JP7045527B2 - 肝機能障害の予測のためのマイクロrnaシグネチャ - Google Patents
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Description
CN101418343Aは、原発性早期肝がん患者の術後肝がん再発を予測するためのキットを開示する。
a)前記対象から試料を用意するステップと、
b)前記試料において、miR-151a、miR-192およびmiR-122からなる群から選択される少なくとも1種のmiRNAの発現レベルを決定するステップと、
i.b)の発現レベルを少なくとも1つのリファレンス発現レベルと比較するステップ、または
ii.b)で決定された発現レベルに基づいてmiR-151aとmiR-192の比および/またはmiR-122とmiR-151aの比を特定するステップおよび前記発現レベルの比をリファレンス発現レベルの比と比較するステップと、
ステップi)またはステップii)の比較の結果から試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類するステップであって、それぞれのクラスは「高リスク」および「低リスク」の少なくとも2つのカテゴリのうちの1つである、分類するステップと、
を含む、in vitroの方法が提供される。
具体的には、本明細書で使用されるmiRNAは、hsa-miR-151a-5p、hsa-miR-192-5pおよびhsa-miR-122-5pからなる群から選択される。
具体的には、1未満の標準偏差での差は、特に肝部分切除後に肝機能障害を発症することに関して低リスクを示す。
a)前記対象から試料を用意するステップと、
b)前記試料において、miR-151aとmiR-192の発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aの発現レベルの比を決定するステップと、
c)リファレンス試料において、miR-151aとmiR-192の発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aの発現レベルの比を決定するステップであって、リファレンス試料は対象の早期の試料である、決定するステップと、
d)b)の発現レベルの比をc)の発現レベルの比と比較するステップと、
e)ステップd)の比較の結果から、前記対象の試料を「再生の成功」または「再生の成功なし」の2つのカテゴリのうちの1つに分類するステップと、
を含む、in vitroの方法である。
具体的には、分類モデルは、リファレンスとの比較の結果から対象の試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類する。
本明細書でさらに説明されるのは、とりわけ肝部分切除の後の、肝機能障害のリスクを予測する臨床的に有用なカットオフである。具体的には、確率スコア、0.59未満、特に0.58、0.57、0.56、0.55、0.54、0.53、0.52、051、または0.50未満を有する低ストリンジェンシーのカットオフは、肝機能障害を発症することに関して低リスクにある対象および低リスクで肝部分切除を受けることができる患者、を特定する。好ましくは、確率スコア0.58未満(P<0.58)は、患者を低リスクとして分類する。具体的には、確率スコア0.58超、特に0.59、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、または0.65超を有するストリンジェントなカットオフは、肝機能障害を発症することに関して中リスクを有する患者を特定し、このような患者は、手術前に最適化される必要がある。好ましくは、確率スコア0.58超(P>0.58)は、患者を中リスクとして分類する。確率スコア、0.66、0.67、0.68、0.69、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、または0.75超は、対象を高リスク患者として特定し、これらの患者は、好ましくは外科的肝部分切除を受けるべきではない。好ましくは、確率スコア0.68超(P>0.68)は、肝機能障害を発症することに関して高リスクにある対象を特定する。
a)対象の試料において、miR-151a、miR-192およびmiR-122からなる群から選択される、少なくとも1種のマイクロRNAの発現レベルを検出することができる検出試薬と、
b)リファレンス発現レベルと、
a)の発現レベルをb)の発現レベルと比較するための、および対象の試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類するための分類モデルを含むソフトウェアであって、それぞれのクラスは肝部分切除後の肝機能障害に関する「高リスク」および「低リスク」の少なくとも2つのカテゴリのうちの1つである、ソフトウェアと、
