ところが、上記特許文献に開示の制御駆動装置には、以下のような解決すべき問題点が存在する。具体的には、上記特許文献に開示の制御駆動装置では、実使用時(利用者によって自動車が使用されるとき)に、空調機器の電動コンプレッサの動作に伴って消費される電力の電力値を制御することを目的としている。このため、電力値の演算に使用する電圧値および電流値の検出手段や、検出結果(電圧値および電流値)に基づいて電力値を演算する演算部が、自動車に常設の機器、具体的には、電動コンプレッサに対して電力を供給するインバータ(制御駆動装置)内に設けられている。
この場合、自動車の開発者(自動車製造メーカ)や、アフターパーツの製造者などは、実使用を想定した各種環境下で自動車を走行させて走行性能や機器の動作状態を評価する作業を繰り返し行っている。そのような評価の作業のなかには、任意の電動機や電子機器によって消費される電力の電力値を特定する必要があるものも存在する。しかしながら、上記特許文献に開示のインバータ(制御駆動装置)では、電力値の演算に必要な構成が自動車の常設機器(インバータ)として備わっているものの、演算された電力値や、電力値の演算に際して検出された電圧値および電流値を、自動車の常設機器以外の機器(外部装置)に出力することができない構成となっている。
したがって、例えば「空調機器の動作に伴って消費される電力値」をモニタする必要が生じたときには、インバータ(制御駆動装置)における上記の直流電圧検出手段および直流電流検出手段とは別個に、外部装置としての電圧測定器や電流測定器をバッテリからインバータへの電力ラインに接続して電圧値および電流値をそれぞれ測定する必要がある。このため、それらの測定器を用意する必要が生じることから、電力値の特定のコストが高騰しているという問題点が存在する。
また、上記特許文献に開示の制御駆動装置では、インバータの入力側(バッテリ側)に配設した直流電圧検出手段および直流電流検出手段によって電圧値および電流値をそれぞれ検出して電力を演算する構成が採用されている。したがって、この制御駆動装置では、インバータによってDC/AC変換されてインバータからコンプレッサに出力される(供給される)交流電力の電力値を特定することができず、コンプレッサによって実際に消費されている電力(インバータにおける変換効率の影響を排除した電力)を特定することができないという問題点が存在する。
さらに、自動車等の電力ラインのうち、走行用モータに電力を供給するための電力ラインや、空調機器用の電力ラインには、負荷に応じた大電流が流れる。このため、そのような電力ラインは、安全上の観点から、導体部が絶縁体で覆われている。したがって、そのような電力ラインに外部機器としての電圧測定器や電流測定器を接続すること自体が困難となっているという現状もある。また、そのような電力ラインに外部機器としての測定器を接続するには、絶縁被覆を剥がしたり保護カバーを外したりして導体部を露出させる必要が生じる。このため、電力ラインの絶縁性に関して実使用時と相違する状態となるため、正確な評価が困難となるおそれもある。
なお、自動車の分野における電力値の特定に拘わる問題点について例示したが、自動車以外の分野、例えば、工場内の機械設備の分野においても、電力値の特定に際して上記の問題と同様の問題が生じている。
本発明は、かかる解決すべき問題点に鑑みてなされたものであり、電力ラインを介して供給されている交流電力の電力値を低コストで特定し得る電力演算装置および電力演算方法を提供することを主目的とする。また、実使用時の運用状態と同様の状態で交流電力の電力値を特定し得る電力演算装置および電力演算方法を提供することを他の目的とする。
上記目的を達成すべく、請求項1記載の電力演算装置は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該第1の電圧と当該電流との間の位相差を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記位相差に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する処理部を備えた電力演算装置であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部を備え、前記読取部は、前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な前記CANフレームとしての電圧値データフレーム、前記電流値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な前記CANフレームとしての電流値データフレーム、および前記位相差を特定可能な前記CANフレームとしての位相差データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取って前記処理部に出力し、前記処理部は、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記位相差データフレームに基づいて特定される前記位相差に基づいて前記電力値を演算する。
請求項2記載の電力演算装置は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該電流の波高率を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記波高率に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する処理部を備えた電力演算装置であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部を備え、前記読取部は、前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な前記CANフレームとしての電圧値データフレーム、前記電流値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な前記CANフレームとしての電流値データフレーム、および前記波高率を特定可能な前記CANフレームとしての波高率データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取って前記処理部に出力し、前記処理部は、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記波高率データフレームに基づいて特定される前記波高率に基づいて前記電力値を演算する。
請求項3記載の電力演算装置は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、当該第1の電圧の電圧波形、および当該電流の電流波形を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値、前記電圧波形および前記電流波形に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する処理部を備えた電力演算装置であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部を備え、前記読取部は、前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な前記CANフレームとしての電圧値データフレーム、前記予め規定された周期内における前記電圧波形の種別を特定可能な前記CANフレームとしての電圧波形種別データフレーム、前記電流値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な前記CANフレームとしての電流値データフレーム、および前記予め規定された周期内における前記電流波形の種別を特定可能な前記CANフレームとしての電流波形種別データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取って前記処理部に出力し、前記処理部は、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、および前記電圧波形種別データフレームに基づいて特定される前記電圧波形の種別に基づいて前記第1の電圧の前記電圧波形を再現し、かつ前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記電流波形種別データフレームに基づいて特定される前記電流波形の種別に基づいて前記電流の前記電流波形を再現すると共に、再現した当該電圧波形および当該電流波形に基づいて前記電力値を演算する。
