JP7034361B1 - 座屈拘束ブレース、及び耐力構造物 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1には、降伏点の異なる2種類の鋼板を芯材に用いる座屈拘束ブレースが開示される。2種類の鋼板を異なる降伏点において降伏させることにより、異なる規模の地震動に対する地震エネルギーをより効率的に吸収する。
本発明に係る座屈拘束ブレースは、軸方向に延びる芯材と、前記芯材の前記軸方向における両端部を突出させた状態で、前記芯材の外周側を覆う拘束部材と、を備え、前記芯材は、第1の降伏点を有する第1の鋼板と、前記第1の降伏点と異なる第2の降伏点を有する第2の鋼板と、前記第1の降伏点と異なる第3の降伏点を有する第3の鋼板と、を有し、前記第2の鋼板及び前記第3の鋼板は、前記第1の鋼板を挟み込んでおり、前記第1の鋼板の前記軸方向の中央部には、前記軸方向の両端部よりも軸方向強度が低い第1の塑性化部が設けられており、前記第2の鋼板の前記軸方向の中央部には、前記軸方向の両端部よりも軸方向強度が低い第2の塑性化部が設けられており、前記第3の鋼板の前記軸方向の中央部には、前記軸方向の両端部よりも軸方向強度が低い第3の塑性化部が設けられており、前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さは、前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さと異なり、かつ前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さと異なることを特徴とする。
さらに、第2の鋼板及び第3の鋼板が、第1の鋼板を挟み込むことにより、第1の鋼板と、第2の鋼板及び第3の鋼板とが互いによって支持される。したがって、第1~第3の塑性化部の軸方向の長さを変更することによる第1~第3の塑性化部の首折れを防止することができ、座屈拘束ブレースの強度を確保することができる。
以上より、本発明に係る座屈拘束ブレースによれば、座屈拘束ブレース自体の強度は損なわないまま、地震等により軸方向変形を受けた後の座屈拘束ブレースの残留変形を低減することができる。
また、本発明に係る座屈拘束ブレースにおいて、前記芯材に前記第2の鋼板または前記第3の鋼板が塑性化する軸方向荷重が作用したときの第1の降伏点変位に対する、前記芯材に前記第1の鋼板が塑性化する軸方向荷重が作用したときの第2の降伏点変位の比である、降伏変形比が、前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さが前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さ及び前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さと同一である場合に比べて大きくなるように、前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さが、前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さよりも長くされ、かつ前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さよりも長くされていてもよい。
また、本発明に係る座屈拘束ブレースにおいて、前記芯材の前記両端部のそれぞれに設けられ、第1の接合部分において前記第1の鋼板と接合し、第2の接合部分において前記第2の鋼板と接合し、第3の接合部分において前記第3の鋼板と接合される接合部材を更に備え、前記第2の接合部分及び前記第3の接合部分は、前記第1の接合部分よりも前記軸方向の中央側に設けられてもよい。
また、本発明に係る座屈拘束ブレースにおいて、前記芯材に前記第1の鋼板が塑性化する軸方向荷重が作用したときの第1の降伏点変位に対する、前記芯材に前記第2の鋼板または前記第3の鋼板が塑性化する軸方向荷重が作用したときの第2の降伏点変位の比である、降伏変形比が、前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さが前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さ及び前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さと同一である場合に比べて大きくなるように、前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さが、前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さよりも短くされ、かつ前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さよりも短くされていてもよい。
また、本発明に係る座屈拘束ブレースにおいて、前記芯材の前記両端部のそれぞれに設けられ、第1の接合部分において前記第1の鋼板と接合し、第2の接合部分において前記第2の鋼板と接合し、第3の接合部分において前記第3の鋼板と接合される接合部材を更に備え、前記第1の接合部分は、前記第2の接合部分及び前記第3の接合部分よりも前記軸方向の中央側に設けられてもよい。
