JP7046397B2 - 水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物に関する。更に詳細には、本発明は、セメント、モルタル、コンクリート等の水硬性組成物の分散性、スランプ保持性、分離抵抗性を保持したまま、ブリーディング低減を可能にする水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物に関する。
従来、セメント、モルタル、コンクリート等の水硬性組成物の分散性の向上、スランプ保持性の向上、ブリーディング水の発生の抑制(ブリーディングの低減)等の水硬性組成物の物性を改善するために、各種の添加剤が提案されている(特許文献1)。
特開2001-89212号公報
しかしながら、従来の水硬性組成物用添加剤では水硬性組成物の分散性、スランプ保持性、分離抵抗性を保持したまま、ブリーディングを低減させることができないという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、水硬性組成物の分散性、スランプ保持性、分離抵抗性を保持したまま、ブリーディング低減が可能となる水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物を提供することである。
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の成分を含有する水硬性組成物用添加剤が好適であることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物が提供される。
[1] 下記共重合体(A)を含有し、
更に、下記共重合体(B)を含有する水硬性組成物用添加剤。
共重合体(A):構成単位(1)と、構成単位(2)とを含むビニル系単量体由来の構造を有するとともに、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤由来の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリエチレングリコール換算の質量平均分子量が100000以上2000000以下である共重合体。
構成単位(1):下記の一般式1で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成される構成単位
構成単位(2):不飽和カルボン酸及び/又はその塩から形成される構成単位であり、不飽和カルボン酸及び/又はその塩の80~100モル%が(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から選ばれる一つ又は二つ以上から形成される構成単位
Figure 0007046397000001
(但し、式中、R、R及びRは、同一又は異なる、水素原子、またはメチル基を表す。Rは同一又は異なる水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。pは0又は1の整数を表す。qは0~2の整数を表す。AOは炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nはAOの平均付加モル数であり、1~300の数を表す。)
共重合体(B):前記構成単位(1)と、前記構成単位(2)とを含むビニル系単量体由来の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリエチレングリコール換算の質量平均分子量が5000以上100000未満である共重合体。
[2] 前記疎水性連鎖移動剤由来の構造がアルキル鎖を有し、当該疎水性連鎖移動剤由来の構造の末端の少なくとも1つが、硫黄原子を介して、前記ビニル系単量体由来の構造の主鎖末端と結合した構造を有する[1]に記載の水硬性組成物用添加剤。
[3] 前記共重合体(A)の質量平均分子量が100000~600000である[1]又は[2]に記載の水硬性組成物用添加剤。
[4] 前記アルキル鎖の炭素数が8~22である[2]又は[3]に記載の水硬性組成物用添加剤。
[5] 構成単位(2)と構成単位(1)の質量比率が構成単位(2)/構成単位(1)=30/70~1/99である[1]~[4]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
(削除)
] 前記共重合体(A)の質量平均分子量Maと前記共重合体(B)の質量平均分子量Mbとが下記関係式を満たす[1]~[5]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
Ma-Mb≧80000
] 共重合体(A)と共重合体(B)の質量比率が共重合体(A)/共重合体(B)=1/99~30/70である[1]~[6]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
] [1]~[]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤を含有する水硬性組成物。
本発明の水硬性組成物用添加剤は、分散性、スランプ保持性、分離抵抗性を保持したまま、ブリーディングを低減させることができるという効果がある。
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
本発明の実施形態の水硬性組成物用添加剤は、下記共重合体(A)を含有するものである。
本実施形態で使用する共重合体(A)は、構成単位(1)と構成単位(2)とを含むビニル系単量体由来の構造を有するものである。
先ず、構成単位(1)について説明する。構成単位(1)は、下記の一般式1で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成される構成単位である。
Figure 0007046397000002
一般式1において、R、R及びRは、同一又は異なる、水素原子、またはメチル基を表す。Rは同一又は異なる水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。炭素数1~30の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、ベンゼン環を持つ炭素数6~30のアリール基等が挙げられる。本発明の効果をより一層発現する点で、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基が更に好ましい。
一般式1において、pは0又は1の整数である。qは0~2の整数である。
