号を送信する指示を示す情報を含めて通知する。該情報を受信したUEは、ステップST5107において、該キャリブレーション専用サブフレームでキャリブレーション用信号を送信する。
基地局は、ステップST5105において、該キャリブレーション専用サブフレーム、キャリブレーション用信号を受信する、とすればよい。基地局は、受信したキャリブレーション用信号を用いて、キャリブレーション値を導出する。
また、図33でも同様に、ステップST5203において、CBSに関する情報に、該サブフレームでキャリブレーション用信号を送信する指示を示す情報を含めて通知する。該情報を受信したUEは、ステップST5207において、該キャリブレーション専用サブフレームでキャリブレーション用信号を送信する。
基地局は、ステップST5205において、該キャリブレーション専用サブフレーム、キャリブレーション用信号を受信する、とすればよい。基地局は、受信したキャリブレーション用信号を用いて、キャリブレーション値を導出する。このようにすることによって、基地局は、受信系アンテナのOTAによるキャリブレーションが可能となる。
以上のように本実施の形態をOTAのキャリブレーションを行う場合に適用することによって、基地局とUEとの間のキャリブレーションのための協調、例えばキャリブレーションのタイミングおよびリソースの認識を合わせることなどを容易にすることが可能となる。したがって、OTAによるキャリブレーションを、運用中に容易に行うことが可能となる。
以上のように本実施の形態によれば、通信端末は、cal-RSが配置されるサブフレームを受信しないように設定される。これによって、通信端末の誤動作を防ぐことができる。
実施の形態5 変形例1.
本変形例では、実施の形態5の問題を解決する他の方法を開示する。基地局は、傘下のUEに対して、キャリブレーション専用サブフレームを受信しないように設定する。この設定にDRXを用いる。基地局は、キャリブレーション専用サブフレームで、傘下のUEが受信しないようにDRXを構成する。基地局は、キャリブレーション専用サブフレームで、傘下のUEが非動作(in-activity)になるようにDRXを構成する。
または、基地局は、キャリブレーション専用サブフレームで、傘下のUEが動作(active)しないようにDRXを構成する。または、基地局は、構成したDRXの非動作(in-activity)の間に、キャリブレーション専用サブフレームを構成できるように、該サブフレームで、傘下のUEにデータを送信しないとしてもよい。
基地局は、傘下のUEに対して、該DRX構成を通知する。このDRX構成の通知には、従来の規格で決められている通知方法を適用することができる。
傘下のUEは、構成されたDRXの非動作期間、自セルからの受信を行わない。したがって、UEは、基地局がキャリブレーションを実行している間、受信を行わない。
このようにすることによって、UEは、キャリブレーション専用サブフレームで、復調用RSおよび制御CHが送信されていないにも拘わらず、該サブフレームを受信してしまい、データが実際送信されていないにも拘わらず、送信データが存在すると誤って受信し、誤動作を生じてしまうことを防ぐことができる。したがって、基地局は、UEに誤動作を生じさせること無く、多素子アンテナのキャリブレーションを、必要なタイミングで行うことが可能となる。
また、既存の機能を用いるので、UEは、キャリブレーションについての特別な処理が不要となる。また、既存の通知方法を利用することによって、UEに対して、キャリブレーション用に特別にシグナリングを通知する必要が無い。
他の設定方法を開示する。設定方法として、メジャメントギャップを用いる。基地局は、キャリブレーション専用サブフレームで、傘下のUEが受信しないようにメジャメントギャップを構成する。基地局は、キャリブレーション専用サブフレームを含むように、傘下のUEに対して、メジャメントギャップを構成する。
基地局は、傘下のUEに対して、メジャメントギャップ構成を通知する。このメジャメントギャップ構成の通知には、従来の規格で決められている通知方法を適用することができる。キャリブレーション用に、DLを用いる場合は、DLのメジャメントギャップを構成すればよい。ULを用いる場合は、ULのメジャメントギャップを構成すればよい。
傘下のUEは、構成されたメジャメントギャップの間、自セルからの受信を行わない。したがって、UEは基地局がキャリブレーションを実行している間、受信を行わない。UEは、前述と同様の効果を得ることができる。
また、DRXの構成は、DLについてのみであったが、メジャメントギャップの設定は、ULについても可能である。したがって、キャリブレーションをULで行うような場合でも、メジャメントギャップを用いることは有効である。
実施の形態5および実施の形態5の変形例1で開示した方法は、アクセス方式としてOFDMだけでなく、他のアクセス方式にも適用することができる。
実施の形態6.
