JP7039154B1 - ラベル付き容器及びラベル付き容器の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高湿度環境下であっても物性の変化が少なく貯蔵安定性に優れ、熱収縮後のフィルムの破断現象を効果的に抑制するポリエステル系シュリンクフィルムをラベルとして装着させたラベル付き容器等を提供する。【解決手段】ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(a)~(c)、(f)を有することを特徴とするラベル付き容器である。(a)及び(f)23℃の水中に、168時間浸漬前後の主収縮方向の引張強さC1(MPa)及びC2(MPa)が、所定関係式を満足し、C1を50~75MPaとし、C2を50~75MPaとする。(b)及び(c)所定条件下での熱収縮率A1を60%以上とし、熱収縮率B1を3.8%以下とする。【選択図】図1

Description

本発明は、ラベル付き容器及びラベル付き容器の製造方法に関する。
より詳しくは、高湿度環境下であっても、引張強さ等の物性の変化が少なく、貯蔵安定性に優れ、かつ、耐破断特性にも優れたポリエステル系シュリンクフィルムをラベルとして装着させたラベル付き容器及びラベル付き容器の製造方法に関する。
近年、プラスチックごみの環境への影響が問題視される傾向にある。
そのため、使用済みプラスチックのリサイクルや、プラスチック製包装材料の簡略化、減容化が図られており、ひいては、環境への負荷がより少ない素材への転換や推進が図られている。
この点、ポリエステル系シュリンクフィルムは、PETボトル等のシュリンクラベルとして使用されているものの、経時劣化により物性が変化してしまい、シュリンクラベルを収縮させボトルに装着した後、運搬及び保管中にラベルが破断してしまうという問題が見られた。
そこで、ラベルの破断を防止すべく、低温から高温までの幅広い温度域で優れた収縮特性を有すると共に、収縮白化、収縮斑、シワ、歪み、タテヒケ等の発生が極めて少なく、耐破れ性や溶剤接着性にも優れたラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、熱収縮性ポリエステル系フィルムにおいて、多価アルコール成分100モル%のうち、1,4-シクロヘキサンジメタノール成分が10モル%以上50モル%以下である。また、10cm×10cmの正方形状に切り取った熱収縮性ポリエステル系フィルムの試料を、85℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が20%以上である。さらに、熱収縮性ポリエステル系フィルムの極限粘度が、0.66dl/g以上であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムである。
特開2003-082128号公報(特許請求の範囲等)
しかしながら、特許文献1に記載された熱収縮性ポリエステル系フィルムは、高湿度環境下での経時劣化までは考慮されていなかった。そのため、高湿度環境下においては、経時劣化によりフィルムの物性(例えば、引張強さ、耐破断特性等)が変化してしまい貯蔵安定性及び耐破断特性が低下してしまい、当該熱収縮性ポリエステル系フィルムを、ラベルとして収縮させボトルに装着した後、運搬及び保管中にラベルが破断してしまう場合があった。
そこで、本発明の発明者らは、容器にラベルとして装着させるポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、所定の高湿度環境下でのエージング処理前後のTD方向における引張強さC1と、引張強さC2との差(C2-C1)を所定値以下とすることによって、高湿度環境下での物性変化を抑制して優れた耐破断特性等を発揮することを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、高湿度環境下であっても物性の変化が少なく貯蔵安定性に優れ、かつ、耐破断特性にも優れたポリエステル系シュリンクフィルムをラベルとして装着させたラベル付き容器、及びそのようなラベル付き容器の製造方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、ポリエステル系樹脂に由来したポリエステル系シュリンクフィルムをラベルとして装着させたラベル付き容器であって、
ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(a)~(c)、(f)を有することを特徴とするラベル付き容器が提供され、上述した問題点を解決することができる。
(a)JIS K 7127に準拠して測定される引張試験において、23℃の水中に、168時間浸漬前後の主収縮方向(TD方向)における引張強さをC1(MPa)及びC2(MPa)としたときに、下記関係式(1)を満足する。
Figure 0007039154000002
(b)主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1としたときに、当該A1を60%以上の値とする。
(c)TD方向と直交する方向をMD方向とし、当該MD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をB1としたときに、当該B1を3.8%以下の値とする。
(f)引張強さであるC1の値を50~75MPaの範囲内の値とし、引張強さであるC2を50~75MPaの範囲内の値とする。
すなわち、このように、構成(a)として、C2-C1で表される数値を所定範囲内の値に制限することによって、高湿度環境下であっても、フィルムの物性変化が少なく貯蔵安定性に優れ、良好な耐破断特性をも発揮することができる。
又、構成(b)及び(c)を満足することによって、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、所定温度範囲で安定した熱収縮が得られる。ひいては、当該フィルムをラベルとしてPETボトル等に適用してラベル付き容器とした際に、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルの破断を防ぎ、良好な耐破断特性をも得ることができる。
更に又、構成(f)として、引張強さC1及びC2を所定範囲内の値に具体的に制限することによって、C2-C1で表される数値を、更に容易に所定範囲内の値に制御し、ひいては、貯蔵安定性と耐破断特性を更に向上させることができる。
なお、フィルムの物性としての耐破断特性は、例えば、実施例1の評価12(耐破断特性)において、本発明のラベル付き容器にラベルとして装着されるポリエステル系シュリンクフィルムで作製され、所定の高湿度環境下でエージング処理された試験片5個中、破断現象を生じるのが0個、あるいは1個以下であれば、良好であると言える。
また、本発明のラベル付き容器を構成するにあたり、ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(e)を更に有することが好ましい。
(e)熱収縮率のA1と、熱収縮率のB1と、引張強さのC1と、引張強さのC2が、下記関係式(2)を満足する。
Figure 0007039154000003
このように、(C2-C1)/{(1-A1/100)×(1-B1/100)}で表される数値を、所定範囲内の値に具体的に制限することによって、C2-C1で表される数値を、更に容易に所定範囲内の値に制御するとともに、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルの破断をより一層防ぐことができる。ひいては、貯蔵安定性と耐破断特性を更に向上させることができる。
また、本発明のラベル付き容器を構成するにあたり、ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(g)を更に有することが好ましい。
(g)引張強さのC1と引張強さのC2が、下記関係式(3)を満足する。
Figure 0007039154000004
このように、C1/C2で表される数値を、所定範囲内の値に具体的に制限することによって、C2-C1で表される数値を、更に容易に所定範囲内に制御し、ひいては、貯蔵安定性と耐破断特性を更に向上させることができる。
また、本発明のラベル付き容器を構成するあたり、ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(h)を更に有することが好ましい。
(h)TD方向における、98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA2としたときに、A2を70%以上の値とし、かつ、MD方向における、98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をB2としたときに、B2を10%未満の値とする。
このように、熱収縮率A2を所定値以上の値に、かつ、熱収縮率B2を所定値未満の値に具体的に制限することによって、90℃での熱収縮率A1及びB1との熱収縮率の関係から、より幅広い熱収縮温度領域(例えば、70~100℃、以下同様である。)において、安定した熱収縮を得ることができる。ひいては、より幅広い熱収縮温度領域において、当該フィルムをラベルとしてPETボトル等に適用してラベル付き容器とした際に、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルの破断を防ぎ、良好な耐破断特性をも得ることができる。
また、本発明のラベル付き容器を構成するにあたり、ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(i)を更に有することが好ましい。
(i)熱収縮率のA1と熱収縮率のA2とから、下記関係式(4)を満足する。
Figure 0007039154000005
このように、A2-A1で表される数値を、所定値以下の値に具体的に制限することによって、より幅広い熱収縮温度領域において、TD方向の熱収縮率を、更に容易に制御することができる。そのため、より幅広い熱収縮温度領域において、当該フィルムをラベルとしてPETボトル等に適用してラベル付き容器とした際に、MD方向の熱収縮率が多少ばらつく場合があっても、TD方向の熱収縮率を調整することで、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルの破断を防ぎ、良好な耐破断特性をも得ることができる。
