JP7029901B2 - 解体方法 - Google Patents

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特許法第30条第2項適用 刊行物 :基礎工2月号 発行日 :平成29年2月15日
本発明は、補強方法、及び解体方法に関する。
従来、旧建物の建替工事においては、旧建物の基礎杭や地下躯体等が、新建物の建設に対して障害物になる場合、山留壁部を地下に新たに形成した上で、当該障害物(つまり、基礎杭や地下躯体等)を解体して撤去する必要があり多大な手間と時間を要していた。すなわち、従来の山留壁部の形成は、例えば、旧建物の地下壁部の内側に内側壁及び当該内側壁を支持するバットレス(内側壁の支持体)を形成し、旧建物の地下壁部と内側壁との間にガラ材(例えば、解体ガラ等)を充填した上で、いわゆるSMW(Soil Mixing Wall)工法にて当該ガラ材と共に底盤を掘削して旧建物の地下壁部と内側壁との間にSMW連続壁を形成することにより行われていた。ところが、前述の内側壁及びバットレス、SMW連続壁はコンクリートにて形成されていたので、固化するまでに比較的長い時間を要し、また、ガラ材の充填作業にも比較的長い時間を要し、また、SMW連続壁を形成した後は、ガラ材を撤去する必要があり、このガラ材の搬入出が手間となっていた。
そこで、旧建物の建替工事に要する時間及び手間を削減させるための技術として、建物建て替え方法が知られていた(特許文献1)。この建物建て替え方法においては、旧建物の外周壁部の内側に擁壁部を形成し、この外周壁部と擁壁部との間に解体ガラ等を充填することにより山留壁部を形成した上で、新建物の建設を行っていた。
特開2006-266036号公報
しかしながら、このような方法では、擁壁部の形成や解体ガラの充填等に比較的多大な時間と手間を要することになり、新建物に関する地下工事(つまり、旧建物の障害物の解体撤去等)に要する時間及び手間を削減する観点において改善の余地があった。
本発明は上記事実に鑑み、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる補強方法及び解体方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の解体方法は、既存建物の地下障害物を解体する解体方法であって、新設建物の地下工事を行うための山留壁部を、前記既存建物の地下に設けられている地下壁部にて形成するステップと、前記地下障害物よりも上方の前記既存建物の除去対象床部材の少なくとも一部を除去することにより、前記地下障害物を解体するための解体用開口部を形成するステップと、形成した前記解体用開口部を介して、前記除去対象床部材よりも上方から解体装置にて前記地下障害物を解体するステップと、を含み、前記山留壁部を前記地下壁部にて形成するステップは、前記地下壁部を土圧に対して支持する支持手段を設けることにより、前記山留壁部を前記地下壁部にて形成するステップ、を含み、前記支持手段は、前記地下壁部を支持する切梁と、前記地下壁部に対する前記切梁の水平方向に沿った位置を調整する調整手段と、を備え、前記調整手段は、前記切梁を前記地下壁部に押し付ける。
請求項に記載の解体方法は、請求項に記載の解体方法において、前記既存建物における前記解体装置が設けられる装置設置床部材を補強するステップ、を含む。
請求項に記載の解体方法によれば、新設建物の地下工事を行うための山留壁部を既存建物の地下壁部にて形成することにより、例えば、既存建物の地下壁部を山留壁部として用いることができるので、山留壁部を形成する時間及び手間を削減することができ、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる。また、上方から解体装置にて地下障害物を解体することにより、例えば、解体装置を下方に下す必要がないので、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を一層削減することが可能となる。特に、例えば、コンクリートによるバットレスを形成したり、ガラ材を用いたりする必要がないので、バットレスを形成するコンクリートの固化を待つ必要がなく、また、ガラ材の搬入出が不要となるので、また、ガラ材と共に底盤を掘削する必要がないので、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる。
また、地下壁部を土圧に対して支持する支持手段を設けることにより、例えば、支持手段を用いて確実に土圧を支持することができるので、安全性を確保することが可能となる。