以下、本発明の第1実施形態に係る座屈拘束ブレース1について、図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る座屈拘束ブレース1を示す図である。図2は、座屈拘束ブレース1の片側の端部付近を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図、(d)は(a)のC-C断面図である。
座屈拘束ブレース1は、芯材2と、拘束部材3と、充填材4と、接合部材5と、スペーサ6と、アンボンド層7と、を備える。なお、座屈拘束ブレース1の軸線に沿う方向を、軸方向という。
高降伏点鋼板21、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23はそれぞれ、細長い平板形である。第1の低降伏点鋼板22と、第2の低降伏点鋼板23とは、同一形状を有する。
高降伏点鋼板21、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23は、互いに平行となるように配置されている。すなわち、高降伏点鋼板21の厚さ方向と、第1の低降伏点鋼板22の厚さ方向と、第2の低降伏点鋼板23の厚さ方向とは、互いに平行である。以下、高降伏点鋼板21の厚さ方向を、単に厚さ方向、または芯材2の厚さ方向とも称する。また、高降伏点鋼板21の幅方向と、第1の低降伏点鋼板22の幅方向と、第2の低降伏点鋼板23の幅方向とは、互いに平行である。以下、高降伏点鋼板21の幅方向を、単に幅方向、または芯材2の幅方向とも称する。軸方向と、厚さ方向と、幅方向とは、互いに直交する。
なお、拘束部材3は、例えば円筒形の鋼管であってもよい。
拘束部材3の端部から充填材4が漏れ出ることを防止するために、拘束部材3の両端開口は不図示の蓋により塞がれている。
なお、高降伏点鋼板21と第1の低降伏点鋼板22との間、及び高降伏点鋼板21と第2の低降伏点鋼板23との間に設けられるアンボンド層7は、省略されていてもよい。高降伏点鋼板21と第1の低降伏点鋼板22と第2の低降伏点鋼板23との間のアンボンド層7の材質及び厚さは、充填材4と、高降伏点鋼板21、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23との間のアンボンド層7と異なっていてもよい。
一対の接合プレート51は、芯材2(高降伏点鋼板21、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23)を、高降伏点鋼板21の厚さ方向と交差する方向に挟み込む。本実施形態においては、一対の接合プレート51は、芯材2を幅方向に挟み込む。接合プレート51は、芯材2(高降伏点鋼板21、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23)に対して垂直に設けられる。
接合プレート51は、芯材2の端部に、拘束部材3の内外に亘るよう設けられる。
第1の接合部分W1は、拘束部材3の内外に亘るよう設けられる。第2、第3の接合部分W2、W3は、拘束部材3の内側に設けられる。第2の接合部分W2の軸方向の位置と、第3の接合部分W3の軸方向の位置とは等しい。
なお、接合プレート51と第1の弾性部21bとの接合を容易にするため、第2、第3の弾性部22b、23bのうち、第1の接合部分W1と対向する部分には、第1の接合部分W1を露出させるための切欠きが設けられている。
耐力構造物100は、外形が矩形の枠状をなす複数のフレーム103と、フレーム103の各々のコーナー部分104に配置されたガセットプレート(取り付け部材)108と、ガセットプレート108を介してフレーム103に取り付けられた座屈拘束ブレース1と、を備える。
ガセットプレート108は、縦枠106及び横枠107に対して、例えば溶接等によって接合される。
これにより、座屈拘束ブレース1を、接合部材5を用いて、耐力構造物100に容易に組み込むことができる。
接合部材5は、高降伏点鋼板21、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23の各弾性部21b~23bと接合される。第1の塑性化部21aの軸方向の長さL1が第2、第3の塑性化部22a、23aの軸方向の長さL2、L3よりも長いため、第2の弾性部22b及び第3の弾性部23bは、第1の弾性部21bよりも軸方向の中央側に配置される。したがって、第2の接合部分W2及び第3の接合部分W3を、第1の接合部分W1よりも軸方向の中央側に設けることにより、高降伏点鋼板21、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23を、接合部材5に効率的に接合することができる。
これにより、高降伏点鋼板21、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23を、接合部材5に容易に接合することができる。
これにより、高降伏点鋼板21、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23が、一対の接合プレート51によって厚さ方向と交差する方向の両側から支持される。したがって、座屈拘束ブレース1の強度をより高めることができる。
また、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23は、高降伏点鋼板21の厚さ方向の中心を挟んで厚さ方向に対称となるように配置されている。
