JP7048061B1 - 炭素材とタングステン材の接合体とその製造方法 - Google Patents

炭素材とタングステン材の接合体とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属製の中間材を介して炭素材とタングステン材を接合して接合強度を高めた炭素材とタングステン材の接合体と、その製造方法を提供する。【解決手段】炭素材とタングステン材とを接合した接合体10は、炭素材11とタングステン材12の間に配置したFe,Ti, Ti 合金,Cr, V, Mo, Cu, Re, Zr, Ni のうちの何れかの金属材料製の中間材13を介して接合されている。炭素材11とタングステン材12との接合は、放電プラズマ焼結法に基づくパルス放電焼結機を用いて、炭素材11とタングステン材12と中間材13を加圧しつつパルス通電による加熱を行って接合する。【選択図】図5

Description

本発明は、炭素材とタングステン材の接合体と、その接合体の製造方法に関する。
核融合炉のダイバータ板のように、高温のプラズマに晒される部位には、耐熱性に優れ低放射化特性、高熱伝導性を有する材料である黒鉛や炭素繊維複合材料などの炭素材が適用される場合がある。
しかし、この炭素材をダイバータ板に用いると、プラズマによるスパッタリングにより表面に損傷を受け易く、また、トリチウムを保持し易いという問題があった。
そこで、炭素材の表面を、耐熱性の金属材料で被覆することが提案され、その被覆材料として、耐スパッタリング特性に優れ、水素同位体との化学親和性が低く、高融点、高熱伝導であり、炭素材と熱膨張係数も近いタングステンが好適であると想定されている。
特許文献1には、炭素繊維複合材料層とタングステン層を接合した炭素材とタングステン材の接合体であって、炭素繊維複合材料層とタングステン層の間に、SiCとYとAlを含む接合層を配置し、焼結法により接合した炭素材とタングステン材の接合体が開示されている。
特許文献2には、炭素材の表面にシリコン層を介してタングステン材を接合する接合技術が開示されている。
特許第6380756号公報 特開2019-51524号公報
前記のように、核融合炉のダイバータ板等では、炭素材の表面を、耐スパッタリング特性に優れ、水素同位体との化学親和性が低く、高融点、高熱伝導であり、炭素材と熱膨張係数も近い耐熱性のタングステン材で被覆することが提案されている。
しかし、炭素材とタングステン材とを焼結法や拡散法で直接接合することは困難で、炭素材とタングステン材との間に配置する中間材に、種々のセラミックス等の非金属材料を適用することが提案されて来たが、これまで中間材として耐熱性に優れる金属材料を適用し十分な接合強度を発揮可能な炭素材とタングステン材の接合体は提案されておらず、その炭素材とタングステン材の接合体の製造方法であって製造技術的に有利な製造方法も提案されていない。
特許文献1の炭素材とタングステン材の接合体においては、炭素繊維複合材料層と粉体のタングステン層の間に、セラミックスの接合層を配置し、1700℃や1800℃或いはそれ以上の温度で焼結して接合している。
例えば、純タングステンは、二次再結晶(以下、再結晶という)による粒の粗大化が始まるとされる温度(再結晶温度)が、1800K(1527℃)とされている。
上記焼結温度は純タングステンの再結晶温度を大幅に越えているため、タングステンが脆くなり易いため、必要な接合強度が得られるか否か疑問である。しかも、粉体のタングステン層を採用するため、大型部品の製造に適しておらず、製造コストも高くなる。
特許文献2の接合技術では、炭素材料の表面にシリコン層を介してタングステン材料を接合するため、接合部はWSiやSiC等の非金属を介して接合されるから、金属を介して接合する場合に比べて接合強度を高めることが難しい。しかも、Siのスラリーや粉体を用いて接合するため、製作時における接合の生産性を高めるのが難しく、製造コストが高くなる。
本発明の目的は、金属製の中間材を介して炭素材とタングステン材を接合して接合強度を高めた炭素材とタングステン材の接合体と、その製造方法を提供することである。
