JP7041707B2 - 果汁感向上剤 - Google Patents
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Description
しかしながら、果汁含量1質量%未満の無果汁飲料や、同1質量%以上30質量%未満の低果汁飲料は、果汁含量が50質量%以上の飲料に比べると果汁感に欠け、単調で人工的な風味となる欠点を有している。
このような技術要求に応ずるため、従来、例えば内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有し重合度が50以上であるグルカンを有効成分として含有することを特徴とする果汁含有飲食物の果汁感向上剤が提案されている(特許文献1)。また、ヘスペリジン配糖体を添加することで果汁の苦味をマスキングし、果汁感を向上させる方法(特許文献2)、フェルロイルプトレシンを添加することで飲食物に果汁感を付与する方法(特許文献3)、シトロプテンを添加することで飲食物に果汁感を付与する方法(特許文献4)、パルミトレイン酸を添加することで飲食物の果汁感を増強する方法(特許文献5)などが提案されている。
しかしながら、これらの呈味改善物質は、果汁感を向上させるという効果の観点からは不十分であったり、入手や製造が容易ではなく、コスト面や供給面などに問題を有していたりするため、更なる改善された技術の開発が求められていた。
(項1)メチルジャスモネート及び/又はメチルジヒドロジャスモネートを有効成分として含有することを特徴とするフルーツ風味飲食物の果汁感向上剤。
(項2)前記飲食物に対し、メチルジャスモネート及びメチルジヒドロジャスモネートから選択される1種以上を0.0000001~0.1ppm添加することを特徴とする項1に記載の果汁感向上剤。
(項3)フルーツ風味飲食物に対し、メチルジャスモネート及びメチルジヒドロジャスモネートから選択される1種以上を0.0000001~0.1ppm添加することを特徴とするフルーツ風味飲食物の果汁感向上方法。
(項4)フルーツ風味飲食物にメチルジャスモネート及びメチルジヒドロジャスモネートから選択される1種以上を0.0000001~0.1ppm含有せしめることを特徴とするフルーツ風味飲食物の製造方法。
したがって、本発明の果汁感向上剤は各種飲食物に幅広く利用できるが、特にフレーバーで香味付けされた無果汁飲料あるいは果汁含量の低い飲料に対し、果汁含有量が高い飲食物が醸し出す果汁感を付与し、それを向上することができる。本発明における果汁感とは、果汁感に加え、豊かなトップノートを有する自然な風味、コク、ボリューム感、呈味感及び果実感などを併せもつフレッシュで濃厚な果実風味を意味する。
(1)メチルジャスモネート
本発明の果汁感向上剤であるメチルジャスモネート(ジャスモン酸メチル)、すなわち、メチル3-オキソ-2-(cis-2-ペンテニル)-シクロペンチルアセテートは、ジャスミンオイルの主香成分の一つであり、ジャスミンはじめ、ペパーミント、スペアミント、茶などの精油中に存在し、柔らかなジャスミン調の爽やかで優雅な花香を有する。メチルジャスモネートは商業上入手可能であり、例えば、日本ゼオン株式会社製の「ZEPPIN(ゼッピン)」が利用できる。
(2)メチルジヒドロジャスモネート
本発明の果汁感向上剤であるメチルジヒドロジャスモネート(ジヒドロジャスモン酸メチル)、すなわち、メチル3-オキソ-2-ペンチルシクロペンチルアセテートは、“Hedione”の名で知られる単品香料である。天然には、中国産秀英花、ジャスミン、紅茶などに存在する。ジャスミン的な持続性のある花様香気を有し、ジャスモン酸メチルとはやや香調が異なる。メチルジヒドロジャスモネートは商業上入手可能であり、例えば、日本フィルメニッヒ株式会社製の「HEDIONE FAB 964895」が利用できる。
メチルジャスモネート及びメチルジヒドロジャスモネートは、共にジャスミン様フローラル香を有する香気成分であることから、用途としては、香水や化粧料への応用が数多く提案され、利用されているが、飲食物おける果汁感向上効果についてはこれまで知られていなかった。
果汁感向上効果を示すメチルジャスモネートの飲食物中の好ましい濃度は、0.0000001~0.1ppmであるが、より好ましくは0.000001~0.1ppm、更により好ましくは0.0001~0.01ppmである。0.0000001ppm未満では果汁感が十分に向上されず、0.1ppmを超えるとメチルジャスモネートの風味が現れすぎ、全体の風味バランスが崩れることがある。
一方、果汁感向上効果を示すメチルジヒドロジャスモネートの飲食物中の好ましい濃度は、0.0000001~0.1ppmであるが、より好ましくは0.00001~0.1ppm、更により好ましくは0.0001~0.01ppmである。メチルジャスモネートと同様、0.0000001ppm未満では果汁感が向上されず、0.1ppmを超えるとメチルジヒドロジャスモネートの風味が現れすぎ、全体の風味バランスが崩れることがある。
