JP7042111B2 - 防汚塗料組成物、防汚塗膜、防汚塗膜付き基材及びその製造方法、並びに防汚塗料組成物の貯蔵安定性の改善方法 - Google Patents
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Description
[1]硬化性オルガノポリシロキサン(A)、下記一般式(B1)で表される極性基含有シラン化合物(B)、及び下記一般式(C1)で表されるシラン化合物(C)を含む、防汚塗料組成物。
(R1O)(3-p)R2 pSi-R3-Z ・・・(B1)
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~10の1価の炭化水素基を示し、R3はヘテロ原子を有する基が介在してもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、Zは極性基を示し、pは0又は1を示す。)
SiW(4-q)R4 q ・・・(C1)
(式中、Wはメトキシ基又はケトオキシム基を示し、R4は1価の炭化水素基を示し、qは0~2の整数を示す。)
[2]前記一般式(B1)におけるZがアミノ基である、[1]に記載の防汚塗料組成物。
[3]前記極性基含有シラン化合物(B)が、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、及び3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群より選択される1種以上を含む、[1]又は[2]に記載の防汚塗料組成物。
[4]前記シラン化合物(C)が、テトラメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、及びメチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シランからなる群より選択される1種以上を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
[5]更に、防汚剤(D)を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
[6]更に、シリコーンオイル(E)及び/又はエーテル基含有重合体(F)を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
[7]更に、前記極性基含有シラン化合物(B)及び前記シラン化合物(C)以外の有機ケイ素架橋剤(H)を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の防汚塗料組成物を調製するためのキットであって、前記硬化性オルガノポリシロキサン(A)を含有する主剤コンポーネントと、前記極性基含有シラン化合物(B)及び前記シラン化合物(C)を含有する添加剤コンポーネントとがそれぞれ別個に包装された多液型の形態にある、キット。
[9]前記主剤コンポーネントと、前記添加剤コンポーネントと、前記有機ケイ素架橋剤(H)を含有する硬化剤コンポーネントとがそれぞれ別個に包装された多液型の形態にある、[8]に記載のキット。
[10][1]~[7]のいずれかに記載の防汚塗料組成物を硬化してなる防汚塗膜。
[11][10]に記載の防汚塗膜を基材上に有する、防汚塗膜付き基材。
[12]前記基材が船舶、水中構造物、及び漁業資材からなる群より選択される、[11]に記載の防汚塗膜付き基材。
[13][1]~[7]のいずれかに記載の防汚塗料組成物を基材に塗布又は含浸し、塗布体又は含浸体を得る工程(1)、及び前記工程(1)で得られた塗布体又は含浸体を硬化する工程(2)を有する、防汚塗膜付き基材の製造方法。
[14][1]~[7]のいずれかに記載の防汚塗料組成物を硬化させてなる塗膜を形成する工程(i)、及び前記塗膜を基材に貼付する工程(ii)を有する、防汚塗膜付き基材の製造方法。
[15]前記硬化性オルガノポリシロキサン(A)を含有する主剤コンポーネントと、前記一般式(B1)で表される極性基含有シラン化合物(B)を含有する添加剤コンポーネントとがそれぞれ別個に包装された多液型の形態にある、防汚塗料組成物を調製するためのキットにおける防汚塗料組成物の貯蔵安定性の改善方法であって、
前記添加剤コンポーネントに、防汚塗料組成物の貯蔵安定性を改善するための有効成分として前記一般式(C1)で表されるシラン化合物(C)を配合する、防汚塗料組成物の貯蔵安定性の改善方法。
また、本発明によれば、前記防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜、防汚塗膜付き基材及びその製造方法、多液型の形態にある防汚塗料組成物を調製するためのキット、並びに前記キットにおける貯蔵安定性の改善方法を提供することができる。
本発明の防汚塗料組成物(以下、単に「塗料組成物」ともいう。)は、硬化性オルガノポリシロキサン(A)、極性基含有シラン化合物(B)、及びシラン化合物(C)を含む。
