JP7032941B2 - 自己修復性ゲル - Google Patents

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Description

本発明は、自己修復性を有するハイドロゲルおよびその製造方法に関する。
近年、自己修復性材の研究が盛んに行われている。この自己修復材は内部、外部に生じたダメージを自ら修復し、この補修の繰り返しにより材料の長寿命化が可能になる。また長寿命化により、新たに材料をつくる製造工程が省けるため、コスト減、環境負荷低減(省エネ、COの削減)にもつながり、継続可能な社会に向けたスマート材料という一面も有している。
従来の自己修復材料の機能発現させる手法には大きく分けて4つある。1つは樹脂に反応剤の入ったマイクロカプセルや中空フィラーを混合し、傷が発生するとこれらが破壊され、新たに共有結合が形成され自己修復するものである(非特許文献1)。
2つ目はポリマーの主鎖を化学的結合(共有結合)で架橋させることによる修復である。熱硬化やUV硬化、活性エネルギー線、光重合、電離放射線硬化など外部の刺激により化学的な結合で架橋させる方法がある(特許文献1)。
3つ目は物理的結合(非共有結合)を用い手法である。例えばポリマー内にホストーゲストとなる部位を導入する例がある(特許文献2)。4つ目はポリウレタンのようにポリマーのもつ弾性・塑性変形の回復と水素結合の再結合を利用する手段がある。
しかしながら、マイクロカプセルや中空フィラーを混ぜる手法はあらかじめ樹脂にそれらを分散させる必要がある。また、不可逆な共有結合による修復は、結合が形成させてもその結合部位が破壊されると回復せず、また、材料が大きく力が加わると変形しやすくなる。
また、ポリマー内にホスト-ゲストとなる部位を導入するには機能を発現するモノマーからの製造工程がかかる。
特開2015-160866号公報 特開2017-71710号公報
S.R.White,N.R.Sottos,P.H.Geubelle,J.S.Moore,M.R.Kessler,S.R.Sriram,E.N.Brown,S.Viswanthan;Nature 2001,409,794.
本発明の目的は、外部刺激を用いず、配位、凝集などの物理的結合を利用することで繰り返し自己修復機能を発現し、また、入手が容易で安価な原料を用いた簡便な手法で製造される自己修復性ハイドロゲルを提供することである。
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、3価の鉄イオン及び/又はアルミニウムイオンとポリアクリレートからなるアイオノマーが自己修復性を持つことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
[1] 水溶媒中にポリアクリレート又はアクリル酸-アクリルアミド共重合体と3価の鉄イオン及び/又はアルミニウムイオンを含むハイドロゲルであって、自己修復性を有することを特徴とするハイドロゲル。
[2] 前記の3価の鉄イオンが、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、三シュウ酸アンモニウム鉄(III)、シュウ酸鉄(III)、トリス(シュウ酸)鉄(III)カリウム、リン酸鉄(III)ピロリン酸鉄(III)及びp-トルエンスルホン酸鉄(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉄塩に由来する3価の鉄イオンであることを特徴とする前記[1]に記載のハイドロゲル。
[3] 前記のアルミニウムイオンが、塩基性乳酸アルミニウム、モノリン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート及び硫酸アンモニウムアルミニウムからなる群より少なくとも1種のアルミニウム塩を含む化合物であることを特徴とする前記[1]に記載のハイドロゲル。
[4] 前記ポリアクリレート又は前記アクリル酸-アクリルアミド共重合体に対して、水が重量比で50~800重量%であることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載のハイドロゲル。
[5] 水溶媒中にアクリル酸モノマー又はアクリル酸モノマー及びアクリルアミドモノマーを3価の鉄塩及び/又はアルミニウムイオンと共存させて、0℃から100℃の温度範囲で重合開始剤を添加することにより自己修復性を有するハイドロゲルを製造することを特徴とするハイドロゲルの製造方法。
[6] 前記[1]~[4]のいずれかに記載のハイドロゲルを用いる自己修復材料。
また、本発明の自己修復材は無色透明であるため、光学材料に用いることが可能である。
本発明によれば、自己修復性があり、入手が容易で安価な原料を用いた簡便な手法で自己修復性を有するハイドロゲルを製造することができる。
本発明のハイドロゲルは、大気中、室温というおだやかな条件で表面のキズだけでなく完全に切断された材料でも自己修復する自己修復材料として用いることができる。
本発明の自己修復材料は、内部、外部のダメージを自ら修復し、これを繰り返すことができ材料の長寿命化が可能になる。
また、本発明の金属イオンとしてアルミニウムイオンのみを含む自己修復材は無色透明であるため、光学材料に用いることが可能である。
実施例1で得られたハイドロゲルのFT-IRの結果を示すチャートである。 実施例1で得られたハイドロゲルを切出し、切断後、自己修復したサンプルの様子である。 実施例1で得られたハイドロゲルを修復後に引き伸ばしたサンプルの様子である。 実施例3で得られたハイドロゲルのFT-IRの結果を示すチャートである。 実施例3で得られたハイドロゲルを切出し、切断後、自己修復したサンプルの様子である。
本発明の自己修復性を有するハイドロゲルは、水溶媒中に、水溶媒中にポリアクリレート又はアクリル酸-アクリルアミド共重合体と3価の鉄イオン及び/又はアルミニウムイオンを含むことを特徴とする。
本発明の自己修復性を有するハイドロゲルは、3価の鉄イオン1又はアルミニウムイオン分子に対してアクリレートが3個配位することにより、アイオノマーを形成し高次網目構造を構築する。また、この時、3価の鉄イオン又はアルミニウムイオンは架橋点の役割を果たしており、物理的な結合を介して自己修復性を発現している。物理的な結合は、水素結合、イオン結合、配位結合、分子間力、静電的相互作用等が挙げられる。
そして、アルミニウムイオンが架橋点の役割を果たす場合は、金属イオン特有の着色を防ぎ、無色透明なハイドロゲルを形成することが可能になる。
前記の3価の鉄イオンは、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、三シュウ酸アンモニウム鉄(III)、シュウ酸鉄(III)、トリス(シュウ酸)鉄(III)カリウム、リン酸鉄(III)ピロリン酸鉄(III)、p-トルエンスルホン酸鉄(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉄塩に由来する3価の鉄イオンであることが好ましい。
