JP7037680B2 - 固体電解質膜の製造方法および全固体型リチウムイオン電池の製造方法 - Google Patents
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Description
また、本発明者らの検討によると、特許文献2に記載されているような固体電解質シートに関しては、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性がまだまだ満足するものではないことが明らかになった。
当該製造方法は、(A)粒子状の無機固体電解質材料を多孔体の空隙に充填する工程、(B)前記多孔体の空隙に充填された前記無機固体電解質材料を金型のキャビティ表面上または基材表面上に篩い落とすことにより、前記金型のキャビティ表面上または前記基材表面上に前記無機固体電解質材料を膜状に堆積させる工程、および、(C)膜状に堆積した前記無機固体電解質材料を加圧する工程を含み、
当該固体電解質膜の厚みの標準偏差が5.0μm以下であり、
当該固体電解質膜の平均厚みが60.4μm以上180μm以下であり、
当該固体電解質膜は、粒子状の前記硫化物系無機固体電解質材料の加圧成形体であり、
当該固体電解質膜中のバインダー樹脂の含有量が、前記固体電解質膜の全体を100質量%としたとき、0.5質量%未満である固体電解質膜の製造方法が提供される。
正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層された全固体型リチウムイオン電池の製造方法であって、
上記固体電解質層が、上記固体電解質膜の製造方法により得られたものである全固体型リチウムイオン電池の製造方法が提供される。
はじめに、本実施形態に係る固体電解質膜について説明する。
本実施形態に係る固体電解質膜は、リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質材料を主成分として含む。そして、当該固体電解質膜の厚みの標準偏差が5.0μm以下であり、好ましくは4.0μm以下であり、さらに好ましくは3.5μm以下であり、特に好ましくは3.0μm以下である。
本実施形態に係る固体電解質膜の厚みの標準偏差が上記上限値以下であると、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性を向上できる。
また、本実施形態に係る固体電解質膜の厚みの標準偏差は特に限定されないが、例えば、0.1μm以上である。
なお、本実施形態では、全固体型リチウムイオン電池の電池特性とは、例えば、放電容量密度、出力特性、サイクル特性等をいう。
本実施形態に係る固体電解質膜を用いることにより、電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池が得られる理由は明らかではないが、以下の理由が考えられる。
まず、固体電解質膜の厚みにバラツキがあると、固体電解質膜の薄い箇所で電極間のリチウムイオンが優先的に動くため電極の膨張・収縮が面内で不均一に起こり、固体電解質膜にかかる応力に分布が生じる。その結果、固体電解質膜にクラックが発生しやすくなると考えられる。このクラックが発生すると、正極と負極が接触して短絡等が起こり、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性が悪化してしまう。
これに対し、本実施形態に係る固体電解質膜は、厚みの標準偏差が上記上限値以下であり、厚みの均一性に優れている。そのため電極の膨張収縮は面内で均一に起こるため固体電解質膜への応力の分布が緩和され、固体電解質膜にクラックが発生し難くなると考えられる。以上の理由から、本実施形態に係る固体電解質膜を用いると、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性の悪化を抑制することができると考えられる。
以上から、本実施形態に係る固体電解質膜によれば、電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池を実現できる。
本実施形態に係る固体電解質膜を適用した全固体型リチウムイオン電池の例としては、正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層されたものが挙げられる。この場合、固体電解質層が固体電解質膜により構成されたものである。
加圧成形体とすることにより、無機固体電解質材料同士の結合が起こり、得られる固体電解質膜の強度はより一層高くなる。その結果、無機固体電解質材料の欠落や、無機固体電解質材料表面のひび割れをより一層抑制できる。
本実施形態に係る固体電解質膜のリチウムイオン伝導度が上記下限値以上であると、より一層電池特性に優れた全固体型リチウムイオン電池を得ることができる。