また、地下壁部に対する切梁の水平方向に沿った位置を調整することにより、例えば、切梁を用いて確実に土圧を支持することができるので、安全性を確保することが可能となる。
請求項に記載の解体方法によれば、既存建物における解体装置が設けられる装置設置床部材を補強することにより、例えば、解体装置が設けられて装置設置床部材が崩壊することを防止することができるので、安全性を確保することが可能となる。
本実施の形態に係る既存建物と建設予定の新設建物を示す平面図である。 既存建物の断面図である。 切梁等が設けられた状態の既存建物の断面図である。 解体用開口部が形成された状態の既存建物の断面図である。 既存杭を取り除いている状態の既存建物の断面図である。 既存杭が取り除かれた状態の既存建物の断面図である。 撤去方法のフローチャートである。
以下に添付図面を参照して、この発明に係る補強方法、及び解体方法の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、補強方法、及び解体方法に関する。
ここで、「補強方法」とは、既存建物の地下に設けられている地下壁部を補強する方法であり、例えば、地下壁部を土圧に対して支持する支持手段を設けることにより、新設建物の地下工事を行うための山留壁部を地下壁部にて形成するステップを含む方法である。
「既存建物」とは、既に建設されている建物であって地下構造物を有する建物であり、具体的には、1つのみの建物、複数の建物等を含むものであり、例えば、オフィスビル、病院、学校、集合住宅、及び一戸建て住宅等を含む概念である。「地下壁部」とは、既存建物の地下に設けられているものであり、例えば、壁自体、あるいは、壁の外側に既に形成されている既存建物のための山留壁部等を含む概念である。
「支持手段」とは、地下壁部を土圧に対して支持するものであり、具体的には、地下壁部に土圧(つまり、地下の土による圧力)にて印加される荷重を引き受けるもの、あるいは、当該荷重に抗する力を地下壁部に印加するものであり、例えば、後述する切梁、及び調整手段等を含む概念である。
「新設建物」とは、新たに建設される建物であって地下階を有する建物であり、具体的には、1つのみの建物、複数の建物等を含むものであり、また、既存建物の地下構造物の内部に対応する位置に新設建物用地下壁部の少なくとも一部が形成されるものであり、例えば、オフィスビル、病院、学校、集合住宅、及び一戸建て住宅等を含む概念である。「新設建物用地下壁部」とは、新設建物の地下に設けられるものであり、例えば、壁自体等を含む概念である。
「山留壁部」とは、土の崩壊を防ぐために用いられるものであり、具体的には、建物の地下部分において土圧を支持するものであり、例えば、新設建物の地下工事を行うために形成されるものである。「新設建物の地下工事」とは、新設建物を建設するために地下にて行うことが必要な工事であり、例えば、地下障害物の解体、地下構造物の解体、又は地下構造物の建設等を含む概念である。「地下障害物」とは、地下工事を行うために障害となるものであり、例えば、既存建物の一部(一例としては、杭(つまり、既存杭)等)、あるいは、既存建物とは異なる埋設物(例えば、岩等)を含む概念である。「地下障害物の解体」とは、地下障害物を壊すことであり、例えば、地下障害物を壊すことのみ、地下障害物を壊して撤去すること等を含む概念である。
また、「解体方法」とは、既存建物の地下障害物を解体する方法であり、例えば、新設建物の地下工事を行うための山留壁部を、既存建物の地下に設けられている地下壁部にて形成するステップと、地下障害物よりも上方の既存建物の除去対象床部材の少なくとも一部を除去することにより、地下障害物を解体するための解体用開口部を形成するステップと、形成した解体用開口部を介して、除去対象床部材よりも上方から解体装置にて地下障害物を解体するステップとを含む方法である。
「除去対象床部材」とは、自己の少なくとも一部が除去される既存建物の床部材であり、具体的には、地下障害物よりも上方に設けられているものであり、例えば、高さ方向において地下障害物と解体装置との間に設けられているものである。「解体用開口部」とは、地下障害物を解体するために除去対象部材に形成される開口部であり、例えば、解体装置が地下障害物にアクセスするルートを形成するものである。「解体装置」とは、地下障害物を解体するための装置であり、具体的には、地下障害物の上方から当該地下障害物を解体及び撤去を行うものであり、例えば、公知の全旋回オールケーシング工法(CD工法)にて地下障害物を解体及び撤去する公知の装置(つまり、全集回転掘削機)(以下、CD機)、あるいは、公知の多機能大口径削孔工法(BG工法)にて地下障害物を解体及び撤去する公知の装置(つまり、一般的にCD機よりも小型となっている多目的掘削機)(以下、BG機)等の任意の装置を含む概念である。また、この「解体装置」は、例えば、装置設置床部材に設けられる。「装置設置床部材」とは、既存建物における解体装置が設けられる床部材であり、具体的には、地下障害物よりも上方に設けられているものである。