前記の3価の鉄イオンは、1種単独であっても、または、2種以上を混合していてもよい。なかでも、塩化鉄(III)および鉄(III)アセチルアセトナートの3価の鉄イオンが好ましい。
前記のアルミニウムイオンは、塩基性乳酸アルミニウム、モノリン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、硫酸アンモニウムアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来するアルミニウムイオンであることが好ましい。
前記のアルミニウムイオンは、1種単独であっても、または、2種以上を混合していてもよい。なかでも、酢酸アルミニウム(可溶性)および硫酸アルミニウム13~14水和物のアルミニウムイオン、アルミニウムアセチルアセトナート、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物のアルミニウムイオンが好ましい。
前記の3価の鉄イオン及び/又はアルミニウムイオンの前記ハイドロゲル中の含有量は、前記原料のアクリル酸モノマーの重量比に対して、3価の鉄塩換算で0.01~10重量%であり、0.05~10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~3重量%である。
3価の鉄イオン及び/又はアルミニウムイオンの前記ハイドロゲル中の含有量が、前記原料のアクリル酸モノマーの重量比に対して3価の鉄塩換算で25重量%を超えると、3価の鉄イオン及び/又はアルミニウムイオンがハイドロゲルの形成を妨げるため好ましくない。また、0.05重量%未満であると、自己修復性はあるもののタック性が強くなりハンドリングの面で好ましくない。
本発明のハイドロゲルは、前記ポリアクリレートに対して、水が重量比で50~800重量%であることが好ましく、50~600重量%であることがより好ましく、最も好ましくは50~400重量%である。
ハイドロゲルの成分である水分の量は、前記ポリアクリレートに対して水が重量比で800重量%を超えると、ハイドロゲルの成形安定性が低下するため好ましくなく、50重量%未満であると、流動性がなくなり自己修復機能を発揮できない。
また、アクリル酸-アクリルアミド共重合体もハイドロゲルを形成する場合、アクリル酸-アクリルアミド共重合体に対して水が重量比で50~800重量%であることが好ましく、50~600重量%であることがより好ましく、最も好ましくは50~400重量%である。
本発明のハイドロゲルは、自己修復機能を有しており、自己修復材料として使用できる。
本発明の自己修復材料は、大気中、室温のおだやかな条件で表面のキズだけでなく完全に切断された材料でも自己修復する自己修復材料である。
特に、本発明の金属イオンとしてアルミニウムイオンのみを含むハイドロゲルは、無色透明で自己修復機能を有しており、無色透明な自己修復材料として使用できる。
また、本発明の金属イオンとしてアルミニウムイオンのみを含む自己修復材料は無色透明であるため光学材料分野に使用できる。
続いて、本発明の自己修復性を有するハイドロゲルの製造方法について説明する。
本発明の自己修復性を有するハイドロゲルは、水溶媒中にアクリル酸モノマー又はアクリル酸モノマー及びアクリルアミドモノマーを3価の鉄塩及び/又はアルミニウム化合物と共存させて、0℃から100℃の温度範囲で重合開始剤を添加することにより自己修復性を有するハイドロゲルを製造することができる。
製造は、反応容器中に水、アクリル酸モノマー又はアクリル酸モノマー及びアクリルアミドモノマー並びに3価の鉄塩及び/又はアルミニウム化合物を入れて、撹拌混合した後に、重合開始剤を添加し撹拌することによって行う。
反応容器としては、通常化学反応に用いられるステンレス製の容器、ガラス製容器、テフロン(登録商標)でコーティングした容器等であれば良く、実験室レベルではバイアル瓶、シュレンク、フラスコ、試験管、ポータブルリアクター、オートクレーブ等がある。
反応容器中に加える水、アクリル酸モノマー又はアクリル酸モノマー及びアクリルアミドモノマー並びに3価の鉄塩及び/又はアルミニウム化合物の加える順序は問わず、加えた後撹拌混合を行う。撹拌時間は、30分も行えば十分である。
その後、反応容器に重合開始剤を加えてハイドロゲルが生成するまで撹拌を行う。反応温度は、室温で行えばよいが0℃~100℃の範囲の温度で行うこともできる。通常120分もあればハイドロゲルが生成するが、ハイドロゲルの生成が遅い反応においては、100℃以下の温度で加温して反応を促進してもよい。
撹拌方法は、通常化学反応に用いられる撹拌装置を持ちればよい。具体例としては、スターラーバー、撹拌羽、振とう機、超音波、混練機等がある。
本発明に係る3価の鉄塩の例は、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、三シュウ酸アンモニウム鉄(III)、シュウ酸鉄(III)、トリス(シュウ酸)鉄(III)カリウム、リン酸鉄(III)ピロリン酸鉄(III)、p-トルエンスルホン酸鉄(III)等が挙げられ、このうち1種単独、または、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも塩化鉄(III)および鉄(III)アセチルアセトナートが好ましい。
本発明に係るアルミニウム化合物の例は、塩基性乳酸アルミニウム、モノリン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセテート、硫酸アンモニウムアルミニウム等が挙げられ、このうち1種単独、または、2種以上を混合して用いてもよい。なかでも酢酸アルミニウム(可溶性)および硫酸アルミニウム13~14水和物、アルミニウムアセチルアセトナート、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物のアルミニウム化合物が好ましい。
本反応に係る重合開始剤の例は、クメンヒドロペルオキシシド、ペルオキソ二硫化アンモニウム、ペルオキソ二硫化カリウム、アゾビス-2-アミジノプロパン・塩酸塩、過酸化水素、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、2,2′-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2′-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2′-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ニ塩酸塩、4,4′-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等が挙げられる。これらの重合開始剤のうち、1種単独、または2種以上を混合して重合開始剤として用いてもよい。なかでもペルオキソ二硫化アンモニウムが好ましい。