を含む、パーツのキットである。
本明細書で使用する場合、「無細胞」という用語は、約90%の程度までいかなる細胞をも欠く試料を指す。
「患者」という用語は、予防的または治療的処置のいずれかを受ける、または、肝がんまたは転移性結腸直腸がんのような、これらに限定されないが、特定の疾患と診断される、ヒトおよびその他の哺乳動物対象を含む。
本明細書で使用する場合、「個体のコホート」または「個体のプール」という用語は、健常な個体の群を指すものとし、前記個体から受け取った試料を特に指す場合がある。コホートの個体の数は様々であってもよく、すなわち、2、3、4、5、6、7またはこれ超の個体を含むことができるが、たとえば、限定されないが、少なくとも10、25、50、100またはこれ超の個体など、対象のより大きな群であってもよい。本発明の実施形態によれば、コホートはまた、500以上の個体の大きなコホートを含む場合もある。
本明細書で使用する場合、「再生の成功」という用語は、肝部分切除後に肝機能を改善し、肝機能障害のリスクを低下させることと定義される。したがって、肝再生を監視するマーカーは、患者の臨床転帰、すなわち肝機能障害のリスクの減少に優先的に関連する必要がある。中度の再生の成功は、肝機能障害のリスクを約25%~最大約50%減少させる。高度の再生の成功は、50%超リスク減少をもたらす。肝機能障害を発症することに関してリスクに減少がないことおよび/または肝機能の改善がないことは、再生の成功がないことを示す。具体的には、肝機能は、たとえば、プロトロンビン時間(PT/INR)、aPTT、アルブミンおよびビリルビンを検出する(直接的および間接的)検査などの当技術分野で知られる肝機能検査を使用して、評価され得る。
a)前記対象から試料を用意するステップと、
b)前記試料において、miR-151aとmiR-192の発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aの発現レベルの比を決定するステップと、
c)リファレンス試料において、miR-151aとmiR-192の発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aの発現レベルの比を決定するステップであって、リファレンス試料は対象の早期の試料である、決定するステップと、
d)b)の発現レベルの比をc)の発現レベルの比と比較するステップと、
e)ステップd)の比較の結果から、前記対象の試料を「再生の成功」または「再生の成功なし」の2つのカテゴリのうちの1つに分類するステップと、
の連続するステップを含むin vitroの方法によって監視される。
具体的には、本明細書で使用する場合、「miR-それぞれの番号-5p」という用語はまた、その相補的な3p miRNAを包含し、逆もまた同様である。
qRT-PCR法は、miRNAの発現の絶対レベルを決定することができる。あるいは、qRT-PCR法はmiRNAの相対量を決定することができる。miRNAの相対量は、miRNAのレベルを1つまたは複数の内部標準核酸配列のレベルに基準化することによって決定され得る。一般に、そのような内部標準核酸配列は、分析される血液または血清の試料において一定のレベルを有することが必要である。例を挙げると、内部標準核酸配列は、グリセルアルデヒド-3-リン酸-デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、ベータ-アクチン(ACTB)のようなmRNAなどの恒常的に転写されるRNA核酸配列、または5Sおよび18SリボソームRNA、RNU48、RNU44、およびRNU6などのノンコーディングRNA、とすることができる。加えて、miR-23a-3p、miR-23b-3p、miR-15-5pまたはmiR-16-5pなどの血清または血漿中に一定かつ高レベルを有するmiRNAも、相対的定量化のリファレンスとして使用され得る。加えて、RNA分離またはcDNA合成過程に等モル量で添加される合成RNA配列も、特定のmiRNAの相対的定量化のリファレンスとして使用され得る。
miRNAは比較的短い分子であるので、逆転写および増幅の前に、アデノシンモノマーを鎖に付加することによって(ポリアデニル化として知られる技法)、miRNAを伸ばすことが有用であるとすることができる。要約すると、RNAは、適切な試薬(たとえばTrizol試薬)によって試料から抽出され、ATPおよびポリ(A)ポリメラーゼの存在下でポリアデニル化され、ポリ(T)アダプターおよび5’RACE配列を使用してcDNAに逆転写され、miRNAの3’末端から得られる順方向プライマーと逆方向RACEプライマーを使用して増幅され得る。この技法の改善は、3’末端にヌクレオチド(A、C、またはGを構成するが、Tは構成せず、したがって、polyA配列上のいずれかへのプライミングを排除し、miRNA配列上でのプライミングを実施する)を持つRACEプライマーまたは化学修飾の有無にかかわらず、2、3、4個、もしくはそれ超のヌクレオチドを使用した、特定のマイクロRNAの3’cDNA末端に係留されるRACEプライマー、を設計することを含む。