ここで、上記リチウムイオン伝導度は、27.0℃、印加電圧10mV、測定周波数域0.1Hz~7MHzの測定条件における交流インピーダンス法によるリチウムイオン伝導度である。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、リチウムイオン伝導性に優れ、かつ広い電圧範囲で分解等を起こさない安定性を有する点から、Li2S-P2S5材料が好ましい。ここで、例えば、Li2S-P2S5材料とは、少なくともLi2S(硫化リチウム)とP2S5とを含む混合物をメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得られる材料を意味する。
その他のリチウム系無機固体電解質材料としては、例えば、LiPON、LiNbO3、LiTaO3、Li3PO4、LiPO4-xNx(xは0<x≦1)、LiN、LiI、LISICON等が挙げられる。さらに、これらの無機固体電解質の結晶を析出させて得られるガラスセラミックスも無機固体電解質材料として用いることができる。
無機固体電解質材料の平均粒子径d50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、固体電解質膜のリチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
これにより、無機固体電解質材料間の接触性が改善され、固体電解質膜の界面接触抵抗を低下させることができる。その結果、固体電解質膜のリチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。そして、このようなリチウムイオン伝導性に優れた固体電解質膜を用いることにより、得られる全固体型リチウムイオン電池の電池特性を向上できる。
なお、「バインダー樹脂を実質的に含まない」とは、本発明の効果が損なわれない程度には含有してもよいことを意味する。また、固体電解質層と正極層または負極層との間に粘着性樹脂層を設ける場合、固体電解質層と粘着性樹脂層との界面近傍に存在する粘着性樹脂層由来の粘着性樹脂は、「固体電解質膜中のバインダー樹脂」から除かれる。
つぎに、本実施形態に係る固体電解質膜の製造方法について説明する。
図1~図4は、本発明に係る実施形態の固体電解質膜100の製造工程の一例を模式的に示した工程断面図である。
本実施形態に係る固体電解質膜100の製造方法は、下記(A)、(B)および(C)の工程を含むことが好ましい。
(A)粒子状の無機固体電解質材料101を多孔体103の空隙に充填する工程
(B)多孔体103の空隙に充填された無機固体電解質材料101を金型105のキャビティ表面107上または基材表面上に篩い落とすことにより、金型のキャビティ表面107上または基材表面上に無機固体電解質材料101を膜状に堆積させる工程
(C)膜状に堆積した無機固体電解質材料101を加圧する工程
上記知見を元に、本発明者らは、厚みの均一性に優れた固体電解質膜100を提供するため、固体電解質膜100の製造方法について鋭意検討した。その結果、多孔体103の空隙に充填された無機固体電解質材料101を金型のキャビティ表面107上または基材表面上に篩い落とすことにより、厚みの均一性に優れ、厚みの標準偏差が上記上限値以下である固体電解質膜100が得られることを見出した。
本実施形態の固体電解質膜100の製造方法を用いることにより、厚みの標準偏差が上記上限値以下である固体電解質膜100が得られる理由は明らかではないが、本発明者らは粒子状の無機固体電解質材料101が多孔体103の開口部を通過しながら少量ずつ篩い落とされるため、金型のキャビティ表面107上または基材表面上に均一な厚みで膜状に堆積することができるからだと推察している。
以下、各工程について詳細に説明する。
上記スラリーを塗布する方法としては、ドクターブレード塗工法、浸漬塗工法、スプレー塗工法、バーコーター塗工法等の一般的に公知の方法を使用できる。
これらの方法により、多孔体103の空隙内に無機固体電解質材料101を連続的に充填することができる。
ここで、多孔体103において、多孔体103の空隙に充填された無機固体電解質材料101を所望の位置のみに篩い落とす観点から、粒子状の無機固体電解質材料101を充填させたくない部分の空隙にはあらかじめ樹脂等を埋め込んでおき、粒子状の無機固体電解質材料101が充填されないようにしておくのが好ましい。こうすることにより、工程(B)において、所望の位置のみに無機固体電解質材料101篩い落とすことができるため、所望のサイズを有する固体電解質膜100をより容易に得ることができる。
