JP3648664B2 - 建物の改築方法および建物 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既存の建物をその一部を残して解体・除去するとともに、該一部に隣接させて躯体を新規に構築し、これら既存の建物の一部および新規に構築された躯体を一体化して新たな建物とする建物の改築方法、およびこのようにして改築された建物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、建物を改築する際の一手法として、建物を一部を残したまま解体・除去するとともに、残した部分に隣接して新規に躯体を構築し、これら残した部分と新規に構築された躯体とを一体化して新たな建物とすることが行われる。
【0003】
このような手法は、特に歴史的建築物等の保存建物の保存および再生を図る際によく用いられる。例えば、当該建築物の外観意匠に歴史的価値があると見なされる場合には、歴史的価値のある外観意匠を構成する外壁のみを残し、この外壁を利用して新たな建物を建築する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば、上述のように外壁のみを残して建物の解体・除去を行った場合、残された外壁が大規模なものであればあるほど、沈下や変位などの問題が生じやすくなる。したがって、このような問題を有効に解決し得るような技術が求められていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み行われたものであり、その目的は、既存建物をその一部を残して解体・除去するとともに、残された建物の一部を利用して新たに建物を建築する際に、残された既存建物の一部を安定的に支持しておくことを可能とするような建物の改築方法を提供することにある。また、別の目的は、このような方法を用いて建設することのできる建物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明においては以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の建物の改築方法は、既存の建物をその一部を残して解体・除去するとともに、該一部に隣接させて躯体を新規に構築し、これら既存の建物の一部および新規に構築された躯体を一体化して新たな建物とする建物の改築方法であって、
前記既存の建物の一部に沿って地中連続壁を構築するとともに、該一部および該地中連続壁を一体的に結合しておき、しかる後に前記既存の建物の地下部のうち除去すべき部分を解体することを特徴とする。
【0007】
この建物の改築方法は、上記のような構成とされるために、既存の建物の除去すべき部分を解体する作業を行う際に、既存の建物のうち残すべき部分を地中連続壁によって支持することができる。
【0008】
請求項2記載の建物の改築方法は、請求項1記載の建物の改築方法であって、前記地中連続壁を構築するにあたっては、あらかじめ、前記既存の建物の一部を補強する補強構造体を設置しておくとともに、該一部と該補強構造体とを、少なくともその地下部において一体化させておき、
前記地中連続壁と前記一部とを該補強構造体を介して一体的に結合することを特徴とする。
【0009】
この建物の改築方法は、上記のような構成とされるために、既存の建物のうち残されるべき一部が、壁体のような安定性の悪い構造であっても、これを補強構造体により安定的に支持することができる。
【0010】
請求項3記載の建物の改築方法は、請求項1または2記載の建物の改築方法であって、
前記地中連続壁は、その少なくとも下端部が、該地中連続壁が設置される地盤における支持層に到達するように構築されていることを特徴とする。
【0011】
上記のような構成とされるため、この建物の改築方法によれば、既存建物の内残すべき一部が、地中連続壁を介して支持層から支持されることとなる。
【0012】
請求項4記載の建物は、既存の建物をその一部を残して解体・除去するとともに、該一部に隣接させて躯体を新規に構築し、これら既存の建物の一部および新規に構築された躯体を一体化することによって形成される建物であって、
前記既存の建物の一部の地下部および前記躯体の地下部の間には、地中連続壁が設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記のような構成とされるために、この建物は、既存の建物の内の残されるべき一部を地中連続壁により支持しながら、躯体の構築作業を行うことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
