JP7035494B2 - 軟磁性圧粉磁心の製造方法および軟磁性圧粉磁心 - Google Patents

軟磁性圧粉磁心の製造方法および軟磁性圧粉磁心 Download PDF

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Description

本発明は、軟磁性圧粉磁心の製造方法および軟磁性圧粉磁心に関する。
近年、電子・情報・通信機器等において低消費電力化および高効率化が求められている。さらに、低炭素化社会へ向け、上記の要求が一層強くなっている。そのため、電子・情報・通信機器等の電源回路にも、エネルギー損失の低減や電源効率の向上が求められている。そして、電源回路に使用させる磁器素子の磁心には透磁率の向上およびコアロス(磁心損失)の低減が求められている。コアロスを低減すれば、電力エネルギーのロスが小さくなり、高効率化および省エネルギー化が図られる。
特許文献1には、粉末の粒子形状を変化させることにより、透磁率が大きく、コアロスが小さく、磁心に適した軟磁性合金粉末を得たことが記載されている。しかし、現在ではよりコアロスが小さい磁心が求められている。
特開2000-30924号公報
磁心のコアロスを低減する方法として、磁心を構成する磁性体の保磁力を低減することが考えられる。
本発明の目的は、保磁力が低く、かつ、比抵抗が高い軟磁性圧粉磁心の製造方法および軟磁性圧粉磁心を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明に係る軟磁性圧粉磁心の製造方法は、
軟磁性合金からなる軟磁性粉末を得る工程および前記軟磁性粉末を成形する工程を有する軟磁性圧粉磁心の製造方法であって、
前記軟磁性粉末を成形する工程における成形温度が400℃以上700℃以下、成形圧力が400MPa以上2000MPa以下であり、
前記軟磁性合金はFeを主成分とし、
前記軟磁性合金の連続した測定範囲における1nm×1nm×1nmの80000個以上のグリッドのFe含有量(原子%)をy軸とし、各グリッドのFe含有量が高い順で求めた累計頻度(%)をx軸とした場合に、累計頻度20~80%における近似直線の傾き-0.1~-0.4を有し、
下記式(1)に示す非晶質化率Xが85%以上の非晶質であることを特徴とする。
X=100-(Ic/(Ic+Ia)×100)…(1)
Ic:結晶性散乱積分強度
Ia:非晶性散乱積分強度
本発明に係る軟磁性圧粉磁心の製造方法では、上記近似直線の傾きを上記範囲とし、非晶質化率Xを上記範囲とすることで、得られる軟磁性圧粉磁心の保磁力、比抵抗および相対密度が良好となる。
前記近似直線の傾きが-0.1~-0.2を有し、
前記式(1)に示す非晶質化率Xが95%以上であってもよい。
前記軟磁性合金がCを有し、
前記軟磁性合金におけるCの含有量が0.1~7.0原子%であってもよい。
前記軟磁性合金がBを有し、
Fe含有量についての累計頻度95%以上のグリッドにおけるB含有量のバラツキσBが2.8以上であってもよい。
前記軟磁性合金がFe-Si-M1-B-Cu-C系の軟磁性合金であり、
M1がNb,Ti,Zr,Hf,V,Ta,MoおよびPからなる群から選択される1種以上であり、
Fe含有量についての累計頻度95%以上のグリッドにおけるM1含有量のバラツキσM1が2.8以上であってもよい。
前記軟磁性合金がFe-M2-B-C系の軟磁性合金であり、
M2がNb,Cu,ZrおよびHfからなる群から選択される1種以上であり、
Fe含有量についての累計頻度95%以上のグリッドにおけるM2含有量のバラツキσM2が2.8以上であってもよい。
本発明に係る軟磁性圧粉磁心は、上記のいずれかに記載の製造方法によって得られる軟磁性圧粉磁心であって、相対密度が0.90以上であることを特徴とする。
図1は、本発明の実施形態における測定範囲およびグリッドを示す模式図である。 図2は、測定範囲におけるグリッドのFe含有量(原子%)をy軸とし、各グリッドのFe含有量が高い順で求めた累計頻度(%)をx軸としたときに得られるグラフの一例である。 図3は、X線結晶構造解析により得られるチャートの一例である。 図4は、図3のチャートをプロファイルフィッティングすることにより得られるパターンの一例である。 図5は、単ロール法の模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る軟磁性合金は、Feを主成分とする軟磁性合金である。「Feを主成分とする」とは、具体的には、軟磁性合金全体に占めるFeの含有量が65原子%以上である軟磁性合金を指す。
本実施形態に係る軟磁性合金の組成は、Feを主成分とする点以外には特に制限はない。Fe-Si-M1-B-Cu-C系の軟磁性合金やFe-M2-B-C系の軟磁性合金が例示されるが、その他の軟磁性合金でもよい。
なお、以下の記載では、軟磁性合金の各元素の含有率について、特に母数の記載が無い場合は、軟磁性合金全体を100原子%とする。
