以下の実施形態においては、便宜上必要があるときは、複数のセクションまたは実施形態に分割して説明する。以下の実施形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。尚、以下の実施形態において、その構成要素(処理ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。
以下、図面等を用いて、実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、実施形態に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
[第1実施形態]
図1は締固め機械の概略を示す側面図であり、図2はスクレーパ装置の機械構成を示す斜視図である。締固め機械21は、鉄輪およびタイヤなどから構成され、表面材を締め固める転圧輪1を有する。また締固め機械21は、転圧輪1を支持するフレーム2と、ステアリングハンドル3、運転席17、制御装置22を備える車体本体18とを有する。また、転圧輪1の前輪19は、オペレータによるステアリングハンドル3の操作に従い、車体本体18に対して左右に旋回することにより、締固め機械21の操向を行う。
締固め機械21は、地面に対して振動あるいは重量を加えることで締固めを行う。この締固めの際、転圧輪1の表面に加熱アスファルトや泥などの付着物が付着したままで転圧を続けると、舗装・転圧の品質に悪影響を及ぼす。そこで締固め機械21には、図2に示すスクレーパ装置12が設けられており、スクレーパ部材4が転圧輪1の表面に接触して摺動することで、付着物を除去する。図2では、後輪20用のスクレーパ装置12を図示しているが、前輪19用のスクレーパ装置12も、同様構成で設けられている(図1参照)。
スクレーパ装置12は、転圧輪1の表面形状に合わせた曲面形状の下縁を有するブレード部材もしくはブラシ部材から成るスクレーパ部材4を有する。スクレーパ部材4は、締固め機械21のフレーム2に支持されたベースコネクタ5、スクレーパコネクタ6、バー7などを介して、フレーム2と接続している。スクレーパ部材4の下縁が転圧輪1の表面と接触し、転圧輪1が例えば矢印23の方向に回転し、この回転に伴いスクレーパ部材4が転圧輪1の表面上を摺動することで、スクレーパ装置12は、転圧輪1の表面に付着した付着物を除去する。尚、前輪19用のスクレーパ装置12も同様の構成を有しており、転圧輪1(前輪19)の表面に付着した付着物を除去することができる。
図3は、スクレーパ装置12の動作を制御するための、第1実施形態における制御ブロックの一例を示す図である。図3に示すとおり、第1実施形態の締固め機械21は、転圧輪1の表面に付着した付着物を検出する付着物検出装置10と、前輪19、後輪20の回転速度を検出する回転速度センサ11とを有する。これらは、制御装置22と接続しており、各種信号やデータを制御装置22に出力する。
制御装置22は、スクレーパ部材4を転圧輪1に接触させ、もしくはスクレーパ部材4が転圧輪1から離間するように制御するコントローラである。制御装置22は、例えば演算処理装置、記憶装置などをハードウェア構成に含んでおり(詳細は図14を用いて後述する)、入力した各種信号やデータを用いて演算し、アクチュエータ9に制御用の電気信号(電流)を出力する。アクチュエータ9は、スクレーパ装置12に設けられており、入力した電気信号を機械的動作に変換してスクレーパ部材4を動作させ、転圧輪1に対してスクレーパ部材4を接触状態にしたり、離間状態にしたりする。
図4を用いて付着物検出装置10について説明する。付着物検出装置10は、例えば3D-LiDARなどのセンサであり、付着物検出範囲8内の表面プロファイルを読み取り、転圧輪1に付着している付着物13の位置を示す座標値を検出する。付着物13の形状は、付着物検出装置10により得られる座標値の集合により特定され、また得られる座標値に基づき寸法や体積などが算出される。付着物検出装置10の必要最低画角29は、付着物検出装置10の位置から転圧輪1の表面に向けた2つの接線28を含むように設けられている。また必要最低画角29は、接線28上の接点P1、P2において、付着物13の高さH(付着物13の厚み)を少なくとも検出することができるように設けられている。これらに加え、必要最低画角29は、転圧輪1に多少の揺動が発生した場合でも付着物13の高さHを検出できるように設けられている。