そして、以下に示す実施の形態では、「既存建物」が地下2階分の地下構造物を有する建物であり、「地下障害物」が既存建物の一部である既存杭であり、「解体装置」がCD機であり、「装置設置床部材」が既存建物の地上1階床部であり、「除去対象床部材」が地上1階床部、地下1階床部及び地下2階床部である場合において、本願の補強方法及び解体方法の概念を用いて地下障害物を撤去する場合について説明する。
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
(構成)
まず、本実施の形態に係る補強方法及び解体方法が適用される建物等について説明する。図1は、本実施の形態に係る既存建物と建設予定の新設建物を示す平面図であり、図2は、既存建物の断面図であり、図3は、切梁等が設けられた状態の既存建物の断面図であり、図4は、解体用開口部が形成された状態の既存建物の断面図であり、図5は、既存杭を取り除いている状態の既存建物の断面図であり、図6は、既存杭が取り除かれた状態の既存建物の断面図である。
なお、図1においては、3つの既存建物100を取り壊して1つの新設建物200を建設することを示しており、説明の便宜上、既存建物100の外形を実線で示し、建設予定の新設建物200の外形を2点鎖線で示している。また、図2においては、図1の領域Ar1の断面図を図示しており、特に、地上部分が取り壊された状態の既存建物100を図示しており、(a)にて、正面断面図を図示しており(ハッチングは便宜上省略)、(b)にて、平面断面図を図示しており、また、(a)は、(b)におけるB-B矢印に向かってみた状態を示しており、(b)は、(a)におけるA-A矢印に向かって状態を示している(図3~図6の(a)及び(b)も同様である)。また、図1~図6に示すX―Y―Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、Z方向が垂直方向であって、X方向及びY方向が垂直方向に対して直交する水平方向であるものとして、例えば、Z方向を高さ方向と称し、+Z方向を上方(平面)と称し、-Y方向を下方(底面)と称し、-Y方向を正面側と称し、+Y方向を背面側と称して説明する。
そして、以下では、補強方法及び解体方法の適用対象例、既存建物の構成、既存建物に適用される要素の構成について説明する。
(構成‐補強方法及び解体方法の適用対象例)
まず、補強方法及び解体方法の適用対象例について説明する。本願の補強方法及び解体方法は、図1に示すように、既存建物100の壁よりも当該既存建物100の内側に新設建物200の壁が設けられる領域に適用することができ、例えば、3つの既存建物100の壁100a~100dと対向する領域であり、且つ、3つの既存建物100の内側の領域に適用することができる。ここでは、例えば、図1の領域Ar1に着目して説明する。
(構成‐既存建物の構成)
次に、既存建物100について説明する。なお、既存建物100については、公知の建物を含む任意の建物と同様にして構成することができるので、ここでは、本願の特徴に特に関連する構成のみについて説明する。図2の既存建物100は、例えば、地下壁部11地上1階床部12、地下1階床部13、地下2階床部14、底盤部15、及び既存杭16を備える。
(構成‐既存建物の構成‐地下壁部)
図2の地下壁部11は、既存建物100の地下に設けられているものである。この地下壁部11の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、水平方向(X軸方向)において既存建物100の内外を相互に区分しているものであり、また、高さ方向(Z軸方向)にわたって設けられているものである。
(構成‐既存建物の構成‐地上1階床部)
図2の地上1階床部12は、装置設置床部材であり、また、除去対象床部材である。この地上1階床部12の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、高さ方向(Z軸方向)において既存建物100の地上1階部分と地下1階部分を相互に区分しているものであり、また、水平方向(XY平面に平行な方向)にわたって設けられているものである。
(構成‐既存建物の構成‐地下1階床部)