なお、ここで説明する実施の形態は、図3(a)に示すような既存の歴史的建築物等(保存建物1)において、その一部を保存しつつ、再生を図る工事を施す場合のものである。すなわち、保存建物1を、外観意匠の歴史的価値が高い外壁2の一部をなす壁体(既存の建物の一部)3を残し、解体・除去するとともに、この壁体3に隣接させて(b)に示すような躯体4を新規に構築し、これら壁体3および新規に構築された躯体4を一体化することにより、(b)に示すように新たな建物5を形成する。
【0015】
図1は、保存建物1を新たな建物5(図3参照)に改築途中の状況を示す図である。図中に示すように、歴史的建物1は、壁体3のみが残され、解体されている。また、保存建物1に隣接して、新たな建物5(図3参照)の躯体4が構築されることとなる。
【0016】
また、壁体3に対しては、解体工事中において壁体3の安定化を図るための補強構造体7が設けられている。補強構造体7は、その地上部7aが鉄骨8,8,…により構成された仮設の構造体とされるとともに、その地下部7bが、鉄骨8,に対してコンクリートCを打設することにより形成された本設の構造体とされている。また、この補強構造体7の地下部7bは、壁体3の地下部3aと一体化された構成とされている。
【0017】
また、図中に示すように、壁体3の地下部3aと躯体4が構築されるべき部分との間には、地中連続壁10が構築されている。地中連続壁10は、その下部10aが地盤G中に打設されるとともに、その上部10bが補強構造体7の地下部7bを介して壁体3の地下部3aと一体的に結合されており、なおかつ、切り梁12,12,…または地盤アンカー13,13,…によって側方への変位が規制された構成とされている。さらに、図中に示すように、地中連続壁10は、その下端部10cが、地盤G中の支持層Gsにまで到達するように形成されている。
【0018】
図2は、図1におけるI−I断面を示す図である。図中に示すように、補強構造体7の地下部7bは、壁体3の地下部3aに沿って形成されている。また、地中連続壁10は、その上部10b,10b,…が、断面視T字状または断面視矩形状に形成されるとともに、補強構造体7の地下部7bに沿って、間隔をおいて配置される。また、地中連続壁10の下部10aは、地盤G中に連続的に打設された柱状体17,17,…によって形成される。柱状体17は、地盤Gを構成する地盤土Sとセメントミルクとを混合した混合土からなるものであり、図示しないH型鋼を芯として形成される。
【0019】
以上が、保存建物1を改築する際の主要な構成であるが、次に、図4,5を参照して、保存建物1の改築方法について説明する。
保存建物1を改築するにあたっては、まず、壁体3を残して保存建物1の地上部分の解体を行い、残された壁体3に対しては、補強構造体7を設置しておく。このときの状況を示した図が、図4である。図4に示すように、補強構造体7の地下部7bは、保存建物1の地下部分1aにおける床スラブ19,19,…の一部を解体して、そこに鉄骨8の一部を挿通するとともに、挿通された鉄骨8の一部に対してコンクリートCを打設することにより形成される。このとき、打設されたコンクリートCにより、壁体3の地下部3aと補強構造体7の地下部7bとが一体化される。
【0020】
次に、補強構造体7に沿って、地中連続壁10を構築する。地中連続壁10の構築は、図5に示すように行われる。まず、図5(a)に示すように、まず、保存建物1の地下部分1aにおける床スラブ19,19,…のうち、補強構造体7の地下部7bに隣接する一部19a,19a,…を解体する。このとき、同時に、(b)に示すように、地下部分1aと補強構造体7の地下部7bとの間に、ジャッキ20を介装していくことにより、補強構造体7の安定化を図る。
【0021】
ついで、(c)に示すように、補強構造体7の地下部7bと保存建物1の地下部分1aとの間に位置する空間に、地中連続壁10を構築する。このとき、地中連続壁10の下部10aは、図示しないアースオーガーによって地盤Gに対して掘削孔を形成するとともに、この掘削孔に対してセメントミルクを注入して、柱状体17(図2参照)を形成し、さらに、この柱状体17を壁体3の延在する方向に連設することによって構築される。また、このとき、アースオーガーによる掘削は、支持層Gs(図1参照)に達するまで行われ、これにより、地中連続壁10の下端部10c(図1参照)が支持層Gs(図1参照)に到達することとなる。
【0022】
