JP7038582B2 - 水解性シート及び水解性シート積層体 - Google Patents
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また、ローラーで潰す等の方法で、折り畳まれたウェットシートの厚みを均一にすることも考えられるが、この場合、折り目が強くつき過ぎて使用の際の妨げとなる、ウェットシートにエンボスが形成されている場合にこれが潰れてしまうといった弊害が生じる。
複数枚の原紙シートが積層され、薬液が含浸され、折り畳まれた水解性シートであって、
前記原紙シートは、当該水解性シートの表面及び裏面に配置された外層シートと、前記外層シートの間に配置された内層シートと、を含み、
前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも高く、
複数のエンボスが、前記水解性シートが折り畳まれる折り目を避けて形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、無理に潰さずとも、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一を低減することができる水解性シートを提供することができる。
請求項2に記載の発明は、
複数枚の原紙シートが積層され、薬液が含浸され、折り畳まれた水解性シートであって、
前記原紙シートは、当該水解性シートの表面及び裏面に配置された外層シートと、前記外層シートの間に配置された内層シートと、を含み、
前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも高く、
複数のエンボスが形成され、
前記エンボスは、前記水解性シートが折り畳まれる折り目付近において、折り目から離れた部分と比較して高さが低くなるように形成されていることを特徴とする。
前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも、0.5g/m2以上、20g/m2以下高いことを特徴とする。
本発明によれば、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一をさらに低減することができる。
前記外層シートは、ポリビニルアルコール繊維を含むことを特徴とする。
本発明によれば、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一をさらに低減することができる。
前記外層シートは、ポリビニルアルコール繊維を、2.0重量%以上、4.0重量%以下含むことを特徴とする。
本発明によれば、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一をさらに低減することができる。
前記外層シートは、クレープ加工が施されていることを特徴とする。
本発明によれば、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一をさらに低減することができる。
前記外層シートと、前記内層シートと、はクレープ加工が施され、前記外層シートのクレープ率は、前記内層シートのクレープ率よりも、0.5%から17%高いことを特徴とする。
本発明によれば、折り畳まれた状態で積層された際に生じる高さの不均一をさらに低減することができる。
所定回数折り畳まれた請求項1から7のいずれか一項に記載の水解性シートが、折り目が形成された方向が共通するように複数枚積層された水解性シート積層体である。
本発明によれば、高さの不均一を低減させた水解性シート積層体を提供することができる。
前記水解性シートは、MD方向及びCD方向にそれぞれ一度のみ折り畳まれていることを特徴とする。
本発明によれば、高さの不均一を低減させた水解性シート積層体を提供することができる。
まず、トイレクリーナー100の構成について説明する。
トイレクリーナー100は、図3に示すように、3枚の原紙シートP、すなわちトイレクリーナー100の表面及び裏面を形成する外層シートP1,P1と、トイレクリーナー100の内層を形成する内層シートP2と、がプライ加工(積層)されたものであって、所定の薬液が含浸されている。
なお、更なる原紙シートPを積層し、4プライ以上のシートとすることも可能である。
また、トイレクリーナー100のシート全面には、エンボス加工により、図1及び図2に示す通り、多数のエンボスEM11が形成されている。
トイレクリーナー100を形成する原紙シートPは、図3に示すように、トイレクリーナー100の表面及び裏面を形成する外層シートP1、P1と、トイレクリーナー100の内層を形成する内層シートP2と、を含み、いずれもトイレ等を掃除した後、そのまま便器の水溜りに廃棄できるように、水解性の繊維集合体から構成されている。