また、本発明のラベル付き容器を構成するにあたり、ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(m)を更に有することが好ましい。
(m)収縮前のフィルムのJIS K7105に準拠して測定されるヘイズ値を5%以下の値とする。
このようにヘイズ値を所定範囲内の値に具体的に制限することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムの透明性についても、定量性をもって制御しやすくなり、かつ、透明性が良好なことから、汎用性を更に高めることができる。
また、本発明のラベル付き容器を構成するにあたり、ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(n)を更に有することが好ましい。
(n)非結晶性ポリエステルを、樹脂全体量の90~100重量%の範囲で含む。
このように非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を具体的に制限することによって、収縮温度付近(例えば、80~90℃、以下同様である。)における熱収縮率や破断防止性を良好なものにできるとともに、ヘイズ値等についても、定量性をもって制御しやすくなる。
なお、樹脂全体量のうち、非結晶性ポリエステル樹脂の残分は、結晶性ポリエステル樹脂やポリエステル樹脂以外の樹脂が寄与する値である。
また、本発明の別の態様は、ラベル付き容器の製造方法であって、
少なくとも下記工程(1)~(4)を含むことを特徴とするラベル付き容器の製造方法である。
(1)下記構成(a)~(c)、(f)を有するポリエステル系シュリンクフィルムから長尺筒状物を形成する工程
(a)JIS K 7127に準拠して測定される引張試験において、23℃の水中に、168時間浸漬前後の主収縮方向における引張強さをC1(MPa)及びC2(MPa)としたときに、下記関係式(1)を満足する。
Figure 0007039154000006
(b)主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1としたときに、当該A1を60%以上の値とする。
(c)TD方向と直交する方向をMD方向とし、当該MD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をB1としたときに、当該B1を3.8%以下の値とする。
(f)引張強さであるC1の値を50~75MPaの範囲内の値とし、引張強さであるC2を50~75MPaの範囲内の値とする。
(2)長尺筒状物を、自動ラベル装着装置に供給し、必要な長さに切断する工程
(3)必要な長さに切断された長尺筒状物を、内容物を充填した容器に外嵌する工程
(4)長尺筒状物を外嵌した容器を、熱風トンネル又はスチームトンネルの内部を通過させ、長尺筒状物を、均一に加熱して熱収縮させる工程
すなわち、本発明のラベル付き容器の製造方法によって得られたラベル付き容器であれば、ラベルとして装着されるポリエステル系シュリンクフィルムの構成(a)として、C2-C1で表される数値を所定範囲内の値に制限することによって、高湿度環境下であっても、フィルムの物性変化が少なく貯蔵安定性に優れ、良好な耐破断特性をも発揮することができる。
又、構成(b)及び(c)を満足することによって、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、所定温度範囲で安定した熱収縮が得られる。ひいては、当該フィルムをラベルとしてPETボトル等に適用してラベル付き容器とした際に、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルの破断を防ぎ、良好な耐破断特性をも得ることができる。
更に又、構成(f)として、引張強さC1及びC2を所定範囲内の値に具体的に制限することによって、C2-C1で表される数値を、更に容易に所定範囲内の値に制御し、ひいては、貯蔵安定性と耐破断特性を更に向上させることができる。
図1(a)~(c)は、それぞれポリエステル系シュリンクフィルムの形態を説明するための図である。 図2は、ポリエステル系シュリンクフィルムにおけるTD方向のSS曲線の典型例であって、当該フィルムの所定条件(23℃の水中下に、168時間浸漬)でのエージング処理前後における、TD方向の引張強さC1及びC2を説明するための図である。 図3は、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向の引張強さC2及び引張強さC1の差(C2-C1)と、耐破断特性の評価で破断現象が生じた試験片数(n=5個)との関係を説明するための図である。 図4は、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向の引張強さC2及び引張強さC1の差(C2-C1)と、耐破断特性の評価(相対値)との関係を説明するための図である。 図5(a)は、実施例1に相当し、破断現象が発生していない場合の試験片の状態を示す図(写真)であり、図5(b)は、比較例1に相当し、破断現象が発生した場合の試験片の状態を示す図(写真)である。 図6は、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水90℃、10秒)におけるTD方向の熱収縮率A1、MD方向の熱収縮率B1、TD方向の引張強さC1、及び引張強さC2とで表される(C2-C1)/{(1-A1/100)×(1-B1/100)}と、引張強さC2及び引張強さC1の差(C2-C1)との関係を説明するための図である。 図7は、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定加熱条件(温水90℃、10秒)におけるTD方向の熱収縮率A1、MD方向の熱収縮率B1、TD方向の引張強さC1、及び引張強さC2とで表される(C2-C1)/{(1-A1/100)×(1-B1/100)}と、耐破断特性の評価(相対値)との関係を説明するための図である。 図8は、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向の引張強さC1及び引張強さC2との比率(C1/C2)と、引張強さC2及び引張強さC1の差(C2-C1)との関係を説明するための図である。 図9は、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向の引張強さC2及び引張強さC1との比率(C1/C2)と、耐破断特性の評価(相対値)との関係を説明するための図である。
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1に例示するように、ポリエステル樹脂に由来したポリエステル系シュリンクフィルム10であって、JIS K 7127に準拠して測定される引張試験において、23℃の水中に、168時間浸漬前後の主収縮方向における引張強さをC1(MPa)及びC2(MPa)としたときに、下記関係式(1)を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムが提供され、上述した問題点を解決することができる。
Figure 0007039154000007
以下、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの構成に分けて、適宜、図1(a)~(c)等を参照しながら、具体的に各種パラメータ等を説明する。
1.ポリエステル樹脂
基本的に、ポリエステル樹脂の種類は問わないが、通常、ジオール及びジカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール、ジカルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、あるいは、これらのポリエステル樹脂の混合物であることが好ましい。
ここで、ポリエステル樹脂の化合物成分としてのジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-ヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、これらの中でも、特に、エチレングリコール、ジエチレングリコール、及び1,4-ヘキサンジメタノールが好ましい。
また、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪酸ジカルボン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいは、これらのエステル形成性誘導体等の少なくとも一つが挙げられる。
そして、これらの中でも、特に、テレフタル酸が好ましい。
また、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン等の少なくとも一つが挙げられる。
また、非結晶性ポリエステル樹脂として、例えば、テレフタル酸少なくとも80モル%からなるジカルボン酸と、エチレングリコール50~80モル%及び、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールから選ばれた1種以上のジオール20~50モル%からなるジオールよりなる非結晶性ポリエステル樹脂を好適に使用できる。必要に応じ、フィルムの性質を変化させるために、他のジカルボン酸及びジオール、あるいはヒドロキシカルボン酸を使用してもよい。また、それぞれ単独でも、あるいは、混合物であっても良い。
一方、結晶性ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等があるが、それぞれ単独であっても、あるいは混合物であっても良い。
また、ポリエステル樹脂が、非結晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂との混合物である場合、良好な耐熱性や収縮率等を得るために、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成する樹脂の全体量に対し、非結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、90~100重量%の範囲内の値とすることが好ましく、91~100重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