一方、地中連続壁10の上部10bは、一部の柱状体17において、芯材として配置された図示しないH型鋼を柱状体17の上端17aから突出状態としておき、この突出した部分に対しコンクリートCを打設することによって形成される。また、このようにして打設されたコンクリートCにより、補強構造体7の地下部7bと、地中連続壁10の上部10bとが一体的に結合されることとなる。
【0023】
このようにして、地中連続壁10を形成したら、残りの地下既存躯体を解体しながら切り梁を構築し、また、その一方で、保存建物1の地下部分1aを解体しつつ、切り梁12,12,…を設置していく。また、必要に応じて、地盤Gに対して、図1に示すように地盤アンカー13を打設し、地中連続壁10を支持させる。これにより、図1に示したような保存建物1の改築途中の状況が実現される。
この後、切り梁12,12,…を撤去しつつ、躯体4を地下部分から順次構築していく。これにより、新たな建物5(図3参照)が完成されることとなる。
【0024】
上述したような保存建物1の改築方法においては、壁体3に沿って地中連続壁10を形成し、さらに、地中連続壁10と壁体3とを一体的に結合した後に、保存建物1の地下部分1aを解体することとされている。
これにより、地中連続壁10を地盤アンカー13または切り梁12,12,…によって支持するようにすれば、解体工事時の壁体3の壁厚方向の変位を抑えることができる。したがって、本方法によれば、壁体3のように安定性の低い形状を持つ部分を残しつつ、保存建物1の改築工事を容易に進めることができる。
【0025】
また、この保存建物1の改築方法においては、地中連続壁10を構築するにあたって、あらかじめ、壁体3に対して補強構造体7が設置されるとともに、補強構造体7の地下部7bと壁体3の地下部3aとが一体化され、さらに、地中連続壁10を構築する際には、その上部10bが、補強構造体7の地下部7bを介して壁体3の地下部3aと一体化されることとされている。
したがって、保存建物1の解体工事を行うにあたって、壁体3を補強構造体7により良好に保護することができるとともに、工事中の壁体3の安定性を確実に保つことができる。
【0026】
さらに、この保存建物1の改築方法においては、地中連続壁10の下端部10cが支持層Gsに到達するように構築されているため、壁体3を地中連続壁10を介して支持層Gsにより支持させることができ、これにより、壁体3の沈下を防止して、改築工事を安全かつ効率的に行うことが可能となる。
【0027】
さらに、上述のようにして構築された新たな建物5は、保存建物1の一部をなす壁体3の地下部3aと、新規に構築された躯体4の地下部との間に地中連続壁10が設けられた構成とされる。これにより、上述のように、壁体3を地中連続壁10によって支持させておいた状態で、保存建物1の解体すべき部分の解体工事や躯体4の建築工事を行うことが可能であり、したがって壁体3を利用して新たな建物5を建築するための工事を安全かつ容易に行うことができる。
【0028】
なお、上記実施の形態において、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、その構成の一部を変化させるようにしても構わない。例えば、上記の実施の形態において示したような方法により改築される建物は、歴史的建築物に限らず、他の一般の既存の建物であってもよい。
また、上記実施の形態において、保存建物1や補強構造体7、あるいは、地中連続壁10等の各部の構造等について、仮設鉄骨補強等の他の構成を採用するようにしても構わない。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る建物の改築方法によれば、既存の建物のうち残すべき一部に沿って地中連続壁を構築し、さらに、地中連続壁と既存の建物の残すべき一部とを一体的に結合した後に、既存の建物の地下部のうち除去すべき部分を解体するという手順が採用されるため、地中連続壁によって、解体工事時における既存の建物のうちの残すべき一部の変位を抑えることができる。したがって、残すべき一部が、安定性の低い形状を持っていたとして、改築工事を容易に進めることが可能となる。
【0030】
請求項2に係る建物の改築方法によれば、地中連続壁を構築するにあたって、あらかじめ、既存の建物のうちの残すべき一部に対して補強構造体が設置されるとともに、補強構造体の地下部と残すべき一部の地下部とが一体化され、さらに、地中連続壁は、この補強構造体の地下部を介して上記の残すべき一部と一体化される。
したがって、既存の建物の解体工事を行うにあたって、既存の建物のうち残すべき一部を補強構造体により良好に保護することができるとともに、その安定性を確実に保つことができる。
【0031】