また付着物検出装置10は、付着物13の検出の際にスクレーパ部材4によって遮られないように、すなわち付着物検出装置10から接点P1、P2までの間に何も遮る物体が無いように位置決めされているものとする。
このような配置とすることで、転圧輪1が矢印23の方向に回転して締固め機械21が前進する場合、付着物13の前端部13aが接点P1に到達すると、付着物検出装置10は、付着物13の存在を検知するとともに、接点P1における付着物13の幅Wや高さHを検出することができる。また一方で、転圧輪1が逆回転して締固め機械21が後進する場合においても、付着物13の後端部13bが接点P2に到達すると、付着物検出装置10は、付着物13の存在を検知するとともに、接点P2における付着物13の幅Wや高さHを検出することができる。
配置構成上の都合により、単一の付着物検出装置10を用いて転圧輪1の両接線上にある付着物13の高さHを検出できない場合は、図5のように、付着物検出装置10を複数設置してもよい。図5は、転圧輪1の後方側の付着物13を検出する付着物検出装置10a、転圧輪1の前方側の付着物13を検出する付着物検出装置10bの2つの検出装置を設けた構成を例示している。この構成においても、スクレーパ部材4の前端部40a側の接線28上、および後端部40b側の接線28上に付着物13が到達した場合、その付着物13の存在を検知し、幅Wや高さHなどの寸法も検出することができる。
尚、図4および図5では、後輪20の付着物検出装置10について示したが、前輪19側も同様に、付着物検出装置10が配置されている。
図3に戻り、引き続き第1実施形態の制御動作について説明する。まず、転圧輪1の回転速度を検出する回転速度センサ11が、前輪19、後輪20それぞれの回転パルス信号と時間情報Tωを制御装置22に出力する。制御装置22内の回転速度演算部25は、回転速度センサ11からの信号に応じて転圧輪1の車輪回転速度ωを算出する。この車輪回転速度ωは、付着物情報演算部26およびアクチュエータ制御部27に出力される。この回転速度センサ11、回転速度演算部25の動作は、規定のサイクルごとに常時繰り返し行われる。
一方、付着物検出装置10は、転圧輪1の接線28上の表面プロファイルを広角スキャンし、座標データと時間情報を取得する。制御装置22内の付着物情報演算部26は、付着物検出装置10により得られた各種情報を入力し、付着物13が付着しているかの判定を行う。この動作も、付着物検出装置10の読み取り動作と連動して、常時繰り返し行われる。尚、付着物13が無い場合、付着物検出装置10は、転圧輪1の表面形状を示す座標値のみを検出するが、付着物13がある場合は、接点P1または接点P2の近傍に、転圧輪1の表面形状とは異なる形状を構成する物体を検出する。本実施形態では、このように転圧輪1の表面形状とは異なる形状を検知した場合、付着物13が付着しているとして扱う。
以降の動作については、図6のフローチャートも参照しつつ説明する。付着物13を検出した場合(S101:あり)、付着物情報演算部26は、付着物13の長さL、幅W、高さHを演算により求め、付着物13の体積Vを算出する。一方、付着物13が検出されない場合(S101:なし)、処理はS111に進み、アクチュエータ制御部27がアクチュエータ9に対してスクレーパ部材4の接触状態を解除して離間状態とするための解除信号を出力する(S111)。
付着物13の長さLは、付着物13の前端部13aと後端部13bとを結んだ円弧Lで示される(図4参照)。付着物情報演算部26のL演算部30は、付着物13の前端部13aを検出した時間TLaと付着物13の後端部13bを検出した時間TLbを、付着物検出装置10から取得するか、もしくは制御装置22の内蔵クロックから取得する。尚、L演算部30は、現在処理している座標データと1サイクル前の座標データとの差分により、時間TLa、TLbを計時する。すなわちL演算部30は、接点P1または接点P2において付着物13が無い状態から付着物13がある状態となったときの時間を時間TLaとして計時し、付着物13がある状態から付着物13が無い状態となったときの時間を時間TLbとして計時する。