請求項4記載の電力演算装置は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該第1の電圧と当該電流との間の位相差を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記位相差に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する処理部を備えた電力演算装置であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部と、前記電流値を測定して電流値データを出力する電流測定部とを備え、前記読取部は、前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な前記CANフレームとしての電圧値データフレーム、および前記位相差を特定可能な前記CANフレームとしての位相差データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取って前記処理部に出力し、前記処理部は、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、前記電流値データに基づいて特定される前記電流値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電流値、および前記位相差データフレームに基づいて特定される前記位相差に基づいて前記電力値を演算する。
請求項5記載の電力演算装置は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該電流の波高率を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記波高率に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する処理部を備えた電力演算装置であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部と、前記電流値を測定して電流値データを出力する電流測定部とを備え、前記読取部は、前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な前記CANフレームとしての電圧値データフレームを前記シリアルバスから読み取って前記処理部に出力し、前記処理部は、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、前記電流値データに基づいて特定される前記電流値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電流値、および当該電流値に基づいて特定される前記波高率に基づいて前記電力値を演算する。
請求項6記載の電力演算装置は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、当該第1の電圧の電圧波形、および当該電流の電流波形を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値、前記電圧波形および前記電流波形に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する処理部を備えた電力演算装置であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部と、前記電流値を測定して電流値データを出力する電流測定部とを備え、前記読取部は、前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な前記CANフレームとしての電圧値データフレーム、および前記予め規定された周期内における前記電圧波形の種別を特定可能な前記CANフレームとしての電圧波形種別データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取って前記処理部に出力し、前記処理部は、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、および前記電圧波形種別データフレームに基づいて特定される前記電圧波形の種別に基づいて前記第1の電圧の前記電圧波形を再現すると共に、再現した当該電圧波形、および前記電流値データに基づいて特定される前記電流値の前記電流波形に基づいて前記電力値を演算する。
請求項7記載の電力演算装置は、請求項4から6のいずれかに記載の電力演算装置において、前記電流測定部は、前記電力ラインの電力供給用導体に対して非接触で前記電流値を測定可能な非接触式電流センサを備えている。
請求項8記載の電力演算装置は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該第1の電圧と当該電流との間の位相差を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記位相差に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する処理部を備えた電力演算装置であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部と、前記電圧値を測定して電圧値データを出力する電圧測定部とを備え、前記読取部は、前記電流値における予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な前記CANフレームとしての電流値データフレーム、および前記位相差を特定可能な前記CANフレームとしての位相差データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取って前記処理部に出力し、前記処理部は、前記電圧値データに基づいて特定される前記電圧値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電圧値、前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記位相差データフレームに基づいて特定される前記位相差に基づいて前記電力値を演算する。