また、表面強度を向上させるために、トイレクリーナー100には、紙力増強のためのバインダー溶液としてカルボキシメチルセルロース(CMC)等の水溶性バインダーを含む溶液が表面及び裏面から塗布され、厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCMCの含有量が増加した状態となっていることが好ましい。この場合、トイレクリーナー100は、水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて、便器の縁等を強く擦っても破れにくくなる。
外層シートP1、P1は、図3に示すように、トイレクリーナー100の表面及び裏面を形成するシートである。
混合割合としては、PVA繊維が、2.0重量%以上4.0重量%以下となることが好ましく、2.5重量%以上3.0重量%以下となることがさらに好ましい。
また、PVA繊維以外については、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が20重量%以上70重量%以下、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が30重量%以上80重量%以下であることが好ましく、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が20重量%以上40重量%以下、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が60重量%以上80重量%以下であることがさらに好ましい。
内層シートP2は、図3に示すように、外層シートP1、P1の間に配置された、トイレクリーナー100の内層を形成するシートである。
混合割合としては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が20重量%以上70重量%以下、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が30重量%以上80重量%以下であることが好ましく、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)が20重量%以上40重量%以下、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)が60重量%以上80重量%以下であることがさらに好ましい。
トイレクリーナー100には、水性洗浄剤の他、香料、防腐剤、除菌剤、紙力増強剤、有機溶剤等の補助剤を含む所定の薬液が含浸されている。
トイレクリーナー100のシート全面には、外層シートP1,P1と、内層シートP2とがプライ加工された状態で、全面に多数のエンボスEM11が形成されている。
エンボスEM11は、いずれも、図1及び図2に示す通り、Y方向に短尺な楕円形状に形成されている。
また、エンボスEM11は、図1の図面手前方向に凸状となる凸エンボスEM21と、図1の図面手前方向に凹状となる凹エンボスEM22とを含む。
また、凸エンボスEM21と、凹エンボスEM22とは、中間部MD21において反転させると同一の形状となるように形成されている。
エンボスEM11は、シートを嵩高にする効果を有するところ、これが折り目付近を避けて形成されていることで、トイレクリーナー100を折り畳んだ場合に、折り目が多く形成されている側が厚くなることをより抑制し易くなる。
また、全面にエンボスEM11を形成しつつ、折り目付近のみエンボスEM11の高さを低くしてもよい。
トイレクリーナー100は、X方向又はY方向に平行な折り目において複数回折り畳まれる折り加工がなされることによって、保管用のプラスチックケースや包装フィルム等に収納できる大きさとされている。具体的には、図4に示すように、X方向に平行な折り目及びY方向に平行な折り目において、各一度ずつ折り畳まれ、4分の1に折り畳まれていることが好ましい。
これに対し、当初よりトイレクリーナーの大きさをMD方向に2分の1とした上で、折り畳む回数を各方向に一回のみとすることで、折り目が減少し、広げて清掃を行う際に引っ掛かり難くなり、清掃が行い易くなる。
この場合、シートを折り畳みやすく、かつ、折り畳み加工によって、エンボスを崩してしまうことを防止することができる。
トイレクリーナー100には、これを分割するためのミシン目が設けられていてもよい。
例えば、図1に示すCD方向に長い矩形状のトイレクリーナー100につき、CD方向の中央部にMD方向と平行なミシン目を設け、これをCD方向に2分できるようにする。
これによって、1枚のトイレクリーナーを均等に分割することが可能となり、使用者が複数回に分けて使うことが容易となる。
ミシン目が折り目と重なる位置に設けられた場合、ミシン目の強度をさらに低下させることができ、ミシン目が折り目と異なる位置に設けられた場合、ミシン目の強度の低下を抑えることができる。したがって、折り目と重なる位置にミシン目を設けた場合、使用者がミシン目によってシートを分割し易くなる。これに対し、折り目と異なる位置にミシン目を設けた場合、ミシン目によって使用者が意図せずにシートを分割してしまうおそれを低減することができる。
