<第1実施形態>
以下、本発明に係る駆動装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、制御システムは、直流電源10、電力変換器としてのインバータ20、回転電機30及び制御装置40を備えている。回転電機30は、例えば車載主機である。回転電機30は、インバータ20を介して直流電源10に電気的に接続されている。本実施形態において、回転電機30は、3相のものが用いられている。回転電機30としては、例えば、永久磁石同期機を用いることができる。また、直流電源10は、例えば蓄電池である。なお、直流電源10には、コンデンサ11が並列接続されている。
インバータ20は、3相分の上,下アームスイッチを備えている。上,下アームのそれぞれは、並列接続された第1スイッチSW1及び第2スイッチSW2で構成されている。各相において、上アームの第1,第2スイッチSW1,SW2の高電位側端子には、コンデンサ11の第1端が接続されている。各相において、上アームの第1,第2スイッチSW1,SW2の低電位側端子には、下アームの第1,第2スイッチSW1,SW2の高電位側端子が接続されている。各相において、下アームの第1,第2スイッチSW1,SW2の低電位側端子には、コンデンサ11の第2端が接続されている。各相において、上アームの第1,第2スイッチSW1,SW2の低電位側端子と、下アームの第1,第2スイッチSW1,SW2の高電位側端子との接続点には、回転電機30の巻線31の第1端が接続されている。各相の巻線31の第2端は、中性点で接続されている。
本実施形態において、第1,第2スイッチSW1,SW2は、SiデバイスとしてのIGBTである。このため、第1,第2スイッチSW1,SW2において、高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。なお、第1,第2スイッチSW1,SW2には、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。第1,第2スイッチSW1,SW2は、互いに同じ仕様の半導体スイッチング素子であり、閾値電圧Vthの設計値が互いに同じである。閾値電圧は、オン状態及びオフ状態のうち、一方の状態から他方の状態へとスイッチング状態を切り替えるためのゲート電圧である。
制御装置40は、回転電機30の制御量をその指令値に制御すべく、各相において、上アームの第1,第2スイッチSW1,SW2と下アームの第1,第2スイッチSW1,SW2とを交互にオン状態とする。制御量は、例えばトルクである。制御装置40は、信号生成部に相当し、第1,第2スイッチSW1,SW2に対する共通の駆動信号Grとして、オン状態を指示するオン指令又はオフ状態を指示するオフ指令を、各相各アームにおける第1,第2スイッチSW1,SW2の組に対して個別に設けられた駆動回路50に対して出力する。本実施形態において、駆動信号Grが第1,第2スイッチSW1,SW2に対して共通であるとは、各相各アームにおける第1,第2スイッチSW1,SW2に対する駆動信号Grが、同じ制御装置40で生成されることである。
図2に示すように、制御システムは、絶縁伝達部60を備えている。絶縁伝達部60は、各駆動回路50に対して個別に設けられている。各駆動回路50は、第1駆動制御部70及び第2駆動制御部80を備えている。第1,第2スイッチSW1,SW2のうち、第1スイッチSW1が第1駆動制御部70の駆動対象として割り振られ、第2スイッチSW2が第2駆動制御部80の駆動対象として割り振られている。第1駆動制御部70及び第2駆動制御部80は、集積回路で構成されている。各駆動回路50に対応する絶縁伝達部60は、第1駆動制御部70及び第2駆動制御部80に対して共通化されている。
制御システムでは、第2領域に相当する高電圧領域と、第1領域に相当する低電圧領域とが設けられている。高電圧領域は、低電圧領域と電気的に絶縁されている。低電圧領域には、制御装置40が設けられ、高電圧領域には、駆動回路50及びインバータ20の各スイッチSW1,SW2が設けられている。絶縁伝達部60は、低電圧領域及び高電圧領域の間を電気的に絶縁しつつ、制御装置40により生成された駆動信号Grを第1,第2駆動制御部70,80に伝達する。絶縁伝達部60は、例えば、フォトカプラ又は磁気カプラである。絶縁伝達部60は、高電圧領域と低電圧領域とを跨いで設けられている。
第1駆動制御部70は、第1充電スイッチ71、第1放電スイッチ72、第1充電制御部73及び第1放電制御部74を備えている。本実施形態において、第1充電スイッチ71はPチャネルMOSFETであり、第1放電スイッチ72はNチャネルMOSFETである。第1充電スイッチ71のソースには、電源61から直流の電源電圧VDが供給される。第1充電スイッチ71のドレインには、第1スイッチSW1のゲートが接続されている。第1スイッチSW1のゲートには、第1放電スイッチ72のドレインが接続され、第1放電スイッチ72のソースには、第1スイッチSW1のエミッタが接続されている。
第2駆動制御部80は、第2充電スイッチ81、第2放電スイッチ82、第2充電制御部83及び第2放電制御部84を備えている。本実施形態において、第2充電スイッチ81はPチャネルMOSFETであり、第2放電スイッチ82はNチャネルMOSFETである。第2充電スイッチ81のソースには、電源61から直流の電源電圧VDが供給される。第2充電スイッチ81のドレインには、第2スイッチSW2のゲートが接続されている。第2スイッチSW2のゲートには、第2放電スイッチ82のドレインが接続され、第2放電スイッチ82のソースには、第2スイッチSW2のエミッタが接続されている。