そしてL演算部30は、時間TLaと時間TLbとの差分時間TL1を算出する。車輪回転速度をωとした場合、円弧Lは、L=2TL1πrωにてあらわされるため(ここでrは転圧輪1の半径)、L演算部30は、この式を用いて円弧Lを算出する。尚、車輪回転速度ωは回転速度演算部25から取得するものとするが、他の速度センサからの値を使用してもよい。
またL演算部30は、これに加えて、付着物13の前端部13aを検知してから前端部13aがスクレーパ部材4の後端部40bに到達するまでの到達時間Txを、車輪回転速度ωに基づき算出する。図4の例において、付着物検出装置10は接点P1で付着物13の前端部13aを検出することとなるため、接点P1からスクレーパ部材4の後端部40bまでの距離(規定値)をXとすると、L演算部30は、Tx=X/2πrωを用いて到達時間Txを算出する。また一方で、締固め機械21が後進している場合、L演算部30は、付着物13の後端部13bを検知してからスクレーパ部材4の前端部40aに到達するまでの到達時間Tyを求める。この時間Tyの求め方も、時間Txの求め方と同手法となる。すなわち、接点P2からスクレーパ部材4の前端部40aまでの距離(規定値)をYとした場合、L演算部30は、Ty=Y/2πrωを用いて時間Tyを求める。
上記のようにして付着物13の長さが算出されるが、付着物13の幅W、および高さHは、付着物検出装置10から入力する座標値を用いて得ることができる。ここで付着物13の幅Wは、転圧輪1の回転軸方向における付着物13の長さであり、高さHは、上記のとおり付着物の厚さである。H/W演算部31は、付着物検出装置10から得られる座標値と、付着物が無いときの座標値との差分データから、この幅Wと高さHとを算出することができる。本実施形態では、付着物が無いときの座標値を事前に取得しておき、これを記憶装置に記憶させておくものとする。また付着物検出装置10は、接点P1、P2の位置で検出された付着物13の断面形状を随時検出して得ているが、転圧輪1は回転しているため接点P1、P2上における断面形状は常時変化しており、得られる幅Wと高さHの寸法は、その時々で異なる。このため本実施形態では、付着物13の最端部を検出してから、今現在までに得られた幅、高さのうちで最長となる幅、高さを、付着物13の幅W、高さHとしてそれぞれ採用するものとする。
V演算部32は、これら付着物13の長さL、幅W、高さHを、L演算部30およびH/W演算部31から取得し、付着物13の体積Vを計算する。そしてV演算部32は、算出した体積Vをアクチュエータ制御部27に出力する。
アクチュエータ制御部27は、体積VをV演算部32から取得し、体積Vに基づきスクレーパ装置12を作動させるか否かの判定を行う(S103)。
本実施形態では、試験的に付着物を付着させた状態で締め固めを行い、付着物の体積がどの程度の場合に施工面の高低差がどの程度生ずるかの平坦性試験を事前に行っておく。そしてこの平坦性試験により得られる結果から、高低差が規定値を超える体積(閾値Vthとする)を導出し、閾値Vthを記憶装置に事前に記憶させておく。尚、社団法人日本道路協会が定める施工面の平坦性(高低差)の許容値は、加熱アスファルト化合物の場合2.4mmとなっていることから、この2.4mmを上記高低差の規定値として、閾値Vthを求めてもよい。
作動有無判定部34は、付着物情報演算部26から取得する体積Vが閾値Vthを超える場合(S103:作動必要)、処理をS104に進める。一方、付着物情報演算部26から取得する体積Vが閾値Vth以下の場合(S103:規定値以下)、処理をS111に進めて、アクチュエータ制御部27は、スクレーパ部材4が転圧輪1から離間するように制御を解除する。
また一方で、アクチュエータ制御部27は、作動させる場合はその作動タイミングを算出する(S104)。この算出処理は、作動タイミング演算部33で行われる。作動タイミング演算部33は、差分時間TL1、付着物13の到達時間Tx(後進している場合はTy)を、L演算部30から取得する。