(FT-IRの測定)
ATR法にてFT-IR(装置名:iS50FT-IR(NICOLET社製))を用いて測定した。
(実施例1)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0893gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1249gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで目的の自己修復性ゲルを得た。得られた化合物のFT-IRを図1に、自己修復の様子を図2、図3に示した。
図1は、実施例1で得られたハイドロゲルのFT-IRの結果を示すチャートである。
図1から1700~1600cm-1付近にC=O伸縮、1450cm-1にC―H変角振動、1300~1100cm-1付近にC―O伸縮の吸収帯があり、アクリル酸モノマーからポリアクリレートの骨格を形成していることがわかる。
図2は、実施例1で得られたハイドロゲルを切出し、切断後、自己修復したサンプルの様子を示す写真である。ハイドロゲルを切断後、切断面を接合するとハイドロゲルは自己修復し、リフトし両端を引き伸ばしても分離せず自己修復できている様子がわかる。
図3は、実施例1で得られたハイドロゲルを修復後に引き伸ばしたサンプルの様子である。非常に強い力を加えて伸張しても自己修復している様子が観察できる。
(実施例2)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、塩化鉄(III)6水和物(FeCl)0.09gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1268gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで目的の自己修復性ゲルを得た。
(実施例3)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、硫酸アルミニウム13~14水和物鉄(Al(SO13~14水和物)0.0885gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1234gを添加し、さらに30分撹拌した。40℃の水浴で7時間加温することで目的の自己修復性ゲルを得た。得られた化合物のFT-IRを図4に、自己修復の様子を図5に示した。
図4は、実施例1で得られたハイドロゲルのFT-IRの結果を示すチャートである。
図4から1700~1600cm-1付近にC=O伸縮、1450cm-1にC―H変角振動、1300~1100cm-1付近にC―O伸縮の吸収帯が観測された。このことからアクリル酸モノマーからポリアクリレートの骨格を形成していることがわかる。
図5は、実施例1で得られたハイドロゲルを切出し、切断後、自己修復したサンプルの様子を示す写真である。ハイドロゲルを切断後、接合するとハイドロゲルは自己修復し、接合面が消失し、自己修復機能が発現している様子がわかる。
(実施例4)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、酢酸アルミニウム(可溶性)(Al(OAc))0.0908gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1228gを添加し、さらに30分間撹拌した。続いて40℃の水浴で7時間加温することで目的の自己修復性ゲルを得た。
(実施例5)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、アルミニウム(III)アセチルアセトナート(Al(acac))0.0888gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1243gを添加し、さらに30分撹拌した。続いて40℃の水浴で11.5時間加温し、目的のハイドロゲルを得た。
(実施例6)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、硫酸アンモニウムアルミニウム12水和物(AlNH(SO12HO)0.0890gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1230gを添加し、さらに30分撹拌した。続いて40℃の水浴で11.5時間加温し、目的のハイドロゲルを得た。
(比較例1)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリルアミド8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.089gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1243gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴1時間加温することでゲルを得たが、自己修復性はなかった。
(比較例2)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、塩化銅(II)(CuCl)0.09gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1258gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温したが、ハイドロゲルは得られなかった。
(比較例3)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、コバルト(III)アセチルアセトナート(Co(acac))0.0896gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1245gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温したが、ハイドロゲルは得られなかった。
Figure 0007032941000001
表1には、実施例1~6及び比較例1~3でえられた反応混合物についての自己修復性の結果を示している。
得られた反応混合物がゲル化したものを○、水溶液のままであったものを×と判断した。
得られたハイドロゲルを切断し、再度接着したものを修復性あり、接着しなかったものを修復性なしと判断した。
この結果から、用いる金属塩において、実施例1から6の3価の鉄(III)アセチルアセトナート、塩化鉄(III)、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート、硫酸アンモニウムアルミニウムでは自己修復性を示したが、比較例2の2価の塩化銅(II)、比較例3の3価のコバルト(III)アセチルアセトナートでは自己修復性は観察されず、3価の鉄塩、アルミニウム塩が自己修復性に影響していることが言える。
