[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態を図1~図9に基づいて説明する。第1実施形態のディスクブレーキ10は、自動二輪車の前輪制動用の対向ピストン型のディスクブレーキである。なお、本発明は、これに限らず、例えば自動二輪車の後輪制動用や四輪自動車の制動用のディスクブレーキにも勿論適用可能である。
このディスクブレーキ10は、図1~図5に示すように、制動対象となる車輪とともに回転するディスクロータ11と、車体側に取り付けられてこのディスクロータ11に摩擦抵抗を付与するキャリパ12とを備えている。なお、以下においては、ディスクロータ11の径方向をディスク径方向と称し、ディスクロータ11の中心軸線をディスク軸線と称し、ディスク軸線の延在方向をディスク軸方向と称し、ディスクロータ11の回転方向(円周方向)をディスク回転方向と称す。また、ディスク径方向におけるディスクロータ11の中心側をディスク径方向の内側、ディスク径方向におけるディスクロータ11の中心とは反対側をディスク径方向の外側と称す。
キャリパ12は、図1~図3に示すようにディスクロータ11の外周側を跨いで配置されて車体側に固定されるキャリパ本体15(係止部材)と、図2~図4に示すようにキャリパ本体15に収容される一対の同形状のピストン16(押圧部材)と、キャリパ本体15に収容される、ピストン16より小径の一対の同形状のピストン17(押圧部材)とを有している。第1実施形態においては、ディスクロータ11のディスク軸線とキャリパ本体15のディスク回転方向の中央とを通ってディスク径方向に沿う線を第1径方向基準線と称し、この第1径方向基準線の延在方向を第1基準線方向と称す。第1径方向基準線はディスク軸線に直交する。
キャリパ12には、共通部品である一対のピストン16がディスク径方向およびディスク回転方向の位置を合わせてディスクロータ11に対しディスク軸方向の両側に対をなして設けられている。また、共通部品である一対のピストン17がディスク径方向およびディスク回転方向の位置を合わせてディスクロータ11に対しディスク軸方向の両側に対をなして設けられている。言い換えれば、ディスクロータ11のディスク軸方向の片側において一つのピストン16と一つのピストン17とがディスク回転方向に所定の間隔をあけて並んで設けられ、このような構成がディスク軸方向の両側に設けられている。よって、キャリパ12は、対向ピストン型の4ポットキャリパとなっている。なお、ピストンは、少なくともディスクロータ11を挟んで一対あればよく、上記の二対以外にも三対あるいは四対としても良い。さらには、一つと二つ、二つと三つというように、ディスクロータ11のディスク軸方向の両側でピストンの数を異ならせてもよい。
キャリパ本体15は、図1に示すように、ディスク軸方向におけるディスクロータ11のアウタ側(ディスクロータ11に対して車輪とは反対側)に配置されるシリンダ部21と、ディスクロータ11のインナ側(ディスクロータ11に対して車輪側)に配置されるシリンダ部22と、を有している。また、キャリパ本体15は、シリンダ部21およびシリンダ部22のディスク回転方向の一端部同士を連結する端側連結部23(連結部)と、シリンダ部21およびシリンダ部22のディスク回転方向の他端部同士を連結する端側連結部24(連結部)と、シリンダ部21およびシリンダ部22のディスク回転方向の中間部同士を連結する中間連結部25と、を有している。端側連結部23、端側連結部24および中間連結部25は、いずれもディスクロータ11をディスク径方向外側で跨ぐように配置されている。言い換えれば、キャリパ本体15は、一対のシリンダ部21,22のディスク回転方向における端部においてディスクロータ11を跨いで一対のシリンダ部21,22を連結する一対の端側連結部23,24を有している。
キャリパ本体15は、シリンダ部21、シリンダ部22、端側連結部23、端側連結部24および中間連結部25を一体物の鋳物で形成したモノブロックキャリパとなっている。よって、シリンダ部21およびシリンダ部22は、端側連結部23、端側連結部24および中間連結部25を介して一体に形成されている。
アウタ側のシリンダ部21は、図4に示すように、ディスクロータ11のアウタ側の面に対向して配置される。アウタ側のシリンダ部21は、ディスク回転方向の一端である端側連結部23側に配置された取付ボス部34と、ディスク回転方向の他端である端側連結部24側に配置された取付ボス部35と、を有している。
シリンダ部21は、複数のピストン16,17をディスク回転方向に並べて収容するためディスク回転方向に沿って長い形状をなしている。シリンダ部21には、図2に示すように、ピストン16,17をディスク軸方向に移動可能となるように収容する二カ所のシリンダボア38,39がディスク回転方向に並んで形成されている。シリンダボア38,39は、大径のピストン16を収容する大径のシリンダボア38がディスク回転方向の端側連結部23側に配置されている。また、シリンダボア38,39は、小径のピストン17を収容する小径のシリンダボア39がディスク回転方向の端側連結部24側に配置されている。シリンダボア38,39は、ディスク軸方向においてディスクロータ11側に開口している。
図1に示すように、シリンダ部21のディスク回転方向の中央位置には、シリンダボア38,39にブレーキ液を給排するための給排口41が形成されている。給排口41は、第1径方向基準線に対し平行に形成されている。
取付ボス部34にはマウント穴44が、取付ボス部35にはマウント穴45が、いずれもディスク径方向に貫通して形成されている。これらマウント穴44,45は、第1径方向基準線に平行をなしている。これらマウント穴44,45は、キャリパ本体15のディスク回転方向の中心から等距離の位置に、互いにディスク軸方向の位置を合わせて形成されている。キャリパ12は、これらのマウント穴44,45に挿通される図示略の取付ボルトで車両の車体側に固定される、いわゆるラジアルマウントタイプとなっている。
端側連結部23には、エア抜き用のブリーダプラグ48が取り付けられるブリーダボス部49が形成されている。キャリパ本体15は、このブリーダボス部49が形成された端側連結部23が鉛直方向上側に配置された状態で、ディスクロータ11の車両前後方向後側に配置されることになる。よって、車両の前進走行時には、キャリパ本体15に対してディスクロータ11が鉛直方向の下から上へと移動する。キャリパ本体15において、ブリーダボス部49が配置される一方の端側連結部23はディスクロータ11の車両前進時の回転方向Rの出口側である前進時ディスク回出側に配置される。キャリパ本体15において、他方の端側連結部24はディスクロータ11の車両前進時の回転方向Rの入口側である前進時ディスク回入側に配置される。
インナ側のシリンダ部22は、図4に示すように、ディスクロータ11のインナ側の面に対向して配置される。インナ側のシリンダ部22は、図3に示すように、複数のピストン16,17をディスク回転方向に並べて収容するためディスク回転方向に沿って長い形状をなしている。シリンダ部22には、ピストン16,17をディスク軸方向に移動可能となるように収容する二カ所のシリンダボア58,59がディスク回転方向に並んで形成されている。シリンダボア58,59は、大径のピストン16を収容する大径のシリンダボア58がディスク回転方向の端側連結部23側に配置されている。シリンダボア58,59は、小径のピストン17を収容する小径のシリンダボア59がディスク回転方向の端側連結部24側に配置されている。シリンダボア58,59は、ディスク軸方向のディスクロータ11側に開口している。図1に示すアウタ側のシリンダ部21の給排口41は、図2に示すシリンダ部21のシリンダボア38,39にブレーキ液を給排する。給排口41は、加えて、図3に示すシリンダ部22のシリンダボア58,59に対してもブレーキ液を給排する。
キャリパ本体15は、図1,図2に示すシリンダ部21と、図1,図3に示すシリンダ部22とが、互いにディスク回転方向およびディスク径方向の位置を重ね合わせてディスク軸方向に対向して配置されている。シリンダボア58はシリンダボア38と同軸に形成され、シリンダボア59はシリンダボア39と同軸に形成されている。
図1に示すように、端側連結部23は、そのディスク回転方向の端側連結部24側にパッド支持部32Aおよびパッド支持部33Bを有している。パッド支持部32Aはディスクロータ11のアウタ側に、パッド支持部33Bはディスクロータ11のインナ側に配置されている。端側連結部24は、そのディスク回転方向の端側連結部23側にパッド支持部32Bおよびパッド支持部33Aを有している。パッド支持部33Aはディスクロータ11のアウタ側に、パッド支持部32Bはディスクロータ11のインナ側に配置されている。よって、端側連結部23は、パッド支持部32A,33Bをディスク軸方向におけるディスクロータ11の両側に有している。端側連結部24は、パッド支持部32B,33Aをディスク軸方向におけるディスクロータ11の両側に有している。言い換えれば、端側連結部23,24に、パッド支持部32A,33B,32B,33Aが設けられている。キャリパ本体15において、パッド支持部32A,33Bは前進時ディスク回出側に配置されている。キャリパ本体15において、パッド支持部32B,33Aは前進時ディスク回入側に配置されている。
図1,図4に示すパッド支持部32Aとパッド支持部33Bとは、ディスク回転方向およびディスク径方向の位置を重ね合わせてディスク軸方向に対向している。また、パッド支持部33Aとパッド支持部32Bとがディスク回転方向およびディスク径方向の位置を重ね合わせてディスク軸方向に対向している。図4に示すように、パッド支持部32Aおよびパッド支持部33Aと、パッド支持部32Bおよびパッド支持部33Bとの間に、ディスクロータ11が配置されている。一対の端側連結部23,24は、一対のシリンダ部21,22のディスク回転方向における端部においてディスクロータ11を跨いで一対のシリンダ部21,22を連結している。
キャリパ本体15には、シリンダ部21,22およびパッド支持部32A,32B,33A,33Bで囲まれて、略中央にディスク径方向両側に開口するパッド配置空間61が形成されている。パッド配置空間61は、ディスク径方向内側には全体が開口している。図1に示すように、中間連結部25は、キャリパ本体15のディスク回転方向の中央位置に設けられている。中間連結部25は、パッド配置空間61をそのディスク径方向外側においてディスク軸方向に跨いで設けられている。よって、パッド配置空間61のディスク径方向外側は、ディスク回転方向一側のパッド支持部32A,33Bおよび中間連結部25の間部分と、ディスク回転方向逆側のパッド支持部33A,32Bおよび中間連結部25の間部分とが開口している。図2,図3に示すシリンダボア38,39,58,59は、図4に示すパッド配置空間61に開口している。ディスクロータ11は、パッド配置空間61のディスク軸方向の中央位置をディスク回転方向に横断している。
ここで、キャリパ本体15は、図1に示すシリンダ部21、シリンダ部22、端側連結部23、端側連結部24および中間連結部25が、図3に示すシリンダ部22のシリンダボア58,59の底部を除いて鋳造により一体成形されている。そして、シリンダ部22のこれら二カ所のシリンダボア58,59の底部の鋳造された開口部を介してシリンダボア38,39,58,59の内面が切削加工される。この後、シリンダ部22のシリンダボア58,59の底部の開口部に別体の閉塞部材を摩擦攪拌接合で接合させて開口部を閉塞して底部を形成することにより、キャリパ本体15が形成される。なお、シリンダ部21、シリンダ部22、端側連結部23、端側連結部24および中間連結部25の全体を、鋳造により一体成形し、シリンダ部21,22の間のパッド配置空間61からシリンダボア38,39,58,59の内面を切削加工しても良い。
図5,図6に示すように、前進時ディスク回出側の端側連結部23のアウタ側のパッド支持部32Aには、パッド配置空間61側に向くトルク受面71Aと、ディスクロータ11側に向くロータ対向面72Aと、ディスク径方向外側に向く平面部73Aとが形成されている。トルク受面71Aは、第1径方向基準線に平行に広がる平坦面である。トルク受面71Aは、ディスク軸線にも平行に広がっている。ロータ対向面72Aは、ディスク軸線に対し垂直に広がっている。平面部73Aは、ディスク軸線に平行に広がる平坦面である。平面部73Aは、図7にも示すように、第1基準線方向においてディスク径方向外側ほど第1径方向基準線から離れるように傾斜している。平面部73Aは、ディスク径方向外側ほど、キャリパ12のロータ回転方向における中心から離れる方向に傾斜している。図5,図6に示すように、平面部73Aとトルク受面71Aとは鈍角をなしている。平面部73Aとトルク受面71Aとは鈍角に限らず鋭角をなしていても良い。