実施の形態3では、キャリブレーション用のRSと、他のCHまたは他のRSとを、同一のサブフレーム内に配置することを開示した。本実施の形態では、その具体例を開示する。
基地局は、cal-RSの送信に、物理下り共有チャネル領域を用いる。基地局は、cal-RSを物理下り共有チャネル領域にマッピングする。cal-RSをマッピングしたシンボルには、物理下り共有チャネルをマッピングしない。cal-RSをマッピングしたシンボルで物理下り共有チャネルをマッピングしないように、レートマッチングおよびコーディングを行ってもよい。
または、基地局は、物理下り共有チャネル領域に物理下り共有チャネルをマッピングした後、cal-RSをマッピングするシンボルを、cal-RSに置き換えてもよい。基地局は、cal-RSをマッピングしたシンボルで物理下り共有チャネルを送信しない。
このようにすることによって、キャリブレーション用のRSと他のCHおよび他のRSとを、周波数および時間領域で直交させることが可能となる。したがって、キャリブレーション用のRSと他のCHおよび他のRSとを、同一のサブフレーム内に配置することができ、通信中にキャリブレーションを行うことも可能となる。
図34は、物理下り共有チャネル領域にcal-RSをマッピングした場合のサブフレームの構成の一例を示す図である。図34において、横軸は時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。図34では、一例として、LTEの場合を示している。図34では、サブフレームを参照符号「6001」で示し、シンボルタイミングを参照符号「6002」で示している。1サブフレームのうち、先頭の3シンボルがPDCCH領域6003であり、以降の11シンボルがPDSCH領域6004である。
PDCCH領域6003およびPDSCH領域6004にわたって、CRS6005がマッピングされる。PDCCH領域6003には、PDCCHおよびPCFICHなどがマッピングされる。PDSCH領域6004には、PDSCHがマッピングされる。
図34では、PDSCH領域6004に、cal-RSをマッピングする例を示している。PDSCH領域6004に、第1アンテナ素子#1のcal-RS6006、第2アンテナ素子#2のcal-RS6007、第3アンテナ素子#3のcal-RS6008、および第4アンテナ素子#4のcal-RS6009をマッピングする。その他のシンボルには、PDSCH6010をマッピングする。
このようにPDSCH領域6004に、cal-RS6006~6009をマッピングすることによって、cal-RS6006~6009と、PDSCH6010、PDCCHおよびCRS6005とを、同一のサブフレーム内にマッピングすることが可能となる。基地局は、cal-RS6006~6009と、PDSCH、PDCCHおよびCRS6005とを、同一のサブフレームで送信することが可能となる。したがって、UEに対するデータ通信を行いつつ、キャリブレーションを実行することが可能となる。
他の方法を開示する。基地局は、cal-RSをマッピングしたスロットまたはサブフレームには物理下り共有チャネルをマッピングしないとしてもよい。該サブフレームにおける送信データの取り扱いについては、実施の形態4および実施の形態4の変形例2で開示した方法を適用するとよい。
基地局は、ページングチャネル、報知チャネル、またはランダムアクセス応答がマッピングされる物理下り共有チャネルがマッピングされるサブフレームを除いたサブフレームに、cal-RSをマッピングしてもよい。基地局は、cal-RSをマッピングしたシンボルタイミングで、全ての周波数領域にわたって物理下り共有チャネルをマッピングしないとしてもよい。基地局は、同期用信号、物理報知チャネル、または他のRSと異なるシンボルタイミングに、cal-RSをマッピングしてもよい。
図35は、物理下り共有チャネル領域にcal-RSをマッピングした場合のサブフレームの構成の他の例を示す図である。図35において、横軸は時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。図35では、一例として、LTEの場合を示している。図35では、サブフレームを参照符号「6101」で示し、シンボルタイミングを参照符号「6102」で示している。1サブフレームのうち、先頭の3シンボルがPDCCH領域6103であり、以降の11シンボルがPDSCH領域6104である。
