JP7038582B2 - 水解性シート及び水解性シート積層体 - Google Patents

水解性シート及び水解性シート積層体 Download PDF

Info

Publication number
JP7038582B2
JP7038582B2 JP2018067660A JP2018067660A JP7038582B2 JP 7038582 B2 JP7038582 B2 JP 7038582B2 JP 2018067660 A JP2018067660 A JP 2018067660A JP 2018067660 A JP2018067660 A JP 2018067660A JP 7038582 B2 JP7038582 B2 JP 7038582B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sheet
water
outer layer
folded
layer sheet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018067660A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019178446A (ja
Inventor
佳央理 金丸
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daio Paper Corp
Original Assignee
Daio Paper Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daio Paper Corp filed Critical Daio Paper Corp
Priority to JP2018067660A priority Critical patent/JP7038582B2/ja
Publication of JP2019178446A publication Critical patent/JP2019178446A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7038582B2 publication Critical patent/JP7038582B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、水解性シート及び水解性シート積層体に関する。
従来、トイレの清掃には、繰り返し使用される織布製の雑巾等が使われてきたが、これに替わって、近年、紙製の使い捨てのウェットシートが使用されるようになってきている。そして、この種のウェットシートは、洗浄剤が含浸された状態で提供され、また、使用後にトイレに流して処理可能とされるものが好まれる。
このようなウェットシートは、複数枚の原紙シートが積層されて形成され、これが折り畳まれることによって、収納容器等に収納可能な大きさとされる(例えば、特許文献1参照)。
2017-13484号公報
このようにウェットシートが折り畳まれている場合、折り目が多く形成されている端部程厚くなるため、厚みが不均一となる。そして、このようなウェットシートは、折り畳まれた状態で複数枚が積層されて積層体とされ、これが収納容器等に収納されて販売されることとなるが、この場合、折り畳まれたウェットシート一枚一枚の厚みが不均一だと、これが積み重ねられた積層体においては、厚みの差が累積され、場所によってその高さが大きく異なってしまう。
また、ローラーで潰す等の方法で、折り畳まれたウェットシートの厚みを均一にすることも考えられるが、この場合、折り目が強くつき過ぎて使用の際の妨げとなる、ウェットシートにエンボスが形成されている場合にこれが潰れてしまうといった弊害が生じる。
本発明の課題は、無理に潰さずとも、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一を低減することができる水解性シート及びその積層体を提供することである。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
複数枚の原紙シートが積層され、薬液が含浸され、折り畳まれた水解性シートであって、
前記原紙シートは、当該水解性シートの表面及び裏面に配置された外層シートと、前記外層シートの間に配置された内層シートと、を含み、
前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも高く、
複数のエンボスが、前記水解性シートが折り畳まれる折り目を避けて形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、無理に潰さずとも、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一を低減することができる水解性シートを提供することができる。
請求項2に記載の発明は、
複数枚の原紙シートが積層され、薬液が含浸され、折り畳まれた水解性シートであって、
前記原紙シートは、当該水解性シートの表面及び裏面に配置された外層シートと、前記外層シートの間に配置された内層シートと、を含み、
前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも高く、
複数のエンボスが形成され、
前記エンボスは、前記水解性シートが折り畳まれる折り目付近において、折り目から離れた部分と比較して高さが低くなるように形成されていることを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の水解性シートにおいて、
前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも、0.5g/m以上、20g/m以下高いことを特徴とする。
本発明によれば、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一をさらに低減することができる。
請求項に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の水解性シートにおいて、
前記外層シートは、ポリビニルアルコール繊維を含むことを特徴とする。
本発明によれば、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一をさらに低減することができる。
請求項に記載の発明は、請求項に記載の水解性シートにおいて、
前記外層シートは、ポリビニルアルコール繊維を、2.0重量%以上、4.0重量%以下含むことを特徴とする。
本発明によれば、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一をさらに低減することができる。
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の水解性シートにおいて、
前記外層シートは、クレープ加工が施されていることを特徴とする。
本発明によれば、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一をさらに低減することができる。
請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか一項に記載の水解性シートにおいて、
前記外層シートと、前記内層シートと、はクレープ加工が施され、前記外層シートのクレープ率は、前記内層シートのクレープ率よりも、0.5%から17%高いことを特徴とする。
本発明によれば、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一をさらに低減することができる。
請求項8に記載の発明は、
所定回数折り畳まれた請求項1から7のいずれか一項に記載の水解性シートが、折り目が形成された方向が共通するように複数枚積層された水解性シート積層体である。
本発明によれば、高さの不均一を低減させた水解性シート積層体を提供することができる。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の水解性シート積層体において、
前記水解性シートは、MD方向及びCD方向にそれぞれ一度のみ折り畳まれていることを特徴とする。
本発明によれば、高さの不均一を低減させた水解性シート積層体を提供することができる。
本発明によれば、無理に潰さずとも、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一を低減することができる水解性シート及びその積層体を提供することができる。
実施形態に係るトイレクリーナーの一例を示す平面図である。 図1のII-II部の拡大図である。 図2のIII-III部における断面図である。 実施形態に係るトイレクリーナーの折り畳み方の一例を示す図であり、(a)は折り畳み前のトイレクリーナーを示し、(b)は一度折り畳んだ状態のトイレクリーナーを示し、(c)は二度折り畳んだ状態のトイレクリーナーを示す。 実施形態に係るトイレクリーナーの製造方法を示すフローチャートである。 実施形態に係るトイレクリーナーの製造設備(溶液付与設備)の一例を示す模式図である。 実施形態に係るトイレクリーナーの製造設備(加工設備)の一例を示す模式図である。 抄造装置の一例を示す概略図である。 実施形態に係るトイレクリーナー積層体の側面図である。なお、各トイレクリーナーに形成されたエンボスによる凹凸の図示を省略している。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である水解性シート及び水解性シート積層体を詳細に説明する。但し、発明の範囲は、図示例に限定されない。
なお、以下においては、トイレクリーナー100を一例にして説明するが、本発明の水解性シートにはトイレクリーナー以外の清拭用途の薬液を含浸させたウェットティシューなども含まれる。また、トイレクリーナー100の製造時の紙の搬送方向をY方向(縦方向、MD方向)、搬送方向に直交する方向をX方向(横方向、CD方向)として説明する。
[トイレクリーナー100の構成]
まず、トイレクリーナー100の構成について説明する。
トイレクリーナー100は、図3に示すように、3枚の原紙シートP、すなわちトイレクリーナー100の表面及び裏面を形成する外層シートP1,P1と、トイレクリーナー100の内層を形成する内層シートP2と、がプライ加工(積層)されたものであって、所定の薬液が含浸されている。
なお、更なる原紙シートPを積層し、4プライ以上のシートとすることも可能である。
また、トイレクリーナー100のシート全面には、エンボス加工により、図1及び図2に示す通り、多数のエンボスEM11が形成されている。
また、トイレクリーナー100は、折り畳まれた状態で保管用のプラスチックケースや包装フィルム等に保管され、使用時には必要に応じて広げて使用される。なお、トイレクリーナー100の折り畳み方については後述する。
{原紙シート}
トイレクリーナー100を形成する原紙シートPは、図3に示すように、トイレクリーナー100の表面及び裏面を形成する外層シートP1、P1と、トイレクリーナー100の内層を形成する内層シートP2と、を含み、いずれもトイレ等を掃除した後、そのまま便器の水溜りに廃棄できるように、水解性の繊維集合体から構成されている。