一般式1において、AOは炭素数2~18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2~3のオキシアルキレン基である。AOとしては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基、オキシプロピレン基である。AOが2種類以上の場合は、ランダム付加体、ブロック付加体、交互付加体のいずれの形態であってもよい。共重合体の水溶性を保つためには、一般式1において、オキシアルキレン基全体の50モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましい。一般式1において、nはAOの平均付加モル数を表し、1~300の数であり、好ましくは1~200の数であり、より好ましくは1~150の数である。
一般式1で示される単量体として、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレン(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノ(2-メチル-2-プロペニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3-メチル-ブテニル)エーテル、ポリエチレン(ポリ)プロピレングリコールモノ(2-メチル-2-プロペニル)エーテル等が好ましい。構成単位(1)を形成する一般式1で示される単量体は1種又は2種以上使用してもよい。
次に、構成単位(2)について説明する。構成単位(2)は、不飽和カルボン酸及び/又はその塩から形成される構成単位である。構成単位(2)を形成する不飽和カルボン酸及び/又はその塩としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、こはく酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)、こはく酸モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル)及びこれらの塩などが挙げられる。塩としては、特に制限するものではないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等のアミン塩などが挙げられる。構成単位(2)を形成する不飽和カルボン酸及び/又はその塩は1種又は2種以上使用してもよい。
構成単位(2)を形成する不飽和カルボン酸及び/又はその塩としては、全不飽和カルボン酸及び/又はその塩の全体の内80~100モル%が(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から選ばれる一つ又は二つ以上であり、全不飽和カルボン酸及び/又はその塩の全体の内90~100モル%が(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から選ばれる一つ又は二つ以上であるのが好ましく、全不飽和カルボン酸及び/又はその塩の全体の内95~100モル%が(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から選ばれる一つ又は二つ以上であるのが更に好ましい。
ブリーディング低減効果を十分に得るために、ビニル系単量体において、構成単位(2)と構成単位(1)の質量比率は、構成単位(2)/構成単位(1)=30/70~1/99であるのが好ましく、20/80~5/95であるのがより好ましい。
また、本実施形態で使用する共重合体(A)は、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤由来の構造を有するものである。ここで、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤由来の構造を有するとは、共重合体の末端に硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤由来の構造を有することであり、共重合体主鎖の水素ラジカル引き抜き後の連鎖移動反応により、主鎖に導入された疎水性連鎖移動剤由来の構造を含むことをいう。より具体的には、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤由来の構造が疎水基を有し、末端の少なくとも1つが、硫黄原子を介して、ビニル系単量体由来の構造の主鎖末端と結合した構造を有する。また、このような共重合体(A)は、一般式1で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上の単量体と、不飽和カルボン酸及び/又はその塩とを、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤の存在下において、水中で重合させて製造されるものでもある。
硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤由来の構造は、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤から形成される構造である。具体的には、n-ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、セチルメルカプタン、2-エチルヘキシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、ドコシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチルなどのメルカプトカルボン酸アルキルエステルなどが挙げられる。ブリーディング低減効果を十分に得るために、アルキルメルカプタンが好ましく、アルキル鎖の炭素数は、8~22であるのがより好ましい。なかでも、n-ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、セチルメルカプタン、2-エチルヘキシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、ドコシルメルカプタンが好ましい。
共重合体(A)100質量%に対して、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤由来の構造を有する共重合体の含有量は、10質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのがより好ましい。