PDCCH領域6103およびPDSCH領域6104にわたって、CRS6105がマッピングされる。PDCCH領域6103には、PDCCHおよびPCFICHなどがマッピングされる。
図35では、PDSCH領域6104にPDSCHをマッピングせずに、cal-RSをマッピングする例を示している。PDSCH領域6104にPDSCHをマッピングせずに、第1アンテナ素子#1のcal-RS6106、第2アンテナ素子#2のcal-RS6107、第3アンテナ素子#3のcal-RS6108、および第4アンテナ素子#4のcal-RS6109をマッピングする。ここでは、基地局は、cal-RS6106~6109をマッピングしたシンボルタイミングで、全ての周波数領域にわたってcal-RSをマッピングする例を示している。
このように、PDSCH領域6104にcal-RS6106~6109をマッピングすすることによって、cal-RS6106~6109と、PDCCHおよびCRS6105とを、同一のサブフレーム内にマッピングすることが可能となる。基地局は、cal-RS6106~6109と、PDCCHおよびCRS6105とを、同一のサブフレームで送信することが可能となる。したがって、制御チャネルならびに復調および測定に用いる信号が送信されることになるので、UEに対する通信を行いつつ、キャリブレーションを実行することが可能となる。
また、基地局は、PDCCHでUEへのスケジューリングを行わないようにすることによって、UEは、PDSCHを受信する必要が無くなり、UEにおける誤動作の発生を低減することが可能となる。
他の例を開示する。前述の物理下り共有チャネル領域の代わりに、MBSFN(Multimedia Broadcast multicast service Single Frequency Network)領域を用いる。また、MBSFN領域には、PMCHおよびPDSCHがマッピングされるが、どちらも前述のPDSCHの代わりに、PMCHおよびPDSCHとすればよい。
このようにすることによって、キャリブレーション用のRSと他のCHおよび他のRSとを、周波数および時間領域で直交させることが可能となる。したがって、キャリブレーション用のRSと他のCHおよび他のRSとを、同一のサブフレーム内に配置することができ、通信中にキャリブレーションを行うことも可能となる。
図36は、MBSFN領域にcal-RSをマッピングした場合のサブフレームの構成の一例を示す図である。図36において、横軸は時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。図36では、一例として、LTEの場合を示している。図36では、MBSFNサブフレームを参照符号「6201」で示し、シンボルタイミングを参照符号「6202」で示している。1サブフレームのうち、先頭の2シンボルがnon-MBSFN領域6203であり、以降の12シンボルがMBSFN領域6204である。
non-MBSFN領域6203には、CRS6105がマッピングされる。non-MBSFN領域6203には、PDCCHおよびPCFICHなどがマッピングされる。MBSFN領域6204には、PMCHおよびPDSCHがマッピングされる。
図36では、MBSFN領域6204にPMCHをマッピングせずに、cal-RSをマッピングする例を示している。MBSFN領域6204にPMCHおよびPDSCHをマッピングせずに、第1アンテナ素子#1のcal-RS6106、第2アンテナ素子#2のcal-RS6107、第3アンテナ素子#3のcal-RS6108、および第4アンテナ素子#4のcal-RS6109をマッピングする。ここでは、基地局は、cal-RS6106~6109をマッピングしたシンボルタイミングで、全ての周波数領域にわたってcal-RSをマッピングする例を示している。
このように、MBSFN領域6204にcal-RS6106~6109をマッピングすることによって、cal-RS6106~6109と、PDCCHおよびCRS6105とを、同一のサブフレーム内にマッピングすることが可能となる。基地局は、cal-RS6106~6109と、PDCCHおよびCRS6105とを、同一のサブフレームで送信することが可能となる。したがって、制御チャネルならびに復調および測定に用いる信号が送信されることになるので、UEに対する通信を行いつつ、キャリブレーションを実行することが可能となる。
また、基地局は、PDCCHでUEへのスケジューリングを行わないようにすることによって、UEは、PDSCHを受信する必要が無くなり、UEにおける誤動作の発生を低減することが可能となる。