2.構成(a)
構成(a)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、JIS K 7127に準拠して測定される引張試験において、23℃の水中下に、168時間浸漬前後のTD方向における引張強さをC1(MPa)及びC2(MPa)としたときに、所定の関係式(1)を満足する旨の必要的構成要件である。
この理由は、高湿度環境下でのフィルムの物性変化を抑えて、優れた貯蔵安定性及び耐破断特性を得ることができるためである。
より具体的には、C2-C1で表される数値が、-5.3MPa以下の値となったり4.2MPa以上の値になったりすると、高湿度環境下でのフィルムの物性変化を十分に抑えることができず、貯蔵安定性が得られないばかりか、耐破断特性をも発揮できなくなってしまう場合があるためである。
したがって、かかるC2-C1で表される数値を、-4.6MPaを超えた値であって、3.4MPa未満の値とすることがより好ましく、-3.9MPaを超えた値であって、2.6MPa未満の値とすることが更に好ましい。
ここで、図2に言及し、ポリエステル系シュリンクフィルムにおけるTD方向のSS曲線の典型例を用いて、当該フィルムの所定条件(23℃の水中下に、168時間浸漬)でのエージング処理前後における、TD方向の引張強さC1及びC2を説明する。
すなわち、図2の横軸に、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向における歪みの値(%)を採って示してあり、縦軸に、その歪みに対応する応力(MPa)が採って示してある。
そして、かかる図2中の特性曲線P~Sのうち、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムは、通常、特性曲線Qに該当とする。
当該特性曲線Qによれば、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向における歪みを大きくしていくと、それに対応して応力が発生し、その値も上昇することが理解される。
次いで、更に、TD方向における歪みを大きくすると、ポリエステル系シュリンクフィルムの結晶転移が生じ、上に凸のブロードピークが現れる。これが、上降伏点と定義される。
次いで、更に、TD方向における歪みを大きくしていくと、ポリエステル系シュリンクフィルムの結晶転移が再度生じ、下に凸のブロードピークが現れる。これが、下降伏点と定義される。
次いで、更に、TD方向における歪みを大きくしていくと、それに対応して応力の値も上昇し、ある歪みにおいて、ポリエステル系シュリンクフィルムの破断が生じ、この歪みに対応する応力であって、SS曲線上での最大応力を、引張強さ(破壊応力と称される場合もある。)と定義する。
また、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの特性曲線が、特性曲線P又はSに近い曲線となる場合には、引張強さは破壊応力のことを意味し、特性曲性Rに近い曲線となる場合には、引張強さは上降伏点での応力である上降伏点応力のことを意味する。
そして、本発明は、所定条件でのエージング処理前後における引張強さの差(C2-C1)と、耐破断特性等の所定関係を見出し、その所定関係を制御することを特徴としたものである。
次いで、図3に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定条件(23℃の水中に、168時間浸漬)でのエージング処理前後における、引張強さC1及びC2の差(C2-C1)を横軸にとり、耐破断特性の評価において、5個中、破断現象が発生した試験片数の値を縦軸にとって、これらの関係を説明する。
かかる図3中の特性曲線から、C2-C1で表示される値の下限が、-5.3MPaを超える値であれば、耐破断特性評価において、破断現象が発生した試験片数は、1個以下となり、良好な破断防止性が発揮されていることが理解される。
それに対して、C2-C1で表示される値の下限が、-5.3MPa以下の値になると、破断現象が発生した試験片数は、1個を超えて、十分な耐破断特性が発揮されていないことが理解される。
また、C2-C1で表示される値の上限が、4.2MPa未満の値であれば、耐破断特性評価において、破断現象が発生した試験片数は、急激に減少し、1個以下となり、良好な破断防止性が発揮されていることが理解される。
それに対して、C2-C1で表示される値の上限が、4.2MPa以上の値になると、破断現象が発生した試験片数は、急激に増加し、3個以上となることから、十分な耐破断特性が発揮されていないことが理解される。
次いで、図4に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムの所定条件(23℃の水中に、168時間浸漬)でのエージング処理前後における、引張強さC1及びC2の差(C2-C1)を横軸にとり、耐破断特性評価の値(相対値)を縦軸にとって、これらの関係を説明する。
すなわち、耐破断特性評価が◎を5、〇を3、△を1、×を0として、耐破断特性評価の値(相対値)を算出したものである。
かかる図4中の特性曲線から、C2-C1で表示される値の下限が、-5.3MPaを超える値であれば、耐破断特性評価の値(相対値)は3以上となり、良好な耐破断特性が発揮されていることが理解される。
それに対して、C2-C1で表示される値の下限が、-5.3MPa以下になると、耐破断特性評価の値(相対値)は急激に低下し、十分な耐破断特性が発揮されていないことが理解される。
また、C2-C1で表示される値の上限が、4.2MPa未満であれば、耐破断特性評価の値(相対値)は急激に増加し、3以上となり、良好な耐破断特性が発揮されていることが理解される。
それに対して、C2-C1で表示される値の上限が、4.2MPa以上であると、耐破断特性評価の値(相対値)は0となって、十分な耐破断特性が発揮されていないことが理解される。
なお、本評価にて、良好な耐破断特性が発揮されたポリエステル系シュリンクフィルムであれば、ラベルとして収縮させボトルに装着した後、運搬及び保管中にラベルが破断しないことが別途明らかになっている。
次いで、図5について説明する。すなわち、図5(a)は、実施例1に相当し、破断が発生していない場合の試験片の状態を示す図(写真)である。
より具体的には、所定条件(23℃の水中に、168時間浸漬)でのエージング処理後におけるポリエステル系シュリンクフィルムから切り出した試験片を用いた引張試験を通して、試験片の引張部位が引き伸ばされても、破断が生じなかったことが理解される。
一方、図5(b)は、比較例1に相当し、破断が発生した場合の試験片の状態を示す写真である。
より具体的には、所定条件(23℃の水中に、168時間浸漬)でのエージング処理後におけるポリエステル系シュリンクフィルムから切り出した試験片を用いた引張試験を通して、試験片の引張部位が図5(a)の試験片の場合と比較すると、僅かに引き伸ばされただけで、破断が生じたことが理解される。
3.任意的構成要件
(1)構成(b)
主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率であるA1に関する構成要件であって、60%以上の値にすることを好適態様とする。
この理由は、かかる90℃熱収縮率A1を所定値以上に具体的に制限することにより、熱収縮時のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、安定的な熱収縮が得られ、ひいては、後述するMD方向の熱収縮率B1との関係から、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルの破断を防ぎ、良好な耐破断特性を得ることができるためである。
より具体的には、フィルムの90℃熱収縮率A1が、60%未満の値になると、フィルムをラベルとしてPETボトル等に適用した際に、PETボトルの形状によっては、熱収縮率が足りず、安定的な熱収縮が得られないばかりか、MD方向の熱収縮率B1との関係から、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルを防ぐことができない場合があるためである。
したがって、かかる90℃熱収縮率A1の下限を65%以上の値とすることがより好ましく、70%以上の値とすることが更に好ましい。
一方、上述した90℃熱収縮率A1の値が過度に大きくなると、所定の熱収縮温度領域(例えば70~100℃)において、所望の熱収縮率が得られず、安定的な熱収縮が得られないばかりか、フィルムをラベルとしてPETボトル等に適用した際に、MD方向の熱収縮率B1との関係から、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルの破断を防ぐことができない場合があるためである。
したがって、かかる90℃熱収縮率A1の上限を85%以下の値とすることが好ましく、83%以下の値とすることがより好ましく、81%以下の値とすることが更に好ましい。
なお、第1の実施形態のシュリンクフィルムにおける熱収縮率は、下記式(5)で定義される。
Figure 0007039154000008
0:熱処理前のサンプルの寸法(長手方向又は幅方向)
1:熱処理後のサンプルの寸法(L0と同じ方向)
(2)構成(c)
構成(c)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向と直交する方向をMD方向とし、MD方向における90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率であるB1に関する構成要件であって、10%未満の値にすることを好適態様とする。
この理由は、かかる熱収縮率B1を所定値未満に具体的に制限することにより、フィルムをラベルとしてPETボトル等に適用した際に、熱収縮率A1との関係から、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルの破断を防ぎ、良好な耐破断特性を得ることができるためである。
より具体的には、フィルムの90℃熱収縮率B1が、-5%以下の値になったり、10%以上の値になったりすると、熱収縮率A1との関係から、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルの破断を防ぐことができない場合があるためである。