メチルジャスモネートとメチルジヒドロジャスモネートを併用する場合は、各々の好ましい添加量範囲において、任意の量を飲食物に添加することができる。果汁感向上の観点からは、メチルジャスモネートとメチルジヒドロジャスモネートを併用することが好ましい。メチルジャスモネートとメチルジヒドロジャスモネートの添加割合は、飲食物の種類や効果に応じて任意の割合で使用することができるが、メチルジャスモネート1質量部に対してメチルジヒドロジャスモネートを0.01~100質量部となる量が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部となる量である。
果汁感向上の対象となるフルーツ風味飲食物は、果実フレーバー及び/又は果汁を含有する飲食物であれば特に限定されない。飲食物としては例えば、コーヒー、紅茶、清涼飲料、乳酸菌飲料、無果汁飲料、果汁入り飲料、機能性飲料などの飲料類、カクテル、チューハイなどの酒類、スナック類、栄養食品、アイスクリーム、シャーベット等の冷菓類、ゼリー、プリン、羊かん等のデザート類、クッキー、ケーキ、チョコレート、チューイングガム、饅頭等の菓子類、菓子パン、食パン等のパン類、ラムネ菓子、タブレット等の錠菓類などを挙げることができ、特に無果汁または果汁含量が30%以下の飲食物、とりわけ、清涼飲料、無果汁飲料、果汁入り飲料(特に果汁含量が30%以下の低果汁飲料)等に好適である。
天然果汁又は濃縮還元果汁としては、例えば、みかん、ゆず、かぼす、オレンジ、ライム、レモン、グレープフルーツ、シークァーサー、りんご、ぶどう、桃、梨、パイナップル、梅、プルーン、ざくろ、いちじく、すいか、洋梨、アセロラ、キウィーフルーツ、グァバ、ココナッツ、パッションフルーツ、マンゴー、バナナ、パパイア、ドリアン、ライチ、メロン、いちご、ブルーベリー、ラズベリー、グズベリーやトマト等が挙げられる。
本発明の果汁感向上剤の飲食物への添加方法は、特に制限はされない。例えば、果汁感を付与したい飲食物に果汁感向上剤をそのまま添加することができるが、本発明では果汁感向上剤を、水、アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の単独又は混合の溶剤に溶解させた希釈液剤として飲食物に添加してもよい。また、例えば、果汁感向上剤を、天然香料・合成香料などを原料素材とする香料組成物に配合した香料製剤として飲食物に添加してもよく、更に、例えば、果汁感向上剤をデキストリン等の賦形剤を用いて噴霧乾燥した粉末製剤として飲食物に添加してもよい。本発明の果汁感向上剤の利用上の利便性からは、希釈液剤、香料製剤もしくは粉末製剤として飲食物に添加することが好ましく、香料製剤として添加することがより好ましい。
メチルジャスモネート含有果汁感向上剤
メチルジャスモネートとして、日本ゼオン株式会社製の「ZEPPIN(ゼッピン)」を用いて、メチルジャスモネートの含量が0.0001ppm、0.001ppm、0.01ppm、0.1ppm、1ppm、10ppm、または100ppmとなるようにメチルジャスモネートのエタノール溶液を調製し、本発明の果汁感向上剤(実施例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5、1-6、および1-7)を得た。
メチルジヒドロジャスモネート含有果汁感向上剤
メチルジヒドロジャスモネートとして、日本フィルメニッヒ株式会社製の「HEDIONE FAB 964895」を用いて、メチルジヒドロジャスモネートの含量が0.0001ppm、0.001ppm、0.01ppm、0.1ppm、1ppm、10ppm、または100ppmとなるようにメチルジヒドロジャスモネートのエタノール溶液を調製し、本発明の果汁感向上剤(実施例2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、および2-7)を得た。
メチルジャスモネート添加グレープ風味飲料
砂糖80kg、クエン酸0.8kg、およびイオン交換水919.2kgを混合して調製したシロップに、グレープフレーバーNO.90572(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加し、グレープ風味飲料を調製した。
このグレープ風味飲料に、飲料中のメチルジャスモネートの含量が表1の量となるように実施例1-1~1-7の果汁感向上剤を添加してグレープ風味飲料(実施例3-1、3-2、3-3、3-4、3-5、3-6、および3-7)を得た。
官能基準は、以下の7段階評価により点数をつけ、パネル10名の平均値を求めた。評価結果を表1に示した。
<評価基準>
1点:コントロールに比較して「非常に弱い」あるいは「非常に低い」
2点:コントロールに比較して「弱い」あるいは「低い」
3点:コントロールに比較して「やや弱い」あるいは「やや低い」
4点:コントロールと同じ
5点:コントロールに比較して「やや強い」あるいは「やや高い」