また、エンボスの形状を崩さないように、ミシン目は、凸エンボスEM21及び凹エンボスEM22が形成されていない平坦部分に形成されていることが好ましい。
次に、図9に基づいて、実施形態に係るトイレクリーナー100を複数積層したトイレクリーナー積層体200について説明する。
なお、なお図9においては、トイレクリーナー100が二度目に折り畳まれた折り目が図面右側に位置し、トイレクリーナー100が一度目に折り畳まれた折り目が図面奥側に位置するように、トイレクリーナー100が5枚積層された場合を表しているが、これに限られず、例えば、これより多数又は少数のトイレクリーナー100が積層されていてもよい。
同一の原紙シートを用いた2プライのシートの場合、薬液を含浸させると、折りたたまれた場合においても、薬液はシート全体に分散することとなる。
これに対し、実施形態に係るトイレクリーナー100によれば、外層シートP1、内層シートP2、外層シートP1の順に積層された3プライのシートであり、かつ外層シートP1、P1と、内層シートP2とに異なるシートが用いられていることによって、薬液が折り目部分に多く保持されることとなる。
これによって、内層シートP2のみが大きく伸びようとすることで、シートにひずみが生じ、特にシートの折り目部分に空間が生じ易くなることから、折り目部分に多くの薬液が保持されることとなる。
このような効果は、外層シートP1、P1を形成する繊維集合体におけるPVA繊維の割合が、上記の範囲内である場合において高めることができる。
このような効果は、外層シートP1,P1の目付及び内層シートP2の目付が上記範囲内である場合において高めることができる。
なお、トイレクリーナー積層体の形成時において、折り目が多く形成されている側が区々となるようにトイレクリーナーを積層することによっても、トイレクリーナー積層体の高さを均一化することは可能であるが、この場合、使用者がトイレクリーナーを取り出すたびに折り目の向きが異なることとなり、使用者に混乱を招くこととなる。
本実施形態に係るトイレクリーナー100によれば、折り目の方向を統一し、このような弊害を生じさせることなく、トイレクリーナー積層体200の高さを均一化することができる。
しかし、この場合、折り畳まれた状態において、折り目が形成されている辺が2辺形成される一方、折り目が一切形成されていない辺が2辺形成されることから、さらに折り畳んで8つ折り以上とした場合と比較して、トイレクリーナー積層体とした場合において、高さの差が生じ易くなる。
しかし、本実施形態においては、このような場合においても、トイレクリーナー積層体200の高さを均一化することができることから、本発明は、このような4つ折りのシートを用いる場合において特に有効であるということができる。
次に、トイレクリーナー100の製造方法の一例について説明する。
図5は、トイレクリーナー100の製造方法を示すフローチャートである。図6は、トイレクリーナー100の原紙シートに対してバインダー溶液を付与する溶液付与設備の模式図である。図7は、図6に示す溶液付与設備でバインダー溶液が付与された原紙シートを加工する加工設備の模式図である。
まず、本実施形態にかかる抄紙工程(S1)について説明する。本発明の抄紙工程(S1)では、例えば、公知の湿式抄紙技術により抄紙原料を抄紙して原紙シートPを形成する。すなわち、抄紙原料を湿紙の状態とした後に、ドライヤーなどによりこれを乾燥して、薄葉紙、クレープ紙などの原紙シートPを形成する。
原紙シートP原料繊維としては、外層シートP1につき、段落[0023]に示した割合で配合されたものが用いられ、内層シートP2につき、段落[0027]に示した割合で配合されたものが用いられる。
また、本発明の原紙シートには、凝集剤として、アニオン性アクリルアミド系重合体(以下、「アニオン性PAM」する。)が含有される。アニオン性PAMとは、アクリルアミド系単量体とアニオン性単量体とを共重合して得られる重合体である。
アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド単独や、アクリルアミドと以下のようなアクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体等と、の混合物である。アクリルアミドと共重合可能なノニオン性単量体としては、メタクリルアミド、N、N-ジメチルアクリルアミド、N、N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピロリジン、N-アクリロイルピペリジン、N-ビニルロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミドが例示される。これらは単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