したがって、かかる90℃熱収縮率B1が、-4%を超えた値であって、8%未満の値とすることがより好ましく、-3%を超えた値であって、6%未満の値とすることが更に好ましい。
(3)構成(d)
構成(d)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(平均厚さ)に関する構成要件であって、通常、10~100μmの範囲内の値にすることを好適態様とする。
この理由は、かかるポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを、所定範囲内の値に具体的に制限することによって、より一層な良好な耐破断特性を得ることができるためである。
より具体的には、かかるポリエステル系シュリンクフィルムの厚さが、10μm未満の値になると、機械的強度が著しく低下することで、取り扱いが困難になったり、良好な耐破断特性を発揮することが困難になったりする場合があるためである。
一方、かかるポリエステル系シュリンクフィルムの厚さが、100μmを超えた値になると、均一な厚さに製造したりすることが困難になったり、所定温度で熱収縮させる際に、均一に熱収縮せずに、ひいては、良好な耐破断特性を発揮することが困難になる場合があるためである。
したがって、構成(d)として、フィルムの厚さを、15~80μmの範囲内の値とすることがより好ましく、20~60μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
(4)構成(e)
構成(e)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの、熱収縮率のA1と、熱収縮率のB1と、引張強さのC1と、引張強さのC2が、所定の関係式(2)を満足することを好適態様とする。
この理由は、(C2-C1)/{(1-A1/100)×(1-B1/100)}で表される数値(以下、変数Dと称する。)を所定範囲内の値に具体的に制限することによって、更にC2-C1で表される数値を所定範囲内の値に制御し易くし、より一層、貯蔵安定性や耐破断特性を向上させることができるためである。
より具体的には、かかる変数Dが、-13MPa~9.5MPaの範囲外の値になると、C2-C1で表される値を制御するのが困難となり、優れた貯蔵安定性や耐破断特性を維持することが困難になる場合があるためである。
したがって、構成要件(e)として、かかる変数Dを、-8MPa~6.5MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、-3MPa~3.5MPa以下の値とすることが更に好ましい。
ここで、図6に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける変数Dと、C2-C1で表される数値との関係を示す。
すなわち、図6の横軸に、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける変数D(MPa)をとり、縦軸に、C2-C1で表される値(MPa)をとって、特性曲線を示してある。
かかる特性曲線から、変数DとC2-C1との関係において、極めて優れた相関関係(相関係数(R)が、0.979)があることが理解される。よって、変数Dを所定範囲内の値に制限することによって、C2-C1で表される値を、更に容易に制御することができる。
次いで、図7に、変数Dと、耐破断特性評価との関係をより具体的に示す。
すなわち、図7の横軸に、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける変数D(MPa)をとり、縦軸に、耐破断特性の評価(相対値)をとって、特性曲線を示してある。縦軸の耐破断特性の評価(相対値)は、◎を5、○を3、△を1、×を0として数値化したものである。
かかる特性曲線から、変数Dが、-13~9.5MPaの範囲内の値であれば、耐破断特性の評価(相対値)は、3以上となり、良好な耐破断特性の評価(相対値)が得られることが理解される。
それに対して、変数Dが、-13~9.5の範囲外の値になると、耐破断特性の評価(相対値)は急激に低下し、十分な耐破断特性が発揮されないことが理解される。
(5)構成(f)
構成(f)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの引張強さであるC1と引張強さであるC2に関する構成要件であって、C1を50~75MPaの範囲内の値とし、C2を50~75MPaの範囲内の値とすることを好適態様とする。
この理由は、C1とC2を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、C1-C2で表される数値を、所定範囲内の値にし、更に容易に制御しやすくし、ひいては、エージング処理後であっても、物性の劣化が無く、フィルムの耐破断特性を良好な状態に維持することができるためである。
より具体的には、所定の高湿度環境下でのエージング処理前の引張強さであるC1が、50MPa未満であったり、75MPaを超えたりすると、C2-C1で表される数値を、所定範囲内の値に、制御できなくなる場合があるためである。
また、同様に、所定の高湿度環境下でのエージング処理後の引張強さであるC2が、50MPa未満であったり、75MPaを超えたりすると、C2-C1で表される数値を、所定範囲内の値に制御できなくなる場合があるためである。
したがって、構成(f)として、C1を48~72MPaの範囲内の値とし、C2を48~72MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、C1を51~69MPaの範囲内の値とし、C2を51~69MPの範囲内の値とすることが更に好ましい。
(6)構成(g)
構成(g)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの引張強さであるC1と引張強さであるC2の比率である、C1/C2に関する構成要件であって、C1/C2で表される値が、0.95~1.07の範囲内の値とすることを好適態様とする。
この理由は、このようにC1/C2で表される数値を、所定範囲内の値に具体的に制限することにより、C2-C1で表される数値を所定範囲内に制御しやすくし、ひいては、エージング処理後であっても、物性の劣化が無く、フィルムの耐破断特性を良好な状態に維持することができるためである。
より具体的には、引張強さであるC1と引張強さであるC2の比率であるC1/C2で表される値が、0.95未満であったり、1.07を超えたりすると、C2-C1で表される数値を、所定範囲内の値に、制御できなくなる場合があるためである。
したがって、構成(g)として、C1/C2で表される値を0.96~1.06の範囲内の値とすることがより好ましく、0.97~1.05の範囲内の値とすることが更に好ましい。
ここで、図8に言及して、ポリエステル系シュリンクフィルムにおける、C1/C2で表される数値と、C2-C1で表される数値との関係を示す。
すなわち、図8の横軸に、ポリエステル系シュリンクフィルムにおけるC1/C2で表される値(-)をとり、縦軸に、C2-C1で表される値(MPa)をとって、特性曲線を示してある。
かかる特性曲線から、C1/C2とC2-C1との関係において、極めて優れた相関関係(相関係数(R)が、0.998)があることが理解される。よって、C1/C2を所定範囲内の値に制限することによって、C2-C1で表される値を、更に容易に制御することができる。
次いで、図9に、C1/C2で表される数値と、耐破断特性評価との関係をより具体的に示す。
すなわち、図9の横軸に、ポリエステル系シュリンクフィルムにおけるC1/C2で表される数値(-)をとり、縦軸に、耐破断特性の評価(相対値)をとって、特性曲線を示してある。縦軸の耐破断特性の評価(相対値)は、◎を5、○を3、△を1、×を0として数値化したものである。
かかる特性曲線から、C1/C2で表される数値が、0.95~1.07の範囲内の値であれば、耐破断特性の評価(相対値)は、3以上となり、良好な耐破断特性の評価(相対値)が得られることが理解される。
それに対して、C1/C2で表される数値が、0.95~1.07の範囲外の値になると、耐破断特性の評価(相対値)は急激に低下し、十分な耐破断特性が発揮されないことが理解される。
(7)構成(h)
構成(h)は、ポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向における、98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率であるA2と、MD方向における、98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率であるB2とに関する構成要件であって、A2を70%以上の値とし、B2を10%未満の値とすることを好適態様とする。
この理由は、このようにA2を所定値以上とし、B2を所定値未満に具体的に制限することによって、90℃での熱収縮率A1及びB1との関係から、幅広い熱収縮温度領域において、安定した熱収縮を得ることができるためである。更には、幅広い熱収縮温度領域において、当該フィルムをラベルとしてPETボトル等に適用した際に、TD方向とMD方向の熱収縮率とのバランス関係に起因して発生するラベルの破断を防ぎ、良好な耐破断特性をも得ることができる。
より具体的には、熱収縮率A2が70~90%の範囲外の値になると、熱収縮率A1を所定範囲内の値に制御することが困難になる場合があるためである。
一方、熱収縮率B2が0%未満又は10%以上の値になると、熱収縮率B1を所定範囲内の値に制御することが困難になる場合があるためである。
したがって、構成(h)として、熱収縮率A2を73~87%の範囲内の値とし、熱収縮率B2を0~8%の範囲内の値とすることがより好ましく、熱収縮率A2を76~84%の範囲内の値とし、熱収縮率B2を0~6%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
(8)構成(i)
構成(i)は、熱収縮率のA1と熱収縮率のA2とから、所定の関係式(3)を満足することを好適態様とする。
