JP7045917B2 - 絶縁性無機粉体およびその製造方法ならびに粉体処理剤 - Google Patents
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Description
(1)無機粉体の表面上に、少なくともNi、AlおよびPを含み、P/(Ni+Al)モル比は0.5以上15.0以下の範囲内である皮膜を有する絶縁性無機粉体;
(2)前記皮膜のAl/Niモル比は0.003以上0.500以下の範囲内である(1)に記載の絶縁性無機粉体;
(3)少なくともNiイオンと、Alイオンと、リンを含むイオンと、水性媒体と、を含み、NiイオンおよびAlイオンの金属換算合計100質量部に対して、リンを含むイオンの供給源の配合量が100質量部以上3000質量部以下の範囲内であり、水性媒体の
量が1000質量部以上40000質量部以下の範囲内である粉体処理剤;
(4)前記粉体処理剤の遊離酸度(FA)が0.3ポイント以上30.0ポイント以下の範囲内である(3)に記載の粉体処理剤;
(5)(3)または(4)のいずれかに記載の粉体処理剤を無機粉体に接触させた後、加熱して前記粉体処理剤の揮発分を蒸発させることにより得られる皮膜を有する、絶縁性無機粉体;
(6)無機粉体と、(3)または(4)のいずれかに記載の粉体処理剤と、を含む組成物を加熱して、前記組成物中の揮発分を蒸発させる工程を含む、無機粉体の表面上に皮膜を形成した絶縁性無機粉体の製造方法;
などである。
その原料として用いられる無機粉体は、無機物質からなる粉体であれば特に粒径、形状、組成等に制限されるものではない。原料無機粉体としては、例えば、電子部品の材料として有用であることから、磁性を有する無機粉体であることが好ましく、磁性を有する無機粉体としては、鉄を含むものが好ましい。また、無機粉体は導体であるものが好ましく、導体であるとは、例えば電気伝導度が1×106S/m以上であってよく、1×105S/m以上であってよい。
窒化硼素(BN)、フェライト(MFe2O4;Mは2価の金属元素を表す)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)、酸化アルミニウム(Al2O3)、炭化珪素(S
iC)、酸化亜鉛(ZnO)、ジルコニア(ZrO2)、ジルコン(ZrO2・SiO2)
、フォルステライト(2MgO・SiO2)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、ステアタイト(MgO・SiO2)、コーディエライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)、等が挙げられる。
無機粉体の形状も特段限定されず、アスペクト比が通常50以下であり、20以下であってよく、10以下であってよく、また通常1以上である。
i+Al))が0.5以上15.0以下の範囲内である。これらのモル比が一定の範囲内であることにより、プレス圧に影響を受けにくい、優れた絶縁性を有する皮膜を、無機粉体の表面上に均一に形成することができる。
(P/(Ni+Al))のモル比は、0.9以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましい。また、10.0以下であることが好ましく、7.5以下であることがより好ましい。
なお、Niイオン、Alイオン、リンを含むイオン以外の他の成分は、粉体処理剤に含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。「粉体処理剤に含まれていない」とは、意図的に配合しないことを意味し、不可避的に混入されることを排除するものではない。
粉体処理剤中に含まれるNiイオン濃度は、上記皮膜中のNi濃度を充足する限り特段限定されないが、粉体処理剤1kgあたりのNiイオン濃度は、金属換算質量濃度で通常1g以上であり、2g以上であってよく、また通常75g以下であり、60g以下であってよい。
ず、一般的に市販されている試薬を用いることができる。具体的には、酸化アルミニウム、塩化アルミニウム・6水和物、硫酸アルミニウム・14~18水和物、硝酸アルミニウム・9水和物などが挙げられる。なお、これらの試薬は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
体の体積を基準として50質量%以上の水を含有するもの)であれば特に限定されるものではない。水混和性有機溶媒としては、水と混和するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N’-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノへキシルエーテル等のエーテル系溶媒;1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン等のピロリドン系溶媒等が挙げられる。これらの水混和性有機溶媒は1種を水と混合させてもよいし、2種以上を水に混合させてもよい。
なお、絶縁性無機粉体の製造において、揮発分を蒸発させた後、皮膜を有する無機粉体の表面上に潤滑剤を接触させて潤滑皮膜を形成させる工程をさらに設けてもよい。接触方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、潤滑剤に浸漬する方法、潤滑剤と混合する方法等があげられる。また、絶縁性無機粉体の製造において、潤滑剤との接触後、潤滑剤を接触させた絶縁性無機粉体の表面上を乾燥する工程をさらに含んでいてもよい。乾燥方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、空気又は不活性ガス中で加熱する方法があげられるが、この方法に制限されるものではない。以上の絶縁性無機粉体の製造方法により、潤滑皮膜を有する絶縁性無機粉体を得ることができる。
0℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが特に好ましい。また、潤滑剤を接触させた絶縁性無機粉体の表面上の乾燥温度は特に制限ないが、200℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