図2の地下1階床部13は、除去対象床部材である。この地下1階床部13の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、高さ方向(Z軸方向)において既存建物100の地下1階部分と地下2階部分を相互に区分しているものであり、また、水平方向(XY平面に平行な方向)にわたって設けられているものである。
(構成‐既存建物の構成‐地下2階床部)
図2の地下2階床部14は、除去対象床部材である。この地下2階床部14の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、高さ方向(Z軸方向)において既存建物100の地下2階部分と地下2階部分よりも下の部分を相互に区分しているものであり、また、水平方向(XY平面に平行な方向)にわたって設けられているものである。
(構成‐既存建物の構成‐底盤部)
図2の底盤部15は、既存建物100の底を形成しているものである。この底盤部15の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、高さ方向(Z軸方向)において既存建物100の内外を相互に区分しているものであり、また、水平方向(XY平面に平行な方向)にわたって設けられているものである。
(構成‐既存建物の構成‐既存杭)
図2の既存杭16は、既存建物100を支持するものである。この既存杭16の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、底盤部15から下方(-Z方向)に向かって突出しているものであり、また、複数の既存杭161~165を備えるものである。なお、ここでは、図示されている既存杭161~165のうちの図面最左側の既存杭161が、新設建物200の地下工事を行うために障害となることとし、当該既存杭161を解体する場合について説明する(つまり、既存杭161が地下障害物になる場合について説明する)。
(構成‐既存建物に適用される要素の構成)
次に、既存建物100に適用される要素の構成について説明する。既存建物100に適用される要素とは、後述する撤去方法を実行することにより、既存建物100に設けられる要素、あるいは、既存建物100に対して用いられる要素であり、例えば、図4の切梁31、位置調整装置32、切梁固定部33、解体用開口部34、図5の補強床35、補強柱36、及び解体装置41を備える。なお、切梁31、位置調整装置32、及び切梁固定部33の組み合わせは、例えば、地下1階部分及び地下2階部分に各々設けられるが、相互に同様な構成であるので、地下1階部分のものについて主に説明する。また、解体用開口部34は、地上1階床部12、地下1階床部13、及び地下2階床部14に各々設けられるが、相互に同様な構成であるので、地下1階床部13のものについて主に説明する。
(構成‐既存建物に適用される要素の構成‐切梁)
図4の切梁31は、支持手段であり、具体的には、地下壁部11を支持するものである。この切梁31の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、水平方向(X軸方向)において地下壁部11と切梁固定部33との間の隙間に設けられているものであり、また、水平方向(X軸方向)において延在している棒状のものであり、また、金属製のものであり、また、一例としては、いわゆるH鋼である。
(構成‐既存建物に適用される要素の構成‐位置調整装置)
図4の位置調整装置32は、支持手段であり、具体的には、地下壁部11に対する切梁31の水平方向(X軸方向)に沿った位置を調整する調整手段である。この位置調整装置32の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、水平方向(X軸方向)において切梁31と切梁固定部33との間に設けられているものであり、また、隣接する切梁31の水平方向(X軸方向)に沿った位置を調整する調整機構を備えるものである。また、この位置調整装置32は、一例としては、公知のジャッキ(つまり、対象物の下に置かれてその物を支えたり、持ち上げたりするために使われる機械装置)の技術を用いて構成される調整機構を採用して構成されているものである。
(構成‐既存建物に適用される要素の構成‐切梁固定部)
図4の切梁固定部33は、切梁31を支持するものであり、具体的には、既存建物100における地下壁部11以外の一部に固定されているものである。この切梁固定部33の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、図4(b)に示すように、水平方向(Y軸方向)に沿って延在しているスラブの如きものであり、また、地下1階床部13等に固定されているものであり、また、金属製又はコンクリート製等の強固なものである。なお、切梁固定部33については、既存建物100に適用される要素としてここでは説明したが、既存建物100に新たに設けることを要さずに既存建物100の一部分(例えば、既存建物の躯体の一部等)を切梁固定部33の如き要素として用いることができる場合、この一部分にて切梁固定部33と同様な機能を発揮するように構成してもよい。