請求項9記載の電力演算装置は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該電流の波高率を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記波高率に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する処理部を備えた電力演算装置であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部と、前記電圧値を測定して電圧値データを出力する電圧測定部とを備え、前記読取部は、前記電流値における予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な前記CANフレームとしての電流値データフレーム、および前記波高率を特定可能な前記CANフレームとしての波高率データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取って前記処理部に出力し、前記処理部は、前記電圧値データに基づいて特定される前記電圧値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電圧値、前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記波高率データフレームに基づいて特定される前記波高率に基づいて前記電力値を演算する。
請求項10記載の電力演算装置は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、当該第1の電圧の電圧波形、および当該電流の電流波形を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値、前記電圧波形および前記電流波形に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する処理部を備えた電力演算装置であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームを当該シリアルバスから読み取る読取部と、前記電圧値を測定して電圧値データを出力する電圧測定部とを備え、前記読取部は、前記電流値における予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な前記CANフレームとしての電流値データフレーム、および前記予め規定された周期内における前記電流波形の種別を特定可能な前記CANフレームとしての電流波形種別データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取って前記処理部に出力し、前記処理部は、前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記電流波形種別データフレームに基づいて特定される前記電流波形の種別に基づいて前記電流の前記電流波形を再現すると共に、前記第1の電圧データに基づいて特定される前記電圧値の前記電圧波形、および再現した前記電流波形に基づいて前記電力値を演算する。
請求項11記載の電力演算装置は、請求項8から10のいずれかに記載の電力演算装置において、前記電圧測定部は、前記電力ラインの電力供給用導体に対して非接触で前記電圧値を測定可能な非接触式電圧センサを備えている。
請求項12記載の電力演算装置は、請求項1から11のいずれかに記載の電力演算装置において、前記読取部は、中継器を介して前記CANフレームが中継される複数の前記シリアルバスのうちの前記処理部による前記電力値の演算に必要な当該CANフレームを出力するCANフレーム出力機器が接続された当該シリアルバスから当該電力値の演算に必要なCANフレームを読み取る。
請求項13記載の電力演算装置は、請求項1から12のいずれかに記載の電力演算装置において、前記読取部は、前記CANフレームの伝送時に前記シリアルバスのフレーム伝送用導体に印加される第2の電圧を当該フレーム伝送用導体に対して非接触で検出可能な非接触式電圧センサを有する電圧検出部と、当該電圧検出部によって検出された前記第2の電圧の電圧レベルの変化に基づいて前記シリアルバスを介して伝送された前記CANフレームを特定するフレーム特定部とを備えている。
請求項14記載の電力演算装置は、請求項1から13のいずれかに記載の電力演算装置において、前記処理部が演算した前記電力値を特定可能な前記CANフレームとしての電力値データフレームを生成して前記シリアルバスに出力するCANフレーム出力部を備えている。
請求項15記載の電力演算方法は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該第1の電圧と当該電流との間の位相差を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記位相差に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する電力演算方法であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な電圧値データフレーム、前記電流値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および前記位相差を特定可能な位相差データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取り、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記位相差データフレームに基づいて特定される前記位相差に基づいて前記電力値を演算する。
請求項16記載の電力演算方法は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該電流の波高率を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記波高率に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する電力演算方法であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な電圧値データフレーム、前記電流値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および前記波高率を特定可能な波高率データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取り、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記波高率データフレームに基づいて特定される前記波高率に基づいて前記電力値を演算する。
請求項17記載の電力演算方法は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、当該第1の電圧の電圧波形、および当該電流の電流波形を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値、前記電圧波形および前記電流波形に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する電力演算方法であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な電圧値データフレーム、前記予め規定された周期内における前記電圧波形の種別を特定可能な電圧波形種別データフレーム、前記電流値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および前記予め規定された周期内における前記電流波形の種別を特定可能な電流波形種別データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取り、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、および前記電圧波形種別データフレームに基づいて特定される前記電圧波形の種別に基づいて前記第1の電圧の前記電圧波形を再現し、かつ前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記電流波形種別データフレームに基づいて特定される前記電流波形の種別に基づいて前記電流の前記電流波形を再現すると共に、再現した当該電圧波形および当該電流波形に基づいて前記電力値を演算する。