アニオン性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、及びこれらの中和塩が例示される。
なお、アニオン性PAMの水溶性を損ねない程度であれば、スチレン、アクリルニトリル、(メタ)アクリル酸エステル等の単量体を配合してもよい。
アニオン性PAMの添加量としては、好適には、10~1000ppm程度である。このような、パルプと同電荷のアニオン系の凝集剤を用いて抄紙することで、原紙シートの凝集を低下させることができ、毛細管現象により水解性を向上させることができる。
なお、原紙シートには、上述したパルプ及び凝集剤の他、湿潤紙力剤、接着剤、剥離剤等の抄紙用薬品を適宜用いてもよい。
また、本発明の実施形態では、後述する溶液付与設備の溶液付与工程でバインダー溶液が付与されるが、抄紙工程の段階でバインダー溶液を付与するようにしてもよい。
抄紙工程でもバインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更にバインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
連続乾燥原紙1Aは、後述するプライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)、スリット・巻き取り工程(S5)を経て、プライ加工された水解紙となり、更に、後述するエンボス加工工程(S6)、仕上げ加工工程(S7)を経て、トイレクリーナー100に加工される。
次いで、本実施形態のプライ加工工程(S2)について説明する。プライ加工工程(S2)では、図6に示すように、1次原反ロール1,1から連続的に繰り出される各連続乾燥原紙1A,1Aを、その連続方向に沿ってプライ加工しプライ連続シート1Bとする重ね合わせ部2に供給される。重ね合わせ部2は、一対のロールで構成され、各連続乾燥原紙1A,1Aをプライ加工する。このようにして形成された2プライのシートに対して、さらに一枚の連続乾燥原紙1Aをプライ加工することで、3枚の連続乾燥原紙1Aがプライ加工されたプライ連続シート1Bを形成する。なお、連続乾燥原紙1A,1A同士を重ね合わせる際に、連続乾燥原紙1A,1A同士がずれにくくなるように、ピンエンボス(コンタクトエンボス)で軽く留めておいてもよい。
このようにして形成されたプライ連続シート1Bの内、一番上の連続乾燥原紙1A及び一番下の連続乾燥原紙1Aが外層シートP1であり、その間の連続乾燥原紙1Aが内層シートP2である。
次いで、バインダー溶液について説明する。バインダー溶液は、カルボキシメチルセルロース(CMC)を水溶性バインダーとして含むものである。バインダー溶液中におけるカルボキシメチルセルロースの濃度としては、1~30重量%、好ましくは、1重量%以上、4重量%未満とする。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。多糖誘導体としてはカルボキシメチルセルロースの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンブン又はその塩などが挙げられ、特にカルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩が好ましい。
次いで、本実施形態の溶液付与工程(S3)ついて説明する。溶液付与工程(S3)では、図6に示すように、プライ連続シート1Bの両方の外面に2流体方式または1流体方式の各スプレーノズル3,3により上述のバインダー溶液を噴霧して連続シート1Cを生成する。
プライ加工工程においてプライ加工された直後のプライ連続シート1Bは、連続乾燥原紙1A,1A,1Aが単に重なっているに過ぎないため、溶液付与工程においてプライ連続シート1Bの両面から、バインダー溶液をスプレーノズル3,3で塗布すると、連続乾燥原紙1A,1A,1Aが離れた状態でバインダー溶液を付与する場合と実質的に同様であり、バインダー溶液が厚さ方向に浸透し、搬送中にシート同士が密着し、スリット・巻取り工程で圧着する中で、さらに浸透するのである。
なお、バインダー溶液の噴霧方法として、プライ連続シート1Bの片方の外面に上述のバインダー溶液を噴霧するようにしても良い。また、連続乾燥原紙1A,1A,1Aのうち、プライ連続シート1Bの最上部に位置するものの上面及び最下部に位置するものの下面に対して、2流体方式のスプレーノズルより上述のバインダー溶液を噴霧した後に当該連続乾燥原紙1A,1A,1Aをプライ加工することにより、上述の連続シート1Cと同等のシートを生成するようにしても良い。
本実施形態で2流体方式のスプレーノズルを使用する場合、プライ加工されたプライ連続シート1Bの各々の外面に高い圧力(噴射圧1.5MPa以上)でバインダー溶液(粘度400~1200MPa.s)を塗布するので、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させやすい。