この理由は、このように熱収縮率A1とA2との差(A2-A1)を所定値以下に具体的に制限することによって、幅広い熱収縮温度領域において、所望の熱収縮率の範囲内に制御し、安定した熱収縮を得ることができるためである。
より具体的には、A2-A1で表される値が、5%を超えると、70~90℃の熱収縮温度領域において、所望の熱収縮率が得られず、安定した熱収縮を得ることができない場合があるためである。
したがって、構成(i)として、A2-A1で表される値が、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。
(9)構成(j)
構成(j)は、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムのMD方向における延伸倍率(平均MD方向延伸倍率、単に、MD方向延伸倍率と称する場合がある。)に関する構成要件である。
そして、かかるMD方向延伸倍率を100~200%の範囲内の値とすることを好適態様とする。
この理由は、このようにMD方向延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限し、かつ、A1、A2、B1、B2、C1、C2、及びこれらを組み合わせて表される数値等(例えば、A2-A1等)を、それぞれ所定範囲内の値に具体的に制限することで、優れた耐破断特性を発揮することができるためである。
より具体的には、MD方向延伸倍率が、100%未満の値になると、製造上の歩留まりが著しく低下する場合があるためである。
一方、MD方向延伸倍率が200%を超えると、TD方向における収縮率に影響し、その収縮率の調整自体が困難となる場合があるためである。
したがって、構成(j)として、MD方向延伸倍率を100~180%の範囲内の値とすることがより好ましく、100~160%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
(10)構成(k)
また、構成(k)は、熱収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムのTD方向における延伸倍率(平均TD方向延伸倍率、単に、TD方向延伸倍率と称する場合がある。)に関する構成要件である。
そして、かかるTD方向延伸倍率を300~600%の範囲内の値とすることを好適態様とする。
この理由は、このようにTD方向延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限し、かつ、A1、A2、B1、B2、C1、C2、及びこれらを組み合わせて表される数値等(例えば、A2-A1等)を、それぞれ所定範囲内の値に具体的に制限することで、優れた耐破断特性を発揮することができるためである。
より具体的には、TD方向延伸倍率が、300%未満の値になると、TD方向における収縮率が著しく低下し、使用可能なポリエステル系シュリンクフィルムの用途が過度に制限される場合があるためである。
一方、TD方向延伸倍率が、600%を超えた値になると、収縮率が著しく大きくなって、使用可能なポリエステル系シュリンクフィルムの用途が過度に制限されたり、あるいは、その延伸倍率自体を一定に制御することが困難となったりする場合があるためである。
したがって、構成(k)として、TD方向延伸倍率を320~550%の範囲内の値とすることがより好ましく、340~500%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
(11)構成(m)
また、構成(m)は、熱収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムのJIS K 7105に準拠して測定されるヘイズ値を5%以下の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、このようにヘイズ値を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムの透明性についても、定量性をもって制御しやすくなり、かつ、透明性が良好なことから、汎用性を更に高めることができるためである。
より具体的には、熱収縮前のフィルムのヘイズ値が、5%を超えた値になると、透明性が低下し、PETボトルに対する装飾用途等への適用が困難となる場合があるためである。
一方、熱収縮前のフィルムのヘイズ値が、過度に小さくなると、安定的に制御することが困難になって、生産上の歩留まりが著しく低下する場合があるためである。
したがって、構成(m)として、熱収縮前のフィルムのヘイズ値を0.1~3%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5~1%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
(12)構成(n)
また、構成(n)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、非結晶性ポリエステル樹脂を、全体量の90~100重量%含む旨の任意的構成要件である。
この理由は、このように非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を具体的に制限することによって、収縮温度付近における熱収縮率や破断防止性を所望範囲に、更に容易に調整しやすくできるとともに、ヘイズ値等についても、定量性をもって制御しやすくなるためである。
より具体的には、非結晶性ポリエステル樹脂の含有量が90%未満の値になると、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近における収縮率や、破断防止性の制御が困難となる場合があるためである。
また、結晶性ポリエステル樹脂の含有量が過度に多くなると、収縮温度付近における熱収縮率、破断防止性及びヘイズ等への所定影響因子を制御できる範囲が著しく狭くなる可能性があるためである。
したがって、構成(n)として、非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を、全体量の91~100重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、92~100重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
(13)その他
第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルム中、又は、その片面、あるいは両面に、各種添加剤を配合したり、それらを付着させたりすることが好ましい。
より具体的には、加水分解防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、有機フィラー、無機フィラー、有機繊維、無機繊維等の少なくとも一つを、ポリエステル系シュリンクフィルムの全体量に対して、通常、0.01~10重量%の範囲で配合することが好ましく、0.1~1重量%の範囲で配合等することがより好ましい。
また、図1(b)に示すように、これらの各種添加剤の少なくとも一つを含む他の樹脂層10a、10bを、ポリエステル系シュリンクフィルム10の片面、又は両面に、積層することも好ましい。
その場合、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを100%としたとときに、追加で積層する他の樹脂層の単層厚さ又は合計厚さを、通常、0.1~10%の範囲内の値とすることが好ましい。
そして、他の樹脂層を構成する主成分としての樹脂は、ポリエステル系シュリンクフィルムと同様のポリエステル樹脂であっても良く、あるいは、それとは異なるアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂等の少なくとも一つであることが好ましい。
更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを多層構造にして、加水分解防止効果や機械的保護を更に図ったり、あるいは、図1(c)に示すように、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が、面内で均一になったりするように、ポリエステル系シュリンクフィルム10の表面に、収縮率調整層10cを設けることも好ましい。
かかる収縮率調整層は、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮特性に応じて、接着剤、塗布方式、あるいは加熱処理等によって、積層することができる。
より具体的には、収縮率調整層の厚さは、0.1~3μmの範囲であって、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に大きい場合には、それを抑制するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
また、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に小さい場合には、それを拡大するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
よって、ポリエステル系シュリンクフィルムとして、収縮率が異なる各種シュリンクフィルムを作成することなく、収縮率調整層によって、所望の収縮率を得ようとするものである。
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの製造方法に関する実施形態である。
1.原材料の準備及び混合工程
まずは、原材料として、非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂、帯電防止剤、加水分解防止剤等の、主剤や添加剤を準備することが好ましい。
次いで、攪拌容器内に、秤量しながら、準備した非結晶性ポリエステル樹脂や結晶性ポリエステル樹脂等を投入し、攪拌装置を用いて、均一になるまで、混合攪拌することが好ましい。
2.原反シートの作成工程
次いで、均一に混合した原材料を、絶乾状態に乾燥することが好ましい。
次いで、典型的には、押し出し成形を行い、所定厚さの原反シートを作成することが好ましい。
より具体的には、例えば、押出温度180℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、所定厚さ(通常、30~1000μm)の原反シートを得ることができる。