図5,図8に示すように、前進時ディスク回入側の端側連結部24のアウタ側のパッド支持部33Aには、パッド配置空間61側に向くトルク受面81Aと、ディスクロータ11側に向くロータ対向面82Aと、ディスク径方向外側に向く平面部83Aとが形成されている。トルク受面81Aは、第1径方向基準線に平行に広がる平坦面である。トルク受面81Aは、ディスク軸線にも平行に広がっている。ロータ対向面82Aは、ディスク軸線に対し垂直に広がっている。ロータ対向面82Aは、図4に示すように、ロータ対向面72Aと同一平面に配置されている。図5,図8に示すように、平面部83Aは、ディスク軸線に平行に広がる平坦面である。平面部83Aは、図5に示すように、第1基準線方向において、ディスク径方向外側ほど第1径方向基準線から離れるように傾斜している。平面部83Aは、ディスク径方向外側ほど、キャリパ12のロータ回転方向における中心から離れる方向に傾斜している。平面部83Aとトルク受面81Aとは鈍角をなしている。平面部83Aとトルク受面81Aとのなす角は、平面部73Aとトルク受面71Aとのなす角と同等の角度となっている。平面部83Aとトルク受面81Aとは鈍角に限らず鋭角をなしていても良い。平面部73Aとトルク受面71Aとの境界位置と、平面部83Aとトルク受面81Aとの境界位置とを結ぶ線は、トルク受面71Aとトルク受面81Aとを、これらに直交して結ぶ線と平行になっている。よって、平面部73Aとトルク受面71Aとの境界位置と、平面部83Aとトルク受面81Aとの境界位置とは、ディスク径方向における位置を合わせている。言い換えれば、平面部73Aのディスク径方向における内端位置と、平面部83Aのディスク径方向における内端位置とは、ディスク径方向における位置を合わせている。さらに言い換えれば、平面部73Aのディスク径方向における内端位置とディスクロータ11の中心軸線とを結ぶ線の長さは、平面部83Aのディスク径方向における内端位置とディスクロータ11の中心軸線とを結ぶ線の長さと同等になっている。
図4に示すように、前進時ディスク回出側の端側連結部23のインナ側のパッド支持部33Bには、パッド配置空間61側に向くトルク受面81Bと、ディスクロータ11側に向くロータ対向面82Bとが形成されている。パッド支持部33Bには、図1に示すように、ディスク径方向外側に向く平面部83Bが形成されている。図4に示すトルク受面81Bは、第1径方向基準線に平行に広がる平坦面である。トルク受面81Bは、ディスク軸線にも平行に広がっている。トルク受面81Bはトルク受面71Aと同一平面に配置されている。ロータ対向面82Bは、ディスク軸線に対し垂直に広がっている。図1に示す平面部83Bは、ディスク軸線に平行に広がる平坦面である。平面部83Bは、図7にも示すように、第1基準線方向においてディスク径方向外側ほど第1径方向基準線から離れるように傾斜している。平面部83Bは、ディスク径方向外側ほど、キャリパ12のロータ回転方向における中心から離れる方向に傾斜している。平面部83Bは、平面部73Aと同一平面に配置されている。平面部83Bと図4に示すトルク受面81Bとは鈍角をなしている。平面部83Bとトルク受面81Bとのなす角は、平面部73Aとトルク受面71Aとのなす角と同等の角度となっている。平面部83Bとトルク受面81Bとは鈍角に限らず鋭角をなしていても良い。トルク受面71Aとトルク受面81Aとは平行である。トルク受面71Bとトルク受面81Bとは平行である。トルク受面71Aとトルク受面81Aとの距離は、トルク受面71Bとトルク受面81Bとの距離と同等である。
図4に示すように、前進時ディスク回入側の端側連結部24のインナ側のパッド支持部32Bには、パッド配置空間61側に向くトルク受面71Bと、ディスクロータ11側に向くロータ対向面72Bとが形成されている。パッド支持部32Bには、図1,図8に示すように、ディスク径方向外側に向く平面部73Bが形成されている。図4に示すトルク受面71Bは、第1径方向基準線に平行に広がる平坦面である。トルク受面71Bは、ディスク軸線にも平行に広がっている。トルク受面71Bはトルク受面81Aと同一平面に配置されている。ロータ対向面72Bは、ディスク軸線に対し垂直に広がっている。ロータ対向面72Bは、ロータ対向面82Bと同一平面に配置されている。図1,図8に示す平面部73Bは、ディスク軸線に平行に広がる平坦面である。平面部73Bは、第1基準線方向においてディスク径方向外側ほど第1径方向基準線から離れるように傾斜している。平面部73Bは、ディスク径方向外側ほど、キャリパ12のロータ回転方向における中心から離れる方向に傾斜している。平面部73Bは、平面部83Aと同一平面に配置されている。平面部73Bとトルク受面71Bとは鈍角をなしている。平面部73Bとトルク受面71Bとのなす角は、平面部73Aとトルク受面71Aとのなす角と同等の角度となっている。平面部73Bとトルク受面71Bとは鈍角に限らず鋭角をなしていても良い。平面部73Bとトルク受面71Bとの境界位置と、平面部83Bとトルク受面81Bとの境界位置とを結ぶ線は、トルク受面71Bとトルク受面81Bとを、これらに直交して結ぶ線と平行になっている。よって、平面部73Bとトルク受面71Bとの境界位置と、平面部83Bとトルク受面81Bとの境界位置とは、ディスク径方向における位置を合わせている。これらの境界位置は、平面部73Aとトルク受面71Aとの境界位置と、平面部83Aとトルク受面81Aとの境界位置とに対しても、ディスク径方向における位置を合わせている。言い換えれば、平面部73Bのディスク径方向における内端位置と、平面部83Bのディスク径方向における内端位置とは、ディスク径方向における位置を合わせている。さらに言い換えれば、平面部73Bのディスク径方向における内端位置とディスクロータ11の中心軸線とを結ぶ線の長さは、平面部83Bのディスク径方向における内端位置とディスクロータ11の中心軸線とを結ぶ線の長さと同等になっている。これらの内端位置は、平面部73Aのディスク径方向における内端位置と、平面部83Aのディスク径方向における内端位置とに対しても、ディスク径方向における位置を合わせている。
図1に示すように、中間連結部25には、前進時ディスク回出側と前進時ディスク回入側とに、ディスク軸方向の幅が異なる係合凹部91と係合凹部92とが形成されている。前進時ディスク回出側の係合凹部91は、中間連結部25の前進時ディスク回出側の壁面から前進時ディスク回入側に向かって凹んでいる。前進時ディスク回入側の係合凹部92は、中間連結部25の前進時ディスク回入側の壁面から前進時ディスク回出側に向かって凹んでいる。前進時ディスク回出側の係合凹部91は、ディスク軸方向の幅が前進時ディスク回入側の係合凹部92よりも広くなっている。
キャリパ本体15には、パッドスプリング101が、中間連結部25の係合凹部91,92に係止されて取り付けられている。キャリパ本体15は、このパッドスプリング101に付勢される一対の同形状の摩擦パッド102および摩擦パッド102を支持している。これらの摩擦パッド102は、ディスクロータ11に対向配置されることになる。一方の摩擦パッド102がアウタ側のシリンダ部21とディスクロータ11との間に、他方の摩擦パッド102がインナ側のシリンダ部22とディスクロータ11との間に配置されている。
パッドスプリング101は、一定板厚の板材からプレス成形により打ち抜かれ折り曲げられて形成されるものである。パッドスプリング101は、図5に示す基板部111と、係合板部112と、係合板部113と、図1に示す一対の延出板部114,115と、一対の延出板部116,117とを有している。図5に示す基板部111は、中間連結部25と一対の摩擦パッド102との間に配置されて中間連結部25に当接している。係合板部112は、基板部111の前進時ディスク回出側の端縁部からディスク径方向外方に延出して中間連結部25の係合凹部91に係合している。係合板部113は、基板部111の前進時ディスク回入側の端縁部からディスク径方向外方に延出して中間連結部25の係合凹部92に係合している。これにより、係合板部112,113が中間連結部25を挟持することになる。その結果、パッドスプリング101がキャリパ本体15に取り付けられる。ここで、図1に示すように、前進時ディスク回出側の係合板部112は、前進時ディスク回入側の係合板部113よりもディスク軸方向の幅が広くなっている。係合板部112は、係合凹部91,92のうちディスク軸方向の幅が狭い係合凹部92への適正な係合が阻害されるようになっている。これにより、パッドスプリング101がディスク回転方向に反転して取り付けられる誤組み付けを規制するようになっている。
前進時ディスク回出側の一対の延出板部114,115は、基板部111の前進時ディスク回出側の端縁部から前進時ディスク回出側に延出している。アウタ側の延出板部114には、図5に示すように、前進時ディスク回出側にディスク径方向内方に突出するV字状の屈曲部118が形成されている。図1に示すインナ側の延出板部115にも、同様、前進時ディスク回出側にディスク径方向内方に突出するV字状の屈曲部119が形成されている。延出板部114,115は鏡面対称形状である。延出板部114,115は、係合板部112のディスク軸方向の両側に配置されている。
前進時ディスク回入側の一対の延出板部116,117は、基板部111の前進時ディスク回入側の端縁部から前進時ディスク回入側に延出している。図5に示すように、アウタ側の延出板部116は、前進時ディスク回入側の所定範囲が前進時ディスク回出側の所定範囲よりもディスク径方向外側に位置する段差状である。図1に示すインナ側の延出板部117も、同様の段差状をなして、延出板部116と鏡面対称形状になっている。延出板部116,117は、係合板部113のディスク軸方向の両側に配置されている。
パッドスプリング101は、アウタ側の延出板部114,116がアウタ側の摩擦パッド102に当接してこれをディスク径方向内方に押圧する。その際に、前進時ディスク回出側の延出板部114は、図5に示すように、屈曲部118においてアウタ側の摩擦パッド102に当接してこれを前進時ディスク回出側にも押圧する。パッドスプリング101は、図1に示すインナ側の延出板部115,117がインナ側の摩擦パッド102に当接してこれをディスク径方向内方に押圧する。その際に、前進時ディスク回出側の延出板部115は、屈曲部119においてインナ側の摩擦パッド102に当接してこれを前進時ディスク回出側にも押圧する。
一対の摩擦パッド102は、同形状の共通部品である。摩擦パッド102は、図5に示すように、ディスク回転方向に長い裏板121と、裏板121の厚さ方向一側の面の長手方向に離間した二カ所に貼付されるライニング材122,123とを有している。摩擦パッド102は、裏板121においてキャリパ12に支持される。摩擦パッド102は、ライニング材122,123においてディスクロータ11に接触して車両に制動力を付与する。
裏板121は、一定板厚となっている。裏板121は、ライニング材122,123が貼付される主板部130と、主板部130のディスク回転方向の両端部側であってディスク径方向外側からディスク回転方向両外側に延出する一対の延出部131および延出部132とを有している。主板部130は、ディスク回転方向に長い略長方形状をなしている。延出部131および延出部132は、主板部130の長手方向の両側であるディスク回転方向の両端部側から主板部130の長手方向に対して傾いた方向に延出している。主板部130の長手方向は、裏板121の長手方向であり、摩擦パッド102の長手方向である。よって、裏板121には、ディスク回転方向両端部側であってディスク径方向外側に、摩擦パッド102の長手方向に対して傾いた方向に延出する一対の延出部131,132が形成されている。裏板121は、主板部130の外形が鏡面対称の形状をなしている。裏板121は、延出部131と延出部132とが鏡面対称の形状をなしている。
一方の延出部131は、主板部130のディスク回転方向の一端部側であってディスク径方向外側から主板部130の長手方向に沿って主板部130から離れる方向に延出している。延出部131は、延出先端側ほど、第1基準線方向においてディスク径方向外側に位置するように傾斜している。他方の延出部132は、主板部130のディスク回転方向の他端部側であってディスク径方向外側から主板部130の長手方向に沿って主板部130から離れる方向に延出している。延出部132は、延出先端側ほど、第1基準線方向においてディスク径方向外側に位置するように傾斜している。
主板部130は、延出部131の根元位置となる長手方向一側に、主板部130の長手方向に対し垂直に広がる平坦面である側面部141を有している。主板部130は、延出部132の根元位置となる長手方向他側に、主板部130の長手方向に対し垂直に広がる平坦面である側面部142を有している。主板部130は、ディスク径方向外側に、第1径方向基準線に対し垂直に広がる平坦面である外面部143を有している。側面部141,142および外面部143は、いずれも裏板121の板厚方向に広がる平坦面である。側面部141,142は、互いに平行である。側面部141,142は、外面部143に対し垂直である。
図5,図6に示すように、延出部131は、側面部141と外面部143との間から延出している。延出部131は、裏板121を板厚方向から見て菱形の形状をなしている。延出部131は、ディスク径方向内側の面部151(対向面部)と、ディスク径方向外側かつディスク回転方向内側の面部152と、ディスク径方向外側かつディスク回転方向外側の面部153とを有している。面部151,152,153は、いずれも裏板121の板厚方向に広がる平坦面である。面部151,152,153は、ディスク軸方向に沿って広がっている。
