JP7130446B2 - 自己修復性ゲル - Google Patents
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Description
2つ目はポリマーの主鎖を化学的結合(共有結合)で架橋させることによる修復である。熱硬化やUV硬化、活性エネルギー線、光重合、電離放射線硬化など外部の刺激により化学的な結合で架橋させる方法がある(特許文献1)。
3つ目は物理的結合(非共有結合)を用い手法である。例えばポリマー内にホストーゲストとなる部位を導入する例がある(特許文献2)。
4つ目はポリウレタンのようにポリマーのもつ弾性・塑性変形の回復と水素結合の再結合を利用する手段がある。
また、ポリマー内にホスト-ゲストとなる部位を導入するには機能を発現するモノマーからの製造工程がかかる。
[1] 水を含む水よりも沸点の高い水溶性有機溶媒中にポリアクリレート又はアクリル酸-アクリルアミド共重合体と3価の鉄イオン及び/又はアルミニウムイオンを含むゲルであって、自己修復性を有することを特徴とする自己修復性ゲル。
[2] 前記の3価の鉄イオンが、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、鉄(III)アセチルアセトナート、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、三シュウ酸アンモニウム鉄(III)、シュウ酸鉄(III)、トリス(シュウ酸)鉄(III)カリウム、リン酸鉄(III)ピロリン酸鉄(III)及びp-トルエンスルホン酸鉄(III)からなる群より選ばれる少なくとも1種の鉄塩に由来する3価の鉄イオンであることを特徴とする前記[1]に記載の自己修復性ゲル。
[3] 前記のアルミニウムイオンが、塩基性乳酸アルミニウム、モノリン酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムアセチルアセトナート及び硫酸アンモニウムアルミニウムからなる群より少なくとも1種のアルミニウム塩を含む化合物であることを特徴とする前記[1]に記載の無色透明な自己修復性ゲル。
[4] 前記有機溶媒が、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びトリエタノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒であることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれかに記載の自己修復性ゲル。
[5] 水溶媒中にアクリル酸モノマー又はアクリル酸モノマー及びアクリルアミドモノマーを3価の鉄塩及び/又はアルミニウムイオンと共存させて、0℃から100℃の温度範囲で重合開始剤を添加して得られたハイドロゲルを水よりも沸点の高い有機溶剤に浸漬することで自己修復性を有するゲルを製造することを特徴とする自己修復性ゲルの製造方法。
[6] 前記[1]~[4]のいずれか1項に記載のゲルを用いる自己修復材料。
本発明のゲルは、大気中、室温というおだやかな条件で表面のキズだけでなく完全に切断された材料でも自己修復する自己修復材料として用いることができる。
本発明の自己修復材料は、内部、外部のダメージを自ら修復し、これを繰り返すことができ材料の長寿命化が可能になる。
そして、アルミニウムイオンが架橋点の役割を果たす場合は、金属イオン特有の着色を防ぎ、無色透明なゲルを形成することが可能になる。
3価の鉄イオン及び/又はアルミニウムイオンの前記ゲル中の含有量が、前記原料のアクリル酸モノマーの重量比に対して3価の鉄塩換算で25重量%を超えると、3価の鉄イオン及び/又はアルミニウムイオンがゲルの形成を妨げるため好ましくない。また、0.05重量%未満であると、自己修復性はあるもののタック性が強くなりハンドリングの面で好ましくない。
本発明の自己修復材料は、大気中、室温のおだやかな条件で表面のキズだけでなく完全に切断された材料でも自己修復する自己修復材料である。
また、本発明の金属イオンとしてアルミニウムイオンのみを含む自己修復材料は無色透明であるため光学材料分野に使用できる。
その後、反応容器に重合開始剤を加えてハイドロゲルが生成するまで撹拌を行う。反応温度は、室温で行えばよいが0℃~100℃の範囲の温度で行うこともできる。通常120分もあればハイドロゲルが生成するが、ハイドロゲルの生成が遅い反応においては、100℃以下の温度で加温して反応を促進してもよい。
ATR法にてFT-IR(装置名:iS50FT-IR(NICOLET社製))を用いて測定した。
(TG-DTAの測定)
TG-DTA(装置名:STA7200(日立ハイテク社製))を測定した。
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)3)0.0893gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1249gを添加し、さらに1時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで自己修復性ハイドロゲルを得た。
得られたハイドロゲルのFT-IRを図1に示した。
図1は、比較例1で得られたハイドロゲルのFT-IRの結果を示すチャートである。
図1から1700~1600cm-1付近にC=O伸縮、1450cm-1にC―H変角振動、1300~1100cm-1付近にC―O伸縮の吸収帯があり、アクリル酸モノマーからポリアクリレートの骨格を形成していることがわかる。
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)3)0.0897gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1242gを添加し、さらに1時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで自己修復性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルをグリセリン200mlに4日間浸漬し、ゲルを溶液から取り出し、一晩室温で乾燥させることで目的の自己修復性ゲルを得ることができた。
得られた自己修復性ゲルのFT-IRを図2に、自己修復の様子を図3に示した。
図2は、実施例1で得られた自己修復性ゲルのFT-IRの結果を示すチャートである。
図2から1700~1600cm-1付近にC=O伸縮、1450cm-1にC―H変角振動、1300~1100cm-1付近にC―O伸縮の吸収帯があり、アクリル酸モノマーからポリアクリレートの骨格を形成していることがわかる。また、グリセリン由来のC-H伸縮が3000cm-1付近と1000cm-1付近にみられる。このことからゲル中にグリセリンが含まれていることが分かる。
図3は、実施例1で得られたゲルを切断後、接面し、大気中、室温で2日間静置したサンプルの様子である。修復後の表面のキズが薄くなっていることが分かる。
図4は、比較例1、実施例1~9で得られたサンプルのTG-DTAの結果を示すチャートである。