3.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
次いで、得られた原反シートにつき、シュリンクフィルム製造装置を用い、ロール上やロール間を移動させながら、加熱押圧して、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成する。
すなわち、所定の延伸温度、延伸倍率で、フィルム幅を基本的に拡大させながら、加熱押圧しながら、所定方向に延伸することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステル分子を所定形状に結晶化させることが好ましい。
そして、その状態で固化させることによって、装飾やラベル等として用いられる熱収縮性のポリエステル系シュリンクフィルムを作成することができる。
4.ポリエステル系シュリンクフィルムの検査工程
作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、連続的又は間断的に、下記特性等を測定し、所定の検査工程を設けることが好ましい。
すなわち、所定の検査工程によって、下記特性等を測定し、所定範囲内の値に入ることを確認することによって、より均一な収縮特性等を有するポリエステル系シュリンクフィルムとすることができる。
1)ポリエステル系シュリンクフィルムの外観についての目視検査
2)厚さのばらつき測定
3)引張弾性率測定
4)引裂強度測定
5)SS曲線による粘弾性特性測定
そして、第2の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの製造では、JIS K 7127に準拠して測定される引張試験において、23℃の水中に、168時間浸漬前後の主収縮方向における引張強さをC1(MPa)及びC2(MPa)としたときに、これらの数値差C2-C1を測定・算出して加味することが好ましいと言える。
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法に関する実施形態である。
したがって、公知のシュリンクフィルムの使用方法を、いずれも好適に適用することができる。
例えば、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法を実施するに際して、まずは、ポリエステル系シュリンクフィルムを、適当な長さや幅に切断するとともに、長尺筒状物を形成する。
次いで、当該長尺筒状物を、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、更に必要な長さに切断し、それを、内容物を充填したPETボトル等に外嵌する。
次いで、PETボトル等に外嵌したポリエステル系シュリンクフィルムの加熱処理として、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルの内部を通過させる。
そして、これらのトンネルに備えてなる赤外線等の輻射熱や、90℃程度の加熱蒸気を周囲から吹き付けることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを均一に加熱して熱収縮させる。
よって、PETボトル等の外表面に密着させて、ラベル付き容器を迅速に得ることができる。
ここで、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムによれば、少なくとも上述の構成(a)を満足することを特徴とする。
そうすることで、熱収縮のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、高湿度環境下でのフィルムの物性変化を抑えて、優れた貯蔵安定性及び耐破断特性を得ることができる。
したがって、図5(a)に示すように、フィルムが引き伸ばされても破断することがなく、高湿度環境下での経時劣化による物性変化に伴う耐破断特性の低下を防止することができる。
一方、少なくとも構成(a)を満足しない場合、図5(b)に示すように、経時劣化による物性の変化を抑制できず、フィルムが破断することになる。
なお、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムは、乳酸由来の構造単位を事実上含まないことから、保管条件における厳格な湿度管理等が不要になるという利点もある。
以下、本発明を実施例に基づき、詳細に説明する。但し、特に理由なく、本発明の権利範囲が、実施例の記載によって狭められることはない。
なお、実施例等において用いた樹脂は、以下の通りである。
(PETG1)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール68モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール22モル%,ジエチレングリコール10モル%からなる非結晶性ポリエステル
(PETG2)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール72モル%、ネオペンチルグリコール25モル%、ジエチレングリコール3モル%からなる非結晶性ポリエステル
(PETG3)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール63モル%、1,4-シクロヘキサンジメタノール24モル%、ジエチレングリコール13モル%からなる非結晶性ポリエステル
(PETG4)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール67モル%、1,4-ブタンジオール17モル%、ネオペンチルグリコール16モル%、ジエチレングリコール2モル%からなる非結晶性ポリエステル
(APET)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール100モル%からなる結晶性ポリエステル
[実施例1]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を100重量部用いた。
次いで、この原料を絶乾状態にしたのち、押出温度180℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック機械株式会社製)により、押し出し成形を行い、厚さ200μmの原反シートを得た。
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、延伸温度76℃、所定の延伸倍率(MD方向:105%、TD方向:460%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルム(APETの配合率0%、100℃、10秒加熱時のTD方向の熱収縮率が80%、MD方向の熱収縮率が5%)を作成した。
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
(1)評価1:厚さのばらつき
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(所望値である30μmを基準値として)を、マイクロメータを用いて測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:厚さのばらつきが基準値±0.1μmの範囲内の値である。
〇:厚さのばらつきが基準値±0.5μmの範囲内の値である。
△:厚さのばらつきが基準値±1.0μmの範囲内の値である。
×:厚さのばらつきが基準値±3.0μmの範囲内の値である。
(2)評価2:熱収縮率1(A1)
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(TD方向)を、恒温槽を用いて、90℃の温水に、10秒間浸漬し(A1条件)、熱収縮させた。
次いで、所定温度(90℃温水)で加熱処理前後の寸法変化から、下式(6)に準じて、熱収縮率(A1)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
Figure 0007039154000009
◎:熱収縮率(A1)が70~83%の範囲内の値である。
〇:熱収縮率(A1)が60~85%の範囲内の値であって、上記◎の範囲外である。
△:熱収縮率(A1)が50~87%の範囲内の値であって、上記〇の範囲外である。
×:熱収縮率(A1)が50%未満又は87%を超える値である。
(3)評価3:熱収縮率2(A2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(TD方向)を、恒温槽を用いて、98℃の温水に、10秒間浸漬し(A2条件)、熱収縮させた。
次いで、所定温度(98℃温水)の加熱処理前後の寸法変化から、上記式(6)に準じて、熱収縮率(A2)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A2)が75~85%の範囲内の値である。
〇:熱収縮率(A2)が70~90%の範囲内の値であって、上記◎の範囲外である。
△:熱収縮率(A2)が65~95%の範囲内の値であって、上記〇の範囲外である。
×:熱収縮率(A2)が65%未満又は95%を超える値である。
(4)評価4:熱収縮率3(B1)
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(MD方向)を、恒温槽を用いて、90℃の温水に、10秒間浸漬し(B1条件)、熱収縮させた。
次いで、所定温度(90℃温水)の加熱処理前後の寸法変化から、上記式(6)に準じて、熱収縮率(B1)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(B1)が5%未満の値である。
〇:熱収縮率(B1)が10%未満の値である。
△:熱収縮率(B1)が15%未満の値である。
×:熱収縮率(B1)が15%以上の値である。
(5)評価5:熱収縮率4(B2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(MD方向)を、恒温槽を用いて、98℃の温水に、10秒間浸漬し(B2条件)、熱収縮させた。