面部151は、側面部141のディスク径方向外側の端縁部から、摩擦パッド102の長手方向および第1基準線方向に対し斜めをなして、ディスク径方向外側かつディスク回転方向外側に延出している。面部151と側面部141とは鈍角をなしている。面部151と側面部141とのなす角は、パッド支持部32Aの平面部73Aとトルク受面71Aとのなす角と同等の角度となっている。面部152は、外面部143のディスク回転方向の側面部141側の端縁部から、摩擦パッド102の長手方向および第1基準線方向に対し斜めをなして、ディスク径方向外側かつディスク回転方向外側に延出している。面部152と外面部143とは鈍角をなしている。面部152は、面部151と平行に広がっている。面部153は、面部151の側面部141とは反対側の端縁部と、面部152の外面部143とは反対側の端縁部とを繋いでいる。面部153は、外面部143と平行に広がっている。面部151と面部153とは鋭角をなしている。
図5に示すように、延出部132は、側面部142と外面部143との間から延出している。延出部132は、裏板121を板厚方向から見て菱形の形状をなしている。延出部132は、ディスク径方向内側の面部161(対向面部)と、ディスク径方向外側かつディスク回転方向内側の面部162と、ディスク径方向外側かつディスク回転方向外側の面部163とを有している。面部161,162,163は、いずれも裏板121の板厚方向に広がる平坦面である。面部161,162,163は、ディスク軸方向に沿って広がっている。
面部161は、側面部142のディスク径方向外側の端縁部から、摩擦パッド102の長手方向および第1基準線方向に対し斜めをなして、ディスク径方向外側かつディスク回転方向外側に延出している。面部161と側面部142とは鈍角をなしている。面部161と側面部142とのなす角は、面部151と側面部141とのなす角と同等の角度となっている。面部162は、外面部143のディスク回転方向の側面部142側の端縁部から、摩擦パッド102の長手方向および第1基準線方向に対し斜めをなして、ディスク径方向外側かつディスク回転方向外側に延出している。面部162と外面部143とは鈍角をなしている。面部162と外面部143とのなす角は、面部152と外面部143とのなす角と同等の角度になっている。面部162は、面部161と平行に広がっている。面部163は、面部161の側面部142とは反対側の端縁部と、面部162の外面部143とは反対側の端縁部とを繋いでいる。面部163は、外面部143と平行に広がっている。面部161と面部163とは鋭角をなしている。面部163は、面部153と同一平面に配置されている。面部161と側面部142との境界位置と、面部151と側面部141との境界位置とを結ぶ線は、側面部141と側面部142とを、これらに直交して結ぶ線と平行になっている。側面部141と側面部142との距離は、トルク受面71Aとトルク受面81Aとの距離よりも短い。面部151と面部161との最大距離は、トルク受面71Aとトルク受面81Aとの距離よりも長い。同様に、側面部141と側面部142との距離は、トルク受面71Bとトルク受面81Bとの距離よりも短い。面部151と面部161との最大距離は、トルク受面71Bとトルク受面81Bとの距離よりも長い。
摩擦パッド102は、キャリパ本体15のパッド配置空間61のアウタ側に組み付けられる際に、ライニング材122,123を裏板121に対しインナ側に配置し、延出部131,132をディスク径方向外側に配置する姿勢で、延出部131が前進時ディスク回出側のパッド支持部32Aに、延出部132が前進時ディスク回入側のパッド支持部33Aに、それぞれ支持されることになる。
その際に、このアウタ側に配置される摩擦パッド102は、前進時ディスク回出側に配置される延出部131が、面部152においてパッドスプリング101の延出板部114の屈曲部118に当接し屈曲部118でディスク径方向内側かつ前進時ディスク回出側に押圧されることになる。これにより、延出部131が、面部151においてパッド支持部32Aの平面部73Aに当接する。また、この摩擦パッド102は、前進時ディスク回入側の延出部132が、面部163においてパッドスプリング101の延出板部116に当接し延出板部116でディスク径方向内側に押圧されることになる。これにより、延出部132が、面部161においてパッド支持部33Aの平面部83Aに当接する。
このアウタ側に配置される摩擦パッド102は、パッドスプリング101の付勢力のみを受ける状態では、パッドスプリング101の付勢力で、主板部130の側面部141を、これに対向するアウタ側かつ前進時ディスク回出側のトルク受面71Aに面接触で直接当接させ、延出部131の面部151を、これに対向するアウタ側かつ前進時ディスク回出側の平面部73Aに面接触で直接当接させると共に、延出部132の面部161を、これに対向するアウタ側かつ前進時ディスク回入側の平面部83Aに面接触で直接当接させる。
この状態で、キャリパ本体15は、アウタ側のパッド支持部32Aが、アウタ側の摩擦パッド102の延出部131の延出方向に沿って広がる平面部73Aを有することになる。この状態で、このアウタ側の摩擦パッド102は、延出部131が、アウタ側のパッド支持部32Aに係止されることになる。また、この状態で、キャリパ本体15は、アウタ側のパッド支持部33Aが、アウタ側の摩擦パッド102の延出部132の延出方向に沿って広がる平面部83Aを有することになる。この状態で、このアウタ側の摩擦パッド102は、延出部132が、アウタ側のパッド支持部33Aに係止されることになる。また、この状態で、このアウタ側の摩擦パッド102は、主板部130の側面部141をトルク受面71Aに当接させるとともに、主板部130の側面部142をトルク受面81Aに対し若干の隙間をもって対向させることになる。さらに、この状態で、アウタ側の摩擦パッド102は、延出部131,132がディスクロータ11の最外周よりもディスク径方向外側に配置されることになる。また、この状態で、トルク受面71A,81Aは、摩擦パッド102の配置方向に向いている。
摩擦パッド102は、キャリパ本体15のパッド配置空間61のインナ側に組み付けられる際に、ライニング材122,123を裏板121に対しアウタ側に配置し、延出部131,132をディスク径方向外側に配置する姿勢で、図1に示すように、延出部131が前進時ディスク回入側のパッド支持部32Bに、延出部132が前進時ディスク回出側のパッド支持部33Bに、それぞれ支持されることになる。
その際に、このインナ側に配置される摩擦パッド102は、前進時ディスク回出側に配置される延出部132が、面部162においてパッドスプリング101の延出板部115の屈曲部119に当接し屈曲部119でディスク径方向内側かつ前進時ディスク回出側に押圧されることになる。これにより、延出部132が、面部161においてパッド支持部33Bの平面部83Bに当接する。また、この摩擦パッド102は、前進時ディスク回入側の延出部131が、面部153においてパッドスプリング101の延出板部117に当接し延出板部117でディスク径方向内側に押圧されることになる。これにより、延出部131が、面部151においてパッド支持部32Bの平面部73Bに当接する。
このインナ側に配置される摩擦パッド102は、パッドスプリング101の付勢力のみを受ける状態では、パッドスプリング101の付勢力で、主板部130の側面部142を、これに対向するインナ側かつ前進時ディスク回出側のトルク受面81Bに面接触で直接当接させ、延出部132の面部161を、これに対向するインナ側かつ前進時ディスク回出側の平面部83Bに面接触で直接当接させると共に、延出部131の面部151を、これに対向するインナ側かつ前進時ディスク回入側の平面部73Bに面接触で直接当接させる。
この状態で、キャリパ本体15は、インナ側のパッド支持部32Bが、インナ側の摩擦パッド102の延出部131の延出方向に沿って広がる平面部73Bを有することになる。この状態で、このインナ側の摩擦パッド102は、延出部131が、インナ側のパッド支持部32Bに係止されることになる。また、この状態で、キャリパ本体15は、インナ側のパッド支持部33Bが、インナ側の摩擦パッド102の延出部132の延出方向に沿って広がる平面部83Bを有することになる。この状態で、このインナ側の摩擦パッド102は、延出部132が、インナ側のパッド支持部33Bに係止されることになる。また、この状態で、このインナ側の摩擦パッド102は、主板部130の側面部142をトルク受面81Bに当接させるとともに、主板部130の側面部141をトルク受面71Bに対し若干の隙間をもって対向させることになる。さらに、この状態で、インナ側の摩擦パッド102は、延出部131,132がディスクロータ11の最外周よりもディスク径方向外側に配置されることになる。また、この状態で、トルク受面71B,81Bは、摩擦パッド102の配置方向に向いている。以上のようにして、一対の摩擦パッド102が、一つのキャリパ本体15に係止される。
図5に示すアウタ側の摩擦パッド102は、キャリパ本体15のアウタ側のパッド支持部32A,33Aに支持されてディスク軸方向に移動することになる。その際に、パッド支持部32A,33Aは、ディスク回転方向両側のV字配置の平面部73A,83Aでアウタ側の摩擦パッド102の延出部131,132を係止することになる。
図1に示すインナ側の摩擦パッド102は、キャリパ本体15のインナ側のパッド支持部32B,33Bで支持されてディスク軸方向に移動することになる。その際に、パッド支持部32B,33Bは、ディスク回転方向両側のV字配置の平面部73B,83Bでインナ側の摩擦パッド102の延出部131,132を係止することになる。
よって、キャリパ12は、一対の摩擦パッド102を支持するパッドピンを持たずに一対の摩擦パッド102をキャリパ本体15で直接支持する、いわゆる、パッドピンレス構造となっている。パッド支持部32A,33A,32B,33Bは、ディスクロータ11を跨いで対向して設けられる一対の摩擦パッド102を、ディスクロータ11に押圧可能に支持する。
以上のディスクブレーキ10においては、図1に示す給排口41を介して、図2,図3に示すシリンダ部21,22のシリンダボア38,39,58,59内にブレーキ液が導入されると、図4に示す二対のピストン16,16およびピストン17,17がブレーキ液の液圧によってディスクロータ11の方向に移動する。すると、アウタ側のシリンダ部21に設けられた二つのピストン16,17が、シリンダ部21とディスクロータ11との間に設けられたアウタ側の摩擦パッド102を押圧してそのライニング材122,123をディスクロータ11に押し付ける。また、インナ側のシリンダ部22に設けられた二つのピストン16,17が、シリンダ部22とディスクロータ11との間に設けられたインナ側の摩擦パッド102を押圧してそのライニング材122,123をディスクロータ11に押し付ける。これにより、車両に制動力を発生させることになる。言い換えれば、アウタ側のピストン16,17がアウタ側の摩擦パッド102をディスクロータ11へ押圧し、インナ側のピストン16,17がインナ側の摩擦パッド102をディスクロータ11へ押圧する。
このとき、一対の摩擦パッド102は、ディスク径方向内方およびディスク回転方向への移動がパッド支持部32A,33A,32B,33Bで規制されるようにキャリパ本体15に係止されて、ディスク軸方向に移動することになる。
ディスク軸方向の移動時に、図5に示すアウタ側の摩擦パッド102は、延出部131,132においてアウタ側のパッド支持部32A,33Aに係止されて移動することになる。その際に、延出部131が面部151でパッド支持部32Aの平面部73Aを摺動し、延出部132が面部161でパッド支持部33Aの平面部83Aを摺動する。ディスク軸方向の移動時に、図1に示すインナ側の摩擦パッド102は、延出部131,132においてインナ側のパッド支持部32B,33Bに支持されて移動することになる。その際に、延出部132が面部161でパッド支持部33Bの平面部83Bを摺動し、延出部131が面部151でパッド支持部32Bの平面部73Bを摺動する。このように、パッド支持部32A,33A,32B,33Bを含むキャリパ本体15は、摩擦パッド102をディスク軸方向に移動可能に係止する。
車両の前進制動時には、いずれもライニング材122,123においてディスクロータ11に接触して一対の摩擦パッド102が前進時ディスク回出側に移動する。すると、図4に示すように、アウタ側の摩擦パッド102が裏板121の側面部141において、前進時ディスク回出側であるパッド支持部32Aのトルク受面71Aに当接し、インナ側の摩擦パッド102が裏板121の側面部142において、前進時ディスク回出側であるパッド支持部33Bのトルク受面81Bに当接する。これにより、キャリパ本体15が主としてパッド支持部32A,33Bで制動トルクを受ける。