空間部115は無機固体電解質材料101を充填することができる構造のものであれば特に限定されないが、例えば、多孔体103の一方の面にスペーサ111を介して支持体113を設けることにより形成される構造を挙げることができる。この場合、多孔体103と支持体113とスペーサ111とにより囲まれた部分が空間部115となる。
多孔体103の形状は特に限定されないが、取り扱いのし易さの観点から、好ましくはシート状である。
これらの中でも、柔軟性に優れる点から、樹脂材料や天然繊維が好ましく、樹脂材料がより好ましく、ナイロンが特に好ましい。柔軟性に優れる多孔体103は振動を与えると目開きが微妙に変化する。そのため、このような柔軟性に優れる多孔体103を使用することで、目詰まりが起こるのを抑制しながら無機固体電解質材料101をより容易に落下させることができ、無機固体電解質材料101をより均一に堆積させることが可能となる。
また、空隙率が上記上限値以下であると、無機固体電解質材料101を篩い分ける性能を向上させることができるため、得られる固体電解質膜100の厚みをより一層均一にすることができる。
ここで、本実施形態における空隙率は、多孔体103の形態によって算出法が異なる。例えば、空隙が単調な規則形状からなるメッシュクロス、エキスパンドシート、パンチングシート等は開口率を意味する。
多孔体103の開口率は、形態の違い毎に以下の式に準じて算出できる。例えばパンチングシート等の打抜き板の場合、穴の形状と配置の違いにより通称名が付けられ、それぞれ算出式が提供される。一例を挙げると60°千鳥型:開口率(%)=90.6×D2/P2、角千鳥型:開口率(%)=157×D2/P2、並列型:開口率(%)=78.5×D2/P2、長丸穴千鳥型:開口率(%)={(2×W×L)-(0.43×W2)}×100/(2×SP×LP)、長丸穴並列型:開口率(%)={(2×W×L)-(0.43×W2)}×100/(2×SP×LP)、角穴千鳥型:開口率(%)=W2×100/(SP1×SP2)、角穴並列型:開口率(%)=W2×100/(SP1×SP2)、六角形60°千鳥型:開口率(%)=W2×100/P2、長角穴千鳥型:開口率(%)=(W×L×100)/(SP×LP)、長角穴並列型:開口率(%)=(W×L×100)/(SP×LP)、以上の算出式でDは丸穴の直径、Pは丸穴または六角穴の中心間距離、Wは長丸穴、角穴、六角穴または長角穴の短め方向長さ、Lは長丸穴または長角穴の長め方向長さ、SPは長丸穴または長角穴の短め方向における中心間距離、LPは長丸穴または長角穴の長め方向における中心間距離、SP1は角穴の短め方向における中心間距離、SP2は角穴の長め方向における中心間距離を示す。
エキスパンドシートのような千鳥状に切れ目を入れた後で引張り加工した板の場合、開口率(%)=〔{SWO×(LWO+B)}/(SW×LW)〕×100で提供される。ここでSWOは開口部の短め方向長さ、LWOは開口部の長め方向長さ、SWはメッシュの短め方向の中心間距離、LWはメッシュの長め方向の中心間距離、Bはボンドの長さである。
また、メッシュクロスでは、開口率(%)={A/(A+d)}2×100で提供される。ここでAは目開き(mm)であり、A=(25.4/M)-dによって算出できる。Mはメッシュ、dは線径(mm)である。
また、空隙が3次元的に複雑な形状からなる織布、不織布、多孔性膜の場合、空隙率は、多孔体103の全体積に占める空隙の総体積の割合を意味する。すなわち、空隙率は(1-多孔体103中の構成素材の体積/多孔体103の体積)×100(%)で示される。
また、目開きが上記上限値以下であると、無機固体電解質材料101を篩い分ける性能を向上させることができるため、得られる固体電解質膜100の厚みをより一層均一にすることができる。
ここで、多孔体103の通気度は、JIS L1096-A(フラジール形法)に従って測定できる。
また、多孔体103の厚みが上記上限値以下であると、無機固体電解質材料101の未充填領域を低減することができ、無機固体電解質材料101を篩い分ける性能を向上させることができるため、得られる固体電解質膜100の厚みをより一層均一にすることができる。
無機固体電解質材料101は多孔体103の開口部によって少量ずつ篩い落とされるため、金型のキャビティ表面107上または基材表面上に成に均一な厚みで膜状に堆積することができる。
加圧を行えば無機固体電解質材料101同士の結合が起こり、得られる固体電解質膜100の強度はより一層高くなる。その結果、無機固体電解質材料101の欠落や、無機固体電解質材料101表面のひび割れをより一層抑制できる。
上記無機固体電解質材料101を加圧する方法は特に限定されず、例えば、金型105のキャビティ表面107上に無機固体電解質材料101を堆積させた場合は金型と押し型によるプレス、粒子状の無機固体電解質材料101を基材表面上に堆積させた場合は金型と押し型によるプレスやロールプレス、平板プレス等を用いることができる。
