以下、本発明の一実施形態を図1~図23に基づいて説明する。
<外観構成>
本発明を適用した、本実施形態のヒートポンプ熱源機として、複合熱源型のヒートポンプ熱源機1の主要なユニットの外観構成を図1に示す。図1において、本実施形態のヒートポンプ熱源機1は、外郭としての筐体4Aを備えた地中熱ヒートポンプユニット4と、外郭としての筐体5Aを備えた空気熱ヒートポンプユニット5と、熱交換端末36に循環液L(例えば、水や不凍液)を循環させる、負荷側回路としての端末循環回路30と、地中熱循環回路20とを有している。
<回路構成>
本実施形態のヒートポンプ熱源機1全体の回路構成を図2に示す。図2に示すように、上記ヒートポンプ熱源機1は、上記地中熱ヒートポンプユニット4に備えられ、地中熱源を利用して少なくとも1つの上記熱交換端末36(この例では2つの熱交換端末36,36。以下適宜、単に「熱交換端末36」と総称する)側の循環液Lを加熱または冷却可能な第1ヒートポンプ回路としての地中熱ヒートポンプ回路40と、上記空気熱ヒートポンプユニット5に備えられ、空気熱源を利用して上記熱交換端末36側の循環液Lを加熱または冷却可能な第2ヒートポンプ回路としての空気熱ヒートポンプ回路50と、上記端末循環回路30と、地中熱循環回路20とを有している。
図2において、地中熱ヒートポンプ回路40は、能力可変の第1圧縮機43と、第1負荷側熱交換器としての第1熱交換器41と、第1膨張弁44と、第1熱源側熱交換器としての地中熱源熱交換器45とが、第1冷媒配管42によって環状に接続されている。この第1冷媒配管42には、上記地中熱ヒートポンプ回路40における第1冷媒C1(後述の図3及び図4参照)の流れ方向を切り換える四方弁46が設けられている。なお、第1圧縮機43、第1熱交換器41、及び地中熱源熱交換器45は、上記筐体4A内に内包されている。
上記第1熱交換器41及び上記地中熱源熱交換器45は、例えばプレート式熱交換器で構成されている。このプレート式熱交換器は、複数の伝熱プレートが積層され、第1冷媒C1を流通させる冷媒流路と熱媒である上記循環液L(または熱媒H1。後述の図3等参照)を流通させる流体流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されているものである。
また、第1圧縮機43から吐出された第1冷媒C1の温度は、第1冷媒吐出温度センサ42aによって検出される。同様に、第1熱交換器41から第1膨張弁44を介して地中熱源熱交換器45に至るまでの第1冷媒配管42に設けられた冷媒温度センサ42c,42bのうち、第1膨張弁44から地中熱源熱交換器45までの第1冷媒配管42に設けられた第1冷媒温度センサ42bによって、低圧側(暖房運転時)または高圧側(冷房運転時)の第1冷媒C1の温度が検出される。上記第1冷媒吐出温度センサ42a及び上記第1冷媒温度センサ42bの検出結果は、地中熱制御装置61へ入力される。
空気熱ヒートポンプ回路50は、能力可変の第2圧縮機53と、第2負荷側熱交換器としての第2熱交換器51と、第2膨張弁54と、第2熱源側熱交換器としての空気熱源熱交換器55とが、第2冷媒配管52によって環状に接続されている。空気熱源熱交換器55には、当該空気熱源熱交換器55に第2熱源としての空気(外気)を通風するための送風ファン56が設けられている。また、前記第2冷媒配管52には、上記空気熱ヒートポンプ回路50における第2冷媒C2(後述の図3及び図4参照)の流れ方向を切り換える四方弁58が設けられている。なお、第2圧縮機53、第2熱交換器51、空気熱源熱交換器55、及び送風ファン56は、上記筐体5A内に内包されており、筐体5Aには、前記送風ファン56による通風用の開口部5Bが備えられている(図1参照)。
上記第2熱交換器51は、前述と同様、例えばプレート式熱交換器で構成されており、上記第2冷媒C2を流通させる冷媒流路と上記循環液Lを流通させる流体流路とが各伝熱プレートを境にして交互に形成されているものである。
また、第2圧縮機53から吐出された第2冷媒C2の温度は、第2冷媒吐出温度センサ52aによって検出される。また、外気の温度が、外気温度検出手段としての外気温度センサ57によって検出される。上記第2冷媒吐出温度センサ52a及び上記外気温度センサ57の検出結果は、空気熱制御装置62へ入力される。また、上記外気温度センサ57の検出結果は、上記地中熱制御装置61にも入力される。
なお、上記地中熱ヒートポンプ回路40の上記第1冷媒C1、および、上記空気熱ヒートポンプ回路50の上記第2冷媒C2としては、例えばR410AやR32等のHFC冷媒や二酸化炭素冷媒等の任意の冷媒を用いることができる。
地中熱循環回路20は、回転速度(単位時間当たりの回転数)可変の地中熱循環ポンプ22と、地中熱源熱交換器45と、上記地中熱源熱交換器45を流通する上記第1冷媒C1と熱交換する第1熱源として(この例では地中に)設置された地中熱交換器23とが、熱媒配管としての地中熱配管21によって環状に接続されている。この地中熱配管21には、上記地中熱循環ポンプ22によって、エチレングリコールやプロピレングリコール等を添加した不凍液が熱媒H1(後述の図3及び図4参照)として循環されるとともに、上記熱媒H1を貯留し地中熱循環回路20の圧力を調整する地中用シスターン24が設けられている。なお、地中熱交換器23は、地中に設けられるのには限られず、例えば湖沼、貯水池、河川、海、温泉、井戸等の、比較的大容量の水源中に設けられ、それらから採放熱するようにしてもよい。
端末循環回路30は、上記第1熱交換器41と、上記第2熱交換器51と、ファンコイルや床暖房パネルやパネルコンベクタ等の負荷端末としての(この例では2台の)熱交換端末36とが、循環液配管としての負荷配管31によって上流側から順に環状に接続されている。なお、この例では、2つ熱交換端末36が、適宜のヘッダ(図示せず)を介して互いに並列に上記端末循環回路30において接続されている。上記負荷配管31には、端末循環回路30に上記循環液Lを循環させる循環液循環ポンプ32と、循環液Lを貯留し端末循環回路30の圧力を調整する冷暖房用シスターン35とが設けられている。上記循環液循環ポンプ32は、この例では、定速(一定回転数)にて回転するように構成されている。また、上記熱交換端末36は、特に図示しない端末用リモコンによって運転と停止の切り替え操作が可能であり、運転中には当該熱交換端末36の内部に循環液Lが流通する一方、運転停止中には当該熱交換端末36の内部に循環液Lが流通しない。なお、熱交換端末36は、図2では2つが並列に設けられているが、1つまたは3つ以上設けられてもよく、数量や仕様が特に限定されるものではない。
このとき、端末循環回路30においては、上記第1熱交換器41と上記第2熱交換器51とが直列に接続されており、かつ、上記したように、端末循環回路30を循環する循環液Lの流れに対して、上記第1熱交換器41が上記第2熱交換器51よりも上流側に配設されている。すなわち、上記ヒートポンプ熱源機1は、地中熱源を利用して熱交換端末36側の循環液Lを加熱または冷却する地中熱ヒートポンプ回路40の第1熱交換器41と、空気熱源を利用して熱交換端末36側の循環液Lを加熱または冷却する空気熱ヒートポンプ回路50の第2熱交換器51とが、端末循環回路30に対して直列に接続された、複合熱源ヒートポンプ熱源機となっているものである。
なお、負荷配管31には、熱交換端末36から第1熱交換器41に流入する循環液Lの温度を検出する、実温度検出手段としての戻り液温度センサ34が設けられており、その検出結果は、上記地中熱制御装置61及び上記空気熱制御装置62へ入力される。なお、空気熱制御装置62は、戻り液温度センサ34に直接接続されず、上記地中熱制御装置61を介して戻り液温度センサ34の検出結果を取得する構成でもよい。
ここで、上記ヒートポンプ熱源機1は、上記の四方弁46,58の切替によって暖房運転を行う暖房装置、若しくは、冷房運転を行う冷房装置、として選択的に機能させることができる。次に、図3及び図4を用いてこの暖房運転及び冷房運転について説明する。
<暖房運転時>
図3に、暖房運転時の状態を示す。なお、図示の煩雑を防止するために、図2に示していた各種の信号線は省略している。この図3に示す暖房運転時においては、上記地中熱ヒートポンプ回路40では、図示のように上記四方弁46が切り替えられることで、第1圧縮機43から吐出された第1冷媒C1を、第1熱交換器41、第1膨張弁44、地中熱源熱交換器45の順に流通させた後、第1圧縮機43に戻す流路を形成する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の第1冷媒C1が上記第1圧縮機43で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する上記第1熱交換器41において、上記端末循環回路30を流れる循環液Lと熱交換を行って上記循環液Lに熱を放出し加熱しながら高圧の液体に変化する。こうして液体となった第1冷媒C1は上記第1膨張弁44において減圧されて低圧の液体となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する上記地中熱源熱交換器45において、上記地中熱循環回路20を流れる熱媒H1と熱交換を行って蒸発してガスに変化することで吸熱し、低温・低圧のガスとして再び上記第1圧縮機43へと戻る。
一方、上記空気熱ヒートポンプ回路50では、図示のように上記四方弁58が切り替えられることで、第2圧縮機53から吐出された第2冷媒C2を、第2熱交換器51、第2膨張弁54、空気熱源熱交換器55の順に流通させた後、第2圧縮機53に戻す流路を形成する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の第2冷媒C2が上記第2圧縮機53で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する上記第2熱交換器51において、上記端末循環回路30を流れる循環液Lとの熱交換を行って上記循環液Lに熱を放出し加熱しながら高圧の液体に変化する。こうして液体となった第2冷媒C2は第2膨張弁54において減圧されて低圧の液体となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する上記空気熱源熱交換器55において、送風ファン56の作動により送られる空気と熱交換を行って蒸発してガスに変化することで吸熱し、低温・低圧のガスとして再び上記第2圧縮機53へと戻る。
また、地中熱循環回路20では、地中熱交換器23によって地中から地中熱が採熱され、その熱を帯びた上記熱媒H1が地中熱循環ポンプ22により地中熱源熱交換器45に供給される。そして、蒸発器として機能する上記地中熱源熱交換器45において、地中熱源熱交換器45の冷媒流路を流通する上記第1冷媒C1と、地中熱源熱交換器45の流体流路を流通する上記熱媒H1とで熱交換が行われ、地中熱交換器23にて採熱された地中熱が第1冷媒C1側に汲み上げられ上記のように第1冷媒C1が加熱される。
また、端末循環回路30では、循環液循環ポンプ32により上記第1熱交換器41に流入した循環液Lは、凝縮器として機能する上記第1熱交換器41において、地中熱循環回路20の熱媒H1と熱交換し上記のように加熱された上記第1冷媒C1との熱交換を行って加熱された後、凝縮器として機能する上記第2熱交換器51において、上記空気熱源熱交換器55で外気と熱交換し上記のように加熱された上記第2冷媒C2との熱交換を行ってさらに加熱される。こうして加熱された上記循環液Lは、その後、上記熱交換端末36に供給されて被空調空間を加熱する。
なお、上記においては、地中熱ヒートポンプユニット4および空気熱ヒートポンプユニット5の両方を動作させた暖房運転時の状態を図3に示して説明したが、これに限られない。すなわち、地中熱ヒートポンプユニット4単体のみを動作させての暖房運転や、空気熱ヒートポンプユニット5単体のみを動作させての暖房運転も可能なものである。
<冷房運転時>
図4に、冷房運転時の状態を示す。なお、図示の煩雑を防止するために、図2に示していた各種の信号線は省略している。この図4に示す冷房運転時においては、上記地中熱ヒートポンプ回路40では、図示のように上記四方弁46が切り替えられることで、第1圧縮機43から吐出された第1冷媒C1を、地中熱源熱交換器45、第1膨張弁44、第1熱交換器41の順に流通させた後、第1圧縮機43に戻す流路を形成する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の第1冷媒C1が上記第1圧縮機43で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する上記地中熱源熱交換器45において、上記地中熱循環回路20を流れる熱媒H1と熱交換を行って上記熱媒H1に熱を放出しながら高圧の液体に変化する。こうして液体となった第1冷媒C1は上記第1膨張弁44において減圧されて低圧の液体となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する上記第1熱交換器41において、上記端末循環回路30を流れる循環液Lと熱交換を行って蒸発してガスに変化することで吸熱し上記循環液Lを冷却した後、低温・低圧のガスとして再び上記第1圧縮機43へと戻る。
一方、上記空気熱ヒートポンプ回路50では、図示のように上記四方弁58が切り替えられることで、第2圧縮機53から吐出された第2冷媒C2を、空気熱源熱交換器55、第2膨張弁54、第2熱交換器51の順に流通させた後、第2圧縮機53に戻す流路を形成する。これにより、低温・低圧で吸入されたガス状態の第2冷媒C2が上記第2圧縮機53で圧縮されて高温・高圧のガスとなった後、凝縮器として機能する上記空気熱源熱交換器55において、送風ファン56の作動により送られる空気との熱交換を行って外気へ熱を放出しながら高圧の液体に変化する。こうして液体となった第2冷媒C2は上記第2膨張弁54において減圧されて低圧の液体となって蒸発しやすい状態となり、蒸発器として機能する上記第2熱交換器51において、上記端末循環回路30を流れる循環液Lと熱交換を行って蒸発してガスに変化することで吸熱し上記循環液Lを冷却した後、低温・低圧のガスとして再び上記第2圧縮機53へと戻る。
また、地中熱循環回路20では、上記熱媒H1が地中熱循環ポンプ22により地中熱源熱交換器45に供給される。そして、凝縮器として機能する上記地中熱源熱交換器45において、地中熱源熱交換器45の冷媒流路を流通する上記第1冷媒C1と、地中熱源熱交換器45の流体流路を流通する上記熱媒H1とが対向して流れて熱交換が行われ、高温となっている第1冷媒C1の熱が熱媒H1側に放熱されて第1冷媒C1が冷却された後、熱媒H1の熱は地中熱交換器23によって地中へと放熱される。
また、端末循環回路30では、循環液循環ポンプ32により第1熱交換器41に流入した循環液Lは、蒸発器として機能する上記第1熱交換器41において、地中熱循環回路20の熱媒H1と熱交換し上記のように冷却された上記第1冷媒C1との熱交換を行って冷却された後、蒸発器として機能する上記第2熱交換器51において、上記空気熱源熱交換器55で外気と熱交換し上記のように冷却された上記第2冷媒C2との熱交換を行ってさらに冷却される。こうして冷却された循環液Lは、その後、上記熱交換端末36に供給されて被空調空間を冷却する。