Fe-Si-M1-B-Cu-C系の軟磁性合金を用いる場合には、Fe-Si-M1-B-Cu-C系の軟磁性合金の組成をFeCuM1Siと表す場合に、以下の式を満たすことが好ましい。以下の式を満たすことにより、保磁力が低減され、靭性に優れる軟磁性合金を得ることが容易になる傾向にある。また、下記組成からなる軟磁性合金は原材料が比較的安価となる。本願におけるFe-Si-M1-B-Cu-C系の軟磁性合金には、f=0、すなわち、Cを含有しない軟磁性合金も含まれるものとする。
a+b+c+d+e+f=100
0.1≦b≦3.0
1.0≦c≦10.0
0.0≦d≦17.5
6.0≦e≦13.0
0.0≦f≦7.0
Cuの含有量(b)は、0.1~3.0原子%であることが好ましく、0.5~1.5原子%であることがより好ましい。また、Cuの含有量が少ないほど、後述する単ロール法により軟磁性合金からなる薄帯を作製し易くなる傾向にある。
M1は遷移金属元素およびPから選択される1種以上である。好ましくは、Nb,Ti,Zr,Hf,V,Ta,Mo,PおよびCrからなる群から選択される1種以上である。また、さらに好ましくは、M1としてNbおよび/またはPを含有する。
M1の含有量(c)は、1.0~10.0原子%であることが好ましく、3.0~5.0原子%であることがより好ましい。M1を上記の範囲内で添加することで保磁力を低下させ、靭性を向上させることができる。
Siの含有量(d)は、好ましくは0.0~17.5原子%であり、より好ましくは11.5~17.5原子%であり、さらに好ましくは13.5~15.5原子%である。Siを上記の範囲内で添加することで保磁力を低下させ、靭性を向上させることができる。
Bの含有量(e)は、6.0~13.0原子%であることが好ましく、9.0~11.0原子%であることがより好ましい。Bを上記の範囲内で添加することで保磁力を低下させ、靭性を向上させることができる。
Cの含有量(f)は、好ましくは0.0~7.0原子%であり、より好ましくは0.1~7.0原子%であり、さらに好ましくは0.1~5.0原子%である。Cを上記の範囲内で添加することで保磁力を低下させ、靭性を向上させることができる。
なお、Feは、いわば本実施形態にかかるFe-Si-M1-B-Cu-C系の軟磁性合金の残部である。
また、Fe-M2-B-C系の軟磁性合金を用いる場合には、Fe-M2-B-C系の軟磁性合金の組成をFeαM2βγΩと表す場合に、以下の式を満たすことが好ましい。以下の式を満たすことにより、保磁力が低減され、靭性に優れる軟磁性合金を得ることが容易になる傾向にある。また、下記組成からなる軟磁性合金は原材料が比較的安価となる。本願におけるFe-M2-B-C系の軟磁性合金には、Ω=0、すなわち、Cを含有しない軟磁性合金も含まれるものとする。
α+β+γ+Ω=100
1.0≦β≦14.1
2.0≦γ≦20.0
0.0≦Ω≦7.0
M2は遷移金属元素である。好ましくは、Nb,Cu,Zr,Hfからなる群から選択される1種以上である。また、M2としてNb,Zr,Hfからなる群から選択される1種以上を含有することがさらに好ましい。
M2の含有量(β)は、1.0~14.1原子%であることが好ましく、7.0~10.1原子%であることがさらに好ましい。
Bの含有量(γ)は、2.0~20.0原子%であることが好ましい。また、Bの含有量(γ)は、M2としてNbを含む場合には4.5~18.0原子%であることが好ましく、M2としてZrおよび/またはHfを含む場合には2.0~8.0原子%であることが好ましい。Bの含有量が小さいほど非晶質性が低下する傾向にある。そして、Bの含有量が所定の範囲内であることにより、保磁力Hcを低下させ、靭性を高めることができる。
Cの含有量(Ω)は、好ましくは0.0~7.0原子%であり、より好ましくは0.1~7.0原子%であり、さらに好ましくは0.1~5.0原子%である。Cを添加することにより非晶質性が向上する傾向にある。そして、Cの含有量が所定の範囲内であることにより、保磁力Hcを低下させ、靭性を高めることができる。
ここで、本実施形態に係る軟磁性合金におけるFe含有量についての累計頻度および近似直線の傾きについて説明する。
本実施形態に係る軟磁性合金では、連続した測定範囲における1nm×1nm×1nmの80000個以上のグリッドのFe含有量(原子%)をy軸とし、各グリッドのFe含有量が高い順で求めた累計頻度(%)をx軸とした場合に、累計頻度20~80%における近似直線の傾き-0.1~-0.4を有する。
以下、本実施形態に係る軟磁性合金におけるFe含有量についての累計頻度および近似直線の傾きの求め方について説明する。
まず、図1に示すように、軟磁性合金11において、各辺の長さが少なくとも40nm×40nm×50nmの直方体または立方体を測定範囲12とし、当該直方体または立方体の測定範囲12を1辺の長さが1nmの立方体形状のグリッド13に分割する。すなわち、一つの測定範囲にグリッドが40×40×50=80000個以上存在する。なお、本実施形態にかかる測定範囲について、測定範囲の形状には特に制限はなく、最終的に存在する80000個以上のグリッドが連続して存在していればよい。
次に、各グリッド13に含まれるFe含有量(原子%)を3次元アトムプローブ(以下、3DAPと表記する場合がある)を用いて測定する。そして、80000個以上のグリッドにおけるFe含有量について累計頻度(%)を算出する。