また、モノマー種を実施例1ではアクリル酸、比較例1はアクリルアミドを用いて検討したところ、ハイドロゲルは形成した実施例1のポリアクリレートでは自己修復性を示し、比較例1のポリアクリルアミドでは自己修復性を示さなかった。
(比較例4)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水1.6ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0890gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1271gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で4時間加温したところ、固体が生成し、ゲルは得られなかった。
(実施例7)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水4.0ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0895gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1234gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で30分加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(実施例8)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水16ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0887gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1239gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(実施例9)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水64ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0887gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1252gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で3.5時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(比較例5)
20mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー0.50g、蒸留水5.0ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0055gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.076gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で5時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られなかった。
Figure 0007032941000002
表2には、実施例1及び実施例7から9及び比較例4、5でえられた反応混合物についての自己修復性の結果を示している。
この結果から、比較例4のアクリル酸に対し水が20重量%の場合、固体化してしまい、ゲルが得られなかった。実施例1及び実施例7~9のアクリル酸に対し水が50重量%から800重量%の範囲では自己修復機能をもつハイドロゲルが生成することが分かった。一方、比較例5のアクリル酸に対し水が1000重量%の場合、ハイドロゲルの凝集よりもポリマーの水への分散力の方が強くなったため、ハイドロゲルが形成できなかったためだと言える。
(実施例10)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.00079gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1228gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で4時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(実施例11)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0042gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1246gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で4時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(実施例12)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0081gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1234gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で4時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(実施例13)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.2408gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1236gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(実施例14)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.4008gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1231gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(実施例15)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.8020gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1221gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(比較例6)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))2.0015gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1239gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で4時間加温したところ、ゲル化が進行せず、自己修復ゲルは得られなかった。