また、表面強度を向上させるために、トイレクリーナー100には、紙力増強のためのバインダー溶液としてカルボキシメチルセルロース(CMC)等の水溶性バインダーを含む溶液が表面及び裏面から塗布され、厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCMCの含有量が増加した状態となっていることが好ましい。この場合、トイレクリーナー100は、水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて、便器の縁等を強く擦っても破れにくくなる。
外層シートP1、P1と、内層シートP2とは、性質の異なるシートが用いられている。具体的には、以下のとおりである。
(外層シート)
外層シートP1、P1は、図3に示すように、トイレクリーナー100の表面及び裏面を形成するシートである。
外層シートP1、P1を形成する繊維集合体としては、ポリビニルアルコール(PVA)繊維を混合したものを使用することが好ましい。PVA繊維の他には、木材パルプ(広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)及び/又は針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP))を含む。
混合割合としては、PVA繊維が、2.0重量%以上4.0重量%以下となることが好ましく、2.5重量%以上3.0重量%以下となることがさらに好ましい。
また、PVA繊維以外については、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が20重量%以上70重量%以下、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が30重量%以上80重量%以下であることが好ましく、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が20重量%以上40重量%以下、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が60重量%以上80重量%以下であることがさらに好ましい。
外層シートP1、P1それぞれの目付は、25g/mから50g/mであることが好ましく、30g/mから45g/mであることがさらに好ましい。
また、外層シートP1、P1は、クレープ加工が施されていてもよい。その場合、クレープ率は、5%から20%であることが好ましく、10%から15%であることがさらに好ましい。
外層シートP1、P1及び内層シートP2の両者にクレープ加工が施されている場合においては、外層シートP1、P1のクレープ率が、上記範囲内で、内層シートP2のクレープ率よりも高い値となることが好ましい。具体的には、内層シートP2のクレープ率よりも0.5%から17%高いことが好ましく、3%から15%高いことがさらに好ましい。
(内層シート)
内層シートP2は、図3に示すように、外層シートP1、P1の間に配置された、トイレクリーナー100の内層を形成するシートである。
内層シートP2を形成する繊維集合体としては、PVA繊維を含まず、木材パルプ(広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)及び/又は針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP))を含むものを使用する。
混合割合としては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が20重量%以上70重量%以下、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が30重量%以上80重量%以下であることが好ましく、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が20重量%以上40重量%以下、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が60重量%以上80重量%以下であることがさらに好ましい。
内層シートP2の目付は、28g/mから53g/mであることが好ましく、33g/mから48g/mであることがさらに好ましい。なお、上記範囲内で、外層シートP1、P1の目付よりも高い値となる必要があり、具体的には、外層シートP1、P1の目付よりも0.5g/mから20g/m高いことが好ましく、1g/mから18g/m高いことがさらに好ましい。
また、内層シートP2は、クレープ加工が施されていてもよい。その場合、クレープ率は、2%から17%であることが好ましく、7%から12%であることがさらに好ましい。
なお、外層シートP1、P1にクレープ加工が施されている場合、内層シートP2にはクレープ加工が施されていないことが好ましく、また、外層シートP1、P1及び内層シートP2の両者にクレープ加工が施されている場合においては、内層シートP2のクレープ率が、上記範囲内で、外層シートP1、P1のクレープ率よりも低い値となることが好ましい。具体的には、外層シートP1、P1のクレープ率よりも0.5%から17%低いことが好ましく、3%から15%低いことがさらに好ましい。
{薬液}
トイレクリーナー100には、水性洗浄剤の他、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤、有機溶剤等の補助剤を含む所定の薬液が含浸されている。
薬液としては、適宜のものを使用することができ、例えば、水性洗浄剤としては、界面活性剤の他、低級又は高級(脂肪族)アルコールを使用することができる。香料としては、水性香料の他、オレンジオイル等の油性香料の中から、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン等のパラベン類を使用することができる。除菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ポピドンヨード、エタノール、セチル酸化ベンザニウム、トリクロサン、クロルキシレノール、イソプロピルメチルフェノール等を使用することができる。紙力増強剤(架橋剤)としては、ホウ酸、種々の金属イオン等を使用することができる。有機溶剤としては、グリコール(2価)、グリセリン(3価)、ソルビトール(4価)等の多価アルコールを使用することができる。
また、上述した薬液の成分の補助剤については適宜選択可能であり、必要に応じて他の機能を果たす成分を薬液に含ませてもよい。
また、薬液含浸率は、120%から200%であることが好ましく、150%から180%であることがさらに好ましい。この割合であれば、適度な水分を保ちつつ、除放しながら掃除を行い易くなる。
{エンボス}
トイレクリーナー100のシート全面には、外層シートP1,P1と、内層シートP2とがプライ加工された状態で、全面に多数のエンボスEM11が形成されている。
エンボスEM11は、いずれも、図1及び図2に示す通り、Y方向に短尺な楕円形状に形成されている。
また、エンボスEM11は、図1の図面手前方向に凸状となる凸エンボスEM21と、図1の図面手前方向に凹状となる凹エンボスEM22とを含む。
また、トイレクリーナー100の全面に加工されたエンボスは、図2に示すように、凸エンボスEM21と凹エンボスEM22とが、X方向、Y方向共に交互に並ぶように互い違いに配置され、凸エンボスEM21と凹エンボスEM22との間にエンボスが未形成の部分である中間部MD21を有するエンボスパターンを形成している。
また、凸エンボスEM21と、凹エンボスEM22とは、中間部MD21において反転させると同一の形状となるように形成されている。
このように、凸エンボスEM21及び凹エンボスEM22がX方向においてもY方向においても交互に形成されていることで、凸部同士や凹部同士が一列に並んでいるエンボスパターンよりも汚れの拭き取り性を向上させることができる。
なお、凸エンボスEM21及び凹エンボスEM22の形状及び配置は、上記のものに限定されない。例えば、エンボスの形状としては、円形、楕円形、多角形等が用いられ、各形状を組み合わせたものとしてもよい。
さらにエンボスEM11は、図1に示すようにトイレクリーナー100の全面に形成されていてもよいが、例えば、トイレクリーナー100が折り畳まれる折り目の周囲を避けて形成されていてもよい。
エンボスEM11は、シートを嵩高にする効果を有するところ、これが折り目付近を避けて形成されていることで、トイレクリーナー100を折り畳んだ場合に、折り目が多く形成されている側が厚くなることをより抑制し易くなる。
また、全面にエンボスEM11を形成しつつ、折り目付近のみエンボスEM11の高さを低くしてもよい。
{折り畳み方}
トイレクリーナー100は、X方向又はY方向に平行な折り目において複数回折り畳まれる折り加工がなされることによって、保管用のプラスチックケースや包装フィルム等に収納できる大きさとされている。具体的には、図4に示すように、X方向に平行な折り目及びY方向に平行な折り目において、各一度ずつ折り畳まれ、4分の1に折り畳まれていることが好ましい。
通常トイレクリーナーは、MD方向に長い矩形状に形成された上で、CD方向の中心位置において一度折り畳み、これをさらに、MD方向に二度折り畳むことによって、8分の1に折り畳まれている。
これに対し、当初よりトイレクリーナーの大きさをMD方向に2分の1とした上で、折り畳む回数を各方向に一回のみとすることで、折り目が減少し、広げて清掃を行う際に引っ掛かり難くなり、清掃が行い易くなる。
また、トイレクリーナー100が折り畳まれる際の折り目は、凸エンボスEM21及び凹エンボスEM22が形成されていない平坦部分に形成されていることが好ましい。
この場合、シートを折り畳みやすく、かつ、折り畳み加工によって、エンボスを崩してしまうことを防止することができる。
[ミシン目]
トイレクリーナー100には、これを分割するためのミシン目が設けられていてもよい。
例えば、図1に示すCD方向に長い矩形状のトイレクリーナー100につき、CD方向の中央部にMD方向と平行なミシン目を設け、これをCD方向に2分できるようにする。
これによって、1枚のトイレクリーナーを均等に分割することが可能となり、使用者が複数回に分けて使うことが容易となる。
このようなミシン目は、上記の折り畳み時における折り目と重なる位置に設けることも、異なる位置に設けることもできる。
ミシン目が折り目と重なる位置に設けられた場合、ミシン目の強度をさらに低下させることができ、ミシン目が折り目と異なる位置に設けられた場合、ミシン目の強度の低下を抑えることができる。したがって、折り目と重なる位置にミシン目を設けた場合、使用者がミシン目によってシートを分割し易くなる。これに対し、折り目と異なる位置にミシン目を設けた場合、ミシン目によって使用者が意図せずにシートを分割してしまうおそれを低減することができる。