ここで、Fe含有量についての累計頻度(%)は次のようにして求める。まず、上記グリッドをFe含有量ごとに区分し、Fe含有量が高い順に並べる。次に、各含有量におけるグリッド数の全体に占める割合(頻度)を算出する。そして、最初の含有量(最も高い含有量)から各含有量までの頻度の和(累積和)を百分率(%)で表示した値が累計頻度(%)である。上記グリッドについて、Fe含有量をy軸とし、各グリッドのFe含有量が高い順で求めた累計頻度(%)をx軸としてプロットすると、たとえば、図2のようなグラフが得られる。図2のグラフからは、Fe含有量が90原子%の累計頻度はおよそ20%であるので、Fe含有量が90原子%以上であるグリッドは、全体のおよそ20%であることがわかる。同様に、Fe含有量が80原子%の累計頻度はおよそ80%であるので、Fe含有量が80原子%以上であるグリッドは、全体のおよそ80%であることがわかる。このグラフにおいて、累計頻度が20~80%の範囲における、プロットの近似直線の傾きを算出する。この傾きの絶対値が小さいほど、Fe含有量についてグリッド間でのバラツキが小さいことを意味する。そして、Fe含有量についてグリッド間でのバラツキを小さくすることで、保磁力が低減され、靭性に優れる軟磁性合金を得ることができる。
なお、近似直線はFe含有量をy軸とし、各グリッドのFe含有量が高い順で求めた累計頻度(%)をx軸としFe含有量の累計頻度が20~80%の範囲について最小二乗法を用いた線形近似で行う。
本実施形態に係る軟磁性合金において、連続した測定範囲における1nm×1nm×1nmの80000個以上のグリッドのFe含有量(原子%)をy軸とし、各グリッドのFe含有量が高い順で求めた累計頻度(%)をx軸とした場合に、累計頻度20~80%における近似直線の傾きは、-0.1~-0.4であり、好ましくは-0.1~-0.38であり、より好ましくは-0.1~-0.35であり、さらに好ましくは-0.1~-0.2である。上記近似直線の傾きを上記範囲とすることで、保磁力が低減され、靭性に優れる軟磁性合金を得ることができる。
なお、累計頻度が20~80%の範囲におけるプロットの近似直線としたのは、累積頻度が20%未満および80%超の範囲のプロットが、累計頻度が20~80%の範囲におけるプロットの近似直線から大きく離れる傾向が強いため、その範囲を除く意図である。
また、本実施形態に係る軟磁性合金において、上述のように80000個以上のグリッドにおけるFe含有量について累計頻度(%)を算出した場合に、累計頻度95%以上のグリッド、すなわち、図2のグラフにおいて累計頻度(%)が95~100%の範囲にあるグリッドにおけるB含有量のバラツキσBは、好ましくは2.8以上、より好ましくは2.9以上、さらに好ましくは3.0以上である。上記B含有量のバラツキσBを上記範囲とすることで、保磁力が低減され、靭性に優れる軟磁性合金を得ることができる。なお、B含有量のバラツキσBは、3DAPを用いて測定したB含有量により算出する。
同様に、本実施形態に係る軟磁性合金において、上述のように80000個以上のグリッドにおけるFe含有量について累計頻度(%)を算出した場合に、累計頻度95%以上のグリッドにおけるM1含有量のバラツキσM1またはM2含有量のバラツキσM2は、好ましくは2.8以上、より好ましくは2.9以上、さらに好ましくは3.0以上である。上記M1含有量のバラツキσM1または上記M2含有量のバラツキσM2を上記範囲とすることで、保磁力が低減され、靭性に優れる軟磁性合金を得ることができる。なお、M1含有量のバラツキσM1またはM2含有量のバラツキσM2は、3DAPを用いて測定したM1含有量またはM2含有量により算出する。
なお、上記80000個以上のグリッドにおけるFe含有量について累計頻度(%)を算出した場合の累計頻度95%以上のグリッドとは、図2において、累計頻度(%)が95~100%の範囲にあるグリッドのことであり、Fe含有量の低いほうから5%の範囲にあるグリッドを意味する。たとえば、80000個のグリッドからFe含有量の低いほうから5%の範囲にあるグリッドを抽出すると、4000個のグリッドが抽出される。
以上に示す測定は、それぞれ異なる測定範囲で数回行うことで、算出される結果の精度を十分に高いものとすることができる。好ましくは、それぞれ異なる測定範囲で3回以上、測定を行う。
本実施形態に係る軟磁性合金において、Fe含有量(原子%)をy軸とし、各グリッドのFe含有量が高い順で求めた累計頻度(%)をx軸とした場合に、累計頻度20~80%における近似直線の傾き-0.1~-0.4を有し、下記式(1)に示す非晶質化率Xは85%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは96%以上、特に好ましくは98%以上である。非晶質化率Xを上記範囲とすることにより、保磁力が低減され、靭性に優れる軟磁性合金を得ることができる。
X=100-(Ic/(Ic+Ia)×100)…(1)
Ic:結晶性散乱積分強度
Ia:非晶性散乱積分強度
非晶質化率Xは、XRDによりX線結晶構造解析を実施し、相の同定を行い、結晶化したFe又は化合物のピーク(Ic:結晶性散乱積分強度、Ia:非晶性散乱積分強度)を読み取り、そのピーク強度から結晶化率を割り出し、上記式(1)により算出する。具体的には以下のとおりである。