Figure 0007032941000003
表3には、実施例1及び実施例10から15及び比較例6でえられたアクリル酸モノマーの重量に対する鉄(III)アセチルアセトナートの重量比を添加することで得られた反応混合物についての自己修復性の結果を示している。
この結果から、比較例6のアクリル酸に対し鉄(III)アセチルアセトナートが25重量%の場合、ゲルが得られなかった。これに対し、比較例6より鉄(III)アセチルアセトナートの添加量の少ない実施例1及び実施例10~15ではゲル化が進行し、自己修復性を示した。このことから鉄(III)アセチルアセトナートが多すぎるとゲルの形成を阻害することが分かった。また、実施例14、15では自己修復ゲルが形成したものの、実施例1及び実施例10から13に比べてゲルが脆かった。鉄(III)アセチルアセトナートの添加量がアクリル酸に対して5重量%を超えるとゲルの靱性に影響がでることが分かった。一方、実施例1に比べ鉄(III)アセチルアセトナートの添加量が少ない実施例10、11では靱性はあるものの、タック性が強くなり、ハンドリングしにくくなる傾向が強くなった。
(実施例16)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー7.20g、アクリルアミド0.80g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0880gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1298gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で4時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(実施例17)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー6.40g、アクリルアミド1.60g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0895gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1234gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(実施例18)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー2.00g、アクリルアミド6.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0891gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1227gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で3.5時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(実施例19)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー1.60g、アクリルアミド6.40g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0890gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1241gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温したところ、目的の自己修復ゲルが得られた。
(比較例7)
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー0.80g、アクリルアミド7.20g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))0.0890gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1220gを添加し、さらに2時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で8時間加温したところ、ゲル化が進行せず、自己修復ゲルは得られなかった。
Figure 0007032941000004
表4には、実施例1及び実施例16から19及び比較例1及び比較例7でえられたアクリル酸-アクリルアミド共重合体の反応混合物についての自己修復性の結果を示している。
この結果から、実施例1及び実施例16から19のアクリル酸とアクリルアミドの重量比は100対0から20対80の範囲で自己修復ゲルが生成することが分かった。比較例7と比較例1よりアクリルアミドがこれ以上の比率になると自己修復性を示さないことが分かった。
以上のような本発明の自己修復性ゲルは、自動車や家具のコーティング材料、生体デバイス、吸湿剤、放湿材、接着剤、衝撃吸収材、電解質等の分野に応用できる可能性がある。


Claims (3)

  1. 水溶媒中にポリアクリレートと3価の鉄イオンの原料主成分とするハイドロゲルであって、前記ポリアクリレートがアクリル酸の重合体又はアクリル酸を20重量%以上含むアクリル酸とアクリルアミドの共重合体であり、前記3価の鉄イオンが鉄(III)アセチルアセトナートに由来する3価の鉄イオンであり、前記アクリル酸の重合体又は前記アクリル酸とアクリルアミドの共重合体に対して、水が重量比で50~800重量%であり、鉄(III)アセチルアセトナートが重量比で0.1~3重量%であり、自己修復性を有することを特徴とするハイドロゲル。
  2. 請求項1に記載のハイドロゲルの製造方法であって、水溶媒中にアクリル酸モノマー又はアクリル酸モノマー及びアクリルアミドモノマーを鉄(III)アセチルアセトナートと共存させて、0℃から100℃の温度範囲で重合開始剤を添加することにより自己修復性を有するハイドロゲルを製造することを特徴とするハイドロゲルの製造方法。
  3. 請求項1に記載のハイドロゲルを用いる自己修復材料。
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