一方、本実施形態で1流体方式のスプレーノズルを使用する場合、プライ加工されたプライ連続シート1Bの各々の外面に噴射圧1.5MPa以下でバインダー溶液(粘度400~1200MPa.s)を塗布することで、シートの厚さ方向にバインダー溶液を含浸させやすく、シート表面にバインダー溶液を均一に塗布させやすくしている。
このようにして、プライ連続シート1Bの外面にバインダー溶液を噴霧することで、トイレクリーナー100は、厚み方向において中央(両面に塗布した場合)又はバインダー溶液の非塗布面(片面に塗布した場合)からバインダー溶液の塗布面に向かうにつれて水溶性バインダーの含有量が増加した状態となるので、水解性を確保しつつ、表面強度を向上させることができ、強く擦ってもダメージが生じにくいトイレクリーナー100を製造することが可能となる。
次いで、本実施形態の乾燥工程(S4)について説明する。乾燥工程(S4)では、図6に示すように、乾燥設備4において、上述の連続シート1Cのバインダー溶液中の不溶な液分を蒸発させて、有効成分、特にCMCを繊維に対して定着させる。
ここで、連続シート1Cの外面から厚み方向内側に向かうにつれて、バインダー溶液の浸み込む量が減少していくことから、当該厚み方向内側に向かうにつれて、CMCの定着量が減少することとなる。そのため、後述する仕上げ加工工程(S7)で薬液が含浸された際、当該厚み方向内側に向かうにつれて、架橋反応が起こり難く、空隙を多く有することから、シートの表面強度を向上させつつ、しなやかさの低下を抑制することができる。また、シート内部に上記薬液を閉じ込めた状態とすることができる。これにより、得られるトイレクリーナー100の拭き取り性を向上させることができるとともに、トイレクリーナー100を乾き難くすることができる。
乾燥設備4としては、連続シート1Cに対して熱風を吹き付けて乾燥させるフード付きドライヤー設備が利用できる。なお、シート同士をより密着させるために、プレスロールやターンロールを設置し、乾燥工程(S4)の前に当該プレスロールや当該ターンロールに連続シート1Cを通しても良い。
次いで、本実施形態のスリット・巻き取り工程(S5)について説明する。スリット・巻き取り工程(S5)では、プライ加工された連続水解性シート1Dをオフラインの加工機で加工する際の原反とするために、上述の乾燥工程(S4)で乾燥されCMCの定着が図られた連続水解性シート1Dをテンションを調整しながら、スリッター5で所定の幅にスリットし、ワインダー設備6において、巻き取ることとなる。巻き取り速度は、プライ加工工程(S2)、溶液付与工程(S3)、乾燥工程(S4)を考慮して適宜定める。過度に早いとシートの破断が生じ、過度に遅いと皺が発生するのでこれに留意する。
スリット・巻き取り工程(S5)で、プライ加工された連続水解性シート1Dが圧着されることにより、連続水解性シート1Dがより一体化され、1枚相当のシートとなる。
次いで、本実施形態のエンボス加工工程(S6)について説明する。エンボス加工工程(S6)では、図7に示すように、2次原反ロール11から繰り出される、連続水解性シート1Dに対して、エンボスロール12によって、シート全面に所定の形状をなすエンボス加工が施される。このエンボス加工は、シートの強度、嵩高性、拭き取り性等を高めるとともに、デザイン性を高めることを目的としてなされている。
次いで、本実施形態の仕上げ加工工程(S7)について説明する。仕上げ加工工程(S7)では、図7に示すように、仕上げ加工設備13において、エンボス済シート1Eの裁断加工、裁断された各シートの折り加工、折り加工がなされた各シートへの上記薬液の含浸を一連の流れで行う。ここで、薬液に含有される架橋剤は、CMCを水溶性バインダーとして用いた場合、多価金属イオンを用いることが好ましい。特に、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選択される1種又は2種以上の多価金属イオンを用いることが、繊維間が十分に結合されて使用に耐え得る湿潤強度が発現する点、及び水解性が十分になる点から好ましい。これらの金属イオンのうち、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、コバルト、ニッケルのイオンを用いることが特に好ましい。
以上の各工程を経ることにより、トイレクリーナー100が製造される。
水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙をプライ加工するプライ加工工程と、
プライ加工されたシートに対してバインダー溶液を付与する溶液付与工程と、
前記バインダー溶液を付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥させた前記シートを所定幅にスリットし巻き取る巻取り工程と、
を含み、