(構成‐既存建物に適用される要素の構成‐解体用開口部)
図4の解体用開口部34は、地下障害物を解体するために除去対象部材に形成される開口部であり、例えば、図5の解体装置41のケーシング部411が既存杭161にアクセスするルートを形成するものである。この解体用開口部34の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、解体装置41おけるケーシング部411よりも大径の開口であり、また、円形の開口である。
(構成‐既存建物に適用される要素の構成‐補強床)
図5の補強床35は、装置設置床部材を補強する床部材補強手段であり、例えば、荷重を水平方向(XY平面に平行な方向)において分散させるものである。この補強床35の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、地上1階床部12における少なくとも解体装置41が載置される部分に設けられるものであり、また、水平方向(XY平面に平行な方向)にわたって設けられるものである。また、この補強床35は、一例としては、コンクリートにて形成される補強床、鋼板、あるいは、その他の任意の補強床として構成することができるが、ここでは、鋼板として構成されているものとする。
(構成‐既存建物に適用される要素の構成‐補強柱)
図5の補強柱36は、装置設置床部材を補強する床部材補強手段であり、例えば、荷重を高さ方向(Z軸方向)において支持するものである。この補強柱36の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、既存建物100に複数設けられものであり、また、高さ方向(Z軸方向)に延在しているものである。また、この補強柱36は、一例としては、いわゆる強力サポート(例えば、既存建物100の地下1階部分及び地下2階部分各々に設けられて高さ方向(Z軸方向)において延在して支持する金属製の伸縮及び固定自在の棒状機器)、あるいは、高さ方向(Z軸方向)において地下2階床部14から地上1階床部12に連続的に延在する(縦断する)仮設柱として構成することができるが、ここでは、強力サポートとして構成されているものとする。
(構成‐既存建物に適用される要素の構成‐解体装置)
図5の解体装置41は、地下障害物を解体して撤去する解体撤去手段である。この解体装置41の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、前述のCD機であり、公知のCD機として構成することができるものであるが、一例としては、ケーシング部411及び不図示のハンマーグラブ部を備えるものである。ケーシング部411は、円筒状の部分であり、ケーシング部411の下端(-Z方向)の縁に沿って回転するカッターを備えており、当該カッターを回転させることにより掘削(又は、地下障害物の解体)を行うことが可能となっているものである。不図示のハンマーグラブ部は、ケーシング部411の内部に設けられている物であり、ケーシング部411の内部にて地下障害物を解体したり保持したりすることが可能となっているものである。
(撤去方法)
次に、このように構成される既存建物100に適用される撤去方法について説明する。図7は、撤去方法のフローチャートである。「撤去方法」とは、補強方法及び解体方法であり、例えば、既存建物100の地下に設けられている地下壁部11を補強し、地下障害物である既存杭161を解体する方法である。ここでは、特に、図2~図6に示すように、既存建物100の地上部分が取り壊された後に、既存杭161を解体して撤去する場合について説明する。
まず、図7のSA1において既存建物100の地下部分に切梁31を設置する。具体的には任意であるが、例えば、図3の地下1階部分に切梁固定部33を設けた上で、切梁固定部33と地下壁部11との間に切梁31及び位置調整装置32を設けることにより、設置する。この場合、地下壁部11に土圧(つまり、地下の土による圧力)にて印加される荷重が、切梁31を介して、既存建物100における地下壁部11以外の部分に分散されることになるので、既存建物100の周りの土圧を支持する山留壁部が地下壁部11にて形成されることになる。なお、例えば、このSA1が「山留壁部を地下壁部にて形成するステップ」に相当する。