本発明の防汚塗料組成物は、防汚塗膜の防汚性を高めることを目的として、硬化性オルガノポリシロキサン(A)を含有する。硬化性オルガノポリシロキサン(A)は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
R5 (3-r)R6 rSiO-(SiR7 2O)s-SiR5 (3-r)R6 r ・・・(A1)
式(A1)中、R5及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~16のアルキル基、炭素数2~16のアルケニル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数7~16のアラルキル基、又は炭素数1~16のハロゲン化アルキル基を示し、R6は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、又は加水分解性基を示す。また、rは1~3の整数を示し、sは10~10,000を示す。
R6における加水分解性基としては、例えば、オキシム基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アミノ基、アミド基、及びアミノオキシ基等が挙げられる。
R6におけるオキシム基としては、炭素数1~10のオキシム基が好ましく、例えば、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、及びメチルイソプロピルケトオキシム基等が挙げられる。
R6におけるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、及びエトキシエトキシ基等が挙げられる。
なお、本明細書において、1級アミノ基とは、-NH2で表される基であり、2級アミノ基とは、-NH2の1つの水素原子がアルキル基等で置換された基を意味し、3級アミノ基とは、-NH2の2つの水素原子がアルキル基等で置換された基を意味する。
なお、複数存在するR6はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
R6がヒドロキシ基である場合、rは好ましくは1であり、R6がヒドロキシ基以外の置換基である場合、rは好ましくは2である。
なお、sは、-(SiR7 2-O)-の平均繰り返し数を意味する。
本発明の防汚塗料組成物は、防食塗膜に対する層間付着性を向上させることを目的として、下記一般式(B1)で表される極性基含有シラン化合物(B)(以下、単に「極性基含有シラン化合物(B)」ともいう。)を含有する。極性基含有シラン化合物(B)は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
式中、R1及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~10の1価の炭化水素基を示し、R3はヘテロ原子を有する基が介在してもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、Zは極性基を示し、pは0又は1を示す。
R1が複数存在する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子等が挙げられる。
ヘテロ原子を有する基としては、-NRa-基(Raは水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を示す)、エーテル基(-O-)、チオエーテル基(-S-)、エステル基(-C(=O)-O-)、アミド基(-C(=O)-NRb-、Rbは水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を示す)等が挙げられ、中でも-NRa-基が好ましく、-NH-基がより好ましい。
R3としては、-NRa-基が介在する炭素数2~7の2価の炭化水素基、及び炭素数1~5の2価の炭化水素基が好ましく、-NRa-基を介在する炭素数2~7の2価の炭化水素基がより好ましく、-CH2CH2CH2NHCH2CH2-基が更に好ましい。
極性基含有シラン化合物(B)としては、防食塗膜との層間付着性を向上させる観点、及び入手容易性の観点から、上記R3がトリメチレン基又は-CH2CH2CH2NHCH2CH2-基であり、極性基Zが1級アミノ基である、すなわち3-アミノプロピル基、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基を有するものが好ましい。
また、上記式(B1)中のR1がメチル基であることが好ましい。