共重合体(A)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリエチレングリコール換算の質量平均分子量が100000以上2000000以下とするものである。質量平均分子量が100000未満であると、水硬性組成物に対し分散性を発揮し、分散保持性が低下するおそれがあり、質量平均分子量が2000000を超えると、水硬性組成物の分散を大きく妨げるおそれがある。分散性、分散保持性及びブリーディング低減効果の観点から、質量平均分子量の好ましい範囲は、下限は100000以上であるのが好ましく、150000以上であるのがより好ましく、200000以上であるのが更に好ましい、上限は2000000以下であるのが好ましく、1000000以下であるのがより好ましく、600000以下であるのが更に好ましく、500000以下であるのが特に好ましい。
共重合体(A)は、その他の単量体から形成される構成単位を含んでも良い。その他の単量体は1種又は2種以上使用してもよい。このような単量体は、構成単位(1)、構成単位(2)を形成する単量体のうちの少なくとも一つと共重合可能であれば特に制限はなく、かかる単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類、(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類、マレイン酸やフマル酸等の不飽和ジカルボン酸と炭素数1~22のアルキル基やアルケニル基のアルコールとのモノエステルやジエステルとなる不飽和ジカルボン酸エステル類、不飽和カルボン酸や不飽和ジカルボン酸と炭素数が1~22であるアミンとのモノアミドやジアミドとなるアミド単量体類、アルキルジカルボン酸とポリエチレンポリアミンを縮合させたもの、活性水素を持つ窒素原子にエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加させたもの、(メタ)アクリル酸とのエステルやグリシジル(メタ)アクリレートと反応させたポリアミドポリアミン単量体類、(メタ)アリルスルホン酸やビニルスルホン酸及びそれらの塩などからなるスルホン酸系単量体類、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチルやリン酸-ビス[2―(メタクリロイルオキシ)エチル]およびそれらの塩などからなるリン酸系単量体類等が挙げられる。
共重合体(A)は、その他の単量体から形成される構成単位を全構成単位中に0~10質量%の割合で含むのが好ましい。
次に、共重合体(A)の製造方法について説明する。共重合体(A)の製造方法としては、ラジカル発生部位を有するラジカル重合開始剤の存在下で、上記ビニル系単量体を重合させる方法等が挙げられる。ラジカル発生部位を有するラジカル重合開始剤の存在下で、ビニル系単量体を重合させる方法においては、熱等によりアゾ基等のラジカル発生部位からラジカルが発生し、これによって重合が開始されることとなる。ラジカル重合に使用するラジカル重合開始剤は、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物や、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられ、重合反応温度下において分解し、ラジカルを発生するものであれば、その種類は特に制限されない。これらは、亜硫酸塩やL-アスコルビン酸等の還元性物質、更にはアミン等と組み合わせ、レドックス開始剤として使用することもできる。ラジカル重合開始剤の使用量は、その種類によって適宜調節すればよい。
上記ラジカル重合反応としては、セメント等の水硬性組成物は、水溶液として使用されるので、水を溶媒として使用する水溶液重合で行うのが好ましい。水溶液重合は、回分式でも連続式でも、また、これらの2種以上の組み合わせでもよい。ラジカル重合反応時における水溶液の濃度は、経済性の観点から、10~80質量%であるのが好ましく、20~80質量%であるのがより好ましく、30~80質量%であるのが更に好ましい。なお、水溶液の濃度とは、下記数式(1)で表される質量%をいう。
Figure 0007046397000003
ラジカル重合反応における反応温度は、ラジカル重合開始剤の種類に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではないが、好ましく0~120℃であり、より好ましくは20~100℃であり、更に好ましくは50~90℃である。
本発明の実施形態の水硬性組成物用添加剤は、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤を使用することが重要である。硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤を使用しない場合、構成単位(1)と、構成単位(2)とを含むビニル系単量体由来の構造を有するとともに、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤由来の構造を有する共重合体が重合されず、得られる水硬性組成物の分散性、スランプ保持性、分離抵抗性を保持したまま、ブリーディングを低減できないおそれがある。このような硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤としては、上記のものを使用することができる。
また、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤に加えて、その他の疎水性連鎖移動剤や親水性連鎖移動剤を併用することも好ましい。特に限定するものではないが、親水性連鎖移動剤として、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等の水溶性チオール類、2-アミノプロパン-1-オール等の第1級アルコール;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩などが挙げられる。その他の疎水性連鎖移動剤として四塩化炭素、四臭化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;α-メチルスチレンダイマー、α-テルピネン、γ-テルピネン、ジペンテン、ターピノーレン等の不飽和炭化水素化合物、特に、ブリーディング低減の観点から親水性連鎖移動剤を併用することが好ましく、なかでも、水溶性チオール類がより好ましく、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオグリセロールが特に好ましい。
所望の効果を効率的に得るためには、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤、その他の疎水性連鎖移動剤及び親水性連鎖移動剤を加えた連鎖移動剤の総量に対して、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤の使用量は、1~100モル%であるのが好ましく、10~100モル%であるのがより好ましく、40~80モル%であるのがさらに好ましい。
