以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に示す運転支援システムは、自車両M(図7参照)に搭載されている。この運転支援システム1は、周辺の道路形状を検出するセンサユニットとして、ロケータユニット11、走行環境認識手段としてのカメラユニット21を有している。この両ユニット11,21は互いに依存することのない完全独立の多重系を構成している。更に、この両ユニット11(21)の一方が失陥した場合には、他方のユニット21(11)で自動運転を一時的に継続させ、自車両Mの運転を運転者に安全に引継がせる冗長系が構築されている。
この運転支援システム1は、ロケータユニット11とカメラユニット21とで現在走行中の道路形状が同一か否かを監視し、同一の場合に自動運転を継続させる。尚、検出する同一道路形状の一例として、本実施形態では道路曲率を示す。
ロケータユニット11は道路地図上の自車両Mの位置(自車位置)を推定すると共に、この自車位置の前方の道路地図データを取得する。一方、カメラユニット21は自車両Mの走行車線の左右を区画する区画線を認識し、この区画線の中央の道路曲率を求めると共に、この車線区画線の中央を基準とする自車両Mの車幅方向の横位置偏差を検出する。
このロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と記憶手段としての高精度道路地図データベース18とを有している。この地図ロケータ演算部12、後述する前方走行環境認識部21d、運転モード設定演算手段としての運転モード設定演算部22、及び後述する自動運転制御ユニット51は、CPU,RAM,ROM等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。
この地図ロケータ演算部12の入力側に、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機13、及び自律走行センサ14が接続されている。GNSS受信機13は複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。又、自律走行センサ14は、トンネル内走行等GNSS衛生からの受信感度が低く測位信号を有効に受信することのできない環境において、自律走行を可能にするもので、車速センサ、ジャイロセンサ、及び前後加速度センサ等で構成されている。すなわち、地図ロケータ演算部12は、車速センサで検出した車速とジャイロセンサで検出した角速度、及び前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づき移動距離と方位からローカライゼーションを行う。
この地図ロケータ演算部12は、自車位置を推定する機能として自車位置推定演算部12aと、推定した自車位置を道路地図上にマップマッチングして位置を特定すると共に、その前方の道路形状情報を取得する地図情報取得部12bとを備えている。
又、高精度道路地図データベース18はHDD等の大容量記憶媒体であり、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、自動運転を行う際に必要とする車線データ(車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度等)を保有しており、この車線データは、道路地図上の各車線に数メートル間隔で格納されている。
上述した地図情報取得部12bは、この高精度道路地図データベース18に格納されている道路地図情報から現在地の道路地図情報を取得する。そして、例えば運転者が自動運転に際してセットした目的地に基づき、上述した自車位置推定演算部12aで推定した自車位置(現在地)から目的地までのルート地図情報を、この道路地図情報から取得し、取得したルート地図情報(ルート地図上の車線データ及びその周辺情報)を自車位置推定演算部12aへ送信する。
