JP7028533B2 - 中空構造板 - Google Patents

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Description

本発明は、中空構造板に関する。より詳しくは、反りが低減された中空構造板に関する。
樹脂製の中空構造板は、軽量で、かつ、耐薬品性、耐水性、断熱性、遮音性及び復元性に優れ、取り扱いも容易であることから、箱材や梱包材などの物流用途、壁や天井用のパネル材などの建築用途、更には、自動車用途などの幅広い分野に使用されている。例えば、特許文献1には、所定の間隔を隔てて平行に配置された合成樹脂素材製の2枚のシートの間に、所定のピッチで凹凸波形が繰り返された合成樹脂素材製の波形部材が挟持された状態の中空構造板が開示されている。
また、特許文献2には、2枚の熱可塑性樹脂シートに突設された複数の凸部が突き合わされた状態で熱融着された構成の所謂「ツインコーン」(登録商標)タイプの中空構造板が開示されている。このタイプの中空構造板は、自動車内装材、物流資材、建材などの様々な分野で使用されている。
このような中空構造板は、特許文献1~5などに開示されているように、複数の凸部が形成された熱可塑性樹脂シートに、更に1又は2以上の熱可塑性樹脂シートを積層し、融着することにより製造されている。しかし、積層される熱可塑性樹脂シートの表面側と裏面側との間に冷却収縮の差が生じることにより、完成品である中空構造板に反りが発生してしまうという問題があった。
この反りの問題に関連する技術として、特許文献6では、二層以上の多層構造を持つ中空押出成形体において、内層と外層の融点に差をつけ、外層の方が2~18℃低温とすることにより、内層と外層とが同時に固化するようにして収縮率を揃え、反りを制御する技術が開示されている。
特開2003-170515号公報 特開2007-83407号公報 国際公開第2003/80326号パンフレット 特開2010-99867号公報 特開2008-213262号公報 特開平8-11184号公報
しかし、前述した技術は、同心円状の成形物で、製造に用いる樹脂に制約が生じ、かつ、2層構造に限定されるといった問題があった。そこで、反りを低減するための更なる技術の開発が求められていた。
そこで、本発明では、このような実情に鑑み、反りが低減された中空構造板を提供することを主目的とする。
本願発明者は、中空構造板の構造について鋭意研究を行った結果、ある箇所の角度や距離に着目し、これらの値を所定の範囲に制御することより、反りが低減された中空構造板が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明では、中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された1枚の熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シートの上面側に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材が積層され、前記表面材は前記凸部の上面部に面で接する凹部を備えた中空構造板において、前記凸部の上面部と前記表面材との接触面は、楕円面、又は長軸を回転軸とした回転楕円面であり、前記凹部の上面側周縁及び前記凸部の下面側周縁は、楕円形状であり、前記接触面における長軸の始点から、前記接触面における長軸の終点へ延びる第1仮想水平線と、前記接触面における長軸の始点側の、前記凹部の上面側周縁における長軸の始点から、前記接触面における長軸の始点へ延びる第1仮想傾斜線と、が前記凹部の内側になす角θ1が、120°≦θ1≦150°であり、前記第1仮想水平線と、前記接触面における長軸の始点側の、前記凸部の下面側周縁における長軸の始点から、前記接触面における長軸の始点へ延びる第2仮想傾斜線と、が前記凸部の内側になす角θ2が、110°≦θ2≦140°であり、かつ、前記第1仮想水平線から、前記凹部の上面側周縁における長軸の始点から、前記凹部の上面側周縁における長軸の終点へ延びる第2仮想水平線までの距離dが、d≧50μmである、中空構造板を提供する。