具体的には、試料の発現レベルまたは試料の発現レベルの比は、分類モデルを使用して、リファレンス発現レベルまたはリファレンス発現レベルの比と比較され得る。分類手法(または分類器)とは、肝部分切除後の肝機能障害のある患者とない患者のマイクロRNA発現レベルなどの、入力データセットから分類モデルを組み立てる体系的なアプローチである。例として、ロジスティック回帰モデル、サポートベクターマシンモデル、決定木モデル、ルールベースの分類器、ニューラルネットワークおよび単純ベイズ分類器が挙げられる。各技法は、学習アルゴリズムを用いて、入力データの属性セットとクラスラベルの間の関係にベストフィットするモデルを特定する。学習アルゴリズムによって作成されたモデルは、入力データに良好にフィットするとともにかつてないデータのクラスラベルを正確に予測する必要がある。したがって、学習アルゴリズムの主要目的は、良好な一般化機能を備えたモデル、すなわち、以前には未知であったデータのクラスラベルを正確に予測するモデル、を組み立てることである。
本明細書に記載の方法は、化学療法、免疫療法、門脈塞栓術、段階的肝切除のための会合肝区画化と門脈結紮(ALPPS)、または運動介入(「プレハビリテーション」)、門脈高血圧を軽減する食事療法または薬理学療法などのその他の療法選択肢といった療法および療法の処置成功を監視するのに使用され得る。
a)対象の試料において、miR-151a、miR-192およびmiR-122からなる群から選択される、少なくとも1種のマイクロRNAの発現レベルを検出することができる検出試薬と、
b)リファレンス発現レベルと、
c)a)の発現レベルをb)の発現レベルと比較するための、および対象の試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類するための分類モデルを含むソフトウェアであって、それぞれのクラスは肝部分切除後の肝機能障害に関する「高リスク」および「低リスク」の少なくとも2つのカテゴリのうちの1つである、ソフトウェアと、
を含む、パーツのキットである。
1.特に肝部分切除後の、肝機能障害に関する対象のリスクを判定するin vitroの方法であって:
a)前記対象から試料を用意するステップと、
b)前記試料において、miR-151a、miR-192およびmiR-122からなる群から選択される少なくとも1種のmiRNAの発現レベルを決定するステップと、
i.b)の発現レベルを少なくとも1つのリファレンス発現レベルと比較するステップ、または
ii.b)で決定された発現レベルに基づいてmiR-151aとmiR-192の比および/またはmiR-122とmiR-151aの比を特定するステップおよび前記発現レベルの比をリファレンス発現レベルの比と比較するステップと、
c)ステップi)またはステップii)の結果から試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類するステップであって、それぞれのクラスは「高リスク」および「低リスク」の少なくとも2つのカテゴリのうちの1つである、分類するステップと、
を含む、in vitroの方法。
3.「リスクなし」および「中リスク」のカテゴリのさらなるクラスを含む、項目1または2に記載のin vitroの方法。
a)前記対象から試料を用意するステップと、
b)前記試料において、miR-151aとmiR-192の発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aの発現レベルの比を決定するステップと、
c)リファレンス試料において、miR-151aとmiR-192の発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aの発現レベルの比を決定するステップであって、リファレンス試料は対象の早期の試料である、決定するステップと、
d)b)の発現レベルの比をc)の発現レベルの比と比較するステップと、
e)ステップd)の比較の結果から、前記対象の試料を「再生の成功」または「再生の成功なし」の2つのカテゴリのうちの1つに分類するステップと、
を含む、in vitroの方法。
a)対象の試料において、miR-151a、miR-192およびmiR-122からなる群から選択される、少なくとも1種のマイクロRNAの発現レベルを検出することができる検出試薬と、
b)リファレンス発現レベルと、
