JP7045043B2 - 洗浄性改善表面処理方法及び洗浄性改善部材 - Google Patents
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なお、ここでの洗浄は、部材表面に付着した汚れを水(例えば水道水、工業用水など)或いは水を主成分とする液体(以下、これらを水等と称する)を用いて洗い流すことをいうものとする。水等をかけ流すだけで洗浄する場合、水等で流しながら擦り洗いをする場合、水等を介在した超音波洗浄・バブル洗浄などが想定されるが、ここでは、主に水等をかけ流して洗浄する場合を言うものとする。
また、洗浄性とは、洗浄後の残渣の量の程度(洗浄後に部材表面に残った汚れの量の程度)をいうものとする。
水の接触角が65°以下で、かつ、クルトシス値(Pku)が3以上となるように部材の表面に微小凹凸を無数にランダムに形成することで、部材の当該表面の洗浄性を改善する部材の洗浄性改善表面処理方法であって、
前記微小凹凸の凹凸ピッチの最小値が1.0μm以上であり最大値が50μm以下であり、その凹部深さの最小値が0.3μm以上であり最大値が30μm以下であることを特徴とする。
前記微小凹凸の凹凸ピッチの最小値が1.0μm以上であり最大値が50μm以下であり、その凹部深さの最小値が0.3μm以上であり最大値が30μm以下であることを特徴とする。
かかる知見は、微小凹凸(微小凹部)を無数にランダムに表面に形成した部材に関して、従来知られていない作用効果であり、上述したように、これまでの知見からは予測不能な作用効果である。
この図1(B)の状態で、図1(B)の平面において上方(すなわち、重力方向上方)から水道水をかけて小麦粉ペーストを洗い流した後、1時間自然乾燥させた状態を、図2(A)に示す。
図2(B)には、図2(A)の各試験片の表面(水洗い後、1時間自然乾燥させた状態)を拡大した観察画像を示す。
図3に示したように、水のかけ流し洗い試験によれば、「MD処理(1)」、「MD処理(4)」、「MD処理A」、「MD処理B]について、洗浄性の改善効果が高いことが確認できた。
この一方、「SUS304 ♯400」(未処理)、「SUS304 ♯700」(未処理)、「MD処理(2)」、「MD処理(3)」、「MD処理C」の試験片については、洗浄性の改善効果は確認できなかった。
また、後述するものを含めて、本実施の形態における表面形状データ、表面の3D画像は、KEYENCE社製の形状測定レーザーマイクロスコープVK-X1000を用いて取得した。
これまで、本発明者等は、試験片の表面に無数にランダムに形成した微小凹凸(微小凹部)の凹凸ピッチや凹部深さを変えて、粉体付着の抑制効果を確認してきたが、粉体付着の場合には、微小凹凸(微小凹部)の凹凸ピッチや凹部深さが同じ範囲にあれば、得られる粉体の抑制効果も同じレベルにあった。
すなわち、今回の試験(実験)から得られた知見としては、水のかけ流し洗いの試験による洗浄性の改善効果については、微小凹凸(微小凹部)の凹凸ピッチや凹部深さだけでは整理できないことが解った。すなわち、例えば、図3に示したように、MD処理(2)、MD処理B、MD処理Cは、凹凸ピッチ・深さは同じスケールであるが、洗浄性の良し悪しに違いがある。
そこで、本発明者等は、微小凹凸を形成した表面の水の接触角(ぬれ性)、クルトシス値(凹凸の尖り具合を示す値)についても調べてみた。
ここでは、協和界面科学株式会社のポータブル接触角計PCA-11を用いて、部材の表面の水の接触角、クルトシス値を取得(測定)した。
「MD処理(3)」の試験片の表面の水の接触角は94.7°であり、クルトシス値(Pku)は2.29であった。
「MD処理(4)」の試験片の表面の水の接触角は39.0°であり、クルトシス値(Pku)は3.64であった。
「MD処理A」の試験片の表面の水の接触角は38.4°であり、クルトシス値(Pku)は4.17であった。
「MD処理B」の試験片の表面の水の接触角は57.7°であり、クルトシス値(Pku)は3.37であった。
「MD処理C」の試験片の表面の水の接触角は91.0°であり、クルトシス値(Pku)は2.88であった。
クルトシス値(Pku)は、高さ分布の鋭さ、とがり度を示す指標の一つである(図8(B)参照)。
Pku=3:高さ分布が正規分布である
Pku>3:表面に鋭い山や谷が多い
Pku<3:表面に鋭い山や谷が少ない
ことを示す。
クルトシス値(Pku)が3より小さいと撥水性、3より大きいと親水性表面となる。洗浄力の違いは単に撥水・親水性の付与だけでなく、Pkuで表される高さ分布の鋭さが関与する。Pku<3の表面上では、水洗時に水が表面全体に広がりにくいため、付着した汚れは落としにくい。一方、Pku>3の表面上では、表面全体に水が広がるため、付着した汚れに対する洗浄力が向上する。複合(素材の異なる複数材料により構成される)表面の接触角はCassie-Baxterの式で表される。
cosφ=f1cosθ1+f2cosθ2 (Cassie-Baxterの式)
ここで、f1,f2は接触面の割合、θ1、θ2は物質固有の接触角、f2が空気の場合,θ2=180°のため,
cosφ=f1cosθ1+1-f1 となる。
本実施の形態において、クルトシス値を測定した条件は、図9に示した通りである。