第1駆動制御部70及び第2駆動制御部80には、制御装置40により生成された駆動信号Grが絶縁伝達部60を介して入力される。入力された駆動信号Grがオン指令である場合、第1充電制御部73により第1充電スイッチ71がオン状態とされ、第1放電制御部74により第1放電スイッチ72がオフ状態とされる。これにより、電源電圧VDが第1スイッチSW1のゲートに供給され、第1スイッチのゲート電圧が閾値電圧Vth以上となり、第1スイッチSW1がオン状態とされる。
入力された駆動信号Grがオン指令である場合、第2充電制御部83により第2充電スイッチ81がオン状態とされ、第2放電制御部84により第2放電スイッチ82がオフ状態とされる。これにより、電源電圧VDが第2スイッチSW2のゲートに供給され、第2スイッチSW2のゲート電圧が閾値電圧Vth以上となる。その結果、第2スイッチSW2がオン状態とされる。
一方、入力された駆動信号Grがオフ指令である場合、第1充電制御部73により第1充電スイッチ71がオフ状態とされ、第1放電制御部74により第1放電スイッチ72がオン状態とされる。これにより、第1スイッチSW1のゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、第1スイッチSW1がオフ状態とされる。
入力された駆動信号Grがオフ指令である場合、第2充電制御部83により第2充電スイッチ81がオフ状態とされ、第2放電制御部84により第2放電スイッチ82がオン状態とされる。これにより、第2スイッチSW2のゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、第2スイッチSW2がオフ状態とされる。
本実施形態において、第2駆動制御部70,80に対して絶縁伝達部60が共通化された構成が採用されているのは、電流アンバランスの発生を抑制するためである。電流アンバランスは、各スイッチSW1,SW2のオン状態への切り替えタイミングが大きくずれたり、各スイッチSW1,SW2のオフ状態への切り替えタイミングが大きくずれたりすることに起因して発生する。各スイッチSW1,SW2をオフ状態からオン状態に切り替える場合に発生する電流アンバランスとは、各スイッチSW1,SW2のうち、最初にオン状態に切り替えられたスイッチに一時的に電流が偏って流れる現象である。また、各スイッチSW1,SW2をオン状態からオフ状態に切り替える場合に発生する電流アンバランスとは、各スイッチSW1,SW2のうち、最後にオフ状態に切り替えられるスイッチに一時的に電流が偏って流れる現象である。電流アンバランスが発生すると、電流が偏って流れるスイッチの信頼性が低下し得る。
そこで本実施形態では、制御装置40により、第1,第2スイッチSW1,SW2に対する共通のオン指令又はオフ指令のいずれかである駆動信号Grが生成され、生成された駆動信号Grは、第1,第2駆動制御部70,80に対して共通化された絶縁伝達部60により第1,第2駆動制御部70,80に伝達される。このため、第1,第2駆動制御部70,80に対応して個別に絶縁伝達部が備えられる構成と比較して、制御装置40により駆動信号Grが生成されてから第1,第2駆動制御部70,80に伝達されるまでの時間のばらつきを抑制できる。これにより、第1,第2スイッチSW1,SW2のスイッチング状態が切り替えられる場合において、電流アンバランスの発生を抑制することができ、スイッチの信頼性の低下を抑制することができる。
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図3に示すように、第1駆動制御部70及び第2駆動制御部80の構成を変更する。図3において、先の図2に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。また、本実施形態では、便宜上、絶縁伝達部60から出力される駆動信号Grのオン指令を論理Hの信号で表し、オフ指令を論理Lの信号で表すこととする。
第1スイッチSW1は、自身に流れるコレクタ電流と相関を有する微小電流が流れる第1センス端子St1を有している。第1センス端子St1には、駆動回路50が備える第1センス抵抗体76の第1端が接続され、第1センス抵抗体76の第2端には、第1スイッチSW1のエミッタが接続されている。第1センス端子St1に流れる微少電流によって第1センス抵抗体76に電圧降下量が生じる。このため、第1センス抵抗体76のうち第1センス端子St1側の電位である第1センス電圧Vse1は、コレクタ電流と相関を有する電気的な状態量となる。本実施形態では、第1スイッチSW1のエミッタ電位を0とし、このエミッタ電位よりも高い第1センス電圧Vse1の符号を正と定義する。
第2スイッチSW2は、自身に流れるコレクタ電流と相関を有する微小電流が流れる第2センス端子St2を有している。第2センス端子St2には、駆動回路50が備える第2センス抵抗体86の第1端が接続され、第2センス抵抗体86の第2端には、第2スイッチSW2のエミッタが接続されている。第2センス端子St2に流れる微少電流によって第2センス抵抗体86に電圧降下量が生じる。このため、第2センス抵抗体86のうち第2センス端子St2側の電位である第2センス電圧Vse2は、コレクタ電流と相関を有する電気的な状態量となる。本実施形態では、第2スイッチSW2のエミッタ電位を0とし、このエミッタ電位よりも高い第2センス電圧Vse2の符号を正と定義する。
第1駆動制御部70は、第1調整部77、第1Aピークホールド回路78A、第1Bピークホールド回路78B、及び電流差検出部に相当する第1比較回路79を備えている。第1調整部77は、絶縁伝達部60を介して伝達された駆動信号Grの立上りタイミング及び立下りタイミングそれぞれを遅延可能に構成されている。第1調整部77の出力信号が第1駆動信号G1となる。