また、ラジカル重合反応に使用する各単量体成分の反応容器への添加方法としては、特に限定されず、例えば、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割又は連続投入する方法、一部を反応容器に反応初期に投入し、残りを反応容器に分割又は連続投入する方法のいずれであってもよい。また、ラジカル重合開始剤、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤、その他の疎水性連鎖移動剤、親水性連鎖移動剤は、反応容器に初めから投入してもよく、反応容器に滴下してもよく、また、これらを組み合わせてもよい。
本発明の実施形態の水硬性組成物用添加剤は、共重合体(A)に加えて、更に、下記共重合体(B)を含有する。
本実施形態で使用する共重合体(B)は、上記構成単位(1)と上記構成単位(2)とを含むビニル系単量体由来の構造を有する。
共重合体(B)は、水硬性組成物の分散性の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリエチレングリコール換算の質量平均分子量が5000以上100000未満であり、6000以上70000未満とするのが好ましい。
共重合体(B)は、更に、上記その他の単量体から形成される構成単位を含むことも好ましい。なお、共重合体(B)における、各構成単位の割合は、適宜設定され、特に限定されないが、上記共重合体(A)と同じ割合であるのが好ましい。
次に、共重合体(B)の製造方法について説明する。共重合体(B)は、共重合体(A)の製造方法と同様な方法によって製造することができる。なお、共重合体(B)の製造においては、上記親水性連鎖移動剤を使用することが好ましい。
本発明の実施形態の水硬性組成物用添加剤は、上記共重合体(A)の質量平均分子量Maと上記共重合体(B)の質量平均分子量Mbとが関係式Ma-Mb≧80000を満たすのが好ましく、関係式Ma-Mb≧100000を満たすのがより好ましく、関係式Ma-Mb≧150000を満たすのが更に好ましく、関係式Ma-Mb≧200000を満たすのが更により好ましい。
また、上記共重合体(A)と上記共重合体(B)の質量比率は、好ましくは、共重合体(A)/共重合体(B)=1/99~30/70であり、より好ましくは、2/98~25/85である。
次に、本発明の実施形態の水硬性組成物について説明する。本実施形態の水硬性組成物は、以上説明したような本実施形態の水硬性組成物用添加剤を使用して調製したセメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性組成物である。本実施形態の水硬性組成物は、結合材として、少なくともセメントを使用したものであるが、セメントを単独で使用してもよく、また、セメントとポゾラン物質や潜在水硬性をもつ微粉末混和材料を併用してもよい。このようなセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種混合セメントが挙げられる。また、微粉末混和材料としては、高炉スラグ微粉末、シリカフューム、フライアッシュ等が挙げられる。
本実施形態の水硬性組成物においては、各種の細骨材、粗骨材を使用することができる。また、目的に応じてAE調整剤、消泡剤、凝結遅延剤、硬化促進剤、乾燥収縮低減剤、防腐剤、防水剤、防錆剤等を併用することができる。
本実施形態の水硬性組成物において、水/結合材比は、20%以上100%未満(質量比)とするのが好ましく、35%超70%未満(質量比)とするのがより好ましい。
なお、本実施形態の水硬性組成物において、本実施形態の水硬性組成物用添加剤に供する共重合体(A)の使用量が、セメントからなる結合材100質量部又はセメント及び微粉末混和材料とからなる結合材100質量部に対し固形分換算で、0.0001~1質量部となるように配合するのが好ましく、0.001~0.5質量部となるように配合するのがより好ましい。
本実施形態の水硬性組成物を調製する際、本実施形態の水硬性組成物用添加剤を、そのまま単独で使用することもでき、又水溶液として使用することもできる。また、かかる水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物を調製する際に練混ぜ水と一緒に添加してもよく、水硬性組成物を練り混ぜているときに1回もしくはそれ以上に分けて添加してもよい。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。
試験区分1(共重合体(A)の合成)
・共重合体(PCA-1)の合成
攪拌羽根、攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水274.5g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=45)オキシエチレン179.5g、メタクリル酸19.9g、3-メルカプトプロピオン酸0.20g、n-ドデシルメルカプタン0.38gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。次に、35%過酸化水素水1.2gをイオン交換水18.0gで希釈したものを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。その後、35%過酸化水素水0.4gをイオン交換水6.0gで希釈したものを反応系に更に加え、反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量298000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-1)とした。
・共重合体(PCA-2)の合成
攪拌羽根、攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水436.8g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=23)オキシエチレン338.9g、メタクリル酸59.6g、3-メルカプトプロピオン酸0.4g、ステアリルメルカプタン1.1gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。次に、35%過酸化水素水2.4gをイオン交換水35.8gで希釈したものを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。その後、35%過酸化水素水0.8gをイオン交換水11.9gで希釈したものを反応系に更に加え、反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量277000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-2)とした。
