以下、波形データ生成装置、電力演算システム、波形データ生成方法および電力演算方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
本件発明に係る波形データ生成装置、電力演算システム、波形データ生成方法および電力演算方法については、電源から負荷に電力ラインを介して交流の電力が供給される構成を備え、かつ電力ラインに印加されている電圧の電圧値(「第1の電圧」の「第1の電圧値」)における予め規定された周期内の代表値についてのCANフレーム等がシリアルバスを介して伝送される構成を備えた各種の設備において使用することができる。以下、一例として、図1に示す電気自動車100において使用する例について説明する。
この場合、電気自動車100は、駆動用バッテリ101、補機用バッテリ102、バッテリ制御ユニット103、電圧制御部104、充電機構105、インバータユニット106、モータ107、主制御部108およびシリアルバスSB1を備えると共に、後述の電力演算システム10が取り外し可能に取り付けられている。なお、電気自動車100において、後述の電力演算システム10による「電圧波形データの生成」や「電力値の演算」とは直接的に関連のない構成要素については、図示および詳細な説明を省略する。
駆動用バッテリ101は、主として電気自動車100の走行によって消費される電力を蓄電可能な二次電池で構成されている。補機用バッテリ102は、バッテリ制御ユニット103、電圧制御部104および主制御部108や、後述する電力演算システム10の中継器3などの電子機器の動作に必要な電力を蓄電可能な二次電池で構成されている。バッテリ制御ユニット103は、主制御部108の制御下で駆動用バッテリ101の状態をモニタリングすると共に、駆動用バッテリ101からの電力の出力を制御する。
電圧制御部104は、DC/DCコンバータを備えて電圧値の変換が可能に構成されると共に、商用交流から、電力ラインL0、充電機構105および電力ラインL1を介して供給される電力や、図示しない発電機構から供給される電力を駆動用バッテリ101に電力ラインL2を介して伝送する処理(駆動用バッテリ101を充電する処理)、および駆動用バッテリ101から供給される電力、商用交流から充電機構105を介して供給される電力、および図示しない発電機構から供給される電力を補機用バッテリ102に電力ラインL3を介して供給する処理(補機用バッテリ102を充電する処理)を主制御部108の制御下で実行可能に構成されている。
また、電圧制御部104は、駆動用バッテリ101から供給される電力をインバータユニット106に電力ラインL4を介して伝送する処理などを主制御部108の制御下で実行可能に構成されている。充電機構105は、商用交流から電力ラインL0を介して供給される電力をAC/DC変換して電圧制御部104に電力ラインL1を介して伝送する。
インバータユニット106は、電圧制御部104から供給される電力をDC/AC変換してモータ107に電力ラインL5を介して伝送する処理を主制御部108の制御下で実行可能に構成されている。モータ107は、インバータユニット106を介して供給される電力によって電気自動車100の駆動輪を回転させる(電気自動車100を走行させる)。なお、電気自動車100では、インバータユニット106からモータ107に供給する交流電力の周波数や電流量を変化させることでモータ107による動輪の回転速度(すなわち、車速)を変化させる構成が採用されているが、「波形データ生成装置」および「電力演算システム」や、「波形データ生成方法」および「電力演算方法」についての理解を容易とするために、インバータユニット106におけるDC/AC変換の手順に関する詳細な説明を省略する。
主制御部108は、電気自動車100の各電子機器を総括的に制御する。この場合、本例の電気自動車100では、電気自動車100の各部の動作状態を検出するための検出器(センサユニット等:図示せず)や、主制御部108の制御下で各種の処理を実行する電子機器(バッテリ制御ユニット103、電圧制御部104およびインバータユニット106など)がシリアルバスSB1(「CAN通信用のシリアルバス」に相当する車両内通信ネットワークの一例)に接続されている。この場合、シリアルバスSB1や、後述の電力演算システム10におけるシリアルバスSB2を構成する信号線(「CANH(CAN high)」、「CANL(CAN low )」および「SG」などの信号線)は、絶縁被覆された導線(「フレーム伝送用導体」の一例)を備えて構成されている。
また、主制御部108は、検出器による検出結果を特定可能に検出器からシリアルバスSB1に出力されるCANフレームFcや、電子機器の動作状態を特定可能に電子機器からシリアルバスSB1に出力されるCANフレームFcを取得して電気自動車100の各部の動作状態を特定する。さらに、主制御部108は、特定した動作状態に応じて、動作プログラムに従い、各電子器機器を制御するための制御コマンドを特定可能なCANフレームFcをシリアルバスSB1に出力する。これにより、CANフレームFcに基づいて特定される制御コマンドに応じて、各電子機器によって予め規定された処理が実行される。なお、シリアルバスSB1(CAN通信用の通信網)に接続された検出器および電子機器などの各種ノードによるCAN通信(CANフレームの伝送)については公知のため、詳細な説明を省略する。
一方、電力演算システム10は、「電力演算方法」に従って「電力値」を演算する「電力演算システム」の一例であって、図1に示すように、電力演算装置1、記録装置2、中継器3およびシリアルバスSB2を備えて構成されている。
また、電力演算装置1は、「波形データ生成方法」に従って「電圧波形データ」を生成する「波形データ生成装置」の一例であると共に、中継器3と相俟って「電力演算システム」における「電力演算装置」を構成する装置であって、電気自動車100等に対して着脱可能に構成されている。この電力演算装置1では、図2に示すように、電圧検出部11,12、電流測定部13、操作部14、表示部15、信号出力部16、処理部17および記憶部18を備えている。
電圧検出部11は、「第2の電圧検出部」に相当し、「第2の非接触式電圧センサ」の一例であるクランプ型の非接触式電圧センサ11aを備えて処理部17と相俟って「CANフレームをシリアルバスから読み取る読取部」を構成する。具体的には、電圧検出部11は、処理部17の制御に従い、後述するように各種機器からのシリアルバスSB1への各種CANフレームFcの伝送時にシリアルバスSB1のフレーム伝送用導体に印加される電圧(「第2の電圧」の一例)を非接触式電圧センサ11aを介してフレーム伝送用導体に対して非接触で周期的に検出し、検出した電圧の電圧レベル(「第2の電圧レベル」の一例)の変化を特定可能な情報を処理部17に出力する。
電圧検出部12は、「第1の電圧検出部」に相当し、「第1の非接触式電圧センサ」の一例であるクランプ型の非接触式電圧センサ12aを備えている。この電圧検出部12は、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して電力が供給されている状態において電力ラインL5の電力供給用導体に印加されている電圧(「第1の電圧」の一例)を非接触式電圧センサ12aを介して電力供給用導体に対して非接触で周期的に検出し、検出した電圧の電圧レベル(「第1の電圧レベル」の一例)の変化を特定可能な電圧レベルデータDlv(「電圧レベルデータ」の一例)を処理部17に出力する。