請求項3に係る建物の改築方法によれば、地中連続壁の下端部が支持層に到達するように構築されているため、既存の建物のうちの残すべき一部を地中連続壁を介して支持層により支持させることができ、これにより、上記の残すべき一部の沈下を防止して、改築工事を安全かつ効率的に行うことができる。
【0032】
請求項4に係る建物によれば、建物のうち、既存の建物の一部を利用した部分の地下部と新たに構築された躯体の地下部との間に、地中連続壁が設けられる構成とされるため、この建物を構築する際には、既存の建物の一部を地中連続壁によって支持させた状態で、既存の建物の他の部分の解体工事や躯体の新築工事を行うことが可能であり、これにより既存の建物の一部を利用して新たに建物を構築する際の工事を安全かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の建物の改築方法を用いて、保存建物(既存の建物)を新たな建物に改築する際の状況を示す立断面図である。
【図2】 図1におけるI−I矢視断面図である。
【図3】 本発明の建物の改築方法を用いて改築すべき保存建物(既存の建物)と、改築後の新たな建物とを示す平面図である。
【図4】 図1ないし3に示した保存建物(既存の建物)の地上部分を解体した際の状況を示す立断面図である。
【図5】 図1ないし4に示した保存建物(既存の建物)の一部に沿って、地中連続壁を構築する際の手順を示すための工程図である。
【符号の説明】
1 保存建物(既存の建物)
3 壁体(既存の建物の一部)
4 躯体
5 新たな建物
7 補強構造体
10 地中連続壁
10c 下端部
G 地盤
Gs 支持層
【発明の属する技術分野】
本発明は、既存の建物をその一部を残して解体・除去するとともに、該一部に隣接させて躯体を新規に構築し、これら既存の建物の一部および新規に構築された躯体を一体化して新たな建物とする建物の改築方法、およびこのようにして改築された建物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、建物を改築する際の一手法として、建物を一部を残したまま解体・除去するとともに、残した部分に隣接して新規に躯体を構築し、これら残した部分と新規に構築された躯体とを一体化して新たな建物とすることが行われる。
【0003】
このような手法は、特に歴史的建築物等の保存建物の保存および再生を図る際によく用いられる。例えば、当該建築物の外観意匠に歴史的価値があると見なされる場合には、歴史的価値のある外観意匠を構成する外壁のみを残し、この外壁を利用して新たな建物を建築する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えば、上述のように外壁のみを残して建物の解体・除去を行った場合、残された外壁が大規模なものであればあるほど、沈下や変位などの問題が生じやすくなる。したがって、このような問題を有効に解決し得るような技術が求められていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み行われたものであり、その目的は、既存建物をその一部を残して解体・除去するとともに、残された建物の一部を利用して新たに建物を建築する際に、残された既存建物の一部を安定的に支持しておくことを可能とするような建物の改築方法を提供することにある。また、別の目的は、このような方法を用いて建設することのできる建物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明においては以下の手段を採用した。
すなわち、請求項1記載の建物の改築方法は、既存の建物をその一部を残して解体・除去するとともに、該一部に隣接させて躯体を新規に構築し、これら既存の建物の一部および新規に構築された躯体を一体化して新たな建物とする建物の改築方法であって、
前記既存の建物の一部に沿って地中連続壁を構築するとともに、該一部および該地中連続壁を一体的に結合しておき、しかる後に前記既存の建物の地下部のうち除去すべき部分を解体することを特徴とする。
【0007】
この建物の改築方法は、上記のような構成とされるために、既存の建物の除去すべき部分を解体する作業を行う際に、既存の建物のうち残すべき部分を地中連続壁によって支持することができる。
【0008】
請求項2記載の建物の改築方法は、請求項1記載の建物の改築方法であって、前記地中連続壁を構築するにあたっては、あらかじめ、前記既存の建物の一部を補強する補強構造体を設置しておくとともに、該一部と該補強構造体とを、少なくともその地下部において一体化させておき、