自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機13で受信した測位信号に基づき自車両Mの位置座標を取得し、この位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置(現在地)を推定すると共に走行車線を特定し、ルート地図情報に記憶されている走行車線の道路形状、すなわち、本実施形態では車線中央の道路曲率(以下、「地図曲率」と称する)RMPU[1/m](図7参照)を取得し、逐次記憶させる。
更に、自車位置推定演算部12aは、トンネル内走行等のようにGNSS受信機13の感度低下により測位衛星からの有効な測位信号を受信することができない環境では、車速センサで検出した車速、ジャイロセンサで検出した角速度、前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づいて自車位置を推定する自律航法に切替えて、道路地図上の自車位置を推定し、自車両Mが走行している道路の曲率(図曲率)RMPUを取得する。
一方、カメラユニット21は、自車両Mの車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラと、画像処理ユニット(IPU)21c、及び前方走行環境認識部21dとを有している。このカメラユニット21は、両カメラ21a,21bで撮像した自車両M前方の所定領域を撮影するステレオカメラである。IPU21は両カメラ21a,21bで撮影した走行方向前方の周辺環境画像を所定に画像処理し、前方走行環境認識部21dへ出力する。
前方走行環境認識部21dは、受信した自車両M前方の走行環境画像情報に基づき、自車両Mが走行する進行路(自車進行路)の道路形状、すなわち、本実施形態では、左右を区画する区画線の道路曲率[1/m]、及び左右区画線間の幅(車幅)を求める。この道路曲率、及び車幅の求め方は種々知られているが、例えば、道路曲率は走行環境画像情報に基づき輝度差による二値化処理にて、左右の区画線を認識し、最小二乗法による曲線近似式等にて左右区画線の曲率を所定区間毎に求め、更に、両区画線間の曲率の差分から車幅を算出する。そして、この左右区間線の曲率と車線幅とに基づき車線中央の道路曲率(以下、「カメラ曲率」と称する)RCAM[1/m](図7参照)を求め、逐次記憶させる。そして、自車位置推定演算部12aで取得した地図曲率RMPUと前方走行環境認識部21dで推定したカメラ曲率RCAMとが、運転モード設定演算部22に読込まれる。
又、前方走行環境認識部21dは、取得した走行環境画像情報に基づき、自車両Mの前方を走行する先行車の有無を検出する。そして、前方走行環境認識部21dは、先行車を検出した場合、自車両Mとの車間距離(道のり距離)、相対車速、及び車間時間を算出する。尚、ステレオカメラを用いた先行車の検出、車間距離、相対車速、及び車間時間の求め方は既に知られている技術であるため、ここでの説明は省略する。
運転モード設定演算部22の入力側には、上述した自車位置推定演算部12a、前方走行環境認識部21d以外に、運転者が自動運転をON/OFFする自動運転スイッチ41と、運転者のハンドル2(図2(a)参照)の接触位置、及び把持した左右の手の偶力方向を歪みから検出する接触/方向検出手段としての左右接触歪みセンサ42、及びハンドル接触検知手段としての上下ハンドルタッチセンサ43と、操舵トルク検出手段としての操舵トルクセンサ44とが接続されている。
このカメラユニット21で取得した前方走行環境情報は、ACC制御ユニット(図示せず)においても読込まれる。ACC制御ユニットは、前方走行環境情報に基づき、自車両Mが走行している車線前方に先行車を検出した場合は、この先行車に対して所定車間距離を維持した状態で先行車追従走行制御を実行する。又、先行車が検出されてない場合は予め運転者が設定したセット車速で走行させる。
上述した左右接触歪みセンサ42は、例えば圧電シートであり、運転者が把持する際に加えられた圧力と、ハンドル2を操作する際に作用する圧力の変化から、接触状態とその方向を検出する。又、上下ハンドルタッチセンサ43は感圧センサ、圧力センサ、容量センサ等である。図2(a)に示すように、左右接触歪みセンサ42は、左接触歪みセンサ42lと右接触歪みセンサ42rとで構成されている。又、上下ハンドルタッチセンサ43は、上タッチセンサ43uと下タッチセンサ43dとで構成されている。