本実施形態に係る軟磁性合金についてXRDによりX線結晶構造解析を行い、図3に示すようなチャートを得る。これを、下記式(2)のローレンツ関数を用いて、プロファイルフィッティングを行い、図4に示すような、結晶性散乱積分強度を示す結晶成分パターンα、非晶性散乱積分強度を示す非晶成分パターンα、およびそれらを合わせたパターンαc+aを得る。得られたパターンの結晶性散乱積分強度および非晶性散乱積分強度から、上記式(1)により非晶質化率Xを求める。なお、測定範囲は、非晶質由来のハローが確認できる回析角2θ=30°~60°の範囲とする。この範囲で、XRDによる実測の積分強度とローレンツ関数を用いて算出した積分強度との誤差が1%以内になるようにする。
Figure 0007035494000001
本実施形態において、軟磁性合金を後述する単ロール法による薄帯の形状で得る場合には、ロール面に接していた面における非晶質化率Xとロール面に接していない面における非晶質化率Xとの平均値を非晶質化率Xとする。
本実施形態に係る軟磁性合金では、上記近似直線の傾きを-0.1~-0.4とし、上記式(1)に示す非晶質化率Xを85%以上とすること、すなわち、Fe含有量についてグリッド間でのバラツキが小さく、また軟磁性合金が高度に非晶質化していることにより、保磁力が低くなり、また靭性に優れる。
さらに、本実施形態に係る軟磁性合金では、上記近似直線の傾きを-0.1~-0.2とし、上記式(1)に示す非晶質化率Xを95%以上とすることが好ましい。このような軟磁性合金は、後述する熱処理を行わない場合に得られやすい。上記近似直線の傾きおよび上記式(1)に示す非晶質化率Xを上記範囲とすることにより、保磁力Hcが低下し、靭性が向上する。
以下、本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法について説明する。
本実施形態に係る軟磁性合金の製造方法について、特に限定されないが、たとえば単ロール法により軟磁性合金の薄帯を製造する方法が挙げられる。
単ロール法では、まず、最終的に得られる軟磁性合金に含まれる各金属元素の純金属を準備し、最終的に得られる軟磁性合金と同組成となるように秤量する。そして、各金属元素の純金属を溶解し、混合して母合金を作製する。なお、前記純金属の溶解方法には特に制限はないが、例えばチャンバー内で真空引きした後に高周波加熱にて溶解させる方法がある。なお、母合金と最終的に得られる軟磁性合金とは通常、同組成となる。
次に、作製した母合金を加熱して溶融させ、溶融金属(浴湯)を得る。溶融金属の温度には特に制限はないが、例えば1200~1500℃とすることができる。
単ロール法に用いられる装置の模式図を図5に示す。本実施形態に係る単ロール法において、チャンバー25内部において、ノズル21から溶融金属22を矢印の方向に回転しているロール23へ噴射し供給することでロール23の回転方向へ薄帯24が製造される。なお、本実施形態ではロール23の材質には特に制限はない。例えばCuからなるロールが用いられる。
従来、単ロール法においては、冷却速度を向上させ、溶融金属22を急冷させることが好ましいと考えられており、溶融金属22とロール23との接触時間を長くすることで冷却速度を向上させることが好ましいと考えられていた。そこで本発明者らは、図8に示すとおり通常のロールの回転方向とは反対に回転させることにより、ロール23と薄帯24とが接している時間が長くなり、薄帯24をより急激に冷却することができるようにした。
さらに、ロール23を図5に示す方向に回転させるメリットとしては、図5に示す剥離ガス噴射装置26から噴射される剥離ガスのガス圧を制御することでロール23による冷却の強さを制御できることである。例えば、剥離ガスのガス圧を強くすることでロール23と薄帯24とが接している時間を短くし、冷却を弱くすることができる。逆に、剥離ガスのガス圧を弱くすることでロール23と薄帯24とが接している時間を長くし、冷却を強くすることができる。
単ロール法においては、主にロール23の回転速度を調整することで得られる薄帯の厚さを調整することができるが、例えばノズル21とロール23との間隔や溶融金属の温度などを調整することでも得られる薄帯の厚さを調整することができる。薄帯の厚さには特に制限はないが、例えば15~30μmとすることができる。
ロール23の温度やチャンバー25内部の蒸気圧には特に制限はない。ロール23の温度を50~70℃とし、露点調整を行ったArガスを用いてチャンバー25内部の蒸気圧を11hPa以下としてもよい。
従来、単ロール法においては、冷却速度を向上させ、溶融金属22を急冷させることが好ましいと考えられており、溶融金属22とロール23との温度差を広げることで冷却速度を向上させることが好ましいと考えられていた。そのため、ロール23の温度は通常、5~30℃程度とすることが好ましいと考えられていた。しかし、本発明者らは、ロール23の温度を50~70℃と従来の単ロール法より高温にし、さらにチャンバー25内部の蒸気圧を11hPa以下とすることで、溶融金属22が均等に冷却され、得られる軟磁性合金の熱処理前の薄帯を均一な非晶質にしやすくなることを見出した。なお、チャンバー内部の蒸気圧の下限は特に存在しない。露点調整したArガスを充填して蒸気圧を1hPa以下にしてもよく、真空に近い状態として蒸気圧を1hPa以下にしてもよい。
