JP7039158B2 - ポリイミド前駆体溶液およびそれを用いたポリイミド膜ならびにポリイミド膜の製造方法 - Google Patents
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Description
(1) すくなくとも、2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸および/または一般式(1)で表されるその誘導体を含むテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とが、有機溶媒に溶解してなるポリイミド前駆体溶液であって、前記有機溶媒は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒およびエステル系溶媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするポリイミド前駆体溶液。
(2) 前記ジアミン成分が、エーテル結合を有するジアミンである上記(1)に記載のポリイミド前駆体溶液。
(3) 前記ジアミン成分は、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼンおよびジアミノジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種である上記(1)または(2)記載のポリイミド前駆体溶液。
(4) 前記有機溶媒が、アルコール系溶媒およびエーテル系溶媒から選ばれる少なくとも1種である上記(1)から(3)のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
(5) 前記有機溶媒は、アミド系溶剤およびスルホキシド系溶媒を実質的に含まない上記(1)から(4)のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
(6) ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体濃度が、20質量%以上である上記(1)から(5)のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
(7) 30℃における粘度が、5Pa・s以下である上記(1)から(6)のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
(8) 30℃における対数粘度が0.05以下である上記(1)から(7)のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
(9) 上記(1)から(8)のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液を加熱してなるポリイミド膜。
(10) 上記(1)から(8)のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液と、無機粒子、有機粒子、分散剤および顔料から選ばれる少なくとも1種とを含むポリイミド前駆体溶液組成物。
(11) 上記(10)に記載のポリイミド前駆体溶液組成物が含まれる耐熱性塗料。
(12) 上記(1)から(8)のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液を支持体に流延または塗布し、加熱しポリイミド膜を製造することを特徴とするポリイミド膜の製造方法。
本発明に用いるテトラカルボン酸成分は、2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸または一般式(1)で表される2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸誘導体を含む。
本発明において用いられるジアミン成分は、特に限定されるわけではないが、芳香族ジアミンであることが好ましい。芳香族ジアミンとしては、一般式(2)で表される化合物のうち少なくとも1種以上を、単独または併用して用いることができる。
本発明において用いられる有機溶媒は、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒およびエステル系溶媒から選ばれる少なくとも1種である。ここで、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒およびエステル系溶媒とは、それぞれ溶媒分子中にすくなくとも、アルコール性水酸基、エーテル結合、ケトン結合、エステル結合を有するものであり、複数の前記官能基・結合が含まれる場合、どちらの分類に属しても良く、また他の官能基、結合を含んでいてもかまわない。有機溶媒は、本発明において用いられる有機溶媒は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との適切な組み合わせにより選択される。有機溶媒を1種または2種以上を混合して使用することができる。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
また、エーテル系溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
さらに、ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