また、エンボスの形状を崩さないように、ミシン目は、凸エンボスEM21及び凹エンボスEM22が形成されていない平坦部分に形成されていることが好ましい。
{積層体}
次に、図9に基づいて、実施形態に係るトイレクリーナー100を複数積層したトイレクリーナー積層体200について説明する。
図9に示すように、トイレクリーナー積層体200は、トイレクリーナー100が、折り畳まれた状態で複数枚積層されたものである。折り目が形成される方向が区々となると、トイレクリーナー100を取り出すたびに折り目の向きが異なることとなり、使用者に混乱を招くことから、各トイレクリーナー100は、折り目が形成された方向が揃うようにして積層されている。
具体的には、例えば、それぞれのトイレクリーナー100が、図4に示すように、X方向に平行な折り目及びY方向に平行な折り目において、各一度ずつ折り畳まれ、これが図9に示すように折り目の方向が一致するようにして積層されている。
なお、なお図9においては、トイレクリーナー100が二度目に折り畳まれた折り目が図面右側に位置し、トイレクリーナー100が一度目に折り畳まれた折り目が図面奥側に位置するように、トイレクリーナー100が5枚積層された場合を表しているが、これに限られず、例えば、これより多数又は少数のトイレクリーナー100が積層されていてもよい。
[トイレクリーナー100の効果]
同一の原紙シートを用いた2プライのシートの場合、薬液を含浸させると、折りたたまれた場合においても、薬液はシート全体に分散することとなる。
これに対し、実施形態に係るトイレクリーナー100によれば、外層シートP1、内層シートP2、外層シートP1の順に積層された3プライのシートであり、かつ外層シートP1、P1と、内層シートP2とに異なるシートが用いられていることによって、薬液が折り目部分に多く保持されることとなる。
具体的には、外層シートにのみPVA繊維が含まれていることによって、折りたたまれた状態で、かつ薬液が含浸されると、外層シートP1、P1はPVA繊維が架橋していることから伸び難いのに対し、PVA繊維を含まない内層シートP2は、繊維同士が架橋していないことから、外層シートP1、P1と比較して伸び易い。
これによって、内層シートP2のみが大きく伸びようとすることで、シートにひずみが生じ、特にシートの折り目部分に空間が生じ易くなることから、折り目部分に多くの薬液が保持されることとなる。
このような効果は、外層シートP1、P1を形成する繊維集合体におけるPVA繊維の割合が、上記の範囲内である場合において高めることができる。
また、内層シートP2の目付が、外層シートP1、P1よりも高いことによって、折りたたまれた状態で、かつ薬液が含浸されると、目付の高い内層シートP2において、外層シートP1、P1と比較して、多くの薬液が保持されることとなる。これによって、トイレクリーナー100の折り目部分に生じる空間に、内層シートP2から薬液が多く供給されることから、折り目部分に多くの薬液が保持されることとなる。
このような効果は、外層シートP1,P1の目付及び内層シートP2の目付が上記範囲内である場合において高めることができる。
また、外層シートP1、P1にクレープ加工が施され、内層シートP2にクレープ加工が施されていない、又は、外層シートP1、P1及び内層シートP2の両者にクレープ加工が施されている場合において、内層シートP2のクレープ率が、外層シートP1、P1よりも低いことによって、折りたたまれた状態で、かつ薬液が含浸されると、外層シートP1、P1において、内層シートP2と比較して、シートに皺が生じやすくなる。これによって、特にシートの折り目部分において空間が生じ易くなることから、折り目部分に多くの薬液が保持されることとなる。
また、外層シートP1、P1と、内層シートP2とに対して、これらが積層された状態でエンボス加工がなされていることで、これらシートの位置関係が固定される。これによって、シートの位置関係が動いてひずみが解消されることがなくなり、シートの折り目部分に生じた空間が維持され易くなることから、折り目部分に多くの薬液が保持され易くなる。
さらに、複数の折り畳まれたトイレクリーナーを、折り目の方向が揃うように積層し、トイレクリーナー積層体とした場合、折り畳まれたシートは必然的に折り目が多く存在する側が厚くなることから、通常、トイレクリーナーに折り目が多く形成されている側が高くなってしまう。しかし、本実施形態に係るトイレクリーナー100によれば、折り目部分の薬液の含浸量が多くなり、折り目が多く形成された側がより重くなることから、トイレクリーナー積層体200とした場合において、トイレクリーナー100に折り目が多く形成されている側において、これが自重によってより強く圧縮され、トイレクリーナー積層体200の高さを均一化することができる。
なお、トイレクリーナー積層体の形成時において、折り目が多く形成されている側が区々となるようにトイレクリーナーを積層することによっても、トイレクリーナー積層体の高さを均一化することは可能であるが、この場合、使用者がトイレクリーナーを取り出すたびに折り目の向きが異なることとなり、使用者に混乱を招くこととなる。
本実施形態に係るトイレクリーナー100によれば、折り目の方向を統一し、このような弊害を生じさせることなく、トイレクリーナー積層体200の高さを均一化することができる。
また、トイレクリーナー100を、MD方向及びCD方向に一回折り畳むのみで包装できる大きさに形成し、折りたたみ回数を各方向に一回のみとすることで、上記のように、折り目が減少し、広げて清掃を行う際に、引っ掛かり難くなり、清掃が行い易くなる。
しかし、この場合、折り畳まれた状態において、折り目が形成されている辺が2辺形成される一方、折り目が一切形成されていない辺が2辺形成されることから、さらに折り畳んで8つ折り以上とした場合と比較して、トイレクリーナー積層体とした場合において、高さの差が生じ易くなる。
しかし、本実施形態においては、このような場合においても、トイレクリーナー積層体200の高さを均一化することができることから、本発明は、このような4つ折りのシートを用いる場合において特に有効であるということができる。
[トイレクリーナー100の製造方法]
次に、トイレクリーナー100の製造方法の一例について説明する。
図5は、トイレクリーナー100の製造方法を示すフローチャートである。図6は、トイレクリーナー100の原紙シートに対してバインダー溶液を付与する溶液付与設備の模式図である。図7は、図6に示す溶液付与設備でバインダー溶液が付与された原紙シートを加工する加工設備の模式図である。
トイレクリーナー100の製造方法では、図5に示すように、先ず、抄紙機(図示省略)で原紙となる紙を抄造する抄紙工程(S1)を行う。
次いで、図5及び図6に示すように、溶液付与設備において、抄造された原紙を巻取った2本の1次原反ロール1,1からそれぞれ繰り出される連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工し、さらにもう一枚の連続乾燥原紙1Aを重ねてプライ加工し、プライ連続シート1Bとするプライ加工工程(S2)と、プライ連続シート1Bに対してバインダー溶液を付与し連続シート1Cとする溶液付与工程(S3)と、連続シート1Cを乾燥させる乾燥工程(S4)と、乾燥させた連続水解性シート1Dをスリットし巻取るスリット・巻き取り工程(S5)とを行う。
次いで、図5及び図7に示すように、加工設備において、上記スリット・巻き取り工程(S5)で巻取った2次原反ロール11から繰り出される連続水解性シート1Dに対してエンボス加工を施すエンボス加工工程(S6)と、エンボス加工が施されたエンボス済シート1Eに対して仕上げ加工を施す仕上げ加工工程(S7)とを行う。なお、各工程の詳細については、後述する。
〔抄紙工程〕
まず、本実施形態にかかる抄紙工程(S1)について説明する。本発明の抄紙工程(S1)では、例えば、公知の湿式抄紙技術により抄紙原料を抄紙して原紙シートPを形成する。すなわち、抄紙原料を湿紙の状態とした後に、ドライヤーなどによりこれを乾燥して、薄葉紙、クレープ紙などの原紙シートPを形成する。
原紙シートP原料繊維としては、外層シートP1につき、段落[0023]に示した割合で配合されたものが用いられ、内層シートP2につき、段落[0027]に示した割合で配合されたものが用いられる。
また、本発明の原紙シートには、凝集剤として、アニオン性アクリルアミド系重合体(以下、「アニオン性PAM」する。)が含有される。アニオン性PAMとは、アクリルアミド系単量体とアニオン性単量体とを共重合して得られる重合体である。
アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド単独や、アクリルアミドと以下のようなアクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体等と、の混合物である。アクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体としては、メタクリルアミド、N、N-ジメチルアクリルアミド、N、N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-ビニルロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミドが例示される。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
アニオン性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの中和塩が例示される。
なお、アニオン性PAMの水溶性を損ねない程度であれば、スチレン、アクリルニトリル、(メタ)アクリル酸エステル等の単量体を配合してもよい。
アニオン性PAMの添加量としては、好適には、10~1000ppm程度である。このような、パルプと同電荷のアニオン系の凝集剤を用いて抄紙することで、原紙シートの凝集を低下させることができ、毛細管現象により水解性を向上させることができる。
なお、原紙シートには、上述したパルプ及び凝集剤の他、湿潤紙力剤、接着剤、剥離剤等の抄紙用薬品を適宜用いてもよい。
また、本発明の実施形態では、後述する溶液付与設備の溶液付与工程でバインダー溶液が付与されるが、抄紙工程の段階でバインダー溶液を付与するようにしてもよい。
抄紙工程でもバインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更にバインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
抄紙工程でバインダー溶液を付与する方法としては、例えば、抄紙原料であるパルプを含む分散液中に水溶性バインダーと該水溶性バインダーのパルプ繊維への定着剤を添加して、これを原料として湿式抄造する方法が知られている(特開平3-193996号公報)。つまり水溶性バインダーを内添する方法である。また、パルプを含む分散液からシートを湿式抄紙し、プレス脱水或いは半乾燥した後に水溶性バインダーを噴霧乾燥或いは塗工乾燥して、所定量の水溶性バインダーを含有する繊維シートを製造することも可能である。つまり水溶性バインダーを外添する方法である。この際には、プレス脱水を行うよりも熱風通過乾燥機などのプレ乾燥方式を用いた方が、低密度でより水解性の良い繊維シートを得ることができる。更に上述の湿式抄紙法ではなく、水を使わずにパルプ繊維を乾式で解繊して、ウェブを形成した後に水溶性バインダーを噴霧し、その後乾燥して繊維シートを製造することも可能である。いわゆるエアレイド製法である。