本実施の形態に係るMD処理(1)~(4)、MD処理A~Cについては、図4内にプロットとして示してある。ここで、比較対照(鏡面)はその性質上、尖り度、クルトシス値(Pku)を表すのは困難であるので、比較対照(SUS304 ♯700)の試験片表面のクルトシス値は正規分布であるPku=3とした。
ここで、各表面処理面の接触角とクルトシス値の分布を見ると、クルトシス値が3以上である処理面は親水傾向であると言える。本実施の形態での小麦粉の洗浄性試験の結果と併せると、MD処理(1)、(4)及びMD処理A、Bは洗浄性が良好である一方、MD処理(2)、(3)及びMD処理Cは洗浄性が低い。これは、単純に水馴染みが良い親水面(水の接触角が65°以下)であることだけでなく、クルトシス値が一定の数値以上(3以上)であり、表面に鋭い山と谷が形成されていることが関与するものと考えられる(図5参照)。
すなわち、本発明は、水分・油分・その他原材料を任意の割合で含む食品残渣等に対して洗浄性の改善効果を有する。
すなわち、本発明は、水分・油分・その他原材料を任意の割合で含む医薬品残渣、化粧品残渣などにも洗浄性の改善効果を有する。
なお、化学研磨(化学エッチング)としては、例えば、塩酸・硝酸・硫酸・リン酸などの酸性薬剤や塩化鉄(III)などを任意の割合で水溶液に調製し使用することが想定される。
また、水などの液体と共にショットを高圧で噴射するウォータージェットも使用することができる。
すなわち、「ショット材投射処理により(或いは基づいて)、その表面に微小凹部を形成した」という表現を用いる代わりに、「部材の表面に、微小凹凸(或いは微小凹部)を無数にランダムに形成した」などの特定方法(表現)を用いている。
しかしながら、先行技術などとの対比において、上記特定方法(表現)では、ショット材投射処理により形成された凹凸表面を、他と区別した特徴的な特定方法(表現)として採用することが難しくなる場合も想定される。
従って、ショット材投射処理により形成された微小凹凸を形状、構造、特性等により特定することには、本願出願時において不可能・非現実的事情が存在しており、「ショット材投射処理により(或いは基づいて(転写などの場合を考慮))表面に微小凹凸を形成することで」という表現を用いざるを得ない場合があることについて、以下に説明しておく。
また、数ミリオーダーのメディアを衝突させて残留応力を付与して疲労限を改善するショットピーニング処理からは、ショット材投射処理を施した表面が洗浄性改善効果などを有するといったことは到底予測できないものである。
以上のように、ショット材投射処理により形成された微小凹凸を形状、構造、特性等により特定することには、本願出願時において不可能・非現実的事情が存在している。
Claims (8)
- 水の接触角が65°以下で、かつ、クルトシス値(Pku)が3以上となるように部材の表面に微小凹凸を無数にランダムに形成することで、部材の当該表面の洗浄性を改善する部材の洗浄性改善表面処理方法であって、
前記微小凹凸の凹凸ピッチの最小値が1.0μm以上であり最大値が50μm以下であり、その凹部深さの最小値が0.3μm以上であり最大値が30μm以下であることを特徴とする部材の洗浄性改善表面処理方法。 - 前記微小凹凸を、ショット材を投射する投射処理に基づいて形成することを特徴とする請求項1に記載の部材の洗浄性改善表面処理方法。
- 前記洗浄性が、水分・油分・その他原材料を任意の割合で含む食品残渣、水分・油分・その他原材料を任意の割合で含む医薬品残渣、或いは水分・油分・その他原材料を任意の割合で含む化粧品残渣に対する洗浄性であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の部材の洗浄性改善表面処理方法。
- 前記部材が、金属製或いは樹脂製メッシュ部材、金属製或いは樹脂製板状部材、または金属製或いは樹脂製の打ち抜き開口付き部材であることを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載の部材の洗浄性改善表面処理方法。
- 微小凹凸が無数にランダムに形成された部材の表面の水の接触角が65°以下で、かつ、クルトシス値(Pku)が3以上であり、
前記微小凹凸の凹凸ピッチの最小値が1.0μm以上であり最大値が50μm以下であり、その凹部深さの最小値が0.3μm以上であり最大値が30μm以下であることを特徴とする洗浄性改善部材。 - 前記微小凹凸は、ショット材を投射する投射処理に基づいて形成されたことを特徴とする請求項5に記載の洗浄性改善部材。
- 水分・油分・その他原材料を任意の割合で含む食品残渣、水分・油分・その他原材料を任意の割合で含む医薬品残渣、或いは水分・油分・その他原材料を任意の割合で含む化粧品残渣に対する洗浄性が改善されることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の洗浄性改善部材。
- 金属製或いは樹脂製メッシュ部材、金属製或いは樹脂製板状部材、または金属製或いは樹脂製の打ち抜き開口付き部材であることを特徴とする請求項5~7の何れか1つに記載の洗浄性改善部材。
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