無機固体電解質材料101を加圧する圧力は、例えば、10MPa以上500MPa以下である。
無機固体電解質材料101を加熱する温度は、例えば、40℃以上500℃以下である。
つぎに、本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200について説明する。図5は、本発明に係る実施形態の全固体型リチウムイオン電池の構造の一例を模式的に示した断面図である。本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200はリチウムイオン二次電池であるが、リチウムイオン一次電池であってもよい。
また、実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200は、正極層210と、固体電解質層220と、負極層230とにより構成される単位セルを2つ以上積層させることにより、バイポーラ型リチウムイオン電池とすることもできる。
全固体型リチウムイオン電池200の形状は特に限定されず、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状が挙げられる。
正極層210の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
正極活物質としては特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の正極層に使用可能な一般的に公知の正極活物質を用いることができる。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)、固溶体酸化物(Li2MnO3-LiMO2(M=Co、Ni等))、リチウム-マンガン-ニッケル酸化物(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)、オリビン型リチウムリン酸化物(LiFePO4)等の複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子;Li2S、CuS、Li-Cu-S化合物、TiS2、FeS、MoS2、Li-Mo-S化合物、Li-Ti-S化合物、Li-V-S化合物等の硫化物系正極活物質;硫黄を含浸したアセチレンブラック、硫黄を含浸した多孔質炭素、硫黄と炭素の混合粉等の硫黄を活物質とした材料;等を用いることができる。これらの正極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、より高い放電容量密度を有し、かつ、サイクル特性により優れる観点から、硫化物系正極活物質が好ましく、Li-Mo-S化合物、Li-Ti-S化合物、Li-V-S化合物から選択される一種または二種以上がより好ましい。
また、Li-Ti-S化合物は構成元素としてLi、Ti、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるチタン硫化物と硫化リチウムをメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得ることができる。
Li-V-S化合物は構成元素としてLi、V、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるバナジウム硫化物と硫化リチウムをメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得ることができる。
正極活物質層中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途等に応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
負極活物質層の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
負極活物質としては特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の負極層に使用可能な一般的に公知の負極活物質を用いることができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素質材料;スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、ガリウム、ガリウム合金、インジウム、インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を主体とした金属系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー;金属リチウム;リチウムチタン複合酸化物(例えばLi4Ti5O12)等が挙げられる。これらの負極活物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