c)a)の発現レベルをb)の発現レベルと比較するための、および対象の試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類するための分類モデルを含むソフトウェアであって、それぞれのクラスは、特に肝部分切除後の、肝機能障害に関する「高リスク」および「低リスク」の少なくとも2つのカテゴリのうちの1つである、ソフトウェアと、
を含む、パーツのキット。
研究集団
最初に、Medical University of Viennaにて肝切除を受ける患者の発見コホートを、2012年2月から募集した。肝細胞癌(HCC)、胆管細胞癌(CCC)または転移性結腸直腸癌(mCRC)のいずれかの患者が組み入れに適格とされた。その後、術後LDおよび臨床転帰に対するmiRNAの有意な予測可能性を観察したので、肝切除を受ける患者の前向きセットにおいて本発明者らの探査的結果を検証した。
患者について、Medical University of Viennaにて90日の術後期間経過観察した。術後転帰について前向きに文書記録した。術後LDは、International Study Group of Liver Surgery(ISGLS)によって発行された基準にしたがって診断した(14)。要約すると、LDは、術後日(POD)5以降の血清ビリルビンとプロトロンビン時間の両方の異常値によって定義した。注目すべきことに、異常な術前血清ビリルビンまたはプロトロンビン時間の場合、POD 5のその後の2日での術後逸脱および悪化を術後LDと特定した。さらに、POD 5の前に正常な血清ビリルビンまたはプロトロンビン時間値に達する患者、または良好な臨床成績のために早期退院し、したがってさらなる採血がなかった患者を、「LDなし」とみなした。
肝機能を、インドシアニングリーン(ICG)クリアランスを使用して肝切除の前にルーチン的に評価した(17)。ICG試薬25mgを等張液20mlに溶解し、用量0.25mg/kg体重を患者に静脈内投与した。循環中の着色試薬の濃度をパルス分光分析を使用して評価した。最終的に、最初の1分以内に除去されたICG試薬の量(=血漿消失率(PDR))、ならびに15分後に循環で検出された試薬の残量(R15)、を本患者コホートにおいて測定した。
手術の前に、血漿の注意深い調製について先に記載の通りに実施した(18、19)。要約すると、予冷CTADチューブに採血を行い、血液を30分以内に処理した。1000gおよび4℃で10分間の遠心分離、これに続いて10000gおよび4℃での10分間のさらなる遠心分離段階により、血漿を固形血液成分から分離した。最終的に、血漿はさらなる分析まで-80℃で保存した。
miRNeasy Mini Kit(Qiagen、ドイツ)を適用して、血漿から、small RNAを含めて総RNAを分離した。凍結血漿試料を室温で解凍し、12000gで5分間遠心分離して、無細胞成分から潜在的なデブリを分離した。3つの合成スパイクインコントロール(Exiqon、デンマーク)の混合物を含有するQiazol 1mlとボルテックスすることにより、血漿200μlを混合した。室温で10分間インキュベートした後に、クロロホルム200μlを加え、ボルテックスにより激しく混合した。12000gで4℃で15分間、遠心分離した後、水相650μlを吸引した。グリコーゲン(Ambion、米国)を最終濃度50μg/mlまで添加した。次いで、試料をシリカカラムに移し、製造業者のプロトコルにしたがってQIAcube液体処理ロボットを使用してさらに処理した。RNAをエタノール750μlで沈殿させ、RPEバッファで3回洗浄し、これに続いて、ヌクレアーゼフリー水30μlでRNAを溶出し、-80℃で保存した。
製造業者の推奨にしたがって、CleanTag SmallRNAライブラリー調製キット(TriLink、米国)を使用してsmall RNAシーケンシングライブラリーを作製した。28℃で1時間、これに続いて65℃にて20分間、3’および5’アダプターの連続ライゲーションに総RNA2μlを使用した。アダプターを1:12で予備希釈して、RNAの存在量が少ないことを考慮した。逆転写を50℃で1時間実施した。PCR増幅を、small RNAシーケンシング用のバーコード付きIlluminaプライマーを使用して実施した:熱変性(98℃、10秒)、アニーリング(60℃、30秒)、および鎖伸長(72℃、15秒)、26サイクルを使用した。PCR産物をQiaQuickプロトコル(Qiagen、ドイツ)を使用して精製し、DNA 1000 Chip(Agilent Technologies, Inc.、米国)を使用してキャピラリー電気泳動でサイズチェックを行った。等モル量のDNAをプールするための基準として、およそ145bpのピーク濃度を使用した。プールをゲル精製して、18~50bpの間をテンプレートインサート用に選択した。