本発明において、前記接触面が、長軸を回転軸とした回転楕円面である場合、前記第1仮想水平線に対し、前記接触面における長軸の始点における前記上面部の弧の接線が、前記接触面側になす角度θ3を、-50°≦θ3≦50°とすることができる。
本発明によれば、反りが低減された中空構造板を提供することができる。なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
本発明に係る中空構造板1の第1実施形態の構造を模式的に示す斜視図である。 本発明に係る中空構造板1の第1実施形態の断面構造を模式的に示す断面模式図である。 図2中、破線で囲まれた部分の拡大模式図である。 本発明に係る中空構造板1の第2実施形態の断面構造の部分拡大を模式的に示す断面部分拡大模式図である。 Aは、中空凸部成形シート2の第1実施形態の構造を模式的に示す斜視図であり、Bは、Aの矢印方向から視た場合の模式図である。 本発明に係る中空構造板1の第3実施形態の構造を模式的に示す斜視図である。 本発明に係る中空構造板1の第4実施形態の構造を模式的に示す斜視図である。 本発明に係る中空構造板1の第5実施形態の構造を模式的に示す斜視図である。 本発明に係る中空構造板1の第6実施形態の構造を模式的に示す斜視図である。 中空凸部成形シート2の第2実施形態の構造を模式的に示す斜視図である。 本発明に係る中空構造板1の製造方法の一例を示す概念図である。 中空構造板の反りの測定方法を示す図である。
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
1.中空構造板1
図1は、本発明に係る中空構造板1の第1実施形態の構造を模式的に示す斜視図であり、図2は、本発明に係る中空構造板1の第1実施形態の断面構造を模式的に示す断面模式図である。本発明に係る中空構造板1は、中空状の凸部21が間隔をあけて複数形成された1枚の熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シート2の上面側に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材3が積層され、表面材3は凸部21の上面部211に接する凹部31を備えている。
本発明では、表面材3に凹部31を備えている。フラットな平面シートであると、シート面内において連続的な残留応力が生じるため、表面材の収縮が全面に渡り生じる。これに対し、凹部31を設けることにより、凸部21の上面部縁と表面材3との接点において、収縮が打ち消しあうことで、中空構造板1の反りを制御することができる。
より具体的には、表面材3の傾斜部32は該傾斜部32と水平方向に分子配向し、残留応力の方向性も該傾斜部32と水平方向に生じる。また、中空凸部成形シート2の傾斜部213は該傾斜部213と水平方向に分子配向し、残留応力の方向性も該傾斜部213と水平方向に生じる。これらは硬化収縮する際に分子配向方向に収縮するが、表面材3の傾斜部32と中空凸部成形シート2の傾斜部213とでは方向性が異なり、これらの応力を合わせてもゼロにはならない。そこで、表面材3に凹部31を設けることにより、表面材3におけるくぼみ面(第1仮想水平線が存在する水平面)の収縮力とこれら2つの応力の和がゼロとなるようにすることで、収縮が打ち消し合うため、反りの低減を図ることができる。
図3は、図2中、破線で囲まれた部分の拡大模式図である。本発明では、凸部21の上面部縁と表面材3との接点を通る第1仮想水平線と、凹部31の上面側の起点から前記接点へ延びる第1仮想傾斜線と、がなす角θ1(図3参照)が、120°≦θ1≦150°であり、前記第1仮想水平線と、凸部21の下面側の起点から前記接点へ延びる第2仮想傾斜線と、がなす角θ2(図3参照)が、110°≦θ2≦140°であり、かつ、前記第1仮想水平線から、凹部31の上面側の起点を通る第2仮想水平線までの距離d(図3参照)が、d≧50μmであることを特徴とする。この範囲でθ1、θ2及びdを制御することにより、反りが低減された中空構造板1を提供できる。
θ1<120°では、前記接点付近の樹脂の成形が甘くなり、凹部31の形状が得られない。また、θ1>150°では、表面材3において平面との差異が少なくなり、反りの低減効果が得られにくい。