ハンドル2はリム2aの中心がスポーク2bを介してステアリング軸(図示せず)に支持されている。左接触歪みセンサ42lと右接触歪みセンサ42rとは、リム2aの左右位置における運転者がリム2aを正しい姿勢で把持する保舵推奨領域(例えば、時計の針で示せば、左手側おおよそが8時45分の短針と長針の間、右手側がおおよそ2時20分の短針と長針の間)よりもやや広い範囲に配設されている。
又、上タッチセンサ43uと下タッチセンサ43dとは、リム2a上下の、例えば、運転者が後を振り向く等の動作を行う際に手や膝等が触れ易い保舵非推奨領域(例えば、時計の針では、上側がおおよそ11時5分の短針と長針の間、下側がおおよそ5時35分の短針と長針の間)に配設されている。
又、操舵トルクセンサ44は、ステアリング軸(図示せず)の捩れから、運転者がステアリング軸に入力する操舵トルクTstを検出し、この操舵トルクTstに基づき操舵介入(操舵オーバライド)の有無を判定する。
更に、この運転モード設定演算部22の出力側に音声スピーカやモニタからなる報知手段としての報知装置45が接続されている。又、この運転モード設定演算部22に自動運転制御ユニット51が双方向通信自在に接続されている。この自動運転制御ユニット51は、運転モード設定演算部22で設定した運転モード(手動運転モード、第1運転支援モード、第2運転支援モード、及び自動退避モード)に従い、対応する運転モードを実行する。
運転モード設定演算部22は、自車位置推定演算部12aで推定した自車位置前方の地図曲率RMPUと前方走行環境認識部21dで推定したカメラ曲率RCAMとを常時比較する。すなわち、地図上の自車位置と実走行による自車位置とをそれぞれ基準として所定前方の同一距離区画における両曲率RMPU,RCAMの一致度(信頼度)[%]を調べ、その一致度が予め設定した閾値(例えば、95~99[%])を超えている場合は一致していると判定し、下回っている場合は、不一致と判定する。
例えば、図7(a)に示すように、ロケータユニット11で取得した地図曲率RMPUと前方走行環境認識部21dで認識したカメラ曲率RCAMとが一致している場合、自車両Mは確かに目標進行路を走行していると評価する。
一方、同図(b)に示すように、GNSS受信機13による測位位置が誤差により、隣の車線上にマップマッチングされた場合、ロケータユニット11は隣の車線の地図曲率RMPUを自車進行路上の道路曲率と誤認するため、両曲率RCAM,RMPUは一致度(信頼性)が低いと評価する。或いは、降雨時等の視界の悪い状態での走行において前方走行環境認識部21dにてカメラ曲率RCAMを求めることができなかった場合も、一致度が低い(閾値未満)と評価される。
そして、両曲率RMPU,RCAMが一致していると判定した場合は、第2運転支援モードを継続させる。或いは、運転モードを第1運転支援モードから第2運転支援モードへ遷移させる。尚、運転モードを遷移させるに際しては、その旨を報知装置45から運転者に予め報知する。
本実施形態では、運転モードとして運転者自らが操舵する手動運転モードと、第1運転支援モードと、第2運転支援モード、及び自動退避モードが設定されており、この第1運転支援モード、第2運転支援モードが自動運転の範疇に含まれる。ここで、第1運転支援モードと第2運転支援モードとは、自車両Mを目標進行路に沿って自動走行(自動運転)させる点は共通しているが、第1運転支援モードは運転者の保舵を条件とする運転モードであり、第2運転支援モードは運転者の保舵を条件としない(非保舵の)運転モードである。
例えば、カメラユニット21が一時的に失陥した場合、第2運転支援モードによる自動運転の継続が困難となるが、いきなり手動運転モードへ遷移させることはせず、先ず、運転者に対して第1運転支援モードへ遷移する旨を報知し、運転者に保舵を要求する。そして、運転者にハンドル2を保舵させた後、第1運転支援モードへ遷移し、地図ロケータ演算部12で推定した自車位置に基づき自動運転を継続させる。これは、地図ロケータ演算部12で自車位置の推定が失陥した場合も同様であり、運転者にハンドル2を保舵させた後、カメラユニット21で認識した左右区画線の中央を目標進行路として設定し、この目標進行路に沿って自車両Mを走行させる。