なお、上記においては、地中熱ヒートポンプユニット4および空気熱ヒートポンプユニット5の両方を動作させた冷房運転時の状態を図4に示して説明したが、これに限られない。すなわち、地中熱ヒートポンプユニット4単体のみを動作させての冷房運転や、空気熱ヒートポンプユニット5単体のみを動作させての冷房運転も可能なものである。
<地中熱制御装置・空気熱制御装置>
次に、地中熱制御装置61及び空気熱制御装置62について説明する。上記地中熱制御装置61及び上記空気熱制御装置62は、詳細な図示を省略するが、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。まず、暖房運転時における、上記地中熱制御装置61及び上記空気熱制御装置62の機能的構成を図5により説明する。
<地中熱制御装置>
図5に示すように、上記地中熱制御装置61は、圧縮機制御部61Aと、膨張弁制御部61Bと、ポンプ制御部61Cとを機能的に備えている。また、地中熱制御装置61は、熱交換端末36それぞれに備えられた端末制御装置36a及びメインリモコン60a(操作手段に相当)に対し、通信可能に接続されている(図2参照)。
圧縮機制御部61Aは、切替制御部61p、戻り温度制御部61a、温度ゾーン決定部61b、上限値決定部61c(それぞれ詳細は後述する)を備えており、上記戻り液温度センサ34により検出された循環液L(温水)の温度(以下適宜、「戻り温水温度」という。図3参照)に応じて、上記第1圧縮機43の回転数を制御する。特にこの例では、圧縮機制御部61Aは、前記戻り温度制御部61aにより、上記戻り液温度センサ34により検出される循環液Lの上記戻り温水温度が、例えば上記メインリモコン60aの操作に対応した所望の目標戻り温水温度となるように、上記第1圧縮機43の回転数を制御する。
膨張弁制御部61Bは、第1冷媒吐出温度センサ42aにより検出される第1冷媒C1の冷媒吐出温度に応じて、上記第1膨張弁44の弁開度を制御する。特にこの例では、膨張弁制御部61Bは、第1冷媒吐出温度センサ42aにより検出される第1冷媒C1の冷媒吐出温度が、例えば上記メインリモコン60aの操作に対応した制御上の目標温度となるように、上記第1膨張弁44の弁開度を制御する。
ポンプ制御部61Cは、上記第1冷媒温度センサ42bにより検出された第1冷媒C1の温度(このとき地中熱源熱交換器45は蒸発器として機能することから、以下適宜、「蒸発器入口冷媒温度」という)に応じて、上記地中熱循環ポンプ22の上記回転数を制御する(図2も参照)。特にこの例では、上記ポンプ制御部61Cは、上記第1冷媒温度センサ42bにより検出される上記第1冷媒C1の蒸発器入口冷媒温度が略一定値となるように、上記地中熱循環ポンプ22の上記回転数を制御する。
<空気熱制御装置>
また、上記空気熱制御装置62は、圧縮機制御部62Aと、膨張弁制御部62Bと、ファン制御部62Cとを機能的に備えている。また空気熱制御装置62は、上記地中熱制御装置61に対し、通信可能に接続されている(図2参照)。
圧縮機制御部62Aは、切替制御部62p、戻り温度制御部62a、温度ゾーン決定部62b、上限値決定部62c(それぞれ詳細は後述する)を備えており、上記戻り液温度センサ34により検出された上記戻り温水温度(図3参照)に応じて、上記第2圧縮機53の回転数を制御する。特にこの例では、圧縮機制御部62Aは、前記戻り温度制御部62aにより、上記戻り液温度センサ34により検出される戻り温水温度が、例えば上記メインリモコン60aの操作に対応した所望の目標戻り温水温度となるように、上記第2圧縮機53の回転数を制御する。なお、この空気熱制御装置62の圧縮機制御部62Aと上記地中空気熱制御装置61の上記圧縮機制御部61Aとは圧縮機制御手段に相当し、必要に応じて互いに連携しつつ、対象となる第2圧縮機53または第1圧縮機43の制御を行う。
膨張弁制御部62Bは、第2冷媒吐出温度センサ52aにより検出される第2冷媒C2の冷媒吐出温度に応じて、上記第2膨張弁54の弁開度を制御する。特にこの例では、膨張弁制御部62Bは、第2冷媒吐出温度センサ52aにより検出される第2冷媒C2の冷媒吐出温度が、例えば上記メインリモコン60aの操作に対応した制御上の目標温度となるように、上記第2膨張弁54の弁開度を制御する。なお、この空気熱制御装置62の膨張弁制御部62Bと上記地中空気熱制御装置61の上記膨張弁制御部61Bとは、必要に応じて互いに連携しつつ、対象となる第2膨張弁54または第1膨張弁44の制御を行う。
ファン制御部62Cは、上記外気温度センサ57により検出された外気の温度に応じて、上記送風ファン56の回転数を制御する(図2も参照)。
なお、図5を参照した以上の説明においては、暖房運転時における情報の入出力に基づいて説明したが、冷房運転時には図6に示すように地中熱制御装置61及び空気熱制御装置62の構成はそのままで入出力する情報の内容が異なる。すなわち、戻り液温度センサ34が検出する循環液Lの温度はいわゆる冷水の温度(以下適宜、「戻り冷水温度」という。図4参照)であり、この戻り冷水温度が各圧縮機制御部61A,62Aに入力される。また、圧縮機制御部61A,62Aは、上記戻り液温度センサ34により検出される戻り冷水温度が、例えば上記メインリモコン60aの操作に対応した所望の目標戻り冷水温度となるように、上記第1圧縮機43及び上記第2圧縮機53の回転数を制御する。さらに、第1冷媒温度センサ42bが検出する冷媒C1の温度、すなわち凝縮器出口冷媒温度(このとき地中熱源熱交換器45は凝縮器として機能している)が、ポンプ制御部61Cに入力される。
<圧縮機の主動力源・補助動力源の切替制御>
以上において、本実施形態のヒートポンプ熱源機1においては、地中熱制御装置61及び空気熱制御装置62側それぞれの圧縮機制御部61A,62Aに設けた切替制御部61p,62pにより、第1圧縮機43及び第2圧縮機53への主動力源/補助動力源の切替制御が行われる。
すなわち、本実施形態のヒートポンプ熱源機1は、上述したように地中熱源と空気熱源の2つの熱源を複合的に利用しているが、これら異なる熱源をいかに効率的に組み合わせて利用するか(言い替えれば、地中熱源と空気熱源との動力源割当ての切り替えや組み合わせをどのように決定するか)が重要である。しかし、流体(気相)である室外空気と、固体(固相)である地中の土とでは、それらの間で熱源としての特性や取り扱い方が大きく相違する。例えば、室外空気は夏期と冬期の温度変化が大きい一方、地中では通年を通して温度の変化が小さい。また、いずれの熱源も全体の熱容量は大きいものの、室外空気の場合は熱伝達速度が高くまたファンで送風することにより循環可能である一方、地中の土の場合は熱伝達速度が低くまた固定化されて循環できない。このため、室外空気は外気全体での温度検出が容易であるが、地中の土は局部的に温度分布が偏りやすいため地中全体での温度検出が困難である。
以上のことから、本実施形態では、外気温度を基準として空気熱源と地中熱源の動力源割当ての切り替えや組み合わせを決定する。つまり、外気温度センサ57により検出される外気温度に基づき(図5及び図6参照)、各圧縮機制御部61,62がそれぞれ備える前記切替制御部61p,62pが連携して、第1熱交換器41での熱交換と第2熱交換器51での熱交換との両方が実行可能な端末循環回路30において、いずれの熱交換を主としいずれの熱交換を補助とするかを切り替える。
<冷房運転時の切替>
例えば冷房運転時には、図7(a)に示すように、春期や秋期などでなどで上記外気温度があまり高くない場合(この例では30℃未満または35℃未満の場合。後述)には、外気への大きな放熱を期待できることから空気熱源を利用する上記第2圧縮機53が主動力源として優先的に駆動され、地中熱源を利用する上記第1圧縮機43は補助動力源として駆動される。
逆に夏期などで上記外気温度が比較的高い場合(この例では30℃以上または35℃以上の場合。後述)には、外気への放熱をあまり期待できないことから地中熱源を利用する上記第1圧縮機43が主動力源として優先的に駆動され、空気熱源を利用する上記第2圧縮機53は補助動力源として駆動される。
すなわち、本実施形態では、冷房運転を開始する際に、まず、外気温度が基準温度としての30℃未満であれば、空気熱ヒートポンプ回路50の第2圧縮機53を主動力源とすると共に、地中熱ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43を補助動力源として、冷房運転を開始させる。また、外気温度が基準温度としての30℃以上であれば、地中熱ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43を主動力源とすると共に、空気熱ヒートポンプ回路50の第2圧縮機53を補助動力源として、冷房運転を開始させる。
そして、本実施形態では、上記のようにして冷房運転を開始した後、外気温度が変化した場合には、その変化の度合いに応じて、適宜、上記主動力源と補助動力源とを入れ替える。すなわち、第1圧縮機43と第2圧縮機53の何れの動力源を主とするか、従(補助)とするかを入れ替える。
本実施形態では、上記切替制御部61p,62pは、上記外気温度センサ57により検出された外気温が所定のしきい値以上であるか否か、を切替条件とする。すなわち、外気温としきい値との大小に基づき上記動力源の割り当てを切り替えることで、上記第1熱交換器41での熱交換と上記第2熱交換器51での熱交換とのうちいずれの熱交換を主としいずれの熱交換を補助とするか、を切り替える。
すなわち、(冷房運転開始時の外気温度が30℃未満で)上記第2圧縮機53が主動力源、上記第1圧縮機43が補助動力源として運転開始した後、図8に示すように、外気温度が上昇して基準温度である35[℃]以上となるまで(35[℃]未満の場合)はそのまま上記第2圧縮機53を主動力源とし上記第1圧縮機43を補助動力源とする。その後、外気温度が35[℃]以上に上昇したら、地中熱源を利用する上記地中熱ヒートポンプ回路40の上記第1圧縮機43を主動力源とし、空気熱源を利用する上記空気熱ヒートポンプ回路50の上記第2圧縮機53を補助動力源とする。
逆に、(冷房運転開始時の外気温度が30℃以上で)上記第1圧縮機43が主動力源、上記第2圧縮機53が補助動力源として運転開始した後、図8に示すように、外気温度が低下して30[℃]未満とならないうち(30[℃]以上の場合)はそのまま上記第1圧縮機43を主動力源とし上記第2圧縮機53を補助動力源とする。その後、外気温度が30[℃]未満に低下したら、空気熱源を利用する上記空気熱ヒートポンプ回路50の上記第2圧縮機53を主動力源とし、地中熱源を利用する上記地中熱ヒートポンプ回路40の上記第1圧縮機43を補助動力源とする。
すなわち、図8に矢印で示すように、前述のような外気温度の上昇方向では、主動力源と補助動力源を切り替える区切りとなる上記基準温度を35[℃]とする一方、外気温度の低下方向では、上記基準温度を変えて30[℃]とする(=主動力源/補助動力源の切り替え挙動にヒステリシスを持たせている)。
<暖房運転時の切替>
また例えば暖房運転時には、図7(b)に示すように、冬期などで上記外気温度が比較的低い場合(この例では2℃未満または5℃未満の場合。後述)には、外気から吸熱することにより空気熱源熱交換器55が着霜する問題があることから上記第1圧縮機43が主動力源として優先的に駆動され、上記第2圧縮機53は補助動力源として駆動される。
逆に秋期や春期などで上記外気温度があまり低くない場合(この例では2℃以上または5℃以上の場合。後述)には、外気から吸熱しても空気熱源熱交換器55が着霜しにくいことから上記第2圧縮機53が主動力源として優先的に駆動され、上記第1圧縮機43は補助動力源として駆動される。
すなわち、本実施形態では、暖房運転を開始する際に、まず、外気温度が基準温度としての5℃未満であれば、地中熱ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43を主動力源とすると共に、空気熱ヒートポンプ回路50の第2圧縮機53を補助動力源として、暖房運転を開始させる。また、外気温度が基準温度としての5℃以上であれば、空気熱ヒートポンプ回路50の第2圧縮機53を主動力源とすると共に、地中熱ヒートポンプ回路40の第1圧縮機43を補助動力源として、暖房運転を開始させる。
そして、本実施形態では、上記のようにして暖房運転を開始した後、外気温度が変化した場合には、その変化の度合いに応じて、適宜、上記主動力源と補助動力源とを入れ替える。すなわち、第1圧縮機43と第2圧縮機53の何れの動力源を主とするか、従(補助)とするかを入れ替える。
すなわち、(暖房運転開始時の外気温度が5℃未満で)上記第1圧縮機43が主動力源、上記第2圧縮機53が補助動力源として運転開始した後、図9に示すように、外気温度が上昇して基準温度である5[℃]以上となるまで(5[℃]未満の場合)はそのまま上記第1圧縮機43を主動力源とし上記第2圧縮機53を補助動力源とする。その後、外気温度が5[℃]以上に上昇したら、空気熱源を利用する上記空気熱ヒートポンプ回路50の上記第2圧縮機53を主動力源とし、地中熱源を利用する上記地中熱ヒートポンプ回路40の上記第1圧縮機43を補助動力源とする。
逆に、(暖房運転開始時の外気温度が5℃以上で)上記第2圧縮機53が主動力源、上記第1圧縮機43が補助動力源として運転開始した後、図9に示すように、外気温度が低下して2[℃]未満とならないうち(2[℃]以上の場合)はそのまま上記第2圧縮機53を主動力源とし上記第1圧縮機43を補助動力源とする。その後、外気温度が2[℃]未満に低下したら、地中熱源を利用する上記地中熱ヒートポンプ回路40の上記第1圧縮機43を主動力源とし、空気熱源を利用する上記空気熱ヒートポンプ回路50の上記第2圧縮機53を補助動力源とする。
すなわち、図9に矢印で示すように、上記のような外気温度の上昇方向では、主動力源と補助動力源を切り替える区切りとなる上記基準温度を5[℃]とする一方、外気温度の低下方向では、上記基準温度を変えて2[℃]とする(=主動力源/補助動力源の切り替え挙動にヒステリシスを持たせている)。
以上のように、外気温度が変化し、それまでの上記の主動力源・補助動力源の割り当てを入れ替えたほうが効率がよいとみなされた場合には、各切替制御部61p,62pによって第1圧縮機43及び第2圧縮機53に対する上記割り当てが入れ替えられ、それまで主動力源だった圧縮機が補助動力源として駆動され、補助動力源だった圧縮機が主動力源として駆動される。そして、上記戻り液温度センサ34により検出される循環液Lの上記戻り温水温度または上記戻り冷水温度が、例えば上記メインリモコン60aの操作に対応した所望の目標温度となるように、各圧縮機43,53(主動力源として駆動される圧縮機のみであってもよい)の回転数が制御される。
<実施形態の特徴>