図4を用いて、第1調整部77について説明する。
第1調整部77は、第1遅延回路101、第2遅延回路102、論理反転部103及びSRラッチ104を備えている。第1遅延回路101は、入力された駆動信号Grの立上りタイミングを遅延させる機能を有している。第1遅延回路101は、駆動信号Grの立上りタイミングを遅延させた信号を第1信号Saとして出力する。
第1遅延回路101は、図5に示すように、第1定電流電源111、第2定電流電源112、第1バッファ113、第1~第4制御スイッチ114~117及び第2バッファ118を備えている。本実施形態において、第1~第3制御スイッチ114~116は、NチャネルMOSFETであり、第4制御スイッチ117は、PチャネルMOSFETである。
第1定電流電源111及び第2定電流電源112は、電源200から給電されて定電流を出力する。第1定電流電源111の出力側には、第1制御スイッチ114を介してグランドGNDが接続されている。第1制御スイッチ114のゲートには、駆動信号Grが供給される。第2定電流電源112の出力側には、第2制御スイッチ115を介してグランドGNDが接続されている。第1定電流電源111と第1制御スイッチ114との接続点の電圧の論理反転信号が第4制御スイッチ117のゲートに供給される。第2制御スイッチ115のゲートとドレインとは接続されている。第2制御スイッチ115のゲートは、第3制御スイッチ116のゲートと接続されている。
第4制御スイッチ117のソースには、電源200が接続され、第4制御スイッチ117のドレインには、第3制御スイッチ116のドレインが接続されている。第3制御スイッチ116のソースには、グランドGNDが接続されている。第3制御スイッチ116と第4制御スイッチ117との接続点には、第2バッファ118が接続されている。第2バッファ118の出力信号が第1信号Saとなる。
第1遅延回路101は、切替スイッチ120及びコンデンサ121の直列接続体を1つ以上備えており、本実施形態では複数(4つ)備えている。直列接続体の数が、駆動信号Grの立上り時間の遅延時間の数となる。電源200と、第1定電流電源111の出力側及び第4制御スイッチ117のゲートとを接続する電気経路との間に各直列接続体が接続されている。オンされる切替スイッチ120の数は、第1調整信号により定まる。以上説明した第1遅延回路101によれば、入力信号(駆動信号Gr)の立上りタイミングを、4通りの遅延時間だけ遅延させて出力できる。一方、第1調整信号により各切替スイッチ120を全てオフさせることが指示された場合、第1遅延回路101は、入力信号の立上りタイミングを遅延させずに、入力信号をそのまま出力する。第1調整信号は、第1比較回路79から出力される。
図4の説明に戻り、論理反転部103は、駆動信号Grの論値反転値を第2信号Sbとして出力する。第2遅延回路102は、第2信号Sbの立上りタイミングを遅延させた信号を第3信号Scとして出力する。本実施形態において、第2遅延回路102の構成は第1遅延回路101の構成と同じである。このため、第2遅延回路102は、入力された第2信号Sbの立上りタイミングを、4通りの遅延時間だけ遅延させて出力したり、第2信号Sbの立上りタイミングを遅延させずに、第2信号Sbをそのまま出力する。第2遅延回路102において、4通りの遅延時間のいずれに設定されるか、又は遅延時間が0とされるかは、第2調整信号により定まる。第2調整信号は、第1比較回路79から出力される。遅延時間が0に設定されることを除いて、第1遅延回路101で4通りの設定が可能であり、第2遅延回路102で4通りの設定が可能であるため、各遅延回路101,102で合わせて16通りの設定が可能である。
図6に、第1調整部77内の各信号の推移の一例を示す。図6(a)は、第1調整部77に入力される駆動信号Grの推移を示し、図6(b)~図6(d)は、第1~第3信号Sa~Scの推移を示し、図6(e)は、SRラッチ104から出力される第1駆動信号G1の推移を示す。図示されるように、時刻t1~t2の期間が駆動信号Grの立上りタイミングの遅延時間となる。また、時刻t3~t4の期間が駆動信号Grの立下りタイミングの遅延時間となる。このように、第1調整部77によれば、駆動信号Grの立上りタイミング及び立下りタイミングそれぞれの遅延時間を個別に設定できる。
図3の説明に戻り、第1調整部77から出力された第1駆動信号G1がオン指令である場合、第1充電制御部73により第1充電スイッチ71がオン状態とされ、第1放電制御部74により第1放電スイッチ72がオフ状態とされる。一方、入力された第1駆動信号G1がオフ指令である場合、第1充電制御部73により第1充電スイッチ71がオフ状態とされ、第1放電制御部74により第1放電スイッチ72がオン状態とされる。
第1Aピークホールド回路78Aには、第1センス電圧Vse1が入力される。第1Aピークホールド回路78Aは、第1センス電圧Vse1のピーク値を検出し、検出したピーク値を第1ピーク値Vp1として保持する。第1Bピークホールド回路78Bには、第2センス電圧Vse2が入力される。第1Bピークホールド回路78Bは、第2センス電圧Vse2のピーク値を検出し、検出したピーク値を第2ピーク値Vp2として保持する。第1A,第1Bピークホールド回路78A,78Bにより保持された第1,第2ピーク値Vp1,Vp2は、絶縁伝達部60を介して伝達される駆動信号Grがオン指令からオフ指令に切り替えられた場合に0にリセットされる。