本願の第1発明は、炭素材とタングステン材とを接合した炭素材とタングステン材の接合体であって、炭素材とタングステン材の間に配置したチタン製の中間材を介して接合されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、炭素材とタングステン材とをチタン製の中間材を介して接合するため、タングステン材とチタン製の中間材とは強固に接合され、炭素材とチタン製の中間材とは金属炭化物を介して接合される。そのため、接合強度に優れる炭素材とタングステン材の接合体が得られる。
上記の第1発明に、次のような好ましい形態を採用可能である
第1の形態では、前記炭素材の接合される表面に微細な溝が形成され、この微細な溝を介して前記炭素材と前記中間材が接合されている。
このように微細な溝を介して炭素材と中間材を接合する場合には、炭素材と中間材との接合面積が大きくなるため、またアンカー効果も作用するため、炭素材に食い込んだ中間材により炭素材が補強されるため、強力な接合強度が得られる。
第2の形態では、前記微細な溝は0.08~0.3mmの深さと、0.1~0.3mmの幅を有する。
第3の形態では、前記中間材の厚みが0.05~0.3mmである。
第4の形態では、前記炭素材が人造黒鉛又は炭素繊維複合材料である。
第5の形態では、前記炭素材とタングステン材の接合体は、核融合炉のダイバータ板、リミター、第一壁のうちの何れか1つに用いられる。
の形態では、前記炭素材とタングステン材の接合体は、高温熱処理炉のヒートシンクと反射材のうちの何れか1つに用いられる。
本願の第2発明は、炭素材とタングステン材とを接合した接合体の製造方法であって、炭素材とタングステン材の間にチタン製の中間材を配置した状態で、加圧通電加熱法によって接合することを特徴としている。
上記のように、炭素材とタングステン材の間にチタン製の中間材を配置した状態で、加圧通電加熱法によって接合するため、液状ではなく、粉体状かシート状(箔)の中間材を採用すれば、能率的に炭素材とタングステン材の接合体を製造することができ、製造コストを低減可能である。作業性の面からは、シート状の中間材がより好ましい。尚、上記の加圧通電加熱法は、加圧通電加熱焼結法である。
上記の第2発明には、次のような好ましい形態を採用可能である。
第7の形態では、前記炭素材の接合される表面に微細な溝を形成しておき、この微細な溝を介して前記炭素材と前記中間材を接合する。
第8の形態では、前記加圧通電加熱法における焼結温度が1600℃以下である。
焼結温度が1600℃以下であって、タングステンの再度結晶温度(1527℃)から大きく逸脱しない温度であるため、タングステン材が脆くなることもなく、十分強力な接合強度を有する炭素材とタングステン材の接合体を製造することができる。
本願の第1,第2発明によれば、前記のような種々の効果が得られる。
本発明による炭素材とタングステン材の接合体からなるダイバータ板を組み込んだ核融合炉の要部の斜視図である。 図1のダイバータ板の正面図である。 図2のIII矢視図である。 図2のIV矢視図である。 実験的に製作される炭素材とタングステン材の接合体の斜視図である。 炭素材とその接合側端面に形成する溝パターンを示す斜視図である。 炭素材とその接合側端面に形成する溝パターンを示す斜視図である。 同心円溝と放射溝を含む溝パターンを示す説明図である。 同心正方形溝と放射溝を含む溝パターンを示す説明図である。 渦巻き溝と放射溝を含む溝パターンを示す説明図である。 横溝と縦溝からなる格子状の溝パターンを示す説明図である。 パルス通電焼結機の要部の正面図である。 比較例10の炭素材とタングステン材の接合体の破断箇所の拡大写真ある。 実施例10の炭素材とタングステン材の接合体の破断箇所の拡大写真である。 炭素繊維複合材料製の炭素材と試験片の説明図である。
以下、本願の第1,第2発明を実施するための実施形態について説明する。但し、本願の発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