前記溶液付与工程は、プライ加工されたシートの両方の外面に対応して設けられたスプレーノズルから前記バインダー溶液を対応する外面に噴射したこととなる。
なお、上記プライ加工工程では、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙をプライ加工するほか、水溶性バインダーを含む複数の原紙をプライ加工するようにしてもよい。
以下の実施例及び比較例に係るトイレクリーナーを用意した。
内層シートにつき、外層シートと異なるシートを使用した3プライのシートであり、具体的には、以下のとおりである。
(外層シート)
大きさ:MD方向340mm、CD方向230mm
成分:木材パルプ100重量%(広葉樹晒クラフトパルプ:30重量%、針葉樹晒クラフトパルプ:70重量%)
目付:28g/m2
クレープ率:11.5%
(内層シート)
大きさ:MD方向340mm、CD方向230mm
成分:木材パルプ100重量%(広葉樹晒クラフトパルプ:30重量%、針葉樹晒クラフトパルプ:70重量%)
目付:30g/m2
クレープ率:11.5%
(エンボス)
なし
(薬液)
成分:エタノールを5.0重量%、除菌剤を0.59重量%、界面活性剤を0.45重量%、ホウ酸を3.0重量%、水を90.96重量%
薬液含浸率:200%
含浸方法:シート折り畳み後に、薬液を均等に含浸させた。
(折り畳み方法)
CD方向に1度折り畳んだ後、MD方向に1度折り畳み、4分の1に折り畳んだ。なお、薬液含浸前に折り畳んだ。
外層シートにつき、目付を30g/m2とし、内層シートにつき、目付を44g/m2とし、た。その他の構成は、実施例1と同様である。
内層シートにつき、目付を28g/m2とした。その他の構成は、実施例1と同様である。
外層シートにつき、目付を44g/m2とし、内層シートにつき、目付を28g/m2とした。その他の構成は、実施例1と同様である。
外層シートにつき、目付を30g/m2とした。その他の構成は、実施例1と同様である。
外層シートにつき、目付を30g/m2とし、成分を、PVA繊維2.6重量%、木材パルプ97.4重量%(広葉樹晒クラフトパルプ:30重量%、針葉樹晒クラフトパルプ:70重量%)とした。
その他の構成は、実施例1と同様である。
外層シートにつき、一方に、目付を30g/m2とし、成分を、PVA繊維2.6重量%、木材パルプ97.4重量%(広葉樹晒クラフトパルプ:30重量%、針葉樹晒クラフトパルプ:70重量%)としたものを用い、他方に、目付を30g/m2とし、成分を、木材パルプ100%(広葉樹晒クラフトパルプ:30重量%、針葉樹晒クラフトパルプ:70重量%)としたものを用いた。
その他の構成は、実施例1と同様である。
各実施例及び比較例に係るトイレクリーナーにつき、薬液含浸前と薬液含浸後の両方の状態のものを用意し、それぞれにつき、折り畳まれたトイレクリーナーを開いた後、CD方向と平行な折り目部分(図4(a)におけるA部分)と、折り目の間の部分(図4(a)におけるB部分)につき、Y方向20mm、X方向230mmとなるように切り取り、これを試験片とし、それぞれにつき、重量を測定し、薬液含浸率を算出した。
具体的には、各実施例及び比較例のそれぞれのA、B両部分につき、薬液含浸後の重量から薬液含浸前の重量を引いて、含浸された薬液の重量を算出の上、これを、薬液含浸前の当該部分の試験片の重量で除して、薬液含浸前の試験片の重量に対する、薬液含浸後に当該試験片に含浸された薬液の重量の割合を算出した。なお、各実施例及び比較例につき、2つずつ用意し、それぞれ2度の試験を行った。
試験の結果を表Iに示す。
実施例1及び2と、比較例1から3との比較により、内層シートの目付を、外層シートと比較して高くすることで、折り目部分の薬液含浸率を高めることができることが分かる。
また、比較例4と、比較例3及び5との比較により、外層シートにつき両面をPVA繊維を含む繊維集合体によって形成し、内層シートにつきPVA繊維を含まない繊維集合体によって形成することで、折り目部分の薬液含浸率を高めることができることが分かる。
以下の実施例及び比較例に係るトイレクリーナー積層体を用意した。
4分の1に折り畳まれた実施例1に係るトイレクリーナーを、折り目の方向が揃うように20枚積層したトイレクリーナー積層体である。
4分の1に折り畳まれた比較例2に係るトイレクリーナーを、折り目の方向が揃うように20枚積層したトイレクリーナー積層体である。
4分の1に折り畳まれた比較例3に係るトイレクリーナーを、折り目の方向が揃うように20枚積層したトイレクリーナー積層体である。
4分の1に折り畳まれた比較例4に係るトイレクリーナーを、折り目の方向が揃うように20枚積層したトイレクリーナー積層体である。
実施例及び比較例に係るトイレクリーナー積層体につき、上面が水平面となった台の上に載置された状態で、2度目に折り畳んだ折り目が形成されている側(図9におけるC部分)及びこれと対向する側(折り目が形成されていない側。図9におけるD部分)につき、載置された台の上面から、トイレクリーナー積層体の最上部までの高さを測定した。なお、各実施例及び比較例につき、3つずつ用意し、それぞれ3度の試験を行った。