シーケンシングは、Illumina NextSeq 500、50サイクルのシングルエンドリード(Illumina, Inc.、米国)で実施した。fastq形式のシーケンシングリードを、アダプタートリミングし、品質チェックした(fastQCファイルの作成)。Bowtie2を使用したヒト成熟miRNA(miRBase v21)に対するアラインメントについては、クオリティーフィルタリングリード(phred>30)を使用した。マッピングされたリードを、ゲノムアラインメント(Bowtie2、GRCh37)によってクロスチェックした。成熟miRNAリードをカウントし(isomiRシーケンスを要約した)、マッピングされたリードの総数に対してカウント毎100万(CPM)として基準化した。CPM値を統計分析に使用した(下を参照されたい)。
qPCR分析を先に記載の通りに実施した(20)。要約すると、Universal cDNA Synthesis Kit II(Exiqon、デンマーク)を使用して、総RNA2μlをcDNAに逆転写した。Exilent SYBR(登録商標)Green Master MixとLNA修飾プライマーペア(Exiqon、デンマーク)を使用して、qPCR増幅用にcDNAを1:50で予備希釈した。LC480-II(Roche Diagnostics、ドイツ)上で96ウェルまたは384ウェルフォーマット中でqPCR増幅を行った。二次導関数法を使用してCq値を決定した。合成スパイクインコントロール(Exiqon、デンマーク)の組合せを使用して、RNA抽出、cDNA合成およびqPCR増幅の堅牢性を評価した。miR-23a-3pとmiR-451aの比を使用して溶血を評価した(21)。注目すべきことに、溶血または高い分析上の分散性に起因して失敗した試料はなかった。
カテゴリ変数について発見コホートと検証コホートの間の患者特性の差をカイ2乗検定によって、連続変数についてそれらの差をウィルコクソンの順位和検定によって、検定した。
実施例1
発見コホートにおける術後肝機能障害の予測miRNAパネルの確立
2012年2月~2016年4月の間に肝切除を受けたmCRC、HCC、またはCCCのいずれかの合計48人の患者を本発明者らの発見コホートに含めた。代表コホートを得るために、術後LDを罹患する21人の患者を、基本的特性、肝機能、および肝切除の程度に基づいて術後LDのない27人の患者にマッチ化させた。続いて、さらなる24人の患者を、前向きの、臨床的に適切な検証コホートとして利用した。患者特性を表2に示し、発見コホートと検証コホートの間で比較した。注目すべきことに、発見コホートの選別を考慮すると、発見コホートでは大量肝切除を受ける患者の数が有意に高かったが、この数は、ICGクリアランス値およびガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ値の有意な悪化と並行していた。
独立検証コホートにおいて発見されたmiRNA比の検証
特定されたmiRNA比の臨床的有用性を確認するために、2組のmiRNAペアの予測能について、術後LDのない19人と術後LDのある5人の24人の患者からなる独立した前向き検証コホートにおいて検証したが、手術後LD30%の自然発病率を示した。miRNAペア122-5p/151a-5pについて図3AにおよびmiRNAペア151a-5p/192-5pについて図3Bに示したように、対照と比較してLD患者では、すでにこの小さな試料サイズ内で、差次的に調節されたmiRNAへと向かう強い傾向が存在した。ROC分析によって測定した多変量モデルの診断能は、2組のmiRNAペアに対して優れたAUC0.80を示した(図3C)。さらに、2つのカットオフが、それぞれ、p=0.018でカットオフP>0.59(図3D)に対しておよびp=0.036でカットオフP>0.68(図3E)に対して、術後LDを予測できることを検証した。
術後LDについて発見したmiRNA比との他の予測因子との比較
次に、miRNAに基づく予測モデルの性能を組合せデータセット(N=72)において評価した。したがって、2つのカットオフの診断能を、感度(SN)、特異度(SP)、陽性適中率(PPV)、陰性適中率(NPV)、およびオッズ比(OR)を使用して例示した。低ストリンジェンシーのカットオフ(>0.59)はバランスの取れたPPV値およびNPV値(それぞれ0.80および0.81)をもたらしたが、いっぽう、ストリンジェントなカットオフ(>0.68)は、許容されるNPV 0.74とともに、PPV 1.0という結果であり(図4A)、このことは、検査で陽性であったすべての患者が術後LDを罹患したが、いっぽう、検査で陰性であった患者の74%は術後LDに罹患しなかったことを示す。逆に、検査で陰性であった患者の26%は実際に術後LDを罹患した。有害事象のORはそれぞれ15.92(p<0.0001)および無限大(p<0.0001)であった。