θ2<110°では、前記接点付近の樹脂の成形ができず、凸部21の形状が得られない。また、θ2>140°では、凸部21の角度が緩くなり、中空構造板の剛性が十分に得られない。
本発明では、130°≦θ1≦150°とすることが好ましい。また、120°≦θ2≦140°とすることが好ましい。これにより、より反りが低減された中空構造板1を提供できる。
また、本発明では、d≧50μmとすることにより、表面材3の収縮が水平方向に加え、垂直方向へ働くようになり、反りの低減効果が発現する。より具体的には、表面材3の傾斜部32の傾斜方向の応力、中空凸部成形シート2の傾斜部213の傾斜方向の応力、及び表面材3におけるくぼみ面の収縮力の3つの力がつり合うようになるため、収縮を低減することができる。なお、d<50μmでは、凹部31のくぼみが小さくなり過ぎて、表面材3自体が平面状に近くなり、表面材3の傾斜部32の垂直方向の応力が発生しにくくなるため、反りの低減効果が得られにくい。
本発明では、d≧100μmとすることが好ましく、d≧200μmとすることがより好ましい。これにより、より反りが低減された中空構造板1を提供できる。
なお、本明細書では、図2に示すように、便宜上、凸部21の上面部側又は表面材3が積層されている側を「上面側」、凸部21の開口部側を「下面側」と称しているが、実際の製品である中空構造板1においては、これらの区別はないものとする。
図4は、本発明に係る中空構造板1の第2実施形態の断面構造の部分拡大を模式的に示す断面部分拡大模式図である。本発明に係る中空構造板1において、凸部21の上面部211が弧である場合、前記接点における前記弧の接線と、前記第1仮想水平線と、がなす角度θ3は、-50°≦θ3≦50°であることが好ましい。これにより、より反りが低減された中空構造板1を提供できる。なお、本明細書では、図4において、第一仮想水平線から反時計周りに接線を引くときはθ3を+(プラス)とし、時計回りに接線を引くときはθ3を-(マイナス)と規定する。
中空構造板1の目付は特に限定されないが、300~3000g/m2とすることが好ましく、400~2000g/m2とすることがより好ましく、450~1000g/m2とすることが特に好ましい。これにより、中空構造板1の軽量化を図ることができる。
中空構造板1の厚みも特に限定されないが、1.5~55mmとすることが好ましい。1.5mm以上とすることにより、中空構造板1の厚みが薄くなり過ぎることを防ぎ、曲げ剛性が保持された中空構造板1を作製できる。また、55mm以下とすることにより、中空凸部成形シート2における凸部21の高さを制御でき、凸部21の側壁の厚みがドラフトされて薄くなり過ぎることを防げるため、変形(座屈)が発生しにくい中空構造板1を作製できる。
本発明に係る中空構造板1の構造は特に限定されないものの、図1に示すように、中空凸部成形シート2が一方の面に楕円錐台形状又は円錐台形状の凸部21が複数形成された1枚の熱可塑性樹脂シートからなり、凸部21の上面部側に表面材3が積層された構造とすることができる。なお、この構造の中空構造板は、例えば、後述する図11に示す製造方法等により製造することができる。
<中空凸部成形シート2>
中空凸部成形シート2は、中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された1枚の熱可塑性樹脂シートからなる。
中空凸部成形シート2は、図1等に示すように、中空凸部成形シート2の一方の面にのみ凸部21が形成されていてもよいし、図6及び8に示すように、中空凸部成形シート2の両面に凸部21が形成されていてもよい。
凸部21は、図2に示すように、少なくとも上面部211及び開口部212を有していれば、その形態は特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、図1等で示した楕円錐台形状又は円錐台形状、図8で示した三角錐台形状、図7で示した四角錐台形状、五角錐台形状等の多角錐台形状など、様々な形状に設計することができる。また、図9で示したように、これらの形状を組み合わせた形態に設計することもできる。
なお、本発明では、後述する表面材3や表皮材4が中空凸部成形シート2に積層された際に、起点を少なくして表面材3や表皮材4からの剥離強度を向上させるため、図8に示すように、多角錐台形状、多角柱形状等の角を丸く設計することもできる。