以上の基本構成及び作動であるヒートポンプ熱源機1において、本実施形態の特徴は、圧縮機の稼働状況(稼働台数が0台、1台、2台のいずれであるか)に応じた、各圧縮機の回転数の上限値の設定にある。以下、その詳細を順を追って説明する。
<圧縮機制御部の機能詳細>
地中熱制御装置61の圧縮機制御部61Aは、前記したように、戻り温度制御部61aを備えている。同様に、空気熱制御装置62の圧縮機制御部62Aは、前記したように、戻り温度制御部62aを備えている。
<戻り温度制御部による戻り温度制御>
前記戻り温度制御部61a及び戻り温度制御部62aは、前記戻り液温度センサ34により検出された前記温水戻り温度又は前記冷水戻り温度(以下適宜、「実戻り温度」と総称する)に応じて前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数をそれぞれ制御する、いわゆる戻り温度制御を行う。詳細には、前記戻り温度制御部61a,62aは、前記戻り液温度センサ34により検出される前記実戻り温度が、例えば前記メインリモコン60aにおける操作に対応して設定される前記目標戻り温水温度又は前記目標戻り冷水温度(以下適宜、「目標戻り温度」と総称する。所定の目標温度に相当)となるように、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数を制御する。
<温調制御用の相関>
本実施形態では特に、戻り温度制御部61a,62aは、前記実戻り温度と前記目標戻り温度との偏差(後述)に係わる温度区分に応じて、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数の変化量を増減する。その際、複数の前記温度区分と、各温度区分にそれぞれ対応する前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の前記回転数の前記変化量との相関を参照して、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数の変化量を増減する。
<暖房運転時の相関>
図10(a)に、暖房運転時の前記相関の一例を示す。図10(a)に示すように、暖房時における、前記目標戻り温度(図中「目標水温」と表記。以下同様)と前記実戻り温度(図中「実水温」と表記。以下同様)との偏差△T1(=目標戻り温度-実戻り温度)に係わる温度区分として、+5℃≦△T1、+3℃≦△T1<+5℃、+1℃≦△T1<+3℃、-1℃≦△T1<+1℃、-3℃≦△T1<-1℃、-5℃≦△T1<-3℃、-7℃≦△T1<-5℃、△T1<-7℃の8つの区分が設けられている。そして、これら8つの温度区分それぞれに対し、対応する第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数変化量が規定されている。但し、この例では、前記回転数変化量を、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数を段階的に切り替える制御時における、段階区分(言い替えれば回転数のランク)を変化させる数で表現している(後述の図10(b)も同様)。すなわち、例えば「3段上げる」とは、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数の段階区分を、3段階だけ高回転数側に切り替えることであり、例えば「2段下げる」とは、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数の段階区分を、2段階だけ低回転数側に切り替えることである。
この例では、図10(a)に示すように、+5℃≦△T1では、戻り温度制御部61a,62aにより、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数の段階区分が3段階だけ高回転数側に切り替えて制御される(以下適宜、単に「3段上げる」等と称する。図示も同様)。同様に、+3℃≦△T1<+5℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は2段上げるように制御され、+1℃≦△T1<+3℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は1段上げるように制御される。また、-1℃≦△T1<+1℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は増減なしで維持する(変更無し)ように制御される。
さらに、-3℃≦△T1<-1℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は2段下げるように制御され、-5℃≦△T1<-3℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は5段下げるように制御され、-7℃≦△T1<-5℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は7段下げるように制御され、△T1<-7℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は9段下げるように制御される。
<冷房運転時の相関>
一方、図10(b)に、冷房運転時の前記第3相関の一例を示す。図10(b)に示すように、冷房時における、目標戻り温度(目標水温)と実戻り温度(実水温)との偏差△T1(=目標戻り温度-実戻り温度)に係わる温度区分として、△T1<-5℃、-5℃≦△T1<-3℃、-3℃≦△T1<-1℃、-1℃≦△T1<+1℃、+1℃≦△T1<+3℃、+3℃≦△T1<+5℃、+5℃≦△T1<+7℃、+7℃≦△T1の8つの区分が設けられている。そして、これら8つの温度区分それぞれに対し、対応する第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数変化量が規定されている。
この例では、図10(b)に示すように、△T1<-5℃では、戻り温度制御部61a,62aにより、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は3段上げるように制御され、-5℃≦△T1<-3℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は2段上げるように制御され、-3℃≦△T1<-1℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は1段上げるように制御される。また、-1℃≦△T1<+1℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は増減なしで維持する(変更無し)ように制御される。
さらに、+1℃≦△T1<+3℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は2段下げるように制御され、+3℃≦△T1<+5℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は5段下げるように制御され、+5℃≦△T1<+7℃では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は7段下げるように制御され、+7℃≦△T1では、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は9段下げるように制御される。
<相関を用いた温調制御>
前記の図10(a)及び図10(b)に示すそれぞれの相関は、例えば前記地中熱制御装置61又は空気熱制御装置62内の図示しない適宜のメモリに記憶されている。前記戻り温度制御部61a,62aは、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数を前記温調制御する際、前記メモリに記憶された前記相関を参照して、前記温度区分に応じて前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数の変化量を増減する。これにより、暖房運転時において前記実戻り温度が前記目標戻り温度よりも低い場合や冷房運転時において前記実戻り温度が前記目標戻り温度よりも高い場合には、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数が増大するように制御される。逆に、暖房運転時において前記実戻り温度が前記目標戻り温度よりも高い場合や冷房運転時において前記実戻り温度が前記目標戻り温度よりも低い場合には、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数が減少するように制御される。
<温度ゾーン決定部及び上限値決定部>
さらに本実施形態においては、圧縮機制御部61に前記温度ゾーン決定部61b及び前記上限値決定部61cが設けられ、圧縮機制御部62に温度ゾーン決定部62b及び上限値決定部62cが設けられる。
<温度ゾーン決定部による温度ゾーンの決定>
地中熱制御装置61及び空気熱制御装置62の温度ゾーン決定部61b,62bは、前記戻り液温度センサ34により検出された温水又は冷水の前記実戻り温度とメインリモコンRMの操作に対応した前記目標戻り温度との偏差に応じて、対応する温度ゾーン(後述の図11参照)を決定する。そして、前記上限値決定部61cは、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53が停止・起動状態であるか1台運転状態であるか2台運転状態であるか(詳細は後述)に応じ、前記温度ゾーン決定部61b,62bが決定した前記温度ゾーンに対応する前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数の上限値(後述の図12参照)を決定する。第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数は、この決定された上限値を超えないように、制御される。以下、その手法の詳細を、図11~図20を用いて順を追って説明する。
<第1相関を用いた温度ゾーンの決定>
温度ゾーン決定部61b,62b(温度ゾーン決定手段に相当)は、戻り液温度センサ34により検出された前記実戻り温度と前記目標戻り温度との偏差に基づき、対応する温度ゾーンを決定する。その温度ゾーンの決定の際には、前記偏差と、対応する温度ゾーンとの相関(第1相関に相当)が用いられ、温度ゾーン決定部61b,62bは、この相関を参照して決定する。
<暖房運転時の第1相関>
図11(a)に、暖房運転時の前記第1相関の一例を示す。図11(a)のテーブルに示すように、暖房時における、前記実戻り温度(実水温)と前記目標戻り温度(目標水温)の偏差△T2(=実戻り温度-目標戻り温度)にそれぞれ対応づける温度ゾーンとして、偏差△T2が大きいほうから小さいほうへと向かう順に、7つの温度ゾーン、すなわち、温度ゾーンa、温度ゾーンb、温度ゾーンc、温度ゾーンd、温度ゾーンe、温度ゾーンf、温度ゾーンgが規定されている。
その際、各温度ゾーンa~gどうしの境界にはヒステリシスが設けられており、偏差△T2が大きくなる方向に温度ゾーンが切り替わる場合の各ゾーンどうしの境界と、偏差△T2が小さくなる方向に温度ゾーンが切り替わる場合の各ゾーンどうしの境界とが異なる。すなわち、偏差△T2の値が最小となる温度ゾーンgから偏差△T2の値が大きくなる側に隣接する温度ゾーンfへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-7[℃]である(言い替えれば、偏差△T2が小さい状態から徐々に上昇してきて-7[℃]となると、温度ゾーンgから温度ゾーンfに切り替わる)。同様に、温度ゾーンfから温度ゾーンeへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-5[℃]であり、温度ゾーンeから温度ゾーンdへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-3[℃]であり、温度ゾーンdから温度ゾーンcへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-1[℃]であり、温度ゾーンcから温度ゾーンbへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+1[℃]であり、温度ゾーンbから温度ゾーンaへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+3[℃]となっている。
逆に、偏差△T2の値が最大となる温度ゾーンaから偏差△T2の値が小さくなる側に隣接する温度ゾーンbへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+2[℃]である(言い替えれば、偏差△T2が大きい状態から徐々に低下してきて+2[℃]となると、温度ゾーンaから温度ゾーンbに切り替わる)。同様に、温度ゾーンbから温度ゾーンcへ切り替わるときの境界は偏差△T2=0[℃]であり、温度ゾーンcから温度ゾーンdへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-2[℃]であり、温度ゾーンdから温度ゾーンeへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-4[℃]であり、温度ゾーンeから温度ゾーンfへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-6[℃]であり、温度ゾーンfから温度ゾーンgへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-8[℃]となっている。
<冷房運転時の第1相関>
図11(b)に、冷房運転時の前記第1相関の一例を示す。図11(b)のテーブルに示すように、冷房時における、前記実戻り温度(実水温)と前記目標戻り温度(目標水温)の偏差△T2(=実戻り温度-目標戻り温度)にそれぞれ対応づける温度ゾーンとして、前記同様、偏差△T2が小さいほうから大きいほうへと向かう順に、7つの温度ゾーン、すなわち、温度ゾーンa、温度ゾーンb、温度ゾーンc、温度ゾーンd、温度ゾーンe、温度ゾーンf、温度ゾーンgが規定され、各温度ゾーンa~gどうしの境界にはヒステリシスが設けられている。
すなわち、偏差△T2の値が最大となる温度ゾーンgから偏差△T2の値が小さくなる側に隣接する温度ゾーンfへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+7[℃]である(言い替えれば、偏差△T2が大きい状態から徐々に低下してきて+7[℃]となると、温度ゾーンgから温度ゾーンfに切り替わる)。同様に、温度ゾーンfから温度ゾーンeへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+5[℃]であり、温度ゾーンeから温度ゾーンdへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+3[℃]であり、温度ゾーンdから温度ゾーンcへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+1[℃]であり、温度ゾーンcから温度ゾーンbへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-1[℃]であり、温度ゾーンbから温度ゾーンaへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-3[℃]となっている。