マイクロRNAモデルについて受信者操作特性(ROC)曲線分析を実施して、その性能を標準的な肝機能パラメータの性能と比較した。miRNAモデルについてROC曲線分析を実施し、標準的な肝機能パラメータのROC曲線と比較した(図4B)。miRNAモデルについてAUC0.76を観察したが、これは、ICGの血漿消失率および停滞率ならびにアラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)など標準血液パラメータを含めて、他のパラメータのAUCを上回った。最後に、他の有害な術後転帰のORについて、両方のカットオフモデルについて分析した。重度罹患のORは、両方のカットオフについて有意に達した(図4C)。死亡のORは低ストリンジェンシーのカットオフについて有意であることが見いだされたが、いっぽう、高ストリンジェンシーのカットオフは、同じ傾向を示したが、有意ではなかった(図4D)。さらに、本発明者らのカットオフを満たした患者は、ICUに有意により長く滞在し、長期間入院したままであることがわかった(図4E、F)。
これら新規のマーカーは、手術から利益を受けることがない、または潜在的に致命的な合併症を罹患さえするおそれがある、患者を特定するのに改善された戦略を提供する。その結果、新規のマーカーは、簡便で費用効果が高く、非侵襲的な様式で、個々の患者の特定のリスクプロファイルに外科的戦略を適合させることを可能にする。このことは、肝腫瘍の患者に肝臓切除を個別化し、それによって治療効果、患者の生活の質を向上させ、医療費を劇的に削減する、道を開く可能性がある。
手術の時点の選別をガイドするための、肝切除後の肝機能回復の動的監視
肝切除後の術後転帰に関するmiRNA比の予測可能性を検証した後、手術後のmiRNAペアの動的変化を決定して、肝機能との動的変化の関連を評価した。したがって、3つの患者群のマッチ化コホートを研究に含めた:1:術後肝機能障害がない通常の肝切除の患者(N=7);2:術後肝機能障害がある通常の肝切除の患者(N=8);3:増大術後肝再生とともにALPPS手技を受ける患者(N=8、図5Aおよび以下の説明の手技に関する詳細を参照されたい)。患者群の詳細を下の表3に提供する。
[態様1]特に肝部分切除後の、肝機能障害に関する対象のリスクを判定するin vitroの方法であって:
a)前記対象から試料を用意するステップと、
b)前記試料において、miR-151a、miR-192およびmiR-122からなる群から選択される少なくとも1種のmiRNAの発現レベルを決定し、
i.b)の発現レベルを少なくとも1つのリファレンス発現レベルと比較するステップ、または
ii.b)で決定された発現レベルに基づいてmiR-151aとmiR-192との比および/またはmiR-122とmiR-151aとの比を特定し、前記発現レベルの比をリファレンス発現レベルの比と比較するステップと、
c)ステップi)またはステップii)の結果から試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類するステップであって、それぞれのクラスは「高リスク」および「低リスク」の少なくとも2つのカテゴリのうちの1つである、前記分類するステップと、
を含む、上記方法。
[態様2]miR-151a、miR-192およびmiR-122の発現レベルが決定される、態様1に記載のin vitroの方法。
[態様3]「リスクなし」および「中リスク」のカテゴリのさらなるクラスを含む、態様1または2に記載のin vitroの方法。
[態様4]リファレンス発現レベルは、健常な対象の、もしくは術後肝機能障害のない対象の、またはそれらの群の、miR-151a、miR-192およびmiR-122からなる群から選択される、少なくとも1種のmiRNAの発現レベルである、態様1~3のいずれか1に記載のin vitroの方法。
[態様5]リファレンス発現レベルの比は、健常な対象の、もしくは術後肝機能障害のない対象の、またはそれらの群の、miR-151aとmiR-192の発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aの発現レベルの比である、態様1~3のいずれか1に記載のin vitroの方法。
[態様6]「低リスク」として分類される対象は肝部分切除を受け、「中リスク」として分類される対象は肝部分切除の前に肝再生の刺激を受け、「高リスク」として分類される対象は肝部分切除を受けない、態様1~5のいずれか1に記載のin vitroの方法。
[態様7]「中リスク」として分類される対象は、肝部分切除の前に処置を受け、該処置は、ネオアジュバント化学療法、門脈塞栓術、段階的肝切除のための会合肝区画化と門脈結紮(ALPPS)、運動介入(「プレハビリテーション」)または門脈高血圧を軽減する薬理学的療法、からなる群から選択される、態様6に記載のin vitroの方法。