本発明では、これらの中でも特に、凸部21を楕円錐台形状、円錐台形状又は多角錐台形状に設計することが好ましい。これにより、製造工程における設計を容易化できることに加え、金型を用いて凸部21を成形する場合、金型の製造コストを削減することもできる。
また、本発明では、凸部21を楕円錐台形状又は円錐台形状に設計することが特に好ましい。凸部21の形状をこれらの形状に設計した場合、表面材3におけるくぼみ面が均等に収縮するため、より反りが低減された中空構造板1を提供できる。
更に、本発明では、凸部21のアスペクト比は特に限定されないが、1.3以下が好ましく、1.23以下がより好ましい。これにより、より反りが低減された中空構造板1を提供できる。また、この場合、凸部21は、楕円錐台形状又は円錐台形状に設計することが好ましい。これにより、応力が中心部に均等に集まって打ち消し合うため、より反りが低減された中空構造板1を提供できる。なお、本明細書では、凸部21のアスペクト比とは、凸部21の開口部212の、長径方向の長さa1と短径方向の長さa2との比(a1/a2)と規定する。
本発明では、複数の凸部21は、全て同一の形態であってもよいし、2種以上の形態を自由に選択して組み合わせてもよい。また、本発明では、図9に示すように、凸部21の途中に段差を設けたり、凸部21の途中にウェーブを設けたりすることも可能である。
中空凸部成形シート2において、凸部21の開口部212から仮想される水平面と凸部21とがなす角度θ4(図2参照)は特に限定されないが、45°以上であることが好ましい。θ4を45°以上とした場合、例えば、中空構造板1に対し、外側から荷重をかけた際に、十分な強度を得ることができる。これは、単位面積あたりの凸部21の数が多くなるため、表面材3と上面部211との総接着面積が大きくなり、表面材3からの剥離が防止できることや、その凸部21の形状に由来した厚さ方向の強度が向上することなどに由来すると考えられる。
更に、θ4は、45°以上80°未満であることがより好ましい。これにより、本発明に係る中空構造板1の剛性を向上させることができる。なお、本発明において、θ4は常に一定でなくてもよく、凸部21が中心軸に対して非対称な形状であってもよい。
また、本発明において、凸部21の形状を楕円錐台形状又は円錐台形状に設計した場合、上面部211の径の長さは特に限定されないが、1.5~8mmとすることが好ましい。これにより、中空構造板1の厚さ方向における圧縮強度を向上させることができる。
また、本発明において、凸部21の形状を楕円錐台形状又は円錐台形状に設計した場合、開口部212の径の長さは特に限定されないが、3~15mmとすることが好ましい。これにより、中空構造板1の厚さ方向における圧縮強度を向上させることができる。
中空凸部成形シート2において、2つの凸部21における開口部212間の最短距離L(図5のB参照)は特に限定されないが、5mm以下とすることが好ましい。Lを5mm以下とすることにより、単位面積あたりの凸部21の数が多くなり、厚さ方向において十分な圧縮強度を得ることができる。
更に、Lは、1.5mm以下とすることがより好ましい。Lを1.5mm以下とすることにより、本発明に係る中空構造板1において、反りを制御し易くなる。
また、Lは、0.5mm以上とすることが好ましい。Lを0.5mm以上とすることにより、ライナー部(凸部21を一定の方向から視た場合に凸部21が存在しない部分;図5のB参照)の賦形性が向上する。なお、本発明において、Lは常に一定でなくてもよい。
本発明において、凸部21の配列形態は特に限定されず、例えば、凸部21を、格子状、千鳥状又は不規則に配列させることができる。本発明では、これらの中でも特に、千鳥状に凸部21を配列させることが好ましい。これにより、本発明に係る中空構造板1の厚さ方向における圧縮強度を保持しつつ、より反りが低減された中空構造板1を提供できる。
なお、本明細書では、千鳥状に凸部21を配置させることには、図8に示すように、所定の基準方向に沿って視たときに、隣接するもの同士が互い違うように配置される状態も含まれるものとする。