又、自動運転(第1運転支援モード、或いは第2運転支援モード)での走行中に、運転者による操舵介入(操舵オーバライド)を検出した場合、運転モードは自動運転モードから手動運転モードに切り替わる。
ところで、図2(a)に示すハンドル2において、一般に、運転者が前方を視認する正しい姿勢でリム2aを両手で接触(把持)すれば、左接触歪みセンサ42lと右接触歪みセンサ42rは共にONする。従って、この姿勢の状態で運転者が操舵し、操舵トルクセンサ44で検出する操舵トルクTstに基づいて操舵介入を検出した場合は、運転者の意思による操舵オーバライドであると判定することができる。しかし、この左接触歪みセンサ42lと右接触歪みセンサ42rとの少なくとも一方がOFF、或いは、上タッチセンサ43uと下タッチセンサ43dとの少なくとも一方がONし、そのときの操舵トルクTstに基づいて操舵介入を検出した場合、運転者は正しい姿勢での操舵ではなく、単なる誤接触(誤検知)であると判断できる。
このような誤接触しただけの状況で運転モードを直ちに手動運転モードへ遷移させることは運転者に違和感を与えることになる。そのため、本実施形態では、運転者のハンドル2の接触位置と操舵トルクを与える方向との双方、及び操舵トルクの大きさに基づき、操舵介入(操舵オーバライド)が運転者の意思によるものか誤接触(誤検知)かを適正に判定する。
運転モード設定演算部22では、操舵オーバライドが運転者の意思によるものか、単なる誤接触なのかを、図3~図6に示す運転モードを設定するルーチンの中において判定している。
自車両Mが走行すると、図3に示す運転モード設定ルーチンが起動し、先ず、ステップS1で、自動運転スイッチ41からの信号を読込む。この自動運転スイッチ41は運転者が自動運転を選択する場合にON操作するものであり、ステップS2でONか否かを調べ、ONの場合はステップS3へ進み、運転支援モード処理を実行してルーチンを抜ける。一方、この自動運転スイッチ41がOFFの場合は、ステップS4へ分岐し、手動運転モードを実行して、ルーチンを抜ける。運転モードとして手動運転モードが選択されると、自車両Mを目的地までガイドする従来のナビゲーション機能により設定された目標進行路がモニタ(図示せず)に表示される。運転者はモニタの表示、及び音声ガイドに従い、自らの運転によって自車両Mを走行させる。
又、ステップS3での運転支援モード処理は、図4に示す運転支援モード処理サブルーチンに従って実行される。このサブルーチンでは、先ず、ステップS11で第1運転支援モードが実行可能か否かを調べる。第1運転支援モードが実行可能か否かは、カメラユニット21の前方走行環境認識部21dで認識した自車両Mが走行している車線の左右を区画する区画線と、左右接触歪みセンサ42(左接触歪みセンサ42l、右接触歪みセンサ42r)と、操舵トルクセンサ44で検出した操舵トルクTstとに基づいて調べる。
そして、上述したようにカメラユニット21で自車両Mが走行している車線の左右を区画する区画線が認識され、目標進行路が設定されている場合は、図5に示す第1運転支援モード実行条件処理サブルーチンを実行する。尚、目標進行路が設定されていない場合は、手動運転モードへ遷移させる。
図5に示すサブルーチンでは、先ず、ステップS31で、左右接触歪みセンサ42(左接触歪みセンサ42l、右接触歪みセンサ42r)からの信号を読込み、運転者が保舵しているか否かを調べる。そして、左接触歪みセンサ42lと右接触歪みセンサ42rとが共に圧力が検出している場合は、運転者の両手がハンドル2の左右に接触(保舵)していると判定してステップS32へ進む。又、圧力が検知されていない場合は保舵していないと判定し、ステップS33へ分岐する。
ステップS32へ進むと、左右接触歪みセンサ42で検出した歪みの変化からハンドル2に対する力の入力方向を求める。すなわち、運転者が左右接触歪みセンサ42(左接触歪みセンサ42l、右接触歪みセンサ42r)を把持してハンドル2を操作すると、このハンドル2に偶力が発生する。すると、図2(b)に示すように、左接触歪みセンサ42l、右接触歪みセンサ42rは圧力方向に歪みが発生するため、これを検出することで、各接触歪みセンサ42l,42rに作用する力Fl,Frの方向(図2(a)参照)を検出することができる。