・共重合体(PCA-3)の合成
攪拌羽根、攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水218.4g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=45)オキシエチレン159.2g、メタクリル酸39.8g、チオグリコール酸0.08g、n-ドデシルメルカプタン0.40gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。次に、過硫酸ナトリウム1.2gをイオン交換水18.0gで希釈したものを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。その後、過硫酸ナトリウム0.4gをイオン交換水6.0gで希釈したものを反応系に更に加え、反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量350000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-3)とした。
・共重合体(PCA-4)の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水216.4g、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=53)オキシエチレン153.8gを攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。アクリル酸45.2gを3時間、チオグリコール酸0.05g、セチルメルカプタン0.47gの混合物を4時間、3.5%過酸化水素水16.0gを3時間、L-アスコルビン酸1.3gをイオン交換水11.7gで希釈したものを4時間それぞれかけて反応系に同時に滴下し、重合反応を行った。すべて滴下し終わってから温度を70℃に1時間保持した。冷却後、イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量250000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-4)とした。
・共重合体(PCA-5)の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水218.5g、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-オキシプロピレンポリ(n=68)オキシエチレン126.8gを攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。アクリル酸ヒドロキシエチル27.2g、アクリル酸27.2g、アクリル酸メチル18.1gの混合物を3時間、チオグリコール酸0.18g、2-エチルヘキシルメルカプタン0.22gの混合物を4時間、過酸化3.5%過酸化水素水16.0gを3時間、L-アスコルビン酸1.3gをイオン交換水11.7gで希釈したものを4時間それぞれかけて反応系に同時に滴下し、重合反応を行った。すべて滴下し終わってから温度を70℃に1時間保持し重合反応を行なった。イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量223000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-5)とした。
・共重合体(PCA-6)の合成
攪拌羽根、攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水262.7g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=113)オキシエチレン208.5g、メタクリル酸31.2g、チオグリセロール0.14g、tert-ドデシルメルカプタン0.19gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、攪拌速度200rpm、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。次に、2.2%過酸化水素水23.0gを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を65℃に保持して2時間、重合反応を行なった。その後、2.2%過酸化水素水7.7gを反応系に更に加え、反応系の温度を65℃に保持して3時間、重合反応を行なった。イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量358000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-6)とした。
・共重合体(PCA-7)の合成
攪拌羽根、攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備え、1000mLの丸底フラスコにイオン交換水274.2g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=9)オキシエチレン191.7g、メタクリル酸43.1g、チオグリセロール0.20g、n-ドデシルメルカプタン0.20g、アリルスルホン酸ナトリウム4.8gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて80℃とした。次に、3.5%過酸化水素水14.4gを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を70℃に保持して3時間、重合反応を行なった。その後、3.5%過酸化水素水4.8gを反応系に更に加え、反応系の温度を80℃に保持して3時間、重合反応を行なった。イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量432000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-7)とした。
・共重合体(PCA-8)の合成