6点:コントロールに比較して「強い」あるいは「高い」
7点:コントロールに比較して「非常に強い」あるいは「非常に高い」
メチルジヒドロジャスモネート添加グレープ風味飲料
実施例3において、実施例1-1~1-7の果汁感向上剤を、実施例2-1~2-7の果汁感向上剤に変更した以外は、実施例3と同様の方法により、飲料中のメチルジヒドロジャスモネートの含量が表2の量となるグレープ風味飲料(実施例4-1、4-2、4-3、4-4、4-5、4-6、および4-7)を調製した。
実施例4-1~4-7の飲料について、実施例3と同様の方法により官能評価を実施し、その結果を表2に示した。
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート添加グレープ風味飲料
実施例3において調製したグレープ風味飲料に、実施例1-4および実施例2-5の果汁感向上剤を飲料中のメチルジャスモネートの含量が0.0001ppmおよびメチルジヒドロジャスモネートの含量が0.001ppmとなるように添加したグレープ風味飲料(実施例5)を調製した。
実施例5の飲料について、実施例3と同様の方法により官能評価を実施し、その結果を表3に示した。
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート含有果汁感向上剤
表4の処方にしたがって、メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネートをエタノール/水中に溶解し、本発明の果汁感向上剤(実施例6)を調製した。
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート添加各種フルーツ風味飲料
実施例3のグレープ風味飲料に加えて、実施例3におけるグレープフレーバーNO.90572を、アップルフレーバーNO.120596(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に変更することにより、アップル風味飲料を調製した。
同様に、実施例3のグレープフレーバーを、ピーチフレーバーNO.2420(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に変更したピーチ風味飲料、ストロベリーフレーバーNO.2226(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に変更したストロベリー風味飲料、および、マンゴーフレーバーNO.116288(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に変更したマンゴー風味飲料を調製した。
これら5種の飲料に、飲料中のメチルジャスモネートの含量が0.0005ppmおよびメチルジヒドロジャスモネートの含量が0.0005ppmとなるように実施例6の果汁感向上剤を添加した飲料(実施例7-1、7-2、7-3、7-4、および7-5)を調製した。
実施例7-1~7-5の飲料について、果汁感向上剤を添加していない飲料を各々コントロールとして、実施例3と同様の方法により官能評価を行い、その結果を表5に示した。
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート添加グレープ風味ゼリー
砂糖50kg、果糖ぶどう糖液糖160kg、クエン酸1.5kg、クエン酸三ナトリウム0.2kg、ゲル化剤「ゲルアップ(登録商標)WN-100(F)」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)8kg、および、イオン交換水780.3kgを加熱攪拌可能な容器に投入し、攪拌しながら80℃にて10分間保持した後に、グレープフレーバーNO.90572(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加してグレープゼリーベースを調製した。このゼリーベースに実施例6の果汁感向上剤を、ゼリー中のメチルジャスモネートの含量が0.0005ppm、およびメチルジヒドロジャスモネートの含量が0.0005ppmとなるように添加した後、ゼリー用カップに充填・シールして、冷蔵庫内で一晩冷却することにより、果汁感向上剤を添加したグレープ風味ゼリー(実施例8)を調製した。
実施例8のゼリーについて、果汁感向上剤を添加していないゼリーベースを冷却して調製したグレープ風味ゼリーをコントロールとして、実施例3と同様の方法により官能評価を行い、その結果を表6に示した。
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート添加グレープ風味チューハイ