車両の後退制動時には、いずれもライニング材122,123においてディスクロータ11に接触して一対の摩擦パッド102が後退時ディスク回出側に移動する。すると、アウタ側の摩擦パッド102が裏板121の側面部142において、後退時ディスク回出側であるパッド支持部33Aのトルク受面81Aに当接し、インナ側の摩擦パッド102が裏板121の側面部141において、後退時ディスク回出側であるパッド支持部32Bのトルク受面71Bに当接する。これにより、キャリパ本体15が主としてパッド支持部32B,33Aで制動トルクを受ける。
上記した特許文献1には、摩擦パッドのディスク回転方向の両端部側であってディスク径方向外側に、その長手方向に沿って延出する延出部が形成され、この延出部をキャリパ本体で支持するディスクブレーキが記載されている。このディスクブレーキは、摩擦パッドの延出部とキャリパ本体との間に、キャリパ本体の摩耗対策のためのリテーナを介在させている。このため、リテーナを配置するためのスペースが必要であり、キャリパ本体が大型化してしまってコスト増となっている。また、リテーナの分、部品点数が多くなり、コスト増となっている。
これに対し、第1実施形態では、摩擦パッド102の裏板121のディスク回転方向の両端部側であってディスク径方向外側に、摩擦パッド102の長手方向に対して傾いた方向に延出する延出部131,132が形成されている。また、摩擦パッド102をディスク軸方向に移動可能に係止するキャリパ本体15が、アウタ側の摩擦パッド102の延出部131の延出方向に沿って広がる平面部73Aを有するパッド支持部32Aと、アウタ側の摩擦パッド102の延出部132の延出方向に沿って広がる平面部83Aを有するパッド支持部33Aと、インナ側の摩擦パッド102の延出部131の延出方向に沿って広がる平面部73Bを有するパッド支持部32Bと、インナ側の摩擦パッド102の延出部132の延出方向に沿って広がる平面部83Bを有するパッド支持部33Bと、を備えている。そして、アウタ側の摩擦パッド102の延出部131を平面部73Aに当接させてパッド支持部32Aに係止し、アウタ側の摩擦パッド102の延出部132を平面部83Aに当接させてパッド支持部33Aに係止し、インナ側の摩擦パッド102の延出部131を平面部73Bに当接させてパッド支持部32Bに係止し、インナ側の摩擦パッド102の延出部132を平面部83Bに当接させてパッド支持部33Bに係止している。
これにより、アウタ側の摩擦パッド102の延出部131,132と平面部73A,83Aとの接触長さを維持しつつ、アウタ側の摩擦パッド102の延出部131,132およびキャリパ本体15のパッド支持部32A,33Aのディスク回転方向の長さを短くすることができる。同様に、インナ側の摩擦パッド102の延出部131,132と平面部73B,83Bとの接触長さを維持しつつ、インナ側の摩擦パッド102の延出部131,132およびキャリパ本体15のパッド支持部32B,33Bのディスク回転方向の長さを短くすることができる。よって、摩擦パッド102およびキャリパ本体15をディスク回転方向に小型化することができる。したがって、特にキャリパ本体15の部品コストを低減することができる。しかも、キャリパ本体15をディスク回転方向に小型化する結果、キャリパ12全体をディスク回転方向に小型化することができる。
あるいは、アウタ側の摩擦パッド102の延出部131,132およびアウタ側のパッド支持部32A,33Aのディスク回転方向の長さを長くすることなく、アウタ側の摩擦パッド102の延出部131,132と平面部73A,83Aとの接触長さを長くすることができ、接触面積を広くすることができる。同様に、インナ側の摩擦パッド102の延出部131,132およびインナ側のパッド支持部32B,33Bのディスク回転方向の長さを長くすることなく、インナ側の摩擦パッド102の延出部131,132と平面部73B,83Bとの接触長さを長くすることができ、接触面積を広くすることができる。よって、キャリパ本体15が受ける摩擦パッド102の振動荷重を分散化することができる。したがって、摩耗対策用のリテーナを、一対の摩擦パッド102の延出部131,132とパッド支持部32A,32B,33A,33Bとの間に介在させなくても、キャリパ本体15の摩耗を抑制することができる。
すなわち、アウタ側のパッド支持部32Aの平面部73Aと、これに対向するアウタ側の摩擦パッド102の延出部131の面部151とを直接当接させ、アウタ側のパッド支持部33Aの平面部83Aとこれに対向するアウタ側の摩擦パッド102の延出部132の面部161とを直接当接させ、インナ側のパッド支持部32Bの平面部73Bと、これに対向するインナ側の摩擦パッド102の延出部131の面部151とを直接当接させ、インナ側のパッド支持部33Bの平面部83Bとこれに対向するインナ側の摩擦パッド102の延出部132の面部161とを直接当接させる構造にできる。よって、摩耗対策用のリテーナを、一対の摩擦パッド102の延出部131,132とパッド支持部32A,33A,32B,33Bとの間に介在させない構造となり、部品点数を低減することができる。したがって、部品コストおよび組み付け工数を低減することができる。加えて、リテーナの配置スペース確保が不要となり、設計の自由度が上がる。
また、キャリパ本体15が受ける摩擦パッド102の振動荷重を分散化することができるため、パッドスプリング101の荷重を大きくしなくても、キャリパ本体15の摩耗を抑制することができる。よって、パッドスプリング101の荷重が大きい場合に生じる摩擦パッド102の引き摺りを抑制することができる。
また、アウタ側およびインナ側のいずれの摩擦パッド102も延出部131,132がディスクロータ11の最外周よりもディスク径方向外側に配置されている。このため、パッド支持部32A,33A,32B,33Bの延出部131,132を支持する平面部73A,83A,73B,83Bを、ディスク径方向外側の外部に露出する面とすることが容易にできる。よって、平面部73A,83A,73B,83Bを中子なしでの鋳出しにより形成することができる。したがって、中子を用いたり、加工したりすることなく、平面部73A,83A,73B,83Bを形成することができ、製造コストを低減することができる。
また、一対の摩擦パッド102を係止するキャリパ本体15が、押圧部材としてのピストン16,17が収容され、互いに対向して配置される一対のシリンダ部21,22と、一対のシリンダ部21,22のディスク回転方向における端部においてディスクロータ11を跨いで一対のシリンダ部21,22を連結する一対の端側連結部23,24と、を有している。一方の端側連結部23に、パッド支持部32A,33Bが設けられ、他方の端側連結部24に、パッド支持部32B,33Aが設けられている。このため、キャリパ本体15をディスク回転方向に小型化する効果が高い。
なお、第1実施形態において、図9に示すように、キャリパ本体15の前進時ディスク回入側かつアウタ側のパッド支持部33Aと、前進時ディスク回入側かつインナ側のパッド支持部32Bとをディスク径方向外側においてディスク軸方向に連結しても良い。すなわち、パッド支持部33Aとパッド支持部32Bとをディスク径方向外側においてディスク軸方向に連結する支持部連結部181を形成する。この支持部連結部181は、ディスクロータ11の外周側をディスク軸方向に跨いでいる。この支持部連結部181は、トルク受面71B,81Aと同一平面に配置されてトルク受面71B,81Aをディスク径方向外側においてディスク軸方向に連続させる連結面部182と、平面部73B,83Aと同一平面に配置されて平面部73B,83Aをディスク軸方向に連続させる連結面部183とを有する。
図示は略すが、前進時ディスク回出側においても、同様に、パッド支持部32Aとパッド支持部33Bとをディスク径方向外側においてディスク軸方向に連結する支持部連結部181を形成する。この支持部連結部181は、トルク受面71A,81Bと同一平面に配置されてトルク受面71A,81Bをディスク径方向外側においてディスク軸方向に連続させる連結面部182と、平面部73A,83Bと同一平面に配置されて平面部73A,83Bをディスク軸方向に連続させる連結面部183とを有する。
言い換えれば、キャリパ本体15がアウタ側の摩擦パッド102の延出部132を係止するパッド支持部33Aの平面部83Aと、インナ側の摩擦パッド102の延出部131を係止するパッド支持部32Bの平面部73Bとが、連結面部183によってディスク軸方向に連続するようにする。図示は略すが、同様に、キャリパ本体15がアウタ側の摩擦パッド102の延出部131を係止するパッド支持部32Aの平面部73Aと、インナ側の摩擦パッド102の延出部132を係止するパッド支持部33Bの平面部83Bとが、連結面部183によってディスク軸方向に連続するようにする。
このように構成すれば、キャリパ12が車体に取り付けられる前の状態で、キャリパ12に組み付けられた状態の摩擦パッド102がキャリパ本体15から脱落してしまうことを抑制することができる。
また、パッド支持部32Bとパッド支持部33Aとが支持部連結部181で連続し、パッド支持部32Aとパッド支持部33Bとが支持部連結部181で連続することでキャリパ本体15に生じる応力集中を抑制することができ、信頼性を向上することができる。
なお、この場合、支持部連結部181が摩擦パッド102のキャリパ本体15への組み付け性を低下させる可能性がある。このため、例えば、キャリパ本体15の中間連結部25を廃止して摩擦パッド102のキャリパ本体15への組み付け性を確保するようにしても良い。
[第2実施形態]
次に、本発明に係る第2実施形態を主に図10~図12に基づいて説明する。
図10に示すように、第2実施形態のディスクブレーキ200は、ディスクロータ201と、キャリア203と、キャリパ204とを有している。また、このディスクブレーキ200は、図11,図12に示すように一対の摩擦パッド205を有している。
図10に示すように、キャリア203は、車両の非回転部に固定されるブラケット215(係止部材)を有している。ブラケット215は、主としてディスクロータ201の一面側であるアウタ側に配置されて、車両のディスクロータ201の近傍の非回転部に固定されるものである。ブラケット215は、ディスク軸方向に垂直に広がる基板部221と、基板部221の前進時ディスク回入側のディスク径方向内側に設けられたボス部222と、基板部221のディスク径方向外側かつ前進時ディスク回入側の端部からディスク径方向外側かつ前進時ディスク回入側に突出する回入側突出部223とを有している。また、ブラケット215は、基板部221の前進時ディスク回出側のディスク径方向内側から前進時ディスク回出側に突出する回出側突出部224と、基板部221の前進時ディスク回出側のディスク径方向外側からディスク径方向外側に突出する径方向突出部225とを有している。基板部221、ボス部222、回入側突出部223、回出側突出部224および径方向突出部225は、ディスクロータ201のアウタ側に配置されている。
さらに、ブラケット215は、図11に示すように径方向突出部225からディスクロータ201のインナ側まで突出する軸方向突出部226を有している。軸方向突出部226は、ディスクロータ201を跨ぐように配置される。ブラケット215は、鋳造部品であり、基板部221、ボス部222、回入側突出部223、回出側突出部224、径方向突出部225および軸方向突出部226は、鋳造時に一体に成形されている。
図10に示すように、ブラケット215のボス部222には、ディスク軸方向に沿って貫通穴228が形成されている。この貫通穴228内に図示略の車軸が配置される。ブラケット215の回入側突出部223には、突出側の先端部に内側ピン取付部229が形成されている。この内側ピン取付部229には内側ピン取付孔230が貫通穴228と平行に形成されている。ブラケット215の径方向突出部225には、突出側の先端部に外側ピン取付部231が形成されている。この外側ピン取付部231に外側ピン取付孔232が貫通穴228と平行に形成されている。
キャリア203は、ブラケット215と、これに取り付けられるスライドピン241およびスライドピン242とを有している。スライドピン241は、ブラケット215の内側ピン取付孔230に螺合されて内側ピン取付部229に固定されている。スライドピン242は外側ピン取付孔232に螺合されて外側ピン取付部231に固定されている。そして、キャリア203には、キャリパ204が、これらスライドピン241,242によって、ディスク軸方向に移動可能に取り付けられている。キャリパ204は、キャリア203に支持された状態で、ディスクロータ201を跨ぐように配置されることになる。
キャリパ204は、キャリア203のスライドピン241,242に摺動可能に支持されるキャリパ本体250(押圧部材)と、ピストン251(押圧部材)と、パッドピン252とを有している。キャリパ本体250は、図11に示すように、ディスクロータ201のアウタ側に配置されるシリンダ部255と、シリンダ部255のディスク径方向外側からディスクロータ201の径方向外側を越えるようにインナ側に延出するブリッジ部256と、ブリッジ部256のインナ側の端部からシリンダ部255に対向するようにディスク径方向内側に延出する爪部257とを有している。ピストン251は、キャリパ本体250のシリンダ部255にディスク軸方向に移動可能に収容されている。