次いで、所定温度(98℃温水)の加熱処理前後の寸法変化から、上記式(6)に準じて、熱収縮率(B2)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(B2)が5%未満の値である。
〇:熱収縮率(B2)が10%未満の値である。
△:熱収縮率(B2)が15%未満の値である。
×:熱収縮率(B2)が15%以上の値である。
(6)評価6:熱収縮率5(A2-A1)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率A1とA2から、A2-A1を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:熱収縮率(A2-A1)が4%以下の値である。
〇:熱収縮率(A2-A1)が5%以下の値である。
△:熱収縮率(A2-A1)が6%以下の値である。
×:熱収縮率(A2-A1)が6%を超える値である。
(7)評価7:引張強さ1(C1)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムをMD方向に幅15mm、TD方向に長さ200mmとし、短冊状に切り出したものを試験片として準備した。
次いで、JIS K7127に準拠して、温度23℃、相対湿度50%RHの雰囲気下で、引張速度200mm/minにて引張試験を行い、準備した試験片のTD方向における引張強さC1を計測し、以下の基準に準じて評価した。
◎:引張強さ1(C1)が55~70MPaの範囲内の値である。
〇:引張強さ1(C1)が50~75MPaの範囲内の値であって、上記◎の範囲外である。
△:引張強さ1(C1)が45~80MPaの範囲内の値であって、上記〇の範囲外である。
×:引張強さ1(C1)が45MPa未満又は80MPaを超える値である。
(8)評価8:引張強さ2(C2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、エージング処理として、23℃の水中下に、168時間浸漬させた。
次いで、エージング処理後のフィルムから、評価7と同様の試験片を準備した。
次いで、JIS K7127に準拠して、温度23℃、相対湿度50%RHの雰囲気下で、引張速度200mm/minにて引張試験を行い、準備した試験片のTD方向における引張強さC1を計測し、以下の基準に準じて評価した。
◎:引張強さ2(C2)が55~70MPaの範囲内の値である。
〇:引張強さ2(C2)が50~75MPaの範囲内の値であって、上記◎の範囲外である。
△:引張強さ2(C2)が45~80MPaの範囲内の値であって、上記〇の範囲外である。
×:引張強さ2(C2)が45MPa未満又は80MPaを超える値である。
(9)評価9:引張強さ3(C2-C1)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの引張強さC1(MPa)及びC2(MPa)から、C2-C1(MPa)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:引張強さ3(C2-C1)が-4.6MPaを超える値であって、3.4MPa未満の値である。
〇:引張強さ3(C2-C1)が-5.3MPaを超える値であって、4.2MPa未満の値であり、上記◎の範囲外である。
△:引張強さ3(C2-C1)が-6MPaを超える値であって、5MPa未満の値であり、上記〇の範囲外である。
×:引張強さ3(C2-C1)が-6MPa以下又は5MPa以上の値である。
(10)評価10:引張強さ4((C2-C1)/{(1-A1/100)×(1-B1/100)})
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの熱収縮率A1(%)及びB1(%)、引張強さC1(MPa)及びC2(MPa)から、(C2-C1)/{(1-A1/100)×(1-B1/100)}(MPa)(以下、変数Dと称する。)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:引張強さ4(変数D)が-8~6.5MPaの範囲内の値である。
〇:引張強さ4(変数D)が-13~9.5MPaの範囲内の値であって、上記◎の範囲外である。
△:引張強さ4(変数D)が-18~12.5MPaの範囲内の値であって、上記〇の範囲外である。
×:引張強さ4(変数D)が-18MPa未満又は12.5MPaを超える値である。
(11)評価11:引張強さ5(C1/C2)
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの引張強さC1(MPa)及びC2(MPa)から、C1/C2を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:引張強さ4(C1/C2)が0.96~1.06の範囲内の値である。
〇:引張強さ4(C1/C2)が0.95~1.07の範囲内の値であって、上記◎の範囲外である。
△:引張強さ4(C1/C2)が0.94~1.08の範囲内の値であって、上記〇の範囲外である。
×:引張強さ4(C1/C2)が0.94未満又は1.08を超える値である。
(12)評価12:耐破断特性
得られたポリエステル系シュリンクフィルムを、エージング処理として、23℃の水中下に、168時間浸漬させた。
次いで、エージング処理後のフィルムから、評価7と同様の試験片(5個)を準備した。
次いで、JIS K7127に準拠して、温度23℃、相対湿度50%RHの雰囲気下で、引張速度200mm/minにて、エージング処理後の試験片(5個)をサンプルとして引張試験を行い、応力-歪み曲線における弾性領域にて破断したサンプル数を、耐破断特性として、以下の基準に準じて評価した。
なお、23℃の水中下に、168時間浸漬させた後の応力-歪み曲線における最大応力である引張強さ(E)を測定したところ、66.1MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、0個であった。更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、室温条件で1か月経過する前に、応力-歪み曲線における最大応力である引張強さ(G)を測定したところ、66.1MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、0個であった。したがって、実施例1のE/G×100で表される数値は、100%と算出された。
◎:試験片の5個中、全てに、破断現象は観察されなかった。
〇:試験片の5個中、1個以下に破断現象が観察された。
△:試験片の5個中、2個以上に破断現象の発生が観察された。
×:試験片の5個中、3個以上に破断現象の発生が観察された。
(13)評価13:ヘイズ
JIS K 7105に準拠して、得られたポリエステル系シュリンクフィルムのヘイズ値を測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:1%以下の値である。
〇:3%以下の値である。
△:5%以下の値である。
×:5%を超えた値である。
[実施例2~3]
実施例2~3において、表1に示すように、それぞれ構成(a)等の値を変えて、実施例1と同様に、各種ポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に、熱収縮率1(A1)、熱収縮率3(B1)、引張強さ3(C2-C1)等を評価した。
すなわち、実施例2において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG3)を原材料とし、押出条件を変えて、厚さ51μmのポリエステル系シュリンクフィルム(APET配合率0%)を作成したほかは、実施例1と同様にし、評価した。結果を表2に示す。
なお、実施例2において、実施例1の評価12と同様に、引張強さ(E)を測定したところ、56.8MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、0個であった。更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、室温条件で1か月経過する前に、同様に、応力-歪み曲線における、引張強さ(G)を測定したところ、56.5MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、0個であった。したがって、実施例2のE/G×100で表される数値は、101%と算出された。
また、実施例3において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)を原材料とし、押出条件を変えて、厚さ29μmのポリエステル系シュリンクフィルム(APET配合率0%)を作成したほかは、実施例1と同様にし、評価した。結果を表2に示す。
なお、実施例3において、実施例1の評価12と同様に、引張強さ(E)を測定したところ、67.8MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、0個であった。更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、室温条件で1か月経過する前に、同様に、応力-歪み曲線における、引張強さ(G)を測定したところ、67.8MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、0個であった。したがって、実施例3のE/G×100で表される数値は、100%と算出された。
[比較例1~4]
比較例1~4において、表1に示すように、それぞれ構成要件(a)等を満足しないポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、熱収縮率1(A1)、熱収縮率3(B1)、引張強さ3(C2-C1)等を評価した。
すなわち、比較例1において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を原材料とし、押出条件を変えて、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルム(APET配合率0%、100℃、10秒加熱時のTD方向の収縮率が71%、MD方向の収縮率が3%)を作成し、実施例1と同様に評価して得られた結果を表2に示す。