これにより、芯材2が厚さ方向に対称となるよう形成されるため、芯材2を、座屈を防止しつつ安定的に塑性変形させることができる。したがって、座屈拘束ブレース1の性能を高めることができる。
これにより、高降伏点鋼板21が、第1、第2の低降伏点鋼板22、23によって全面に亘って支持されるため、第1の塑性化部21aの首折れをより効果的に防止することができ、座屈拘束ブレース1の強度をより高めることができる。
スペーサ6によって、第1の低降伏点鋼板22と第2の低降伏点鋼板23との間に配置されている高降伏点鋼板21を支持することができ、高降伏点鋼板21の軸方向を除く方向への変形(面内座屈)を抑制することができる。特に、芯材2と拘束部材3との間に充填材4を充填する場合、第1の低降伏点鋼板22と第2の低降伏点鋼板23との間の隙間は、充填材4の充填が不十分となる可能性がある。スペーサ6を設けることにより、第1の低降伏点鋼板22と第2の低降伏点鋼板23との間の隙間をスペーサ6で埋めることができるので、高降伏点鋼板21の軸方向を除く方向への変形を確実に抑制することができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る座屈拘束ブレース1Aについて、図4を参照して説明する。なお、本実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図4は、座屈拘束ブレース1Aの片側の端部付近を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図、(d)は(a)のC-C断面図である。
接合部材5は、一対の接合プレート51に加えて、一対のクレビスプレート52を有する。クレビスプレート52は、高降伏点鋼板21のうち、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23から突出する部分に設けられる。
また、本実施形態に係る座屈拘束ブレース1Aは、ピン接合によりガセットプレート108に接続することができる。
次に、本発明の第3実施形態に係る座屈拘束ブレース1Bについて、図5を参照して説明する。なお、本実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図5は、座屈拘束ブレース1Bの片側の端部付近を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図、(d)は(a)のC-C断面図である。
高降伏点鋼板21は、第1の塑性化部21aが拘束部材3から突出するよう設けられる。すなわち、第1の塑性化部21aの軸方向の長さL1は、拘束部材3の軸方向の長さよりも長い。第1の弾性部21bは、拘束部材3の外側に位置する。
第1の弾性部21bには、ボルト55が挿通される複数の貫通孔が形成されている。
接合プレート53は、拘束部材3の内外に亘るよう設けられる。接合プレート53は、拘束部材3の内側から、高降伏点鋼板21の軸方向の端と同等の位置まで延びる。
接合プレート53には、ボルト55が挿通される複数の貫通孔が形成されている。
第1の弾性部21bは、拘束部材3の外側に位置するため、第1の接合部分W1は、拘束部材3の外側に設けられる。第2の接合部分W2、及び第3の接合部分W3は、拘束部材3の内外に亘るよう設けられる。
第1のスプライスプレート54aには、ボルト55が挿通される複数の貫通孔が形成されている。
第2のスプライスプレート54bには、ボルト55が挿通される複数の貫通孔が形成されている。
接合プレート109には、ボルト55が挿通される複数の貫通孔が形成されている。
また、本実施形態に係る座屈拘束ブレース1Bは、ボルト接合によりガセットプレート108に接続することができる。
これにより、第1の塑性化部21aの軸方向の長さL1を更に長くすることができるため、座屈拘束ブレース1Bの残留変形を低減させる効果をより高めることができる。
次に、本発明の第4実施形態に係る座屈拘束ブレース1Cについて、図6及び図7を参照して説明する。なお、本実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図6(a)は、座屈拘束ブレース1Cの片側の端部付近を示す正面図であり、(b)は座屈拘束ブレース1Cの高降伏点鋼板21の片側の端部付近を示す正面図である。図7は、座屈拘束ブレース1Cの片側の端部付近を示す図であり、(a)平面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図、(d)は(a)のC-C断面図、(e)は(a)のD-D断面図である。
また、図6(b)に示されるように、高降伏点鋼板21の第1の弾性部21bにスリット21cが形成される。スリット21cは、高降伏点鋼板21のうち、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23から突出する部分に形成される。スリット21cは、高降伏点鋼板21の軸方向の端から、第1の低降伏点鋼板22又は第2の低降伏点鋼板23の軸方向の端に対応する位置まで延びる。スリット21cは、第1の弾性部21bの幅方向における中央に設けられる。スリット21cには、座屈拘束ブレース1Cをガセットプレート108に取り付ける際に、ガセットプレート108が挿入される。