攪拌羽根、攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備え、1000mLの丸底フラスコにイオン交換水274.2g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=45)オキシエチレン179.4g、メタクリル酸43.1g、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)16.7g、3-メルカプトプロピオン酸0.14g、n-ドデシルメルカプタン0.65gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。次に、3.5%過酸化水素水14.4gを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を70℃に保持して3時間、重合反応を行なった。その後、3.5%過酸化水素水4.8gを反応系に更に加え、反応系の温度を70℃に保持して3時間、重合反応を行なった。イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量320000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-8)とした。
・共重合体(PCA-9)の合成
攪拌羽根、攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備え、1000mLの丸底フラスコにイオン交換水274.2g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=23)オキシエチレン200.5g、メタクリル酸14.3g、チオグリコール酸0.10g、ドコシルメルカプタン1.17g、アクリル酸メチル23.9gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、攪拌速度200rpm、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。次に、3.5%過酸化水素水14.3gを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を65℃に保持して4時間、重合反応を行なった。その後、3.5%過酸化水素水4.8gを反応系に更に加え、反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量354000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-9)とした。
・共重合体(PCA-10)の合成
攪拌羽根、攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備え、1000mLの丸底フラスコにイオン交換水274.2g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=45)オキシエチレン210.2g、メタクリル酸28.8g、3-メルカプトプロピオン酸0.36gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。次に、3.5%過酸化水素水14.4gを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。その後、3.5%過酸化水素水4.8gを反応系に更に加え、反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量200000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-10)とした。
・共重合体(PCA-11)の合成
攪拌羽根、攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備え、1000mLの丸底フラスコにイオン交換水274.3g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=45)オキシエチレン214.1g、メタクリル酸23.8g、3-メルカプトプロピオン酸1.19g、n-ドデシルメルカプタン0.90gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。次に、3.5%過酸化水素水14.3gを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。その後、3.5%過酸化水素水4.8gを反応系に更に加え、反応系の温度を70℃に保持して2時間、重合反応を行なった。イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量80000であった。この反応混合物を共重合体(PCA-11)とした。
合成した共重合体(PCA-1)~(PCA-11)の質量平均分子量を下記測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定した。
[測定条件]
装置:Shodex GPC-101(昭和電工株式会社製)
カラム:OHpak SB-G+SB-806M HQ+SB-806M HQ(昭和電工株式会社製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:50mM硝酸ナトリウム水溶液
流量:0.7mL/分
カラム温度:40℃
資料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:ポリエチレングリコール・ポリエチレンオキシド(アジレント・テクノロジー株式会社製)
合成した共重合体(PCA-1)~(PCA-11)の水を除去し、重水を使用して5%の濃度となるように溶液を調整し、300MHの1H-NMRにて測定を行った。
[測定条件]
装置:Varian Mercury 300(アジレント・テクノロジー株式会社製)
測定溶媒:重水
測定温度:20℃
各共重合体の内容及び測定結果を表1にまとめて示した。
Figure 0007046397000004
表1において、
L-1:α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=45)オキシエチレン
L-2:α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=23)オキシエチレン
L-3:α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=113)オキシエチレン
L-4:α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=53)オキシエチレン
L-5:α-メタリル-ω-ヒドロキシ-オキシプロピレンポリ(n=68)オキシエチレン
L-6:アクリル酸ヒドロキシエチル
L-7:α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=9)オキシエチレン
M-1:メタクリル酸
M-2:アクリル酸