[態様8]「高リスク」として分類される対象は、肝移植、緩和的化学療法、ラジオ波焼灼療法、または肝動脈化学塞栓療法(TACE)を受ける、態様6に記載のin vitroの方法。
[態様9]対象の肝再生刺激の再生の成功を監視するin vitroの方法であって、
a)前記対象から試料を用意するステップと、
b)前記試料において、miR-151aとmiR-192の発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aの発現レベルの比を決定するステップと、
c)リファレンス試料において、miR-151aとmiR-192の発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aの発現レベルの比を決定するステップであって、リファレンス試料は対象の早期の試料である、前記決定するステップと、
d)b)の発現レベルの比をc)の発現レベルの比と比較するステップと、
e)ステップd)の比較の結果から、前記対象の試料を「再生の成功」または「再生の成功なし」の2つのカテゴリのうちの1つに分類するステップと、
を含む、上記方法。
[態様10]肝再生刺激は、門脈塞栓術による肝肥大の誘導、段階的肝切除のための会合肝区画化と門脈結紮(ALPPS)による肝肥大の誘導、全体的な適合度を改善する運動介入(「プレハビリテーション」)、および門脈高血圧を軽減する薬理学的療法からなる群から選択される、態様9に記載のin vitroの方法。
[態様11]対象は、肝臓の悪性病変、好ましくは転移性結腸直腸がん、肝細胞癌もしくは胆管細胞癌を罹患する、または良性肝腫瘍、肝嚢胞および/もしくは肝寄生虫を罹患する、態様1~10のいずれか1に記載のin vitroの方法。
[態様12]試料は、血液、血清、血漿、特に乏血小板血漿、リンパ液、尿、唾液および生検プローブからなる群から選択される、態様1~11のいずれか1に記載のin vitroの方法。
[態様13]試料の発現レベルまたは発現レベルの比は、分類モデルを使用して、リファレンスの発現レベルまたは発現レベルの比と比較される、態様1~12のいずれか1に記載のin vitroの方法。
[態様14]分類モデルは、リファレンスとの比較の結果から対象の試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類する、態様1~13のいずれか1に記載のin vitroの方法。
[態様15]分類モデルは、ロジスティック回帰モデル、サポートベクターマシンモデル、および決定木モデルからなる群から選択される、態様13または14のいずれか1に記載のin vitroの方法。
[態様16]発現レベルは、シーケンシングベースの方法、特に次世代シーケンシング、アレイベースの方法およびPCRベースの方法、特に定量的PCRベースの方法からなる群から選択される方法を使用して決定される、態様1~15のいずれか1に記載のin vitroの方法。
[態様17]a)対象の試料において、miR-151a、miR-192およびmiR-122からなる群から選択される、少なくとも1種のマイクロRNAの発現レベルを検出することができる検出試薬と、
b)リファレンス発現レベルと、
c)a)の発現レベルをb)の発現レベルと比較するための、および対象の試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類するための分類モデルを含むソフトウェアであって、それぞれのクラスは、特に肝部分切除後の、肝機能障害に関する「高リスク」および「低リスク」の少なくとも2つのカテゴリのうちの1つである、前記ソフトウェアと、
を含む、パーツのキット。
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Claims (17)
- 肝部分切除後の、肝機能障害に関する対象のリスクを判定するin vitroの方法であって:
a)前記対象から調製された血液試料において、miR-151a及びmiR-192の発現レベルを決定し、
i.a)で決定された発現レベルに基づいてmiR-151aとmiR-192との比を特定し、前記発現レベルの比をリファレンス発現レベルの比と比較するステップ、または
ii.miR-151a及びmiR-192の発現レベルをリファレンス発現レベルと比較するステップと、
b)ステップi)またはステップii)の結果から試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類するステップであって、それぞれのクラスは「高リスク」および「低リスク」の少なくとも2つのカテゴリのうちの1つであり、確率スコア0.58未満(P<0.58)は対象を「低リスク」として分類し、確率スコア0.68超(P>0.68)は対象を「高リスク」として分類する、前記分類するステップと、