このようにして得られた軟磁性合金は、熱処理をしてもよい。熱処理条件には特に制限はない。軟磁性合金の組成により好ましい熱処理条件は異なる。通常、好ましい熱処理温度は概ね550~600℃、好ましい熱処理時間は概ね10分~180分となる。しかし、組成によっては上記の範囲を外れたところに好ましい熱処理温度および熱処理時間が存在する場合もある。
次に、得られた軟磁性合金を粉砕して軟磁性粉末を得る粉砕工程について説明するが、粉砕工程は任意の方法にて行うことができる。
粉砕工程は、例えば、粒径が数百μm~数mm程度になるまで粉砕する粗粉砕工程と、粒径が数μm程度になるまで微粉砕する微粉砕工程との二段階で行うことができる。しかし、微粉砕工程の一段階で行ってもよい。
粗粉砕工程では、軟磁性合金を各々粒径が数百μm~数mm程度になるまで粗粉砕する。これにより、軟磁性合金の粗粉砕粉末を得る。粗粉砕は任意の方法で行うことができる。例えば、軟磁性合金に水素を吸蔵させた後、異なる相間の水素吸蔵量の相違に基づいて水素を放出させ、脱水素を行なうことで自己崩壊的な粉砕を生じさせる(水素吸蔵粉砕)ことによって行うことができる。
なお、粗粉砕工程は、上記のように水素吸蔵粉砕を用いる方法の他に、不活性ガス雰囲気中にて、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等の粗粉砕機を用いて行う方法で行ってもよい。
軟磁性合金を粗粉砕した後、得られた軟磁性合金の粗粉砕粉末を平均粒径が数μm程度になるまで微粉砕する。これにより、軟磁性粉末を得る。粗粉砕した粉末を更に微粉砕することで、平均粒径が0.5μm以上300μm以下の微粉砕粉末を得てもよい。
微粉砕工程は、粉砕時間等の条件を適宜調整しながら、ジェットミル、ビーズミル等の微粉砕機を用いて実施される。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(たとえば、N2 ガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により軟磁性合金の粗粉砕粉末を加速して軟磁性合金の粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットまたは容器壁との衝突を発生させて粉砕する乾式粉砕法である。
特に、細かい粒径の軟磁性粉末をジェットミルを用いて得ようとする場合、粉砕された粉末表面が非常に活性であるため、粉砕された軟磁性粉末同士の再凝集や、容器壁への付着が起こりやすく、収率が低くなる傾向がある。そのため、軟磁性合金の粗粉砕粉末を微粉砕する際には、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸アミド等の粉砕助剤を添加して、軟磁性粉末同士の再凝集や、容器壁への付着を防ぐことで、高い収率で軟磁性粉末を得ることができる。また、このように粉砕助剤を添加することにより、成形に使った時に配向しやすい微粉砕粉末を得ることも可能となる。粉砕助剤の添加量は、微粉砕粉末の粒径や添加する粉砕助剤の種類によっても変わるが、微粉砕粉末に対して質量%で0.1%~1%程度としてもよい。
ジェットミルのような乾式粉砕法以外の手法として、湿式粉砕法がある。湿式粉砕法としては、例えば小径のビーズを用いて高速撹拌させるビーズミルを使用できる。また、ジェットミルで乾式粉砕したのち、さらにビーズミルで湿式粉砕を行う多段粉砕を行ってもよい。
また、本実施形態に係る軟磁性粉末を得る方法として、上記した方法には限定されず、たとえば水アトマイズ法またはガスアトマイズ法により本実施形態に係る軟磁性粉末を得てもよい。
たとえば、ガスアトマイズ法では、上記した単ロール法と同様にして1200~1500℃の溶融合金を得る。その後、前記溶融合金をチャンバー内で噴射させ、粉体を作製する。このとき、ガス噴射温度を50~100℃、チャンバー内の蒸気圧を4hPa以下とすることが好ましい。
ガスアトマイズ法で粉体を作製した後は、得られた粉体をそのまま軟磁性粉末としてもよい。必要に応じて、550~600℃で10~180分、熱処理をしてもよく、上記の方法で粗粉砕および/または微粉砕を行ってもよい。
特に、本実施形態に係る軟磁性合金は、靭性にも優れるため、高圧圧粉磁心にも好適に用いることができる。
以上の方法により軟磁性粉末を得ることができる。なお、粉砕前の軟磁性合金が上記の近似直線の傾きおよび非晶質化率Xを有する場合には、粉砕後の軟磁性粉末も粉砕前の軟磁性合金と同様の近似直線の傾きおよび非晶質化率Xを有する。
以下、得られた軟磁性粉末を成形する工程について説明する。
上記の近似直線の傾きおよび非晶質化率Xを有する軟磁性粉末は、Feを含む相が比較的柔らかいため、変形しやすい。したがって、上記の近似直線の傾きおよび非晶質化率Xを有する軟磁性粉末を金型に充填した後に、加熱しながら高圧で成形する方法により、高密度かつ低保磁力な圧粉磁心を得ることができる。