上記3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基を有する極性基含有シラン化合物(B)としては、NH2C2H4NHC3H6Si(OCH3)3、NH2C2H4NHC3H6Si(OC2H5)3、NH2C2H4NHC3H6Si(OC3H7)3、NH2C2H4NHC3H6Si(OC4H9)3、NH2C2H4NHC3H6Si(CH3)(OCH3)2、NH2C2H4NHC3H6Si(CH3)(OC2H5)2、NH2C2H4NHC3H6Si(CH3)(OC3H7)2、NH2C2H4NHC3H6Si(CH3)(OC4H9)2等が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物は、貯蔵安定性改善を目的として、下記一般式(C1)で表されるシラン化合物(C)(以下、単に「シラン化合物(C)」ともいう。)を含有する。シラン化合物(C)は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
式中、Wはメトキシ基又はケトオキシム基を示し、R4は1価の炭化水素基を示し、qは0~2の整数を示す。
複数存在するWは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R4が複数存在する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、硬化性オルガノポリシロキサン(A)、極性基含有シラン化合物(B)、シラン化合物(C)の他に、必要に応じて、防汚剤(D)、シリコーンオイル(E)、エーテル基含有重合体(F)、無機充填剤(G)、極性基含有シラン化合物(B)及びシラン化合物(C)以外の有機ケイ素架橋剤(H)、硬化触媒(I)、その他着色顔料(J)、有機溶剤(K)、タレ止め-沈降防止剤(L)、及び酵素(M)等を含有していてもよい。任意成分は、1種でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明において、例えば、任意成分として、防汚剤(D)を含有する塗料組成物、シリコーンオイル(E)及び/又はエーテル基含有重合体(F)を含有する塗料組成物、並びに極性基含有シラン化合物(B)及びシラン化合物(C)以外の有機ケイ素架橋剤(H)を含有する塗料組成物等を好ましく挙げることができる。
本発明の防汚塗料組成物は、形成させる防汚塗膜の防汚性を向上させることを目的として、防汚剤(D)を含有してもよい。防汚剤(D)は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、形成される防汚塗膜の防汚性を向上させることを目的として、シリコーンオイル(E)を含有してもよい。
R8 3SiOR10(SiR9 2OR10)tSiR8 3 ・・・(E1)
式(E1)中、R8及びR9はそれぞれ独立に、水素原子、又は構造中にヘテロ原子を有する基を有していてもよい炭素数1~50のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を示し、R10は、単結合、又はヘテロ原子を有する基が介在してもよい炭素数1~50の2価の炭化水素基を示す。tは10~1,000の整数を示す。
ヘテロ原子を有する基としては、例えば、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、アミド基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及びチオール基等が挙げられる。構造中にヘテロ原子を有する基を含有するとは、例えばアルキル基である場合には、アルキル基の炭素-炭素結合の間にヘテロ原子を有する基が介在する構造を有するもの、又はアルキル基の水素原子がヘテロ原子を有する基で置換されたものが挙げられる。ヘテロ原子を有する基は、1種でも、又は2種以上を有していてもよい。
シリコーンオイル(E)としては、R8及びR9がアルキル基のみで構成されたものや、アルキル基及びアリール基で構成されたものが好ましい。
エーテル基を有するアルキル基としては、例えば、下記の化学構造を有するものが挙げられる。
-R11(C2H4O)a(C3H6O)bR12
式中、R11は炭素数1~20のアルキレン基を示し、R12は炭素数1~20のアルキル基を示し、a及びbはそれぞれ0~30の整数を示し、a+bは1以上の整数である。
なお、本明細書において、R8及びR9が全てメチル基で構成されたシリコーンオイルを「ポリジメチルシロキサン(無変性)」と呼称する。また、R8及びR9がメチル基及びエーテル基を有するアルキル基で構成されたシリコーンオイルを「エーテル変性ポリジメチルシロキサン」と呼称する。
なお、本明細書において、R8及びR9がメチル基及びフェニル基で構成されたシリコーンオイルを「フェニル変性ポリジメチルシロキサン」とも呼称する。
複数存在するR10は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R10が、エーテル基が介在する炭素数1~50の2価の炭化水素基である場合、例えば、下記の化学構造をもつものが挙げられる。
-R13(C2H4O)c(C3H6O)dR14-
式中、R13、R14はそれぞれ独立に炭素数1~10のアルキレン基を示し、c及びdはそれぞれ0~30の整数を示し、c+dは1以上の整数である。
