JP7039260B2 - バイオフィルム分散除去剤 - Google Patents

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本発明は、バイオフィルム分散除去剤に関する。
頭皮臭は、酸臭と皮脂臭から構成されており、このうち酸臭が頭皮臭の強度に大きく寄与していることが知られている。この酸臭の原因物質は、イソ吉草酸に代表される低級脂肪酸であり、皮膚の代謝産物であるロイシンから頭皮に棲息する常在菌の関与によって産生されることが知られている。このため、頭皮臭の発生を防止又は軽減するために、ヒドロキシピリドン系化合物、ピリチオン系化合物、ミコナゾール、イオウ等の殺菌剤をシャンプー等の毛髪化粧料に配合することが行われている。
しかし、自然界に存在する細菌は、1つ1つが個別に浮遊菌の状態で存在するのではなく、何らかの表面に付着し、多糖、タンパク質等の細胞外ポリマーを産生、分泌しながら増殖しバイオフィルムを形成する。そして形成されたバイオフィルムに対しては、殺菌剤、抗菌剤はその効果を発揮しにくくなることが知られている。
そこで、バイオフィルムの形成抑制や、形成されたバイオフィルムを除去するため、種々の提案がされている。なかでも、安全性が高い化合物を利用した技術として、例えば、特許文献1では、特定の界面活性剤と特定のlogP値を有するアルコールを併用したバイオフィルムの除去方法が開示されている。特許文献2には、ファルネソールとキシリトールの併用によりバイオフィルムの形成を抑制することが開示されている。特許文献3には、特定の香料素材を用いたバイオフィルム抑制剤が開示されている。
特開2016-104810号公報 特開2002-284604号公報 特開2012-72179号公報
しかし、特許文献1に記載の除去方法では効果は十分とはいえず、また特許文献2、3に記載のようなバイオフィルムの形成抑制技術は、いったん形成してしまったバイオフィルムに対しては有効なものではない。
したがって本発明は、汎用性が高く、頭皮上のバイオフィルムを分散除去することができ、頭皮の臭いを低減することができるバイオフィルム分散除去剤に関する。
本発明者らは、汎用性が高く、人体に対し使用実績のある化合物を用いた、頭皮に棲息する常在菌であるスタフィロコッカス属細菌に由来するバイオフィルムの分散除去力を種々検討した結果、特定の選択肢から選ばれる香料素材が前記要求を備えるものであることを見出した。
本発明は、エチルトリシクロ [5.2.1.02.6] デカン-2-イル カルボキシレート及びエチル2-シクロヘキシル プロピオネートから選ばれる1種又は2種の化合物を有効成分とする、スタフィロコッカス属細菌に由来するバイオフィルムの分散除去剤を提供するものである。
更に本発明は、前記バイオフィルム分散除去剤を含有する頭髪用化粧料を提供するものである。
更に本発明は、前記バイオフィルム分散除去剤又は前記頭髪用化粧料を生物表面に形成されたスタフィロコッカス属細菌のバイオフィルムに対して適用する、頭皮臭の低減方法を提供するものである。
本発明のバイオフィルム分散除去剤は、汎用性が高く、低濃度で頭皮常在菌であるスタフィロコッカス属細菌に由来するバイオフィルムを分散除去することができ、頭皮の細菌叢を乱すことなく頭皮を正常に保ち、前記常在菌が生成する低級脂肪酸のニオイを長期的に低減することができる。
本発明のバイオフィルム分散除去剤は、エチルトリシクロ [5.2.1.02.6] デカン-2-イル カルボキシレート(フルテート、登録商標;花王社製)及びエチル2-シクロヘキシル プロピオネート(ポワレネート、登録商標;花王社製)から選ばれる1種又は2種の化合物を有効成分とするものであり、これらの化合物はスタフィロコッカス属細菌に由来するバイオフィルムの分散性に優れる。これらはいずれも香料として用いられている公知のエステル化合物であり、一般的な化学合成によって製造されたものを使用することができる。
本発明で対象とするバイオフィルムを形成するスタフィロコッカス属細菌としては、生物表面、特に頭皮より分離される常在菌、具体的にはスタフィロコッカス・キャピティス(Staphylococcus capitis;以下、S.capitisと記載する場合もある)が挙げられる。
本発明のバイオフィルム分散除去剤は、頭髪用化粧料中に含有させて使用することができる。頭髪化粧料としては、シャンプー、コンディショナー、リンス、清拭シートが挙げられる。
頭髪化粧料中における本発明のバイオフィルム分散除去剤の含有量は、エチルトリシクロ[5.2.1.02.6] デカン-2-イル カルボキシレート及びエチル2-シクロヘキシル プロピオネートの合計量として、シャンプー、コンディショナー、リンスの場合、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。また、清拭シートの場合は、シートに含浸させる水性洗浄剤組成物中における含有量として、上記範囲が好ましい。