第1比較回路79には、第1A,第1Bピークホールド回路78A,78Bから出力された第1,第2ピーク値Vp1,Vp2が入力される。第1比較回路79は、第1ピーク値Vp1と第2ピーク値Vp2との比較結果に基づいて、第1,第2調整信号を第1調整部77に対して出力する。第1調整部77は、第1,第2調整信号に基づいて、駆動信号Grの立上りタイミング及び立下りタイミングの遅延時間を設定する。本実施形態では、駆動信号Grの立上りタイミング及び立下りタイミングそれぞれの遅延時間が同じ時間に設定されることとする。このため、第1調整部77は、絶縁伝達部60を介して伝達された駆動信号Grを第1遅延時間Dy1だけ遅延させることにより、第1駆動信号G1を生成する。本実施形態において、第1遅延時間Dy1は、0以上の値に設定されている。
第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令とされている期間における第2ピーク値Vp2が第1ピーク値Vp1よりも大きい場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第1遅延時間Dy1を、前回用いられた第1遅延時間Dy1よりも短くする。一方、第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令とされている期間における第1ピーク値Vp1が第2ピーク値Vp2よりも大きい場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第1遅延時間Dy1を、前回用いられた第1遅延時間Dy1よりも長くする。
第2駆動制御部80は、第2調整部87、第2Aピークホールド回路88A、第2Bピークホールド回路88B、及び電流差検出部に相当する第2比較回路89を備えている。第2調整部87は、絶縁伝達部60を介して伝達された駆動信号Grの立上りタイミング及び立下りタイミングそれぞれを遅延可能に構成されている。第2調整部87の出力信号が第2駆動信号G2となる。本実施形態において、第2調整部87の構成は第1調整部77の構成と同じである。
第2調整部87から出力された第2駆動信号G2がオン指令である場合、第2充電制御部83により第2充電スイッチ81がオン状態とされ、第2放電制御部84により第2放電スイッチ82がオフ状態とされる。一方、入力された第2駆動信号G2がオフ指令である場合、第2充電制御部83により第2充電スイッチ81がオフ状態とされ、第2放電制御部84により第2放電スイッチ82がオン状態とされる。
第2Aピークホールド回路88Aには、第1センス電圧Vse1が入力される。第2Aピークホールド回路88Aは、第1センス電圧Vse1のピーク値を検出し、検出したピーク値を第3ピーク値Vp3として保持する。第2Bピークホールド回路88Bには、第2センス電圧Vse2が入力される。第2Bピークホールド回路88Bは、第2センス電圧Vse2のピーク値を検出し、検出したピーク値を第4ピーク値Vp4として保持する。第2A,第2Bピークホールド回路88A,88Bにより保持された第3,第4ピーク値Vp3,Vp4は、絶縁伝達部60を介して伝達される駆動信号Grがオン指令からオフ指令に切り替えられた場合に0にリセットされる。
第2比較回路89には、第2A,第2Bピークホールド回路88A,88Bから出力された第3,第4ピーク値Vp3,Vp4が入力される。第2比較回路89は、第3ピーク値Vp3と第4ピーク値Vp4との比較結果に基づいて、第1,第2調整信号を第2調整部87に対して出力する。第2調整部87は、第1,第2調整信号に基づいて、駆動信号Grの立上りタイミング及び立下りタイミングの遅延時間を設定する。本実施形態では、駆動信号Grの立上りタイミング及び立下りタイミングそれぞれの遅延時間が同じ時間に設定されることとする。このため、第2調整部87は、絶縁伝達部60を介して伝達された駆動信号Grを第2遅延時間Dy2だけ遅延させることにより、第2駆動信号G2を生成する。本実施形態において、第2遅延時間Dy2は、0以上の値に設定されている。
第2調整部87は、駆動信号Grがオン指令とされている期間における第4ピーク値Vp4が第3ピーク値Vp3よりも大きい場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第2遅延時間Dy2を、前回用いられた第2遅延時間Dy2よりも長くする。一方、第2調整部87は、駆動信号Grがオン指令とされている期間における第3ピーク値Vp3が第4ピーク値Vp4よりも大きい場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第2遅延時間Dy2を、前回用いられた第2遅延時間Dy2よりも短くする。
本実施形態において、各ピークホールド回路78A,78B,88A,88B、各比較回路79,89及び各調整部77,87が設けられているのは、電流アンバランスの発生を抑制するためである。つまり、絶縁伝達部60を第1,第2駆動制御部70,80で共通化したとしても、第1,第2スイッチSW1,SW2のスイッチング状態の切り替えタイミングが大きくずれることがある。この要因は、例えば、各駆動制御部70,80の個体差に起因したものであったり、第1,第2スイッチSW1,SW2の個体差等に起因した閾値電圧Vthのばらつきであったりする。第1,第2スイッチSW1,SW2のスイッチング状態の切り替えタイミングが大きくずれると、電流アンバランスが発生するおそれがある。
本実施形態では、第1調整部77による第1遅延時間Dy1の調整処理、及び第2調整部87による第2遅延時間Dy2の調整処理のうち、少なくとも一方の処理により、第1,第2スイッチSW1,SW2のオン状態への切り替えタイミング及びオフ状態への切り替えタイミングを同期させる。以下、図7を用いて、第2遅延時間Dy2を調整することにより、タイミングを同期させる一例について説明する。