作動タイミング演算部33は、締固め機械21が前進している場合は到達時間Txを用いて作動タイミングTsxを算出し、後退している場合は到達時間Tyを用いて作動タイミングTsyを算出する。締固め機械21が前進している場合のスクレーパ装置12の作動タイミングTsxは、付着物13の前端部13aがスクレーパ部材4の後端部40bに到達するまでの時間Txよりも短くなくてはならない。よって作動タイミング演算部33は、例えば時間Txを規定値で減算するなどの方法を用いて、作動タイミングTsxを算出する。また、締固め機械21が後進している場合のスクレーパ装置12の作動タイミングTsyは、付着物13の後端部13bがスクレーパ部材4の前端部40aに到達するまでの時間Tyよりも短くなくてはならない。よって作動タイミング演算部33は、例えば時間Tyを規定値で減算するなどの方法を用いて、作動タイミングTsyを算出する。尚、ここでは規定値で減算するものとしているが、作動タイミング演算部33は、回転速度演算部25より得られる車輪回転速度ωを用いて減算する値を求め、時間Tx、Tyをこの値で減算し、作動タイミングTsx、またはTsyを算出してもよい。作動タイミング演算部33は、算出した作動タイミングTsx、またはTsyを、電流出力決定部35に出力する。
また一方で、作動有無判定部34は、体積Vが閾値Vthを超える場合、スクレーパ装置12が既に制御されて接触状態となっているかを判定する(S105)。ここで既に接触状態となっている場合(S105:制御あり)、作動有無判定部34は、この作動制御を継続して行うように電流出力決定部35に指令する(S107)。電流出力決定部35は、この指令に従って電流(制御信号)の出力を維持する。一方、接触状態となっていない場合(S105:制御なし)、作動有無判定部34は、スクレーパ装置12の作動制御を開始するように、電流出力決定部35に指令する(S106)。
作動有無判定部34から指令を受けた電流出力決定部35は、指令内容に従い、アクチュエータ9に制御信号を出力する。これにより電流出力決定部35は、スクレーパ部材4が転圧輪1に接触もしくは離間するように制御する。
アクチュエータ制御部27の電流出力決定部35は、この制御信号を出力するに際し、作動タイミングTsxもしくはTsyでアクチュエータ9が作動するように、スクレーパ装置12の作動タイミングを制御する。これにより、スクレーパ部材4は当該作動タイミングで転圧輪1に接触する。この接触が維持された状態で転圧輪1が回転することで、スクレーパ部材4は転圧輪1に付着した付着物13を除去する。また、スクレーパ装置12が作動して時間TL1が経過した後、電流出力決定部35は、信号出力を停止してスクレーパ装置12の作動制御を停止する。これにより、S111の動作と同様にスクレーパ部材4は転圧輪1から離間する。
第1実施形態では、体積Vを算出してこの算出した体積により作動制御を行うか否かを判定しているが、施工面の平坦性(高低差)を評価するにあたっては、付着物13の長さ、幅、高さの中で高さの影響が大きくなる。このことから、作動有無判定部34は、体積Vに代えて高さHを入力し、この高さHと閾値(例えば平坦性の上記許容値2.4mm)とを比較してもよい。尚、この態様については第2実施形態で改めて説明する。
第1実施形態では、付着物の量に応じてスクレーパ部材を転圧輪に接触させるか、非接触にするのかを制御する実装例について説明した。また第1実施形態では、付着物の体積や高さを付着物の量を示す値として採用し、この値と閾値とを比較して接触の要否を判定した。これに対し、付着物の長さや幅を付着物の量を示す値として採用してもよく、体積、長さ、幅、高さのいずれかを組み合わせたデータセットを、付着物の量を示す値として採用してもよい。もしくは、付着物の重さを直接的もしくは間接的(例えば体積や比重を用いるなど)に求めることができる場合、この重さを付着物の量を示す値として採用してもよい。
[第2実施形態]
上記第1実施形態では、締固め機械21が直進する場合などには有効である。しかしながら、例えば後輪20(前輪19であってもよい)が、締固め機械21の進行方向に直行する左右方向に複数車輪が並んで成る構成であり、これらが個別に回転する場合、車両旋回の際に内輪と外輪とでは回転速度に差が生ずる。第2実施形態では、この内輪と外輪の速度差を考慮した実装例について説明する。