果糖ぶどう糖液糖61kg、クエン酸3.5kg、クエン酸三ナトリウム1.3kg、ウォッカ150Lを攪拌可能な容器に投入し、イオン交換水を液量が400Lになるまで投入した後、更に炭酸水600Lを投入して、チューハイベースを調製した。チューハイベースに、グレープフレーバーNO.90572(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加し、グレープ風味チューハイを調製した。
このグレープ風味チューハイに、チューハイ中のメチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネートの含量が表7に記載の量となるように実施例6の果汁感向上剤を添加したグレープ風味チューハイ(実施例9-1および9-2)を調製した。
実施例9-1および9-2のチューハイについて、果汁感向上剤を添加していないチューハイをコントロールとして、実施例3と同様の方法により官能評価を行い、その結果を表7に示した。
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート添加グレープ風味炭酸飲料
果糖ぶどう糖液糖130kg、砂糖5kg、クエン酸0.8kg、クエン酸三ナトリウム0.3kgを攪拌可能な容器に投入し、イオン交換水を液量が200Lになるまで投入した後、更に炭酸水800Lを投入して、炭酸飲料ベースを調製した。炭酸飲料ベースに、グレープフレーバーNO.90572(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加し、グレープ風味炭酸飲料を調製した。
このグレープ風味炭酸飲料に、炭酸飲料中のメチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネートの含量が表8に記載の量となるように実施例6の果汁感向上剤を添加したグレープ風味炭酸飲料(実施例10-1および10-2)を調製した。
実施例10-1および10-2の炭酸飲料について、果汁感向上剤を添加していないグレープ風味炭酸飲料をコントロールとして、実施例3と同様の方法により官能評価を行い、その結果を表8に示した。
Claims (4)
- メチルジヒドロジャスモネートを0.0000001ppm~0.01ppm含有する、柑橘類風味以外のフルーツ風味を有する飲食物(但し、シトラールを含有する飲食物ならびにインスタントコーヒー、茶及びスイートソースを除く。)。
- 下記要件(1)及び(2)の一方又は両方を満たす、請求項1に記載の飲食物(但し、シトラールを含有する飲食物ならびにインスタントコーヒー、茶及びスイートソースを除く。):
(1)該飲食物がりんご、ぶどう、桃、梨、パイナップル、梅、プルーン、ざくろ、いちじく、すいか、洋梨、アセロラ、キウィーフルーツ、グァバ、ココナッツ、パッションフルーツ、マンゴー、バナナ、パパイア、ドリアン、ライチ、メロン、いちご、ブルーベリー、ラズベリー、グズベリー及びトマトからなる群より選択される少なくとも一種の天然果汁又は濃縮還元果汁を含む、
(2)該飲食物がアップルフレーバー、グレープフレーバー、ストロベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、メロンフレーバー、アンズフレーバー、ウメフレーバー、サクランボフレーバー、ベリー類のフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、ペアフレーバー及びプラムフレーバーからなる群より選択される少なくとも一種の果実フレーバーを含む。 - 柑橘類風味以外のフルーツ風味を有する飲食物にメチルジヒドロジャスモネートを0.0000001ppm~0.01ppm含有せしめることを特徴とする、前記飲食物の製造方法(但し、シトラールを含有する飲食物ならびにインスタントコーヒー、茶及びスイートソースの製造方法を除く。)。
- 下記要件(1)及び(2)の一方又は両方を満たす、請求項3に記載の飲食物の製造方法(但し、シトラールを含有する飲食物ならびにインスタントコーヒー、茶及びスイートソースの製造方法を除く。):
(1)該飲食物がりんご、ぶどう、桃、梨、パイナップル、梅、プルーン、ざくろ、いちじく、すいか、洋梨、アセロラ、キウィーフルーツ、グァバ、ココナッツ、パッションフルーツ、マンゴー、バナナ、パパイア、ドリアン、ライチ、メロン、いちご、ブルーベリー、ラズベリー、グズベリー及びトマトからなる群より選択される少なくとも一種の天然果汁又は濃縮還元果汁を含む、
(2)該飲食物がアップルフレーバー、グレープフレーバー、ストロベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、メロンフレーバー、アンズフレーバー、ウメフレーバー、サクランボフレーバー、ベリー類のフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、ペアフレーバー及びプラムフレーバーからなる群より選択される少なくとも一種の果実フレーバーを含む。
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