また、エステル系溶媒としては、例えば、γ-ブチロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、プロピレンカーボネート等が挙げられる。エステル系溶媒は、溶解性の観点から、環状エステル系溶媒であることが好ましい。
また、同一分子内にケトン基とアルコール性水酸基を有する有機溶媒(これは本発明でいうケトン系溶媒およびアルコール系溶媒に含まれる。)も溶解性に優れることから、好ましく、同一分子内にケトン基とアルコール性水酸基を有する有機溶媒としては、ジアセトンアルコールなどが挙げられる。
本発明のポリイミド前駆体溶液は、前記テトラカルボン酸と、前記ジアミン成分とを略等モル前記有機溶媒に加え溶解させることによって好適に得ることができる。溶解温度および溶解に要する時間は、使用するテトラカルボン酸成分とジアミン成分の種類に依るが、例えばそれぞれ25℃~100℃、1秒~10時間である。
ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体(ここでは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の総量を示す。)の濃度は、好ましくは20質量%、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。ポリイミド前駆体溶液のハンドリングの観点から、ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体の濃度は、30~60質量%とすることが好ましい。
前記ポリイミド前駆体溶液を加熱することにより、イミド化を進めポリイミド膜を得る。具体的には、ポリイミド前駆体溶液をガラス、ステンレス、銅その他の金属箔などの支持体上に流延または塗布し、それを加熱し、支持体から剥離する。加熱温度は、例えば60~400℃であり、加熱時間は、例えば10分から30分である。加熱温度は段階的に高温とすることが好ましい。最高加熱温度は、生成するポリイミドのガラス転移温度以上の温度で行うことが好ましい。この反応機構については明らかではないが、テトラカルボン酸の脱水反応が進行し一旦酸無水物基が生じ、これがジアミン成分のアミノ基と反応しアミック酸を形成した後、脱水イミド閉環するという三段階の反応を経由していると推定される。これら一連の反応が生じるためにはモノマー同士の相互溶解性が重要であり、そのためにテトラカルボン酸成分とジアミン成分を適切に選択する。本発明の製造方法によれば、製造途中に粉化することなく外観の優れたポリイミド膜を製膜することができ、また、ポリイミド膜の製造過程においてポリイミドを一旦粉末状の析出物として取り出すことなく製膜することができるので、製造プロセスを簡便にすることができる。
本発明におけるポリイミド前駆体溶液と、無機粒子、有機粒子、分散剤および顔料から選ばれる少なくとも1種とを含むポリイミド前駆体溶液組成物とすることができる。またポリイミド前駆体溶液組成物が含まれる耐熱性塗料とすることもできる。具体的に説明すると、本発明のポリイミド前駆体溶液は、厚膜形成性に優れているとともに、無機粒子、有機粒子その他種々のフィラー類との混和性にも優れている。したがって、ポリイミド前駆体溶液と、無機粒子および有機粒子から選ばれる1種とを含むポリイミド前駆体溶液組成物は、各種充填剤を配合したペーストのバインダーとしても有用である。また、銀粉、金粉、銅粉、アルミ粉等の金属粉をポリイミド前駆体溶液に対して50~500質量%、及び分散剤として各種界面活性剤を樹脂成分に対して0.01~5質量%程度加えたポリイミド前駆体溶液組成物は、インキ化した導電性ペーストとして使用できる。この導電ペーストのバインターとして、チップボンディング用、電子部品の電極等に使用できる。カーボンブラック、二酸化スズ粉等の半導電性充填剤を分散した耐熱性抵抗対ペーストのバインダーとして、印刷抵抗用、免状発熱体用、帯電防止、保護膜用等にも使用できる。また、この発明のポリイミド前駆体溶液は、例えば、顔料、RGB顔料(例えばフタロシアニン系、ベリレン系、アゾ系等)を樹脂成分に対して1~40質量%、及び各種分散剤として各種界面活性剤を樹脂成分に対して0.01~5質量%程度を加えたポリイミド前駆体溶液組成物は、インキ化したカラーインキとして使用できる。さらに、この発明のポリイミド前駆体溶液は、そのまま、あるいは有機溶媒及びシランカップリング剤などを加えて、スピンコート用に使用できる。
(テトラカルボン酸成分)
a-BPTA:2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸(水和物を含む)
s-BPTA:3,3’,4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸(水和物を含む)
a-BPDA:2,3,3’、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
(ジアミン成分)
APB:1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン
TPER:1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン
3,4’-ODA:3,4’-ジアミノジフェニルエーテル
4,4’-ODA:4,4’-ジアミノジフェニルエーテル
(有機溶媒)
EG:エチレングリコール
Dyglyme:ジエチレングリコールジメチルエーテル
GBL:γ-ブチロラクトン
(1)ポリイミド前駆体溶液
[30℃における粘度(回転粘度)]
E型回転粘度計を用い、温度30℃において固形分20~50質量%のポリイミド前駆体溶液の粘度を求めた。