炭素材とタングステン材とを接合した接合体であって、炭素材とタングステン材の間に配置した金属製の中間材を介して接合された炭素材とタングステン材の接合体を製作する。
接合する手法として加圧通電加熱法を用いる。加圧通電加熱法は、導電性の被加熱物を加圧しつつ直接電流を流し、被加熱物の内部抵抗によりジュール熱にて直接加熱して焼結接合するものである。
加圧通電加熱法として、放電プラズマ焼結法(以下SPS法ともいう、Spark Plasma Sintering)を好適に用いることができる。
SPS法は、大電流のオン-オフ直流パルス通電を被加熱物に印加して行うものである。
炭素材は、人造黒鉛、炭素繊維複合材料など市販のものを用いることができる。
また、熱膨張係数がタングステンの熱膨張係数と近い炭素材が好ましい。
この炭素材とタングステン材の接合体は、核融合炉のダイバータ板、リミッター、第一壁の何れか1つに用いることができるが、これらは、できるだけ熱伝導率が高い炭素材料で製作するのが好ましい。また、この炭素材とタングステン材の接合体は、高温熱処理炉のヒートシンクと反射材のうちの何れか1つに用いることができる。尚、この炭素材とタングステン材の接合体は上記の用途以外の種々の用途に適用可能なものである。
図1は、核融合実験炉に装備される複数のダイバータ板1であって、高温プラズマ流に対する遮熱部材としての複数のダイバータ板1を示すものである。
図2~図4に示すように、前記ダイバータ板1は、タングステン材2と炭素材3との間にチタン箔4を介在させて接合した菱形形状の板部材である。このダイバータ板1は2分割構造であり、冷却水管5を挟持した状態にして2本のボルト6により締結される。2本のボルト6は、円筒状の透孔7に挿入されたバーナット8に螺合される。尚、冷却水管5を保持する厚肉状の部分がヒートシンクに相当する。
接合体に用いるタングステン材は特に限定されず、市販のものを使用することができる。タングステン材は、タングステンだけでなく、タングステン-レニウム合金などのタングステン合金を含むものとする。タングステン材の厚みは、10mm以上の厚いものも接合可能である。
また、核融合炉のダイバータ板等に使用する場合は、タングステン材は10mm程度の厚さのものでよいが、必要以上に厚さを厚くする必要はなく、5mm又は1mm程度であってもよい。炭素材の厚みは、用途に応じて適宜決めればよい。
中間材としては、炭素材及びタングステン材の何れにも接合する金属を選択する。その種の金属として、Fe,Ti,Ti合金,Cr,V,Mo,Cu,Re,Zr或いはそれらの合金を挙げることができる。
これら金属は、シート状(箔)でもよく、粉末であってもよい。製作性を考慮すると箔を用いることが好ましい。箔の厚みは使用上(熱伝達の観点等)薄いほうが好ましいが、十分な接合強度が得られる厚みを選択する必要がある。
また、上記の種々の金属のうち、できるだけ融点が高く、箔の入手性がよいものが好ましい。その観点から、本実施形態では、例えば、チタン(但し、チタン合金を含む)を採用して炭素材とタングステン材の接合体を製作し、炭素材とタングステン材の接合体の性能を評価する実験を行った。
チタン箔の厚みとしては、0.05mm~0.3mm程度が好ましい。0.05mm以下になると入手性が問題となる他、十分な接合強度が得られにくくなる。0.3mmを越えると、熱伝達が阻害され易くなる。
炭素材の接合される表面に微細な溝を形成することができる。これによって、炭素材の表面と中間材の表面とが接触する面積が増えることにより接合強度を高めることができる。また、別の効果として、所謂アンカー効果による強度向上も期待できる。
溝は、例えば、深さ0.08~0.3mm、幅0.1~0.3mmとすることができるが、これらの諸寸法に限定されるものではない。溝は複数の同心円状、同心正方形状、格子状、渦巻き状とすることができ、もっと複雑な形状にすることもできる。
尚、溝の代わりに、微細な浅い穴を小間隔で形成してもよい。