図7(a)は駆動回路50に入力される駆動信号Grの推移を示し、図7(b),(c)は第1,第2駆動信号G1,G2の推移を示す。図7(d),(e)は第1,第2スイッチSW1,SW2のゲート電圧Vge1,Vge2の推移を示し、図7(f)は第1,第2スイッチSW1,SW2に流れるコレクタ電流Ice1,Ice2の推移を示し、図7(g)は第3,第4ピーク値Vp3,Vp4の推移を示す。
時刻t1において、駆動信号Grがオン指令に切り替えられる。この段階では、第1遅延時間Dy1及び第2遅延時間Dy2は同じ時間に設定されているとする。このため、時刻t1から第1,第2遅延時間Dy1,Dy2経過した時刻t2において、第1,第2駆動信号G1,G2がオン指令に切り替えられる。
その後、第1スイッチSW1のゲート電圧Vge1は速やかに上昇し始めるものの、第2スイッチSW2のゲート電圧Vge2は、時刻t2よりも後の時刻t3において上昇し始める。このため、第1スイッチSW1に流れるコレクタ電流Ice1が第2スイッチSW2に流れるコレクタ電流Ice2よりも大きくなるような電流アンバランスが発生し、第3ピーク値Vp3が第4ピーク値Vp4よりも大きくなる。
第2調整部87は、その後駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる時刻t4までに、次回のスイッチング周期Tswにおける第2遅延時間Dy2を設定する。ここでは、第3ピーク値Vp3が第4ピーク値Vp4よりも大きくなっているため、第2調整部87により第2遅延時間Dy2が短縮される。本実施形態では、第2調整部87により第2遅延時間Dy2が0にされるとする。なお、時刻t4においてオフ指令に切り替えられるため、第2A,第2Bピークホールド回路88A,88Bにより保持された第3,第4ピーク値Vp3,Vp4が0にリセットされる。
時刻t4から第1,第2遅延時間Dy1,Dy2経過した時刻t5において、第1,第2駆動信号G1,G2がオフ指令に切り替えられる。これにより、第1スイッチSW1のゲート電圧Vge1は速やかに低下し始めるものの、第2スイッチSW2のゲート電圧Vge2は、時刻t5よりも後の時刻t6において低下し始める。このため、第2スイッチSW2に流れるコレクタ電流Ice2が第1スイッチSW1に流れるコレクタ電流Ice1よりも大きくなるような電流アンバランスが発生する。
その後時刻t7において、駆動信号Grがオン指令に切り替えられる。第2遅延時間Dy2が0に設定されたため、駆動信号Grがオン指令に切り替えられることに伴い、第2駆動信号G2もオン指令に切り替えられる。一方、第1駆動信号G1は、時刻t7から第1遅延時間Dy1経過した時刻t8においてオン指令に切り替えられる。第2遅延時間Dy2が調整されたことにより、時刻t8において第1,第2スイッチSW1,SW2のゲート電圧Vge1,Vge2がともに上昇し始める。このため、電流アンバランスが発生しない。
その後、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる時刻t9までに、第3ピーク値Vp3及び第4ピーク値Vp4に差が生じない。このため、次回のスイッチング周期Tswにおける第1,第2遅延時間Dy1,Dy2は、今回のスイッチング周期Tswにおける第1,第2遅延時間Dy1,Dy2と同じ時間に保持される。
時刻t9において、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる。これにより、第2駆動信号G2がオフ指令に切り替えられる。その後、時刻t9から第1遅延時間Dy1経過した時刻t10において、第1駆動信号G1がオフ指令に切り替えられる。
なお、第1調整部77による第1遅延時間Dy1の調整処理、及び第2調整部87による第2遅延時間Dy2の調整処理の双方が実施されることにより、第1,第2スイッチSW1,SW2のオン状態への切り替えタイミング及びオフ状態への切り替えタイミングを同期させてもよい。この場合、第1遅延時間Dy1の調整幅及び第2遅延時間Dy2の調整幅が合わさることにより、第1スイッチSW1のオン状態への切り替えタイミングと、第2スイッチSW2のオン状態への切り替えタイミングとのずれを解消するための遅延時間の調整幅を拡大できる。
以上説明した本実施形態では、第1,第2スイッチSW1,SW2に流れるコレクタ電流のピーク値の差に基づいて、第1,第2遅延時間Dy1,Dy2のうち少なくとも一方が調整される。ピーク値の差は、第1,第2スイッチSW1,SW2のスイッチング状態の切り替えタイミングのずれを把握するためのパラメータとなる。このため、本実施形態によれば、各駆動制御部70,80の個体差や、第1,第2スイッチSW1,SW2の個体差等に起因した閾値電圧Vthのばらつきがあったとしても、第1調整部77による第1遅延時間Dy1の調整処理、及び第2調整部87による第2遅延時間Dy2の調整処理の少なくとも一方が実施されることにより、電流アンバランスの発生を抑制することができる。
<第2実施形態の変形例1>
第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令とされている期間における第1,第2ピーク値Vp1,Vp2に基づいて、第1遅延時間Dy1(≧0)を可変設定してもよい。具体的には例えば、図8に示すように、第1調整部77は、第1ピーク値Vp1から第2ピーク値Vp2を減算した値である第1偏差ΔV1が0の場合、第1遅延時間Dy1を第1基準時間Df1(>0)に設定する。第1調整部77は、第1偏差ΔV1が正の値である場合、第1偏差ΔV1が大きいほど、第1基準時間Df1に対して第1遅延時間Dy1を長く設定し、第1偏差ΔV1が負の値である場合、第1偏差ΔV1が小さいほど、第1基準時間Df1に対して第1遅延時間Dy1を短く設定する。