電流測定部13は、「電流測定部」に相当し、「非接触式電流センサ」の一例であるクランプ型の非接触式電流センサ13aを備えている。この電流測定部13は、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して電力が供給されている状態において電力ラインL5の電力供給用導体を流れている電流の電流値(「電流値」の一例)を非接触式電流センサ13aを介して電力供給用導体に対して非接触で周期的に測定し、測定結果を示す電流値データDa(「電圧波形データに対応する第1の電圧が電力ラインに印加されていたときに電力ラインを流れていた電流の電流値を特定可能な電流値データ」の一例)を処理部17に出力する。
操作部14は、電力演算装置1の動作条件(「電圧波形データ」の生成、「電力値」の演算、およびそれらの処理結果の報知や記録等に関する条件)の設定操作が可能な複数の操作スイッチを備え(図示せず)、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部17に出力する。表示部15は、電力演算装置1の動作状態や、処理部17による演算結果(生成された「電圧波形」や「電力値」等)を処理部17の制御下で表示する。
信号出力部16は、処理部17および中継器3と相俟って「CANフレーム出力部」を構成し、後述するように、演算した「電力値」を特定可能に処理部17によって生成されるCANフレームFcとしての電力値データフレームFcp(「電力値データフレーム」の一例)をシリアルバスSB2に出力する。これにより、本例の電力演算システム10では、後述するように、中継器3によって電力値データフレームFcpがシリアルバスSB1に中継される(シリアルバスSB1に出力される)。
処理部17は、電力演算装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部17は、「フレーム特定部」として機能して、電気自動車100のシリアルバスSB1におけるCANフレームFcの伝送時に電圧検出部11によって検出される「第2の電圧」の「第2の電圧レベル」の変化に基づき、シリアルバスSB1を伝送されているCANフレームFcを特定する処理(「読取部」として機能して「第1の処理部」としての処理部17自身に特定したCANフレームFcを出力する処理)を実行する。
また、処理部17は、「第1の処理部」として機能して、電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「第1の電圧値」の変化を示す「電圧波形」を特定可能な電圧波形データDwv(「電圧波形データ」の一例)を生成する。
具体的には、処理部17は、電圧検出部12から出力される電圧レベルデータDlvに基づき、「第1の電圧」の「第1の電圧レベル」の変化(電圧レベルデータDlvに記録されている値の変化)を、「第1の電圧」の「電圧波形」の「波形形状」として特定する。また、処理部17は、上記のように「読取部」として機能してシリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcv(「電圧値データフレーム」の一例)に基づき、電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「第1の電圧値」における「予め規定された周期」内の代表値である「代表電圧値」を特定する。さらに、処理部17は、特定した「波形形状」および「代表電圧値」に基づいて電圧波形データDwvを生成して記憶部18に記憶させる。
また、処理部17は、「第2の処理部」として機能して、電力ラインL5を介してインバータユニット106からモータ107に供給されている「電力」の「電力値」を演算し、演算した「電力値」を特定可能な電力値データDp、および電力値データDpを記録した電力値データフレームFcpを生成する。
具体的には、処理部17は、上記のように「第1の処理部」として機能して生成した電圧波形データDwvに基づき、電力ラインL5に印加されていた「第1の電圧」の「第1の電圧値」を特定する。また、処理部17は、電流測定部13から出力される電流値データDaに基づき、電圧波形データDwvに対応する「第1の電圧」が電力ラインL5に印加されていたときに電力ラインL5を流れていた「電流」の「電流値」を特定する。さらに、処理部17は、特定した「第1の電圧値」および「電流値」に基づき、電力ラインL5を介して供給された「電力」の「電力値」を演算し、演算結果を示す電力値データDpを生成する。
また、処理部17は、生成した電力値データDpの内容(演算した「電力値」)を示す電力値データフレームFcpを生成すると共に、生成した電力値データフレームFcpを信号出力部16からシリアルバスSB2に出力させ、後述するように電力値データフレームFcpに基づいて記録装置2において生成される電力値データDpを記録装置2に記録させると共に、中継器3を介してシリアルバスSB1に電力値データフレームFcpを出力させる。また、処理部17は、電圧波形データDwvに基づく「電圧波形」や、電力値データDpに基づく「電力値」などを表示部15に表示させる。なお、処理部17による上記の各処理の具体的な内容については、後に詳細に説明する。
記憶部18は、処理部17の動作プログラム、およびCANフレームFcを特定するためのフレーム特定用データや、処理部17の演算結果を記憶する。
記録装置2は、図3に示すように、信号入力部21、記録媒体22、データ入出力部23、処理部24および記憶部25を備え、電力演算装置1や中継器3と共にシリアルバスSB2に接続されている。
信号入力部21は、シリアルバスSB2を介して伝送されている各種のCANフレームFcを読み取って処理部24に出力する。記録媒体22は、HDDやSSD等の大容量記録媒体で構成され、処理部24の制御下で各種のデータ(後述の電力値データDp等)を記録する。データ入出力部23は、処理部24の制御に従い、外部装置(携帯型電子端末等)から入力された各データを処理部24に伝送して記録媒体22に記録させたり、記録媒体22に記録されているデータを外部装置(携帯型電子端末等)に出力したりする。
処理部24は、記録装置2を総括的に制御する。具体的には、処理部24は、電力演算装置1(信号出力部16)によってシリアルバスSB2に出力された電力値データフレームFcpを取得すると共に、取得した電力値データフレームFcpに基づいて電力値データDpを生成して記録媒体22に記録させる。また、処理部24は、外部装置からデータ入出力部23を介して各種データが伝送されたときに、そのデータを記録媒体22に記録させると共に、外部装置からの要求に従って記録媒体22から電力値データDp等を読み出してデータ入出力部23を介して外部装置に出力する。記憶部25は、処理部24の動作プログラムや、CANフレームFcを特定するためのフレーム特定用データなどを記憶する。
中継器3は、一例として、電気自動車100のシリアルバスSB1に常設される機器(電気自動車100の構成要素以外の機器から出力されたCANフレームFcをシリアルバスSB1に出力するための機器)であって、「電力演算装置のCANフレーム出力部」を構成する。この中継器3は、図4に示すように、電圧検出部31、信号出力部32、処理部33および記憶部34を備えている。
電圧検出部31は、電力演算装置1における電圧検出部11と同様にして、非接触式電圧センサ11aと同様のクランプ型の非接触式電圧センサ31aを備え、処理部33と相俟って「シリアルバスSB2からCANフレームFcを読み取る[読取部]」を構成する。具体的には、電圧検出部31は、処理部33の制御に従い、電力演算装置1からシリアルバスSB2に電力値データフレームFcpが出力されたときにシリアルバスSB2のフレーム伝送用導体に印加される電圧を非接触式電圧センサ31aを介してフレーム伝送用導体に対して非接触で周期的に検出し、検出した電圧の電圧レベルの変化を特定可能な情報を処理部33に出力する。