シリンダ部255および爪部257の前進時ディスク回入側に、これらを結ぶようにパッドピン252が取り付けられている。パッドピン252は、ディスク軸方向に沿っている。パッドピン252は、図10に示すように、ディスクロータ201よりもディスク径方向外側において、ディスクロータ201を跨ぐように配置されている。第2実施形態においては、ディスクロータ201のディスク軸線とピストン251の中心軸線とを通ってディスク径方向に沿う線を第2径方向基準線と称し、この第2径方向基準線の延在方向を第2基準線方向と称す。第2径方向基準線はディスク軸線およびピストン251の中心軸線に直交する。
図12に示すように、ブラケット215の軸方向突出部226は、前進時ディスク回入側かつディスク軸方向のアウタ側にパッド支持部261を有している。軸方向突出部226は、前進時ディスク回入側かつディスク軸方向のインナ側にパッド支持部262を有している。また、軸方向突出部226は、パッド支持部261とパッド支持部262との間に、パッド支持部261とパッド支持部262とをディスク径方向外側においてディスク軸方向に連結する支持部連結部263が形成されている。よって、軸方向突出部226は、パッド支持部261,262をディスク軸方向両側に有している。
パッド支持部261とパッド支持部262とは、ディスク回転方向およびディスク径方向の位置を重ね合わせてディスク軸方向に対向している。パッド支持部261とパッド支持部262との間に、ディスクロータ201が配置されている。
パッド支持部261には、前進時ディスク回入側に向くトルク受面271と、ディスク径方向外側の平面部273とが形成されている。トルク受面271は、第2径方向基準線に平行に広がる平坦面である。トルク受面271は、ディスク軸線にも平行に広がっている。平面部273は、ディスク軸線に平行に広がる平坦面である。平面部273は、ディスク径方向外側に向いている。平面部273は、第2基準線方向においてディスク径方向外側ほど第2径方向基準線から離れるように傾斜している。平面部273とトルク受面271とは鈍角をなしている。平面部273とトルク受面271とは鈍角に限らず鋭角をなしていても良い。
パッド支持部262には、前進時ディスク回入側に向くトルク受面281と、ディスク径方向外側の平面部283とが形成されている。トルク受面281は、第2径方向基準線に平行に広がる平坦面である。トルク受面281は、ディスク軸線にも平行に広がっている。トルク受面281はトルク受面271と同一平面に配置されている。平面部283は、ディスク軸線に平行に広がる平坦面である。平面部283は、ディスク径方向外側に向いている。平面部283は、第2基準線方向においてディスク径方向外側ほど第2径方向基準線から離れるように傾斜している。平面部283は、平面部273と同一平面に配置されている。平面部283とトルク受面281とは鈍角をなしており、平面部273とトルク受面271とのなす角と同等の角度となっている。平面部283とトルク受面281とは鈍角に限らず鋭角をなしていても良い。
支持部連結部263は、ディスクロータ201の外周側をディスク軸方向に跨いでいる。支持部連結部263は、トルク受面271,281と同一平面に配置されてトルク受面271,281をディスク径方向外側においてディスク軸方向に連続させる連結面部286と、平面部273,283と同一平面に配置されて平面部273,283をディスク軸方向に連続させる連結面部287とを有する。
一対の摩擦パッド205は、同形状の裏板295と、裏板295に貼付される同形状のライニング材296とからなっている。一対の摩擦パッド205は、ディスクロータ201に対しアウタ側とインナ側とで、裏板295に対するライニング材296の貼付面が表裏逆向きになっている。つまり、アウタ側に配置される摩擦パッド205と、インナ側に配置される摩擦パッド205とが、鏡面対称形状をなしている。
裏板295は、一枚の板材から形成されるもので、図10に示すように、主板部298と、主板部298の長さ方向一端側かつディスク径方向外側の端部から斜め外方に延出する腕部299と、主板部298の長さ方向他端側かつディスク径方向外側の端部から斜め外方に延出する延出部301とを有している。腕部299には、裏板295の厚さ方向に沿ってピン孔302が形成されている。ピン孔302はディスク回転方向に長い長穴となっている。
主板部298は、ディスク回転方向に長い形状をなしている。主板部298には、図12に示すように、ライニング材296が貼付されている。図10に示すように、腕部299は、主板部298の長手方向の一側である前進時ディスク回入側の端部のディスク径方向外側から主板部298の長手方向に対して傾いた方向に延出している。延出部301は、主板部298の長手方向の他側である前進時ディスク回出側の端部のディスク径方向外側から主板部298の長手方向に対して傾いた方向に延出している。主板部298の長手方向は、裏板295の長手方向である。主板部298の長手方向は、摩擦パッド205の長手方向である。よって、裏板295には、ディスク回転方向両端部側であってディスク径方向外側に、摩擦パッド205の長手方向に対して傾いた方向に延出する腕部299および延出部301が形成されている。裏板121は、主板部298が略鏡面対称の形状をなしている。裏板121は、腕部299および延出部301が非対称の形状をなしている。
延出部301は、主板部298のディスク回転方向の一端部側であってディスク径方向外側から主板部298の長手方向に沿って主板部298から離れる方向に延出している。延出部301は、延出先端側ほど、第2基準線方向においてディスク径方向外側に位置するように傾斜している。
主板部298は、延出部301の根元位置となる長手方向一側に、主板部298の長手方向に対し垂直に広がる平坦面である側面部311を有している。主板部298は、ディスク径方向外側に、ディスクロータ201の外周面に沿う外面部313を有している。側面部311は、裏板121の板厚方向に広がる平坦面である。
延出部301は、側面部311と外面部313との間から摩擦パッド205の長手方向および第2基準線方向に対し斜めに主板部298から離れるように延出している。延出部301は、ディスク径方向内側の面部351(対向面部)と、ディスク径方向外側の面部352とを有している。面部351,352は、いずれも裏板121の板厚方向に広がる平坦面である。
面部351は、側面部311のディスク径方向外側の端縁部から、摩擦パッド205の長手方向および第2基準線方向に対し斜めとなって、ディスク径方向外側かつ前進時ディスク回出側に延出している。面部351と側面部311とは鈍角をなしている。面部351と側面部311とのなす角は、パッド支持部261の平面部273とトルク受面271とのなす角と同等の角度となっている。面部352は、外面部313の前進時ディスク回出側の端縁部から、摩擦パッド205の長手方向および第2基準線方向に対し斜めとなって、ディスク径方向外側かつ前進時ディスク回出側に延出している。面部352は、面部351と略平行に広がっている。
アウタ側の摩擦パッド205は、ライニング材296を裏板295に対しインナ側に配置し、腕部299および延出部301をディスク径方向外側に配置する姿勢で、腕部299が、ピン孔302に挿入された前進時ディスク回入側のパッドピン252に支持されることになる。また、アウタ側の摩擦パッド205は、この姿勢で、延出部301が、前進時ディスク回出側のアウタ側のパッド支持部261に支持されることになる。
その際に、アウタ側の摩擦パッド205は、キャリパ204に設けられた図示略のパッドスプリングで、ディスク径方向内方かつ前進時ディスク回出側に押圧される。すると、前進時ディスク回出側に配置される延出部301が、面部351においてアウタ側のパッド支持部261の平面部273に面接触で直接当接することになる。また、主板部298が側面部311においてパッド支持部261のトルク受面271に面接触で直接当接することになる。
この状態で、ブラケット215は、アウタ側のパッド支持部261が、アウタ側の摩擦パッド205の延出部301の延出方向に沿って広がる平面部273を有することになる。また、この状態で、このアウタ側の摩擦パッド205は、延出部301が、アウタ側のパッド支持部261に係止されることになる。また、この状態で、アウタ側の摩擦パッド205は、延出部301がディスクロータ11の最外周よりもディスク径方向外側に配置されることになる。また、この状態で、アウタ側のパッド支持部261は、トルク受面271がアウタ側の摩擦パッド205の配置方向に向く。
インナ側の摩擦パッド205は、ライニング材296を裏板295に対しアウタ側に配置し、腕部299および延出部301をディスク径方向外側に配置する姿勢で、腕部299が、ピン孔302に挿入された前進時ディスク回入側のパッドピン252に支持されることになる。また、インナ側の摩擦パッド205は、この姿勢で、延出部301が、前進時ディスク回出側のインナ側のパッド支持部262に支持されることになる。
その際に、インナ側の摩擦パッド205は、キャリパ204に設けられた図示略のパッドスプリングで、ディスク径方向内方かつ前進時ディスク回出側に押圧される。すると、前進時ディスク回出側に配置される延出部301が、面部351においてインナ側のパッド支持部262の平面部283に面接触で直接当接することになる。また、主板部298が側面部311においてパッド支持部262のトルク受面281に面接触で直接当接することになる。
この状態で、ブラケット215は、インナ側のパッド支持部262が、インナ側の摩擦パッド205の延出部301の延出方向に沿って広がる平面部283を有することになる。また、この状態で、このインナ側の摩擦パッド205は、延出部301が、インナ側のパッド支持部262に係止されることになる。また、この状態で、インナ側の摩擦パッド205は、延出部301がディスクロータ11の最外周よりもディスク径方向外側に配置されることになる。また、この状態で、インナ側のパッド支持部262は、トルク受面281がインナ側の摩擦パッド205の配置方向に向く。以上により、一対の摩擦パッド205が、ブラケット215に係止される。
アウタ側の摩擦パッド205は、ブラケット215のアウタ側のパッド支持部261およびキャリパ204のパッドピン252に支持されてディスク軸方向に移動することになる。その際に、パッド支持部261が、アウタ側の摩擦パッド205の延出部301を係止することになる。インナ側の摩擦パッド205は、ブラケット215のインナ側のパッド支持部262およびキャリパ204のパッドピン252に支持されてディスク軸方向に移動することになる。その際に、パッド支持部262が、インナ側の摩擦パッド205の延出部301を係止することになる。
キャリパ204は、シリンダ部255内にブレーキ液が導入されると、ピストン251がシリンダ部255に対しディスク軸方向に沿ってディスクロータ201の方向に前進しアウタ側の摩擦パッド205をディスクロータ201へ押圧することになる。すると、アウタ側の摩擦パッド205がディスクロータ201の一面にライニング材296において当接する。また、これにより生じる反力で、キャリパ本体250は、キャリア203のスライドピン241,242上を摺動し、シリンダ部255をディスクロータ201から離間させる方向に移動する。すると、爪部257がインナ側の摩擦パッド205のライニング材296をディスクロータ201の他面に押圧する。このようにして、キャリパ204は、爪部257とピストン251とによって一対の摩擦パッド205を両側から挟んでディスクロータ201に押圧することにより、ディスクロータ201つまり車輪の回転にブレーキをかける。
このとき、一対の摩擦パッド205は、ディスク径方向内方およびディスク回転方向への移動がパッド支持部261,262およびパッドピン252で規制されるようにキャリア203およびキャリパ204に係止されて、ディスク軸方向に移動することになる。
ディスク軸方向の移動時に、アウタ側の摩擦パッド205は、延出部301がアウタ側のパッド支持部261に支持され、腕部299がパッドピン252に支持されて移動することになる。その際に、延出部301が面部351でパッド支持部261の平面部273を摺動し、腕部299がパッドピン252を摺動する。ディスク軸方向の移動時に、インナ側の摩擦パッド205は、延出部301がインナ側のパッド支持部262に支持され、腕部299がパッドピン252に支持されて移動することになる。その際に、延出部301が面部351でパッド支持部262の平面部283を摺動し、腕部299がパッドピン252を摺動する。このように、パッド支持部261,262を含むブラケット215は、摩擦パッド205をディスク軸方向に移動可能に係止する。