SPS法による接合処理において、温度、加圧圧力、保持時間を設定する必要がある。なお、接合時の雰囲気は真空中かアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とする。炭素材は、酸素の存在下では、約400℃から酸化による劣化が起こるからである。接合処理における温度は、少なくとも必要な接合強度が得られる温度であることが求められる。
核融合炉のダイバータ板においては、タングステンの再結晶が起こらない条件で接合することが望ましい。タングステンの再結晶の発生は、加熱温度と保持時間が問題となる。
1700℃では30分間の保持時間でもタングステンの結晶が粗大化し、再結晶の発生が認められた。一方、1600℃では30分間の保持時間ではタングステンの再結晶が認められなかった。また、1600℃で120分間の保持時間ではタングステンの結晶が粗大化が一部認められた。従って、1600℃では、30分程度の保持時間とすることが好ましい。温度は1600℃以下であることが好ましい。
但し、後述する表2の実施例5に示すように、加熱温度が1700℃で、タングステンの再結晶が生じても、炭素材とタングステン材の接合体の接合強度について必要な剪断強度(例えば、5MPa以上)が得られるので、1700℃前後の加熱温度を排除するものではない。
チタン製の中間材を用いる場合は、1600℃以下であって、1450℃以上にすることが望ましい。1450℃未満であると中間材とタングステン材の間、或いは中間材と炭素材の間で元素の拡散が起こりにくく、十分な接合強度が得られにくい。圧力は、装置から許されるものでよいが、10~30MPa程度であることが好ましい。
放電プラズマ焼結法によるチタン製中間材を用いる炭素材とタングステン材の接合
使用装置:パルス通電焼結機LABOX-325R(株式会社シンターランド製)
最大加圧力30kN,最大パルス電流出力2500A
炭素材とタングステン材の接合体10:図5参照
炭素材11:人造黒鉛 銘柄IG-430U(東洋炭素株式会社製), φ10×10tmm
炭素材の接合側表面に微細な溝を形成することができる。
例えば、溝深さ0.08~0.3mm,溝幅0.1~0.3mm
タングステン材12:φ10×10tmm,接合面粗さRa1.6
中間材13:チタン箔,タングステン材12と炭素材11との間にチタン製の中間材
13を設けるものとする。
厚み0.05mmのチタン箔を用いた。厚い層が必要な場合は、箔を重ねた。
尚、0.05mm以上の厚さの箔を用いることもできる。
炭素材11の接合側の端面に形成する微細な溝の形状について説明する。
図6の溝パターン:
4つの同心円の溝15であり、溝15の溝幅は0.5mm、ランド部16の幅は0.5mm、溝15の深さは0.1mm、中心の円形ランド部17の半径は1.0mmである。
図7の溝パターン:
4つの同心円の溝15Aであり、溝15Aの溝幅は0.5mm、ランド部16の幅は0.5mm、溝15Aの深さは0.2mm、中心の円形ランド部17の半径は1.0mmである。
図8~図11はその他の種々の溝パターンの例を示すもので、溝幅は0.2mm、溝深さは0.1mmである。尚、上記の溝パターン以外の種々の溝パターンも採用可能である。
図8の溝パターンにおいて溝22、23は太線で示されている。この溝パターンは同心多重円溝22と8本の放射溝23を有する。
図9の溝パターンは同心多重正方形の溝24と、8本の放射溝25を有する。
図10の溝パターンは、渦巻き状の溝26と、8本の放射溝27を有する。
図11の溝パターンは、複数の等間隔の横溝28と複数の等間隔の縦溝29を有する。
パルス通電焼結機(LABOX-325R)(図12参照)
下部治具:
人造黒鉛製の第1スペーサ31(φ90×30tmm)、第2スペーサ32(φ60×15tmm)、第3スペーサ33(φ30×15tmm)
パンチ34(汎用材の人造黒鉛)(φ10×20tmm)
上部治具:
人造黒鉛製の第1スペーサ35(φ90×30tmm)、第2スペーサ36(φ60×15tmm)、第3スペーサ37(φ30×15tmm)