締固め機械による作業の場合、締固めの領域(レーン)を切り替える際は締固め機械21の前輪19が回頭してレーンチェンジを行う。この場合、複数の車輪により構成される後輪20は、上記のとおり内輪と外輪とで車輪回転速度に差が発生する。そのため、第2実施形態の締固め機械21は、後輪20を構成する車輪ごとに回転速度センサを搭載する。図7は、この構成例を示すブロック図である。回転速度センサ11a、11b、11c、11d(図7では回転速度センサ11b、11cの表記を省略している)は、それぞれで各車輪の回転速度を測定する。回転速度演算部25は、回転速度センサ11a~11dから、それぞれ検出値を入力し、車輪ごとの回転速度ω1~ω4を算出して回転速度決定部36に出力する。回転速度決定部36は、回転速度ω1~ω4の中から、最も速く回転している回転速度をωf、最も遅く回転している回転速度をωsとして決定し、アクチュエータ制御部27、およびL演算部30に出力する。
スクレーパ装置12を接触状態にする際、アクチュエータ制御部27は、最も速く回転している回転速度ωfを選択し、これを演算に用いることで、付着物13の除去を開始するタイミングが遅れないように作動制御を行うことができる。また、スクレーパ装置12を離間状態にする際、アクチュエータ制御部27は、最も遅く回転している回転速度ωsを選択し、これを演算に用いることで、付着物13の除去を終了するタイミングが早まることを防ぐように作動制御を行うことができる。
L演算部30は、最も遅く回転している回転速度ωsを演算に用いて付着物13の長さLを算出する。これにより、付着物13の長さLが長く算出される傾向となり、体積Vも大きく見積もるようになる。よって、第1実施形態で説明したような体積Vと閾値Vthとを比較することで作動有無を判定する構成の場合、体積Vが閾値Vthを超えてスクレーパ装置12を接触状態にする傾向となるため、付着物13の除去漏れを低減させることができる。
また、車輪ごとに回転速度センサを配置することが困難な場合の態様例を、図8、図9を用いて説明する。図8は、締固め機械21(破線で図示)を上方から視認した場合の模式図であり、ステアリング角度に基づき旋回時の各車輪の速度を求めることを説明するための図である。また図9は、当該動作を行う構成を例示したブロック図である。尚、ここでは、前輪19が3輪、後輪20が4輪で構成される締固め機械21を例示している。
図9に示す回転速度演算部25は、ステアリング角度検出装置38から得られるステアリング角度φを基に、各車輪の回転速度を算出する。まず、前輪旋回半径rf(図8参照)は、rf=Lv/sinφで求めることができる。ここで、Lvは前輪19の回転軸と後輪20の回転軸との間の距離、φはステアリング角度である。また、前輪19の中央に位置する車輪19bの速度をV0とした場合、角速度ωvはωv=V0/rfで示される。
回転速度演算部25は、前輪旋回半径rf、角速度ωvを用いて、前輪側の車輪19a、19c、後輪側の車輪20a、20b、20c、20dそれぞれの速度V1~V6を算出する。速度V1~V6は、それぞれV1=ωv(rf-df)、V2=ωv(rf+df)、V3=ωv(rr-1.5dr)、V4=ωv(rr-0.5dr)、V5=ωv(rr+0.5dr)、V6=ωv(rr+1.5dr)であらわされる。ここで、dfは車輪19a~19cそれぞれの横幅、rrは後輪旋回半径、drは車輪20a~20dそれぞれの横幅である。またここでは、車輪のすべりを考慮していない。
回転速度演算部25は、このようにして得られた速度V0~V6を用いて、回転速度ω0~ω6をそれぞれ算出する。そして回転速度演算部25は、図7に示す回転速度決定部36の処理と同様に、最も速く回転している回転速度をωf、遅く回転している回転速度をωsとして決定し、アクチュエータ制御部27や付着物情報演算部26に出力する。アクチュエータ制御部27や付着物情報演算部26の動作は、上記図7を用いて説明したとおりとなる。
また第2実施形態のアクチュエータ制御部27は、図7や図9に示すように押し付け力演算部37を有している。押し付け力演算部37は、スクレーパ部材4を転圧輪1に押し付ける力(押し付け力F)を演算する。押し付け力Fは、従来のスクレーパ装置が転圧輪に対して押し付ける力を基準値とし、付着物13の体積Vに応じて増減する。