車両の前進制動時には、いずれもライニング材296においてディスクロータ201に接触して一対の摩擦パッド205が前進時ディスク回出側に移動する。すると、アウタ側の摩擦パッド205が裏板295の側面部311において、アウタ側のパッド支持部261のトルク受面271に面接触で直接当接する。また、インナ側の摩擦パッド205が裏板295の側面部311において、インナ側のパッド支持部262のトルク受面281に面接触で直接当接する。これにより、ブラケット215が主としてパッド支持部261,262で制動トルクを受ける。
車両の後退制動時には、いずれもライニング材296においてディスクロータ201に接触して一対の摩擦パッド205が後退時ディスク回出側に移動して、いずれも裏板295の腕部299においてパッドピン252に当接する。これにより、キャリパ204が主としてパッドピン252で制動トルクを受ける。
第2実施形態では、摩擦パッド205の裏板295のディスク回転方向端部側であってディスク径方向外側に、摩擦パッド205の長手方向に対して傾いた方向に延出する延出部301が形成されている。また、摩擦パッド205をディスク軸方向に移動可能に係止するブラケット215が、アウタ側の摩擦パッド205の延出部301の延出方向に沿って広がる平面部273を有するパッド支持部261と、インナ側の摩擦パッド205の延出部301の延出方向に沿って広がる平面部283を有するパッド支持部262と、を備えている。そして、アウタ側の摩擦パッド205の延出部301を平面部273に当接させてパッド支持部261に係止している。また、インナ側の摩擦パッド205の延出部301を平面部283に当接させてパッド支持部262に係止している。
これにより、アウタ側の摩擦パッド205の延出部301と平面部273との接触長さを維持しつつ、アウタ側の摩擦パッド205の延出部301およびブラケット215のアウタ側のパッド支持部261のディスク回転方向の長さを短くすることができる。同様に、インナ側の摩擦パッド205の延出部301と平面部283との接触長さを維持しつつ、インナ側の摩擦パッド205の延出部301およびブラケット215のインナ側のパッド支持部262のディスク回転方向の長さを短くすることができる。したがって、摩擦パッド205およびブラケット215をディスク回転方向に小型化することができる。したがって、特にブラケット215の部品コストを低減することができる。
あるいは、アウタ側の摩擦パッド205の延出部301およびアウタ側のパッド支持部261のディスク回転方向の長さを長くすることなく、アウタ側の摩擦パッド205の延出部301と平面部273との接触長さを長くすることができ、接触面積を広くすることができる。同様に、インナ側の摩擦パッド205の延出部301およびインナ側のパッド支持部262のディスク回転方向の長さを長くすることなく、インナ側の摩擦パッド205の延出部301と平面部283との接触長さを長くすることができ、接触面積を広くすることができる。よって、ブラケット215が受ける摩擦パッド205の振動荷重を分散化することができる。したがって、摩耗対策用のリテーナを、一対の摩擦パッド205の延出部301とパッド支持部261,262との間に介在させなくても、ブラケット215の摩耗を抑制することができる。
すなわち、パッド支持部261の平面部273と、これに対向するアウタ側の摩擦パッド205の延出部301の面部351とを直接当接させ、パッド支持部262の平面部283とこれに対向するインナ側の摩擦パッド205の延出部301の面部351とを直接当接させる構造にできる。よって、摩耗対策用のリテーナを、一対の摩擦パッド205の延出部301とパッド支持部261,262との間に介在させない構造となり、部品点数を低減することができる。したがって、部品コストおよび組み付け工数を低減することができる。加えて、リテーナの配置スペース確保が不要となり、設計の自由度が上がる。
また、ブラケット215が受ける摩擦パッド205の振動荷重を分散化することができるため、パッドスプリングの荷重を大きくしなくても、ブラケット215の摩耗を抑制することができる。よって、摩擦パッド205の引き摺りを抑制することができる。
また、アウタ側およびインナ側のいずれの摩擦パッド205も延出部301がディスクロータ11の最外周よりもディスク径方向外側に配置されている。このため、パッド支持部261,262の延出部301を支持する平面部273,283を、ディスク径方向外側の外部に露出する面とすることが容易にできる。よって、平面部273,283を中子なしでの鋳出しにより形成することができる。したがって、中子を用いたり、加工したりすることなく、平面部273,283を形成することができ、製造コストを低減することができる。
また、ブラケット215は、パッド支持部261の平面部273とパッド支持部262の平面部283とが、連結面部287によってディスク軸方向に連続している。これにより、ブラケット215に生じる応力集中を抑制することができ、信頼性を向上することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明に係る第3実施形態を主に図13~図15に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態のディスクブレーキ10aにおいては、図13~図15に示すように、第1実施形態のキャリパ12にかえて、キャリパ12とは一部異なるキャリパ12aが用いられている。キャリパ12aは、第1実施形態のキャリパ本体15にかえて、キャリパ本体15とは一部異なるキャリパ本体15a(係止部材)が用いられている。キャリパ本体15aは、インナ側に、第1実施形態のディスク回入側のパッド支持部32Bとは一部異なるパッド支持部32Baを有している。キャリパ本体15aは、アウタ側に、第1実施形態のディスク回入側のパッド支持部33Aとは一部異なるパッド支持部33Aaを有している。
インナ側のパッド支持部32Baは、第1実施形態のパッド支持部32Bよりもディスク径方向外側まで設けられている。よって、図15に示すように、パッド支持部32Baは、ディスク回出側のパッド支持部33Bよりも、ディスク径方向外側まで設けられている。このため、パッド支持部32Baは、トルク受面71Bと同様で、トルク受面71Bよりもディスク径方向外側まで延びるトルク受面71Baを有している。また、パッド支持部32Baは、ロータ対向面72Bと同様で、ロータ対向面72Bよりもディスク径方向外側まで延びるロータ対向面72Baを有している。また、パッド支持部32Baは、平面部73Bと同様で、平面部73Bよりもディスク径方向外側に配置される平面部73Baを有している。トルク受面71Baはトルク受面81Bと平行である。トルク受面71Baと平面部73Baとのなす角は、トルク受面81Bと平面部83Bとのなす角と同等である。
パッド支持部33Bの平面部83Bとトルク受面81Bとの境界位置398と、平面部73Baとトルク受面71Baとの境界位置399とを結ぶ線は、トルク受面81Bとトルク受面71Baとを、これらに直交して結ぶ線に対し、境界位置399側ほど距離が遠くなる。よって、平面部73Baとトルク受面71Baとの境界位置399は、平面部83Bとトルク受面81Bとの境界位置398よりも、ディスク径方向における外側に配置されている。言い換えれば、平面部73Baのディスク径方向における内端位置399は、平面部83Bのディスク径方向における内端位置398よりも、ディスク径方向における外側に配置されている。さらに言い換えれば、平面部73Baのディスク径方向における内端位置399とディスクロータ11の中心軸線とを結ぶ線の長さは、平面部83Bのディスク径方向における内端位置398とディスクロータ11の中心軸線とを結ぶ線の長さよりも長い。ディスク回入側のパッド支持部32Baは、摩擦パッド102aの配置方向に向くトルク受面71Baとディスク径方向外側に向く平面部73Baとの境界位置399が、ディスク回出側のパッド支持部33Bの摩擦パッド102aの配置方向に向くトルク受面81Bとディスク径方向外側に向く平面部83Bとの境界位置398よりも、ディスク径方向外側に配置されている。パッド支持部32Baとパッド支持部33Bとは、ディスク径方向外側におけるトルク受面71Baと平面部73Baとの境界位置399と、トルク受面81Bと平面部83Bとの境界位置398とが、ディスク回転方向における一方側と他方側とで異なっている。
同様に、図13に示すアウタ側のパッド支持部33Aaは、第1実施形態のパッド支持部33Aよりもディスク径方向外側まで設けられている。よって、パッド支持部33Aaは、ディスク回出側のパッド支持部32Aよりも、ディスク径方向外側まで設けられている。このため、パッド支持部33Aaは、トルク受面81Aと同様で、トルク受面81Aよりもディスク径方向外側まで延びるトルク受面81Aaを有している。また、パッド支持部33Aaは、ロータ対向面82Aと同様で、ロータ対向面82Aよりもディスク径方向外側まで延びるロータ対向面82Aaを有している。また、パッド支持部33Aaは、平面部83Aと同様で、平面部83Aよりもディスク径方向外側に配置される平面部83Aaを有している。トルク受面81Aaはトルク受面71Aと平行である。トルク受面81Aaと平面部83Aaとのなす角は、トルク受面71Aと平面部73Aとのなす角と同等である。トルク受面81Aaと平面部83Aaとのなす角は、トルク受面71Baと平面部73Baとのなす角と同等である。トルク受面81Aaはトルク受面71Baと同一平面に配置されている。平面部83Aaは、平面部73Baと同一平面に配置されている。トルク受面71Aとトルク受面81Aaとの距離は、トルク受面71Baとトルク受面81Bとの距離と同等である。
パッド支持部32Aの平面部73Aとトルク受面71Aとの境界位置と、平面部83Aaとトルク受面81Aaとの境界位置とを結ぶ線は、トルク受面71Aとトルク受面81Aaとを、これらに直交して結ぶ線に対し、平面部83Aaとトルク受面81Aaとの境界位置側ほど距離が遠くなる。よって、平面部83Aaとトルク受面81Aaとの境界位置は、平面部73Aとトルク受面71Aとの境界位置よりも、ディスク径方向における外側に配置されている。平面部83Aaとトルク受面81Aaとの境界位置は、図15に示す平面部73Baとトルク受面71Baとの境界位置399に対して、ディスク径方向における位置を合わせている。言い換えれば、平面部83Aaのディスク径方向における内端位置は、平面部73Aのディスク径方向における内端位置よりも、ディスク径方向における外側に配置されている。さらに言い換えれば、平面部83Aaのディスク径方向における内端位置とディスクロータ11の中心軸線とを結ぶ線の長さは、平面部73Aのディスク径方向における内端位置とディスクロータ11の中心軸線とを結ぶ線の長さよりも長い。平面部83Aaのディスク径方向における内端位置は、平面部73Baのディスク径方向における内端位置399に対して、ディスク径方向における位置を合わせている。ディスク回入側のパッド支持部33Aaは、摩擦パッド102aの配置方向に向くトルク受面81Aaとディスク径方向外側に向く平面部83Aaとの境界位置が、ディスク回出側のパッド支持部32Aの摩擦パッド102aの配置方向に向くトルク受面71Aとディスク径方向外側に向く平面部73Aとの境界位置よりも、ディスク径方向外側に配置されている。パッド支持部33Aaとパッド支持部32Aとは、ディスク径方向外側におけるトルク受面81Aaと平面部83Aaとの境界位置と、トルク受面71Aと平面部73Aとの境界位置とが、ディスク回転方向における一方側と他方側とで異なっている。
図15に示すように、第3実施形態においては、第1実施形態の摩擦パッド102にかえて、摩擦パッド102とは一部異なる摩擦パッド102aが用いられている。摩擦パッド102aは、第1実施形態の裏板121と同様の裏板121に、一つのライニング材122aが貼付されている。
摩擦パッド102aは、キャリパ本体15aのパッド配置空間61のインナ側に組み付けられる際に、ライニング材122aを裏板121に対しアウタ側に配置し、延出部131,132をディスク径方向外側に配置する姿勢で、図15に示すように、延出部131が前進時ディスク回入側のパッド支持部32Baに、延出部132が前進時ディスク回出側のパッド支持部33Bに、それぞれ支持されることになる。
その際に、この摩擦パッド102aは、前進時ディスク回出側に配置される延出部132が、面部162においてパッドスプリング101の延出板部115の屈曲部119に当接し屈曲部119でディスク径方向内側かつ前進時ディスク回出側に押圧されることになる。これにより、延出部132が、面部161においてパッド支持部33Bの平面部83Bに当接する。また、この摩擦パッド102aは、前進時ディスク回入側の延出部131が、面部153においてパッドスプリング101の延出板部117に当接し延出板部117でディスク径方向内側に押圧されることになる。これにより、延出部131が、面部151においてパッド支持部32Baの平面部73Baに当接する。
この摩擦パッド102aは、パッドスプリング101の付勢力のみを受ける状態では、パッドスプリング101の付勢力で、主板部130の側面部142を、これに対向するインナ側かつ前進時ディスク回出側のトルク受面81Bに面接触で直接当接させ、延出部132の面部161を、これに対向するインナ側かつ前進時ディスク回出側の平面部83Bに面接触で直接当接させると共に、延出部131の面部151を、これに対向するインナ側かつ前進時ディスク回入側の平面部73Baに面接触で直接当接させる。