パンチ38(汎用材の人造黒鉛)(φ10×20tmm)
ケーシング30: 上下の第1~第3スペーサ31、32、33、35、36、37及びパンチ34、38の周囲を気密に覆う。
加圧ユニット:加圧部材39を加圧駆動
パルス電源:上下1対の電極(図示略)から上下のパンチ34、38に高圧パルスを印加し、加圧通電加熱により炭素材11と中間材13とタングステン材12とを接合する。
冷却機構: 少なくとも上下のパンチ34、38を空冷又は水冷により冷却する。
真空ユニット:ケーシング30内空間を真空にする。
その他の部材:カーボンシート 0.2tmm (パンチ34の上に1枚、タングステン材12の上に1枚)
筒状カーボンフェルト40(側面に一重)
温度測定:放射温度計41で炭素材とタングステン材の接合体10の接合部付近の側面を測定。
処理条件の例
雰囲気:真空、又はArガス 尚、真空における真空度は20Pa前後である。
加圧力:例えば30MPa(2.4kN)、保持温度での保持時間:例えば30分
昇温速度:室温~600℃は200℃/min,
600℃~1000℃は100℃/min
1000℃~(保持温度-50℃)は50℃/min
(保持温度-50℃)~保持温度は25℃/min
炭素材とタングステン材の接合体10の接合部の剪断強度の評価について
接合部の剪断強度の評価は、島津製作所製の油圧材料試験機(型式:UH100kNNC)を用いて行った。今回の炭素材とタングステン材の接合体10はφ10×20tmmであり、長手方向の中央部が接合部である。
剪断モードでクロスヘッドスピード1mm/分にて応力を掛けて剪断強度を測定した。剪断強度が高い程接合の度合いが高い。炭素材11の部位での破壊は、接合の度合いが十分高いことを示す。
接合条件と接合部の剪断強度の測定結果
表1~表9に実施例1~25と比較例1~16についての各種データを示す。
「実施例」は剪断強度が5MPa(但し、小数点以下四捨五入した値)以上のもの、「比較例」は剪断強度が5MPa未満のものを示す。
Figure 0007048061000002
表1は、炭素材11とタングステン材12とを直接接合し、接合部の剪断強度を測定した比較例1~8の試験結果を示す。
中間材:無し
炭素材接合面の溝加工:無し
雰囲気:真空、保持温度:1000~2000℃、圧力:10MPa,30MPa
保持時間:5分,30分
1000~2000℃の保持温度でも必要な剪断強度を有する接合が得られない。
但し、保持温度が高くなる程剪断強度が高くなる傾向が見られる。
Figure 0007048061000003
表2は、炭素材11とタングステン材12の間に中間材13(チタン箔)を挟着した状態で接合し、接合部の剪断強度を測定した実施例1~5と比較例9の試験結果を示す。
中間材13:チタン(Ti)箔を1枚(0.05mm)、3枚(0.15mm)
炭素材11の接合面の溝加工:無し
雰囲気:真空、保持温度1500~1700℃
圧力:30MPa,比較例9では60MPa
保持時間:30分、実施例3では120分
チタン箔を中間材13として配置することにより、高い剪断強度を示した。
実施例3,4を比較するとチタン箔が厚い方が、高い剪断強度を示した。
破断はすべてチタン箔と炭素材11の界面に発生した。
比較例9では、圧力が60MPaであるが、そのときの剪断強度が2.80MPaであった。実施例2と比較してかなり低い値となった。
IG-430Uの炭素材11の圧縮強度(代表値)が90MPaである。例えば、圧縮強度の半分以上の圧力をかけると、炭素材11の組織が微細に影響を及ぼして強度低下を招いた可能性が考えられる。
このように、チタン箔の中間材13を介して炭素材11とタングステン材12とを接合すると、適切な加圧力で加圧する限り、接合部の強度は必要な剪断強度(例えば、5MPa)以上になる。因みに、炭素材11の接合面を荒らした他は、実施例2と同条件で試験した場合は剪断強度に大きな差異は認められなかった。
接合部界面の2000倍拡大の電子顕微鏡写真(図示略)によれば、実施例1のものでは、結晶粒が繊維状に伸びているのに対し、実施例5のものでは、結晶粒が丸くなっている。これは、1700℃以上の温度では、タングステンの再結晶化が生じるためである。