ここでは、付着物情報演算部26から得られる体積Vが第1閾値以上の場合、押し付け力演算部37は、上記基準値となるように押し付け力Fを設定し、第1閾値よりも小さい場合、上記基準値に規定の値を減算させて、これを押し付け力Fとして設定する。この実装により、従来の押し付け力に比べ、押し付け力が減少傾向となるため、スクレーパ部材4の消耗をさらに低減させることができる。または、体積Vが事前に定義される第1閾値以上の場合、押し付け力演算部37は、上記基準値に規定の値を加算して、これを押し付け力Fとして設定してもよいし、体積Vが第1閾値よりも小さい場合、上記基準値となるように押し付け力Fを設定してもよい。この実装により、従来の押し付け力に比べ、押し付け力が増加傾向となるため、付着物13の1回での除去率が向上する。尚、この例では、1つの閾値(第1閾値)を用いて設定していることから、押し付け力Fの設定段数は2段階となるが、複数の閾値を事前に設けて、これに応じた押し付け力Fを定義しておくことで、押し付け力Fを多段階に設定することも可能である。
また、どの程度の体積の場合にどの程度の押し付け力とするのかを対応付けたテーブルを、事前に記憶装置に記憶させておき、押し付け力演算部37がV演算部32より得られる体積Vに基づき当該テーブルを検索し、押し付け力Fを得る実装でもよい。もしくは、体積Vから押し付け力Fを得ることができる数式を事前に設けておき、押し付け力演算部37がこの式を用いて押し付け力Fを算出しても構わない。
尚、第1閾値、対応テーブルの各値、押し付け力を算出するための数式は、どの程度押しつけると付着物13を除去できるかの試験を、体積Vに応じて事前に行うことで求められる。
押し付け力演算部37は、導出した押し付け力Fの値をアクチュエータ制御部27内の電流出力決定部35に出力する。
アクチュエータ制御部27内の電流出力決定部35は、押し付け力演算部37から押し付け力Fを取得し、これに応じた電流値(制御信号)に変換してアクチュエータ9に出力する。スクレーパ装置12は、アクチュエータ9より動力を得て、接触/離間の動作を制御するとともに、接触動作の場合は、付着物13の体積Vに応じた押し付け力Fでスクレーパ部材4を転圧輪1に押し付ける。
尚、上記例では、付着物13の体積Vに応じた押し付け力Fでスクレーパ部材4を転圧輪1に押しつけるものとするが、押し付け力演算部37は、付着物の長さ、幅、高さ、重さに応じて押し付け力Fを決定し、当該押し付け力Fでスクレーパ部材4を押し付ける実装でも構わない。
また第2実施形態では、図7や図9に示すように、H/W演算部31が付着物13の高さHをアクチュエータ制御部27に出力する。そして作動有無判定部34は、高さHと閾値Hth(例えば上記の平坦性の許容値2.4mm)との比較処理を行うものとする。高さHが閾値Hthを超える場合、上記の押し付け力演算部37による押し付け力Fの導出処理が行われる。高さHが閾値Hth以下の場合、アクチュエータ制御部27は、スクレーパ部材4が転圧輪1から離間した状態となるように制御する。
[第3実施形態]
図10~図13を用いて第3実施形態の態様について説明する。第1実施形態、第2実施形態では、一体となって動作するスクレーパ部材を制御することで、転圧輪1に付着した付着物13を除去していたが、第3実施形態では、複数のスクレーパ部材を個別に制御して付着物13を除去する態様例について説明する。
図10は、第3実施形態のスクレーパ装置の機械構成を示す斜視図である。図10に示すとおり、第3実施形態の転圧輪1は、左右方向に並んで配置する車輪1a、1b、1c、1dにより構成されている。また車輪1a~1dごとに、それぞれアクチュエータ9a、9b、9c、9dが設けられている。スクレーパ部材4a、4b、4c、4dは、転圧輪1の回転軸の方向に並んで配置しており、各アクチュエータ9a~9dが、対応するスクレーパ部材4a~4dの接触/離間を個別に制御することで、より細かな制御が可能となる。
付着物13が車輪1a~1dのいずれかに集中して付着する場合などは、その他のスクレーパ部材4を磨耗させることなく運用することが可能となる。例えば、付着物13が図11に示すように転圧輪1に付着している場合、一体型のスクレーパ部材4で対処すると、非付着エリア15と摺動するスクレーパ部材4は作動不要ながらも接触し、磨耗してしまう。そのため、第3実施形態の締固め機械21は、複数に分けられたスクレーパ部材4a~4dを設け、各スクレーパ部材4a~4dが、それぞれ転圧輪1の一部領域と接触することで、当該一部領域に付着した付着物を除去する。各スクレーパ部材4a~4dにそれぞれ割り当てられた一部領域を、除去領域a~dと称する。