前記地中連続壁と前記一部とを該補強構造体を介して一体的に結合することを特徴とする。
【0009】
この建物の改築方法は、上記のような構成とされるために、既存の建物のうち残されるべき一部が、壁体のような安定性の悪い構造であっても、これを補強構造体により安定的に支持することができる。
【0010】
請求項3記載の建物の改築方法は、請求項1または2記載の建物の改築方法であって、
前記地中連続壁は、その少なくとも下端部が、該地中連続壁が設置される地盤における支持層に到達するように構築されていることを特徴とする。
【0011】
上記のような構成とされるため、この建物の改築方法によれば、既存建物の内残すべき一部が、地中連続壁を介して支持層から支持されることとなる。
【0012】
請求項4記載の建物は、既存の建物をその一部を残して解体・除去するとともに、該一部に隣接させて躯体を新規に構築し、これら既存の建物の一部および新規に構築された躯体を一体化することによって形成される建物であって、
前記既存の建物の一部の地下部および前記躯体の地下部の間には、地中連続壁が設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記のような構成とされるために、この建物は、既存の建物の内の残されるべき一部を地中連続壁により支持しながら、躯体の構築作業を行うことができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
なお、ここで説明する実施の形態は、図3(a)に示すような既存の歴史的建築物等(保存建物1)において、その一部を保存しつつ、再生を図る工事を施す場合のものである。すなわち、保存建物1を、外観意匠の歴史的価値が高い外壁2の一部をなす壁体(既存の建物の一部)3を残し、解体・除去するとともに、この壁体3に隣接させて(b)に示すような躯体4を新規に構築し、これら壁体3および新規に構築された躯体4を一体化することにより、(b)に示すように新たな建物5を形成する。
【0015】
図1は、保存建物1を新たな建物5(図3参照)に改築途中の状況を示す図である。図中に示すように、歴史的建物1は、壁体3のみが残され、解体されている。また、保存建物1に隣接して、新たな建物5(図3参照)の躯体4が構築されることとなる。
【0016】
また、壁体3に対しては、解体工事中において壁体3の安定化を図るための補強構造体7が設けられている。補強構造体7は、その地上部7aが鉄骨8,8,…により構成された仮設の構造体とされるとともに、その地下部7bが、鉄骨8,に対してコンクリートCを打設することにより形成された本設の構造体とされている。また、この補強構造体7の地下部7bは、壁体3の地下部3aと一体化された構成とされている。
【0017】
また、図中に示すように、壁体3の地下部3aと躯体4が構築されるべき部分との間には、地中連続壁10が構築されている。地中連続壁10は、その下部10aが地盤G中に打設されるとともに、その上部10bが補強構造体7の地下部7bを介して壁体3の地下部3aと一体的に結合されており、なおかつ、切り梁12,12,…または地盤アンカー13,13,…によって側方への変位が規制された構成とされている。さらに、図中に示すように、地中連続壁10は、その下端部10cが、地盤G中の支持層Gsにまで到達するように形成されている。
【0018】
図2は、図1におけるI−I断面を示す図である。図中に示すように、補強構造体7の地下部7bは、壁体3の地下部3aに沿って形成されている。また、地中連続壁10は、その上部10b,10b,…が、断面視T字状または断面視矩形状に形成されるとともに、補強構造体7の地下部7bに沿って、間隔をおいて配置される。また、地中連続壁10の下部10aは、地盤G中に連続的に打設された柱状体17,17,…によって形成される。柱状体17は、地盤Gを構成する地盤土Sとセメントミルクとを混合した混合土からなるものであり、図示しないH型鋼を芯として形成される。
【0019】
以上が、保存建物1を改築する際の主要な構成であるが、次に、図4,5を参照して、保存建物1の改築方法について説明する。
保存建物1を改築するにあたっては、まず、壁体3を残して保存建物1の地上部分の解体を行い、残された壁体3に対しては、補強構造体7を設置しておく。このときの状況を示した図が、図4である。図4に示すように、補強構造体7の地下部7bは、保存建物1の地下部分1aにおける床スラブ19,19,…の一部を解体して、そこに鉄骨8の一部を挿通するとともに、挿通された鉄骨8の一部に対してコンクリートCを打設することにより形成される。このとき、打設されたコンクリートCにより、壁体3の地下部3aと補強構造体7の地下部7bとが一体化される。