図7に戻って、SA2において切梁31の水平方向(X軸方向)に沿った位置を調整する。具体的には任意であるが、例えば、図3の地下1階部分の位置調整装置32の調整機構を操作することにより、切梁31を地下壁部11に押し付けることにより当該地下壁部11を強固に支持し、土圧による地下壁部11への水平荷重を既存建物100における地下壁部11以外の部分に移し替える。
図7に戻って、SA3において解体用開口部34を形成する。具体的には任意であるが、例えば、図4の地上1階床部12及び地下1階床部13の少なくとも一部を除去することにより、既存杭161を解体するための解体用開口部34を形成する。詳細には、地上1階床部12及び地下1階床部13に高さ方向(Z軸方向)において既存杭161の上方(+Z方向)に対応する一部を、作業者の手作業にて斫ることにより、あるいは、他の任意の手法(例えば、専用装置にて自動的に斫る手法)にて斫ることにより解体用開口部34を形成することができるが、ここでは、例えば、作業者の手作業にて斫ることにより解体用開口部34を形成する。なお、このSA3が、例えば、「解体用開口部を形成するステップ」に相当する。
図7に戻って、SA4において、SA1~SA3と同様な処理を、既存建物100の地下階部分全てについて、繰り返し行い、図4に示すように、各地下階部分に切梁31、位置調整装置32、及び切梁固定部33を設け、また、地上1階床部12、地下1階床部13、及び地下2階床部14に解体用開口部34を形成する。
図7に戻って、SA5において補強柱(支保工)36を形成する。具体的には任意であるが、例えば、図5の既存建物100の地下1階部分及び地下2階部分に補強柱36を設置して形成する。なお、例えば、このSA5及び後述のSA6が「装置設置床部材を補強するステップ」に相当する。
図7に戻って、SA6において補強床35を形成する。具体的には任意であるが、例えば、図5の補強床35を地上1階床部12の上に載置して固定することにより、補強床35を形成する。
図7に戻って、SA7において解体装置41を設置する。具体的には任意であるが、例えば、図5の解体装置41を自走させて補強床35の上に設置する。
図7に戻って、SA8において既存杭161を解体する。具体的には任意であるが、例えば、解体用開口部34を介して解体装置41のケーシング部411を通すことにより、当該ケーシング部411の下端(-Z方向)を底盤部15に押し当てた状態で当該底盤部15を掘削して、不図示のハンマーグラブ部を用いて既存杭161を解体した上で、当該既存杭161を撤去し、また、図6に示すようにケーシング部411自体も撤去する(つまり、地上1階床部12、地下1階床部13、及び地下2階床部14よりも上方から解体装置41にて既存杭161を解体して撤去する)。なお、このSA8が「地下障害物を解体するステップ」に相当する。これにて、撤去方法を終了する。
そして、この撤去方法を終了した後の施工処理は任意であるが、例えば、撤去方法を実行することにより形成された開口(つまり、解体用開口部34、底盤部15を解体装置41のケーシング部411にて掘削することにより底盤部15に形成された開口)を介して、既存杭161が撤去された位置にSMWのコンクリート柱を設けて、当該コンクリート柱の上端にH鋼を設けた上で、当該H鋼に横矢板を設けて、更に、この横矢板と地下壁部11との間の隙間にコンクリートを打設することにより強固な山留壁部を新たに形成してもよい。
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、地下壁部11を土圧に対して支持する切梁31及び位置調整装置32を設けることにより、新設建物200の地下工事(具体的には、新設建物200を建設するために既存建物100の既存杭161を解体して撤去する工事)を行うための山留壁部を既存建物100の地下壁部11にて形成することで、例えば、既存建物100の地下壁部11を山留壁部として用いることができるので、山留壁部を形成する時間及び手間を削減することができ、新設建物200の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる。特に、例えば、コンクリートによるバットレスを形成したり、ガラ材を用いたりする必要がないので、バットレスを形成するコンクリートの固化を待つ必要がなく、また、ガラ材の搬入出が不要となるので、また、ガラ材と共に底盤を掘削する必要がないので、新設建物200の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる。
また、地下壁部11に対する切梁31の水平方向に沿った位置を調整することにより、例えば、切梁31を用いて確実に土圧を支持することができるので、安全性を確保することが可能となる。