逆に、偏差△T2の値が最小となる温度ゾーンaから偏差△T2の値が大きくなる側に隣接する温度ゾーンbへ切り替わるときの境界は偏差△T2=-2[℃]である(言い替えれば、偏差△T2が小さい状態から徐々に上昇してきて-2[℃]となると、温度ゾーンaから温度ゾーンbに切り替わる)。同様に、温度ゾーンbから温度ゾーンcへ切り替わるときの境界は偏差△T2=0[℃]であり、温度ゾーンcから温度ゾーンdへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+2[℃]であり、温度ゾーンdから温度ゾーンeへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+4[℃]であり、温度ゾーンeから温度ゾーンfへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+6[℃]であり、温度ゾーンfから温度ゾーンgへ切り替わるときの境界は偏差△T2=+8[℃]となっている。
なお、前記の図11(a)及び図11(b)に示すそれぞれの相関は、例えば前記地中熱制御装置61又は空気熱制御装置62内の図示しない適宜のメモリ(第1記憶手段に相当)に記憶されている。前記温度ゾーン決定部61b,62bは、上記メモリに記憶されていた第1相関を参照して、前記偏差△T2に対応した温度ゾーンを決定する。
<上限値決定部による圧縮機回転数上限値の決定>
地中熱制御装置61及び空気熱制御装置62の上限値決定部61c,62c(上限値決定手段に相当)は、前記温度ゾーン決定部61b,62bが決定した前記温度ゾーンに対応する前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数の上限値をそれぞれ決定する。その上限値の決定の際には、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の運転状態(この例では、停止・起動状態、主動力源のみが運転される1台運転状態、及び、主動力源と補助動力源との両方が運転される2台運転状態)と、前記温度ゾーンと、対応する前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数上限値の相関(第2相関に相当)が用いられ、上限値決定部61c,62cは、この相関を参照して前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数上限値(詳細には主動力源及び補助動力源の回転数の上限値。後述)を決定する。
<第2相関>
図12に、前記第2相関の一例を示す。図12のテーブルに示すように、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の運転状態に対応した稼働状態ゾーン毎に、前記7つの温度ゾーンa,b,c,d,e,f,gのいずれか1つに対して、第1圧縮機43及び第2圧縮機53のうち前記主動力源の回転数上限値(第1上限値に相当。以下適宜、単に「第1上限値」と称する)及び前記補助動力源の回転数上限値(第2上限値に相当。以下適宜、単に「第2上限値」と称する)がそれぞれ対応づけられている。
すなわち、第1圧縮機43及び第2圧縮機53の停止状態又はその停止状態からいずれかが起動される状態に対応する停止・起動ゾーン(以下適宜、便宜的に0台ゾーンと呼ぶ)においては、前記温度ゾーン決定部61b,62bにより前記温度ゾーンaと決定された場合には前記第1上限値及び前記第2上限値ともに0[rps]となる。同様に、前記温度ゾーンbと決定された場合にも前記第1上限値及び前記第2上限値ともに0[rps]となり、前記温度ゾーンcと決定された場合にも前記第1上限値及び前記第2上限値ともに0[rps]となる。また、前記温度ゾーンdと決定された場合には前記第1上限値は35[rps]で前記第2上限値は0[rps]となり、前記温度ゾーンeと決定された場合には前記第1上限値は40[rps]で前記第2上限値は0[rps]となり、前記温度ゾーンfと決定された場合には前記第1上限値は45[rps]で前記第2上限値は0[rps]なり、前記温度ゾーンgと決定された場合には前記第1上限値は50[rps]で前記第2上限値は0[rps]となる。
また、第1圧縮機43及び第2圧縮機53のうち前記主動力源の圧縮機が定常的に稼働している1台運転ゾーン(1台ゾーンに相当)においては、前記温度ゾーン決定部61b,62bにより前記温度ゾーンaと決定された場合には前記第1上限値は24[rps]で前記第2上限値は0[rps]となり、前記温度ゾーンbと決定された場合には前記第1上限値は51[rps]で前記第2上限値は0[rps]となり、前記温度ゾーンcと決定された場合には前記第1上限値は66[rps]で前記第2上限値は0[rps]なり、前記温度ゾーンdと決定された場合には前記第1上限値は79[rps]で前記第2上限値は0[rps]となり、前記温度ゾーンeと決定された場合には前記第1上限値は90[rps]で前記第2上限値は0[rps]となり、前記温度ゾーンfと決定された場合には前記第1上限値は96[rps]で前記第2上限値は0[rps]なり、前記温度ゾーンgと決定された場合には前記第1上限値は105[rps]で前記第2上限値は0[rps]となる。
また、第1圧縮機43及び第2圧縮機53のうち前記主動力源及び前記補助動力源の両圧縮機が定常的に稼働している2台運転ゾーン(2台ゾーンに相当)においては、前記温度ゾーン決定部61b,62bにより前記温度ゾーンaと決定された場合には前記第1上限値は66[rps]で前記第2上限値は24[rps]となり、前記温度ゾーンbと決定された場合には前記第1上限値は79[rps]で前記第2上限値は51[rps]となり、前記温度ゾーンcと決定された場合には前記第1上限値は90[rps]で前記第2上限値は66[rps]なり、前記温度ゾーンdと決定された場合には前記第1上限値は96[rps]で前記第2上限値は96[rps]となり、前記温度ゾーンeと決定された場合には前記第1上限値は96[rps]で前記第2上限値は96[rps]となり、前記温度ゾーンfと決定された場合には前記第1上限値は105[rps]で前記第2上限値は105[rps]なり、前記温度ゾーンgと決定された場合には前記第1上限値は105[rps]で前記第2上限値は105[rps]となる。
このような第1及び第2上限値の設定の結果、図11及び図12を組み合わせて見ると明らかなように、前記2台運転ゾーンにおいて、前記主動力源の圧縮機の前記第1上限値及び前記補助動力源の圧縮機の前記第2上限値は、(前記第2上限値が前記第1上限値以下となるようにしつつ)前記実戻り温度と前記目標戻り温度との偏差△T2が大きくなるほど前記第1上限値及び前記第2上限値が大きくなるように、各温度ゾーンa~gごとに決定されている。特に、温度ゾーンa~fのうち、前記偏差△T2が最も少ない場合に対応する1つの温度ゾーンaを含む少なくとも1つの温度ゾーン(この例では3つの温度ゾーンa,b,c)においては、前記第2上限値が前記第1上限値より小さくなるように決定される。
一方、この図12に示すテーブルにおいては、各温度ゾーン及びこれに対応する前記回転数上限値に対し、稼働する第1圧縮機43及び第2圧縮機53の稼働要求台数(詳細は後述)も対応づけられている。前記停止・起動ゾーンでは、前記温度ゾーンa,b,cの場合には稼働要求台数は0[台]となり、前記温度ゾーンd,e,f,gの場合には稼働要求台数は1[台]となる。また前記1台運転ゾーンでは、前記温度ゾーンa,bの場合には稼働要求台数は0[台]となり、前記温度ゾーンc,dの場合には稼働要求台数は1[台]となり、前記温度ゾーンe,f,gの場合には稼働要求台数は2[台]となる。また前記2台運転ゾーンでは、前記温度ゾーンa,bの場合には稼働要求台数は1[台]となり、前記温度ゾーンc,d,e,f,gの場合には稼働要求台数は2[台]となる。
なお、図12のテーブルにおける、前記稼働状態ゾーンの移行に係わる移行時間[sec]については、後述する。
<暖房運転挙動の例>
次に、前記のような前記温度ゾーン決定部61b,62bによる温度ゾーンの決定、及び、前記上限値決定部61c,62cによる第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数上限値の決定、により実現される、本実施形態の前記ヒートポンプ熱源機1における暖房運転挙動の一例を、従来手法による(=先に補助動力源の回転数を段階的に低下させた後に主動力源の回転数を段階的に低下させる)比較例と対比しつつ説明する。
<比較例~暖房負荷が高い場合>
まず図13により、前記比較例の場合の暖房運転挙動を説明する。なお、この例では、運転開始時に比較的暖房負荷が高い場合を例にとって示している。図示において、図13(a)は、ヒートポンプ熱源機1の温水出力の経時推移を示し、図13(b)は、ヒートポンプ熱源機1のCOP(エネルギー効率)の経時推移を示している。図13(c)は、前記実戻り温度(図中では「温水温度」と表記。前記戻り液温度センサ34が検出)の経時推移を示し、図13(d)は、第1圧縮機43及び第2圧縮機53のうち前記主動力源となる圧縮機(以下適宜、「主圧縮機」と称する)及び前記補助動力源となる圧縮機(以下適宜、「補助圧縮機」と称する)の回転数の経時推移を示している。
図13において、前記の戻り温度制御が行われ、前記実戻り温度が目標戻り温度(この例では40[℃])となるように主・補助圧縮機の回転数が制御される。この例では、運転開始当初において前記実戻り温度が約34℃で前記目標戻り温度より約6℃低い(図13(c)の時間ta1参照)ことから、主・補助圧縮機がともに起動された後に、前記戻り温度制御により当該主・補助圧縮機の回転数は急激に上昇する。そして、当該主・補助圧縮機の回転数は、(後述する実施形態と異なり回転数上限値による規制がないことから)第1圧縮機43及び第2圧縮機53における最高回転数(この例では100[rps])にまで達する(図13(d)の時間ta2参照)。
この結果、前記実戻り温度は、目標戻り温度である約40℃に達し(図13(c)の時間ta2参照)、その後実戻り温度が前記目標戻り温度を超えて上昇する(=オーバーシュート)と、前述の手法によって、まず補助圧縮機の回転数が主圧縮機よりも先に低下する(図13(d)の時間ta3参照)。これにより前記実戻り温度は低下に転じ、補助圧縮機の回転数がある程度の低回転数となった段階で、主圧縮機の回転数低下が開始される(図13(d)の時間ta4参照)。補助圧縮機が予め定められた回転数(この例では約60[rps])まで到達した後はいったんその値で維持され、その状態で主圧縮機の回転数のみが段階的に低下する(図13(d)の時間ta5~ta6参照)。その主圧縮機の回転数が予め定められた回転数(この例では上述と同じ約60[rps])となったらその状態で維持されるとともに、補助圧縮機の回転数が再び低下を開始し(図13(d)の時間ta6参照)、予め定められた低回転数(この例では約20[rps])まで低下し、前記実戻り温度が前記目標戻り温度である約40℃まで下がった(図13(c)の時間ta7参照)後は、その状態で維持される(図13(d)の時間ta7参照)。
このような手法の場合、主圧縮機の回転数は起動直後の100[rps]から約60[rps]まで低下して維持されるのに加え、補助圧縮機の回転数も起動直後の100[rps]から低回転数である約20[rps]に低下した状態で無駄に維持されることとなる。この結果、装置全体の消費電力が増大するため、図13(b)に示す前記COPが約2.5という低い値で安定し、非効率となっている。
<実施形態~暖房負荷が高い場合>
次に、図14により、本実施形態の場合の暖房運転挙動を説明する。前記同様、運転開始時に比較的暖房負荷が高い場合を例にとって示している。図示において、前記戻り温度制御部61a,62aにより前記同様の戻り温度制御が行われ、前記実戻り温度が目標戻り温度(この例では40[℃])となるように主・補助圧縮機の回転数が上昇を開始するが、このとき併せて前記上限値決定部61c,62cが決定した回転数上限値による制限制御が実行される。すなわち、前記同様、運転開始当初において前記実戻り温度が約32℃で前記目標戻り温度より約8℃低い(図14(c)の時間tb1参照)結果、図11の前記相関により温度ゾーンgとなる。そして、主・補助圧縮機いずれも起動前の非稼働状態であり、停止・起動ゾーンに該当する。これらの結果、図12の「停止・起動ゾーンかつ温度ゾーンg」における設定により、主圧縮機が起動されるとともに、その第1上限値が50[rps]に制限され(図14(d)の時間tb1~tb2参照)、稼働状態ゾーンの切替に必要な移行時間のカウントがスタートする。
その後、前記実戻り温度が上昇して約33.5[℃]となると(前記目標戻り温度との偏差が-6.5[℃]に縮まることで)、図11の前記相関により温度ゾーンfとなる。なお、この段階では、前記稼働状態ゾーンの切替に必要な移行時間(この例では停止・起動ゾーン、gゾーンに対応した600[sec])に達していないことから、(図12に示すように圧縮機の稼働要求台数は1台となるものの)図12の前記稼働状態ゾーンは切り替わらず前記停止・起動ゾーンのままとなり、図12の「停止・起動ゾーンかつ温度ゾーンf」に対応して主圧縮機の第1上限値はさらに小さい45[rps]に制限される(図14(d)の時間tb2~tb3参照)。これにより、前記実戻り温度の上昇はそれまでよりも緩やかになる(図14(c)の時間tb2~tb3参照)。
そして、前記移行時間である運転開始後から600[sec]が経過すると、図12の稼働状態ゾーンが前記停止・起動ゾーンから、主圧縮機1台の運転に対応した1台運転ゾーンへと切り替わり、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンf」に対応して、図12により主圧縮機の第1上限値はより大きい96[rps]まで緩和され(図14(d)の時間tb3~tb4参照)、主圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により当該96[rps]まで上昇する。これにより、前記実戻り温度の上昇割合がそれまでよりもやや急になる(図14(c)の時間tb3~tb4参照)。なお、移行時間のカウントは、図14の時間tb2のように、停止・起動ゾーンの温度ゾーンgから停止・起動ゾーンの温度ゾーンfに変化しても、中断されることなく継続される。詳細には、図12に示した停止・起動ゾーンの温度ゾーンd~gの何れかの温度ゾーンで移行時間のカウントが開始された後は、図12に示した停止・起動ゾーンの温度ゾーンd~gの温度ゾーン間で移動があったとしても、そのカウントは継続される。1台運転ゾーンの温度ゾーンa、b間、1台運転ゾーンの温度ゾーンe~g間、並びに、後述の2台運転ゾーンの温度ゾーンa,b間についても上記と同様の手法となる。