また、凸部21を千鳥状に配列させた場合、横方向の凸部21の中心同士を結んだ線と斜め方向の凸部21の中心同士を結んだ線とがなす角度θ5(図5のB参照)は特に限定されないが、60°とすることが好ましい。これにより、中空構造板1の剛性を向上できる。なお、「四角格子状」とは、θ5=90°とした場合の配列を意味する。
上面部211の形態は特に限定されず、楕円、真円、三角形、四角形等の多角形等にすることができるが、楕円又は真円とすることが特に好ましい。
開口部212の形態も特に限定されず、楕円、真円、三角形、四角形等の多角形等にすることができるが、楕円又は真円とすることが特に好ましい。
凸部21の高さh(図2参照)も特に限定されないが、1.3mm以上であることが好ましい。hを1.3mm以上とすることにより、剛性が高い中空構造板1を得ることができる。また、hは、50mm以下であることが好ましい。hを50mm以下とすることにより、凸部21の側壁部分が薄くなり過ぎるのを防ぎ、中空凸部成形シート2の変形(座屈)を防ぐことができる。
本発明では、中空凸部成形シート2の構造として、シートの一部に、図10に示すような流路Fが存在する構造を採用することもできる。本発明において、流路Fの形状、断面の構造等は特に限定されない。なお、図10に示す矢印kは、流路Fの形成方向を示す。流路Fを形成する方向も特に限定されず、例えば、図10に示すように、矢印g方向から視て斜め方向に流路Fを形成することができる。
中空凸部成形シート2の材質は熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、通常、中空構造板に用いることが可能な熱可塑性樹脂を、1種又は2種以上自由に組み合わせて用いることができる。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
中空凸部成形シート2の材質としては、中でも特に、加工性、コスト、重量及び物性の観点から、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー等のオレフィン系樹脂が好ましい。また、本発明では、更に高い剛性を得るため、ABS樹脂、ポリカーボネート等のエンジニアリング・プラスチックを用いることもできる。
中空凸部成形シート2の目付は特に限定されないが、250g/m2以上とすることが好ましい。目付を250g/m2以上とすることにより、凸部21を良好に成形することができる。
本発明では、中空凸部成形シート2や、後述する表面材3及び表皮材4を形成する熱可塑性樹脂には、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等のフィラー、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維等のチョップドストランドを添加してもよい。
また、中空凸部成形シート2や、後述する表面材3及び表皮材4を形成する熱可塑性樹脂には、難燃性、導電性、濡れ性、滑り性及び耐候性などを向上させるための改質剤や顔料等の着色剤などを添加してもよい。
なお、中空凸部成形シート2や、後述する表面材3及び表皮材4は、同じ材料で形成されていてもよいが、熱融着可能な範囲で相互に異なる材料で形成してもよい。
<表面材3>
本発明では、前述した中空凸部成形シート2の上面側に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材3が積層されている。また、表面材3は、凸部21の上面部211に接する凹部31を備えている。なお、本発明では、図9に示すように、この表面材3に、更に後述する表皮材4が積層されていてもよい。
表面材3の材質は熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、通常、中空構造板に用いることが可能な熱可塑性樹脂を、1種又は2種以上自由に組み合わせて用いることができる。なお、熱可塑性樹脂の具体例は前述したものと同様であるため、ここでは説明を割愛する。
表面材3の材質としては、中でも特に、加工性、コスト、重量及び物性の観点から、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー、ポリプロピレンブロックコポリマー等のオレフィン系樹脂が好ましい。また、本発明では、更に高い剛性を得るため、ABS樹脂、ポリカーボネート等のエンジニアリング・プラスチックを用いることもできる。