【0020】
次に、補強構造体7に沿って、地中連続壁10を構築する。地中連続壁10の構築は、図5に示すように行われる。まず、図5(a)に示すように、まず、保存建物1の地下部分1aにおける床スラブ19,19,…のうち、補強構造体7の地下部7bに隣接する一部19a,19a,…を解体する。このとき、同時に、(b)に示すように、地下部分1aと補強構造体7の地下部7bとの間に、ジャッキ20を介装していくことにより、補強構造体7の安定化を図る。
【0021】
ついで、(c)に示すように、補強構造体7の地下部7bと保存建物1の地下部分1aとの間に位置する空間に、地中連続壁10を構築する。このとき、地中連続壁10の下部10aは、図示しないアースオーガーによって地盤Gに対して掘削孔を形成するとともに、この掘削孔に対してセメントミルクを注入して、柱状体17(図2参照)を形成し、さらに、この柱状体17を壁体3の延在する方向に連設することによって構築される。また、このとき、アースオーガーによる掘削は、支持層Gs(図1参照)に達するまで行われ、これにより、地中連続壁10の下端部10c(図1参照)が支持層Gs(図1参照)に到達することとなる。
【0022】
一方、地中連続壁10の上部10bは、一部の柱状体17において、芯材として配置された図示しないH型鋼を柱状体17の上端17aから突出状態としておき、この突出した部分に対しコンクリートCを打設することによって形成される。また、このようにして打設されたコンクリートCにより、補強構造体7の地下部7bと、地中連続壁10の上部10bとが一体的に結合されることとなる。
【0023】
このようにして、地中連続壁10を形成したら、残りの地下既存躯体を解体しながら切り梁を構築し、また、その一方で、保存建物1の地下部分1aを解体しつつ、切り梁12,12,…を設置していく。また、必要に応じて、地盤Gに対して、図1に示すように地盤アンカー13を打設し、地中連続壁10を支持させる。これにより、図1に示したような保存建物1の改築途中の状況が実現される。
この後、切り梁12,12,…を撤去しつつ、躯体4を地下部分から順次構築していく。これにより、新たな建物5(図3参照)が完成されることとなる。
【0024】
上述したような保存建物1の改築方法においては、壁体3に沿って地中連続壁10を形成し、さらに、地中連続壁10と壁体3とを一体的に結合した後に、保存建物1の地下部分1aを解体することとされている。
これにより、地中連続壁10を地盤アンカー13または切り梁12,12,…によって支持するようにすれば、解体工事時の壁体3の壁厚方向の変位を抑えることができる。したがって、本方法によれば、壁体3のように安定性の低い形状を持つ部分を残しつつ、保存建物1の改築工事を容易に進めることができる。
【0025】
また、この保存建物1の改築方法においては、地中連続壁10を構築するにあたって、あらかじめ、壁体3に対して補強構造体7が設置されるとともに、補強構造体7の地下部7bと壁体3の地下部3aとが一体化され、さらに、地中連続壁10を構築する際には、その上部10bが、補強構造体7の地下部7bを介して壁体3の地下部3aと一体化されることとされている。
したがって、保存建物1の解体工事を行うにあたって、壁体3を補強構造体7により良好に保護することができるとともに、工事中の壁体3の安定性を確実に保つことができる。
【0026】
さらに、この保存建物1の改築方法においては、地中連続壁10の下端部10cが支持層Gsに到達するように構築されているため、壁体3を地中連続壁10を介して支持層Gsにより支持させることができ、これにより、壁体3の沈下を防止して、改築工事を安全かつ効率的に行うことが可能となる。
【0027】
さらに、上述のようにして構築された新たな建物5は、保存建物1の一部をなす壁体3の地下部3aと、新規に構築された躯体4の地下部との間に地中連続壁10が設けられた構成とされる。これにより、上述のように、壁体3を地中連続壁10によって支持させておいた状態で、保存建物1の解体すべき部分の解体工事や躯体4の建築工事を行うことが可能であり、したがって壁体3を利用して新たな建物5を建築するための工事を安全かつ容易に行うことができる。
【0028】
なお、上記実施の形態において、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、その構成の一部を変化させるようにしても構わない。例えば、上記の実施の形態において示したような方法により改築される建物は、歴史的建築物に限らず、他の一般の既存の建物であってもよい。