その後、さらに前記実戻り温度が上昇して約35.5[℃]となると(図14(c)の時間tb4参照)、(目標戻り温度との偏差が約-4.5[℃]となることから)図11の前記相関により温度ゾーンeとなる。この結果、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンe」により主圧縮機の第1上限値はやや小さい90[rps]に制限され、主圧縮機の回転数が96[rps]から90[rps]に一気に低下する(図14(d)の時間tb4~tb5参照)。
そして、前記移行時間である、前記時間tb3から600[sec]が経過すると、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンe」における稼働要求台数2台の設定により、さらに補助圧縮機が起動されるとともに、稼働状態ゾーンが前記1台運転ゾーンから、主・補助圧縮機2台の運転に対応した2台運転ゾーンへと切り替わる。この結果、図12の「2台運転ゾーンかつ温度ゾーンe」に対応して、主圧縮機の前記第1上限値はそれまでより大きい96[rps]まで緩和され(図14(d)の時間tb5~tb6参照)、主圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により当該96[rps]まで上昇する。また補助圧縮機の前記第2上限値は96[rps]とされ、補助圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により当該96[rps]まで上昇する(図14(d)の時間tb5~tb6参照)。これにより、前記実戻り温度の上昇割合がそれまでよりもやや急になる(図14(c)の時間tb5~tb6参照)。
その後、さらに前記実戻り温度が上昇して約38.5[℃]となると(図14(c)の時間tb6参照)、(目標戻り温度との偏差が約-1.5[℃]となることから)図11の前記相関により温度ゾーンcとなる。この結果、図12の「2台運転ゾーンかつ温度ゾーンc」により主圧縮機の第1上限値はやや小さい90[rps]に制限されて主圧縮機の回転数が96[rps]から90[rps]に一気に低下するとともに、補助圧縮機の第2上限値はさらに小さい66[rps]に制限されて補助圧縮機の回転数が96[rps]から66[rps]に一気に低下する(図14(d)の時間tb6~tb7参照)。これにより、前記実戻り温度の上昇は再び緩やかになる(図14(c)の時間tb6~tb7参照)。
前記緩やかな上昇により、その後前記実戻り温度が前記目標戻り温度に達すると、図11の前記相関により温度ゾーンbとなり図12の「2台運転ゾーンかつ温度ゾーンb」により前記第1上限値は79[rps]、前記第2上限値は51[rps]に制限されるが、主・補助圧縮機の回転数は、あるタイミングからは前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により所定の割合で低下する(図14(d)の時間tb7~tb8参照)。これにより、前記実戻り温度は上げ止まり、その後はゆっくりと低下に転じる(図14(c)の時間tb8~tb9参照)。
このとき、図12に示すように、前記の2台運転ゾーンかつ温度ゾーンbでの圧縮機稼働要求台数は1台であり、前述の時間tb7から600[sec]が経過した段階で(前記時間tb8参照)、補助圧縮機の回転が停止されるとともに図12の稼働状態ゾーンは再び2台運転ゾーン→1台運転ゾーンへと切り替わる。そして、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンb」に対応して主圧縮機の第1上限値は51[rps]に制限される(図14(d)の時間tb8~tb9参照)。
その後、さらに前記実戻り温度が低下して前記40[℃]を下回ると(図14(c)の時間tb9参照)、(目標戻り温度との偏差が約0.5[℃]となることから)図11の前記相関により温度ゾーンcとなる。この結果、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンc」により主圧縮機の第1上限値は66[rps]まで緩和され、主圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により当該66[rps]まで上昇する(図14(d)の時間tb9以降参照)。
そして、前記のような経時推移に対応し、図14(a)に示す温水出力は図13(a)の比較例に比べれば比較的緩やかに推移し、図14(b)に示すCOPは比較的3を上回る期間が長く高効率化を実現しており、また図14(c)に示す実戻り温度は、目標戻り温度に対するオーバーシュートが抑制されている。
<冷房運転挙動の例>
次に、本実施形態の前記ヒートポンプ熱源機1における冷房運転挙動の一例を、前記同様、そのような制御を行わない比較例と対比しつつ説明する。
<比較例~冷房負荷が高い場合>
まず、図15により、前記比較例の場合の冷房運転挙動を説明する。なお、この例では、運転開始時に比較的冷房負荷が高い場合を例にとって示している。図示において、前記図13と同様、図15(a)は、ヒートポンプ熱源機1の冷水出力の経時推移を示し、図15(b)は、ヒートポンプ熱源機1のCOP(エネルギー効率)の経時推移を示しており、図15(c)は、前記実戻り温度(「冷水温度」と表記。前記戻り液温度センサ34が検出)の経時推移を示し、図15(d)は、第1圧縮機43及び第2圧縮機53のうち前記主圧縮機及び前記補助圧縮機の回転数の経時推移を示している。
図15において、前記の戻り温度制御が行われ、前記実戻り温度が目標戻り温度(この例では10[℃])となるように主・補助圧縮機の回転数が制御される。この例では、運転開始当初において前記実戻り温度が約17℃で前記目標戻り温度より約7℃高い(図15(c)の時間tc1参照)ことから、主・補助圧縮機がともに起動された後に、前記戻り温度制御により当該主・補助圧縮機の回転数は急激に上昇する。そして、当該主・補助圧縮機の回転数は、(後述する実施形態と異なり回転数上限値による規制がないことから)第1圧縮機43及び第2圧縮機53における最高回転数(この例では100[rps])にまで達する(図15(d)の時間tc2参照)。
この結果、前記実戻り温度は、目標戻り温度である約10℃に達し、その後実戻り温度が前記目標戻り温度を超えて低下する(=アンダーシュート)と(図15(c)の時間tc3参照)、前述の手法によって、まず補助圧縮機の回転数が主圧縮機よりも先に低下する(図15(d)の時間tc3参照)。これにより前記実戻り温度は上昇に転じ、補助圧縮機の回転数がある程度の低回転数となった段階で、主圧縮機の回転数低下が開始される(図15(d)の時間tc4参照)。補助圧縮機が予め定められた回転数(この例では約60[rps])まで到達した後はいったんその値で維持され、その状態で主圧縮機の回転数のみが段階的に低下する(図15(d)の時間tc5~tc6参照)。その主圧縮機の回転数が予め定められた回転数(この例では上述と同じ約60[rps])となったらその状態で維持されるとともに、補助圧縮機の回転数が再び低下を開始し(図15(d)の時間tc6参照)、予め定められた低回転数(この例では約20[rps])まで低下し、前記実戻り温度が前記目標戻り温度である約10℃まで戻った(図15(c)の時間tc7参照)後は、その状態で維持される(図15(d)の時間tc7参照)。
このような手法の場合、前記暖房運転時と同様、主圧縮機の回転数は起動直後の100[rps]から約60[rps]まで低下して維持されるのに加え、補助圧縮機の回転数も起動直後の100[rps]から低回転数である約20[rps]に低下した状態で無駄に維持されることとなる。この結果、装置全体の消費電力が増大するため、図15(b)に示す前記COPが約2.5という低い値で安定し、非効率となっている。
<実施形態~冷房負荷が高い場合>
次に、図16により、本実施形態の場合の冷房運転挙動を説明する。前記同様、運転開始時に比較的冷房負荷が高い場合を例にとって示している。図示において、前記戻り温度制御部61a,62aにより前記同様の戻り温度制御が行われ、前記実戻り温度が目標戻り温度(この例では10[℃])となるように主・補助圧縮機の回転数が上昇を開始するが、このとき併せて前記上限値決定部61c,62cが決定した回転数上限値による制限制御が実行される。すなわち、前記同様、運転開始当初において前記実戻り温度が約17℃で前記目標戻り温度より約7℃高い(図16(c)の時間td1参照)結果、図11の前記相関により温度ゾーンgとなる。そして、主・補助圧縮機いずれも起動前の非稼働状態である停止・起動ゾーンに該当する。これらの結果、図12の「停止・起動ゾーンかつ温度ゾーンg」における稼働要求台数1台の設定により、主圧縮機が起動されるとともに、その第1上限値が50[rps]に制限され(図16(d)の時間td1~td2参照)、稼働状態ゾーンの切替に必要な移行時間のカウントがスタートする。
その後、前記実戻り温度が低下して約16[℃]となると(前記目標戻り温度との偏差が+6[℃]に縮まることで)、図11の前記相関により温度ゾーンfとなる。なお、この段階では、前記稼働状態ゾーンの切替に必要な移行時間(この例では停止・起動ゾーン、fゾーンに対応した600[sec])に達していないことから、(図12に示すように圧縮機の稼働要求台数は1台となるものの)図12の前記稼働状態ゾーンは切り替わらず前記停止・起動ゾーンのままとなり、図12の「停止・起動ゾーンかつ温度ゾーンf」に対応して主圧縮機の第1上限値はさらに小さい45[rps]に制限される(図16(d)の時間td2~td3参照)。これにより、前記実戻り温度の低下はそれまでよりも緩やかになる(図16(c)の時間td2~td3参照)。
そして、前記移行時間である運転開始後から600[sec]が経過すると、図12の稼働状態ゾーンが前記停止・起動ゾーンから、主圧縮機1台の運転に対応した1台運転ゾーンへと切り替わり、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンf」に対応して、図12により主圧縮機の第1上限値はより大きい96[rps]まで緩和され(図16(d)の時間td3~td4参照)、主圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により当該96[rps]まで上昇する。これにより、前記実戻り温度の低下割合がそれまでよりもやや急になる(図16(c)の時間td3~td4参照)。なお、前記同様、移行時間のカウントは、図16の時間td2のように、停止・起動ゾーンの温度ゾーンgから停止・起動ゾーンの温度ゾーンfに変化しても中断されることなく継続される。すなわち、停止・起動ゾーンの温度ゾーンd~g間、1台運転ゾーンの温度ゾーンa,b間,1台運転ゾーンの温度ゾーンe~g間、後述の2台運転ゾーンの温度ゾーンa,b間で移動があったとしても、そのカウントは継続される。
その後、さらに前記実戻り温度が低下して約14.5[℃]となると(図16(c)の時間td4参照)、(目標戻り温度との偏差が約+4.5[℃]となることから)図11の前記相関により温度ゾーンeとなる。この結果、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンe」により主圧縮機の第1上限値はやや小さい90[rps]に制限され、主圧縮機の回転数が96[rps]から90[rps]に一気に低下する(図16(d)の時間td4~td5参照)。
そして、前記移行時間である、前記時間td3から600[sec]が経過すると、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンe」における稼働要求台数2台の設定により、さらに補助圧縮機が起動されるとともに、稼働状態ゾーンが前記1台運転ゾーンから、主・補助圧縮機2台の運転に対応した2台運転ゾーンへと切り替わる。この結果、前記同様、図12の「2台運転ゾーンかつ温度ゾーンe」に対応して、主圧縮機の前記第1上限値はそれまでより大きい96[rps]まで緩和され(図16(d)の時間td5~td6参照)、主圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により当該96[rps]まで上昇する。また補助圧縮機の前記第2上限値は96[rps]とされ、補助圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により当該96[rps]まで上昇する(図16(d)の時間td5~td6参照)。これにより、前記実戻り温度の低下割合がそれまでよりもやや急になる(図16(c)の時間td5~td6参照)。
その後、さらに前記実戻り温度が低下して約11[℃]となると(図16(c)の時間td6参照)、(目標戻り温度との偏差が約+1[℃]となることから)図11の前記相関により温度ゾーンcとなる。この結果、図12の「2台運転ゾーンかつ温度ゾーンc」により主圧縮機の第1上限値はやや小さい90[rps]に制限されて主圧縮機の回転数が96[rps]から90[rps]に一気に低下するとともに、補助圧縮機の第2上限値はさらに小さい66[rps]に制限されて補助圧縮機の回転数が96[rps]から66[rps]に一気に低下する(図16(d)の時間td6~td7参照)。これにより、前記実戻り温度の低下は再び緩やかになる(図16(c)の時間td6~td7参照)。
前記緩やかな低下により、その後前記実戻り温度が前記目標戻り温度に達すると、図11の前記相関により温度ゾーンbとなり図12の「2台運転ゾーンかつ温度ゾーンb」により前記第1上限値は79[rps]、前記第2上限値は51[rps]に制限されるが、主・補助圧縮機の回転数は、あるタイミングからは前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により所定の割合で低下する(図16(d)の時間td7~td8参照)。これにより、前記実戻り温度は下げ止まり、その後はゆっくりと上昇に転じる(図16(c)の時間td8~td9参照)。
このとき、図12に示すように、前記の2台運転ゾーンかつ温度ゾーンbでの圧縮機稼働要求台数は1台であり、前述の時間td7から600[sec]が経過した段階で(前記時間td8参照)、補助圧縮機の回転が停止されるとともに図12の稼働状態ゾーンは再び2台運転ゾーン→1台運転ゾーンへと切り替わる。そして、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンb」に対応して主圧縮機の第1上限値は51[rps]に制限される(図16(d)の時間td8~td9参照)。