特に、本実施形態の絶縁性無機粉体を用いることで、インダクタ、コンデンサ、サーミスタ、バリスタ等の各種電子機器や電子部品の小型化や高性能化を実現することができることに加え、プレス成型後でも良好な絶縁性を維持できるので、実用上極めて有用である。なお、本実施形態の絶縁性無機粉体には、無機粉体の表面に皮膜を有するものだけでなく、無機粉体と皮膜との間に、1又は2以上の皮膜(例えば、酸化膜等)を有するものも含まれる。
市販のアトマイズ純鉄粉(ヘガネス社製、ABC100.29、体積平均粒径(D50)=106μm、以下「純鉄粉」と称する。)、または、Fe-5.5%Si-4%Crアトマイズ粉(日本アトマイズ加工株式会社製軟磁性粉末、体積平均粒径=10μm、以下「合金粉」と称する。)を用いて、後述のように絶縁性無機粉体を製造した。
表1に示すように、各成分及び純水を所定量で混合し、実施例1~22及び比較例1~7の粉体処理剤を調製した。遊離酸度の調整は、リン酸、硫酸、水酸化ナトリウム等で行った。
なお、表1における「成分記号」の欄に示す記号は、それぞれ以下のとおりである。
A:硫酸ニッケル・6水和物
B:塩化ニッケル・6水和物
C:塩基性炭酸ニッケル・4水和物
D:硝酸ニッケル・6水和物
E:酢酸ニッケル・4水和物
F:酸化アルミニウム
G:塩化アルミニウム・6水和物
H:硫酸アルミニウム・14~18水和物
I:硝酸アルミニウム・9水和物
J:85%リン酸
K:50%次亜リン酸
L:トリポリリン酸ナトリウム
M:フェニルホスホン酸
表2に示す無機粉体をそれぞれ20g秤量し、調製した実施例1~22及び比較例1~7の粉体処理剤の1/2量に、秤量した無機粉体を添加して、25℃で10分間攪拌を行った。次に、乾燥工程として、攪拌混合物を100℃に保持した恒温器に静置して5分間保持した。続いて、残りの粉体処理剤に乾燥させた無機粉体を加え、再度、25℃で10分間攪拌を行った。乾燥工程として、攪拌混合物を100℃に保持した恒温器に静置して5分間保持した。次に、恒温器から取り出した混合物を再度攪拌し、120℃に保持した恒温器に静置して30分間保持し、絶縁性無機粉体1~29を得た。
エポマウントAセット(リファインテック株式会社製;27-770)を用いて埋込用樹脂を調製した後、埋込用樹脂と、絶縁性無機粉体1~29とをそれぞれ混合した。各混合物を型に流し込んで硬化させた。各硬化物を機械研磨した後、イオンミリング(日立ハイテクノロジーズ製IM-4000型)にて薄片を作製した。透過型電子顕微鏡(TEM、日本電子株式会社製 JEM-2100型)付帯のEDSおよびEELSを用いて、薄片における絶縁性無機粉体の皮膜を元素分析した。得られた各元素の元素分析値から、各元素の含有量を求め、その後、モル量に換算して、Al/Niのモル比、及びP/(Ni+Al)のモル比をそれぞれ算出した。また、膜厚は、TEMによる観察にて測定した。
これらの結果を表2に示す。
株式会社三菱化学アナリテック製粉体抵抗測定システムMCP-PD51と、ハイレスタ-UXまたはロレスターGXを用いて、所定量の絶縁性無機粉体に圧力をかけて体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。なお、圧力は13MPaから64MPaまで変動させ、所定の圧力における体積抵抗率をそれぞれ測定した。評価基準は以下のとおりとした。
・皮膜を形成していない純鉄粉の圧力13MPaにおける体積抵抗率に比べ、皮膜を形成した純鉄粉の圧力13MPaにおける体積抵抗率が、
1.0×105倍以上を「○」、
1.0×104倍以上1.0×105倍未満を「△」、
1.0×104倍未満を「×」とした。
・皮膜を形成していない合金粉の圧力13MPaにおける体積抵抗率に比べ、皮膜を形成した合金粉の圧力13MPaにおける体積抵抗率が、
1.0×108倍以上を「○」、
1.0×107倍以上1.0×108倍未満を「△」、
1.0×107倍未満を「×」とした。
これらの結果を表3に示す。なお、「〇」を実用レベルであると判断した。また、皮膜を形成していない純鉄粉の圧力13MPaにおける体積抵抗率は、1.51×10-2Ω・cmであった。皮膜を形成していない合金粉の圧力13MPaにおける体積抵抗率は、1.12×101Ω・cmであった。
絶縁性の評価にて得られた、圧力が13MPaおよび64MPa時の体積抵抗率を用いて、下記式(1)により体積抵抗率の低下率を算出し、以下の評価基準にて耐プレス圧性
を評価した。評価基準としては、
低下率85%未満を「○」、
低下率85%以上90%未満を「△」、
低下率90%以上を「×」、
とした。なお、「〇」を実用レベルであると判断した。これらの結果を表3に示す。
低下率(%)=(1-(64MPa時の体積抵抗率/13MPa時の体積抵抗率))×100 (式1)
Claims (5)
- 無機粉体の表面上に、少なくともNi、AlおよびPを含み、P/(Ni+Al)モル比が0.5以上15.0以下の範囲内である皮膜を有する絶縁性無機粉体。但し、皮膜中にシリカを含有するものを除く。
- 前記皮膜のAl/Niモル比が0.003以上0.500以下の範囲内である請求項1に記載の絶縁性無機粉体。
- 少なくともNiイオンと、Alイオンと、リンを含むイオンと、水性媒体と、を含み、NiイオンおよびAlイオンの金属換算合計100質量部に対して、リンを含むイオンの供給源の配合量が100質量部以上3000質量部以下の範囲内であり、水性媒体の量が1000質量部以上40000質量部以下の範囲内である粉体処理剤。但し、粉体処理剤中にシリカを含有するものを除く。
- 前記粉体処理剤の遊離酸度(FA)が0.3ポイント以上30.0ポイント以下の範囲内である請求項3に記載の粉体処理剤。
- 無機粉体と、請求項3または4に記載の粉体処理剤と、を含む組成物を加熱して、前記組成物中の揮発分を蒸発させる工程を含む、無機粉体の表面上に皮膜を形成した絶縁性無機粉体の製造方法。
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