また、MBSFN領域6204でPMCHを送信しない場合、MBSFN用RSを送信しない。したがって、MBSFN領域6204でPMCHおよびPDSCHをマッピングしない場合、MBSFN領域6204には何もマッピングされなくなる。したがって、前述のPDSCH領域を用いる場合に比べて、キャリブレーション用のリソースをより多く使用することができる。
また、MBSFNサブフレームは、同期用信号、物理報知チャネルまたはページングチャネルがマッピングされるサブフレームには構成されない。したがって、基地局は、MBSFNサブフレームを構成し、MBSFNサブフレームにcal-RSをマッピングすることによって、前述の同期用信号および物理報知チャネルがマッピングされるシンボル、ならびにページングチャネルがマッピングされるサブフレームを除いてcal-RSをマッピングするという処理がある場合、該処理を省略することができる。これによって、基地局での処理を簡略化することができる。
さらに他の例を開示する。ABS(Almost Blank Subframe)を用いる。ABSは、CRSの他のCHおよびRSがマッピングされないサブフレームである。ABSのCRSがマッピングされていないリソースに、キャリブレーション用のRSをマッピングすることによって、他のRS(CRS)とを周波数および時間領域で直交させることが可能となる。したがって、キャリブレーション用のRSと他RSとを、同一のサブフレーム内に配置することができ、通信中にキャリブレーションを行うことも可能となる。
図37は、ABS領域にcal-RSをマッピングした場合のサブフレームの構成の一例を示す図である。図37において、横軸は時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。図37では、一例として、LTEの場合を示している。図37では、ABS領域を参照符号「6301」で示し、シンボルタイミングを参照符号「6302」で示している。
ABS領域6301には、CRS6105がマッピングされる。ABS領域6301のうち、CRS6105がマッピングされていないリソースに、第1アンテナ素子#1のcal-RS6106、第2アンテナ素子#2のcal-RS6107、第3アンテナ素子#3のcal-RS6108、および第4アンテナ素子#4のcal-RS6109をマッピングする。ここでは、基地局は、cal-RS6106~6109をマッピングしたシンボルタイミングで、全ての周波数領域にわたってcal-RSをマッピングする例を示している。
このように、ABS領域6301にcal-RS6106~6109をマッピングすることによって、cal-RS6106~6109とCRS6105とを、同一のサブフレーム内にマッピングすることが可能となる。基地局は、cal-RS6106~6109とCRS6105とを、同一のサブフレームで送信することが可能となる。したがって、復調および測定に用いる信号が送信されることになるので、UEに対する通信を行いつつ、キャリブレーションを実行することが可能となる。
また、ABS領域6301では、PDCCHが送信されない。ABSが構成された場合、基地局からABSの構成を通知されたUEは、ABSを受信しなくてよい。UEは、ABSを受信する必要が無くなり、UEにおける誤動作の発生を低減することが可能となる。
また、ABS領域6301では、PDCCHおよびPCFICHを送信しない。したがって、前述のPDSCH領域を用いる場合に比べて、PDCCH領域もキャリブレーション用のリソースとして使うことができるようになるので、より多くのリソースを使用することができる。
また、ABSは、同期用信号、物理報知チャネルまたはページングチャネルがマッピングされるサブフレームには構成されない。したがって、基地局は、ABSを構成し、ABSにcal-RSをマッピングすることによって、基地局は、前述の同期用信号および物理報知チャネルがマッピングされるシンボル、ならびにページングチャネルがマッピングされるサブフレームを除いてcal-RSをマッピングするという処理がある場合、該処理を無くすことができる。これによって、基地局での処理を簡略化することができる。
また、本実施の形態で開示した方法を用いることによって、キャリブレーションを行うUEは、特にcal-RSに関する情報を基地局から通知されなくてもよい。従来のPDCCHによるスケジューリング、MBSFNサブフレームの設定、ABSの設定に従えばよい。したがって、UEは、キャリブレーションについての認識が不要となり、キャリブレーションについての特別な処理が不要となる。これによって、UEでの処理を簡略化することができる。