また、第2調整部87は、駆動信号Grがオン指令とされている期間における第3,第4ピーク値Vp3,Vp4に基づいて、第2遅延時間Dy2(≧0)を可変設定してもよい。具体的には例えば、図9に示すように、第2調整部87は、第4ピーク値Vp4から第3ピーク値Vp3を減算した値である第2偏差ΔV2が0の場合、第2遅延時間Dy2を第2基準時間Df2(>0)に設定する。第2調整部87は、第2偏差ΔV2が正の値である場合、第2偏差ΔV2が大きいほど、第2基準時間Df2に対して第2遅延時間Dy2を長く設定し、第2偏差ΔV2が負の値である場合、第2偏差ΔV2が小さいほど、第2基準時間Df2に対して第2遅延時間Dy2を短く設定する。
以上説明した本実施形態によれば、第1,第2スイッチSW1,SW2のスイッチング状態の切り替えタイミングのずれをより好適に小さくすることができる。
<第2実施形態の変形例2>
図10に示すように、センス電圧に代えて、ホールセンサの検出値が各ピークホールド回路78A,78B,88A,88Bに入力されてもよい。図10には、第1スイッチSW1に流れるコレクタ電流を検出する第1ホールセンサ21と、第2スイッチSW2に流れるコレクタ電流を検出する第2ホールセンサ22とを示す。図10において、先の図3に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。第1ホールセンサ21により検出されたコレクタ電流S1は、第1Aピークホールド回路78A及び第2Aピークホールド回路88Aに入力される。第2ホールセンサ22により検出されたコレクタ電流S2は、第1Bピークホールド回路78B及び第2Bピークホールド回路88Bに入力される。
<第2実施形態の変形例3>
第1調整部77は、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる場合における第1,第2ピーク値Vp1,Vp2の差に基づいて、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第1遅延時間Dy1であって、第1,第2スイッチSW1,SW2のオン状態への切り替えタイミングのずれを小さくする第1遅延時間Dy1を設定してもよい。この設定は、第1,第2スイッチSW1,SW2のオフ状態への切り替えタイミングがずれていると、コレクタ電流Ice1,Ice2に差が発生することに基づくものである。
また、第2調整部87は、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる場合における第3,第4ピーク値Vp3,Vp4に基づいて、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第2遅延時間Dy2であって、第1,第2スイッチSW1,SW2のオン状態への切り替えタイミングのずれを小さくする第2遅延時間Dy2を設定してもよい。
なお、第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられる場合における第1,第2ピーク値Vp1,Vp2の差と、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる場合における第1,第2ピーク値Vp1,Vp2の差とに基づいて、第1遅延時間Dy1を調整してもよい。例えば、第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられる場合における第1,第2ピーク値Vp1,Vp2の差、及び駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる場合における第1,第2ピーク値Vp1,Vp2の差の平均値に基づいて、第1遅延時間Dy1を調整してもよい。
また、第2調整部87は、第1調整部77と同様に、駆動信号Grがオン指令に切り替えられる場合における第3,第4ピーク値Vp3,Vp4の差と、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる場合における第3,第4ピーク値Vp3,Vp4の差とに基づいて、第2遅延時間Dy2を調整してもよい。
<第2実施形態の変形例4>
各遅延時間Dy1,Dy2の調整に用いられるパラメータは、コレクタ電流のピーク値の差に限らない。第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられて第1,第2スイッチSW1,SW2のコレクタ電流Ice1,Ice2が上昇している期間において、第1,第2スイッチSW1,SW2のコレクタ電流Ice1,Ice2のいずれかがそのピーク値に到達する前のコレクタ電流Ice1,Ice2の差に基づいて第1遅延時間Dy1を設定してもよい。
また、第2調整部87は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられて第1,第2スイッチSW1,SW2のコレクタ電流Ice1,Ice2が上昇している期間において、第1,第2スイッチSW1,SW2のコレクタ電流Ice1,Ice2のいずれかがそのピーク値に到達する前のコレクタ電流Ice1,Ice2の差に基づいて第2遅延時間Dy2を設定してもよい。
<第2実施形態の変形例5>