そして、この力Fl,Frの入力方向が同一の場合、運転者によりハンドル2に偶力が発生していると判定し、ステップS34へ進む。
一方、力Fl,Frの入力がない、或いは入力方向が異なる場合、又は両接触歪みセンサ42l,42rの一方からのみ力Fl或いはFrが検出されている場合、運転者が意識して行った操舵ではない、すなわち、誤接触であると判定し、ステップS37へジャンプする。
その後、ステップS34へ進むと、上タッチセンサ43uの信号を読込み、運転者の頭部等がハンドル2の上部に接触しているか否かを調べる。そして、ONの場合は頭部などが接触しており、運転者は居眠りや意識を失っている等、運転を行うことができない状態にあると判定する。操舵を運転者に引継ぐよりも第1運転支援モード継続させた方が、安全性が高いためステップS37へジャンプする。
一方、上タッチセンサ43uがOFFの場合は、ステップS35へ進む。ステップS35では、操舵トルクセンサ44で検出した操舵トルクTstを読込み、ステップS36で操舵オーバライド判定閾値Tstoと比較する。この操舵オーバライド判定閾値Tstoは、運転者による操舵が操舵オーバライドを意図して行ったものか、後を振り向くなど、運転者の体を動かした際に、誤ってハンドル2にトルクを入力してしまった誤操舵(誤接触も含む)であるかを調べる値である。従って、固定値であっても良いが、車速に基づき設定される可変値であっても良い。
そして、Tst≦Tstoの場合、単なる誤操舵(誤接触)の範囲と判定し、ステップS37へ進む。又、Tst>Tstoの場合は、運転者自らの意思による操舵オーバライドであると判定し、図3のステップS4へ戻り、手動運転モードを継続させてルーチンを抜ける。尚、上述したステップS31,S32~S36での処理が、本発明の操舵オーバライド判定手段に対応している。
そして、ステップS32,S34,S36からステップS37に進むと、第1運転支援モード実行フラグF1をセットして(F1←1)、図4のステップS12へ進む。
このように、第1運転支援モードの実行条件として、左右接触歪みセンサ42で圧力を検知して、運転者はハンドル2を正しい姿勢で把持していると判定した場合であっても、上タッチセンサ43uがONの場合は、手動運転モードへ遷移させることなく、第1運転支援モードを実行させるようにしたので、運転者が意識を失ったような場合であっても、運転者の安全性を担保することができる。尚、この場合、後述するステップS42の自動退避モードへ遷移させるようにしても良い。
又、左右接触歪みセンサ42により、運転者のハンドル2に対する力Fl,Frが異なる場合は、運転者に操舵の意思がないと判定し、操舵トルクTstを参照することなく、第1運転支援モードを実行させるようにしたので、路面や横風等の外乱によって操舵トルクセンサ44が操舵トルクTstを検出した場合であっても、操舵オーバライドの誤判定を有効に防止することができる。
尚、上述したフローチャートのステップS35、S36での操舵トルクTstによる操舵オーバライドの判定処理を省略し、ステップS32で力Fl,Frの入力方向が同一で、且つステップS34で上タッチセンサ43uがOFFの場合は、操舵オーバライドと判定してステップS4へ戻るようにしても良い。
又、ステップS31からステップS33へ分岐すると、上下ハンドルタッチセンサ(上タッチセンサ43u、下タッチセンサ43d)43からの信号を読込み、ハンドル2の接触位置が異常か否かを調べる。そして、上タッチセンサ43uと下タッチセンサ43dとの双方がOFFの場合、運転者は保舵しておらず、条件不成立であるためステップS38へ進み、第1運転支援モード実行フラグF1をクリア(F1←0)して、図4のステップS12へ進む。
又、上タッチセンサ43uと下タッチセンサ43dとの少なくとも一方がONの場合、運転者は正しい姿勢で保舵していないと判定し、ステップS39へ進み、運転者に対し、「正しい位置でハンドルを把持してください」等の正しい位置での保舵要求を報知装置45から運転者に対して報知してステップS40へ進む。ステップS40では、注意喚起時間tim1をインクリメントし(tim1←tim1+1)、ステップS41へ進み、設定時間t1(例えば、3~5[sec])と比較し、tim1<t1の場合はステップS31へ戻り、運転者が正しい保舵位置に把持するまで(左接触歪みセンサ42lと右接触歪みセンサ42rとが共にON)、待機する。