信号出力部32は、一例として、シリアルバスSB1に常時接続されており、処理部33の制御下で電力値データフレームFcpをシリアルバスSB1に出力する。処理部33は、中継器3を総括的に制御する。具体的には、処理部33は、電力演算装置1の処理部17と同様に「フレーム特定部」として機能して、電力演算装置1からシリアルバスSB2に電力値データフレームFcpが出力されたときに電圧検出部31によって検出される電圧の電圧レベルの変化に基づき、シリアルバスSB2を伝送されている電力値データフレームFcpを特定する処理を実行する。
また、処理部33は、特定した電力値データフレームFcpを信号出力部32に出力することで信号出力部32からシリアルバスSB1に電力値データフレームFcpを出力させる。なお、処理部33による上記の各処理の具体的な内容については、後に詳細に説明する。記憶部34は、処理部33の動作プログラムや、CANフレームFcを特定するためのフレーム特定用データを記憶する。
次に、電力演算システム10による電圧波形データDwvや電力値データDpの生成、および生成した電力値データフレームFcpのシリアルバスSB1への出力の各処理の一例について説明する。なお、上記したように、中継器3については、電気自動車100のシリアルバスSB1に接続された状態(電気自動車100の装備の1つとして電気自動車100に常設された状態)となっているものとする。また、充電機構105等を介しての駆動用バッテリ101の蓄電については既に完了しているものとする。
例えば、電気自動車100の電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「第1の電圧値」の変化を示す「電圧波形」を特定可能な電圧波形データDwvの生成、および電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値(モータ107の動作に伴って消費される電力の電力値)」の演算を行う際には、電力演算システム10の各構成要素を電気自動車100に装着する。
具体的には、図1,2に示すように、電力演算装置1の電圧検出部11における非接触式電圧センサ11aを電気自動車100のシリアルバスSB1に装着する(シリアルバスSB1の信号線を非接触式電圧センサ11aによってクランプする)と共に、図1,2,4に示すように、シリアルバスSB1に接続されている中継器3の電圧検出部31における非接触式電圧センサ31aを電力演算システム10のシリアルバスSB2に装着する(シリアルバスSB2の信号線を非接触式電圧センサ31aによってクランプする)。
なお、各図では、シリアルバスSB1に対して1つの非接触式電圧センサ11aを装着すると共に、シリアルバスSB2に対して1つの非接触式電圧センサ31aを装着した状態を図示しているが、実際には、シリアルバスSB1における「CANH」および「CANL」毎の電圧値を検出するために両信号線毎に別個の非接触式電圧センサ11aを装着すると共に、シリアルバスSB2における「CANH」および「CANL」毎の電圧値を検出するために両信号線毎に別個の非接触式電圧センサ31aを装着する。
この際には、シリアルバスSB1に対する非接触式電圧センサ11aの装着により、シリアルバスSB1を構成する上記の信号線のフレーム伝送用導体と非接触式電圧センサ11aの電極とが信号線の絶縁被覆を介して近接した状態となり、フレーム伝送用導体と電極とが容量結合した状態となる。これにより、後述するように電力演算装置1によってシリアルバスSB1から各種のCANフレームFcを読み取る準備が整う。
また、シリアルバスSB2に対する非接触式電圧センサ31aの装着により、シリアルバスSB2を構成する上記の信号線のフレーム伝送用導体と非接触式電圧センサ31aの電極とが信号線の絶縁被覆を介して近接した状態となり、フレーム伝送用導体と電極とが容量結合した状態となる。これにより、後述するように中継器3によってシリアルバスSB2から各種のCANフレームFcを読み取る準備が整う。
次いで、電力演算装置1の電圧検出部12における非接触式電圧センサ12aを電気自動車100の電力ラインL5に装着する(電力ラインL5を非接触式電圧センサ12aによってクランプする)。この際には、電力ラインL5の電力供給用導体と非接触式電圧センサ12aの電極(電圧検出用導体)とが電線の絶縁被覆を介して近接した状態となり、電力供給用導体と電極とが容量結合した状態となる。これにより、後述するように電力演算装置1によって電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」を検出する準備が整う。
続いて、電力演算装置1の電流測定部13における非接触式電流センサ13aを電気自動車100の電力ラインL5に装着する(電力ラインL5を非接触式電流センサ13aによってクランプする)。この際には、電力ラインL5の電力供給用導体と非接触式電流センサ13aの検出用コイルとが電線の絶縁被覆および非接触式電流センサ13aのケーシング等を介して近接した状態となる。これにより、後述するように電力演算装置1によって電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」を測定する準備が整う。
次いで、電力演算装置1の信号出力部16、および記録装置2の信号入力部21を電力演算システム10のシリアルバスSB2にそれぞれ接続する。なお、前述した非接触式電圧センサ11aと同様にして、信号出力部16や信号入力部21についても、1本の信号線をシリアルバスSB2に接続するのではなく、シリアルバスSB2における「CANH」および「CANL」毎に別個の信号線をそれぞれ接続する。以上により、電力演算システム10の構成機器の電気自動車100への設置が完了する。
この状態において、メインスイッチがオン状態に操作されて走行可能状態に移行させられた電気自動車100においてアクセルペダルが操作されたときには、主制御部108が、ポジションセンサ(アクセル開度を検出するセンサ:図示せず)からシリアルバスSB1に出力されたCANフレームFc(アクセル開度を特定可能なCANフレームFc)、および車速センサ(図示せず)からシリアルバスSB1に出力されたCANフレームFc(車速を特定可能なCANフレームFc)などに基づき、モータ107をどのように動作させるかを決定する。また、主制御部108は、決定内容を示す制御データを特定可能なCANフレームFcをシリアルバスSB1に出力する。
これに応じて、インバータユニット106は、主制御部108からシリアルバスSB1に出力されたCANフレームFcに従い、モータ107を任意の回転速度で動作させるための電力の供給を要求するCANフレームFcをシリアルバスSB1に出力する。また、電圧制御部104は、インバータユニット106からシリアルバスSB1に出力されたCANフレームFcに応じて駆動用バッテリ101から電力ラインL2を介して供給される電力を予め規定された電圧値に変換して電力ラインL4を介してインバータユニット106に供給する。