表面材3の目付は特に限定されないが、100g/m2以上とすることが好ましく、200g/m2以上とすることがより好ましい。目付を100g/m2以上とすることにより、中空凸部成形シート2に表面材3を積層する際に、表面材3が薄くなり過ぎて破けることを防止できる。
表面材3の厚みも特に限定されないが、0.1mm以上とすることが好ましい。0.1mm以上とすることにより、中空構造板1の剛性を保持できる。
本発明では、中空構造板1が表面材3を複数有していてもよく、この場合、複数の表面材3の厚みは同一としてもよいし、異なるものであってもよい。また、各表面材を、同一の材質で形成することもできるし、異なる材質で形成することもできる。
<表皮材4>
本発明では、前述した中空凸部成形シート2の下面側や前述した表面材3に、図9に示すように、更に表皮材4を積層することができる。本発明に係る中空構造板1が表皮材4を備えることにより、中空構造板1に対し、意匠性、吸音特性、断熱性等の用途に応じた特性を付与することができる。
表皮材4の材質は特に限定されず、通常、中空構造板の表皮材として用いることができる材料を、目的の用途などに応じて自由に選択して用いることができる。例えば、熱可塑性樹脂シート、樹脂製の織布、不織布、組布、編み物、ステンレス、アルミニウム、銅等からなる金属シート、有機系又は無機系多孔質シート等が挙げられる。また、複数の同種又は異種のシートを積層した積層シート等を表皮材として用いることも可能である。
本発明では、中空構造板1は表皮材4を複数有していてもよく、この場合、複数の表皮材4の厚みは同一としてもよいし、異なるものであってもよい。また、各表皮材を、同一の材質で形成することもできるし、異なる材質で形成することもできる。
2.中空構造板1の製造方法
本発明に係る中空構造板1は、その構造に特徴があるため、その製造方法は特に限定されない。すなわち、本発明に係る中空構造板1の製造には、通常、中空構造板を製造する際に用いられる方法を、1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。なお、図11において、矢印jは中空構造板1の流れ方向を示す。
図11は、本発明に係る中空構造板1の製造方法の一例を示す概念図である。図11で示した製造方法では、まず、溶融状態の熱可塑性樹脂Pを、金型D1、D2で両側からプレスすることにより、図5で示した構造の中空凸部成形シート2を製造する。次に、先端にTダイ101が設けられた押出機102から、熱可塑性樹脂を押し出してシート状にした表面材3を、加熱手段が設けられたローラーRを用いて熱融着により中空凸部成形シート2に積層し、本発明に係る中空構造板1を製造する。
なお、図11で示した製造方法において、詳細な製造条件等は特に限定されないが、60~180℃で軟化した中空凸部成形シート2に対し、120~250℃の溶融状態の表面材3を、ローラーRにおいて2~30kg/cm2で加圧圧着することが好ましい。これにより、凹部31の成形性が良好となる。
なお、図示しないが、表皮材4を中空構造板1に積層する場合は、前述した図11で示した製造方法において、加熱手段が設けられたローラーRや、表面が平坦な平ローラーなどにより、中空凸部成形シート2や表面材3に、更に表皮材4を積層する製造方法等を採用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
1.試験方法及び試験結果
まず、以下の表1に示す実施例1~6及び比較例1~4の中空構造板を作製した。実施例1~6及び比較例1~4の中空構造板は図1及び2で示した構造を図11で示した製造方法により作製した。
Figure 0007028533000001
なお、表1中、PPはポリプロピレン、PCはポリカーボネート、PVCはポリ塩化ビニルを示す。また、表1中の、θ1、θ2及びdの定義は、本明細書中で記載したものと同様である。
表1中の各数値(θ1、θ2及びd)は、中空構造板の断面からマイクロスコープを用いて測定した。
次に、各中空構造板における「反り」について評価を行った。