第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられた後、第1スイッチSW1のコレクタ電流Ice1が第2スイッチSW2のコレクタIce2よりも先に上昇し始めたと判定した場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第1遅延時間Dy1を、前回用いられた第1遅延時間Dy1よりも所定時間だけ長くする。一方、第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられた後、第2スイッチSW2のコレクタ電流Ice2が第1スイッチSW1のコレクタIce1よりも先に上昇し始めたと判定した場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第1遅延時間Dy1を、前回用いられた第1遅延時間Dy1よりも所定時間だけ短くする。この調整手法は、電流アンバランスが発生すると、各コレクタ電流Ice1,Ice2に差が発生することに鑑みたものである。
第2調整部87は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられた後、第1スイッチSW1のコレクタ電流Ice1が第2スイッチSW2のコレクタIce2よりも先に上昇し始めたと判定した場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第2遅延時間Dy2を、前回用いられた第2遅延時間Dy2よりも所定時間だけ短くする。一方、第2調整部87は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられた後、第2スイッチSW2のコレクタ電流Ice2が第1スイッチSW1のコレクタIce1よりも先に上昇し始めたと判定した場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第2遅延時間Dy2を、前回用いられた第2遅延時間Dy2よりも所定時間だけ長くする。
<第2実施形態の変形例6>
図11に示すように、第2遅延時間Dy2の調整機能が第2駆動制御部80に備えられなくてもよい。
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、駆動信号Grがオン指令に切り替えられてから、第1スイッチSW1,SW2にコレクタ電流Ice1,Ice2が流れ始めるまでの時間の差に基づいて、第1,第2遅延時間Dy1,Dy2が調整される。
本実施形態において、第1駆動制御部70は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられてから、第1スイッチSW1にコレクタ電流Ice1が流れ始めるまでの時間を第1時間T1rとして算出し、駆動信号Grがオン指令に切り替えられてから、第2スイッチSW2にコレクタ電流Ice2が流れ始めるまでの時間を第2時間T2rとして算出する第1時間差検出部を備えている。第1時間差検出部は、図12に示すように、第2時間T2rから第1時間T1rを減算することにより、第1時間偏差ΔT1を算出する。
第1調整部77は、算出された第1時間偏差ΔT1が0の場合、第1遅延時間Dy1を第1基準時間Df1に設定する。第1調整部77は、第1時間偏差ΔT1が正の値である場合、第1時間偏差ΔT1が大きいほど、第1基準時間Df1に対して第1遅延時間Dy1を長く設定し、第1時間偏差ΔT1が負の値である場合、第1時間偏差ΔT1が小さいほど、第1基準時間Df1に対して第1遅延時間Dy1を短く設定する。
第2駆動制御部80は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられてから、第1スイッチSW1にコレクタ電流Ice1が流れ始めるまでの時間を第3時間T3rとして算出し、駆動信号Grがオン指令に切り替えられてから、第2スイッチSW2にコレクタ電流Ice2が流れ始めるまでの時間を第4時間T4rとして算出する第2時間差検出部を備えている。第2時間差検出部は、図13に示すように、第3時間T3rから第4時間T4rを減算することにより、第2時間偏差ΔT2を算出する。
第2調整部87は、算出された第2時間偏差ΔT2が0の場合、第2遅延時間Dy2を第2基準時間Df2に設定する。第2調整部87は、第2時間偏差ΔT2が正の値である場合、第2時間偏差ΔT2が大きいほど、第2基準時間Df2に対して第2遅延時間Dy2を短く設定し、第2時間偏差ΔT2が負の値である場合、第2時間偏差ΔT2が小さいほど、第2基準時間Df2に対して第2遅延時間Dy2を短く設定する。
以上説明した本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
ちなみに、本実施形態においても、第1調整部77による第1遅延時間Dy1の調整処理、及び第2調整部87による第2遅延時間Dy2の調整処理の双方に限らず、これら処理のいずれか一方のみが実施されてもよい。
<第3実施形態の変形例1>
駆動信号Grがオフ指令に切り替えられてから、第1,第2スイッチSW1,SW2にコレクタ電流Ice1,Ice2が流れなくなるまでの時間に基づいて、第1,第2遅延時間Dy1,Dy2が調整されてもよい。
第1時間差検出部は、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられてから、第1スイッチSW1にコレクタ電流Ice1が流れなくなるまでの時間を第1時間T1rとして算出し、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられてから、第2スイッチSW2にコレクタ電流Ice2が流れなくなるまでの時間を第2時間T2rとして算出する。第1時間検出部は、第2時間T2rから第1時間T1rを減算することにより第1時間偏差ΔT1を算出する。この場合において、第1時間偏差ΔT1を用いた第1遅延時間Dy1の調整手法は、図12に示した手法と同じ手法である。