また、新設建物200の地下工事を行うための山留壁部を既存建物100の地下壁部にて形成することにより、例えば、既存建物100の地下壁部11を山留壁部として用いることができるので、山留壁部を形成する時間及び手間を削減することができ、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる。また、上方(+Z方向)から解体装置41にて既存杭161を解体することにより、例えば、解体装置41を下方(-Z方向)に下す必要がないので、新設建物200の地下工事に要する時間及び手間を一層削減することが可能となる。特に、例えば、コンクリートによるバットレスを形成したり、ガラ材を用いたりする必要がないので、バットレスを形成するコンクリートの固化を待つ必要がなく、また、ガラ材の搬入出が不要となるので、また、ガラ材と共に底盤を掘削する必要がないので、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる。
また、既存建物100における解体装置41が設けられる地上1階床部12を補強することにより、例えば、解体装置41が設けられて地上1階床部12が崩壊することを防止することができるので、安全性を確保することが可能となる。
また、地下壁部11を土圧に対して支持する切梁31及び位置調整装置32を設けることにより、例えば、切梁31及び位置調整装置32を用いて確実に土圧を支持することができるので、安全性を確保することが可能となる。
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。特に、切梁31及び補強柱36の設置個数については、実施の形態で図示したものよりも多くしてもよく、少なくしてもよい。
(位置調整装置の位置について)
また、上記実施の形態においては、位置調整装置32を切梁31の切梁固定部33側に設ける場合について説明したが、これに限らず、位置調整装置32を切梁31の地下壁部11側に設けてもよいし、位置調整装置32を切梁31の両側に設けてもよい。
(解体装置について)
また、上記実施の形態においては、解体装置41としてCD機のみを用いる場合について説明したが、これに限らず、BG機のみを用いてもよいし、あるは、CD機及びBG機を混在させて用いてもよい。また、解体装置41については、地上1階床部12の上に設けるのみでなく、下すことが可能である場合には、地下1階床部13、あるいは、地下2階床部14に下して用いてもよい。
(撤去方法について)
また、図7の撤去方法の任意のステップを組み替えたり、削除したり、あるいは、他のステップを追加してもよい。具体的には、例えば、解体用開口部34を設けたとしても崩壊の可能性が無い場合には、つまり、地下壁部11に支持手段を設けずに地下壁部11にて土圧を支持できる場合には、SA1及びSA2を省略して、地下壁部11に支持手段を設けずに解体用開口部34を形成して解体を行ってもよい。また、例えば、解体装置41を設置したとしても崩壊の可能性が無い場合には、SA5及びSA6を省略して補強を行わずに、解体装置41を設置してもよい。
(支持手段について)
また、上記実施の形態においては、切梁31及び位置調整装置32の両方にて地下壁部11を支持する場合について説明したが、これに限らず、切梁31のみにて支持してもよい。また、例えば、切梁31を用いずに、いわゆるバックアンカーを地下壁部11に打ち込むことにより、地下壁部11を支持してもよい。このように構成した場合、バックアンカーが支持手段に相当する。
(付記)
付記1の補強方法は、既存建物の地下に設けられている地下壁部を補強する補強方法であって、前記地下壁部を土圧に対して支持する支持手段を設けることにより、新設建物の地下工事を行うための山留壁部を前記地下壁部にて形成するステップ、を含む。
付記2の補強方法は、付記1に記載の補強方法において、前記支持手段は、前記地下壁部を支持する切梁と、前記地下壁部に対する前記切梁の水平方向に沿った位置を調整する調整手段と、を備える。
付記3の解体方法は、既存建物の地下障害物を解体する解体方法であって、新設建物の地下工事を行うための山留壁部を、前記既存建物の地下に設けられている地下壁部にて形成するステップと、前記地下障害物よりも上方の前記既存建物の除去対象床部材の少なくとも一部を除去することにより、前記地下障害物を解体するための解体用開口部を形成するステップと、形成した前記解体用開口部を介して、前記除去対象床部材よりも上方から解体装置にて前記地下障害物を解体するステップと、を含む。
付記4の解体方法は、付記3に記載の解体方法において、前記既存建物における前記解体装置が設けられる装置設置床部材を補強するステップ、を含む。