基地局は、cal-RSに関する情報をUEに明示してもよい。基地局は、UEに、cal-RSに関する情報を通知してもよい。cal-RSの情報としては、cal-RSがマッピングされる無線フレーム、サブフレーム、リソース、およびシーケンスなどがある。リソースは、例えばリソースブロック、リソースエレメント、リソースユニットなどである。
通知方法としては、RRCシグナリング、MACシグナリング、PDCCHによる通知がある。例えば、PDSCH領域にcal-RSをマッピングする場合、基地局がUEに、cal-RSに関する情報を通知する。このようにすることによって、UEは、キャリブレーションを行うサブフレーム、リソースおよびシーケンスを認識することが可能となる。UEは、例えば、受信したサブフレームのうち、cal-RSがマッピングされたリソースにはPDSCHが無いと判断することができる。
したがって、UEは、該リソースを受信しない処理または該リソースの復調結果を破棄するなどの処理を行うことが可能となる。これによって、UEは、PDSCHのリソースを正確に受信することが可能となる。
MBSFNサブフレームを用いる場合も同様である。基地局からUEに、cal-RSをマッピングするMBSFNサブフレームに関する情報を通知するとよい。MBSFNサブフレーム構成の通知に、該情報を含めて通知してもよい。UEは、例えば、MBSFNサブフレームのうち、cal-RSがマッピングされたリソースにはPMCHまたはPDSCHが無いと判断することができる。
したがって、UEは、該リソースを受信しない処理または該リソースの復調結果を破棄するなどの処理を行うことが可能となる。これによって、UEは、PMCHまたはPDSCHのリソースを正確に受信することが可能となる。
ABSを用いる場合も同様である。基地局からUEに、cal-RSをマッピングするABSに関する情報を通知するとよい。ABS構成の通知に該情報を含めて通知してもよい。このようにすることによって、UEがキャリブレーションを行うサブフレームを認識することができる。
したがって、たとえ、UEが、キャリブレーション用のRSを受信できる場合でも、該信号がキャリブレーション用であると認識することができるので、該リソースを受信しない処理または該リソースの復調結果を破棄するなどの処理を行うことが可能となる。これによって、UEがABSを誤って受信することを防ぐことができる。
また、基地局は、隣接する基地局に対して、cal-RSに関する情報、cal-RSをマッピングするMBSFNサブフレームに関する情報、cal-RSをマッピングするABSに関する情報を通知してもよい。この通知には、X2シグナリングを用いるとよい。
通常、隣接する基地局は、通常のサブフレーム、MBSFNサブフレームおよびABSでcal-RSが送信されることは認識していない。仮に、キャリブレーション用としてcal-RSを高い電力で送信しなければならないような場合は、該信号が隣接する基地局に干渉を与える場合がある。
したがって、基地局が、隣接する基地局に対して、cal-RSに関する情報、cal-RSをマッピングするMBSFNサブフレームに関する情報、cal-RSをマッピングするABSに関する情報を通知することによって、隣接する基地局は、cal-RSの存在、および時間軸上もしくは周波数軸上のリソースを認識することが可能となる。これによって、例えば、該隣接する基地局は、該基地局からの干渉を想定して、傘下のUEへのデータスケジューリングを避けることが可能となる。
また、基地局は、コアネットワーク側ノードに対して、cal-RSに関する情報、cal-RSをマッピングするMBSFNサブフレームに関する情報、cal-RSをマッピングするABSに関する情報について通知してもよい。
コアネットワーク側ノードは、該基地局がキャリブレーションを実行する間に、何らかの特別な動作を必要とする基地局に対して、該基地局から取得したcal-RSに関する情報、cal-RSをマッピングするMBSFNサブフレームに関する情報、cal-RSをマッピングするABSに関する情報を通知するとよい。
これらの通知には、S1シグナリングを用いるとよい。以上のように、基地局が、コアネットワーク側ノードに対して、cal-RSに関する情報、cal-RSをマッピングするMBSFNサブフレームに関する情報、cal-RSをマッピングするABSに関する情報について通知する場合でも、前述の実施の形態と同様の効果を得ることが可能となる。
実施の形態7.