本発明の防汚塗料組成物は、防汚塗膜の防汚性を向上させることを目的として、エーテル基含有重合体(F)を含有してもよい。
エーテル基含有重合体(F)としては、下記一般式(F1)で表される不飽和単量体に由来する構成単位を有する重合体であることが好ましい。
H2C=CR15X1[(R16O)u(R17O)v]R18 ・・・(F1)
式(F1)中、R15は水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を示し、R16はエチレン基又はプロピレン基を示し、R17は炭素数4~10の2価の炭化水素基を示し、R18は水素原子又は炭素数1~30の1価の炭化水素基を示し、uは1~50の整数を示し、vは0~50の整数を示し、X1はエステル結合、アミド結合、又は単結合を示す。)
式(F1)中、vは0~50の整数であり、好ましくは0~20の整数であり、より好ましくは0である。
なお、X1がエステル結合又はアミド結合である場合、カルボニル炭素が、R15が結合する炭素原子と結合することが好ましい。
式(F2)中、R19は水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基を示し、R20は水素原子又は炭素数1~30の1価の炭化水素基を示し、X2はエステル結合、アミド結合、又は単結合を示す。
本発明の防汚塗料組成物は、該塗料組成物の流動性、及びチクソトロピー性を向上させることを目的として、無機充填剤(G)を含有してもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、防汚塗膜の硬化性及び塗膜強度を向上させることを目的として、極性基含有シラン化合物(B)及びシラン化合物(C)以外の有機ケイ素架橋剤(H)を含有してもよい。有機ケイ素架橋剤(H)は、単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記有機ケイ素架橋剤(H)としては、下記一般式(H1)で表される化合物及び/又はその部分縮合物であることが好ましい。
R21 wSiY(4-w) (H1)
(式(H1)中、R21は、炭素数1~6の1価の炭化水素基を示し、Yは、それぞれ独立に、加水分解性基を示し、wは0~2の整数を示す。)
なお、wが2であるとき、複数存在するR21は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
なお、本発明において、例えば、前記式(H1)におけるYがメトキシ基又はケトオキシム基であるシラン化合物は、シラン化合物(C)であるので有機ケイ素架橋剤(H)から除かれる。一方、前記式(H1)におけるYがメトキシ基又はケトオキシム基であるシラン化合物の部分縮合物は、シラン化合物(C)ではないので、有機ケイ素架橋剤(H)である。
本発明の防汚塗料組成物は、形成される塗膜の硬化速度を向上させ、塗膜強度を向上させることを目的として、硬化触媒(I)を含有してもよい。
硬化触媒(I)としては、例えば、特開平4-106156号公報に記載された硬化触媒を挙げることができる。
ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫アセトアセトネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジペントエート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジネオデカノエート、ビス(ジブチルスズラウレート)オキサイド、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)錫、ビス(ジブチルスズアセテート)オキサイド、ジブチル錫ビス(エチルマレート)、及びジオクチル錫ビス(エチルマレート)等の錫化合物類;
テトライソプロポキシチタン、テトラ-N-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、及びチタニウムイソプロポキシオクチルグリコール等のチタン酸エステル類又はチタンキレート化合物;
ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛-2-エチルオクトエート、鉄-2-エチルヘキソエート、コバルト-2-エチルヘキソエート、マンガン-2-エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、及びアルコキシアルミニウム化合物等の有機金属化合物類;
酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、及びシュウ酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩類等が挙げられる。