M-3:こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)
N-1:アクリル酸メチル
N-2:アリルスルホン酸ナトリウム
TA-1:3-メルカプトプロピオン酸
TA-2:チオグリコール酸
TA-3:チオグリセロール
TB-1:n-ドデシルメルカプタン
TB-2:ステアリルメルカプタン
TB-3:セチルメルカプタン
TB-4:2-エチルヘキシルメルカプタン
TB-5:tert-ドデシルメルカプタン
TB-6:ドコシルメルカプタン
試験区分2(共重合体(B)の合成)
・共重合体(PCB-1)の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水170.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=23)オキシエチレン168.0g、メタクリル酸22.9g、3-メルカプトプロピオン酸1.7gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。次に、過硫酸ソーダ2.8gをイオン交換水42.1gで希釈したものを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を60℃に保持して2時間、重合反応を行なった。その後、過硫酸ソーダ0.9gをイオン交換水14.0gで希釈したものを反応系に更に加え、反応系の温度を60℃に保持して2時間、重合反応を行なった。30%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH6に調整し、さらにイオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量24000であった。この反応混合物を共重合体(PCB-1)とした。
・共重合体(PCB-2)の合成
丸底フラスコにイオン交換水171.2g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=45)オキシエチレン168.0g、メタクリル酸21.0g、アクリル酸メチル1.9g、チオグリコール酸1.8g、30%水酸化ナトリウム水溶液20.5gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、温水浴にて65℃とした。次に、過硫酸アンモニウム2.8gをイオン交換水42.1gで希釈したものを反応系に加え、重合反応を開始した。反応系の温度を65℃に保持し3時間、重合反応を行なった。その後、過硫酸アンモニウム0.9gをイオン交換水14.0gで希釈したものを反応系に更に加え、反応系の温度を65℃に保持し2時間、重合反応を行なった。30%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH7とし、さらにイオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量28000であった。この反応混合物を共重合体(PCB-2)とした。
・共重合体(PCB-3)の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水133.5gを仕込み、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて70℃とした。反応系にα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(n=113)オキシエチレン175.4g、メタクリル酸15.3g、3-メルカプトプロピオン酸1.5gを均一に撹拌した溶液を3時間かけて滴下した。さらに、35%過酸化水素水3.0gをイオン交換水52.0gで希釈した溶液を同時に4時間かけて反応系に滴下し、すべての溶液を滴下後、反応系の温度を70℃に1時間保持した。反応終了後、30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6とし、さらにイオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量34000であった。この反応混合物を共重合体(PCB-3)とした。
・共重合体(PCB-4)の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLのフラスコにイオン交換水102.6g、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(n=53)オキシエチレン180.6gを仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。アクリル酸15.7gをイオン交換水76.5gで希釈した溶液を3時間かけて滴下し、同時に3.5%過酸化水素水9.8gを反応系に3時間かけて滴下し、さらに同時に3-メルカプトプロピオン酸0.8g、L-アスコルビン酸0.8gをイオン交換水6.3gで希釈した溶液を反応系に4時間かけて滴下した。さらに反応系の温度を65℃に保持して1時間熟成を行なった。30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH5に調整し、イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量36000であった。この反応混合物を共重合体(PCB-4)とした。
・共重合体(PCB-5)の合成
攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えた1000mLの丸底フラスコにイオン交換水151.0g、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-オキシプロピレンポリ(n=68)オキシエチレン177.0g、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。アクリル酸11.8g、アクリル酸ヒドロキシエチル7.9gをイオン交換水31.5gで希釈した溶液を3時間かけて滴下し、同時に3.5%過酸化水素水8.9gを反応系に3時間かけて滴下し、さらに同時に3-メルカプトプロピオン酸1.0g、L-アスコルビン酸0.8gをイオン交換水7.1gで希釈した溶液を反応系に4時間かけて滴下した。さらに反応系の温度を60℃に保持して0.5時間熟成を行なった。30%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH7に調整し、イオン交換水にて濃度を20%に調整して反応混合物を得た。この反応混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて分析したところ、質量平均分子量39000であった。この反応混合物を共重合体(PCB-5)とした。