実施の形態2,3,6では、アンテナ素子毎にキャリブレーション用のRSを用いてキャリブレーションを実行する場合について開示した。これらの実施の形態では、アンテナ素子の数が増加すると、cal-RSも増加する。したがって、全てのアンテナ素子のキャリブレーションを実行すると、各アンテナ素子の位相および振幅の調整時間が増加することになる。また、cal-RSが増加することによって、オーバーヘッドが増加する。これによって、実際の通信に使用できる下り物理領域が減ってしまい、本来期待する通信性能を確保することができないという問題が発生する。本実施の形態では、このような問題を解決する方法を開示する。
基地局の多素子アンテナを構成する各アンテナ素子についてグルーピングを行う。アンテナ素子のグルーピングを行う方法としては、多素子アンテナによってビーム形成をするために出荷前、設置前、および運用中に実行されるキャリブレーションによって得られた調整結果でグルーピングする方法と、多素子アンテナの構造に基づいてグルーピングする方法とが挙げられる。
キャリブレーションによる調整結果でアンテナ素子をグルーピングする場合、調整結果として得られる振幅調整値および位相調整値を、過去に実行したキャリブレーション値としてデータを記憶しておき、予め定める範囲内の調整値となるアンテナ素子をグルーピングする。予め定める範囲とは、例えば位相調整で用いるデジタル移相器の調整結果が±1ビットの範囲である。したがって、デジタル移相器の調整結果が±1ビットの範囲にあるものを同一グループとして扱うものとする。
これに加え、送信用の多素子アンテナでは、各アンテナ素子から出力される送信信号に対して基準となる受信系で受信した信号レベルによるグルーピングが可能である。また、受信用の多素子アンテナでは、基準となる送信系から出力される送信信号を各アンテナ素子で受信して得られる信号レベルによるグルーピングが可能である。
ここで、基準となる受信系および基準となる送信系は、多素子アンテナ内の任意のアンテナ素子に付随するものである。任意のアンテナ素子とは、全アンテナ素子の中心に配置されるアンテナ素子、全アンテナ素子の四隅に配置されるアンテナ素子、アンテナ素子の垂直方向および水平方向の各配列内にある1つのアンテナ素子、または各サブアレイアンテナ単位で構成されるアンテナ素子の中心に配置されるアンテナ素子などである。
多素子アンテナの構造に基づいてグルーピングする方法としては、基準となるアンテナ素子から等距離にあるアンテナ素子毎のグルーピング、水平方向または垂直方向で同一位置に配置されるアンテナ素子毎のグルーピング、テーパー形状を施したサブアレイアンテナでの電力分布によるグルーピング、ならびに偏波アンテナ構成時における垂直偏波および水平偏波毎のグルーピングなどがある。
基準となるアンテナ素子からの距離によるグルーピングを適用した場合、アンテナグループ毎に実行する調整に対して、許容精度を緩和することが可能である。テーパー形状を施したサブアレイアンテナは、アンテナ放射パターンのサイドロープレベルを抑圧するために、多素子アンテナ内で電力分布に重み付けをした構成となっている。したがって、ビーム形状を決める、中央に位置して送信出力が大きい主要なアンテナ素子をグルーピングし、この主要アンテナのみをキャリブレーションする。これによって、アンテナ素子の位相および振幅の調整時間の短縮を図ることが可能となる。
偏波アンテナ構成においては、垂直偏波および水平偏波のそれぞれの電波が直交関係にあることから、同時に信号を送受信しても相互に干渉する影響が低い。したがって、偏波毎にアンテナ素子をグルーピングすることによって、垂直アンテナおよび水平アンテナを同時にキャリブレーションすることができる。
以上のようなグルーピングを行ったアンテナ素子グループのキャリブレーションの方法について、以下に説明する。
送信用多素子アンテナのキャリブレーションを実行する場合、各アンテナグループ内のアンテナ素子のうち、任意の1つのアンテナ素子がcal-RSを送信して、基準となる受信系で信号を受信することによって得られたキャリブレーションの結果を、同一グループ内の全てのアンテナ素子に反映する。
受信用の多素子アンテナのキャリブレーションを実行する場合、基準となる送信系から出力されるcal-RSを、グループ内のアンテナ素子のうち、任意の1つのアンテナ素子で受信する。そして、受信して得られたキャリブレーションの結果を、同一グループ内の全てのアンテナ素子に反映する。
図38は、実施の形態7における物理下り共有チャネル領域に各アンテナグループのcal-RSをマッピングした場合のサブフレームの構成の一例を示す図である。図38において、横軸は時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。
図38では、サブフレームを参照符号「7101」で示し、シンボルタイミングを参照符号「7102」で示し、CRSを参照符号「7105」で示している。1サブフレームのうち、先頭の3シンボルがPDCCH領域7103であり、以降の11シンボルがPDSCH領域7104である。