を含む、上記方法。 - ステップ(a)においてmiR-122の発現レベルをさらに決定し、
ステップ(a)(i)においてmiR-122とmiR-151aとの比をさらに特定する、又は、ステップ(a)(ii)においてmiR-151a、miR-192及びmiR-122の発現レベルをリファレンス発現レベルと比較する、
請求項1に記載のin vitroの方法。 - ステップ(a)(i)においてmiR-151a、miR-192およびmiR-122の発現レベルが決定される、請求項2に記載のin vitroの方法。
- 「中リスク」のカテゴリのさらなるクラスを含み、確率スコア0.58超(P>0.58)且つ0.68未満(P<0.68)は対象を中リスクとして分類する、請求項1~3のいずれか1項に記載のin vitroの方法。
- リファレンス発現レベルは、健常な対象の、もしくは術後肝機能障害のない対象の、またはそれらの群の、miR-151a、miR-192およびmiR-122からなる群から選択される、少なくとも1種のmiRNAの発現レベルである、請求項1~4のいずれか1項に記載のin vitroの方法。
- リファレンス発現レベルの比は、健常な対象の、もしくは術後肝機能障害のない対象の、またはそれらの群の、miR-151aとmiR-192との発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aとの発現レベルの比である、請求項2~4のいずれか1項に記載のin vitroの方法。
- 肝部分切除後の、対象の肝再生刺激の再生の成功を監視するin vitroの方法であって、
a)前記対象から調製された血液試料において、miR-151aとmiR-192との発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aとの発現レベルの比を決定するステップと、
b)リファレンス試料において、miR-151aとmiR-192との発現レベルの比およびmiR-122とmiR-151aとの発現レベルの比を決定するステップであって、リファレンス試料は対象の早期の試料である、前記決定するステップと、
c)a)の発現レベルの比をb)の発現レベルの比と比較するステップと、
d)ステップc)の比較の結果から、前記対象の試料を「再生の成功」または「再生の成功なし」の2つのカテゴリのうちの1つに分類するステップであって、確率スコア0.58未満(P<0.58)は対象を「再生の成功」として分類し、確率スコア0.68超(P>0.68)は対象を「再生の成功なし」として分類する、前記分類するステップと、
を含む、上記方法。 - 肝再生刺激は、門脈塞栓術による肝肥大の誘導、段階的肝切除のための会合肝区画化と門脈結紮(ALPPS)による肝肥大の誘導、全体的な健康状態を改善する運動介入(「プレハビリテーション」)、および門脈高血圧を軽減する薬理学的療法からなる群から選択される、請求項7に記載のin vitroの方法。
- 対象は、肝臓の悪性病変を罹患する、または良性肝腫瘍、肝嚢胞および/もしくは肝寄生虫を罹患する、請求項1~8のいずれか1項に記載のin vitroの方法。
- 肝臓の悪性病変が、転移性結腸直腸がん、肝細胞癌、又は胆管細胞癌である、請求項9に記載のin vitroの方法。
- 血液試料は、血清、血漿、及び乏血小板血漿からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載のin vitroの方法。
- 試料の発現レベルまたは発現レベルの比は、分類モデルを使用して、リファレンスの発現レベルまたは発現レベルの比と比較される、請求項1~11のいずれか1項に記載のin vitroの方法。
- 分類モデルは、リファレンスとの比較の結果から対象の試料を少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類する、請求項1~12のいずれか1項に記載のin vitroの方法。
- 分類モデルは、ロジスティック回帰モデル、サポートベクターマシンモデル、および決定木モデルからなる群から選択される、請求項12又は13に記載のin vitroの方法。
- 発現レベルは、シーケンシングベースの方法、アレイベースの方法およびPCRベースの方法からなる群から選択される方法を使用して決定される、請求項1~14のいずれか1項に記載のin vitroの方法。
- シーケンシングベースの方法が、次世代シーケンシングである、請求項15に記載のin vitroの方法。
- PCRベースの方法が、定量的PCRベースの方法である、請求項15又は16に記載のin vitroの方法。
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