まず、上記の近似直線の傾きおよび非晶質化率Xを有する軟磁性粉末を金型に充填する前に、バインダおよび添加剤を軟磁性粉末と混合する。
軟磁性粉末から磁心を得る方法としては、例えば、適宜バインダおよび添加剤と混合した後、金型を用いて成形する方法が挙げられる。また、バインダおよび添加剤と混合する前に、軟磁性粉末表面に酸化処理や絶縁被膜等を施してもよい。比抵抗が向上し、より高周波帯域に適合した軟磁性圧粉磁心を得ることができる。
バインダの種類は任意である。例えばシリコーン樹脂を用いることができる。軟磁性粉末とバインダとの混合比率は任意である。例えば軟磁性粉末100質量%に対し、1~10質量%のバインダを混合させる。
添加剤の種類は任意である。後述する成形中の加熱温度(成形温度)に応じて適切な軟化点である添加剤を用いることが好ましい。添加剤としては、例えばガラス、酸化物などを用いることができる。ガラスとしては、例えばリン酸系ガラス、ビスマス系ガラス、ホウケイ酸系ガラス、バナジン酸系ガラスなどを用いることができる。酸化物としては、例えば酸化ビスマス、酸化バナジウムなどを用いることができる。軟磁性粉末と添加剤との混合比率は任意である。例えば軟磁性粉末100質量%に対し、0.05~20質量%の添加剤を混合させる。
本実施形態に係る軟磁性圧粉磁心の製造方法では、成形時に所定の範囲内の高温および高圧で圧縮成形することが重要である。軟磁性粉末が前述の近似直線の傾きおよび非晶質化率Xを有する場合には、従来の軟磁性粉末と比較して変形し易い。そのため、前述の近似直線の傾きおよび非晶質化率Xを有する軟磁性粉末にバインダおよび添加剤を添加して高温および高圧で圧縮成形する場合には、従来の軟磁性圧粉磁心と比較して、より高密度かつ良好な磁気特性を有する軟磁性圧粉磁心を製造することができる。なお、ここでの高密度とは、具体的には相対密度0.90以上を指す。さらに好ましくは相対密度0.95以上である。また、相対密度は理論密度に対する実際の密度の割合であり、理論密度は軟磁性粉末に対してアルキメデス法を用いて算出される。
具体的には、成形温度を400℃以上700℃以下、成形圧力を400MPa以上2000MPa以下とする。成形温度が400℃未満である場合には低相対密度となる。成形温度が700℃超である場合には、高保磁力となる。また、成形圧力が400MPa未満である場合には低相対密度となる。成形圧力が2000MPa超である場合には高保磁力となる。
また、成形温度は、前述した添加剤の軟化点より10℃以上100℃以下、高い温度とすることが好ましい。言いかえれば、成形温度より10℃から100℃低い軟化点を有する添加剤を選択することが好ましい。
軟磁性粉末を成形する工程と同時に、または成形後の軟磁性圧粉磁心に対して、磁界を印加することができる。印加する磁界の大きさは任意である。
なお、本実施形態に係る軟磁性圧粉磁心は任意の形状とすることができる。例えば、図10に示すトロイダル形状とすることができる。また、軟磁性圧粉磁心の大きさにも特に制限はない。
さらに、上記の軟磁性圧粉磁心に対し、歪取りのためにさらに熱処理を行ってもよい。歪取りを行うことで、コアロスが低下し、有用性が高まる。
また、上記の軟磁性圧粉磁心に巻線を施すことでインダクタンス部品が得られる。巻線の施し方およびインダクタンス部品の製造方法には特に制限はない。例えば、上記の方法で製造した磁心に巻線を少なくとも1ターン以上巻き回す方法が挙げられる。
さらに、巻線コイルと軟磁性粉末とを金型に入れた状態で成形し一体化することでインダクタンス部品を製造してもよい。この場合には高周波かつ大電流に対応したインダクタンス部品を得やすい。
ここで、軟磁性粉末を用いてインダクタンス部品を製造する場合には、最大粒径が篩径で45μm以下、中心粒径(D50)が30μm以下の軟磁性粉末を用いることが、優れたQ特性を得る上で好ましい。最大粒径を篩径で45μm以下とするために、目開き45μmの篩を用い、篩を通過する軟磁性粉末のみを用いてもよい。
最大粒径が大きな軟磁性粉末を用いるほど高周波領域でのQ値が低下する傾向があり、特に最大粒径が篩径で45μmを超える軟磁性粉末を用いる場合には、高周波領域でのQ値が大きく低下する場合がある。ただし、高周波領域でのQ値を重視しない場合には、バラツキの大きな軟磁性粉末を使用可能である。バラツキの大きな軟磁性粉末は比較的安価で製造できるため、バラツキの大きな軟磁性粉末を用いる場合には、コストを低減することが可能である。
本実施形態に係る圧粉磁心の用途には特に制限はない。例えば、インダクタ用、特にパワーインダクタ用の磁心として好適に用いることができる。
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
(実験1)
表1に示す各試料の組成の母合金が得られるように純金属材料をそれぞれ秤量した。そして、チャンバー内で真空引きした後、高周波加熱にて溶解し母合金を作製した。