これらの頭髪用化粧料には、通常の頭髪用化粧料に用いられる成分を目的、用途、剤型等に応じて適宜配合できる。このような成分としては、例えば、水、低級アルコール等の媒体;アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;炭化水素、ロウ、高級アルコール、エステル油、高級脂肪酸等の油剤;ジンクピリチオン、オクトピロックス等の抗フケ剤;ビタミン剤;グリチルリチン酸ジカリウム、酢酸トコフェロール等の抗炎症剤;メチルパラベン、ブチルパラベン等の防腐剤;キレート剤;パンテノール等の保湿剤;染料、顔料等の着色剤;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、粘土鉱物等の粘度調整剤;有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のpH調整剤;植物エキス類;パール化剤;香料;色素;紫外線吸収剤;酸化防止剤;その他エンサイクロペディア・オブ・シャンプー・イングリーディエンツ〔ENCYCLOPEDIA OF SHAMPOO INGREDIENTS (MICELLE PRESS)〕に記載されている成分等が挙げられる。
本発明のバイオフィルム分散除去剤又はこれを含有する頭髪用化粧料を生物表面、特に頭皮に形成されたスタフィロコッカス属細菌のバイオフィルムに対して適用し、洗い流すことにより、バイオフィルムを除去して頭皮臭を低減することができる。
本発明のバイオフィルム分散除去剤又は頭髪化粧料の生物表面への適用量は、バイオフィルムの分散除去効果、皮膚刺激抑制の観点から、皮膚表面の1cm2あたりのエチルトリシクロ [5.2.1.02.6] デカン-2-イル カルボキシレート及びエチル2-シクロヘキシル プロピオネートの合計量として、好ましくは0.001mg/cm3以上、より好ましくは0.002mg/cm3以上、更に好ましくは0.003mg/cm3以上であり、また、好ましくは0.1mg/cm3以下、より好ましくは0.07mg/cm3以下、更に好ましくは0.05mg/cm3以下である。
実施例1~2、比較例1~3
1.悪臭(イソ吉草酸)の定量と官能評価
(1) S. capitis(頭皮分離株)菌液をTSB培地に1.0×106CFU/mLになるように添加し、96穴ウェル中にて24時間37℃で静置培養してバイオフィルムを形成させた。表1に示す各処方液を無菌的にバイオフィルムに接触させた後、イオン交換水で洗浄し洗浄液を廃棄した。
(2) 96穴ウェルに残留したバイオフィルムに0.2%L-ロイシン(東京化成工業社製)添加培地を3時間接触させ、ジエチルエーテル(和光純薬工業社製)で培養液を抽出した。ジエチルエーテル部分を0.5mLバイアルに充填し、イソ吉草酸をGC/MSで定量した。また、イソ吉草酸の臭いを対象とした下記基準による官能評価により、悪臭強度を評価した。これらの結果を表1に示す。
(悪臭強度官能評価スコア)
3:イソ吉草酸の臭いが楽にわかる
2:イソ吉草酸の臭いを弱く感じる
1:イソ吉草酸の臭いを感じない
2.バイオフィルム除去率
前記1(1)の後、96穴ウェルに残留したバイオフィルムをクリスタルバイオレット0.1%水溶液で染色した。イオン交換水を用いて各ウェルを2回ずつ洗浄後、99.5%エタノールを200μLウェルに添加して、染色したバイオフィルムを溶出し、570nmの吸光度を計測してバイオフィルムの残存量を算出した。
コントロール(比較例4)のバイオフィルム残存量を100%としたときの各実施例及び各比較例でのバイオフィルム残存量を差し引いた値をバイオフィルム除去率とした。また、このバイオフィルム除去率から、下記基準に従ってバイオフィルム除去能の判定を行った。
(バイオフィルム除去能)
○:バイオフィルム除去率30%以上
△:バイオフィルム除去率25%以上30%未満
×:バイオフィルム除去率25%未満
Figure 0007039260000001
処方例1~2(毛髪洗浄剤)
毛髪洗浄剤の処方例を表2に示す。
Figure 0007039260000002
処方例3(毛髪洗浄シート)
毛髪洗浄シートの処方例を表3に示す。
Figure 0007039260000003

Claims (3)

  1. エチルトリシクロ [5.2.1.02.6] デカン-2-イル カルボキシレート及びエチル2-シクロヘキシル プロピオネートから選ばれる1種又は2種の化合物を有効成分とする、スタフィロコッカス属細菌に由来するバイオフィルムの分散除去剤。
  2. スタフィロコッカス属細菌が、頭皮より分離される常在菌である請求項1に記載のバイオフィルム分散除去剤。
  3. スタフィロコッカス属細菌が、スタフィロコッカス・キャピティス(Staphylococcus capitis)である請求項1又は2に記載のバイオフィルム分散除去剤。
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