付記5に記載の解体方法は、付記3又は4に記載の解体方法において、前記山留壁部を前記地下壁部にて形成するステップは、前記地下壁部を土圧に対して支持する支持手段を設けることにより、前記山留壁部を前記地下壁部にて形成するステップ、を含む。
(付記の効果)
付記1に記載の補強方法によれば、地下壁部を土圧に対して支持する支持手段を設けることにより、新設建物の地下工事を行うための山留壁部を既存建物の地下壁部にて形成することで、例えば、既存建物の地下壁部を山留壁部として用いることができるので、山留壁部を形成する時間及び手間を削減することができ、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる。特に、例えば、コンクリートによるバットレスを形成したり、ガラ材を用いたりする必要がないので、バットレスを形成するコンクリートの固化を待つ必要がなく、また、ガラ材の搬入出が不要となるので、また、ガラ材と共に底盤を掘削する必要がないので、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる。
付記2に記載の補強方法によれば、地下壁部に対する切梁の水平方向に沿った位置を調整することにより、例えば、切梁を用いて確実に土圧を支持することができるので、安全性を確保することが可能となる。
付記3に記載の解体方法によれば、新設建物の地下工事を行うための山留壁部を既存建物の地下壁部にて形成することにより、例えば、既存建物の地下壁部を山留壁部として用いることができるので、山留壁部を形成する時間及び手間を削減することができ、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる。また、上方から解体装置にて地下障害物を解体することにより、例えば、解体装置を下方に下す必要がないので、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を一層削減することが可能となる。特に、例えば、コンクリートによるバットレスを形成したり、ガラ材を用いたりする必要がないので、バットレスを形成するコンクリートの固化を待つ必要がなく、また、ガラ材の搬入出が不要となるので、また、ガラ材と共に底盤を掘削する必要がないので、新設建物の地下工事に要する時間及び手間を削減することが可能となる。
付記4に記載の解体方法によれば、既存建物における解体装置が設けられる装置設置床部材を補強することにより、例えば、解体装置が設けられて装置設置床部材が崩壊することを防止することができるので、安全性を確保することが可能となる
付記5に記載の解体方法によれば、地下壁部を土圧に対して支持する支持手段を設けることにより、例えば、支持手段を用いて確実に土圧を支持することができるので、安全性を確保することが可能となる。
11 地下壁部
12 地上1階床部
13 地下1階床部
14 地下2階床部
15 底盤部
16 既存杭
31 切梁
32 位置調整装置
33 切梁固定部
34 解体用開口部
35 補強床
36 補強柱
41 解体装置
100 既存建物
100a 壁
100b 壁
100c 壁
100d 壁
161 既存杭
162 既存杭
163 既存杭
164 既存杭
165 既存杭
200 新設建物
411 ケーシング部
Ar1 領域

Claims (2)

  1. 既存建物の地下障害物を解体する解体方法であって、
    新設建物の地下工事を行うための山留壁部を、前記既存建物の地下に設けられている地下壁部にて形成するステップと、
    前記地下障害物よりも上方の前記既存建物の除去対象床部材の少なくとも一部を除去することにより、前記地下障害物を解体するための解体用開口部を形成するステップと、
    形成した前記解体用開口部を介して、前記除去対象床部材よりも上方から解体装置にて前記地下障害物を解体するステップと、を含み、
    前記山留壁部を前記地下壁部にて形成するステップは、前記地下壁部を土圧に対して支持する支持手段を設けることにより、前記山留壁部を前記地下壁部にて形成するステップ、を含み、
    前記支持手段は、
    前記地下壁部を支持する切梁と、
    前記地下壁部に対する前記切梁の水平方向に沿った位置を調整する調整手段と、を備え、
    前記調整手段は、前記切梁を前記地下壁部に押し付ける、
    解体方法。
  2. 前記既存建物における前記解体装置が設けられる装置設置床部材を補強するステップ、を含む、
    請求項に記載の解体方法。
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