図7(a)に示されるように、一対のラグプレート56は、芯材2を厚さ方向に挟み込む。ラグプレート56は、芯材2(高降伏点鋼板21、第1の低降伏点鋼板22、及び第2の低降伏点鋼板23)に対して垂直に設けられる。ラグプレート56は、拘束部材3の内外に亘るよう設けられる。
ラグプレート56には、ボルト57が挿通される複数の貫通孔が形成されている。
外側部分56bは、第1の低降伏点鋼板22及び第2の低降伏点鋼板23よりも軸方向の外側に設けられる。内側部分56aの幅は、第1の低降伏点鋼板22又は第2の低降伏点鋼板23の幅の分だけ、外側部分56bの幅よりも小さい。すなわち、外側部分56bは、第1の低降伏点鋼板22又は第2の低降伏点鋼板23の幅の分だけ、内側部分56aよりも高降伏点鋼板21側に突出している。ガセットプレート108は、ラグプレート56の外側部分56bの間に挿入される。
また、本実施形態に係る座屈拘束ブレース1Cは、ボルト接合によりガセットプレート108に接続することができる。
次に、本発明の第5実施形態に係る座屈拘束ブレース1Dについて、図8を参照して説明する。なお、本実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図8は、座屈拘束ブレース1Dの片側の端部付近を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図、(d)は(a)のC-C断面図である。
すなわち、本実施形態においては、第1の鋼板が低降伏点鋼板であり、第2、第3の鋼板が高降伏点鋼板である点において、第1の実施形態と異なる。
低降伏点鋼板25、第1の高降伏点鋼板26、及び第2の高降伏点鋼板27はそれぞれ、軸方向に直線状に延びる。低降伏点鋼板25、第1の高降伏点鋼板26、及び第2の高降伏点鋼板27は、互いに平行となるように配置されている。
本実施形態において、第1の高降伏点鋼板26、及び第2の高降伏点鋼板27の軸方向の長さは、低降伏点鋼板25の軸方向の長さよりも長い。したがって、第1の高降伏点鋼板26及び第2の高降伏点鋼板27の端部は、低降伏点鋼板25より突出している。
なお、低降伏点鋼板25と第1の高降伏点鋼板26との間、及び低降伏点鋼板25と第2の高降伏点鋼板27との間に設けられるアンボンド層7は、省略されていてもよい。低降伏点鋼板25と第1の高降伏点鋼板26と第2の高降伏点鋼板27との間のアンボンド層7の材質及び厚さは、充填材4と、低降伏点鋼板25、第1の高降伏点鋼板26、及び第2の高降伏点鋼板27との間のアンボンド層7と異なっていてもよい。
一対の接合プレート51は、芯材2(低降伏点鋼板25、第1の高降伏点鋼板26、及び第2の高降伏点鋼板27)を、低降伏点鋼板25の厚さ方向と交差する方向に挟み込む。本実施形態においては、一対の接合プレート51は、芯材2を幅方向に挟み込む。接合プレート51は、芯材2(低降伏点鋼板25、第1の高降伏点鋼板26、及び第2の高降伏点鋼板27)に対して垂直に設けられる。
第2、第3の接合部分W6、W7は、拘束部材3の内外に亘るよう設けられる。第1の接合部分W5は、拘束部材3の内側に設けられる。第2の接合部分W6の軸方向の位置と、第3の接合部分W7の軸方向の位置とは等しい。
すなわち、芯材2は、降伏点の異なる2種類の鋼板(低降伏点鋼板25、高降伏点鋼板26、27)により構成されている。したがって、芯材2に作用する軸方向荷重がPy1~Py2の範囲内である変形領域においては、低降伏点鋼板25は塑性化しているが、高降伏点鋼板26、27は弾性範囲となっている。この変形領域においては、高降伏点鋼板26、27は弾性範囲にあるため、座屈拘束ブレース1D全体としての二次剛性が高く、したがって座屈拘束ブレース1Dの残留変形は低減する。第2の塑性化部26a、及び第3の塑性化部27aの軸方向の長さを長くすることにより、この変形領域が大きくなるよう調整することができる。この結果、地震等により軸方向塑性変形を受けた後の残留変形を低減させる効果を高めることができる。
さらに、第1、第2の高降伏点鋼板26、27が、低降伏点鋼板25によって支持される。したがって、第2の塑性化部26a、及び第3の塑性化部27aの軸方向の長さが長くなったとしても、第2の塑性化部26a、及び第3の塑性化部27aの首折れを防止することができ、座屈拘束ブレース1Dの強度を確保することができる。
以上より、本実施形態の座屈拘束ブレース1Dによれば、座屈拘束ブレース1D自体の強度は損なわないまま、地震等により軸方向塑性変形を受けた後の座屈拘束ブレース1Dの残留変形を低減することができる。
接合部材5は、低降伏点鋼板25、第1の高降伏点鋼板26、及び第2の高降伏点鋼板27の各弾性部25b~27bと接合される。第2、第3の塑性化部26a、27aの軸方向の長さが第1の塑性化部25aの軸方向の長さよりも長いため、第1の弾性部25bは、第2の弾性部26b及び第3の弾性部27bよりも軸方向の中央側に配置される。したがって、第1の接合部分W5を、第2の接合部分W6及び第3の接合部分W7よりも軸方向の中央側に設けることにより、低降伏点鋼板25、第1の高降伏点鋼板26、及び第2の高降伏点鋼板27を、接合部材5に効率的に接合することができる。
次に、本発明の第6実施形態に係る座屈拘束ブレース1Eについて、図9を参照して説明する。なお、本実施形態においては、第5実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図9は、座屈拘束ブレース1Eの片側の端部付近を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のA-A断面図、(c)は(a)のB-B断面図、(d)は(a)のC-C断面図である。