負極活物質層中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途等に応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明の参考形態の例を付記する。
[1]
リチウムイオン伝導性を有する無機固体電解質材料を主成分として含む固体電解質膜であって、
当該固体電解質膜の厚みの標準偏差が5.0μm以下である固体電解質膜。
[2]
[1]に記載の固体電解質膜において、
当該固体電解質膜の平均厚みが10μm以上500μm以下である固体電解質膜。
[3]
[1]または[2]に記載の固体電解質膜において、
粒子状の無機固体電解質材料の加圧成形体である固体電解質膜。
[4]
[3]に記載の固体電解質膜において、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における、上記粒子状の無機固体電解質材料の平均粒子径d 50 が1μm以上40μm以下である固体電解質膜。
[5]
[1]乃至[4]いずれか一つに記載の固体電解質膜において、
当該固体電解質膜中のバインダー樹脂の含有量が、上記固体電解質膜の全体を100質量%としたとき、0.5質量%未満である固体電解質膜。
[6]
[1]乃至[5]いずれか一つに記載の固体電解質膜において、
当該固体電解質膜中の前記無機固体電解質材料の含有量が、上記固体電解質膜の全体を100質量%としたとき、98質量%以上である固体電解質膜。
[7]
[1]乃至[6]いずれか一つに記載の固体電解質膜において、
27.0℃、印加電圧10mV、測定周波数域0.1Hz~7MHzの測定条件における交流インピーダンス法によるリチウムイオン伝導度が0.5×10 -3 S・cm -1 以上である固体電解質膜。
[8]
[1]乃至[7]いずれか一つに記載の固体電解質膜において、
上記無機固体電解質材料が硫化物系無機固体電解質材料を含む固体電解質膜。
[9]
[1]乃至[8]いずれか一つに記載の固体電解質膜において、
全固体型リチウムイオン電池を構成する固体電解質層に用いられる固体電解質膜。
[10]
正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層された全固体型リチウムイオン電池であって、
上記固体電解質層が、[1]乃至[9]いずれか一つに記載の固体電解質膜により構成されたものである全固体型リチウムイオン電池。
はじめに、以下の実施例、比較例における測定方法を説明する。
ICP発光分光分析装置(セイコーインスツルメント社製、SPS3000)を用いて、ICP発光分光分析法により測定し、正極活物質中の各元素の質量%をそれぞれ求め、それらの値に基づいて、各元素のモル比をそれぞれ計算した。
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー3000)を用いて、レーザー回折法により、実施例および比較例で使用した無機固体電解質材料の粒度分布を測定した。測定結果から、無機固体電解質材料について、重量基準の累積分布における50%累積時の粒径(D50、平均粒子径)を求めた。
実施例および比較例で得られた固体電解質膜に対して、交流インピーダンス法によるリチウムイオン伝導度の測定をおこなった。
リチウムイオン伝導度の測定は北斗電工社製、ポテンショスタット/ガルバノスタットSP-300を用いた。測定条件は、印加電圧10mV、測定温度27.0℃、測定周波数域0.1Hz~7MHz、電極はカーボン板とした。
マイクロメーター(ミツトヨ社製クーランとプルーフマイクロメータ290-230、スピンドル径φ6.35mm、測定力5~10N)を用いて、得られた固体電解質膜から5ヶ所の厚みを測定し、厚みの(算術)平均値および標準偏差を求めた。
ここで、固体電解質膜の厚みは、実施例および比較例で得られた固体電解質膜(サイズ:25mm×25mm)の角の4カ所と中央の1か所の計5点を測定した。
導電性銅箔導電テープ(寺岡製作所製8313 0.03、外寸法:25.0mm×25.0mm、厚み:30μm、電解銅箔:0.009mm、導電性アクリル系粘着剤層:0.021mm、粘着剤層面に黒鉛(日本黒鉛工業社製、CGC-20、8mg)を付着)、負極活物質層(インジウム箔、ニラコ社製、23.0mm×23.0mm、平均厚み:20μm)、実施例および比較例で得られた固体電解質膜、正極活物質層(Li14MoS9:ケッチェンブラック(KB):Li11P3S12=1:0.5:1.2(質量比)、平均厚み:30μm)、導電性銅箔導電テープ(寺岡製作所製8313 0.03、外寸法:25.0mm×25.0mm、厚み:30μm、電解銅箔:0.009mm、導電性アクリル系粘着剤層:0.021mm、粘着剤層面にケッチェンブラック(ライオン社製、325メッシュ、0.1mg)を付着)をこの順で積層させた。次いで、得られた積層体を320MPaで加圧して第一単位セルを作製した。ここで、第一単位セルの作製と同様の方法で、第一単位セルと同じ構成の第二単位セルを作製した。