Figure 0007048061000004
表3は、炭素材11とタングステン材12の間に中間材13を配置し、炭素材11の接合面に格子溝(図11参照)を形成して接合し、接合部の剪断強度を測定した実施例6~8の試験結果を示す。
中間材13:チタン箔を3枚(0.15mm)
炭素材11の接合面の微細な格子溝加工:
格子溝(a):溝幅0.2mm,深さ0.1mm,間隔0.2mm(ピッチ0.4mm)
格子溝(b):溝幅0.2mm,深さ0.1mm,間隔0.4mm(ピッチ0.8mm)
圧力:格子溝(a)のとき10MPa,30MPa、格子溝(b)のとき30MPa
雰囲気:真空,保持温度:1600℃,保持時間:30分
炭素材11の接合面に微細な格子溝加工を施すことにより、高い剪断強度を示した。
圧力は、10MPaと30MPaとで顕著な差異は認められなかった。
Figure 0007048061000005
表4は、炭素材11とタングステン材12の間に中間材13を配置し、炭素材11の接合面に微細な溝加工(図8参照)を施して接合し、接合部の剪断強度を測定した比較例10と実施例9~12の試験結果を示す。
中間材13:チタン箔を3枚(0.15mm)
炭素材11の接合面の溝加工:微細な多重同心円溝と放射溝
同心円溝:溝幅0.2mm,深さ0.2mm,間隔0.2mm(ピッチ0.4mm)
放射溝:溝幅0.2mm,深さ0.2mm
雰囲気:真空、圧力:30MPa、温度:1400~1600℃、保持時間:30分
炭素材11の接合面に微細な溝加工を施すことにより、保持温度が1450~1600℃で高い剪断強度を示した。1400℃では十分な接合がなされていなかった。保持温度は1500℃以上であることが剪断強度面から望ましい。
破断箇所は、比較例10と実施例9ではチタン箔と炭素材11の界面、実施例10ではチタン箔と炭素材11の界面と炭素材部分、実施例11,12では炭素材部分であった。
図13は比較例10の接合体10の破断箇所の拡大写真であり、炭素材11のバルク側破面とタングステン材12のバルク側破面には、炭素材11の溝パターンが印字されていた。図14は実施例10の接合体10の破断箇所の拡大写真であり、接合強度が高いため、炭素材11のバルクの下部が破断していた。
Figure 0007048061000006
表5は、炭素材11とタングステン材12の間に中間材13を配置し、炭素材11の接合面に微細な溝加工を施して接合し(1500℃の保持温度にて圧力とチタン箔の厚みを変えて試験)、接合部の剪断強度を測定した比較例11と実施例10,13の試験結果を示す。
中間材:チタン箔を3枚(0.15mm)及び5枚(0.25mm)
炭素材接合面の溝加工:微細な多重同心円溝と放射溝形成 (表4の溝加工と同じ)
保持温度が1500℃において、チタン箔が0.15mmの場合は、圧力が20MPa であっても高い剪断強度が得られた。
破断箇所は、比較例11では炭素材11とチタンの界面であった。実施例13では炭素材部分であった。
Figure 0007048061000007
表6は、炭素材11とタングステン材12の間に中間材13を配置し、炭素材11の接合面に微細な溝加工を施して接合し(圧力とチタン箔の厚みを変えて試験)、接合部の剪断強度を測定した比較例12~14と実施例12,14~20の試験結果を示す。
中間材:チタン箔(厚さ0.05mm)を1枚,2枚、3枚,4枚,5枚
炭素材接合面の加工:微細な多重同心円溝と放射溝形成 (表4の溝加工と同じ)
雰囲気:真空、圧力:10~40MPa、温度:1600℃、保持時間:30分
チタン箔が0.15mmの場合、10~40MPaの圧力の範囲では剪断強度はほぼ一定の高い値であった(実施例12,14,15,20参照)。
表2に示した比較例9において圧力60MPaの場合に、剪断強度が顕著に低くなることに鑑みると、圧力を40MPaより更に高めると、剪断強度が必要な剪断強度以下に低下すると推定される。