一対のクレビスプレート58の一方は、第1の高降伏点鋼板26のうち、低降伏点鋼板25から突出する部分に配置され、一対のクレビスプレート58の他方は、第2の高降伏点鋼板27のうち、低降伏点鋼板25から突出する部分に配置される。一対のクレビスプレート58は、芯材2(第1の高降伏点鋼板26及び第2の高降伏点鋼板27)を厚さ方向に挟み込む。クレビスプレート58は、第1の高降伏点鋼板26及び第2の高降伏点鋼板27と平行となるように配置されている。クレビスプレート58は、接合プレート51に対して垂直に配置されている。
また、本実施形態に係る座屈拘束ブレース1Eは、ピン接合によりガセットプレート108に接続することができる。
2 芯材
3 拘束部材
5 接合部材
6 スペーサ
21 高降伏点鋼板(第1の鋼板)
21a 第1の塑性化部
22 第1の低降伏点鋼板(第2の鋼板)
22a 第2の塑性化部
23 第2の低降伏点鋼板(第3の鋼板)
23a 第3の塑性化部
25 低降伏点鋼板(第1の鋼板)
25a 第1の塑性化部
26 第1の高降伏点鋼板(第2の鋼板)
26a 第2の塑性化部
27 第2の高降伏点鋼板(第3の鋼板)
27a 第3の塑性化部
51 接合プレート
100 耐力構造物
103 フレーム
108 ガセットプレート
W1 第1の接合部分
W2 第2の接合部分
W3 第3の接合部分
W5 第1の接合部分
W6 第2の接合部分
W7 第3の接合部分
Claims (18)
- 軸方向に延びる芯材と、
前記芯材の前記軸方向における両端部を突出させた状態で、前記芯材の外周側を覆う拘束部材と、
を備え、
前記芯材は、第1の降伏点を有する第1の鋼板と、前記第1の降伏点と異なる第2の降伏点を有する第2の鋼板と、前記第1の降伏点と異なる第3の降伏点を有する第3の鋼板と、を有し、前記第2の鋼板及び前記第3の鋼板は、前記第1の鋼板を挟み込んでおり、
前記第1の鋼板の前記軸方向の中央部には、前記軸方向の両端部よりも軸方向強度が低い第1の塑性化部が設けられており、
前記第2の鋼板の前記軸方向の中央部には、前記軸方向の両端部よりも軸方向強度が低い第2の塑性化部が設けられており、
前記第3の鋼板の前記軸方向の中央部には、前記軸方向の両端部よりも軸方向強度が低い第3の塑性化部が設けられており、
前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さは、前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さと異なり、かつ前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さと異なることを特徴とする座屈拘束ブレース。 - 前記第1の降伏点は、前記第2の降伏点よりも高く、かつ前記第3の降伏点よりも高く、
前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さは、前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さよりも長く、かつ前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の座屈拘束ブレース。 - 前記芯材に前記第2の鋼板または前記第3の鋼板が塑性化する軸方向荷重が作用したときの第1の降伏点変位に対する、前記芯材に前記第1の鋼板が塑性化する軸方向荷重が作用したときの第2の降伏点変位の比である、降伏変形比が、前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さが前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さ及び前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さと同一である場合に比べて大きくなるように、前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さが、前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さよりも長くされ、かつ前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さよりも長くされている、ことを特徴とする請求項2に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記第1の鋼板は、前記第1の塑性化部が前記拘束部材から突出するよう設けられることを特徴とする請求項2または3に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記第1の降伏点は、前記第2の降伏点よりも低く、かつ前記第3の降伏点よりも低く、