また、インバータユニット106は、主制御部108からのCANフレームFcに従い、電力ラインL4を介して供給される電力(直流電力)をDC/AC変換してモータ107に電力ラインL5を介して供給する。これにより、モータ107がインバータユニット106から供給される電力によって回転して駆動輪が回転させられる結果、車両の走行が開始される。この際に、インバータユニット106は、モータ107に対する上記の電力供給と並行して、電力ラインL5の電力供給用導体に印加している電圧の電圧値(「第1の電圧」の「第1の電圧値」)における「予め規定された周期」内の代表値である「代表電圧値(予め規定された期間内の平均値、実効値および最大値のうちの少なくとも1つ)」を特定可能な電圧値データフレームFcvなどのCANフレームFcをシリアルバスSB1に出力する。
一方、電力演算システム10では、電力演算装置1が電圧波形データDwvや電力値データDpの生成を開始する。具体的には、処理部17が、まず、シリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFcの読取りを開始する。
なお、シリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFcは、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体に印加される電圧(「SG」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位に対する「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位)の変動、および「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体に印加される電圧(「SG」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位に対する「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位)の変動に基づく「2線差動電圧方式」で伝送される。このCANフレームFcの伝送方式については公知のため詳細な説明を省略するが、以下、理解を容易とするために、主として「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧に着目してCANフレームFcの読取りについて説明する。
この場合、CANフレームFcの伝送時に、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体(以下、単に「伝送用導体」ともいう)の電圧と、「SG」に対応する信号線の伝送用導体の電圧(すなわち、電圧検出部11内の基準電位の電圧)との電位差が増加しているときには、伝送用導体から非接触式電圧センサ11aの電極に結合容量を介して流れ込む電流信号の電流量が増加する。また、CANフレームFcの伝送時に、「CANH」に対応する伝送用導体の電圧と、「SG」に対応する伝送用導体の電圧(電圧検出部11内の基準電位の電圧)との電位差が減少しているときには、伝送用導体から非接触式電圧センサ11aの電極に結合容量を介して流れ込む電流信号の電流量が減少する。
したがって、本例の電力演算システム10における電力演算装置1では、一例として、電圧検出部11が、非接触式電圧センサ11aの電極が「CANH」の伝送用導体と同電位となって上記の電流値が「0」となるように、電極の電位をフィードバック制御する処理を行い、その状態において電極の電位を測定することで、「CANH」の伝送用導体に印加されている電圧の「電圧レベル」を特定(測定)する処理を予め規定された周期で繰り返し実行する。また、電圧検出部11は、特定結果(電圧レベル)示す電圧データを処理部17に順次出力する。
これに応じて、処理部17は、電圧検出部11から出力される電圧データによって示される伝送用導体の電圧レベルの変化に基づき、シリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFcの内容を特定して記憶部18に記憶させる。具体的には、「CANH」に対応する伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベルを超え、かつ「CANL」に対応する伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベルを下回っているとき(「CANH」と「CANL」との電位差が予め規定されたレベルを超えているとき)に、デジタル信号の「0」が伝送されていると判別する。また、「CANH」に対応する伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベル以下で、かつ「CANL」に対応する伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベル以上のとき(「CANH」と「CANL」との電位差が予め規定されたレベル以下のとき)に、デジタル信号の「1」が伝送されていると判別する。
このように、非接触式電圧センサ11aにおける電極の電圧に基づいてデジタル信号の「0」および「1」のいずれが伝送されているかを逐次判定することにより、非接触式電圧センサ11aが装着されているシリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFcを特定する。なお、電気自動車100のシリアルバスSB1では、インバータユニット106が出力した電圧値データフレームFcv以外の各種のCANフレームFcが伝送されている。したがって、本例では、処理部17が、電圧値データフレームFcv以外のCANフレームFcについても上記の方法に従って特定するが、特定したCANフレームFcのうち、電圧波形データDwvや電力値データDpの生成には不要なCANフレームFcについては使用せずに、電圧値データフレームFcvだけを使用して後述の各処理を実行する。
また、電力演算装置1では、上記のようなシリアルバスSB1からのCANフレームFcの読み取りの処理と並行して、電圧検出部12による電圧レベルデータDlvの生成、および処理部17による「電圧波形」の「波形形状」の特定の処理が実行される。具体的には、本例では、電力ラインL5に対する非接触式電圧センサ12aの装着により、前述したように、電力ラインL5の電力供給用導体と非接触式電圧センサ12aの電極とが容量結合した状態となっている。したがって、電圧検出部12は、電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「第1の電圧レベル」に応じて電力供給用導体から結合容量を介して電極に流れ込む電流の電流値を予め規定された周期でサンプリングすることにより、「第1の電圧」の「第1の電圧レベル」の変化を特定可能な電圧レベルデータDlvを生成して処理部17に出力する。
また、処理部17は、電圧検出部12から出力された電圧レベルデータDlvを記憶部18に記憶させると共に、電圧レベルデータDlvに基づいて特定される「第1の電圧レベル」の変化を「第1の電圧」の「電圧波形」の「波形形状」として特定する。この場合、電圧レベルデータDlvは、処理部17が「電圧波形」の「波形形状」を特定可能であればよく、「第1の電圧」の「第1の電圧値」を正確に特定可能な情報である必要はない。したがって、本例の電力演算装置1(電力演算システム10)では、上記のように結合容量を介して流れ込む電流の電流値を測定可能な程度の簡易な非接触式電圧センサ12a、およびその電流値を測定して電圧レベルデータDlvとして出力可能な程度の簡易な構成の電圧検出部12によって「電圧レベルデータ」の一例である電圧レベルデータDlvを生成することが可能となっている。