この状態で、キャリパ本体15aは、インナ側のパッド支持部32Baが、インナ側の摩擦パッド102aの延出部131の延出方向に沿って広がる平面部73Baを有することになる。この状態で、このインナ側の摩擦パッド102aは、延出部131が、インナ側のパッド支持部32Baに係止されることになる。また、この状態で、キャリパ本体15aは、インナ側のパッド支持部33Bが、インナ側の摩擦パッド102aの延出部132の延出方向に沿って広がる平面部83Bを有することになる。この状態で、このインナ側の摩擦パッド102aは、延出部132が、インナ側のパッド支持部33Bに係止されることになる。また、この状態で、このインナ側の摩擦パッド102aは、主板部130の側面部142をトルク受面81Bに当接させるとともに、主板部130の側面部141をトルク受面71Baに対し若干の隙間をもって対向させることになる。さらに、この状態で、インナ側の摩擦パッド102aは、延出部131,132がディスクロータ11の最外周よりもディスク径方向外側に配置されることになる。
摩擦パッド102aは、キャリパ本体15aのパッド配置空間61のアウタ側に組み付けられる際に、ライニング材122aを裏板121に対しインナ側に配置し、延出部131,132をディスク径方向外側に配置する姿勢で、延出部131が前進時ディスク回出側のパッド支持部32Aに、延出部132が前進時ディスク回入側のパッド支持部33Aaに、それぞれ支持されることになる。
その際に、このアウタ側に配置される摩擦パッド102aは、前進時ディスク回出側に配置される延出部131が、面部152においてパッドスプリング101の延出板部114の屈曲部118に当接し屈曲部118でディスク径方向内側かつ前進時ディスク回出側に押圧されることになる。これにより、延出部131が、面部151においてパッド支持部32Aの平面部73Aに当接する。また、この摩擦パッド102aは、前進時ディスク回入側の延出部132が、面部163においてパッドスプリング101の延出板部116に当接し延出板部116でディスク径方向内側に押圧されることになる。これにより、延出部132が、面部161においてパッド支持部33Aaの平面部83Aaに当接する。
このアウタ側に配置される摩擦パッド102aは、パッドスプリング101の付勢力のみを受ける状態では、パッドスプリング101の付勢力で、主板部130の側面部141を、これに対向するアウタ側かつ前進時ディスク回出側のトルク受面71Aに面接触で直接当接させ、延出部131の面部151を、これに対向するアウタ側かつ前進時ディスク回出側の平面部73Aに面接触で直接当接させると共に、延出部132の面部161を、これに対向するアウタ側かつ前進時ディスク回入側の平面部83Aaに面接触で直接当接させる。
この状態で、キャリパ本体15aは、アウタ側のパッド支持部32Aが、アウタ側の摩擦パッド102aの延出部131の延出方向に沿って広がる平面部73Aを有することになる。この状態で、このアウタ側の摩擦パッド102aは、延出部131が、アウタ側のパッド支持部32Aに係止されることになる。また、この状態で、キャリパ本体15aは、アウタ側のパッド支持部33Aaが、アウタ側の摩擦パッド102aの延出部132の延出方向に沿って広がる平面部83Aaを有することになる。この状態で、このアウタ側の摩擦パッド102aは、延出部132が、アウタ側のパッド支持部33Aaに係止されることになる。また、この状態で、このアウタ側の摩擦パッド102aは、図14に示すように、主板部130の側面部141をトルク受面71Aに当接させるとともに、主板部130の側面部142をトルク受面81Aaに対し若干の隙間をもって対向させることになる。さらに、この状態で、アウタ側の摩擦パッド102aは、図13に示す延出部131,132がディスクロータ11の最外周よりもディスク径方向外側に配置されることになる。以上のようにして、一対の摩擦パッド102aが、一つのキャリパ本体15aに係止される。
図15に示すインナ側の摩擦パッド102aは、キャリパ本体15aのインナ側のパッド支持部32Ba,33Bで支持されてディスク軸方向に移動することになる。その際に、パッド支持部32Ba,33Bは、ディスク回転方向両側のV字配置の平面部73Ba,83Bでインナ側の摩擦パッド102aの延出部131,132を係止することになる。
図13に示すアウタ側の摩擦パッド102aは、キャリパ本体15aのアウタ側のパッド支持部32A,33Aaに支持されてディスク軸方向に移動することになる。その際に、パッド支持部32A,33Aaは、ディスク回転方向両側のV字配置の平面部73A,83Aaでアウタ側の摩擦パッド102aの延出部131,132を係止することになる。
第3実施形態においては、第1実施形態と同様、制動時に、図14に示すアウタ側のピストン16,17がアウタ側の摩擦パッド102aをディスクロータ11へ押圧し、インナ側のピストン16,17がインナ側の摩擦パッド102aをディスクロータ11へ押圧する。すると、一対の摩擦パッド102aは、ディスク径方向内方およびディスク回転方向への移動がパッド支持部32A,33Aa,32Ba,33Bで規制されるようにキャリパ本体15aに係止されて、ディスク軸方向に移動することになる。
ディスク軸方向の移動時に、図15に示すインナ側の摩擦パッド102aは、延出部131,132においてインナ側のパッド支持部32Ba,33Bに支持されて移動することになる。その際に、延出部132が面部161でパッド支持部33Bの平面部83Bを摺動し、延出部131が面部151でパッド支持部32Baの平面部73Baを摺動する。また、その際に、図13に示すアウタ側の摩擦パッド102aは、延出部131,132においてアウタ側のパッド支持部32A,33Aaに係止されて移動することになる。その際に、延出部131が面部151でパッド支持部32Aの平面部73Aを摺動し、延出部132が面部161でパッド支持部33Aaの平面部83Aaを摺動する。ディスク軸方向の移動時に、このようにパッド支持部32A,33Aa,32Ba,33Bを含むキャリパ本体15aは、摩擦パッド102aをディスク軸方向に移動可能に係止する。
車両の前進制動時には、いずれもライニング材122aにおいてディスクロータ11に接触して一対の摩擦パッド102aが前進時ディスク回出側に移動する。すると、図15に示すように、インナ側の摩擦パッド102aが裏板121の側面部142において、前進時ディスク回出側であるパッド支持部33Bのトルク受面81Bに当接する。また、図14に示すように、アウタ側の摩擦パッド102aが裏板121の側面部141において、前進時ディスク回出側であるパッド支持部32Aのトルク受面71Aに当接する。これにより、キャリパ本体15aが主としてパッド支持部32A,33Bで制動トルクを受ける。
車両の後退制動時には、いずれもライニング材122aにおいてディスクロータ11に接触して一対の摩擦パッド102aが後退時ディスク回出側に移動する。すると、図15に示すインナ側の摩擦パッド102aが裏板121の側面部141において、後退時ディスク回出側であるパッド支持部32Baのトルク受面71Baに当接し、図13に示すアウタ側の摩擦パッド102aが裏板121の側面部142において、後退時ディスク回出側であるパッド支持部33Aaのトルク受面81Aaに当接する。これにより、キャリパ本体15aが主としてパッド支持部32Ba,33Aaで制動トルクを受ける。
第3実施形態では、図15に示すように、インナ側において、前進時ディスク回入側のパッド支持部32Baは、その平面部73Baが、前進時ディスク回出側のパッド支持部33Bの平面部83Bよりも、ディスク径方向外側に配置されている。言い換えれば、インナ側の摩擦パッド102aの延出部131を係止する係止面である平面部73Baは、インナ側の摩擦パッド102aの延出部132を係止する係止面である平面部83Bよりもディスク径方向外側に配置されている。これにより、インナ側の摩擦パッド102aにパッドスプリング101の荷重が前進時ディスク回出側に負荷されても、インナ側の摩擦パッド102aが傾き難くなる。
すなわち、平面部73Baと平面部83Bとがディスク径方向の同等位置に配置されていると、パッドスプリング101の付勢力で、インナ側の摩擦パッド102aが、前進時ディスク回入側の延出部131を、前進時ディスク回出側の延出部132よりもディスク径方向内側に位置させるように傾いてしまう可能性がある。このように傾くと、インナ側の摩擦パッド102aは、側面部142が、その延出部132とは反対側の部分においてトルク受面81Bに線接触するように傾いてしまう。第3実施形態では、このような傾きを抑制して、側面部142をトルク受面81Bに面接触で当接させることができる。その結果、耐トルク摩耗性が向上し、耐振性が向上して、ラトル音およびブレーキ鳴きの発生を抑制することができる。
また、アウタ側において、図13に示す前進時ディスク回入側のパッド支持部33Aaは、その平面部83Aaが、前進時ディスク回出側のパッド支持部32Aの平面部73Aよりも、ディスク径方向外側に配置されている。言い換えれば、アウタ側の摩擦パッド102aの延出部132を係止する係止面である平面部83Aaは、アウタ側の摩擦パッド102aの延出部131を係止する係止面である平面部73Aよりもディスク径方向外側に配置されている。これにより、アウタ側の摩擦パッド102aにパッドスプリング101の荷重が前進時ディスク回出側に負荷されても、アウタ側の摩擦パッド102aが傾き難くなる。
すなわち、平面部83Aaと平面部73Aとがディスク径方向の同等位置に配置されていると、パッドスプリング101の付勢力で、アウタ側の摩擦パッド102aが、前進時ディスク回入側の延出部132を、前進時ディスク回出側の延出部131よりもディスク径方向内側に位置させるように傾いてしまう可能性がある。このように傾くと、アウタ側の摩擦パッド102aは、側面部141が、その延出部131とは反対側の部分においてトルク受面71Aに線接触するように傾いてしまう。第3実施形態では、このような傾きを抑制して、側面部141をトルク受面71Aに面接触で当接させることができる。その結果、耐トルク摩耗性が向上し、耐振性が向上して、ラトル音およびブレーキ鳴きの発生を抑制することができる。
[変形例]
なお、第1,第3実施形態においては、摩擦パッド102,102aの裏板121が、それぞれのディスク径方向外側の端部においてキャリパ本体15,15aに係止される場合を例にとり説明した。しかしながら、裏板121がディスク径方向の中間部でキャリパ本体15,15aに係止されるようにしても良い。また、第2実施形態においても、摩擦パッド205の裏板295がディスク径方向の中間部でブラケット215に係止されるようにしても良い。
ここでは、主に図16に基づいて第1実施形態に対するインナ側の変更部分を中心に説明する。説明は略すが、アウタ側も同様に変更可能である。
変形例では、キャリパ本体15にかえて、キャリパ本体15とは一部異なるキャリパ本体15b(係止部材)が用いられている。キャリパ本体15bは、インナ側に、第1実施形態の前進時ディスク回出側のパッド支持部33Bとは一部異なるパッド支持部33Bbと、第1実施形態の前進時ディスク回入側のパッド支持部32Bとは一部異なるパッド支持部32Bbと、を有している。
パッド支持部33Bbは、パッド係止凹部401を有している。パッド係止凹部401は、トルク受面81Bよりも、前進時ディスク回出側に凹んでいる。パッド係止凹部401は、ディスク径方向内側に平面部83Bbを有している。平面部83Bbは、ディスクロータ11の軸方向に沿って広がっている。平面部83Bbは、第1径方向基準線に対して傾斜している。平面部83Bbは、ディスク径方向外側ほど第1径方向基準線から離れるように傾斜している。
パッド支持部32Bbは、パッド係止凹部402を有している。パッド係止凹部402は、トルク受面71Bよりも、前進時ディスク回入側に凹んでいる。パッド係止凹部402は、ディスク径方向内側に平面部73Bbを有している。平面部73Bbは、ディスクロータ11の軸方向に沿って広がっている。平面部73Bbは、第1径方向基準線に対して傾斜している。平面部73Bbは、ディスク径方向外側ほど第1径方向基準線から離れるように傾斜している。平面部73Bbとトルク受面71Bとのなす角は、平面部83Bbとトルク受面81Bとのなす角と同等である。
ディスク回入側のパッド係止凹部401は、ディスク回出側のパッド係止凹部402よりも、ディスク径方向外側に設けられている。このため、パッド支持部32Bbは、平面部83Bbよりもディスク径方向外側に配置される平面部73Bbを有している。