一方、注意喚起時間tim1が経過しても(tim1≧t1)、左接触歪みセンサ42lと右接触歪みセンサ42rとの少なくとも一方がONの場合は、ステップS40へ進み、自動退避モードを実行させてルーチンを終了する。この自動退避モードが実行されると、自動運転制御ユニット51は、自車両Mの車速を、法定若しくは指定されている最低速度に制限した状態で現在の走行車線に沿って走行させ、路側帯等の安全な場所まで誘導して停止させる。
そして、図4のステップS12へ進むと、第1運転支援モード実行フラグF1の値を参照し、F=1の場合、条件成立と判定し、ステップS13へ進む。又、F1=0の場合、条件不成立と判定し、図3のステップS4へ戻り、手動運転モードを継続させてルーチンを抜ける。
その後、ステップS13へ進むと、第1運転支援モードを実行させる指令信号を自動運転制御ユニット51に送信し、ステップS14へ進む。ステップS14では、第1運転支援モードから第2運転支援モードへの遷移が可能か否かを調べる。
第2運転支援モードへの遷移が可能か否かは、地図曲率RMPUとカメラ曲率RCAMとの一致度と、左右接触歪みセンサ42と、上下ハンドルタッチセンサ43とに基づいて判定する。そして、上述したように地図曲率RMPUとカメラ曲率RCAMとが一致(例えば、一致度が95~99[%]以上)している場合、図6に示す第2運転支援モード実行条件処理サブルーチンを実行する。尚、地図曲率RMPUとカメラ曲率RCAMとが一致していない場合は、第1運転支援モードを実行させる。
図6に示すサブルーチンでは、先ず、ステップS51で左右接触歪みセンサ42(左接触歪みセンサ42l、右接触歪みセンサ42r)からの信号を読込み、共に圧力が検出されていない場合は、運転者の両手がハンドル2の左右から離れている非保舵と判定し、ステップS52へ進む。又、左接触歪みセンサ42lと右接触歪みセンサ42rの少なくとも一方が圧力を検知している場合は、ステップS53へ分岐する。
ステップS52へ進むと、上下ハンドルタッチセンサ(上タッチセンサ43u、下タッチセンサ43d)43からの信号を読込む。そして、上タッチセンサ43uと下タッチセンサ43dとの少なくとも一方がONの場合、単なる誤接触と判定し、ステップS54へ分岐し、「ハンドルに触れています」等の非保舵要求を報知装置45から運転者に対して報知してステップS55へ進む。
又、上タッチセンサ43uと下タッチセンサ43dとが共にOFFの場合、運転者はハンドル2から完全に手を離していると判定し、ステップS55へ進む。
そして、ステップS52、或いはステップS54からステップS55へ進むと、第2運転支援モードが実行可能と判定し、第2運転支援モード実行フラグF2をセットして(fF2←1)、図4のステップS15へ進む。
このように、本実施形態では、上タッチセンサ43uと下タッチセンサ43dとの少なくとも一方がONした場合には、運転者の単なる誤接触と判定し、非保舵要求を運転者に行うに留めて、第2運転支援モード実行フラグF2をセットするようにしたので、第2運転支援モードを継続させることができる。その結果、ハンドル2に対する多少の接触を運転者は気にする必要がなく、高い利便性を得ることができる。
又、ステップS51からステップS53へ分岐すると、運転者に対して「ハンドルに触れているため、ハンドルから手を離した自動運転が解除されます」等の非保舵要求を報知装置45から運転者に対して報知してステップS56へ進む。ステップS56では、注意喚起時間tim2をインクリメントし(tim2←tim2+1)、ステップS57へ進み、設定時間t2(例えば、3~5[sec])と比較し、tim2<t2の場合はステップS51へ戻り、運転者が通常の把持位置から手を離すまで(左接触歪みセンサ42lと右接触歪みセンサ42rとが共にOFF)、待機する。
又、tim2≧t2の場合、運転者はハンドル2から手を離す意思がないと判定し、ステップS58へ進み、第2運転支援モード実行フラグF2をクリアして(F2←0)、図4のステップS15へ進む。