請求項18記載の電力演算方法は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該第1の電圧と当該電流との間の位相差を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記位相差に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する電力演算方法であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームとしての前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な電圧値データフレーム、および前記位相差を特定可能な位相差データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取ると共に前記電流値を測定し、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、測定した前記電流値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電流値、および前記位相差データフレームに基づいて特定される前記位相差に基づいて前記電力値を演算する。
請求項19記載の電力演算方法は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該電流の波高率を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記波高率に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する電力演算方法であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な電圧値データフレームを前記シリアルバスから読み取ると共に前記電流値を測定し、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、測定した前記電流値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電流値および当該電流値に基づいて特定される前記波高率に基づいて前記電力値を演算する。
請求項20記載の電力演算方法は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、当該第1の電圧の電圧波形、および当該電流の電流波形を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値、前記電圧波形および前記電流波形に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する電力演算方法であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの前記電圧値における予め規定された周期内の代表値である代表電圧値を特定可能な前記CANフレーム、および前記予め規定された周期内における前記電圧波形の種別を特定可能な電圧波形種別データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取ると共に前記電流値を測定し、前記電圧値データフレームに基づいて特定される前記代表電圧値、および前記電圧波形種別データフレームに基づいて特定される前記電圧波形の種別に基づいて前記第1の電圧の前記電圧波形を再現すると共に、再現した当該電圧波形、および測定した前記電流値の前記電流波形に基づいて前記電力値を演算する。
請求項21記載の電力演算方法は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該第1の電圧と当該電流との間の位相差を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記位相差に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する電力演算方法であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの前記電流値における予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および前記位相差を特定可能な位相差データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取ると共に前記電圧値を測定し、測定した前記電圧値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電圧値、前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記位相差データフレームに基づいて特定される前記位相差に基づいて前記電力値を演算する。
請求項22記載の電力演算方法は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、および当該電流の波高率を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値および前記波高率に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する電力演算方法であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの前記電流値における予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および前記波高率を特定可能な波高率データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取ると共に前記電圧値を測定し、測定した前記電圧値における前記予め規定された周期内の代表値である代表電圧値、前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記波高率データフレームに基づいて特定される前記波高率に基づいて前記電力値を演算する。
請求項23記載の電力演算方法は、電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値、当該電力ラインを流れている電流の電流値、当該第1の電圧の電圧波形、および当該電流の電流波形を周期的に特定すると共に、特定した前記電圧値、前記電流値、前記電圧波形および前記電流波形に基づいて前記電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する電力演算方法であって、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの前記電流値における予め規定された周期内の代表値である代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および前記予め規定された周期内における前記電流波形の種別を特定可能な電流波形種別データフレームを前記シリアルバスからそれぞれ読み取ると共に前記電圧値を測定し、前記電流値データフレームに基づいて特定される前記代表電流値、および前記電流波形種別データフレームに基づいて特定される前記電流波形の種別に基づいて前記電流の前記電流波形を再現すると共に、測定した前記電圧値の電圧波形、および再現した前記電流波形に基づいて前記電力値を演算する。