図8には、バインダーとして水溶性バインダーを用いた場合の繊維シートの製造に好ましく用いられる製造装置の一例の概略図が示されている。図8に示す製造装置(湿式抄造機)は、フォーマー14と、ワイヤーパートと、第1ドライパート17と、スプレーパートと、第2ドライパート24とを備えて構成されている。
フォーマー14は、調製装置(図示せず)から供給された完成紙料を所定の濃度に調節してワイヤーパートへ供給するものである。図示しない調製装置は、パルプ繊維等の原料を離叩解する装置と、離叩解された原料にサイズ剤、顔料、紙力増強剤、漂白剤、凝集剤等の添加剤を添加する添加装置とを備え、水解紙の特性に応じた所定濃度の原料からなる紙料を完成紙料として調製するように構成されている。また、パルプスラリーにバインダーを混合することも可能である。ワイヤーパートは、フォーマーから供給された完成紙料を抄き網に湿紙として形成するものである。第1ドライパート17は、ワイヤーパートにおいて形成された湿紙を乾燥させるものである。スプレーパートは、第1ドライパート17で乾燥された紙にバインダーを噴霧するものである。第2ドライパート24は、スプレーパートでバインダーが噴霧され湿潤状態になっている紙を乾燥させるものである。
フォーマー14から供給された完成紙料がワイヤーパートにおいて抄造され、ワイヤー15上に湿紙が形成される。湿紙は、ワイヤーパートに設置されているサクションボックス16による吸引によって水分が除去され、所定の水分率となされる。次いで湿紙は、第1ドライパート17に導入されて乾燥される。第1ドライパート17はスルーエアードライヤー(以下、TADという)から構成されている。TADは、周面が通気性を有する回転ドラム18と、該回転ドラム18をほぼ気密に覆うフード19とを備えている。TADにおいては、所定温度に加熱された空気がフード19内に供給されるようになされている。加熱された空気は回転ドラム18の外側から内部に向けて流通する。湿紙は、図8中、矢印方向に回転する回転ドラム18の周面に抱かれた状態で搬送される。TAD内を搬送されている間、湿紙にはその厚み方向へ加熱空気が貫通し、それによって湿紙は乾燥され紙となる。
第1ドライパート17で得られた紙には、スプレーパートにおいてバインダーを含む水溶液(バインダー溶液)が噴霧される。スプレーパートは第1及び第2ドライパート17,24間の位置である。両ドライパート17,24は、コンベアを介して連結されている。
コンベアは、それぞれ矢示方向に回転する上コンベアベルト20と下コンベアベルト21とを備えている。コンベア20は、第1ドライパート17のTADによって乾燥されて紙をこれら両ベルト20,21間に挟持した状態で第2ドライパート24へ搬送するように構成されている。上コンベアベルト20の下流側の折り返し端には真空ロール22が配置されている。真空ロール22は、上コンベアベルト20の裏面に紙を吸着させ、その吸着状態下に上コンベアベルト20を搬送させるようになっている。
図8に示すように、スプレーパートはスプレーノズル23を備えている。スプレーノズル23は第2ドライパート24の下方で且つ真空ロール22に対向するように配設されている。スプレーノズル23は、真空ロール22に向けてバインダーを含む噴霧液を噴霧して、紙に該噴霧液を添加(外添)するものである。
スプレーパートにおいてバインダーが供給された後、紙は第2ドライパート24へ搬送される。第2ドライパート24はヤンキードライヤーから構成されている。噴霧液が噴霧されて湿潤状態となっている紙は、フード26内に設置されたヤンキードライヤーの回転ドラム25の周面に抱かれた状態で搬送される。回転ドラム25に抱かれて搬送されている間に紙の乾燥が進行する。
なお、スプレーパートにおいてバインダーを供給する位置は、第1及び第2ドライパート17,24間の位置であればよく、例えば、上コンベアベルト20の上方(図8に示す第1及び第2ドライパート17,24間の矢印位置)からバインダーを噴霧するようにしてもよい。また、さらに第2ドライパート24で乾燥させた後の紙に対して上方(図8に示す第2ドライパート24の右側の矢印位置)からバインダーを噴霧するようにしてもよい。また、第1及び第2ドライパート17,24間、及び第2ドライパート24の後において、バインダーを噴霧する方向は上方からに限らず、下方からでも、上下両方からでもよい。
本実施形態では、抄紙工程において、原紙シートの縦横の繊維配向の比率(縦/横)が0.8~2.0、好ましくは1.0となるように調整が行われることが好ましい。繊維配向の調整は、例えば、抄紙機において、抄紙原料をワイヤーパートに供給する角度を調整することで行うことができる。抄紙原料を供給する角度は、例えば、ヘッドボックスのスライス開度を調整することにより行うことができる。または、抄紙機の搬送方向(走行方向)と直交する方向に振動を与える等により繊維配向を調整することとしてもよい。
〔連続乾燥原紙〕
連続乾燥原紙1Aは、後述するプライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)、スリット・巻き取り工程(S5)を経て、プライ加工された水解紙となり、更に、後述するエンボス加工工程(S6)、仕上げ加工工程(S7)を経て、トイレクリーナー100に加工される。
〔プライ加工工程〕
次いで、本実施形態のプライ加工工程(S2)について説明する。プライ加工工程(S2)では、図6に示すように、1次原反ロール1,1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のロールで構成され、各連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工する。このようにして形成された2プライのシートに対して、さらに一枚の連続乾燥原紙1Aをプライ加工することで、3枚の連続乾燥原紙1Aがプライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
このようにして形成されたプライ連続シート1Bの内、一番上の連続乾燥原紙1A及び一番下の連続乾燥原紙1Aが外層シートP1であり、その間の連続乾燥原紙1Aが内層シートP2である。
〔バインダー溶液〕
次いで、バインダー溶液について説明する。バインダー溶液は、カルボキシメチルセルロース(CMC)を水溶性バインダーとして含むものである。バインダー溶液中におけるカルボキシメチルセルロースの濃度としては、1~30重量%、好ましくは、1重量%以上、4重量%未満とする。
他方、CMCについては、そのエーテル化度が0.6~2.0、特に0.9~1.8、更に好ましくは1.0~1.5であるのが望ましい。水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となる。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることができる。これは、薬液中の特定金属イオンの架橋により、未膨潤化のままシートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる拭き取りシートとしての強度を発現することができる。
バインダー溶液中のカルボキシルメチルセルロース以外の成分としては、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
水解性が良好となる点や架橋反応により湿潤強度を発現しうる点からカルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましい。
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
〔溶液付与工程〕
次いで、本実施形態の溶液付与工程(S3)ついて説明する。溶液付与工程(S3)では、図6に示すように、プライ連続シート1Bの両方の外面に2流体方式または1流体方式の各スプレーノズル3,3により上述のバインダー溶液を噴霧して連続シート1Cを生成する。
プライ加工工程においてプライ加工された直後のプライ連続シート1Bは、連続乾燥原紙1A,1A,1Aが単に重なっているに過ぎないため、溶液付与工程においてプライ連続シート1Bの両面から、バインダー溶液をスプレーノズル3,3で塗布すると、連続乾燥原紙1A,1A,1Aが離れた状態でバインダー溶液を付与する場合と実質的に同様であり、バインダー溶液が厚さ方向に浸透し、搬送中にシート同士が密着し、スリット・巻取り工程で圧着する中で、さらに浸透するのである。
なお、バインダー溶液の噴霧方法として、プライ連続シート1Bの片方の外面に上述のバインダー溶液を噴霧するようにしても良い。また、連続乾燥原紙1A,1A,1Aのうち、プライ連続シート1Bの最上部に位置するものの上面及び最下部に位置するものの下面に対して、2流体方式のスプレーノズルより上述のバインダー溶液を噴霧した後に当該連続乾燥原紙1A,1A,1Aをプライ加工することにより、上述の連続シート1Cと同等のシートを生成するようにしても良い。
2流体方式のスプレーノズル3は、2系統に分けられた圧縮空気と液体を混合し、噴射させる方式のスプレーノズルであり、圧縮した液体を単独で噴射させる1流体方式のスプレーノズルに比べて、液体をきめ細かく均一に噴霧することができる。
本実施形態で2流体方式のスプレーノズルを使用する場合、プライ加工されたプライ連続シート1Bの各々の外面に高い圧力(噴射圧1.5MPa以上)でバインダー溶液(粘度400~1200MPa.s)を塗布するので、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させやすい。
一方、本実施形態で1流体方式のスプレーノズルを使用する場合、プライ加工されたプライ連続シート1Bの各々の外面に噴射圧1.5MPa以下でバインダー溶液(粘度400~1200MPa.s)を塗布することで、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させやすく、シート表面にバインダー溶液を均一に塗布させやすくしている。
このようにして、プライ連続シート1Bの外面にバインダー溶液を噴霧することで、トイレクリーナー100は、厚み方向において中央(両面に塗布した場合)又はバインダー溶液の非塗布面(片面に塗布した場合)からバインダー溶液の塗布面に向かうにつれて水溶性バインダーの含有量が増加した状態となるので、水解性を確保しつつ、表面強度を向上させることができ、強く擦ってもダメージが生じにくいトイレクリーナー100を製造することが可能となる。
〔乾燥工程〕
次いで、本実施形態の乾燥工程(S4)について説明する。乾燥工程(S4)では、図6に示すように、乾燥設備4において、上述の連続シート1Cのバインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。