第2時間差検出部は、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられてから、第1スイッチSW1にコレクタ電流Ice1が流れなくなるまでの時間を第3時間T3rとして算出し、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられてから、第2スイッチSW2にコレクタ電流Ice2が流れなくなるまでの時間を第4時間T4rとして算出する。第2時間差検出部は、第3時間T3rから第4時間T4rを減算することにより第2時間偏差ΔT2を算出する。この場合において、第2時間偏差ΔT2を用いた第2遅延時間Dy2の調整手法は、図13に示した手法と同じ手法である。
<第3実施形態の変形例2>
第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられる場合における第1時間偏差ΔT1と、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる場合における第1時間偏差ΔT1とに基づいて、第1遅延時間Dy1を調整してもよい。例えば、第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられる場合における第1時間偏差ΔT1、及び駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる場合における第1時間偏差ΔT1の平均値に基づいて、第1遅延時間Dy1を調整してもよい。
また、第2調整部87は、第1調整部77と同様に、駆動信号Grがオン指令に切り替えられる場合における第2時間偏差ΔT2と、駆動信号Grがオフ指令に切り替えられる場合における第2時間偏差ΔT2とに基づいて、第2遅延時間Dy2を調整してもよい。
<第3実施形態の変形例3>
第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられた後、第1時間T1rが第2時間T2rよりも長いと判定した場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第1遅延時間Dy1を、前回用いられた第1遅延時間Dy1よりも所定時間だけ短くする。一方、第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられた後、第1時間T1rが第2時間T2rよりも短いと判定した場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第1遅延時間Dy1を、前回用いられた第1遅延時間Dy1よりも所定時間Tαだけ長くする。他方、第1調整部77は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられた後、第1時間T1rと第2時間T2rとが同じであると判定した場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第1遅延時間Dy1を、前回用いられた第1遅延時間Dy1と同じ値に保持する。
第2調整部87は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられた後、第4時間T4rが第3時間T3rよりも長いと判定した場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第2遅延時間Dy2を、前回用いられた第2遅延時間Dy2よりも所定時間だけ短くする。一方、第2調整部87は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられた後、第4時間T4rが第3時間T3rよりも短いと判定した場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第2遅延時間Dy2を、前回用いられた第2遅延時間Dy2よりも所定時間Tαだけ長くする。他方、第2調整部87は、駆動信号Grがオン指令に切り替えられた後、第4時間T4rと第3時間T3rとが同じであると判定した場合、駆動信号Grが次回オン指令に切り替えられる場合に用いられる第2遅延時間Dy2を、前回用いられた第2遅延時間Dy2と同じ値に保持する。
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・第2,第3実施形態において、第1スイッチSW1に対する駆動信号Grの立上り,立下りタイミングそれぞれの遅延時間が個別に設定される処理、及び第2スイッチSW2に対する駆動信号Grの立上り,立下りタイミングそれぞれの遅延時間が個別に設定される処理のうち、少なくとも一方の処理により、第1スイッチSW1のオン状態への切り替えタイミングと、第2スイッチSW2のオン状態への切り替えタイミングとのずれを解消してもよい。
・各相各アームが3つ以上のスイッチの並列接続体で構成されていてもよい。例えば、各相各アームが3つのスイッチの並列接続体で構成されている場合、各スイッチに対応した駆動制御部が合計3つ設けられていてもよい。
・インバータを構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えば、SiCデバイスとしてのNチャネルMOSFETであってもよい。
・第1,第2駆動制御部70,80が1つの集積回路で構成されていてもよい。
・互いに並列接続された複数のスイッチを備える電力変換器としては、インバータに限らず、例えばDCDCコンバータであってもよい。