次いで、処理部17は、シリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcv、および特定した「波形形状」に基づき、「第1の電圧」の「第1の電圧値」の変化を示す「電圧波形」を特定して電圧波形データDwvを生成する。具体的には、処理部17は、まず、「読取部」として機能してシリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcvに基づき、電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「第1の電圧値」における「予め規定された周期」内の代表値である「代表電圧値(平均値、実効値および最大値のうちの予め規定された少なくとも1つ)」を特定する。
次いで、処理部17は、電圧レベルデータDlvに基づいて特定した「波形形状」に、電圧値データフレームFcvに基づいて特定した「代表電圧値」に応じた値付けを行うことにより、「第1の電圧」の「第1の電圧値」の変化を示す電圧波形データDwvを生成して記憶部18に記憶させる。具体的には、特定した「波形形状」で「電圧値」が変化したときに上記の「予め規定された周期」内の「平均値、実効値および最大値のうちの予め規定された少なくとも1つ(「電圧値データフレームFcvに記録されている「代表電圧値」と同じパラメータ)が電圧値データフレームFcvに基づいて特定した「代表電圧値」と同値になるように、その周期内の各「第1の電圧値」をそれぞれ特定する。これにより、電圧波形データDwvの生成の処理が完了する。
また、電力演算装置1では、上記のようなCANフレームFcの読み取りや電圧波形データDwvの生成の処理と並行して、電流測定部13による電流値データDaの生成、および処理部17による電力値データDpの生成の処理が実行される。具体的には、本例の電力演算装置1では、電圧検出部12による電圧レベルデータDlvの生成および処理部17への出力と並行して、電流測定部13が電流値データDaの生成および処理部17への出力を実行している。この際に、電流測定部13は、電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」の「電流値」を予め指定された測定周期(サンプリング周期)で測定して電流値データDaを生成し、生成した電流値データDaを処理部17に順次出力する。
また、処理部17は、電流測定部13から出力される電流値データDaを記憶部18に記憶させると共に、一例として、記憶させた電流値データDaに基づき、前述の電圧値データフレームFcvの「代表電圧値」の周期に対応する周期内の「電流値」の「波高率」を特定する。次いで、処理部17は、記憶部18に記憶させた上記の電圧波形データDwvにおける「予め規定された周期」内の各「第1の電圧値」と、対応する周期内の各電流値データDaに基づく「電流値」およびその「波高率」とに基づき、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている「電力(モータ107の動作に伴って消費されている電力)」の「予め規定された周期」内の「電力値」を演算(測定)する。
また、処理部17は、演算した「電力値」に基づいて電力値データDpを生成して記憶部18に記憶させる。これにより、電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」の演算、および演算した「電力値」を特定可能な電力値データDpの生成の処理が完了する。
次いで、処理部17は、上記の電圧波形データDwvに基づく「電圧波形」や、電力値データDpに基づく「電力値」などを表示部15に表示させると共に、電力値データDpに基づいて電力値データフレームFcpを生成して記憶部18に記憶させる。また、処理部17は、生成した電力値データフレームFcpを信号出力部16からシリアルバスSB2に出力させる。
この際に、記録装置2では、処理部24が、シリアルバスSB2に出力された電力値データフレームFcpを取得すると共に、取得した電力値データフレームFcpに基づいて特定される「電力値」を示す電力値データDpを生成して記録媒体22に記録させる。これにより、電力演算装置1によって演算された電力値が記録装置2(記録媒体22)に電力値データDpとして記録される。
一方、本例の電力演算システム10では、電力演算装置1による上記の一連の処理、および記録装置2による電力値データDpの記録の処理と並行して、中継器3が、シリアルバスSB2を介して伝送されているCANフレームFc(本例では、電力値データフレームFcp)をシリアルバスSB1に出力する(中継する)処理を実行する。
この場合、前述したシリアルバスSB1でのCANフレームFcの伝送時と同様にして、シリアルバスSB2でのCANフレームFcの伝送時にも、シリアルバスSB2における「CANH」に対応する伝送用導体の電圧と、「SG」に対応する伝送用導体の電圧(すなわち、電圧検出部31内の基準電位の電圧)との電位差が増加しているときには、伝送用導体から非接触式電圧センサ31aの電極に結合容量を介して流れ込む電流信号の電流量が増加する。また、シリアルバスSB2でのCANフレームFcの伝送時に、「CANH」に対応する伝送用導体の電圧と、「SG」に対応する伝送用導体の電圧(電圧検出部31内の基準電位の電圧)との電位差が減少しているときには、伝送用導体から非接触式電圧センサ31aの電極に結合容量を介して流れ込む電流信号の電流量が減少する。
したがって、本例の電力演算システム10における中継器3では、前述した電力演算装置1における電圧検出部11と同様にして、電圧検出部31が、非接触式電圧センサ31aの電極が「CANH」の伝送用導体と同電位となって上記の電流値が「0」となるように、電極の電位をフィードバック制御する処理を行い、その状態において電極の電位を測定することで、「CANH」の伝送用導体に印加されている電圧の電圧値を特定(測定)する処理を予め規定された周期で繰り返し実行する。また、電圧検出部31は、測定結果(電圧値)示す電圧データを処理部33に順次出力する。
これに応じて、処理部33は、電圧検出部31から出力される電圧データによって示される電圧値に基づき、シリアルバスSB2を介して伝送されているCANフレームFc(本例では、電力演算装置1の信号出力部16から出力された電力値データフレームFcp)の内容を特定して信号出力部32からシリアルバスSB1に出力させる。これにより、電力演算システム10から電気自動車100のシリアルバスSB1に対して電力値データフレームFcpが出力される。したがって、例えば、主制御部108が、シリアルバスSB1を介して伝送される電力値データフレームFcpを取得し、電力ラインL5を介して供給されている電力(モータ107の動作に伴って消費されている電力)の電力を把握して、例えばテスト動作モード時の予め規定された処理を実行する。
なお、詳細な説明を省略するが、シリアルバスSB2には、電力演算装置1から出力された電力値データフレームFcp以外の各種のCANフレームFcが出力されることがある。この際に、本例の電力演算システム10(中継器3)では、一例として、処理部33が、各種CANフレームFcを特定し、特定したCANフレームFcのうちの予め規定されたCANフレームFcだけをシリアルバスSB1に出力する。これにより、電気自動車100において利用可能な任意のCANフレームFcが中継器3を介してシリアルバスSB1に出力される。
この後、電力演算装置1の操作部14の操作によって電力値の演算、表示および記録の一連の処理が指示されるまで、電力演算装置1、記録装置2および中継器3は、上記の処理を継続的に繰り返し実行する。