本発明の防汚塗料組成物は、該塗料組成物及びその塗膜の意匠性及び視認性を向上させることを目的として、前記無機充填剤(G)を除くその他着色顔料(J)を含有してもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、該塗料組成物の粘度を低く保ち、スプレー霧化性を向上させることにより塗装作業性を向上させることを目的として、有機溶剤(K)を含有してもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、タレ止め-沈降防止剤(L)を含有してもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、防汚塗膜の防汚性を向上させることを目的として、酵素(M)を含有してもよい。
本発明の防汚塗料組成物は、通常、2つ以上のコンポーネントからなる多液型塗料として提供される。
これらの各コンポーネント(各液)は、それぞれ1種以上の成分を含有しており、別個に包装された後、缶等の容器に入れられた状態で貯蔵保管される。各コンポーネントの内容物を塗装時に混合することにより塗料組成物を調製する。すなわち、本発明は一側面において、本発明に係る防汚塗料組成物を調製するための、上記のようなコンポーネントからなるキットを提供する。
本発明に係る防汚塗料組成物を調製するためのキットは、硬化性オルガノポリシロキサン(A)を含有する主剤コンポーネント(X)と、極性基含有シラン化合物(B)及びシラン化合物(C)を含有する添加剤コンポーネント(Z)とがそれぞれ別個に包装された多液型の形態にある。本発明に係る塗料組成物を調製するためのキットとしては、硬化性オルガノポリシロキサン(A)を含有する主剤コンポーネント(X)と、有機ケイ素架橋剤(H)を含有する硬化剤コンポーネント(Y)と、極性基含有シラン化合物(B)及びシラン化合物(C)を含有する添加剤コンポーネント(Z)とがそれぞれ別個に包装された多液型の形態にあることが好ましい。
本発明に係る塗料組成物を調製するためのキットにおいて、極性基含有シラン化合物(B)及びシラン化合物(C)を含有する前記添加剤コンポーネント(Z)を長期保存する際に、主剤コンポーネント(X)及び硬化剤コンポーネント(Y)とは別個に保管することにより、極性基含有シラン化合物(B)の加水分解反応をより一層抑制することが出来るため、塗料組成物の貯蔵安定性を更に改善でき、防食塗膜に対する層間付着性を更に向上することができる。
本発明の防汚塗膜は、本発明の防汚塗料組成物から形成され、該防汚塗料組成物を硬化してなるものである。具体的には、例えば、本発明の防汚塗料組成物を基材等に塗布した後、乾燥させることにより防汚塗膜を形成することができる。
本発明に係る防汚塗膜付き基材は、本発明の防汚塗膜を基材上に有するものである。
本発明の防汚塗膜付き基材の製造方法は特に限定されないが、例えば、本発明の防汚塗料組成物を基材に塗布又は含浸させることにより、塗布体又は含浸体を得る工程(1)、及び該工程により基材に塗布又は含浸させた塗料組成物を硬化させる工程(2)を有する方法によって製造することができる。
本発明における防汚方法としては、本発明の防汚塗膜を使用するものであれば特に限定されないが、水生生物の付着を防止したい対象物(基材)を本発明の防汚塗膜又は積層防汚塗膜で被覆する方法等が挙げられる。
前記積層防汚塗膜は、防食塗膜の上に、本発明の防汚塗膜を有することが好ましい。該防食塗膜としては、反応硬化型樹脂系、熱可塑性樹脂系の防食塗膜が挙げられ、付着性の観点から反応硬化型樹脂系の防食塗膜が好ましい。反応硬化型樹脂としては、具体的にはシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
また、前記積層防汚塗膜は、本発明の防汚塗膜の上に、さらに本発明の防汚塗膜及びその他のシリコーン樹脂系防汚塗膜からなる群より選ばれる少なくとも1種の防汚塗膜を有してもよい。 本発明の防汚塗膜は、防汚性に優れ、該塗膜によって被覆された基材の水生生物による汚損を抑制することができる。
本発明に係る防汚塗料組成物の貯蔵安定性の改善方法は、硬化性オルガノポリシロキサン(A)を含有する主剤コンポーネントと、極性基含有シラン化合物(B)を含有する添加剤コンポーネントとが、それぞれ別個に包装された多液型の形態にある、防汚塗料組成物を調製するためのキットにおいて、前記極性基含有シラン化合物(B)を含有する添加剤コンポーネントに、シラン化合物(C)を配合することを特徴とする。
本発明に係る防汚塗料組成物の貯蔵安定性の改善方法に供されるキットとしては、前記主剤コンポーネントと、前記添加剤コンポーネントと、更に有機ケイ素架橋剤(H)を含有する硬化剤コンポーネントとが、それぞれ別個に包装された多液型の形態にあることが好ましい。
<エーテル基含有重合体(FA)溶液の製造例>