[反りの評価方法]
図12に示すように、中空構造板(幅1250mm×長さ1250mm)の四隅を含む8箇所において、ステンレス製の直尺定規を用い、定盤に載せ、各中空構造板の定盤からの浮き上がり高さを測定した。表1には、8箇所の反りの測定結果のうち、浮き上がり高さの最大値を記載した。
2.考察
実施例1~6の中空構造板は、反りがいずれも3mm以下であり、反りが低減されていた。一方で、比較例1~4の中空構造板は、反りがいずれも8mm以上であり、実施例1~6の中空構造板と比較すると、反りが低減されていなかった。
したがって、本試験結果から、凸部の上面部縁と表面材との接点を通る第1仮想水平線と、凹部の上面側の起点から前記接点へ延びる第1仮想傾斜線と、がなす角θ1を、120°≦θ1≦150°とし、前記第1仮想水平線と、前記凸部の下面側の起点から前記接点へ延びる第2仮想傾斜線と、がなす角θ2を、110°≦θ2≦140°とし、かつ、前記第1仮想水平線から、前記凹部の上面側の起点を通る第2仮想水平線までの距離dを、d≧50μmとすることにより、反りが低減された中空構造板が提供できることが分かった。
本発明によれば、反りが低減された中空構造板を提供することが可能である。そのため、本発明に係る中空構造板は、箱材や梱包材等の物流用途、壁や天井用のパネル材等の建築用途、自動車の内装等の幅広い分野において好適に用いることができる。
1:中空構造板
2:中空凸部成形シート
21:凸部
211:上面部
212:開口部
213:中空凸部成形シート2の傾斜部
3:表面材
31:凹部
32:表面材3の傾斜部
4:表皮材
101:Tダイ
102:押出機
R:加熱手段が設けられたローラー
D1、D2:金型
P:溶融状態の熱可塑性樹脂
θ1:凸部21の上面部縁と表面材3との接点を通る第1仮想水平線と、凹部31の上面側の起点から前記接点へ延びる第1仮想傾斜線と、がなす角
θ2:前記第1仮想水平線と、凸部21の下面側の起点から前記接点へ延びる第2仮想傾斜線と、がなす角
θ3:凸部21の上面部211が弧である場合、前記接点における前記弧の接線と、前記第1仮想水平線と、がなす角度
θ4:凸部21の開口部212から仮想される水平面と凸部21とがなす角度
θ5:横方向の凸部21の中心同士を結んだ線と斜め方向の凸部21の中心同士を結んだ線とがなす角度
h:凸部21の高さ
L:凸部21の開口部212間の最短距離
F:流路
g:矢印
k:流路Fの形成方向
j:中空構造板1の流れ方向

Claims (2)

  1. 中空状の凸部が間隔をあけて複数形成された1枚の熱可塑性樹脂シートからなる中空凸部成形シートの上面側に、熱可塑性樹脂シートからなる表面材が積層され、前記表面材は前記凸部の上面部に面で接する凹部を備えた中空構造板において、
    前記凸部の上面部と前記表面材との接触面は、楕円面、又は長軸を回転軸とした回転楕円面であり、
    前記凹部の上面側周縁及び前記凸部の下面側周縁は、楕円形状であり、
    前記接触面における長軸の始点から、前記接触面における長軸の終点へ延びる第1仮想水平線と、
    前記接触面における長軸の始点側の、前記凹部の上面側周縁における長軸の始点から、前記接触面における長軸の始点へ延びる第1仮想傾斜線と、
    が前記凹部の内側になす角θ1が、120°≦θ1≦150°であり、
    前記第1仮想水平線と、
    前記接触面における長軸の始点側の、前記凸部の下面側周縁における長軸の始点から、前記接触面における長軸の始点へ延びる第2仮想傾斜線と、
    が前記凸部の内側になす角θ2が、110°≦θ2≦140°であり、かつ、
    前記第1仮想水平線から、前記凹部の上面側周縁における長軸の始点から、前記凹部の上面側周縁における長軸の終点へ延びる第2仮想水平線までの距離dが、d≧50μmである、中空構造板。
  2. 前記接触面が、長軸を回転軸とした回転楕円面である場合、前記第1仮想水平線に対し、前記接触面における長軸の始点における前記上面部の弧の接線が、前記接触面側になす角度θ3が、-50°≦θ3≦50°である、請求項1に記載の中空構造板。
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