次いで、中央に直径15mmの円形状の貫通孔を形成した粘着性樹脂層(日東電工社製、極薄両面テープNo.5600、層構成:アクリル系粘着剤層/PETフィルム基材/アクリル系粘着剤層、総厚み:5μm、外寸法:25.0mm×25.0mm)を介して、得られた第一単位セルと第二単位セルを積層して積層体を作製し、得られた積層体を80MPaで加圧した。次いで、得られた積層体をアルミラミネートフィルムで真空ラミネートし、バイポーラ型の全固体型リチウムイオン電池を得た。
次いで、得られた全固体型リチウムイオン電池について、25℃で、電流密度65μA/cm2の条件で充電終止電位4.5Vまで充電した後、電流密度65μA/cm2の条件で、放電終止電位2.0Vまで放電させる条件で充放電を35回以上行った。
ここで、1回目の放電容量を100%としたときの20回目の放電容量を放電容量変化率[%]とし、放電容量変化率が100%のものを◎、放電容量変化率が80%以上100%未満のものを〇、放電容量変化率が80%未満のものを×と評価した。
つぎに、以下の実施例、比較例において使用した材料について説明する。
アルゴン雰囲気下で、Al2O3製ポットに、MoS2(和光純薬工業社製、4.7mmol)と、Li2S(シグマアルドリッチジャパン社製、32.5mmol)と、を秤量して加え、さらにZrO2ボールを入れ、Al2O3製ポットを密閉した。
次いで、Al2O3製ポットを、ボールミル回転台に乗せ120rpmで、4日間処理を行い、混合物を得た。
得られたLi-Mo-S化合物は乳鉢により粉砕し、目開き43μmの篩により分級してLi-Mo-S化合物を得た。
Moの含有量に対するLiの含有量のモル比(Li/Mo)は14であり、Moの含有量に対するSの含有量のモル比(S/Mo)は9であった。
実施例および比較例で使用した硫化物系無機固体電解質材料であるLi2S-P2S5材料を以下の手順で作製した。
原料には、Li2S(シグマアルドリッチジャパン製、純度99.9%)、P2S5(関東化学製試薬)を使用した。Li3Nは、以下の手順で作製した。
まず、窒素雰囲気のグローブボックス中で、Li箔(本城金属社製、純度99.8%、厚み0.5mm)にステンレス製の剣山を使用しφ1mm以下の穴を多数開けた。Li箔は穴の部分から黒紫色に変化し始め、そのまま、常温で24時間放置することでLi箔すべてが黒紫色のLi3Nに変化した。Li3Nは、メノウ乳鉢で粉砕後、ステンレス製篩で篩い分けし、75μm以下の粉末を回収し無機固体電解質材料の原料とした。
つづいて、アルゴングローブボックス中で各原料をLi2S:P2S5:Li3N=67.5:22.5:10.0(モル%)になるように精秤し、これら粉末を20分間メノウ乳鉢で混合した。次いで、混合粉末2gを秤量し、φ10mmのジルコニア製ボール500gとともに、遊星ボールミル(フリッチュ社製、P-7)にて100rpmで1時間混合粉砕した。次いで、400rpmで15時間混合粉砕した。混合粉砕後の粉末はカーボンボートに入れアルゴン気流中で300℃、2時間加熱処理し、Li11P3S12組成のLi2S-P2S5材料を得た。平均粒子径D50は12μmであった。
さらに、Li11P3S12組成のLi2S-P2S5材料の作製方法に準じた方法により、Li7P3S11組成のLi2S-P2S5材料を得た。平均粒子径D50は9μmであった。
多孔体としては、ナイロンメッシュクロス(田中三次郎商店社製13XX‐100、厚み105μm、空隙率36%、目開き100μm)を用いた。
ナイロンメッシュクロスの一方の面に、厚み75μmのスペーサ(厚み60μmのマスキングテープと厚み15μmのベースレス両面テープ)を介してポリエチレンテレフタレート(PET)板を貼り付けたものを作製した。なお、ナイロンメッシュクロスには25mm×25mm以外の部分の開口部を樹脂で充填し、粉末が25mm×25mmのみを通過できるようにしておいた。
次いで、ナイロンメッシュクロスとPET板の間に設けた空間部(スペーサにより確保した空間)と、ナイロンメッシュクロスの開口部(空隙)に、スキージを使用して粒子状の無機固体電解質材料(Li11P3S12)を充填した。