[30℃における対数粘度(ηinh)]
ポリイミド前駆体溶液をNMPで0.5g/dlに希釈し、ウベローデ粘度計を用いて、30℃で測定した。対数粘度(ηinh)は、次式より求めた。
ηinh=ln(T/T0 )/C
C=不揮発分濃度×組成物秤取量/試料の体積×100(g/dl)
T=試料の粘度管落下時間、T0 =NMPの落下速度
不揮発分濃度=350℃×30分の熱処理後重量/熱処理前重量
(濃度単位:重量%、重量単位:g、体積単位:dl、時間単位:秒)
[溶解性]
ポリイミド前駆体溶液を室温(23℃)に10分静置した際の沈殿の有無、溶液の濁りの有無を目視で確認した。沈殿や濁りが認められないものを「○」、溶液に濁りがあるものや沈殿が認められるものを「×」とした。
[保存安定性]
ポリイミド前駆体溶液を、室温(23℃)、湿度50%RH、遮光下において8日以上静置した際の沈殿の有無、溶液の濁りの有無を目視により確認した。沈殿や濁りが認められないものを保存安定性に優れていると評価した。
(2)ポリイミド膜
[外観]
透明で均一な皮膜が得られた場合を「○」、膜ににごりが生じた場合を「△」とした。
[機械特性]
ポリイミド膜をIEC540(S)規格のダンベル形状に打ち抜いて試験片とし、ORIENTEC社製TENSILONを用いて、チャック間 30mm、引張速度 2mm/minで、初期の弾性率、破断伸度を測定した。
[引張弾性率]
ASTM D-882に従い測定した。
[破断点応力]
ASTM D-882に従い測定した。
[破断点伸度]
ASTM D-882に従い測定した。
EGに、テトラカルボン酸成分として、a-BPTAを、ジアミン成分としてAPBを等モル加え、25℃で攪拌し、溶解することで、固形分濃度が50質量%のポリイミド前駆体溶液を製造した。得られたポリイミド前駆体溶液の特性を表1に示す。
各原料は、エチレングリコールに容易に溶解した。対数粘度は、0.041と低粘度であった。固形分の析出は認められず、保存安定性が良好であることが確認された。
テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、有機溶媒および固形分濃度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様な方法によりポリイミド前駆体溶液とポリイミド膜を得た。代表的な結果を表1および表2に示す。実施例2~8におけるポリイミド前駆体溶液の保存安定性は良好であった。
テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、有機溶媒および固形分濃度を表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様な方法によりポリイミド前駆体溶液とポリイミド膜を得た。代表的な結果を表3および表4に示す。実施例9~20におけるポリイミド前駆体溶液の保存安定性は良好であった。
テトラカルボン酸成分をa-BPTAからs-BPDAに変更した。この結果、重合反応が進行しポリアミック酸が生成したものと考えられ、溶液に濁りがあり沈殿が認められた。したがって、対数粘度の測定を行わなかった。
Claims (12)
- 前記ジアミン成分が、エーテル結合を有するジアミンである請求項1に記載のポリイミド前駆体溶液。
- 前記ジアミン成分は、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼンおよびジアミノジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2記載のポリイミド前駆体溶液。
- 前記有機溶媒が、アルコール系溶媒およびエーテル系溶媒から選ばれる少なくとも1種である請求項1から3のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
- 前記有機溶媒は、アミド系溶剤およびスルホキシド系溶媒を実質的に含まない請求項1から4のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
- ポリイミド前駆体溶液中のポリイミド前駆体濃度が、20質量%以上である請求項1から5のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
- 30℃における粘度が、5Pa・s以下である請求項1から6のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
- 30℃における対数粘度が0.05以下である請求項1から7のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液を加熱してなるポリイミド膜であって、当該ポリイミド前駆体溶液に含まれる有機溶媒が、アルコール系溶媒およびエーテル系溶媒から選ばれる少なくとも1種である、ポリイミド膜。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液と、無機粒子、有機粒子、分散剤および顔料から選ばれる少なくとも1種とを含むポリイミド前駆体溶液組成物。
- 請求項10に記載のポリイミド前駆体溶液組成物が含まれる耐熱性塗料。
- 請求項1から8のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液を支持体に流延または塗布し、加熱しポリイミド膜を製造することを特徴とするポリイミド膜の製造方法。
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