一方、上記のような処理を完了し、電力演算システム10による電圧波形データDwvの生成や「電力値」の演算などを継続する必要がなくなったときには、中継器3を除く構成要素(電力演算装置1、記録装置2およびシリアルバスSB2)を電気自動車100から取り外す。
この際に、本例の電力演算システム10では、電力演算装置1における電圧検出部11の非接触式電圧センサ11aをシリアルバスSB1の伝送用導体に対して非接触の状態(信号線を非接触式電圧センサ11aによってクランプした状態)でCANフレームFcの伝送に伴う「電圧レベル」の変化を特定する構成を採用している。したがって、シリアルバスSB1から非接触式電圧センサ11aを取り外した状態において、非接触式電圧センサ11aの装着前の状態から伝送用導体の絶縁性が低下する事態が回避される。
また、シリアルバスSB2からCANフレームFc(電力値データフレームFcp)を読み取ってシリアルバスSB1に出力する中継器3については、電気自動車100の常設機器として電気自動車100に装着した状態が維持される。したがって、シリアルバスSB1にCANフレームFcを出力するための構成要素の存在によってシリアルバスSB1の伝送用導体の絶縁性が低下する事態も回避される。
さらに、本例の電力演算システム10では、電力演算装置1における電圧検出部12の非接触式電圧センサ12aや電流測定部13の非接触式電流センサ13aを電力ラインL5の電力供給用導体に対して非接触の状態(電力ラインL5を非接触式電圧センサ12aや非接触式電流センサ13aによってクランプした状態)で「第1の電圧」や「電流」を検出する構成を採用している。したがって、電力ラインL5から非接触式電圧センサ12aや非接触式電流センサ13aを取り外した状態において、これらの装着前の状態から電力ラインL5の絶縁性が低下する事態も回避される。
以上により、電力演算システム10による電圧波形データDwvの生成や「電力値」の演算等に関する一連の作業が終了する。また、上記の作業によって電力演算装置1(記憶部18)に記憶された電圧波形データDwvについては、図示しない外部装置接続用コネクタを介して外部装置としての各種情報処理端末を電力演算装置1に接続することにより、電力演算装置1から情報処理端末に出力させることができる。また、記録装置2(記録媒体22)に記録された電力値データDpについては、記録装置2のデータ入出力部23に各種情報処理端末を接続することにより、記録装置2から情報処理端末に出力させることができる。これにより、情報処理端末によって電圧波形データDwvや電力値データDpを解析したり、電圧波形データDwvの「信号波形」や電力値データDpの「電力値」についての任意の情報を表示・印刷したりすることが可能となる。
このように、この電力演算装置1、およびその「波形データ生成方法」では、シリアルバスSB1を介して伝送されるCANフレームFcのうちの電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「第1の電圧値」における「予め規定された周期」内の「代表電圧値」を特定可能な電圧値データフレームFcvをシリアルバスSB1から読み取り、かつ、電力ラインL5の電力供給用導体に対して非接触で「第1の電圧」を検出可能な非接触式電圧センサ12aを介して「第1の電圧」を周期的に検出して「第1の電圧」の「第1の電圧レベル」の変化を特定可能な電圧レベルデータDlvを生成すると共に、電圧レベルデータDlvに基づいて特定される「第1の電圧レベル」の変化を、「第1の電圧値」の変化を示す「電圧波形」の「波形形状」として、電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」および「波形形状」に基づいて電圧波形データDwvを生成する。
したがって、この電力演算装置1および「波形データ生成方法」によれば、電力ラインL5の電力伝送用導体に印加されている「第1の電圧」の「第1の電圧値」を短いサンプリング周期で高精度に測定可能な高価な「測定装置」を使用することなく、「第1の電圧」の「第1の電圧レベル」の変化を特定可能な程度の簡易な構成の「測定装置(電力演算システム10の例では、電力演算装置1の電圧検出部12)」を使用して電圧レベルデータDlvを生成して「電圧波形」の「波形形状」を特定し、特定した「波形形状」に、シリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」に基づいて値付けを行うことで、「第1の電圧」の「第1の電圧値」の変化を特定可能な高精度な「電圧波形」の電圧波形データDwvを生成することができる。これにより、電圧波形データDwvの生成に要するコストを十分に低減することができる。また、非接触式電圧センサ12aを使用した「第1の電圧」の検出により、電力ラインL5の絶縁性を低下させることなく「第1の電圧レベル」の変化を特定可能な電圧レベルデータDlvを生成することができるため、電圧波形データDwvの生成のために電力ラインL5の絶縁性が低下した状態となるのを好適に回避することができる。
また、この電力演算装置1、およびその「波形データ生成方法」によれば、CANフレームFcの伝送時にシリアルバスSB1のフレーム伝送用導体に印加される「第2の電圧」をフレーム伝送用導体に対して非接触で検出可能な非接触式電圧センサ11aを介して「第2の電圧」を検出し、検出した「第2の電圧」の「第2の電圧レベル」の変化に基づいてシリアルバスSB1を介して伝送されたCANフレームFcを特定することにより、シリアルバスSB1の各信号線におけるフレーム伝送用導体を覆っている絶縁被覆を剥がすことなくCANフレームFcを読み出すことができるため、電圧波形データDwvの生成のためにフレーム伝送用導体の絶縁性が低下した状態となるのを好適に回避することができる。
また、この電力演算システム10、およびその「電力演算方法」によれば、上記の「波形データ生成方法」に従って電圧波形データDwvを生成し、生成した電圧波形データDwvに基づいて「第1の電圧値」を特定し、かつ電圧波形データDwvに対応する「第1の電圧」が電力ラインL5に印加されていたときに電力ラインL5を流れていた「電流」の「電流値」を特定可能な電流値データDaに基づいて「電流値」を特定すると共に、特定した「第1の電圧値」および「電流値」に基づき、電力ラインL5を介して供給された「電力」の「電力値」を演算することにより、高精度な電圧波形データDwvに基づいて高精度な「電力値」を演算することができるだけでなく、電力ラインL5の電力供給用導体に印加されている「第1の電圧」の「第1の電圧値」を高精度に測定可能な高価な「測定装置」が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
また、この電力演算システム10、およびその「電力演算方法」によれば、電力供給用導体に対して非接触で「電流」を検出可能な非接触式電流センサ13aを介して「電流」の「電流値」を周期的に測定して「電流値」の変化を特定可能な電流値データDaを生成することにより、電力ラインL5の絶縁性を低下させることなく「電流」の「電流値」を特定可能な電流値データDaを生成することができるため、「電力値」の演算のために電力ラインL5の絶縁性が低下した状態となるのを好適に回避することができる。
また、この電力演算システム10、およびその「電力演算方法」によれば、演算した「電力値」を特定可能な電力値データフレームFcpを生成してシリアルバスSB1に出力することにより、演算した「電力値」が供給されている設備(本例では、電気自動車100)側で、「電力値」を演算するための構成を備えることなく、電力演算システム10から出力した電力値データフレームFcpに基づいて特定される「電力値」を利用して各種の処理を実行させることができる。