試験の結果を表IIに示す。
実施例3と、比較例6及び7との比較により、内層シートの目付を、外層シートと比較して高くしたシートを用いてトイレクリーナー積層体を形成することによって、折り目が形成されている端部と、折り目が形成されていない端部との高さの差を抑えることができることが分かる。
また、比較例7と、比較例8との比較により、外層シートにつき両面をPVA繊維を含む繊維集合体によって形成し、内層シートにつきPVA繊維を含まない繊維集合体によって形成したシートを用いてトイレクリーナー積層体を形成することによって、折り目が形成されている端部と、折り目が形成されていない端部との高さの差を抑えることができることが分かる。
なお、上記溶液付与工程では、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙のうち、水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくとも何れか一方の面に対してバインダー溶液を付与するほか、水溶性バインダーを含む複数の原紙のうち、水解性シートの表面及び裏面となる原紙の少なくとも何れか一方の面に対してバインダー溶液を付与するようにしてもよい。
一つのバックアップロールに対して対となる刷版ロールを設けるドクターチャンバー方式、もしくは/および、3ロール方式を採用することにより、各刷版ロールにおける付与量が少なくとも、合計量において十分な量の薬液を乾燥原紙に対して付与できる。また、バックアップロールが一つであることにより、極めて均一に付与できる。これは、バックアップロールが一つであることで、最初の刷版ロールから次の刷版ロールまでの間の張力が極めて安定して一定であることから、二つの刷版ロールで二段階付与しても、連続原紙に対して極めて均一に薬液を付与することができるのである。また、二つの刷版ロールの間隔が短くなることから、最初の刷版ロールで薬液が付与された後、直ちに次の刷版ロールでの付与がなされことからも、付与ムラなく均一転写ができるのである。このような効果は、単に、バックアップロールと刷版ロールを一対二段にしただけでは得ることはできない。
さらに、薬液が付与された連続紙を乾燥させる乾燥工程を有する。この乾燥工程は、連続紙に直接的に接触しない間接乾燥が望ましく、特に赤外線照射によるものが望ましい。間接乾燥の場合には皺の発生が抑制される。特に、赤外線照射によるものとすると、紙面各所の乾燥が均一に生ずるので、乾燥時における皺や歪みなどの発生が効果的に防止できる。
以下にドクターチャンバー方式を例に詳しく説明する。
バインダー溶液を塗布する際の塗布加工速度は30~100m/分で操業され、より好ましくは50~80m/分で操業される。30m/分未満では乾燥されるまえにクレープが伸びてしまい、後工程で加工しづらいという問題がある。逆に100m/分超過では十分な転写量が得られなかったり、幅方向での塗布量のバラツキにより、湿潤強度や水解性にバラツキが生じる。
そして、このバックアップロールに巻き掛けられた連続乾燥原紙1Aに対して、刷版ロールにてバインダー溶液がロール転写される。
ここで、刷版ロールは、凹溝のないベタ版仕様のシームレスロールとし、連続乾燥原紙1Aの全体にバインダー溶液をベタ印刷の如く付与する。この刷版ロールとして用いられるシームレスロールは、タイプロールのスリーブにゴム板を巻きつけ釜に入れて過熱溶接し、研磨して成形したものである。材料として用いるゴム板は所定の目的に応じて材質や硬度、色等を選択することができる。
のバインダー溶液が受け渡され、結果的に連続乾燥原紙1Aに対して刷版ロールからムラを持ってバインダー溶液が付与されるおそれが高まる。反対に、線数が120線/インチを超えると十分な量かつ刷版ロールの周面全体にバインダー溶液を受け渡すことが困難となる。また、セル容量が40ml/m2未満であると十分な量のバインダー溶液を刷版ロ
ールに受け渡すことが困難となり、セル容量が90ml/m2を超えても歩留まりの悪化
を招くだけである。
なお、上述のようにバインダー溶液が付与(転写)される連続乾燥原紙1Aは、プライ加工する際に最上層又は最下層となる原紙のみを対象とする。つまり、例えば、3プライ加工する場合、中層となる連続乾燥原紙1Aに対してはバインダー溶液を付与(転写)しない。
つまり、複数の原紙(連続乾燥原紙1A)がプライ加工されてなる水解性シートの製造方法において、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙をプライ加工するプライ加工工程と、プライ加工されたシートに対してバインダー溶液を付与(転写)する溶液付与工程と、前記バインダー溶液を付与されたシートを乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程で乾燥させた前記シートを所定幅にスリットし巻き取る巻取り工程と、を含み、前記溶液付与工程は、プライ加工されたシートの少なくとも何れか一方の外面に対応して設けられた印刷機から前記バインダー溶液を対応する外面に転写するようにする。