その後、さらに前記実戻り温度が上昇して前記10[℃]を上回ると(図16(c)の時間td9参照)、図11の前記相関により温度ゾーンcとなる。この結果、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンc」により主圧縮機の第1上限値は66[rps]まで緩和され、主圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により当該66[rps]まで上昇する(図16(d)の時間td9以降参照)。
そして、前記のような経時推移に対応し、図16(a)に示す冷水出力は図15(a)の比較例に比べれば比較的緩やかに推移し、図16(b)に示すCOPは比較的3を上回る期間が長く高効率化を実現しており、また図16(c)に示す実戻り温度は、目標戻り温度に対するアンダーシュートが抑制されている。
なお、以上は、前記したように、運転開始時において比較的暖房・冷房負荷が高い場合を例にとって説明したが、運転開始時において比較的暖房・冷房負荷が低い場合においても適用可能である。そのような例を、図17~図20により説明する。
<比較例~暖房負荷が低い場合>
まず図17により、前記従来手法による比較例において、運転開始時に比較的暖房負荷が低い場合の暖房運転挙動を説明する。前記図13と同様、図示において、図17(a)は、ヒートポンプ熱源機1の温水出力の経時推移を示し、図17(b)は、ヒートポンプ熱源機1のCOP(エネルギー効率)の経時推移を示し、図17(c)は、前記実戻り温度(図中では「温水温度」と表記。前記戻り液温度センサ34が検出)の経時推移を示し、図17(d)は、前記主圧縮機及び前記補助圧縮機の回転数の経時推移を示している。
図17において、前記同様、前記実戻り温度が目標戻り温度(この例では40[℃])となるように主・補助圧縮機の回転数が制御され、この例では、運転開始当初において前記実戻り温度が約33℃で前記目標戻り温度より約7℃低い(図17(c)の時間te1参照)ことから、主・補助圧縮機がともに起動された後に、前記戻り温度制御により当該主・補助圧縮機の回転数は急激に上昇する。そして、当該主・補助圧縮機の回転数は、(後述する実施形態と異なり回転数上限値による規制がないことから)第1圧縮機43及び第2圧縮機53における最高回転数(前記の100[rps])にまで達する(図17(d)の時間te2参照)。
この結果、前記実戻り温度は、目標戻り温度である約40℃に達し(図17(c)の時間te1~te2参照)、その後実戻り温度が前記目標戻り温度を超えて上昇する(=オーバーシュート)と、前記同様、まず補助圧縮機の回転数が主圧縮機よりも先に低下する(図17(d)の時間te3参照)。これにより前記実戻り温度は低下に転じ、補助圧縮機の回転数がある程度の低回転数(この例では約60[rps])となった段階で、主圧縮機の回転数低下が開始される(図17(d)の時間te4参照)。補助圧縮機が予め定められた回転数(前記約60[rps])まで到達した後はいったんその値で維持され、その状態で主圧縮機の回転数のみが段階的に低下する(図17(d)の時間te4~te5参照)。その主圧縮機の回転数が予め定められた回転数(この例では上述と同じ約60[rps])となったらその状態で維持されるとともに、補助圧縮機の回転数が再び低下を開始する(図17(d)の時間te5参照)。その後、段階的に予め定められた回転数(この例では約40[rps])まで低下した後、補助圧縮機は駆動停止され(図17(d)の時間te6参照)、そのタイミングで主圧縮機の回転数もさらに所定回転数(この例では約50[rps])まで低下した後、その状態で維持される(図17(d)の時間te6以降参照)。
この手法の場合、主圧縮機及び補助圧縮機の両方が起動されてそれぞれ回転数100[rps]まで急上昇した後、それぞれ段階的に低下し、その後、補助圧縮機は、時間te6まで比較的低回転数(約60[rps]~40[rps])となった状態で無駄に維持される。この結果、装置全体の消費電力が増大するため、図17(b)に示す前記COPが時間te6より前は3.5未満という低い値で推移し、非効率となっている。
<実施形態~暖房負荷が低い場合>
次に、図18により、本実施形態の場合の暖房運転挙動を説明する。前記同様、運転開始時に比較的暖房負荷が低い場合を例にとって示している。図示において、前記戻り温度制御部61a,62aにより前記同様の戻り温度制御が行われ、前記実戻り温度が目標戻り温度(この例では40[℃])となるように主・補助圧縮機の回転数が上昇を開始するが、このとき併せて前記上限値決定部61c,62cが決定した回転数上限値による制限制御が実行される。すなわち、前記同様、運転開始当初において前記実戻り温度が約32℃で前記目標戻り温度より約8℃低い(図18(c)の時間tf1参照)結果、図11に基づき、前記「停止・起動ゾーン」かつ「温度ゾーンg」となる。そして、図12の「停止・起動ゾーンかつ温度ゾーンg」における稼働要求台数1台の設定により、主圧縮機が起動されるとともに、その第1上限値が50[rps]に制限され(図18(d)の時間tf1~tf2参照)、稼働状態ゾーンの切替に必要な移行時間のカウントがスタートする。
その後、前記低負荷により前記実戻り温度が比較的早く上昇し約37.5[℃]となると(前記目標戻り温度との偏差が-2.5[℃]に縮まることで)、図11の前記相関により温度ゾーンdとなる。なお、この段階では、前記稼働状態ゾーンの切替に必要な移行時間(この例では停止・起動ゾーン、gゾーンに対応した600[sec])に達していないことから、(図12に示すように圧縮機の稼働要求台数は1台となるものの)図12の前記稼働状態ゾーンは切り替わらず前記停止・起動ゾーンのままとなり、図12の「停止・起動ゾーンかつ温度ゾーンd」に対応して主圧縮機の第1上限値はさらに小さい35[rps]に制限される(図18(d)の時間tf2~tf3参照)。これにより、前記実戻り温度の上昇はそれまでよりも緩やかになる(図18(c)の時間tf2~tf3参照)。
そして、前記移行時間である運転開始後から600[sec]が経過すると、図12の稼働状態ゾーンが前記停止・起動ゾーンから、主圧縮機1台の運転に対応した1台運転ゾーンへと切り替わり、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンd」に対応して、図12により主圧縮機の第1上限値はより大きい79[rps]まで緩和され(図18(d)の時間tf3~tf4参照)、主圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により当該79[rps]まで上昇する。これにより、前記実戻り温度の上昇割合がそれまでよりもやや急になる(図18(c)の時間tf3~tf4参照)。
その後、さらに前記実戻り温度が上昇して約39[℃]となると(図18(c)の時間tf4参照)、(目標戻り温度との偏差が約-1[℃]となることから)図11の前記相関により温度ゾーンcとなる。この結果、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンc」により主圧縮機の第1上限値はやや小さい66[rps]に制限され、主圧縮機の回転数が79[rps]から66[rps]に一気に低下する(図18(d)の時間tf4~tf5参照)。
その後、前記実戻り温度が上昇して前記目標温度に達したことで、主圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により前記66[rps]から所定の割合で低下し、ある程度低下した状態で(この例では約55[rps])で維持される(図18(d)の時間tf5以降参照)。これにより、前記実戻り温度は上げ止まり、その後は前記目標温度(前記40℃)近傍において安定化する(図18(c)の時間tf5以降参照)。
そして、前記のような経時推移に対応し、図18(a)に示す温水出力は図17(a)の比較例に比べれば比較的緩やかに推移し、図18(b)に示すCOPは早期に3を上回るとともに前記安定化後は約3.5となって高効率化を実現しており、また図18(c)に示す実戻り温度は、目標戻り温度に対するオーバーシュートが抑制されている。
<冷房運転挙動の例>
次に、運転開始時に比較的冷房負荷が低い場合における、本実施形態の前記ヒートポンプ式温調システム100での冷房運転挙動の一例を、前記同様、そのような制御を行わない比較例と対比しつつ説明する。
<比較例~冷房負荷が低い場合>
次に、図19により、前記従来手法による比較例において、運転開始時に比較的冷房負荷が低い場合の冷房運転挙動を説明する。前記図17と同様、図示において、図19(a)は、ヒートポンプ熱源機1の冷水出力の経時推移を示し、図19(b)は、ヒートポンプ熱源機1のCOP(エネルギー効率)の経時推移を示し、図19(c)は、前記実戻り温度(図中では「冷水温度」と表記。前記戻り液温度センサ34が検出)の経時推移を示し、図19(d)は、前記主圧縮機及び前記補助圧縮機の回転数の経時推移を示している。
図19において、前記同様、前記実戻り温度が目標戻り温度(この例では10[℃])となるように主・補助圧縮機の回転数が制御され、この例では、運転開始当初において前記実戻り温度が約17℃で前記目標戻り温度より約7℃高い(図19(c)の時間tg1参照)ことから、主・補助圧縮機がともに起動された後に、前記戻り温度制御により当該主・補助圧縮機の回転数は急激に上昇する。そして、当該主・補助圧縮機の回転数は、(後述する実施形態と異なり回転数上限値による規制がないことから)第1圧縮機43及び第2圧縮機53における最高回転数(前記の100[rps])にまで達する(図19(d)の時間tg2参照)。
この際、冷房負荷が小さいことによる前記実戻り温度の急激な低下に対応し、前記同様、まず補助圧縮機の回転数が主圧縮機よりも先に低下する(図19(d)の時間tg3参照)。これにより、低下する前記実戻り温度が目標戻り温度である約10℃に達し(図19(c)の時間tg3~tg4参照)、さらに実戻り温度は前記目標戻り温度を超えて低下(=アンダーシュート)した後は、前記実戻り温度は上昇に転じる。その後、補助圧縮機の回転数がある程度の低回転数(この例では約60[rps])となった段階で、主圧縮機の回転数低下が開始される(図19(d)の時間tg4参照)。補助圧縮機が予め定められた回転数(前記約60[rps])まで到達した後はいったんその値で維持され、その状態で主圧縮機の回転数のみが段階的に低下する(図19(d)の時間tg4~tg5参照)。その主圧縮機の回転数が予め定められた回転数(この例では上述と同じ約60[rps])となったらその状態で維持されるとともに、補助圧縮機の回転数が再び低下を開始する(図19(d)の時間tg5参照)。その後、段階的に予め定められた回転数(この例では約40[rps])まで低下した後、補助圧縮機は駆動停止され(図19(d)の時間tg6参照)、そのタイミングで主圧縮機の回転数もさらに所定回転数(この例では約50[rps])まで低下した後、その状態で維持される(図19(d)の時間tg6以降参照)。
この手法の場合、主圧縮機及び補助圧縮機の両方が起動されてそれぞれ回転数100[rps]まで急上昇した後、それぞれ段階的に低下し、その後、補助圧縮機は、時間tg6まで比較的低回転数(約60[rps]~40[rps])となった状態で無駄に維持される。この結果、装置全体の消費電力が増大するため、図19(b)に示す前記COPが時間tg6より前は3.5未満という低い値で推移し、非効率となっている。
<実施形態~冷房負荷が低い場合>
次に、図20により、本実施形態の場合の冷房運転挙動を説明する。前記同様、運転開始時に比較的冷房負荷が低い場合を例にとって示している。図示において、前記戻り温度制御部61a,62aにより前記同様の戻り温度制御が行われ、前記実戻り温度が目標戻り温度(この例では10[℃])となるように主・補助圧縮機の回転数が上昇を開始するが、このとき併せて前記上限値決定部61c,62cが決定した回転数上限値による制限制御が実行される。すなわち、前記同様、運転開始当初において前記実戻り温度が約17℃で前記目標戻り温度より約7℃高い(図20(c)の時間th1参照)結果、図11に基づき、前記「停止・起動ゾーン」かつ「温度ゾーンg」となる。そして、図12の「停止・起動ゾーンかつ温度ゾーンg」における稼働要求台数1台の設定により、主圧縮機が起動されるとともに、その第1上限値が50[rps]に制限され(図20(d)の時間th1~th2参照)、稼働状態ゾーンの切替に必要な移行時間のカウントがスタートする。
その後、前記低負荷により前記実戻り温度が比較的早く低下し約13[℃]となると(前記目標戻り温度との偏差が+3[℃]に縮まることで)、図11の前記相関により温度ゾーンdとなる。なお、この段階では、前記稼働状態ゾーンの切替に必要な移行時間(この例では停止・起動ゾーン、gゾーンに対応した600[sec])に達していないことから、(図12に示すように圧縮機の稼働要求台数は1台となるものの)図12の前記稼働状態ゾーンは切り替わらず前記停止・起動ゾーンのままとなり、図12の「停止・起動ゾーンかつ温度ゾーンd」に対応して主圧縮機の第1上限値はさらに小さい35[rps]に制限される(図20(d)の時間th2~th3参照)。これにより、前記実戻り温度の低下はそれまでよりも緩やかになる(図20(c)の時間th2~th3参照)。
そして、前記移行時間である運転開始後から600[sec]が経過すると、図12の稼働状態ゾーンが前記停止・起動ゾーンから、主圧縮機1台の運転に対応した1台運転ゾーンへと切り替わり、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンd」に対応して、図12により主圧縮機の第1上限値はより大きい79[rps]まで緩和され(図20(d)の時間th3~th4参照)、主圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により当該79[rps]まで上昇する。これにより、前記実戻り温度の低下割合がそれまでよりもやや急になる(図20(c)の時間th3~th4参照)。
その後、さらに前記実戻り温度が低下して約11[℃]となると(図20(c)の時間th4参照)、(目標戻り温度との偏差が約+1[℃]となることから)図11の前記相関により温度ゾーンcとなる。この結果、図12の「1台運転ゾーンかつ温度ゾーンc」により主圧縮機の第1上限値はやや小さい66[rps]に制限され、主圧縮機の回転数が79[rps]から66[rps]に一気に低下する(図20(d)の時間th4~th5参照)。
その後、前記実戻り温度が低下して前記目標温度に達したことで、主圧縮機の回転数は前記戻り温度制御部61a,62aの前記戻り温度制御により前記66[rps]から所定の割合で低下し、ある程度低下した状態で(この例では約55[rps])で維持される(図20(d)の時間th5以降参照)。これにより、前記実戻り温度は下げ止まり、その後は前記目標温度(前記10℃)近傍において安定化する(図20(c)の時間th5以降参照)。
そして、前記のような経時推移に対応し、図20(a)に示す冷水出力は図19(a)の比較例に比べれば比較的緩やかに推移し、図20(b)に示すCOPは早期に3を上回るとともに前記安定化後は約3.5となって高効率化を実現しており、また図20(c)に示す実戻り温度は、目標戻り温度に対するアンダーシュートが抑制されている。