次に、電力演算システム10による「電力値の演算」の他の実施の形態について説明する。
なお、演算に際して使用する電圧レベルデータDlvの生成の処理については、上記の実施の形態と同様のため、詳細な説明を省略する。また、以下に説明する実施の形態においては、電力演算装置1における電流測定部13および非接触式電流センサ13aを使用しないため、これらの構成要素を不要として「電力演算システム」を構成することもできるが、その他の構成要素については、上記の実施の形態における電力演算装置1の各構成要素と同様の機能を要するため、以下、一例として、電力演算装置1の電流測定部13(非接触式電流センサ13a)を使用せずに「電力値」の演算(測定)を行う例について説明する。
上記の電力演算システム10(電力演算装置1)では、前述のような「電力値」の演算処理に代えて、電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」などについて、電気自動車100の構成要素によって測定された値を使用して「電力値」を演算可能に構成されている。具体的には、電気自動車100において、インバータユニット106からモータ107への電力ラインL5を介しての電力の供給時に、前述の電圧値データフレームFcvに加え、電流値データフレームFca、位相差データフレームFcd、および波高率データフレームFccなどがシリアルバスSB1を介して伝送されているときには、これらのCANフレームFcを読み取って「電力値」を演算することができる。
この場合、電流値データフレームFcaは、「電流値データフレーム」の一例であって、電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」の「電流値」における「予め規定された周期」内の代表値である「代表電流値(平均値、実効値および最大値のうちの少なくとも1つ)」を特定可能なデータで構成されている。また、位相差データフレームFcdは、「位相差データフレーム」の一例であって、電力ラインL5の電力供給用導体に印加されている「第1の電圧」と電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」との間の「位相差」を特定可能なデータで構成されている。さらに、波高率データフレームFccは、「波高率データフレーム」の一例であって、電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」の「波高率(ピーク値と実効値との比率:クレストファクタ)」を特定可能なデータで構成されている。
インバータユニット106からモータ107への電力ラインL5を介しての電力供給時に上記のような各CANフレームFcがシリアルバスSB1を介して伝送されている状態において、電力ラインLを介して供給されている電力(モータ107の動作に伴って消費されている電力)の「電力値」を演算する際に、この実施形態に係る電力演算装置1(電力演算システム10)における「電力演算方法」では、まず、前述の実施形態と同様にして電圧波形データDwvを生成する。また、電力演算装置1では、処理部17が、電圧波形データDwvの生成時にシリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcvの他に、電流値データフレームFcaと、位相差データフレームFcdおよび波高率データフレームFccの予め規定された一方とをシリアルバスSB1から読み取る。なお、シリアルバスSB1からのCANフレームFcの読み取りに関する具体的な処理については前述の例と同様のため、詳細な説明を省略する。
次いで、処理部17は、電圧波形データDwvに基づいて「予め規定された周期」内の各「第1の電圧値」を特定すると共に、電流値データフレームFcaに基づいて「代表電流値」を特定し、かつ位相差データフレームFcdに基づいて「位相差」を特定する処理と、電圧波形データDwvに基づいて「予め規定された周期」内の各「第1の電圧値」を特定すると共に、電流値データフレームFcaに基づいて「代表電流値」を特定し、かつ波高率データフレームFccに基づいて「波高率」を特定する処理との予め規定された少なくとも一方を実行する
続いて、処理部17は、各「第1の電圧値」、「代表電流値」および「位相差」を特定する処理を実行したときには、特定した各「第1の電圧値」、「代表電流値」および「位相差」に基づいて「電力値」を演算する演算処理を実行し、各「第1の電圧値」、「代表電流値」および「波高率」を特定する処理を実行したときには、特定した各「第1の電圧値」、「代表電流値」および「波高率」に基づいて「電力値」を演算する演算処理を実行する。これにより、電気自動車100のインバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」が演算され、演算された「電力値」を示す電力値データDpが生成されて記憶部18に記憶される。
また、処理部17は、演算した「電力値」を特定可能な電力値データフレームFcpを生成すると共に、生成した電力値データフレームFcpを信号出力部16からシリアルバスSB2に出力させる。この際に、前縦した実施形態のときと同様にして、記録装置2において電力値データフレームFcpに対応する電力値データDpが生成されて記録媒体22に記録されると共に、中継器3によって電力値データフレームFcpがシリアルバスSB1に出力される。この後、一連の処理を終了する指示が行われるまで、電力演算装置1、記録装置2および中継器3は、上記の処理を継続的に繰り返し実行する。
このように、この電力演算システム10、およびその「電力演算方法」では、「電流値」における「予め規定された周期」内の「代表電流値」を特定可能な電流値データフレームFca、および「第1の電圧」と「電流」との間の「位相差」を特定可能な位相差データフレームFcdをシリアルバスSB1からそれぞれ読み取り、電圧波形データDwvに基づいて特定される「第1の電圧値」、電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、および位相差データフレームFcdに基づいて特定される「位相差」に基づいて「電力値」を演算する。
また、この電力演算システム10、およびその「電力演算方法」では、「電流値」における「予め規定された周期」内の「代表電流値」を特定可能な電流値データフレームFca、および「電流」の「波高率」を特定可能な波高率データフレームFccをシリアルバスSB1からそれぞれ読み取り、電圧波形データDwvに基づいて特定される「第1の電圧値」、電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、および波高率データフレームFccに基づいて特定される「波高率」に基づいて電力値を演算する。
したがって、この電力演算システム10および「電力演算方法」によれば、電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」の「電流値」を測定するための「測定装置」が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
なお、「波形データ生成装置」および「電力演算システム」の構成や、その「波形データ生成方法」および「電力演算方法」の手順については、上記の電力演算システム10(電力演算装置1)の構成や、その「波形データ生成方法」および「電力演算方法」の手順の例に限定されない。