ここで、連続シート1Cの外面から厚み方向内側に向かうにつれて、バインダー溶液の浸み込む量が減少していくことから、当該厚み方向内側に向かうにつれて、CMCの定着量が減少することとなる。そのため、後述する仕上げ加工工程(S7)で薬液が含浸された際、当該厚み方向内側に向かうにつれて、架橋反応が起こり難く、空隙を多く有することから、シートの表面強度を向上させつつ、しなやかさの低下を抑制することができる。また、シート内部に上記薬液を閉じ込めた状態とすることができる。これにより、得られるトイレクリーナー100の拭き取り性を向上させることができるとともに、トイレクリーナー100を乾き難くすることができる。
乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。なお、シート同士をより密着させるために、プレスロールやターンロールを設置し、乾燥工程(S4)の前に当該プレスロールや当該ターンロールに連続シート1Cを通しても良い。
また、上記乾燥設備として赤外線照射による設備を用いても良い。この場合、上記連続シート1Cの搬送方向に複数の赤外線照射部を並列し、搬送される当該連続シート1Cに対して赤外線を照射して乾燥を行なう。赤外線により水分が発熱し乾燥されるものであるため、熱風によるドライヤーと比較して、均一な乾燥が可能であり、後段のスリット・巻き取り工程においての皺の発生が防止できる。
〔スリット・巻き取り工程〕
次いで、本実施形態のスリット・巻き取り工程(S5)について説明する。スリット・巻き取り工程(S5)では、プライ加工された連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程(S4)で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dをテンションを調整しながら、スリッター5で所定の幅にスリットし、ワインダー設備6において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
スリット・巻き取り工程(S5)で、プライ加工された連続水解性シート1Dが圧着されることにより、連続水解性シート1Dがより一体化され、1枚相当のシートとなる。
〔エンボス加工工程〕
次いで、本実施形態のエンボス加工工程(S6)について説明する。エンボス加工工程(S6)では、図7に示すように、2次原反ロール11から繰り出される、連続水解性シート1Dに対して、エンボスロール12によって、シート全面に所定の形状をなすエンボス加工が施される。このエンボス加工は、シートの強度、嵩高性、拭き取り性等を高めるとともに、デザイン性を高めることを目的としてなされている。
〔仕上げ加工工程〕
次いで、本実施形態の仕上げ加工工程(S7)について説明する。仕上げ加工工程(S7)では、図7に示すように、仕上げ加工設備13において、エンボス済シート1Eの裁断加工、裁断された各シートの折り加工、折り加工がなされた各シートへの上記薬液の含浸を一連の流れで行う。ここで、薬液に含有される架橋剤は、CMCを水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
以上の各工程を経ることにより、トイレクリーナー100が製造される。
なお、仕上げ加工工程(S7)においては、トイレクリーナー100にミシン目を入れてもよい。具体的には、トイレクリーナーの所定位置に、MD方向及び/又はCD方向と平行にカッターやブレード等によってミシン目を入れる。これによって、1枚のトイレクリーナーを均等に分割することが可能となり、使用者が複数回に分けて使うことが容易となる。
さらに、仕上げ加工工程を経たトイレクリーナー100を複数積層し、トイレクリーナー積層体200とした上で、その包装作業が行われる。
上述のトイレクリーナー100の製造方法にあっては、
水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙をプライ加工するプライ加工工程と、
プライ加工されたシートに対してバインダー溶液を付与する溶液付与工程と、
前記バインダー溶液を付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥させた前記シートを所定幅にスリットし巻き取る巻取り工程と、
を含み、
前記溶液付与工程は、プライ加工されたシートの両方の外面に対応して設けられたスプレーノズルから前記バインダー溶液を対応する外面に噴射したこととなる。
なお、上記プライ加工工程では、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙をプライ加工するほか、水溶性バインダーを含む複数の原紙をプライ加工するようにしてもよい。
次に、本発明の実施例及び比較例に係るトイレクリーナーにつき、薬液含浸率を測定した結果、及び本発明の実施例及び比較例に係るトイレクリーナー積層体につき、その高さを測定した結果について説明する。
〔トイレクリーナーの薬液含浸率の測定〕
以下の実施例及び比較例に係るトイレクリーナーを用意した。
(実施例1)
内層シートにつき、外層シートと異なるシートを使用した3プライのシートであり、具体的には、以下のとおりである。
(外層シート)
大きさ:MD方向340mm、CD方向230mm
成分:木材パルプ100重量%(広葉樹晒クラフトパルプ:30重量%、針葉樹晒クラフトパルプ:70重量%)
目付:28g/m
クレープ率:11.5%
(内層シート)
大きさ:MD方向340mm、CD方向230mm
成分:木材パルプ100重量%(広葉樹晒クラフトパルプ:30重量%、針葉樹晒クラフトパルプ:70重量%)
目付:30g/m
クレープ率:11.5%
(エンボス)
なし
(薬液)
成分:エタノールを5.0重量%、除菌剤を0.59重量%、界面活性剤を0.45重量%、ホウ酸を3.0重量%、水を90.96重量%
薬液含浸率:200%
含浸方法:シート折り畳み後に、薬液を均等に含浸させた。
(折り畳み方法)
CD方向に1度折り畳んだ後、MD方向に1度折り畳み、4分の1に折り畳んだ。なお、薬液含浸前に折り畳んだ。
(実施例2)
外層シートにつき、目付を30g/mとし、内層シートにつき、目付を44g/mとし、た。その他の構成は、実施例1と同様である。
(比較例1)
内層シートにつき、目付を28g/mとした。その他の構成は、実施例1と同様である。
(比較例2)
外層シートにつき、目付を44g/mとし、内層シートにつき、目付を28g/mとした。その他の構成は、実施例1と同様である。
(比較例3)
外層シートにつき、目付を30g/mとした。その他の構成は、実施例1と同様である。
(比較例4)
外層シートにつき、目付を30g/mとし、成分を、PVA繊維2.6重量%、木材パルプ97.4重量%(広葉樹晒クラフトパルプ:30重量%、針葉樹晒クラフトパルプ:70重量%)とした。
その他の構成は、実施例1と同様である。
(比較例5)
外層シートにつき、一方に、目付を30g/mとし、成分を、PVA繊維2.6重量%、木材パルプ97.4重量%(広葉樹晒クラフトパルプ:30重量%、針葉樹晒クラフトパルプ:70重量%)としたものを用い、他方に、目付を30g/mとし、成分を、木材パルプ100%(広葉樹晒クラフトパルプ:30重量%、針葉樹晒クラフトパルプ:70重量%)としたものを用いた。
その他の構成は、実施例1と同様である。
(試験方法)
各実施例及び比較例に係るトイレクリーナーにつき、薬液含浸前と薬液含浸後の両方の状態のものを用意し、それぞれにつき、折り畳まれたトイレクリーナーを開いた後、CD方向と平行な折り目部分(図4(a)におけるA部分)と、折り目の間の部分(図4(a)におけるB部分)につき、Y方向20mm、X方向230mmとなるように切り取り、これを試験片とし、それぞれにつき、重量を測定し、薬液含浸率を算出した。
具体的には、各実施例及び比較例のそれぞれのA、B両部分につき、薬液含浸後の重量から薬液含浸前の重量を引いて、含浸された薬液の重量を算出の上、これを、薬液含浸前の当該部分の試験片の重量で除して、薬液含浸前の試験片の重量に対する、薬液含浸後に当該試験片に含浸された薬液の重量の割合を算出した。なお、各実施例及び比較例につき、2つずつ用意し、それぞれ2度の試験を行った。
(試験結果)
試験の結果を表Iに示す。
Figure 0007038582000001
(評価)
実施例1及び2と、比較例1から3との比較により、内層シートの目付を、外層シートと比較して高くすることで、折り目部分の薬液含浸率を高めることができることが分かる。
また、比較例4と、比較例3及び5との比較により、外層シートにつき両面をPVA繊維を含む繊維集合体によって形成し、内層シートにつきPVA繊維を含まない繊維集合体によって形成することで、折り目部分の薬液含浸率を高めることができることが分かる。
〔トイレクリーナー積層体の高さの測定〕
以下の実施例及び比較例に係るトイレクリーナー積層体を用意した。
(実施例3)
4分の1に折り畳まれた実施例1に係るトイレクリーナーを、折り目の方向が揃うように20枚積層したトイレクリーナー積層体である。
(比較例6)
4分の1に折り畳まれた比較例2に係るトイレクリーナーを、折り目の方向が揃うように20枚積層したトイレクリーナー積層体である。
(比較例7)
4分の1に折り畳まれた比較例3に係るトイレクリーナーを、折り目の方向が揃うように20枚積層したトイレクリーナー積層体である。
(比較例8)
4分の1に折り畳まれた比較例4に係るトイレクリーナーを、折り目の方向が揃うように20枚積層したトイレクリーナー積層体である。
(試験方法)
実施例及び比較例に係るトイレクリーナー積層体につき、上面が水平面となった台の上に載置された状態で、2度目に折り畳んだ折り目が形成されている側(図9におけるC部分)及びこれと対向する側(折り目が形成されていない側。図9におけるD部分)につき、載置された台の上面から、トイレクリーナー積層体の最上部までの高さを測定した。なお、各実施例及び比較例につき、3つずつ用意し、それぞれ3度の試験を行った。
(試験結果)
試験の結果を表IIに示す。
Figure 0007038582000002
(評価)
実施例3と、比較例6及び7との比較により、内層シートの目付を、外層シートと比較して高くしたシートを用いてトイレクリーナー積層体を形成することによって、折り目が形成されている端部と、折り目が形成されていない端部との高さの差を抑えることができることが分かる。
また、比較例7と、比較例8との比較により、外層シートにつき両面をPVA繊維を含む繊維集合体によって形成し、内層シートにつきPVA繊維を含まない繊維集合体によって形成したシートを用いてトイレクリーナー積層体を形成することによって、折り目が形成されている端部と、折り目が形成されていない端部との高さの差を抑えることができることが分かる。
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