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)3)0.0889gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1234gを添加し、さらに1時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで自己修復性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルをジエチレングリコール200mlに4日間浸漬し、ゲルを溶液から取り出し、一晩室温で乾燥させることで目的の自己修復性ゲルを得ることができた。
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)3)0.0890gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1243gを添加し、さらに1時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで自己修復性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルをテトラエチレングリコール200mlに4日間浸漬し、ゲルを溶液から取り出し、一晩室温で乾燥させることで目的の自己修復性ゲルを得ることができた。
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)3)0.0880gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1235gを添加し、さらに1時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで自己修復性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルをトリエタノールアミン200mlに4日間浸漬し、ゲルを溶液から取り出し、一晩室温で乾燥させることで目的の自己修復性ゲルを得ることができた。
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)3)0.0862gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1232gを添加し、さらに1時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで自己修復性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルをポリプロピレングリコール(PPG、分子量3000)200mlに4日間浸漬し、ゲルを溶液から取り出し、一晩室温で乾燥させることで目的の自己修復性ゲルを得ることができた。
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)3)0.0890gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1234gを添加し、さらに1時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで自己修復性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルをクラレポリオール C-3090200mlに4日間浸漬し、ゲルを溶液から取り出し、一晩室温で乾燥させることで目的の自己修復性ゲルを得ることができた。
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)3)0.0876gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1242gを添加し、さらに1時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで自己修復性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルをクラレポリオール P-3010 200mlに4日間浸漬し、ゲルを溶液から取り出し、一晩室温で乾燥させることで目的の自己修復性ゲルを得ることができた。
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー1.60g、アクリルアミド6.40g、蒸留水32ml、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac)3)0.0890gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1241gを添加し、さらに1時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで自己修復性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルをテトラエチレングリコール200mlに4日間浸漬し、ゲルを溶液から取り出し、一晩室温で乾燥させることで目的の自己修復性ゲルを得ることができた。
50mlバイアル瓶に回転子を入れ、アクリル酸モノマー8.00g、蒸留水32ml、酢酸アルミニウム(可溶性)(Al(OAc)3)0.0908gを仕込み、室温で30分撹拌した。その後、ペルオキソ二硫化アンモニウム0.1242gを添加し、さらに1時間撹拌した。続いてこの反応混合液を脱気し、40℃の水浴で1時間加温することで自己修復性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルをテトラエチレングリコール200mlに4日間浸漬し、ゲルを溶液から取り出し、一晩室温で乾燥させることで目的の自己修復性ゲルを得ることができた。
得られたゲルを切断し、再度接着したものを自己修復性あり、接着しなかったものを自己修復性なしと判断した。
サンプルをアルゴン雰囲気下、室温から300℃まで昇温し、重量減少量をTG-DTAで測定した。このときの昇温スピードは10℃/分であった。
比較例1の50%重量減少温度を標準にして、比較例1より50%重量減少温度が高ければ耐久性あり、低ければ耐久性なしと判断した。
Claims (4)
- 水を含む水よりも沸点の高い水溶性有機溶媒中にポリアクリレートと3価の鉄イオンの原料を含むゲルであって、前記ポリアクリレートがアクリル酸の重合体又はアクリル酸を20重量%以上含むアクリル酸とアクリルアミドの共重合体であり、前記3価の鉄イオンが鉄(III)アセチルアセトナートに由来する3価の鉄イオンであり、自己修復性を有することを特徴とする自己修復性ゲル。
- 前記有機溶媒が、グリセリン、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びトリエタノールアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の自己修復性ゲル。
- 請求項1に記載の自己修復性ゲルの製造方法であって、水溶媒中にアクリル酸モノマー又はアクリル酸モノマー及びアクリルアミドモノマーを鉄(III)アセチルアセトナートと共存させて、0℃から100℃の温度範囲で重合開始剤を添加して得られたハイドロゲルを水よりも沸点の高い有機溶剤に浸漬することで自己修復性を有するゲルを製造することを特徴とする自己修復性ゲルの製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載のゲルを用いる自己修復材料。
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