なお、上記プライ加工工程では、水溶性バインダーを含んでいない複数の原紙をプライ加工するほか、水溶性バインダーを含む複数の原紙をプライ加工するようにしてもよい。
このように、ドクターチャンバー方式でバインダー溶液を転写する場合、粘度の高いバインダー溶液を塗布することができるので、シート内部までバインダー溶液が浸透することを抑制することができる。よって、シート表面にのみCMCを定着させることが可能となる。なお、ドクターチャンバー方式でバインダー溶液を転写する場合のほか、例えば、ホットメルト樹脂塗工用のコーターによりバインダー溶液をシート表面にコーティングするようにしてもよい。かかる場合もシート表面にのみCMCを定着させることが可能となる。
つまり、複数の原紙(連続乾燥原紙1A)がプライ加工されてなる水解性シートの製造方法において、前記複数の原紙をそれぞれ抄造する抄紙工程を含み、前記抄紙工程は、抄造中の湿紙に対してバインダー溶液を付与するようにする。
このように、抄紙工程でもバインダー溶液を付与した場合、得られる水解性シート全体の強度を高めることができ、後工程の溶液付与工程で更にバインダー溶液を付与することにより、当該水解性シートの表面強度をより一層高めることができるようになる。
明細書中の下記の用語は、特に記載がない限り、以下の意味を有するものとする。
(薬液含浸率)
薬液含浸前のシートの質量と、含浸させる薬液の質量とを測定し、薬液含浸前のシートの質量に対する含浸させる薬液の質量の割合を算出したものをいう。
(目付)
JIS P 8124:2011に従って測定した坪量をいう。
(シート、エンボス等の長さ)
水解性シートを、テンションが掛かっていない状態で平坦な面に置き、当該状態で測定した長さをいう。
(クレープ率)
{(製紙時のドライヤーの周速)-(巻き取り手段におけるリール装置のリール周速)}/(製紙時のドライヤーの周速)×100によって算出される値をいう。
200 トイレクリーナー積層体
EM11 エンボス
P 原紙シート
P1 外層シート
P2 内層シート
Claims (9)
- 複数枚の原紙シートが積層され、薬液が含浸され、折り畳まれた水解性シートであって、
前記原紙シートは、当該水解性シートの表面及び裏面に配置された外層シートと、前記外層シートの間に配置された内層シートと、を含み、
前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも高く、
複数のエンボスが、前記水解性シートが折り畳まれる折り目を避けて形成されていることを特徴とする水解性シート。 - 複数枚の原紙シートが積層され、薬液が含浸され、折り畳まれた水解性シートであって、
前記原紙シートは、当該水解性シートの表面及び裏面に配置された外層シートと、前記外層シートの間に配置された内層シートと、を含み、
前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも高く、
複数のエンボスが形成され、
前記エンボスは、前記水解性シートが折り畳まれる折り目付近において、折り目から離れた部分と比較して高さが低くなるように形成されていることを特徴とする水解性シート。 - 前記内層シートの目付は、前記外層シートの目付よりも、0.5g/m2以上、20g/m2以下高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の水解性シート。
- 前記外層シートは、ポリビニルアルコール繊維を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水解性シート。
- 前記外層シートは、ポリビニルアルコール繊維を、2.0重量%以上、4.0重量%以下含むことを特徴とする請求項4に記載の水解性シート。
- 前記外層シートは、クレープ加工が施されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の水解性シート。
- 前記外層シートと、前記内層シートと、はクレープ加工が施され、前記外層シートのクレープ率は、前記内層シートのクレープ率よりも、0.5%から17%高いことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の水解性シート。
- 所定回数折り畳まれた請求項1から7のいずれか一項に記載の水解性シートが、折り目が形成された方向が共通するように複数枚積層された水解性シート積層体。
- 前記水解性シートは、MD方向及びCD方向にそれぞれ一度のみ折り畳まれていることを特徴とする請求項8に記載の水解性シート積層体。
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