本発明の実施形態等の説明に際しては、スプレー方式によりバインダー溶液を塗布するようにしたが、1次原反ロール1から連続的に繰り出される連続乾燥原紙1Aに対して、ドクターチャンバー方式(一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックスロールと、各アニロックスロールに対して薬液を付与するドクターチャンバーを備える転写設備)、もしくは/および、3ロール方式(一つのバックアップロールに対して対になる二つの刷版ロールと、各刷版ロールと対になるアニロックスロールと、各アニロックスロールに対して薬液を付与するディップロールと、ディップロールに薬液を付与するパンを備える転写設備)によってバインダー溶液を塗布するようにしてもよい。つまり、複数の原紙(連続乾燥原紙1A)がプライ加工されてなる水解性シートの製造方法において、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙のうち、前記水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくとも何れか一方の面に対してバインダー溶液を付与(転写)する溶液付与工程と、前記複数の原紙をプライ加工するプライ加工工程と、プライ加工されたシートを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥させた前記シートを所定幅にスリットし巻き取る巻取り工程と、を含み、前記溶液付与工程は、前記水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくとも何れか一方の面に対応して設けられた印刷機から前記バインダー溶液を対応する原紙に転写するようにする。
なお、上記溶液付与工程では、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙のうち、水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくとも何れか一方の面に対してバインダー溶液を付与するほか、水溶性バインダーを含む複数の原紙のうち、水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくとも何れか一方の面に対してバインダー溶液を付与するようにしてもよい。
単なるロール転写では、所望量の薬液を付与するためには、極めて高濃度の薬液が必要となり、かかる薬液は粘度が高くなるためにロール転写で均一転写することができない。また、粘度を低くするために濃度を低くすれば、上述のとおり所望の付与量とすることができない。このように乾燥原紙に対して薬液を付与することが極めて困難なことであることから、ドクターチャンバー方式、もしくは/および、3ロール方式を採用する。
一つのバックアップロールに対して対となる刷版ロールを設けるドクターチャンバー方式、もしくは/および、3ロール方式を採用することにより、各刷版ロールにおける付与量が少なくとも、合計量において十分な量の薬液を乾燥原紙に対して付与できる。また、バックアップロールが一つであることにより、極めて均一に付与できる。これは、バックアップロールが一つであることで、最初の刷版ロールから次の刷版ロールまでの間の張力が極めて安定して一定であることから、二つの刷版ロールで二段階付与しても、連続原紙に対して極めて均一に薬液を付与することができるのである。また、二つの刷版ロールの間隔が短くなることから、最初の刷版ロールで薬液が付与された後、直ちに次の刷版ロールでの付与がなされことからも、付与ムラなく均一転写ができるのである。このような効果は、単に、バックアップロールと刷版ロールを一対二段にしただけでは得ることはできない。
また、より好ましくはドクターチャンバー方式で薬液を付与する方が、3ロール方式より幅方向でより均一に安定して薬液を転写できるため好ましい。
さらに、薬液が付与された連続紙を乾燥させる乾燥工程を有する。この乾燥工程は、連続紙に直接的に接触しない間接乾燥が望ましく、特に赤外線照射によるものが望ましい。間接乾燥の場合には皺の発生が抑制される。特に、赤外線照射によるものとすると、紙面各所の乾燥が均一に生ずるので、乾燥時における皺や歪みなどの発生が効果的に防止できる。
以下にドクターチャンバー方式を例に詳しく説明する。
このドクターチャンバー方式による転写設備は、一つのバックアップロールに対して一つの刷版ロールが設けられている。
バインダー溶液を塗布する際の塗布加工速度は30~100m/分で操業され、より好ましくは50~80m/分で操業される。30m/分未満では乾燥されるまえにクレープが伸びてしまい、後工程で加工しづらいという問題がある。逆に100m/分超過では十分な転写量が得られなかったり、幅方向での塗布量のバラツキにより、湿潤強度や水解性にバラツキが生じる。
上記バックアップロールの直径は250~420mmが適当である。直径が250mm未満であると刷版ロールとバックアップロールの接地面積が少なくなり安定的な塗布ができなくなる。直径が420mm超であっても製造上の問題はないが、設備費用が過多にかかるため好ましくない。
上記刷版ロールには、これにバインダー溶液を受け渡すアニロックスロールがそれぞれ設けられており、このアニロックスロールに対しては、これにバインダー溶液を受け渡して付与するドクターチャンバーが設けられている。また、ドクターチャンバーに対しては、これにバインダー溶液を受け渡して付与するスネークポンプが、アニロックスロールの溶液パンに供給するための送りと戻りの両方に設置されており、ドクターチャンバーに対して粘度の高いバインダー溶液の移送が可能となっている。
1次原反ロール1から繰り出された連続乾燥原紙1Aは、適宜のガイドロールを介して、バックアップロールに巻き掛けられて、適宜の張力と表面の安定性が付与される。
そして、このバックアップロールに巻き掛けられた連続乾燥原紙1Aに対して、刷版ロールにてバインダー溶液がロール転写される。
ここで、刷版ロールは、凹溝のないベタ版仕様のシームレスロールとし、連続乾燥原紙1Aの全体にバインダー溶液をベタ印刷の如く付与する。この刷版ロールとして用いられるシームレスロールは、タイプロールのスリーブにゴム板を巻きつけ釜に入れて過熱溶接し、研磨して成形したものである。材料として用いるゴム板は所定の目的に応じて材質や硬度、色等を選択することができる。
他方、刷版ロールにバインダー溶液を受け渡すアニロックスロールの線数及びセル容量は、バインダー溶液の濃度にもよるが、線数60~120線/インチ、セル容量40~90ml/m2とするのが望ましい。線数が60線/インチ未満であると刷版ロールに過度
のバインダー溶液が受け渡され、結果的に連続乾燥原紙1Aに対して刷版ロールからムラを持ってバインダー溶液が付与されるおそれが高まる。反対に、線数が120線/インチを超えると十分な量かつ刷版ロールの周面全体にバインダー溶液を受け渡すことが困難となる。また、セル容量が40ml/m2未満であると十分な量のバインダー溶液を刷版ロ
ールに受け渡すことが困難となり、セル容量が90ml/m2を超えても歩留まりの悪化
を招くだけである。
なお、上述のようにバインダー溶液が付与(転写)される連続乾燥原紙1Aは、プライ加工する際に最上層又は最下層となる原紙のみを対象とする。つまり、例えば、3プライ加工する場合、中層となる連続乾燥原紙1Aに対してはバインダー溶液を付与(転写)しない。
また、上記のドクターチャンバー方式では、連続乾燥原紙1Aに対してバインダー溶液を転写、すなわち、プライ加工工程の前、連続乾燥原紙1Aに対してバインダー溶液を転写するようにしているが、プライ加工工程の後、プライ加工されたプライ連続シート1Bに対してバインダー溶液を転写するようにしてもよい。
つまり、複数の原紙(連続乾燥原紙1A)がプライ加工されてなる水解性シートの製造方法において、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙をプライ加工するプライ加工工程と、プライ加工されたシートに対してバインダー溶液を付与(転写)する溶液付与工程と、前記バインダー溶液を付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥させた前記シートを所定幅にスリットし巻き取る巻取り工程と、を含み、前記溶液付与工程は、プライ加工されたシートの少なくとも何れか一方の外面に対応して設けられた印刷機から前記バインダー溶液を対応する外面に転写するようにする。
なお、上記プライ加工工程では、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙をプライ加工するほか、水溶性バインダーを含む複数の原紙をプライ加工するようにしてもよい。
このように、ドクターチャンバー方式でバインダー溶液を転写する場合、粘度の高いバインダー溶液を塗布することができるので、シート内部までバインダー溶液が浸透することを抑制することができる。よって、シート表面にのみCMCを定着させることが可能となる。なお、ドクターチャンバー方式でバインダー溶液を転写する場合のほか、例えば、ホットメルト樹脂塗工用のコーターによりバインダー溶液をシート表面にコーティングするようにしてもよい。かかる場合もシート表面にのみCMCを定着させることが可能となる。
また、本発明の実施形態等の説明に際しては、図6に示す溶液付与設備の溶液付与工程でバインダー溶液が付与されるようにしたが、抄紙工程の段階でバインダー溶液を付与するようにしてもよい。
つまり、複数の原紙(連続乾燥原紙1A)がプライ加工されてなる水解性シートの製造方法において、前記複数の原紙をそれぞれ抄造する抄紙工程を含み、前記抄紙工程は、抄造中の湿紙に対してバインダー溶液を付与するようにする。
具体的には、抄紙工程では、例えば、抄紙網で形成された湿紙をフェルト上に載せて搬送するとともに、そのフェルト上の湿紙をタッチロールを介してヤンキードライヤーに移行させ、そのヤンキードライヤーに付着されて搬送される過程で湿紙を乾燥させて原紙を得るが、上述のヤンキードライヤー上に移行された直後の湿紙に対してバインダー溶液をスプレーノズルから噴霧するようにする。
このように、抄紙工程でもバインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更にバインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
その他、トイレクリーナー100の細部構成に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
[用語の説明]
明細書中の下記の用語は、特に記載がない限り、以下の意味を有するものとする。
(薬液含浸率)
薬液含浸前のシートの質量と、含浸させる薬液の質量とを測定し、薬液含浸前のシートの質量に対する含浸させる薬液の質量の割合を算出したものをいう。
(目付)
JIS P 8124:2011に従って測定した坪量をいう。
(シート、エンボス等の長さ)
水解性シートを、テンションが掛かっていない状態で平坦な面に置き、当該状態で測定した長さをいう。
(クレープ率)
{(製紙時のドライヤーの周速)-(巻き取り手段におけるリール装置のリール周速)}/(製紙時のドライヤーの周速)×100によって算出される値をいう。
100 トイレクリーナー
200 トイレクリーナー積層体
EM11 エンボス
P 原紙シート
P1 外層シート
P2 内層シート