<制御手順>
以上のような挙動を実現する、本実施形態の地中熱制御装置61及び空気熱制御装置62に備えられた前記圧縮機制御部61A,62A(詳細には前記の戻り温度制御部61a,62a、温度ゾーン決定部61b,62b、上限値決定部61c,62c)により実行される制御内容を、前記暖房運転時を例にとって図21、図22、及び図23により説明する。
図21において、まず、ステップS105で、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記主圧縮機が非稼働状態(すなわち前記図12の「停止・起動ゾーン」に該当する状態)でかつ前記温度ゾーンd,e,f,gのいずれかに該当する状態であるか否か、を判定する。前記主圧縮機が停止・起動ゾーンでかつ温度ゾーンd~gのいずれかに該当する場合は判定が満たされ(S105:YES)、後述のステップS115に移る。それ以外の場合は、判定は満たされず(S105:NO)、ステップS110に移る。
ステップS110では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記主圧縮機が停止していればその停止状態を維持し、前記主圧縮機が起動していれば、公知の制御により前記主圧縮機を停止する。その後、前記ステップS105に戻って同様の手順を繰り返す。
一方、ステップS105から移行したステップS115では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、公知の制御により前記主圧縮機を起動する(既に起動した状態であれば、その起動状態を維持する)とともに、前記温度ゾーン決定部61b,62bにより、前記主圧縮機の回転数の上限値を決定する。すなわち、温度ゾーン決定部61b,62bが、前記実戻り温度と前記目標戻り温度との前記偏差△T2に従い、前記図11(a)に示した相関(第1相関)を参照して対応する温度ゾーンa~gを決定するとともに、前記上限値決定部61c,62cにより、その決定された温度ゾーンa~gとその時点での前記主圧縮機の運転状態に対応した前記稼働状態ゾーンとに従い、前記図12に示した相関(第2相関)を参照して、前記主圧縮機の回転数の上限値を決定する。その後、ステップS120に移る。
ステップS120では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記戻り液温度センサ34により検出された前記実戻り温度(実水温)が、前記目標戻り温度(目標水温)未満であるか否かを判定する。前記実戻り温度が前記目標戻り温度以上である場合は、判定が満たされず(S120:NO)、前記ステップS105に戻って同様の手順を繰り返す。前記実戻り温度が前記目標戻り温度未満である場合は、判定が満たされ(S120:YES)、ステップS125に移る。
ステップS125では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、この時点での前記主圧縮機の回転数が前記ステップS115で決定した前記上限値未満であるか否かを判定する。前記上限値以上である場合は、判定が満たされず(S125:NO)、ステップS130に移る。
ステップS130では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、前記主圧縮機の回転数を、前記ステップS115で決定された前記上限値に制御する。その後、後述するステップS140に移る。
一方、ステップS125において、前記主圧縮機の回転数が前記ステップS115で決定した前記上限値未満であった場合は、判定が満たされ(S125:YES)、ステップS135に移る。
ステップS135では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記戻り温度制御部61a,62aにより、前記目標戻り温度と前記実戻り温度との前記偏差△T1に従い、前記図10(a)に示した相関(第3相関)を参照して、対応する回転数となるように、前記主圧縮機の回転数を増加させる。その後、ステップS140に移る。
ステップS140では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記した図12における稼働状態ゾーン切り替えための移行時間(前記の例では600秒)が経過したか否かを判定する。600秒が経過していない場合は判定が満たされず(S140:NO)、前記ステップS105へ戻って同様の手順を繰り返す。600秒が経過していた場合は判定が満たされ(S140:YES)、後述の図22に示すステップS155に移る。
図22において、前記ステップS140から移行したステップS155では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、前記図12に示した相関(第2相関)を参照して、前記主圧縮機の回転数の上限値を、前記1台運転ゾーン、かつ、前記温度ゾーンa,b,c,d,e,f,gのいずれかのゾーン、に対応して決定する。その後、後述のステップS160に移る。
ステップS160では、前記ステップS120と同様、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記戻り液温度センサ34により検出された前記実戻り温度(実水温)が、前記目標戻り温度(目標水温)未満であるか否かを判定する。例えば前記温度ゾーンc,d,e,f,gのいずれかであり前記実戻り温度が前記目標戻り温度未満であった場合は判定が満たされ(S160:YES)、後述のステップS190に移る。例えば前記温度ゾーンa,bのいずれかであり前記実戻り温度が前記目標戻り温度以上であった場合は判定が満たされず(S160:NO)、ステップS165に移る。
ステップS165では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、この時点での前記主圧縮機の回転数が、予め機構的に定まる所定の下限値(前述の下限回転数)以下であるか否かを判定する。下限値より大きい場合は、判定が満たされず(S165:NO)、ステップS170に移る。
ステップS170では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記戻り温度制御部61a,62aにより、前記目標戻り温度と前記実戻り温度との前記偏差△T1に従い、前記図10(a)に示した相関(第3相関)を参照して、対応する回転数となるように、前記主圧縮機の回転数を減少させる。その後、後述のステップS180に移る。
一方、前記ステップS165において、前記主圧縮機の回転数が前記下限値以下であった場合は、判定が満たされ(S165:YES)、ステップS175に移る。
ステップS175では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、前記主圧縮機の回転数を前記下限値に制御する。その後、ステップS180に移る。
ステップS180では、前記ステップS140と同様、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記した図12における稼働状態ゾーン切り替えための移行時間(前記の例では600秒)が経過したか否かを判定する。600秒が経過していない場合は判定が満たされず(S180:NO)、前記ステップS155へ戻って同様の手順を繰り返す。600秒が経過していた場合は判定が満たされ(S180:YES)、ステップS185に移る。
ステップS185では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、公知の制御により前記主圧縮機を停止する。その後、前記図21のステップS105に戻って同様の手順を繰り返す。
一方、前記ステップS160において、前記実戻り温度が前記目標戻り温度未満であった場合は判定が満たされ(S160:YES)、ステップS190に移る。
ステップS190では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、この時点での前記主圧縮機の回転数が、前記ステップS155で決定された上限値未満であるか否かを判定する。上限値以上であった場合は、判定が満たされず(S190:NO)、ステップS195に移る。
ステップS195では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、前記主圧縮機の回転数を、前記ステップS155で決定された前記上限値に制御する。その後、後述のステップS202に移る。
一方、前記ステップS190において、前記主圧縮機の回転数が前記上限値未満であった場合は、判定が満たされ(S190:YES)、ステップS200に移る。
ステップS200では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記戻り温度制御部61a,62aにより、前記目標戻り温度と前記実戻り温度との前記偏差△T1に従い、前記図10(a)に示した相関(第3相関)を参照して、対応する回転数となるように、前記主圧縮機の回転数を増加させる。その後、ステップS202に移る。
ステップS202では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記主圧縮機が前記温度ゾーンe,f,gのいずれかに該当する状態であるか否か、を判定する。温度ゾーンc,dの場合は判定が満たされず(S202:NO)、前記ステップS155に戻り、同様の手順を繰り返す。温度ゾーンe,f,gのいずれかに該当する場合は判定が満たされ(S202:YES)、ステップS205に移る。
ステップS205では、前記ステップS140及びステップS180と同様、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記した図12における稼働状態ゾーン切り替えための移行時間(前記の例では600秒)が経過したか否かを判定する。600秒が経過していない場合は判定が満たされず(S205:NO)、前記ステップS155へ戻って同様の手順を繰り返す。600秒が経過していた場合は判定が満たされ(S205:YES)、後述の図23に示すステップS315に移る。
図23において、前記ステップS205の判定が満たされて移行したステップS315では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、公知の制御により前記補助圧縮機を起動する(既に起動した状態であれば、その起動状態を維持する)とともに、前記上限値決定部61c,62cにより、前記圧縮機の回転数の上限値と前記補助圧縮機の回転数の上限値とを決定する。すなわち、温度ゾーン決定部61b,62bが、前記実戻り温度と前記目標戻り温度との前記偏差△T2に従い、前記図11(a)に示した相関(第1相関)を参照して対応する温度ゾーンa~gを決定するとともに、前記上限値決定部61c,62cにより、前記図12に示した相関(第2相関)を参照して、前記主圧縮機及び前記補助圧縮機の回転数の上限値を、前記2台運転ゾーン、かつ、前記決定された温度ゾーンa~g、に対応して、決定する。その後、ステップS360に移る。
ステップS360では、前記ステップS120及び前記ステップS160と同様、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記戻り液温度センサ34により検出された前記実戻り温度(実水温)が、前記目標戻り温度(目標水温)未満であるか否かを判定する。例えば前記温度ゾーンc,d,e,f,gのいずれかであり前記実戻り温度が前記目標戻り温度未満であった場合は判定が満たされ(S360:YES)、後述のステップS390に移る。例えば前記温度ゾーンa,bのいずれかであり前記実戻り温度が前記目標戻り温度以上であった場合は判定が満たされず(S360:NO)、ステップS365に移る。
ステップS365では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、この時点での前記主・補助圧縮機の回転数が、予め機構的に定まる所定の下限値(前述の下限回転数)以下であるか否かを判定する。下限値より大きい場合は、判定が満たされず(S365:NO)、ステップS370に移る。
ステップS370では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記戻り温度制御部61a,62aにより、前記目標戻り温度と前記実戻り温度との前記偏差△T1に従い、前記図10(a)に示した相関(第3相関)を参照して、対応する回転数となるように、前記主・補助圧縮機の回転数を減少させる。その後、後述のステップS380に移る。
一方、前記ステップS365において、前記主・補助圧縮機の回転数が前記下限値以下であった場合は、判定が満たされ(S365:YES)、ステップS375に移る。
ステップS375では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、前記主・補助圧縮機の回転数を前記下限値に制御する。その後、ステップS380に移る。
なお、前記ステップS365、ステップS370、ステップS375における各処理は、実際には、前記主圧縮機及び前記補助圧縮機のそれぞれに対し、個別に処理が行われる。すなわち、ステップS365において主圧縮機の回転数が前記下限値以下で判定が満たされる一方、補助圧縮機の回転数は前記下限値未満で判定が満たされない場合には、主圧縮機についてはステップS375にて回転数が下限値とされる一方、補助圧縮機についてはステップS370にて温調制御により回転数が減少される。逆に、ステップS365において補助圧縮機の回転数が前記下限値以下で判定が満たされる一方、主圧縮機の回転数は前記下限値未満で判定が満たされない場合には、補助圧縮機についてはステップS375にて回転数が下限値とされる一方、主圧縮機についてはステップS370にて温調制御により回転数が減少される。
ステップS380では、前記ステップS140と同様、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記した図12における稼働状態ゾーン切り替えための移行時間(前記の例では600秒)が経過したか否かを判定する。600秒が経過していない場合は判定が満たされず(S380:NO)、前記ステップS315へ戻って同様の手順を繰り返す。600秒が経過していた場合は判定が満たされ(S380:YES)、ステップS385に移る。
ステップS385では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、公知の制御により前記補助圧縮機を停止する。その後、前記図22のステップS155に戻って同様の手順を繰り返す。
一方、前記ステップS360において、前記実戻り温度が前記目標戻り温度未満であった場合は判定が満たされ(S360:YES)、ステップS390に移る。