第3実施形態の制御装置22は、除去領域a~dごとに、付着物13の位置と量を計算し、各アクチュエータ9a~9dの作動タイミングを個別に計算して制御する。この構成により、作動する必要のないスクレーパ部材の寿命を延ばすことができる。
図11は、付着エリア14を除去領域に含むスクレーパ部材4b、4cを転圧輪1に接触させるように制御した態様例を示している。すなわち付着物13は、スクレーパ部材4bが除去を担う除去領域b、およびスクレーパ部材4cが除去を担う除去領域cに付着しているため、制御装置22は、スクレーパ部材4b、4cを転圧輪1に接触させるように制御する。逆に、除去領域aおよび除去領域dには付着物が無いため、制御装置22は、スクレーパ部材4a、4dを転圧輪1から離間するように制御する。これにより、少なくともスクレーパ部材4a、4dの摩耗を低減させて寿命を延ばすことができる。このような実装により、スクレーパ部材4の交換頻度を全体的に低減させることができ、部品交換によるコストを低減することができる。
図12は、第3実施形態における機能ブロックの構成を示した図である。制御装置22内の座標切出し部121は、付着物検出装置10より得られる座標データを、除去領域a~dに区分して切出す。そして座標切出し部121は、切出した座標データを、付着物情報演算部26にそれぞれ出力する。
付着物情報演算部26内には、スクレーパ部材4a~4dごと(アクチュエータ9a~9dごと)に、専用のL演算部30、H/W演算部31、V演算部32が設けられている。アクチュエータ制御部27内も、アクチュエータ9a~9dごとに、専用の作動タイミング演算部33、電流出力決定部35、押し付け力演算部37、作動有無判定部34が設けられている。この構成により、制御装置22はアクチュエータ9a~9dを個別に制御することができる。
また転圧輪1が車輪1a、1b、1c、1dにより構成されている場合、第2実施形態で説明した態様を適用することで、回転速度演算部25は、各車輪1a、1b、1c、1dの車輪回転速度ωをそれぞれ算出することができる。そして回転速度演算部25は、付着物情報演算部26、アクチュエータ制御部27に車輪1a~1dの車輪回転速度ωをそれぞれ出力する。
上記の構成により、第3実施形態では、付着物検出装置10により検出された付着物の座標データが座標切出し部121により切出された後は、第1、第2実施形態で説明した動作をアクチュエータ9a~9dごとに行うことができる。これによりスクレーパ装置12は、除去領域a~dごとに付着物の除去を行うことができる。
図13は、第3実施形態における動作例を示すフローチャートである。第3実施形態では、第1実施形態の図6と同様に、付着物の有無の判定処理が行われる(S201)。第3実施形態では、この処理は座標切出し部121により行われるものとする。付着物がない場合(S201:なし)、第1実施形態と同様にスクレーパ部材の制御解除の処理が行われて離間動作となる(S211)。一方、付着物がある場合(S201:あり)、座標切出し部121は、スクレーパ部材の個数分(すなわち除去領域a~dごと)に座標データを切出す(S202)。以降の動作は、各スクレーパ部材4a~4dの単位で個別に行われる(図13の例では、「A」・・・「D」と表記している)。またS203~S207の動作は、第1実施形態のS103~S107と同様である。
尚、第3実施形態では、S206またはS207の後に、付着物情報演算部26は、座標切出し部121により切出された座標データを取得して、自己の除去領域内での付着物の有無を判定する(S208)。付着物が無い場合(S208:なし)、処理はS211に進む。付着物がある場合(S208:あり)、作動有無判定部34は、閾値を用いて比較することで、作動が必要な量(体積)であるかの判定を行う(S209)。作動不要である場合(S209:規定値以下)、処理はS211に進み、作動する必要がある場合(S209:作動必要)、処理はS204に戻る。これらS208、S209の動作は、1回で領域内の付着物を除去することができない場合を想定している。すなわち制御装置22は、スクレーパ装置12の制御中に再度確認し、除去領域ごとに、その残存量に応じて作動を継続するか否かを判定する。付着物13が残存していれば、当該除去領域については接触を継続し、付着物13の除去が完了していれば、当該除去領域での接触制御を解除する。