微細な溝加工を施した場合、チタン箔が0.05mmでは剪断強度が低い(比較例12,実施例17参照)。破断箇所は何れも炭素材11とチタン箔の界面部分であった。
微細な溝加工を施し且つチタン箔が0.25mmの場合、実施例16では圧力が20MPaのときは高い剪断強度であったが、比較例13では圧力が30MPaのときは低い剪断強度であった。尚、表5に示す比較例11の場合、チタン箔0.25mmで、保持温度1500℃、30MPaの条件で低強度であった。
破断箇所は、実施例14,16,18の場合、炭素材部分であった。
Figure 0007048061000008
表7は、炭素繊維複合材料製の炭素材11とタングステン材12の間に中間材13を配置して接合し、接合部の剪断強度を測定した比較例15,16と実施例21,22の試験結果を示す。
ここで、図15に示すように、炭素繊維複合材料は炭素繊維製のフェルト45を図15において上下方向に加圧しつつ積層して製作される。表7における接合面が「フェルト断面」とは、接合体である試験片aのように試験片aの長手方向がフェルト面と平行方向に向けられたものを示し、接合面が「フェルト平面」とは、試験片bのように試験片bの長手方向がフェルト積層方向に向けられたものを示す。
炭素繊維複合材料:商品名TCC-123U(東洋炭素株式会社製)
炭素繊維フェルトに熱分解炭素を化学気相浸透法にて含浸させ、黒鉛化処理したもの。
かさ密度:1.49g/cm
中間材:チタン箔を3枚(0.15mm)
炭素材の接合面の加工:無し
1600℃、圧力10MPaの条件で良好な接合体が得られた。破断箇所は、実施例21では炭素材11とチタン箔の界面であり、実施例22では炭素材部分であった。
圧力を高めて30MPaにすると剪断強度が低下した。破断箇所は、比較例15,16何れも炭素材とチタン箔の界面であった。
Figure 0007048061000009
表8は、炭素材11とタングステン材12の間に中間材13を配置し、炭素材11の接合面に微細な浅い穴加工を施して接合し、接合部の剪断強度を測定した実施例23~25の試験結果を示す。各実施例において2個ずつの試験片について試験した。
中間材:チタン箔(厚さ0.05mm)を3枚
炭素材11の接合面の加工:微細な浅い穴を微細なパターンで形成
穴加工(a)φ0.2mm、深さ0.2mmの穴をピッチ0.4mmで全面に形成
穴加工(b)φ0.2mm、深さ0.1mmの穴をピッチ0.8mmで全面に形成
穴加工(c)φ0.2mm、深さ0.2mmの穴をピッチ0.8mmで全面に形成
雰囲気:真空、圧力:30MPa、温度:1600℃、保持時間:30分
実施例23~25は、炭素材11の接合面に穴加工した点以外は、表2の実施例4と同様の条件で行ったものであるが、実施例4の剪断強度8.78MPaより高い剪断強度が得られたのは実施例24の試験片1個だけであった。炭素材11の接合面への穴加工の効果は認められなかった。
Figure 0007048061000010
表9は、炭素材11とタングステン材12の間にチタン箔とチタンろう又はチタンろうを配置し、炭素材11の接合面に溝加工なしで接合し、接合部の剪断強度を測定した参考例1~3の試験結果を示す。チタンろうは、東京ブレイズ株式会社製のものを用いた。
この参考例1~3のようにろう付けによっては剪断強度を十分に高めることが難しいものと推定される。
以上説明した実施例1~25と比較例1~16から次のことが分かる。
炭素材11とタングステン材12との放電プラズマ焼結法による接合において、接合を可能にするためには炭素材11とタングステン材12の界面に金属製の中間材13を配置して焼結することが望ましい。
中間材13としては、Fe,Ti, Ti合金,Cr, V, Mo, Cu, Re, Zr, Ni のうちの何れかの金属材料製の中間材が好ましいが、チタン製の箔(チタン箔)が特に好ましい。
チタン箔の厚みは、炭素材11の種類や界面の加工、接合条件によって好適な厚みが異なるが、厚すぎても薄すぎても接合強度(剪断強度)が低くなる。