その後、作製した母合金50gを加熱して溶融させ、1300℃の溶融状態の金属とした後に、規定ロール温度および規定蒸気圧下で図5に示す単ロール法により前記金属をロールに噴射させ、薄帯を作成した。ロールの材質はCuとした。単ロール法はAr雰囲気下、ロールの回転速度25m/s、チャンバー内と噴射ノズル内との差圧105kPa、ノズル径5mmスリット、流化量50g、ロール径φ300mmとすることで得られる薄帯の厚さを20~30μm、幅を4mm~5mm、長さを数十mとした。
実験1では、ロールの温度を50℃、蒸気圧を4hPaとした上で、剥離噴射圧力(急冷能力)を変化させて下表1に示す各試料を作製した。なお、露点調整を行ったArガスを用いることで蒸気圧を調整した。
得られた薄帯形状の試料について、以下の測定を行った。結果を表1に示す。
(近似直線の傾き)
得られた薄帯おいて、1辺の長さが40nm×40nm×50nmの直方体を測定範囲とし、連続した測定範囲における1nm×1nm×1nmの80000個のグリッドのFe含有量を3DAPにより測定し、Fe含有量(原子%)をy軸とし、各グリッドのFe含有量が高い順で求めた累計頻度(%)をx軸としたときの、累計頻度20~80%における近似直線の傾きを算出した。
(非晶質化率X)
得られた薄帯に対し、XRDによりX線結晶構造解析を実施し、相の同定を行った。具体的には、結晶化したFe又は化合物のピーク(Ic:結晶性散乱積分強度、Ia:非晶性散乱積分強度)を読み取り、そのピーク強度から結晶化率を割り出し、下記式(1)により非晶質化率Xを算出した。本実施例では、薄帯の、ロール面に接していた面と、接していない面との両方を測定し、その平均値を非晶質化率Xとした。
X=100-(Ic/(Ic+Ia)×100)…(1)
Ic:結晶性散乱積分強度
Ia:非晶性散乱積分強度
次に、各薄帯を粉砕して軟磁性粉末を得た。各軟磁性合金薄帯に対して室温で1時間、水素ガスをフローさせて水素を吸蔵させた。次いで雰囲気をArガスに切り替え、400℃から600℃で1時間、脱水素処理を行い、原料合金を水素粉砕した。さらに、冷却後にふるいを用いて425μm以下の粒度の粉末とした。なお、水素粉砕から後述する成形工程までは、常に酸素濃度200ppm未満の低酸素雰囲気とした。
次いで、水素粉砕後の粉末に対し、質量比で0.1%のオレイン酸アミドを粉砕助剤として添加し、混合した。
次いで、衝突板式のジェットミル装置を用いて窒素気流中で微粉砕し、平均粒径が20~30μmである軟磁性粉末を得た。なお、前記平均粒径は、レーザ回折式の粒度分布計で測定した平均粒径D50である。
得られた軟磁性粉末とシリコーン樹脂および添加剤とを混合し、ニーダーを用いて混練した。シリコーン樹脂としては東レ製SR2414を用いた。添加剤としては軟化点550℃のホウケイ酸ガラスを用いた。また、軟磁性粉末、シリコーン樹脂および添加剤の合計を100wt%として、シリコーン樹脂の含有量は1.2wt%、添加剤の含有量は0.5wt%となるようにした。
次に、上記の混練により得られた圧粉磁心前駆体に対して金型を用いて下表1に示す成形圧力および成形温度で成形を行い、ディスク形状(寸法=直径10.0mm×厚さ4.0mm)の圧粉磁心を作製した。そして、作製した圧粉磁心の保磁力Hc、比抵抗および相対密度を測定した。結果を下表1に示す。
保磁力の測定は、圧粉磁心に対してHcメーター(東北特殊鋼株式会社製 K-Hc1000型)を用いて測定した。結果を下表1に示す。なお、保磁力は低いほど好ましく、本実施例では100kA/m以下を良好とした。
比抵抗の測定は、圧粉磁心の両面に、In-Ga電極を塗り、直流抵抗値を測定することで行った(単位:Ωm)。測定は、IRメーター(TOA Electoronics社製SUPER MEGOHMMETER MODEL SM-5E)を用いて行った。本実施例では1000Ωm以上である場合を良好とした。下表1では、比抵抗が1000Ωm以上である場合を○、1000Ωm未満である場合を×とした。
相対密度の測定は、圧粉磁心の寸法および重量から圧粉磁心の密度を算出し、理論密度に対する圧粉磁心の密度を相対密度とした。本実施例では、相対密度は0.90以上を良好とした。結果を下表1に示す。
Figure 0007035494000002
表1より、近似直線の傾き、非晶質化率X、成形圧力および成形温度が全て所定の範囲内に制御された実施例の圧粉磁心は保磁力Hc、比抵抗および相対密度が全て良好であった。これに対し、近似直線の傾き、非晶質化率X、成形圧力および成形温度のいずれかが所定の範囲内に制御されていない比較例は保磁力Hc、比抵抗および/または相対密度が良好ではない結果となった。
(実験2)
実験1の試料No.9の組成を下表2に示す組成に変化させた点以外は同一の条件で試験を行った。結果を下表2に示す。
Figure 0007035494000003
表2より、近似直線の傾き、非晶質化率X、成形圧力および成形温度が全て所定の範囲内に制御された実施例の圧粉磁心は保磁力Hc、比抵抗および相対密度が全て良好であった。
(実験3)
実験1における軟磁性合金の組成を変化させ、添加剤を変化させ、剥離噴射圧力を0.3MPaとした点以外は同一の条件で試験を行った。リン酸系ガラスは軟化点350℃のものを用いた。ビスマス系ガラスは軟化点480℃のものを用いた。さらに、σBの測定およびσM1またはσM2の測定を行った。結果を下表3および下表4に示す。