図38では、実施の形態6で開示したLTEの物理下り共通チャネルの領域にcal-RSをマッピングした例とは異なり、cal-RSを各アンテナグループ用に配置した例である。cal-RSを除く、物理下りチャネルの構成は、図35と同じであるので、説明を省略する。
図38では、PDSCHをマッピングせずに、アンテナグループ毎のcal-RSをマッピングする例を示している。PDSCH領域7104にPDSCHをマッピングせずに、第1アンテナグループ#1のcal-RS7106、第2アンテナグループ#2のcal-RS7107、第3アンテナグループ#3のcal-RS7108、および第4アンテナグループ#4のcal-RS7109をマッピングする。
ここでは、基地局は、アンテナグループ毎のcal-RS7106~7109をマッピングしたシンボルタイミングで、全ての周波数領域にわたってcal-RSをマッピングする例を示している。
以上に述べたように、アンテナ素子をグルーピングし、アンテナグループ毎にcal-RSを設定するので、全アンテナ素子毎にcal-RSを用いる場合に比べて、cal-RSの数が削減される。これによって、アンテナ素子の位相および振幅の調整時間を削減することができる。また、cal-RSの数が削減されることによって、オーバーヘッドによる通信性能の劣化を防ぐことができる。
また、キャリブレーションによる調整結果でグルーピングする方法と、多素子アンテナの構造に基づいてグルーピングする方法とを併用することによって、アンテナ素子の位相および振幅の調整精度の緩和、アンテナ素子の位相および振幅の調整の簡略化などが可能となる。これによって、キャリブレーションに要する時間の短縮を図ることが可能となる。
以上のように本実施の形態によれば、キャリブレーション部であるPHY処理部は、複数のアンテナ素子をグループに分け、グループ毎にcal-RSを設定する。これによって、cal-RSの増加を抑えることができる。したがって、キャリブレーションに要する時間の増加を抑えることができる。また、実際の通信に使用できる下り物理領域の減少を防ぎ、通信性能を確保することができる。
実施の形態8.
実施の形態8では、実施の形態2,3,6において多素子アンテナを構成する各アンテナ素子に、シンボルタイミングで全ての周波数領域にわたってマッピングされているcal-RSを部分的に間引いて配置する例を開示する。
図39は、実施の形態8における物理下り共有チャネル領域の周波数軸上の一部分にcal-RSをマッピングした場合のサブフレームの構成の一例を示す図である。図39において、横軸は時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。
図39では、サブフレームを参照符号「8101」で示し、シンボルタイミングを参照符号「8102」で示し、CRSを参照符号「8105」で示している。1サブフレームのうち、先頭の3シンボルがPDCCH領域8103であり、以降の11シンボルがPDSCH領域8104である。
図39は、実施の形態6で開示したLTEの物理下り共通チャネルの領域にcal-RSを全周波数領域にわたってマッピングした例に対して、cal-RSを周波数軸上で間引いて配置した例である。cal-RSを除く、物理下りチャネルの構成は、図35と同じであるので、説明を省略する。
図39では、PDSCH領域8104にPDSCHをマッピングせずに、アンテナ素子のcal-RSを周波数軸上で周期的に間引いてマッピングする例を示している。PDSCH領域8104にPDSCHをマッピングせずに、第1アンテナ素子#1のcal-RS8106、第2アンテナ素子#2のcal-RS8107、第3アンテナ素子#3のcal-RS8108、および第4アンテナ素子#4のcal-RS8109を、シンボルタイミングで周波数軸上において周期的に間引いてマッピングする。
各アンテナ素子用のcal-RSを配置する方法としては、周波数軸上で周期的に間引いて配置する方法に代えて、各アンテナ素子の周波数特性に応じて固定周波数に配置してもよい。
このように、各アンテナ素子のcal-RSを周波数軸上で間引くことによって、物理下り共通チャネル領域に配置されるcal-RSの数が削減される。これによって、他のチャネルを配置することが可能となり、オーバーヘッドによる通信性能の劣化を防ぐことができる。
図40は、実施の形態8における物理下り共有チャネル領域の周波数軸上の一部分にcal-RSをマッピングした場合のサブフレームの構成の他の例を示す図である。図40では、各アンテナ素子のcal-RSを周波数軸上で周期的に間引いて配置するときに、複数のアンテナ素子のcal-RSを同一のシンボルタイミング内に配置した場合を示す。
図40において、横軸は時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。図40では、サブフレームを参照符号「8201」で示し、シンボルタイミングを参照符号「8202」で示し、CRSを参照符号「8205」で示している。1サブフレームのうち、先頭の3シンボルがPDCCH領域8203であり、以降の11シンボルがPDSCH領域8204である。