ステップS15では、第2運転支援モード実行フラグF2の値を参照し、F2=1の条件成立と判定した場合は、ステップS16へ進む。又、F2=0の条件不成立と判定した場合は、ステップS17へ分岐する。
ステップS16へ進むと、第2運転支援モードを実行させる指令信号を自動運転制御ユニット51へ送信して、ステップS18へ進む。ステップS18では、運転モードを第2運転支援モードから第1運転支援モードへ遷移させるか否かを調べるために、上述した図5に示す第1運転支援モード実行条件判定処理サブルーチンを再び実行する。
この第1運転支援モード実行条件判定処理サブルーチンでは、左右接触歪みセンサ42のON、及び操舵トルクTstが操舵オーバライド判定閾値Tsto以下を、第1運転支援モードへの遷移条件としている。そのため、運転者が左右接触歪みセンサ42に誤って接触した程度では、遷移条件は成立せず、第2運転支援モードを継続させることができるので、誤判定が防止され、高い利便性を得ることができる。
次いで、ステップS19へ進み、第1運転支援モード実行フラグF1の値を調べ、F1=0の場合、ステップS20へ進み、自動運転スイッチ41からの信号を読込む。そして、ONの場合はステップS14へ戻り、ステップS14,S15で第2運転支援モード実行条件を調べ、成立している場合は、第2運転支援モードを継続させる。又、自動運転スイッチ41がOFFの場合は、図3のステップS4へ戻り、手動運転モードを実行して(自動運転スイッチ41をOFF)、ルーチンを抜ける。又、ステップS19で、F1=1と判定した場合は、ステップS21へ分岐し、運転モードを第1運転支援モードへ遷移させてルーチンを抜ける。
一方、ステップS15からステップS17へ分岐すると、操舵トルクセンサ44で検出した操舵トルクTstを読込み、ステップS22で操舵トルクTstと操舵オーバライド判定閾値Tstoとを比較する。この操舵オーバライド判定閾値Tstoは操舵が運転者の意思によるものか、単なる誤接触(誤検知)かを調べる値で固定値でも良いが、車速に基づき設定されている可変値であっても良い。
又、Tst≦Tstoの場合、運転者の手や膝等がハンドル2に触れたとしても単なる誤接触の範囲であると判定し、ルーチンを抜ける。そして、次の演算実行時に、図4のステップS11,S12にて第1運転支援モード実行条件を調べ、成立している場合は運転モードを第1運転支援モードに遷移させる。
従って、上述した図6のステップS58で第2運転支援モード実行フラグF2がクリアされ、ステップS22でTst≦Tstoと判定された場合、ステップS11において、運転モードが第2運転支援モードから第1運転支援モードに遷移されることになる。
又、Tst>Tstoの場合は操舵オーバライドと判定し、図3のステップS4へ戻り、手動運転モードを実行して(自動運転スイッチ41をOFF)、ルーチンを抜ける。
このように、本実施形態によれば、第2運転支援モードでの走行中において、運転者が左右接触歪みセンサ42に誤って接触した場合であっても、操舵トルクTstが操舵オーバライド判定閾値Tsto以下の場合には、第1運転支援モードへの遷移条件は成立しない。そのため、単なる誤接触の場合は手動運転モードへの遷移が未然に防止され、運転者に与える違和感を軽減することができる。
又、左右接触歪みセンサ42で圧力が検知され、且つ操舵トルクTstが操舵オーバライド判定閾値Tstoを超えている場合に、運転者の意思による操舵介入(操舵オーバライド)と判定するようにしているので、操舵オーバライドが適正に判定され、誤判定を未然に防止することができる。
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば左右接触歪みセンサ42と上下ハンドルタッチセンサ43とは運転者の保舵位置を検出するものであれば良く、従って、ハンドル2のリム2a全周に亘ってハンドルタッチセンサを配置し、このハンドルタッチセンサを所定角度のセグメント毎に分割することで接触位置を検出するようにしても良い。又、接触/方向検出手段としての接触歪みセンサ42は、静電容量シートと圧力シートとの二層構造で構成されていても良く、この場合、ハンドル2に対する運転者の接触は静電容量シートで検出する。