Claims (9)

  1. 複数枚の原紙シートが積層され、薬液が含浸され、折り畳まれた水解性シートであって、
    前記原紙シートは、当該水解性シートの表面及び裏面に配置された外層シートと、前記外層シートの間に配置された内層シートと、を含み、
    前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも高く、
    複数のエンボスが、前記水解性シートが折り畳まれる折り目を避けて形成されていることを特徴とする水解性シート。
  2. 複数枚の原紙シートが積層され、薬液が含浸され、折り畳まれた水解性シートであって、
    前記原紙シートは、当該水解性シートの表面及び裏面に配置された外層シートと、前記外層シートの間に配置された内層シートと、を含み、
    前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも高く、
    複数のエンボスが形成され、
    前記エンボスは、前記水解性シートが折り畳まれる折り目付近において、折り目から離れた部分と比較して高さが低くなるように形成されていることを特徴とする水解性シート。
  3. 前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも、0.5g/m以上、20g/m以下高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の水解性シート。
  4. 前記外層シートは、ポリビニルアルコール繊維を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水解性シート。
  5. 前記外層シートは、ポリビニルアルコール繊維を、2.0重量%以上、4.0重量%以下含むことを特徴とする請求項に記載の水解性シート。
  6. 前記外層シートは、クレープ加工が施されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の水解性シート。
  7. 前記外層シートと、前記内層シートと、はクレープ加工が施され、前記外層シートのクレープ率は、前記内層シートのクレープ率よりも、0.5%から17%高いことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の水解性シート。
  8. 所定回数折り畳まれた請求項1から7のいずれか一項に記載の水解性シートが、折り目が形成された方向が共通するように複数枚積層された水解性シート積層体。
  9. 前記水解性シートは、MD方向及びCD方向にそれぞれ一度のみ折り畳まれていることを特徴とする請求項8に記載の水解性シート積層体。
JP2018067660A 2018-03-30 2018-03-30 水解性シート及び水解性シート積層体 Active JP7038582B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018067660A JP7038582B2 (ja) 2018-03-30 2018-03-30 水解性シート及び水解性シート積層体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018067660A JP7038582B2 (ja) 2018-03-30 2018-03-30 水解性シート及び水解性シート積層体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019178446A JP2019178446A (ja) 2019-10-17
JP7038582B2 true JP7038582B2 (ja) 2022-03-18