なお、比較例1において、実施例1の評価12と同様に、23℃の水中下に、168時間浸漬させた後の応力-歪み曲線における最大応力である引張強さ(E)を測定したところ、55.9MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、2個であった。更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、室温条件で1か月経過する前に、同様に、応力-歪み曲線における最大応力である引張強さ(G)を測定したところ、61.2MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、0個であった。したがって、比較例1のE/G×100で表される数値は、91%と算出された。
また、比較例2において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を原材料とし、押出条件を変えて、厚さ25μmのポリエステル系シュリンクフィルム(APET配合率0%、100℃、10秒加熱時のTD方向の収縮率が65%、MD方向の収縮率が11%)を作成し、実施例1と同様に評価して得られた結果を表2に示す。
なお、比較例2において、実施例1の評価12と同様に、引張強さ(E)を測定したところ、59.1MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、3個であった。更に、室温条件で1か月経過する前に、引張強さ(G)を測定したところ、67.1MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、0個であった。したがって、比較例2のE/G×100で表される数値は、88%と算出された。
また、比較例3において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を90重量部及び結晶性ポリエステル樹脂(APET)を10重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルム(APET配合率10%、100℃、10秒加熱時のTD方向の収縮率が62%、MD方向の収縮率が4%)を作成した。
なお、比較例3において、実施例1の評価12と同様に、引張強さ(E)を測定したところ、62.0MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、3個であった。更に、室温条件で1か月経過する前に、引張強さ(G)を測定したところ、57.8MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、2個であった。したがって、比較例3のE/G×100で表される数値は、107%と算出された。
また、比較例4において、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、評価して結果を表2に示す。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG4)を原材料とし、押出条件を変えて、厚さ40μmのポリエステル系シュリンクフィルム(APET配合率0%)を作成した。
なお、比較例4において、実施例1の評価12と同様に、引張強さ(E)を測定したところ、65.1MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、2個であった。更に、室温条件で1か月経過する前に、引張強さ(G)を測定したところ、71.5MPaであり、破断現象が発生した試験片の数は5個中、0個であった。したがって、比較例4のE/G×100で表される数値は、91%と算出された。
Figure 0007039154000010
Figure 0007039154000011
本発明によれば、従来の熱収縮性ポリエステル系フィルムの欠点を解消し、少なくとも引張強さC1とC2との差(C2-C1)を、所定範囲内の値に制限することによって、高湿度環境下であっても物性の変化が少なく貯蔵安定性に優れ、かつ、所定条件で熱収縮させた際に、耐破断特性にも優れたポリエステル系シュリンクフィルムをラベルとして装着させたラベル付き容器等を提供できるようになった。
したがって、本発明のラベル付き容器等によれば、その容器に各種PETボトル等を選択することができ、保存時の環境条件が緩和されることから、汎用性を著しく広げることができ、その産業上の利用可能性は極めて高いと言える。
10:ポリエステル系シュリンクフィルム
10a:他の樹脂層1
10b:他の樹脂層2
10c:収縮率調整層

Claims (8)

  1. ポリエステル系樹脂に由来したポリエステル系シュリンクフィルムをラベルとして装着させたラベル付き容器であって、
    前記ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(a)~(c)、(f)を有することを特徴とするラベル付き容器。
    (a)JIS K 7127に準拠して測定される引張試験において、23℃の水中に、168時間浸漬前後の主収縮方向における引張強さをC1(MPa)及びC2(MPa)としたときに、下記関係式(1)を満足する。
    Figure 0007039154000012
    (b)前記主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1としたときに、当該A1を60%以上の値とする。
    (c)前記TD方向と直交する方向をMD方向とし、当該MD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をB1としたときに、当該B1を3.8%以下の値とする。
    (f)前記引張強さであるC1の値を50~75MPaの範囲内の値とし、前記引張強さであるC2を50~75MPaの範囲内の値とする。
  2. 前記ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(e)を更に有することを特徴とする請求項1に記載のラベル付き容器。
    (e)前記熱収縮率のA1と、前記熱収縮率のB1と、前記引張強さのC1と、前記引張強さのC2が、下記関係式(2)を満足する。
    Figure 0007039154000013
  3. 前記ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(g)を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のラベル付き容器。
    (g)前記引張強さのC1と前記引張強さのC2が、下記関係式(3)を満足する。
    Figure 0007039154000014
  4. 前記ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(h)を更に有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のラベル付き容器。
    (h)前記TD方向における、98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA2としたときに、当該A2を70%以上の値とし、かつ、前記MD方向における、98℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をB2としたときに、当該B2を10%未満の値とする。
  5. 前記ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(i)を更に有することを特徴とする請求項4に記載のラベル付き容器。
    (i)前記熱収縮率のA1と前記熱収縮率のA2が、下記関係式(4)を満足する。
    Figure 0007039154000015
  6. 前記ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(m)を更に有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のラベル付き容器。
    (m)収縮前のフィルムのJIS K7105に準拠して測定されるヘイズ値を5%以下の値とする。
  7. 前記ポリエステル系シュリンクフィルムが、下記構成(n)を更に有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のラベル付き容器。
    (n)非結晶性ポリエステルを、樹脂全体量の90~100重量%の範囲で含む。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載のラベル付き容器の製造方法であって、
    少なくとも下記工程(1)~(4)を含むことを特徴とするラベル付き容器の製造方法。
    (1)下記構成(a)~(c)、(f)を有するポリエステル系シュリンクフィルムから長尺筒状物を形成する工程
    (a)JIS K 7127に準拠して測定される引張試験において、23℃の水中に、168時間浸漬前後の主収縮方向における引張強さをC1(MPa)及びC2(MPa)としたときに、下記関係式(1)を満足する。
    Figure 0007039154000016
    (b)前記主収縮方向をTD方向とし、当該TD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をA1としたときに、当該A1を60%以上の値とする。
    (c)前記TD方向と直交する方向をMD方向とし、当該MD方向における、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の熱収縮率をB1としたときに、当該B1を3.8%以下の値とする。
    (f)前記引張強さであるC1の値を50~75MPaの範囲内の値とし、前記引張強さであるC2を50~75MPaの範囲内の値とする。
    (2)前記長尺筒状物を、自動ラベル装着装置に供給し、必要な長さに切断する工程
    (3)必要な長さに切断された前記長尺筒状物を、内容物を充填した容器に外嵌する工程
    (4)前記長尺筒状物を外嵌した前記容器を、熱風トンネル又はスチームトンネルの内部を通過させ、前記長尺筒状物を、均一に加熱して熱収縮させる工程

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