また、上記実施の形態において、保存建物1や補強構造体7、あるいは、地中連続壁10等の各部の構造等について、仮設鉄骨補強等の他の構成を採用するようにしても構わない。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る建物の改築方法によれば、既存の建物のうち残すべき一部に沿って地中連続壁を構築し、さらに、地中連続壁と既存の建物の残すべき一部とを一体的に結合した後に、既存の建物の地下部のうち除去すべき部分を解体するという手順が採用されるため、地中連続壁によって、解体工事時における既存の建物のうちの残すべき一部の変位を抑えることができる。したがって、残すべき一部が、安定性の低い形状を持っていたとして、改築工事を容易に進めることが可能となる。
【0030】
請求項2に係る建物の改築方法によれば、地中連続壁を構築するにあたって、あらかじめ、既存の建物のうちの残すべき一部に対して補強構造体が設置されるとともに、補強構造体の地下部と残すべき一部の地下部とが一体化され、さらに、地中連続壁は、この補強構造体の地下部を介して上記の残すべき一部と一体化される。
したがって、既存の建物の解体工事を行うにあたって、既存の建物のうち残すべき一部を補強構造体により良好に保護することができるとともに、その安定性を確実に保つことができる。
【0031】
請求項3に係る建物の改築方法によれば、地中連続壁の下端部が支持層に到達するように構築されているため、既存の建物のうちの残すべき一部を地中連続壁を介して支持層により支持させることができ、これにより、上記の残すべき一部の沈下を防止して、改築工事を安全かつ効率的に行うことができる。
【0032】
請求項4に係る建物によれば、建物のうち、既存の建物の一部を利用した部分の地下部と新たに構築された躯体の地下部との間に、地中連続壁が設けられる構成とされるため、この建物を構築する際には、既存の建物の一部を地中連続壁によって支持させた状態で、既存の建物の他の部分の解体工事や躯体の新築工事を行うことが可能であり、これにより既存の建物の一部を利用して新たに建物を構築する際の工事を安全かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の建物の改築方法を用いて、保存建物(既存の建物)を新たな建物に改築する際の状況を示す立断面図である。
【図2】 図1におけるI−I矢視断面図である。
【図3】 本発明の建物の改築方法を用いて改築すべき保存建物(既存の建物)と、改築後の新たな建物とを示す平面図である。
【図4】 図1ないし3に示した保存建物(既存の建物)の地上部分を解体した際の状況を示す立断面図である。
【図5】 図1ないし4に示した保存建物(既存の建物)の一部に沿って、地中連続壁を構築する際の手順を示すための工程図である。
【符号の説明】
1 保存建物(既存の建物)
3 壁体(既存の建物の一部)
4 躯体
5 新たな建物
7 補強構造体
10 地中連続壁
10c 下端部
G 地盤
Gs 支持層
Claims (4)
- 既存の建物をその一部を残して解体・除去するとともに、該一部に隣接させて躯体を新規に構築し、これら既存の建物の一部および新規に構築された躯体を一体化して新たな建物とする建物の改築方法であって、
前記既存の建物の一部に沿って地中連続壁を構築するとともに、該一部および該地中連続壁を一体的に結合しておき、しかる後に前記既存の建物の地下部のうち除去すべき部分を解体することを特徴とする建物の改築方法。 - 請求項1記載の建物の改築方法であって、
前記地中連続壁を構築するにあたっては、あらかじめ、前記既存の建物の一部を補強する補強構造体を設置しておくとともに、該一部と該補強構造体とを、少なくともその地下部において一体化させておき、
前記地中連続壁と前記一部とを該補強構造体を介して一体的に結合することを特徴とする建物の改築方法。 - 請求項1または2記載の建物の改築方法であって、
前記地中連続壁は、その少なくとも下端部が、該地中連続壁が設置される地盤における支持層に到達するように構築されていることを特徴とする建物の改築方法。 - 既存の建物をその一部を残して解体・除去するとともに、該一部に隣接させて躯体を新規に構築し、これら既存の建物の一部および新規に構築された躯体を一体化することによって形成される建物であって、
前記既存の建物の一部の地下部および前記躯体の地下部の間には、地中連続壁が設けられていることを特徴とする建物。
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