炭素材11が人造黒鉛である場合、接合面に溝加工を施すことにより剪断強度を高めることができる。溝は幅、深さ、ピッチ(間隔)や形状を適切に設定する必要がある。
微細な溝加工であることがより好ましい。炭素材11の接合面を荒らすことは効果がなかった。炭素材11の接合面に微細な穴加工を施しても、効果は少なかった。
炭素材11が炭素繊維複合材料である場合は、微細な溝加工はむしろ剪断強度を低下させた。
接合のパラメータの内、保持温度は1450℃以上であることが好ましい。炭素材11が人造黒鉛の場合、1500~1600℃でほぼ同じ剪断強度が得られ、圧力は10~40MPaでほぼ同じ剪断強度が得られた。圧力が高すぎるとむしろ剪断強度が低くなる。
材料強度が低い炭素繊維複合材料では、10MPa程度がよく、30MPaでは剪断強度が低くなった。
保持時間は30分程度でよい。素材の種類、大きさや保持温度等の条件によって調整が必要と考えられる。
保持温度1600℃で、タングステンの再結晶化による組織の粗大化認められる場合と、そうでない場合があった。
前記実施形態は、核融合炉のダイバータ板に適用する炭素材とタングステン材との炭素材とタングステン材の接合体について説明したが、本発明は上記の炭素材とタングステン材の接合体以外の種々の用途に用いる種々の炭素材とタングステン材の接合体にも適用可能である。
当業者ならば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加して実施可能であり、本発明はそのような変更形態をも包含するものである。
10 炭素材とタングステン材の接合体
11 炭素材
12 タングステン材
13 中間材

Claims (10)

  1. 炭素材とタングステン材とを接合した炭素材とタングステン材の接合体であって、炭素材とタングステン材の間に配置したチタン製の中間材を介して接合されていることを特徴とする炭素材とタングステン材の接合体。
  2. 前記炭素材の接合される表面に微細な溝が形成され、この微細な溝を介して前記炭素材と前記中間材が接合されていることを特徴とする請求項1に記載の炭素材とタングステン材の接合体。
  3. 前記微細な溝は0.08~0.3mmの深さと、0.1~0.3mmの幅を有することを特徴とする請求項2に記載の炭素材とタングステン材の接合体。
  4. 前記中間材の厚みが0.05~0.3mmであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の炭素材とタングステン材の接合体。
  5. 前記炭素材が人造黒鉛又は炭素繊維複合材料であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の炭素材とタングステン材の接合体。
  6. 前記炭素材とタングステン材の接合体は、核融合炉のダイバータ板、リミター、第一壁のうちの何れか1つに用いられることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の炭素材とタングステン材の接合体。
  7. 前記炭素材とタングステン材の接合体は、高温熱処理炉のヒートシンクと反射材のうちの何れか1つに用いられることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の炭素材とタングステン材の接合体。
  8. 炭素材とタングステン材とを接合した接合体の製造方法であって、炭素材とタングステン材の間にチタン製の中間材を配置した状態で、加圧通電加熱法によって接合することを特徴とする炭素材とタングステン材の接合体の製造方法。
  9. 前記炭素材の接合される表面に微細な溝を形成しておき、この微細な溝を介して前記炭素材と前記中間材を接合することを特徴とする請求項8に記載の炭素材とタングステン材の接合体の製造方法。
  10. 前記加圧通電加熱法における焼結温度が1600℃以下であることを特徴とする請求項8又は9に記載の炭素材とタングステン材の接合体の製造方法。
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