前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さは、前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さよりも短く、かつ前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の座屈拘束ブレース。 - 前記芯材に前記第1の鋼板が塑性化する軸方向荷重が作用したときの第1の降伏点変位に対する、前記芯材に前記第2の鋼板または前記第3の鋼板が塑性化する軸方向荷重が作用したときの第2の降伏点変位の比である、降伏変形比が、前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さが前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さ及び前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さと同一である場合に比べて大きくなるように、前記第1の塑性化部の前記軸方向の長さが、前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さよりも短くされ、かつ前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さよりも短くされている、ことを特徴とする請求項5に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記第2の鋼板は、前記第2の塑性化部が前記拘束部材から突出するよう設けられ、前記第3の鋼板は、前記第3の塑性化部が前記拘束部材から突出するよう設けられることを特徴とする請求項5または6に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記第1の塑性化部の幅は、前記第1の鋼板の前記軸方向の両端部の幅よりも狭く、前記第2の塑性化部の幅は、前記第2の鋼板の前記軸方向の両端部の幅よりも狭く、前記第3の塑性化部の幅は、前記第3の鋼板の前記軸方向の両端部の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記芯材の前記両端部のそれぞれに設けられ、第1の接合部分において前記第1の鋼板と接合し、第2の接合部分において前記第2の鋼板と接合し、第3の接合部分において前記第3の鋼板と接合される接合部材を更に備えることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記芯材の前記両端部のそれぞれに設けられ、第1の接合部分において前記第1の鋼板と接合し、第2の接合部分において前記第2の鋼板と接合し、第3の接合部分において前記第3の鋼板と接合される接合部材を更に備え、
前記第2の接合部分及び前記第3の接合部分は、前記第1の接合部分よりも前記軸方向の中央側に設けられることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。 - 前記芯材の前記両端部のそれぞれに設けられ、第1の接合部分において前記第1の鋼板と接合し、第2の接合部分において前記第2の鋼板と接合し、第3の接合部分において前記第3の鋼板と接合される接合部材を更に備え、
前記第1の接合部分は、前記第2の接合部分及び前記第3の接合部分よりも前記軸方向の中央側に設けられることを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。 - 前記第1の接合部分は、前記第2の接合部分と前記軸方向に重ならないよう設けられ、かつ前記第3の接合部分と前記軸方向に重ならないよう設けられることを特徴とする請求項9~11のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記接合部材は、前記第1の鋼板、前記第2の鋼板、及び前記第3の鋼板を、前記第1の鋼板の厚さ方向と交差する方向に挟み込む一対の接合プレートを有することを特徴とする請求項9~12のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記第2の降伏点は、前記第3の降伏点と等しく、
前記第2の塑性化部の前記軸方向の長さは、前記第3の塑性化部の前記軸方向の長さと等しいことを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。 - 前記第2の鋼板及び前記第3の鋼板は、前記第1の鋼板の厚さ方向の中心を挟んで前記厚さ方向に対称となるように配置されていることを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記第1の鋼板、前記第2の鋼板、及び前記第3の鋼板は、互いに平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
- 前記第2の鋼板と前記第3の鋼板との間に設けられるスペーサをさらに備えることを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
- フレームと、
前記フレームから内側に張り出す複数のガセットプレートと、
前記複数のガセットプレートの間に架け渡され、前記芯材の前記両端部が、溶接、ピン接合、またはボルト接合により前記複数のガセットプレートに接続される請求項1~17のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレースと、
を備えることを特徴とする耐力構造物。
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