Family

ID=68278000

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018067660A Active JP7038582B2 (ja) 2018-03-30 2018-03-30 水解性シート及び水解性シート積層体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7038582B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7451194B2 (ja) 2020-01-31 2024-03-18 大王製紙株式会社 清掃シート
JP6998627B1 (ja) 2021-01-28 2022-02-10 システムポリマー株式会社 水解紙の製造方法
JP7005055B1 (ja) 2021-01-28 2022-02-10 システムポリマー株式会社 水解紙の製造方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002238822A (ja) 2001-02-20 2002-08-27 Daio Paper Corp 水解性物品
JP2006083509A (ja) 2004-08-20 2006-03-30 Kao Corp 水解紙の製造方法
JP2008167784A (ja) 2007-01-09 2008-07-24 Kao Corp 水解性物品の製造方法
JP2008190073A (ja) 2007-02-02 2008-08-21 Daio Paper Corp 薄葉紙
JP2011074543A (ja) 2009-09-30 2011-04-14 Daio Paper Corp 水解性衛生薄葉紙及びトイレットペーパーロール

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2869096B2 (ja) * 1989-09-21 1999-03-10 花王株式会社 水解性清掃物品
JP2931130B2 (ja) * 1991-06-12 1999-08-09 ユニ・チャーム株式会社 多層構造の水解紙及びその製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002238822A (ja) 2001-02-20 2002-08-27 Daio Paper Corp 水解性物品
JP2006083509A (ja) 2004-08-20 2006-03-30 Kao Corp 水解紙の製造方法
JP2008167784A (ja) 2007-01-09 2008-07-24 Kao Corp 水解性物品の製造方法
JP2008190073A (ja) 2007-02-02 2008-08-21 Daio Paper Corp 薄葉紙
JP2011074543A (ja) 2009-09-30 2011-04-14 Daio Paper Corp 水解性衛生薄葉紙及びトイレットペーパーロール

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019178446A (ja) 2019-10-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6211160B1 (ja) 水解性シート
JP6470236B2 (ja) 水解性シート及び当該水解性シートの製造方法
JP7038582B2 (ja) 水解性シート及び水解性シート積層体
JP2018076637A (ja) 水解性シート及び水解性シートの製造方法
WO2016159145A1 (ja) 家庭用薄葉紙及び水解性シート
JP6893108B2 (ja) 清掃用シート及び当該清掃用シートの製造方法
WO2018143095A1 (ja) 水解性シート及び当該水解性シートの製造方法
JP7089382B2 (ja) 家庭用薄葉紙、家庭用薄葉紙積層体、家庭用薄葉紙の製造方法及び家庭用薄葉紙積層体の製造方法
JP6059838B1 (ja) 家庭用薄葉紙の製造方法
JP6275671B2 (ja) 水解性シート及び水解性シートの製造方法
JP6962701B2 (ja) 清掃用シート及び当該清掃用シートの製造方法
WO2017002416A1 (ja) 家庭用薄葉紙及び家庭用薄葉紙積層体
JP6325492B2 (ja) 水解性シート
JP2018083989A (ja) 水解性シート及び当該水解性シートの製造方法
JP6474923B2 (ja) 水解性シートの製造方法
JP6929073B2 (ja) 水解性シート及び当該水解性シートの製造方法
JP6592302B2 (ja) 水解性シート及び水解性シートの製造方法
JP6491570B2 (ja) 水解性シート及び水解性シートの製造方法
JP6230570B2 (ja) 水解性シートの製造方法
JP6745669B2 (ja) 家庭用薄葉紙の製造方法
JP6603067B2 (ja) 家庭用薄葉紙の製造方法
JP7121516B2 (ja) 水解性シート
JP6545860B2 (ja) 水解性シート及び水解性シートの製造方法
JP6506867B2 (ja) 水解性シートの製造方法
JP6193310B2 (ja) 水解性シート

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210125

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210914

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211019

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20211125

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220222

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220308

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7038582

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150