反応は常圧、窒素雰囲気下で行った。撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に、メチルアミルケトン 42.86gを仕込み、撹拌しながら内温が100℃になるまで加熱した。反応容器内のメチルアミルケトンの温度を100±5℃の範囲で保ちながら、NKエステル AM-90G(メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、新中村化学工業(株)製) 20g、イソブチルアクリレート 80g、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル) 4gからなる混合物を4時間かけて反応容器内に滴下した。その後同温度範囲を保ちながら2時間撹拌し、エーテル基含有重合体(FA)溶液を得た。
反応は常圧、窒素雰囲気下で行った。撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に、メチルアミルケトン 42.86gを仕込み、撹拌しながら内温が100℃になるまで加熱した。反応容器内のメチルアミルケトンの温度を100±5℃の範囲で保ちながら、NKエステル AM-90G 30g、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル) 4gからなる混合物と、サイラプレーン FM-0711(メタクリロイルオキシ基含有ジメチルポリシロキサン、JNC(株)製、平均分子量1,000) 70gとを、それぞれ4時間かけて反応容器内に滴下した。その後同温度範囲を保ちながら2時間撹拌し、エーテル基含有重合体(FB)溶液を得た。
<エーテル基含有重合体(F)溶液の固形分(質量%)>
重合体溶液1.0g(X1)を、1気圧、125℃の条件に保った恒温槽内で1時間保持し、揮発分を除去して不揮発分を得た。この不揮発分の量(X2(g))を測定し、下記式に基づいて、重合体溶液に含まれる固形分の含有率(%)を算出した。
エーテル基含有重合体(F)溶液の固形分(質量%)=(X2/X1)×100
E型粘度計(TV-25、東機産業(株)製)を用いて、液温25℃の重合体溶液の粘度(単位:mPa・s)を測定した。
重合体の重量平均分子量(Mw)を下記条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いて測定した。
GPC条件
装置:「HLC-8220GPC」(東ソー(株)製)
カラム:「TSKgel SuperH2000」及び「TSKgel SuperH4000」を連結(いずれも東ソー(株)製、内径6mm/長さ15cm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.500ml/min
検出器:RI
カラム恒温槽温度:40℃
標準物質:ポリスチレン
サンプル調製法:各製造例で調製された重合体溶液にTHFを加えて希釈した後、メンブレムフィルターで濾過して得られた濾物をGPC測定サンプルとした。
・配合成分
塗料組成物に用いられる配合成分を表2及び表3に示す。
なお、表2に示す硬化性オルガノポリシロキサン(A)及び無機充填剤(シリカ)(G)の混練物は、硬化性オルガノポリシロキサン(A)と無機充填剤(シリカ)(G)を表2に記載の量を用い、公知の方法で混練することにより得たものである。
表4に記載された配合量(質量部)に従って各成分を混合撹拌し、主剤コンポーネント(X)、硬化剤コンポーネント(Y)、及び添加剤コンポーネント(Z)からなる3液型塗料組成物である実施例1~15及び比較例1~3の防汚塗料組成物を調製した。
サンドブラスト板に、エポキシ樹脂系防食塗料(中国塗料(株)製「バンノー500」)を乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布し、常温下(23℃)で6時間乾燥して防食塗膜1を形成した。さらに、該防食塗膜1上に、ウレタン樹脂系防食塗料(中国塗料(株)製「CMPバイオクリンSG」)を乾燥後の厚さが100μmとなるように塗布し、常温下で6時間乾燥して防食塗膜2を形成した。その後、該防食塗膜2上に、実施例1~15及び比較例1~3の防汚塗料組成物を乾燥後の厚さが200μmとなるように塗布し、常温下で1週間乾燥して塗膜付き試験板を作製した。
上記のように調製された実施例及び比較例の防汚塗料組成物及びそれらから形成された防汚塗膜について、以下に示す貯蔵安定性試験、層間付着性試験、防汚性試験を行った。これらの結果は表4に記載されたとおりである。
前記で調製した添加剤コンポーネント(Z)を、常温条件で1日貯蔵、及び40℃の温度条件で100日間貯蔵した後、以下に示す添加剤コンポーネント(Z)の外観、及び防食塗膜に対する防汚塗膜の層間付着性を確認することで、貯蔵安定性及び層間付着性を評価した。
防汚塗料組成物の添加剤コンポーネント(Z)を調製し、ガラス容器に移し、目視によって沈殿の有無について評価を行った。なお、沈殿が発生した防汚塗料組成物は、塗膜形成時に、沈殿(凝集物)により塗膜外観に悪影響を生じる傾向がある。
(評価点)
4:沈殿の発生なし。
3:最大径が1mm未満の沈殿が発生した。
2:最大径1mm以上3mm未満の沈殿が発生した。