パッド支持部33Bbの平面部83Bbとトルク受面81Bとの境界位置398bと、平面部73Bbとトルク受面71Bとの境界位置399bとを結ぶ線は、トルク受面81Bとトルク受面71Bとを、パッド係止凹部401,402よりもディスク径方向内方で、これらに直交して結ぶ線に対し、境界位置399b側ほど距離が遠くなる。よって、平面部73Bbとトルク受面71Bとの境界位置399bは、平面部83Bbとトルク受面81Bとの境界位置398bよりも、ディスク径方向における外側に配置されている。言い換えれば、平面部73Bbのディスク径方向における内端位置399bは、平面部83Bbのディスク径方向における内端位置398bよりも、ディスク径方向における外側に配置されている。さらに言い換えれば、平面部73Bbのディスク径方向における内端位置399bとディスクロータ11の中心軸線とを結ぶ線の長さは、平面部83Bbのディスク径方向における内端位置398bとディスクロータ11の中心軸線とを結ぶ線の長さよりも長い。
第3実施形態においては、第1実施形態の摩擦パッド102にかえて、摩擦パッド102とは一部異なる摩擦パッド102bが用いられている。摩擦パッド102bは、第1実施形態の裏板121とは一部異なる裏板121bに、一つのライニング材122bが貼付されている。
裏板121bは、ライニング材122bが貼付される主板部130bと、主板部130bのディスク回転方向の両端部側であってディスク径方向の中間位置からディスク回転方向両外側に延出する一対の延出部131bおよび延出部132bとを有している。延出部131bおよび延出部132bは、主板部130bの長手方向の両側であるディスク回転方向の両端部側から主板部130bの長手方向に対して傾いた方向に延出している。主板部130bの長手方向は、裏板121bの長手方向であり、摩擦パッド102bの長手方向である。よって、裏板121bには、ディスク回転方向両端部側であってディスク径方向の中間部に、摩擦パッド102bの長手方向に対して傾いた方向に延出する一対の延出部131b,132bが形成されている。裏板121bは、主板部130bの外形が鏡面対称の形状をなしている。裏板121bは、延出部131bと延出部132bとが鏡面対称の形状をなしている。
一方の延出部131bは、ディスク径方向内側に面部151b(対向面部)を有している。面部151b(対向面部)は、主板部130bのディスク回転方向の一端部側であってディスク径方向中間部から主板部130bの長手方向に沿って主板部130bから離れる方向に延出している。延出部131bは、その面部151bが、延出先端側ほど、第1基準線方向においてディスク径方向外側に位置するように傾斜している。
他方の延出部132bは、ディスク径方向内側に面部161b(対向面部)を有している。面部161b(対向面部)は、主板部130bのディスク回転方向の他端部側であってディスク径方向中間部から主板部130bの長手方向に沿って主板部130bから離れる方向に延出している。延出部132bは、その面部161bが、延出先端側ほど、第1基準線方向においてディスク径方向外側に位置するように傾斜している。
主板部130bは、延出部131bの根元位置となる長手方向一側に、主板部130bの長手方向に対し垂直に広がる平坦面である側面部141bを有している。主板部130bは、延出部132bの根元位置となる長手方向他側に、主板部130bの長手方向に対し垂直に広がる平坦面である側面部142bを有している。
面部151bは、側面部141bのディスク径方向中間部から、摩擦パッド102bの長手方向および第1基準線方向に対し斜めをなして、ディスク径方向外側かつディスク回転方向外側に延出している。面部151bと側面部141bとは鈍角をなしている。面部151bと側面部141bとのなす角は、パッド支持部32Bbの平面部73Bbとトルク受面71Bとのなす角と同等の角度となっている。
面部161bは、側面部142bのディスク径方向中間部から、摩擦パッド102bの長手方向および第1基準線方向に対し斜めをなして、ディスク径方向外側かつディスク回転方向外側に延出している。面部161bと側面部142bとは鈍角をなしている。面部161bと側面部142bとのなす角は、面部151bと側面部141bとのなす角と同等の角度となっている。面部161bと側面部142bとのなす角は、パッド支持部33Bbの平面部83Bbとトルク受面81Bとのなす角と同等の角度となっている。面部161bと側面部142bとの境界位置と、面部151bと側面部141bとの境界位置とを結ぶ線は、側面部141bと側面部142bとを、これらに直交して結ぶ線と平行になっている。側面部141bと側面部142bとの距離は、トルク受面71Bとトルク受面81Bとの距離よりも短い。面部151bと面部161bとの最大距離は、トルク受面71Bとトルク受面81Bとの距離よりも長い。
摩擦パッド102bは、キャリパ本体15bのインナ側に組み付けられる際に、ライニング材122bを裏板121bに対しアウタ側に配置し、延出部131b,132bにおいて面部151b,161bがディスク径方向内側に位置する姿勢で、延出部131bが前進時ディスク回入側のパッド支持部32Bbのパッド係止凹部402に支持されることになる。また、延出部132bが前進時ディスク回出側のパッド支持部33Bのパッド係止凹部401に支持されることになる。
その際に、このインナ側に配置される摩擦パッド102bは、前進時ディスク回出側が、図示略のパッドスプリングでディスク径方向内側かつ前進時ディスク回出側に押圧されることになる。これにより、延出部132bが、面部161bにおいてパッド支持部33Bbの平面部83Bbに当接する。また、この摩擦パッド102bは、前進時ディスク回入側が、図示略のパッドスプリングでディスク径方向内側に押圧されることになる。これにより、延出部131bが、面部151bにおいてパッド支持部32Bbの平面部73Bbに当接する。
このインナ側に配置される摩擦パッド102bは、パッドスプリングの付勢力のみを受ける状態では、パッドスプリングの付勢力で、主板部130bの側面部142bを、これに対向するインナ側かつ前進時ディスク回出側のトルク受面81Bに面接触で直接当接させ、延出部132bの面部161bを、これに対向するインナ側かつ前進時ディスク回出側の平面部83Bbに面接触で直接当接させると共に、延出部131bの面部151bを、これに対向するインナ側かつ前進時ディスク回入側の平面部73Bbに面接触で直接当接させる。
この状態で、キャリパ本体15bは、インナ側のパッド支持部32Bbが、インナ側の摩擦パッド102bの延出部131bの面部151bの延出方向に沿って広がる平面部73Bbを有することになる。この状態で、このインナ側の摩擦パッド102bは、延出部131bが、インナ側のパッド支持部32Bbに係止されることになる。また、この状態で、キャリパ本体15bは、インナ側のパッド支持部33Bbが、インナ側の摩擦パッド102bの延出部132bの面部161bの延出方向に沿って広がる平面部83Bbを有することになる。この状態で、このインナ側の摩擦パッド102bは、延出部132bが、インナ側のパッド支持部33Bbに係止されることになる。また、この状態で、このインナ側の摩擦パッド102bは、主板部130bの側面部142bをトルク受面81Bに当接させるとともに、主板部130bの側面部141bをトルク受面71Bに対し若干の隙間をもって対向させることになる。
インナ側の摩擦パッド102bは、キャリパ本体15bのインナ側のパッド支持部32Bb,33Bbで支持されてディスク軸方向に移動することになる。その際に、パッド支持部32Bb,33Bbは、ディスク回転方向両側のV字配置の平面部73Bb,83Bbでインナ側の摩擦パッド102bの延出部131b,132bを係止することになる。
ディスク軸方向の移動時に、インナ側の摩擦パッド102bは、延出部131b,132bにおいてインナ側のパッド支持部32Bb,33Bbに支持されて移動することになる。その際に、延出部132bが面部161bでパッド支持部33Bbの平面部83Bbを摺動し、延出部131bが面部151bでパッド支持部32Bbの平面部73Bbを摺動する。摩擦パッド102bのディスク軸方向の移動時に、このように、パッド支持部32Bb,33Bbを含むキャリパ本体15bは、摩擦パッド102bをディスク軸方向に移動可能に係止する。
車両の前進制動時に、インナ側の摩擦パッド102bは、ライニング材122bにおいてディスクロータ11に接触して前進時ディスク回出側に移動する。すると、この摩擦パッド102bは、裏板121bの側面部142bにおいて、前進時ディスク回出側であるパッド支持部33Bbのトルク受面81Bに当接する。これにより、キャリパ本体15bが主としてパッド支持部33Bbで、インナ側の摩擦パッド102bの制動トルクを受ける。
車両の後退制動時に、インナ側の摩擦パッド102bは、ライニング材122bにおいてディスクロータ11に接触して後退時ディスク回出側に移動する。すると、この摩擦パッド102bは、裏板121bの側面部141bにおいて、後退時ディスク回出側であるパッド支持部32Bbのトルク受面71Bに当接する。これにより、キャリパ本体15bが主としてパッド支持部32Bbで、インナ側の摩擦パッド102bの制動トルクを受ける。
インナ側において、前進時ディスク回入側のパッド支持部32Bbは、その平面部73Bbが、前進時ディスク回出側のパッド支持部33Bbの平面部83Bbよりも、ディスク径方向外側に配置されている。言い換えれば、インナ側の摩擦パッド102bの延出部131bを係止する係止面である平面部73Bbは、インナ側の摩擦パッド102bの延出部132bを係止する係止面である平面部83Bbよりもディスク径方向外側に配置されている。これにより、インナ側の摩擦パッド102bにパッドスプリングの荷重が前進時ディスク回出側に負荷されても、インナ側の摩擦パッド102bが傾き難くなる。
すなわち、平面部73Bbと平面部83Bbとがディスク径方向の同等位置に配置されていると、パッドスプリングの付勢力で、インナ側の摩擦パッド102bが、前進時ディスク回入側の延出部131bを、前進時ディスク回出側の延出部132bよりもディスク径方向内側に位置させるように傾いてしまう可能性がある。このように傾くと、インナ側の摩擦パッド102bは、側面部142bが、そのディスク径方向内側の部分においてトルク受面81Bに線接触するように傾いてしまう。変形例では、このような傾きを抑制して、側面部142bをトルク受面81Bに面接触で当接させることができる。その結果、耐トルク摩耗性が向上し、耐振性が向上して、ラトル音およびブレーキ鳴きの発生を抑制することができる。
以上に述べた本実施形態の第1の態様は、摩擦パッドをディスク軸方向に移動可能に係止する係止部材と、前記摩擦パッドをディスクロータへ押圧する押圧部材と、を備えている。前記摩擦パッドは、前記ディスクロータに接触するライニング材と、該ライニング材が貼付される裏板と、を有している。前記裏板には、ディスク回転方向端部側に、前記摩擦パッドの長手方向に対して傾いた方向に延出する延出部が形成されている。前記係止部材は、前記延出部の延出方向に沿って広がる平面部を有するパッド支持部を備えている。前記延出部が、前記パッド支持部に係止される。これにより、コストを低減することが可能となる。
また、第2の態様は、第1の態様において、前記摩擦パッドは、前記延出部が前記ディスクロータの最外周よりもディスク径方向外側に配置される。
また、第3の態様は、第1または第2の態様において、前記パッド支持部の前記平面部と該平面部に対向する前記延出部の対向面部とが直接当接する。
また、第4の態様は、第1乃至第3のいずれか一態様において、一対の前記摩擦パッドが前記係止部材に係止される。該係止部材は、前記押圧部材としてのピストンが収容され、互いに対向して配置される一対のシリンダ部と、該一対のシリンダ部のディスク回転方向における端部において前記ディスクロータを跨いで前記一対のシリンダ部を連結する一対の連結部と、を有している。前記連結部に、前記パッド支持部が設けられている。
また、第5の態様は、第4の態様において、前記係止部材は、一方の前記摩擦パッドの前記延出部を係止する前記パッド支持部の前記平面部と、他方の前記摩擦パッドの前記延出部を係止する前記パッド支持部の前記平面部とが、ディスク軸方向に連続している。
また、第6の態様は、第1乃至第5のいずれか一態様において、ディスク回入側の前記パッド支持部は、ディスク回出側の前記パッド支持部よりも、ディスク径方向外側に配置されている。
また、第7の態様は、第6の態様において、ディスク回入側の前記パッド支持部は、前記摩擦パッドの配置方向に向くトルク受面とディスク径方向外側に向く平面部との境界位置が、ディスク回出側の前記パッド支持部の前記摩擦パッドの配置方向に向くトルク受面とディスク径方向外側に向く平面部との境界位置よりも、ディスク径方向外側に配置されている。
第8の態様は、ディスクロータを跨いで対向して設けられる一対の摩擦パッドをディスクロータに押圧可能に支持するパッド支持部を有するキャリパである。前記パッド支持部は、前記摩擦パッドの配置方向に向くトルク受面と、ディスク径方向外側に向く平面部とから構成されている。前記平面部が前記キャリパのロータ回転方向における中心から離れる方向に傾斜している。
第9の態様は、第8の態様において、前記パッド支持部は、ディスク径方向外側における前記トルク受面と前記平面部との境界位置がディスク回転方向における一方側と他方側とで異なる。