ステップS390では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、この時点での前記主・補助圧縮機の回転数が、前記ステップS315で決定された上限値未満であるか否かを判定する。上限値以上であった場合は、判定が満たされず(S390:NO)、ステップS395に移る。
ステップS395では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記上限値決定部61c,62cにより、前記主・補助圧縮機の回転数を、前記ステップS315で決定された前記上限値に制御する。
一方、前記ステップS390において、前記主・補助圧縮機の回転数が前記上限値未満であった場合は、判定が満たされ(S390:YES)、ステップS400に移る。
ステップS400では、前記圧縮機制御部61A,62Aは、前記戻り温度制御部61a,62aにより、前記目標戻り温度と前記実戻り温度との前記偏差△T1に従い、前記図10(a)に示した相関(第3相関)を参照して、対応する回転数となるように、前記主・補助圧縮機の回転数を増加させる。
なお、前述と同様、前記ステップS390、ステップS395、ステップS400における各処理は、実際には、前記主圧縮機及び前記補助圧縮機のそれぞれに対し、個別に処理が行われる。すなわち、ステップS390において主圧縮機の回転数が前記上限値以上で判定が満たされない一方、補助圧縮機の回転数は前記上限値未満で判定が満たされる場合には、主圧縮機についてはステップS395にて回転数が下限値とされる一方、補助圧縮機についてはステップS400にて温調制御により回転数が増加される。逆に、ステップS390において補助圧縮機の回転数が前記上限値以上で判定が満たされない一方、主圧縮機の回転数は前記上限値未満で判定が満たされる場合には、補助圧縮機についてはステップS395にて回転数が下限値とされる一方、主圧縮機についてはステップS400にて温調制御により回転数が増加される。
そして、前記ステップS395が終了した後、及び、前記ステップ400が終了した後は、前記ステップS315に戻り、同様の手順を繰り返す。
なお、圧縮機制御部61A,62Aは、冷房運転時においても上記に準じた制御手順を実行する(詳細な説明は省略)。
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のヒートポンプ熱源機1においては、地中を熱源とする地中熱ヒートポンプ回路40と空気熱ヒートポンプ回路50とが備えられている。地中熱ヒートポンプ回路40には、地中熱源熱交換器45、第1圧縮機43、第1熱交換器41、が備えられており、第2ヒートポンプ回路50には、空気熱源熱交換器55、第2圧縮機53、第2熱交換器51、が備えられている。そして、前記のようにして2つの圧縮機43,53が協働して稼働している場合で、冷房又は暖房負荷が小さくなった場合には、主圧縮機・補助圧縮機の回転数をいずれも低下させたり、さらには補助圧縮機の駆動を停止し主圧縮機のみの駆動としたりする必要がある。
これに対応して、本実施形態では、戻り液温度センサ34と、温度ゾーン決定部61b,62bと、上限値決定部61c,62cと、が設けられる。戻り液温度センサ34が、前記負荷配管31内の循環液Lの実温度を検出する。また、温度ゾーン決定部61b,62bは、検出された前記実温度とメインリモコン60aの操作に対応した目標温度との偏差△T2に基づき、対応する温度ゾーンを決定する。そして、前記主圧縮機及び前記補助圧縮機の両方が稼働している状態で、上限値決定部61c,62cにより、前記温度ゾーンごとに、前記主圧縮機の回転数の第1上限値、及び、前記補助圧縮機の回転数の第2上限値、が決定される。このとき、前記偏差△T2が大きくなるほど(すなわち、暖房運転時では目標温度に対して実水温が低くなるほど、冷房運転時では目標温度に対して実水温が高くなるほど)、第1及び第2上限値が大きくなるように制御される(言い換えれば前記偏差が小さくなるほど第1及び第2上限値が小さいように制御される)と共に、常に、補助圧縮機の前記第2上限値が、主圧縮機の前記第1上限値以下となるように制御される(図11及び図12の2台運転ゾーン参照)。これにより、例えば主圧縮機及び補助圧縮機の2台稼働から主圧縮機のみの1台稼働へと移行する場合において、先に補助圧縮機の回転数を段階的に低下させて特定回転数に到達した後に主圧縮機の回転数を段階的に低下させて補助圧縮機の駆動を停止する手法(図13、図15参照)のように、補助圧縮機の回転数を低回転数で維持する無駄を行わない(図14、図16参照)。
また、冷房負荷又は暖房負荷が小さい場合には、主圧縮機及び補助圧縮機の2台稼働から主圧縮機のみの1台稼働へと移行する無駄(図17、図19参照)を行わず、最初から補助圧縮機を起動することなく主圧縮機のみ起動し、その回転数を徐々に低くすることもできる(図18、図20参照)。
すなわち、本実施形態においては、補助圧縮機の運転介入率を低減することができるので、ヒートポンプ熱源機1全体の消費電力を低下させて効率(例えばCOP)を向上することができる(図14(b)、図16(b)、図18(b
)、図20(b)参照)。特に、前記偏差△T2が大きいほど主圧縮機及び補助圧縮機を最大限動作させるようにしつつ(図12の2台運転ゾーンの温度ゾーンf,g参照)、前記偏差△T2が小さいほど補助圧縮機の回転数をより小さくする(図12の2台運転ゾーンの温度ゾーンa~d参照)ことで、さらに効率向上効果を大きくすることができる。
また、本実施形態では特に、前記上限値決定部61c,62cは、前記2台運転ゾーンにおける前記複数の温度ゾーンa~gのうち、前記偏差△T2が最も少ない場合に対応する1つの温度ゾーン(この例では、前記偏差△T2が最も少なくなるのは偏差△T2が0を含む温度ゾーンbまたはc)を含む少なくとも1つ以上の温度ゾーン(この例では温度ゾーンa,b,c)においては、前記第2上限値が前記第1上限値より小さくなるように前記決定を行う(図12の2台運転ゾーン参照)。これにより、次の効果を奏する。
すなわち、前記偏差が少ない(例えば冷房時・暖房時ともに実温度が目標温度に比較的近い)側の少なくとも1つの温度ゾーンにおいては、常に、補助圧縮機の前記第2上限値が、主圧縮機の前記第1上限値よりも小さくなるように制御される。これにより、補助圧縮機の運転介入率を確実に低減し、さらに効率向上を図ることができる。
また、本実施形態では特に、前記上限値決定部61c,62cは、図12を用いて前述したように、前記主圧縮機及び前記補助圧縮機の前記両方の定常時の稼働状態に対応した2台運転ゾーン、前記主圧縮機の定常時の稼働状態かつ前記補助圧縮機の非稼働状態に対応した1台運転ゾーン、前記主圧縮機及び前記補助圧縮機の両方の非稼働状態に対応すると共に、主圧縮機の起動時の稼働状態かつ前記補助圧縮機の非稼働状態に対応した停止・起動ゾーン(0台運転ゾーン)、のいずれか1つの稼働状態ゾーンを決定すると共に、各ゾーン別に、前記第1上限値及び前記第2上限値を前記温度ゾーンa~gごとに決定する。これにより、次の効果を奏する。
すなわち、上限値決定部61c,62cにより、主圧縮機と補助圧縮機とが稼働する2台運転ゾーン、両動力源が稼働しないまたは主圧縮機が起動する停止・起動ゾーン、に加え、さらに主圧縮機のみが稼働する1台運転ゾーンが設けられる。そして、各稼働状態ゾーン別に、前記第1上限値及び第2上限値が決定される。これにより、例えば初動時において、停止・起動ゾーンでの制御から1台ゾーンでの制御を経て2台ゾーンでの制御とする(図14、図16参照)ことで、循環液Lの実温度だけで圧縮機の稼働状態を決定する手法(図13、図15参照)のような、両動力源の非稼働状態からいきなり両動力源の稼働状態となる無駄をなくすことができる。この結果、立ち上がり動作時の効率(例えばCOP)向上を図ることができる。
また、本実施形態では特に、前記偏差△T2と対応する温度ゾーンa~gとの第1相関(図11参照)を記憶した前記メモリと、前記温度ゾーンa~gと対応する前記第1上限値及び前記第2上限値との第2相関(図12参照)を記憶した前記メモリと、有し、前記温度ゾーン決定部61b,62bは、前記戻り液温度センサ34により検出された前記実温度と前記メインリモコン60aの操作に対応した前記目標温度との偏差に対し、前記第1相関を参照して、対応する前記温度ゾーンa~gを決定し、前記上限値決定部61c,62cは、前記温度ゾーン決定部61b,62bにより決定された前記温度ゾーンa~gに対し、前記第2相関を参照して、対応する前記第1上限値及び前記第2上限値を決定する。これにより、次の効果を奏する。
すなわち、予め用意されメモリに記憶されていた前記第1相関を利用して、温度ゾーン決定部61b,62bが前記偏差△T2に対応した温度ゾーンa~gを決定する。また、予め用意されメモリに記憶されていた前記第2相関を利用して、上限値決定部61c,62cが前記温度ゾーンa~gに対応した主・補助圧縮機の前記第1上限値及び前記第2上限値を決定する。これにより、簡素な演算で確実かつ迅速な圧縮機回転数制御を実行することができる。
また、本実施形態では特に、前記メモリに記憶されている前記第2相関(図12参照)では、前記温度ゾーンa~gと、対応する前記第1上限値及び前記第2上限値と、対応する圧縮機43,53の稼働要求台数と、が関連づけられている。そして、前記上限値決定部61c,62cは、図12を参照して決定される稼働要求台数が、その時点で実現されている圧縮機43,53の稼働台数と異なる値となった場合(例えば、1台運転ゾーンの温度ゾーンe,fのように実稼働台数は主圧縮機1台だが稼働要求台数が2台である場合や、2台運転ゾーンの温度ゾーンa,bのように稼働台数は主・補助圧縮機の2台だが稼働要求台数が1台である場合)には、その異なる値となった時点から所定期間(前述の例では600sec)が経過した後に、対応する新たな前記第1上限値又は前記第2上限値を決定する(図12、図14、図16等参照)。これにより、次の効果を奏する。
すなわち、圧縮機43,53の稼働台数要求と実際の稼働台数とが異なる値となったときに、直ちに実際の圧縮機43,53の稼働台数を増減させ前記要求された稼働台数と合致させるのではなく、前記異なる値となった時点から前記所定期間待つことで、負荷配管31を循環する循環液Lが一巡し液温が安定化した後に、前記要求された新たな稼働台数に対応した温度ゾーン決定及びこれに対応する前記第1上限値及び前記第2上限値の決定を行うことができる。これにより、圧縮機回転数制御の精度向上及び安定化向上を図ることができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、以上においては、前記第1熱交換器41の入口側(流入側)の前記端末循環回路30に前記戻り液温度センサ34を設けて、前記戻り液温度センサ34により検出された温水又は冷水の前記実戻り温度に応じて、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数を制御する、いわゆる戻り温度制御を行った。これに代えて、前記第1熱交換器41の出口側(流出側)に往き温度センサ(図示省略)を設けて、前記往き温度センサより検出された温水又は冷水の実往き温度に応じて、前記第1圧縮機43及び第2圧縮機53の回転数を制御する、いわゆる往き温度制御を行ってもよい。
また、上記においては、端末循環回路30において、循環する循環液Lの流れに対して、地中熱ヒートポンプ回路40の前記第1熱交換器41が空気熱ヒートポンプ回路50の前記第2熱交換器51よりも上流側に配設されている場合を例にとって説明したが、これに限られず、反対に前記第2熱交換器51が前記第1熱交換器41よりも上流側に配設されてもよい。さらには、端末循環回路30において前記第1熱交換器41と前記第2熱交換器51とが並列に接続されてもよい。
また例えば、上記実施形態では、上記地中または上記比較的大容量の水源中に地中熱交換器23を設け、この地中熱熱交換器23で上記地中または上記水源と熱交換した熱媒H1を、地中熱循環回路20において循環させたが、これに限られない。すなわち、このような循環回路を構成するのではなく、開放型の管路を地中熱循環ポンプ22に接続するようにしても良い。この場合、地中熱循環ポンプ22の上流側(ポンプ流入側)及び下流側(ポンプ流出側)がそれぞれ前述の湖沼、貯水池、河川、海、温泉、井戸等の水源(あるいは一定温度の水を供給する冷水器でもよい)に接続され、その水源等の水を上記地中熱循環ポンプ22で直接汲み上げて使用する。すなわち、上記水源等の水は、ポンプ上流側に接続された管路(上流側管路)を通じて上記地中熱循環ポンプ22に供給され、ポンプ下流側に接続された管路(下流側管路)へ吐出された後、その下流側管路に設けられた上記地中熱源熱交換器45に導かれて上記第1冷媒C1と熱交換を行った後、さらに上記下流側管路を通じて上記水源等に戻される。この場合、上記上流側管路に接続される水源等と上記下流側管路に接続される水源等は同一のものでもよいし、別々のものでもよい。
また例えば、上記実施形態では、地中熱交換器23を1本だけ地中に設けた場合を例にとって説明しているが、これに限られず、地中熱交換器23は地中に複数設けられていてもよい。その場合、それら複数の地中熱交換器23は互いに並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよい。
また、上記実施形態では、地中熱を用いた地中熱ヒートポンプ回路40と空気熱を用いた空気熱ヒートポンプ回路50とを1つずつ備えた複合熱源型のヒートポンプ熱源機に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、地中熱ヒートポンプ回路40と空気熱ヒートポンプ回路50を含み3つ以上のヒートポンプ回路を備えた複合熱源型のヒートポンプ熱源機に適用してもよい。この場合には、1つのヒートポンプ回路の圧縮機だけを主動力源とし、それ以外の他のヒートポンプ回路の圧縮機を補助動力源としてもよい。
さらに、上記実施形態では、互いに熱源が異なる2つのヒートポンプ回路(地中熱を用いる地中熱ヒートポンプ回路40と空気熱を用いる空気熱ヒートポンプ回路50)を備えた複合熱源型のヒートポンプ熱源機1に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、互いに熱源が同じ2つのヒートポンプ回路(地中熱を用いる地中熱ヒートポンプ回路40を2つ使用、あるいは、空気熱を用いる空気熱ヒートポンプ回路50を2つ使用)を備えたヒートポンプ熱源機に対しても適用可能であり、その場合も上記同様の効果を得る。なお、この場合、前記主圧縮機・前記補助圧縮機を決定する方法として、例えば、運転を開始する際に各々の圧縮機の累積稼働時間を比較し、稼働時間の短い方を主圧縮機とし稼働時間の長い方を補助圧縮機とすれば足りる。
さらに、上記実施形態では、負荷端末として、2台の熱交換端末36、36が接続される場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち1台のみ、または3台以上の負荷端末が接続される構成でも良い。