合成した共重合体(PCB-1)~(PCB-5)の質量平均分子量を共重合体(PCA-1)~(PCA-11)と同じ測定条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定した。
合成した共重合体(PCB-1)~(PCB-5)について共重合体(PCA-1)~(PCA-11)と同様に300MHの1H-NMRにて測定を行った。
各共重合体の内容及び測定結果を表2にまとめて示した。
Figure 0007046397000005
試験区分3(水硬性組成物用添加剤の調製)
・水硬性組成物用添加剤(EX-1~EX-14)の調製
表3に記載の配合条件で、共重合体(A)と共重合体(B)を混合して水硬性組成物用添加剤を調製した。
Figure 0007046397000006
試験区分4(水硬性組成物の調製及び評価)
・実施例1~14及び比較例1~3
表3で示した水硬性組成物用添加剤を水硬性組成物にて評価を行った。表4に示した配合条件で、表5に記載した各試験例の水硬性組成物を以下のように調製した。20℃の試験室内で50Lの強制二軸ミキサーに普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製、宇部三菱セメント株式会社製、住友大阪セメント株式会社製等量混合、密度=3.16g/cm)、砕砂(岩瀬産砕砂、密度=2.64g/cm)、砕石(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm)、をそれぞれ所定量となるように投入すると共に、脂肪族ポリエーテル系消泡剤(竹本油脂株式会社製の商品名AFK-2)をセメントに対して0.005%の割合となるように、練り混ぜ水(水道水)と共に投入し、90秒間練り混ぜ、スランプが18±1cm、空気量が4.5±0.5%の範囲となるように、水硬性組成物用添加剤、空気連行剤(竹本油脂株式会社製の商品名AE-300)の使用量を調整した。
Figure 0007046397000007
・水硬性組成物の評価
調製した各例の水硬性組成物について、スランプ、空気量、圧縮強度及びブリーディング量を下記のように求めた。結果を表5にまとめて示した。
・スランプ(cm):空気量の測定と同時にJIS-A1101に準拠して測定した。
・空気量(容積%):練り混ぜ直後及び30分間静置後の水硬性組成物について、JIS-A1128に準拠して測定した。
・圧縮強度:各例の水硬性組成物を直径100mm、高さ200mmの型枠を用いて硬化させた材齢28日の硬化体について、JIS-A1108に準拠して測定した。
・ブリーディング量:練り混ぜ直後の水硬性組成物について、JIS-A1123に準拠して測定した。
Figure 0007046397000008
(結果)
実施例1~14においては、共重合体(A)を含む水硬性組成物用添加剤を使用することにより、比較例1~3に比して、水硬性組成物の分散性、スランプ保持性、分離抵抗性を保持したまま、ブリーディングを低減することが確認された。
本発明の水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物を調製する際の添加剤として利用することができる。

Claims (8)

  1. 下記共重合体(A)を含有し、
    更に、下記共重合体(B)を含有する水硬性組成物用添加剤。
    共重合体(A):構成単位(1)と、構成単位(2)とを含むビニル系単量体由来の構造を有する共重合体とともに、硫黄原子を含有する疎水性連鎖移動剤由来の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリエチレングリコール換算の質量平均分子量が100000以上2000000以下である共重合体。
    構成単位(1):下記の一般式1で示される単量体から選ばれる一つ又は二つ以上から形成される構成単位
    構成単位(2):不飽和カルボン酸及び/又はその塩から形成される構成単位であり、不飽和カルボン酸及び/又はその塩の80~100モル%が(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から選ばれる一つ又は二つ以上から形成される構成単位
    Figure 0007046397000009
    (但し、式中、R、R及びRは、同一又は異なる、水素原子、またはメチル基を表す。Rは同一又は異なる水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。pは0又は1の整数を表す。qは0~2の整数を表す。AOは炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。nはAOの平均付加モル数であり、1~300の数を表す。)
    共重合体(B):前記構成単位(1)と、前記構成単位(2)とを含むビニル系単量体由来の構造を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリエチレングリコール換算の質量平均分子量が5000以上100000未満である共重合体。
  2. 前記疎水性連鎖移動剤由来の構造がアルキル鎖を有し、当該疎水性連鎖移動剤由来の構造の末端の少なくとも1つが、硫黄原子を介して、前記ビニル系単量体由来の構造の主鎖末端と結合した構造を有する請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
  3. 前記共重合体(A)の質量平均分子量が100000~600000である請求項1又は2に記載の水硬性組成物用添加剤。
  4. 前記アルキル鎖の炭素数が8~22である請求項2又は3に記載の水硬性組成物用添加剤。
  5. 構成単位(2)と構成単位(1)の質量比率が構成単位(2)/構成単位(1)=30/70~1/99である請求項1~4のいずれか1項に記載の水硬性組成物用添加剤。
  6. 前記共重合体(A)の質量平均分子量Maと前記共重合体(B)の質量平均分子量Mbとが下記関係式を満たす請求項1~5のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
    Ma-Mb≧80000
  7. 共重合体(A)と共重合体(B)の質量比率が共重合体(A)/共重合体(B)=1/99~30/70である請求項1~6のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
  8. 請求項1~のいずれか1項に記載の水硬性組成物用添加剤を含有する水硬性組成物。
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