第3実施形態では、4つの除去領域に分けた例を説明したが、この領域の分割数は、これに限定されない。またここでは、複数の車輪を左右方向に並べた態様例を示したが、一体となった車輪に対しても、第3実施形態の態様を適用させることができる。また第3実施形態では、車輪と除去領域とを1:1で一致させた例を示しているが、態様はこれに限定されず、必ずしも一致していなくてもよい。
最後に、図14を用いて上記各実施形態で説明した制御装置22のハードウェア構成例を説明する。制御装置22は、図14に例示するように従前のコンピュータと同様のハードウェア構成となっている。
CPU101(CPU:Central Processing Unit)は、ROM103(ROM:Read Only Memory)やストレージ104に記憶されているプログラムを、RAM102(RAM:Random Access Memory)に展開して演算実行する処理装置である。CPU101は、プログラムを演算実行することで、制御装置22の内部の各ハードウェアを統括的に制御する。RAM102は揮発性メモリであり、CPU101との間で直接的にデータの入出力を行うワークメモリである。RAM102は、CPU101がプログラムを演算実行している間、必要なデータを一時的に記憶する。
ROM103は不揮発性メモリであり、CPU101で実行されるファームウェアを記憶している。ストレージ104は、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブなどの補助記憶装置である。ストレージ104は、CPU101が演算実行するプログラムや、パラメータなどの制御データを不揮発的に記憶する。
接続I/F105は、各種周辺機器などと接続するためのインターフェイス群である。接続I/F105は、例えば回転速度センサ11、付着物検出装置10からの信号やデータを入力可能なインターフェイスを有し、アクチュエータ9に制御信号を出力可能なインターフェイスを有している。
制御装置22は、上記のような構成を有しているが、一部もしくは全てを、例えばASICなどの集積回路で実装してもよい。尚、一部もしくは全てが集積回路などで実装されている場合においても、当該構成はコンピュータの一形態とみなされる。また、図3、図7、図9、図12に示す各ブロックは、図14に示すCPU101が、プログラムを演算実行することで実現されるものとする。
上記の各実施形態の説明では、制御装置22に内在している回転速度演算部25、付着物情報演算部26、アクチュエータ制御部27などの機能部が動作主体となって各処理を行うものとして説明した。これら機能部の動作は、当然、制御装置22による動作と換言することができる。すなわち、各実施形態で説明した各機能部による動作や処理は、制御装置22による動作や処理とすることができる。
上記各実施形態において、制御装置は、付着物の量が閾値を「超える」場合、スクレーパ部材が転圧輪に接触するように制御を行い、付着物の量が閾値「以下」となる場合、スクレーパ部材が転圧輪から離間するように、制御を解除している。このように上記各実施形態では、付着物の量と閾値とが同値である場合、制御を解除して離間するものとしているが、付着物の量が閾値「以上」である場合は接触制御し、閾値「未満」となる場合は制御を解除する、との実装でも構わない。すなわち、制御装置は、付着物の量が閾値を「少なくとも上回った」場合に接触制御を行い、当該制御を行っているときに付着物の量が閾値を「少なくとも下回った」場合、この制御を解除してスクレーパ部材を転圧輪から離間させる構成であればよい。
以上、各実施形態により、付着物の量に応じてスクレーパ部材の押し付け有無を制御することができ、付着物の大小によりスクレーパ部材を転圧輪に接触もしくは離間するように制御することができる。これにより、スクレーパ部材の磨耗を低減させることができる。また、スクレーパ部材を押し付ける力とタイミングを制御することによって、スクレーパ部材の磨耗を、さらに低減させることができる。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、説明した必ずしもすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。