1:最大径3mm以上の沈殿が発生した。
上記試験板の塗膜表面にJIS J5600-5-6に規定されている単一刃を用いて防食塗膜2に達する一文字の切り込みを付け、紙ウエスを用いて該切り込みに対して垂直方向に20回擦った際に、防食塗膜2との間での層間剥離の発生度合いを以下の基準によって評価し、付着性の評価点とした。
(評価点)
5:切り込み以外の塗膜ダメージが全くみられない。
4:層間剥離が切り込みから1mm未満の範囲で発生した。
3:層間剥離が切り込みから1mm以上3mm未満の範囲で発生した。
2:層間剥離が切り込みから3mm以上10mm未満の範囲で発生した。
1:層間剥離が切り込みから10mm以上の範囲で発生した。
上記試験板を広島県宮島湾にて静置浸漬して、3か月ごとに試験板表面に占めるスライムを含めた水生生物の付着面積の比率を目視観察にて評価し、防汚性の評価点とした。
5 : 水生生物の付着面積が試験面全体の1%未満
4 : 水生生物の付着面積が試験面全体の1%以上10%未満
3 : 水生生物の付着面積が試験面全体の10%以上30%未満
2 : 水生生物の付着面積が試験面全体の30%以上60%未満
1 : 水生生物の付着面積が試験面全体の60%以上
Claims (13)
- 硬化性オルガノポリシロキサン(A)、下記一般式(B1)で表される極性基含有シラン化合物(B)、及び下記一般式(C1)で表されるシラン化合物(C)を含む、防汚塗料組成物を調製するためのキットであって、
前記硬化性オルガノポリシロキサン(A)を含有する主剤コンポーネントと、前記極性基含有シラン化合物(B)及び前記シラン化合物(C)を含有する添加剤コンポーネントとがそれぞれ別個に包装された多液型の形態にあり、
前記防汚塗料組成物の固形分中の前記極性基含有シラン化合物(B)の含有量が、0.01質量%以上1質量%以下であり、
前記防汚塗料組成物の固形分中の前記シラン化合物(C)の含有量が、0.015質量%以上0.7質量%以下であり、
前記防汚塗料組成物中の前記極性基含有シラン化合物(B)と前記シラン化合物(C)との含有割合〔(B)/(C)〕が、固形分質量比で15/85~90/10である、キット。
(R1O)(3-p)R2 pSi-R3-Z ・・・(B1)
(式中、R1、及びR2はそれぞれ独立に炭素数1~10の1価の炭化水素基を示し、R3はヘテロ原子を有する基が介在してもよい炭素数1~20の2価の炭化水素基を示し、Zはアミノ基を示し、pは0又は1を示す。)
SiW(4-q)R4 q ・・・(C1)
(式中、Wはメトキシ基又はケトオキシム基を示し、R4は1価の炭化水素基を示し、qは0~2の整数を示す。) - 前記極性基含有シラン化合物(B)が、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、及び3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載のキット。
- 前記シラン化合物(C)が、テトラメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリス(エチルメチルケトオキシム)シラン、及びメチルトリス(エチルメチルケトオキシム)シランからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1又は2に記載のキット。
- 前記防汚塗料組成物が、更に、防汚剤(D)を含有する、請求項1~3のいずれかに記載のキット。
- 前記防汚塗料組成物が、更に、シリコーンオイル(E)及び/又はエーテル基含有重合体(F)を含む、請求項1~4のいずれかに記載のキット。
- 更に、前記極性基含有シラン化合物(B)及び前記シラン化合物(C)以外の有機ケイ素架橋剤(H)を含む、請求項1~5のいずれかに記載のキット。
- 前記主剤コンポーネントと、前記添加剤コンポーネントと、前記有機ケイ素架橋剤(H)を含有する硬化剤コンポーネントとがそれぞれ別個に包装された多液型の形態にある、請求項6に記載のキット。
- 請求項1~7のいずれかに記載のキットからなる前記防汚塗料組成物を硬化してなる防汚塗膜。
- 請求項8に記載の防汚塗膜を基材上に有する、防汚塗膜付き基材。
- 前記基材が船舶、水中構造物、及び漁業資材からなる群より選択される、請求項9に記載の防汚塗膜付き基材。
- 請求項1~7のいずれかに記載のキットからなる前記防汚塗料組成物を基材に塗布又は含浸し、塗布体又は含浸体を得る工程(1)、及び前記工程(1)で得られた塗布体又は含浸体を硬化する工程(2)を有する、防汚塗膜付き基材の製造方法。
- 請求項1~7のいずれかに記載のキットからなる前記防汚塗料組成物を硬化させてなる塗膜を形成する工程(i)、及び前記塗膜を基材に貼付する工程(ii)を有する、防汚塗膜付き基材の製造方法。
- 請求項1~7のいずれかに記載のキットにおける防汚塗料組成物の貯蔵安定性の改善方法。
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