(σB)
得られた薄帯において、1辺の長さが40nm×40nm×50nmの直方体を測定範囲とし、連続した測定範囲における1nm×1nm×1nmの80000個のグリッドのFe含有量について累計頻度(%)を算出し、その累計頻度(%)が95%以上のグリッドにおけるB含有量を測定して、σBを算出した。Fe含有量およびB含有量は3DAPにより測定した。
(σM1またはσM2)
得られた薄帯において、1辺の長さが40nm×40nm×50nmの直方体を測定範囲とし、連続した測定範囲における1nm×1nm×1nmの80000個のグリッドのFe含有量について累計頻度(%)を算出し、その累計頻度(%)が95%以上のグリッドにおけるM1またはM2の含有量を測定して、σM1またはσM2を算出した。Fe含有量およびM1またはM2の含有量は3DAPにより測定した。
Figure 0007035494000004
Figure 0007035494000005
表3および表4より、近似直線の傾き、非晶質化率X、成形圧力および成形温度が全て所定の範囲内に制御された実施例の圧粉磁心は保磁力Hc、比抵抗および相対密度が全て良好であった。
(実験4)
下表5に示す組成の母合金が得られるように純金属材料をそれぞれ秤量した。そして、チャンバー内で真空引きした後、高周波加熱にて溶解し母合金を作製した。
その後、作製した母合金を加熱して溶融させ、1300℃の溶融状態の金属としたのちガスアトマイズ法により前記金属を噴射させ、粉体を作成した。ガス噴射温度を100℃とし、チャンバー内の蒸気圧を4hPaとした。蒸気圧調整は露点調整をおこなったArガスを用いることで行った。そして、当該粉体について近似曲線の傾き、非晶質化率X、σBおよびσM1またはσM2を測定した。
そして、得られた各粉体(軟磁性粉末)とシリコーン樹脂および添加剤とを混合した後は実験3と同様件で成形し、保磁力Hc、比抵抗および相対密度を測定した。なお、添加剤の種類、成形圧力および成形温度は下表5に記載した。
Figure 0007035494000006
表5より、近似直線の傾き、非晶質化率X、成形圧力および成形温度が全て所定の範囲内に制御された実施例の圧粉磁心は保磁力Hc、比抵抗および相対密度が全て良好であった。
11… 軟磁性合金
12… 測定範囲
13… グリッド
21… ノズル
22… 溶融金属
23… ロール
24… 薄帯
25… チャンバー
26… 剥離ガス噴射装置

Claims (7)

  1. 軟磁性合金からなる軟磁性粉末を得る工程および前記軟磁性粉末を成形する工程を有する軟磁性圧粉磁心の製造方法であって、
    前記軟磁性粉末の中心粒径(D50)が30μm以下であり、
    前記軟磁性粉末を成形する工程における成形温度が400℃以上700℃以下、成形圧力が400MPa以上2000MPa以下であり、
    前記軟磁性合金はFeを主成分とし、
    前記軟磁性合金の連続した測定範囲における1nm×1nm×1nmの80000個以上のグリッドのFe含有量(原子%)をy軸とし、各グリッドのFe含有量が高い順で求めた累計頻度(%)をx軸とした場合に、累計頻度20~80%における近似直線の傾き-0.1~-0.4を有し、
    下記式(1)に示す非晶質化率Xが85%以上の非晶質である軟磁性圧粉磁心の製造方法。
    X=100-(Ic/(Ic+Ia)×100)…(1)
    Ic:結晶性散乱積分強度
    Ia:非晶性散乱積分強度
  2. 前記近似直線の傾きが-0.1~-0.2を有し、
    前記式(1)に示す非晶質化率Xが95%以上である請求項1に記載の軟磁性圧粉磁心の製造方法。
  3. 前記軟磁性合金がCを有し、
    前記軟磁性合金におけるCの含有量が0.1~7.0原子%である請求項1または2に記載の軟磁性圧粉磁心の製造方法。
  4. 前記軟磁性合金がBを有し、
    Fe含有量についての累計頻度95%以上のグリッドにおけるB含有量のバラツキσBが2.8以上である請求項1~3のいずれかに記載の軟磁性圧粉磁心の製造方法。
  5. 前記軟磁性合金がFe-Si-M1-B-Cu-C系の軟磁性合金であり、
    M1がNb,Ti,Zr,Hf,V,Ta,MoおよびPからなる群から選択される1種以上であり、
    Fe含有量についての累計頻度95%以上のグリッドにおけるM1含有量のバラツキσM1が2.8以上である請求項1~4のいずれかに記載の軟磁性圧粉磁心の製造方法。
  6. 前記軟磁性合金がFe-M2-B-C系の軟磁性合金であり、
    M2がNb,Cu,ZrおよびHfからなる群から選択される1種以上であり、
    Fe含有量についての累計頻度95%以上のグリッドにおけるM2含有量のバラツキσM2が2.8以上である請求項1~4のいずれかに記載の軟磁性圧粉磁心の製造方法。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の製造方法によって得られる軟磁性圧粉磁心であって、相対密度が0.90以上であることを特徴とする軟磁性圧粉磁心。
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