次いで、粒子状の無機固体電解質材料が充填されたナイロンメッシュクロスを反転してプレス金型の上に設置し、PET板を木槌で叩き、振動させることでプレス金型のキャビティ表面上に無機固体電解質材料90mgを篩い落とすことにより、プレス金型のキャビティ表面上に無機固体電解質材料を膜状に堆積させた。ここで、無機固体電解質材料はプレス金型のキャビティ(25mm×25mm)に均一な厚みで膜状に堆積した。
次いで、プレス金型に押し型を入れた後、チタンハンマーを使用してプレス金型の各側面を叩き、プレス金型内の粒子状の無機固体電解質材料に対し振動を与え、膜状の無機固体電解質材料を緻密化させた。
その後、油圧平板プレスを使用して、320MPaでプレスすることで固体電解質膜を得た。得られた固体電解質膜について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
無機固体電解質材料の種類を表1に示す無機固体電解質材料とし、無機固体電解質材料の篩い落とし量を表1に示す値にした以外は、実施例1と同様の方法で固体電解質膜をそれぞれ作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
た。
プレス金型のキャビティ(25mm×25mm)にスキージを使用して粒子状の無機固体電解質材料(Li11P3S12)90mgを粉体塗工した。
次いで、プレス金型に押し型を入れた後、チタンハンマーを使用してプレス金型の各側面を叩き、プレス金型内の粒子状の無機固体電解質材料に対し振動を与え、無機固体電解質材料を緻密化させた。
その後、油圧平板プレスを使用して、320MPaでプレスすることで固体電解質膜を得た。得られた固体電解質膜について各評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
無機固体電解質材料の種類を表1に示す無機固体電解質材料とした以外は、比較例1と同様の方法で固体電解質膜をそれぞれ作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
以上から、本実施形態に係る固体電解質膜によれば、電池特性に優れる全固体型リチウムイオン電池が得られることが確認できた。
101 無機固体電解質材料
103 多孔体
105 金型
107 表面
109 スキージ
111 スペーサ
113 支持体
115 空間部
200 全固体型リチウムイオン電池
210 正極層
220 負極層
230 固体電解質層
Claims (6)
- リチウムイオン伝導性を有する硫化物系無機固体電解質材料を主成分として含む固体電解質膜の製造方法であって、
当該製造方法は、(A)粒子状の無機固体電解質材料を多孔体の空隙に充填する工程、(B)前記多孔体の空隙に充填された前記無機固体電解質材料を金型のキャビティ表面上または基材表面上に篩い落とすことにより、前記金型のキャビティ表面上または前記基材表面上に前記無機固体電解質材料を膜状に堆積させる工程、および、(C)膜状に堆積した前記無機固体電解質材料を加圧する工程を含み、
当該固体電解質膜の厚みの標準偏差が5.0μm以下であり、
当該固体電解質膜の平均厚みが60.4μm以上180μm以下であり、
当該固体電解質膜は、粒子状の前記硫化物系無機固体電解質材料の加圧成形体であり、
当該固体電解質膜中のバインダー樹脂の含有量が、前記固体電解質膜の全体を100質量%としたとき、0.5質量%未満である固体電解質膜の製造方法。 - 請求項1に記載の固体電解質膜の製造方法において、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における、前記粒子状の硫化物系無機固体電解質材料の平均粒子径d50が1μm以上40μm以下である固体電解質膜の製造方法。 - 請求項1または2に記載の固体電解質膜の製造方法において、
当該固体電解質膜中の前記硫化物系無機固体電解質材料の含有量が、前記固体電解質膜の全体を100質量%としたとき、98質量%以上である固体電解質膜の製造方法。 - 請求項1乃至3いずれか一項に記載の固体電解質膜の製造方法において、
27.0℃、印加電圧10mV、測定周波数域0.1Hz~7MHzの測定条件における交流インピーダンス法によるリチウムイオン伝導度が0.5×10-3S・cm-1以上である固体電解質膜の製造方法。 - 請求項1乃至4いずれか一項に記載の固体電解質膜の製造方法において、
全固体型リチウムイオン電池を構成する固体電解質層に用いられる固体電解質膜の製造方法。 - 正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層された全固体型リチウムイオン電池の製造方法であって、
前記固体電解質層が、請求項1乃至5いずれか一項に記載の固体電解質膜の製造方法により得られたものである全固体型リチウムイオン電池の製造方法。
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