例えば、電気自動車100のシリアルバスSB1からの非接触式電圧センサ11aを介してのCANフレームFcの読み取りに際して、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧、および「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧を電圧検出部11によってそれぞれ検出し、処理部17が、検出された両フレーム伝送用導体の電圧の差に基づいて、シリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFcの内容を特定する構成・方法の例について説明したが、次の構成を採用することもできる。
具体的には、「2線差動電圧方式」で伝送されるCANフレームFcの読み取りに際しては、前述の例の電力演算装置1における電圧検出部11に代えて、図5に示す電圧検出部50を備えて「電力演算装置」を構成することにより、処理部17によるCANフレームFcの読み取り(内容の特定)を正確かつ容易に行うことが可能となる。この電圧検出部50は、同図に示すように、増幅器51h,51l、差分回路(一例として、トランス)52、増幅器53およびA/D変換器54を備えて構成されている。
前述の電圧検出部11に代えて上記の電圧検出部50を備えた電力演算装置1によってシリアルバスSB1からCANフレームFcを読み取る際には、「CANH」に対応する信号線、および「CANL」に対応する信号線に非接触式電圧センサ11aをそれぞれ装着する。この状態においてシリアルバスSB1にCANフレームFcが伝送されたときには、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体(以下、「「CANH」の伝送用導体」ともいう)と非接触式電圧センサ11aの検出用電極との間の結合容量を介して、「CANH」の伝送用導体の電位に応じて流れる電流に応じた電圧が増幅器51hによって増幅されると共に、「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体(以下、「「CANL」の伝送用導体」ともいう)と非接触式電圧センサ11aの検出用電極との間の結合容量を介して、「CANL」の伝送用導体の電位に応じて流れる電流に応じた電圧が増幅器51lによって増幅される。
また、増幅器51hからの出力電圧と増幅器51lからの出力電圧の差分に対応する電圧が差分回路52から出力され、この出力電圧が増幅器53によって増幅されてA/D変換器54によってA/D変換されて電圧値データとして処理部17に出力される。一方、処理部17は、A/D変換器54から出力された電圧値データの値が予め規定された電圧値レベル以上のときに、デジタル信号の「0」が伝送されていると判別する。また、処理部17は、A/D変換器54から出力された電圧値データの値が予め規定された電圧値レベルを下回っているときに、デジタル信号の「1」が伝送されていると判別する。これにより、前述した電圧検出部11を備えた電力演算装置1におけるCANフレームFcの読み取り時と同様にして、シリアルバスSB1を伝送されているCANフレームFcの内容が特定される。
なお、詳細な説明を省略するが、上記の電圧検出部50の構成については、中継器3の電圧検出部31に対して適用することもできる。また、電力演算システム10のシリアルバスSB2からのCANフレームFcの読み取りに際して、フレーム伝送用導体に対して非接触で非接触式電圧センサ31aを介して「電圧」を検出し、その「電圧レベル」の変化に基づいてCANフレームFcを特定する中継器3を備えた電力演算システム10の例について説明したが、シリアルバスSB2のフレーム伝送用導体に対して直接接触(直接接続)した信号線を介してシリアルバスSB2からCANフレームFcを読み取る構成の中継器3を備えて「電力演算システム」を構成することもできる(図示せず)。
また、演算した「電力値」を特定可能な電力値データDpを記録する記録装置2を備えた電力演算システム10の例について説明したが、「電力値データ」を記録する構成は「電力演算システム」に必須の構成要素ではないため、「電力値データ」を記録しない構成を採用することもできる。さらに、演算した「電力値」を特定可能な電力値データフレームFcpを中継器3からシリアルバスSB1に出力する構成の電力演算システム10を例に挙げて説明したが、「シリアルバス」に「電力値データフレーム」を出力する構成は「電力演算システム」に必須の構成要素ではないため、「電力値データフレーム」を出力しない構成を採用することもできる。
また、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている交流電力を対象として「電圧波形」の「波形データ」を生成したり「電力値」を演算したりする例について説明したが、「波形データ生成装置」および「波形データ生成方法」によって「波形データ」を生成する対象や、「電力演算システム」および「電力演算方法」によって「電力値」を演算する対象は、これに限定されず、例えば、図示しない空調機器制御部から空調機器(コンプレッサ用の三層交流モータ等)に電力ラインを介して供給されている交流電力を対象として上記の例と同様の構成・方法に従って「波形データ」を生成したり「電力値」を演算したりすることもできる。
さらに、電力演算装置1の処理部17を「第1の処理部」および「第2の処理部」として機能させる構成を例に挙げて説明したが、「波形データ生成装置」および「電力演算装置」を一体的に構成したときに、「電圧波形データ」を生成する「第1の処理部」と、「電力値」を演算する「第2の処理部」とを別個に設けることもできる。また、「波形データ生成装置」および「電力演算装置」を一体的に構成した電力演算装置1を備えた電力演算システム10を例に挙げて説明したが、「波形データ生成装置」および「電力演算装置」を別個に構成して「電力演算システム」を構成することもできる。
また、電気自動車100の「電力ライン(本例では、電力ラインL5)」を介して電力が供給されているときに「電力ライン」に印加されている「第1の電圧」の「第1の電圧値」の変化を特定可能な「電圧波形」の電圧波形データDwvを生成したり、生成した電圧波形データDwvに基づいて「電力値」を演算したりする形態を例に挙げて説明したが、電気自動車100などの車両以外の各種の分野(工場内設備用のネットワークや、耕作地内ネットワーク等の分野)における任意の「電圧波形」を特定可能な「電圧波形データ」を生成したり「電力値」を演算したりする際に、上記の電力演算システム10の構成と同様の構成や、電力演算システム10における「波形データ生成方法」および「電力演算方法」と同様の方法を採用することができる。
また、生成した電圧波形データDwvに基づいて「電力値」を演算する構成および方法を例に挙げて説明したが、「波形データ生成装置」および「波形データ生成方法」によって生成した「電圧波形データ」の用途は、「電力値」の演算に限定されず、「電力ライン」の状態(電力源や負荷の状態)の分析等のために、「電圧波形」の表示や印刷を目的として「電圧波形データ」を生成することもできる。
加えて、「シリアルバス」から読み取る「電圧値データフレーム」等は、CANフレームFc等の「CANフレーム」に限定されず、「CAN FD」、「FlexRay(登録商標)」および「LIN」などの各種通信規格に準ずるフレーム(デジタルデータ)や、「LVDS」による小振幅低消費電力通信が可能な各種通信規格に準ずるフレーム(デジタルデータ)を利用して「電力値」を演算する構成・方法を採用することができる。