図40では、PDSCH領域8204にPDSCHをマッピングせずに、第1アンテナ素子#1のcal-RS8206、第2アンテナ素子#2のcal-RS8207、および第3アンテナ素子#3のcal-RS8208を、同一のシンボルタイミング内の周波数軸上に周期的に配置する。
このように同一のシンボルタイミング内に、複数のアンテナ素子のcal-RSを配置することによって、シンボルタイミング単位でcal-RSを処理することが可能となり、まとまったチャネル領域の確保が可能となる。これによって、処理負荷を軽減することができ、通信性能の向上を図ることができる。
また、前述の実施の形態7と本実施の形態とを組合せて、同一の周波数特性を有するアンテナ素子をグルーピングし、グループ内の任意の1つのアンテナ素子について周波数軸上で間引いて配置されたアンテナ素子グループ毎のcal-RSを用いて、キャリブレーションを実行してもよい。
図41は、実施の形態8における物理下り共有チャネル領域の周波数軸上の一部分に各アンテナグループのcal-RSをマッピングした場合のサブフレームの構成の一例を示す図である。図41において、横軸は時間tを表し、縦軸は周波数fを表す。図41では、サブフレームを参照符号「8301」で示し、シンボルタイミングを参照符号「8302」で示し、CRSを参照符号「8305」で示している。1サブフレームのうち、先頭の3シンボルがPDCCH領域8303であり、以降の11シンボルがPDSCH領域8304である。
図41は、LTEの物理下り共通チャネルの領域に各アンテナグループ毎の周波数軸上で間引かれたcal-RSを配置する例である。
図41では、PDSCH領域8304にPDSCHをマッピングせずに、第1アンテナグループ#1のcal-RS8306、第2アンテナグループ#1のcal-RS8307、第3アンテナグループ#3のcal-RS8308、および第4アンテナグループ#4のcal-RS8309を、周波数軸上で間引いて配置する。
このような構成にすることによって、物理下り共通チャネル領域に配置されるcal-RSの数が削減される。これによって、キャリブレーションに要する時間の短縮を図ることができ、オーバーヘッドによる通信性能の劣化を防ぐことができる。
また、周波数軸上で間引いて配置したcal-RS以外をヌル(null)にすることによって、送信電力を大きくすることが可能となり、SNRの改善を図ることができる。これによって、通信性能の向上を図ることができる。
以上のように本実施の形態によれば、キャリブレーション部であるPHY処理部は、cal-RSを、サブフレームの全周波数領域の一部分に配置する。換言すれば、PHY処理部は、全周波数領域にわたってマッピングされているcal-RSを、部分的に間引いて配置する。これによって、キャリブレーションに要する時間を削減することができる。また、オーバーヘッドによる通信性能の劣化を防ぐことができる。
前述の実施の形態では、キャリブレーション用に設定されるリソースの単位をサブフレームとして説明しているが、サブフレームに限らず、システムにおける送信時間単位でもよい。例えば、TTI、スロット、またはシンボルであってもよい。また、送信時間単位の整数倍であってもよい。
前述の実施の形態では、cal-RS用のリソース単位をシンボルとして説明しているが、シンボルに限らず、システムにおける基本時間単位でもよい。また、基本時間単位の整数倍であってもよい。例えば、OFDMでは、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform:FFT)のタイミングであってもよい。例えば、LTEでは、Ts(basic time unit)であってもよい。
このようにすることによって、時間軸上において柔軟なキャリブレーションを行うことが可能となる。したがって、運用中のキャリブレーションの実行を容易にし、キャリブレーションの精度を向上させることが可能となる。これによって、多素子アンテナを用いたMIMOおよびビームフォーミングの性能をさらに向上させることが可能となる。
前述の各実施の形態およびその変形例は、本開示の例示に過ぎず、本開示の範囲内において、各実施の形態およびその変形例を自由に組合せることができる。また各実施の形態およびその変形例の任意の構成要素を適宜変更または省略することができる。このように各実施の形態およびその変形例を自由に組合せたり、各実施の形態およびその変形例の任意の構成要素を適宜変更または省略したりすることによって、運用環境に応じたキャリブレーションを適宜行うことが可能となり、多素子アンテナを用いたMIMOおよびビームフォーミングの性能をさらに向上させることが可能となる。
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、限定的なものではない。例示されていない無数の変形例が、想定され得るものと解される。