請求項24記載の電力演算方法は、請求項15から23のいずれかに記載の電力演算方法において、中継器を介して前記CANフレームが中継される複数の前記シリアルバスのうちの前記電力値の演算に必要な当該CANフレームを出力するCANフレーム出力機器が接続された当該シリアルバスから当該電力値の演算に必要なCANフレームを読み取る。
請求項25記載の電力演算方法は、請求項15から24のいずれかに記載の電力演算方法において、前記CANフレームの伝送時に前記シリアルバスのフレーム伝送用導体に印加される第2の電圧を当該フレーム伝送用導体に対して非接触で検出可能な非接触式電圧センサを使用して当該第2の電圧を検出すると共に、検出した前記第2の電圧の電圧レベルの変化に基づいて前記シリアルバスを介して伝送された前記CANフレームを特定する。
請求項26記載の電力演算方法は、請求項15から25のいずれかに記載の電力演算方法において、演算した前記電力値を特定可能な前記CANフレームとしての電力値データフレームを生成して前記シリアルバスに出力する。
請求項1記載の電力演算装置、および請求項15記載の電力演算方法では、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値における予め規定された周期内の代表電圧値を特定可能な電圧値データフレーム、電力ラインを流れている電流の電流値における予め規定された周期内の代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および第1の電圧と電流との間の位相差を特定可能な位相差データフレームをシリアルバスからそれぞれ読み取り、電圧値データフレームに基づいて特定される代表電圧値、電流値データフレームに基づいて特定される代表電流値、および位相差データフレームに基づいて特定される位相差に基づいて電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する。
したがって、請求項1記載の電力演算装置、および請求項15記載の電力演算方法によれば、シリアルバスから読み取った電圧値データフレームに基づいて特定される代表電圧値、シリアルバスから読み取った電流値データフレームに基づいて特定される代表電流値、およびシリアルバスから読み取った位相差データフレームに基づいて特定される位相差に基づき、電力ラインを介して供給している電力の電力値を演算することで、電力ラインの電力供給用導体に印加されている第1の電圧の電圧値を測定するための測定装置や、電力ラインの電力供給用導体を流れている電流の電流値を測定するための測定装置が不要となる分だけ、電力値を低コストで演算することができる。
請求項2記載の電力演算装置、および請求項16記載の電力演算方法では、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値における予め規定された周期内の代表電圧値を特定可能な電圧値データフレーム、電力ラインを流れている電流の電流値における予め規定された周期内の代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および電流の波高率を特定可能な波高率データフレームをシリアルバスからそれぞれ読み取り、電圧値データフレームに基づいて特定される代表電圧値、電流値データフレームに基づいて特定される代表電流値、および波高率データフレームに基づいて特定される波高率に基づいて電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する。
したがって、請求項2記載の電力演算装置、および請求項16記載の電力演算方法によれば、シリアルバスから読み取った電圧値データフレームに基づいて特定される代表電圧値、シリアルバスから読み取った電流値データフレームに基づいて特定される代表電流値、およびシリアルバスから読み取った波高率データフレームに基づいて特定される波高率に基づき、電力ラインを介して供給している電力の電力値を演算することで、電力ラインの電力供給用導体に印加されている第1の電圧の電圧値を測定するための測定装置や、電力ラインの電力供給用導体を流れている電流の電流値を測定するための測定装置が不要となる分だけ、電力値を低コストで演算することができる。
請求項3記載の電力演算装置、および請求項17記載の電力演算方法では、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値における予め規定された周期内の代表電圧値を特定可能な電圧値データフレーム、予め規定された周期内における第1の電圧の電圧波形の種別を特定可能な電圧波形種別データフレーム、電力ラインを流れている電流の電流値における予め規定された周期内の代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および予め規定された周期内における電流の電流波形の種別を特定可能な電流波形種別データフレームをシリアルバスからそれぞれ読み取り、電圧値データフレームに基づいて特定される代表電圧値、および電圧波形種別データフレームに基づいて特定される電圧波形の種別に基づいて第1の電圧の電圧波形を再現し、かつ電流値データフレームに基づいて特定される代表電流値、および電流波形種別データフレームに基づいて特定される電流波形の種別に基づいて電流の電流波形を再現すると共に、再現した電圧波形および電流波形に基づいて電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する。
したがって、請求項3記載の電力演算装置、および請求項17記載の電力演算方法によれば、シリアルバスから読み取った電圧値データフレームおよび電圧波形種別データフレームに基づいて特定される代表電圧値および電圧波形の種別に基づいて再現される電圧値の電圧波形と、シリアルバスから読み取った電流値データフレームおよび電流波形種別データフレームに基づいて特定される代表電流値および電流波形の種別に基づいて再現される電流値の電流波形とに基づき、電力ラインを介して供給している電力の電力値を演算することで、電力ラインの電力供給用導体に印加されている第1の電圧の電圧値を測定するための測定装置や、電力ラインの電力供給用導体を流れている電流の電流値を測定するための測定装置が不要となる分だけ、電力値を低コストで演算することができる。
請求項4記載の電力演算装置、および請求項18記載の電力演算方法では、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームとしての電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値における予め規定された周期内の代表電圧値を特定可能な電圧値データフレーム、および第1の電圧と電力ラインを流れている電流との間の位相差を特定可能な位相差データフレームをシリアルバスからそれぞれ読み取ると共に電流値を測定し、電圧値データフレームに基づいて特定される代表電圧値、測定した電流値における予め規定された周期内の代表電流値、および位相差データフレームに基づいて特定される位相差に基づいて電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する。
したがって、請求項4記載の電力演算装置、および請求項18記載の電力演算方法によれば、シリアルバスから読み取った電圧値データフレームに基づいて特定される代表電圧値、および位相差データフレームに基づいて特定される位相差と、電流測定部によって測定した電流値における予め規定された周期内の代表電流値とに基づき、電力ラインを介して供給している電力の電力値を演算することで、電力ラインの電力供給用導体に印加されている第1の電圧の電圧値を測定するための測定装置が不要となる分だけ、電力値を低コストで演算することができる。
請求項5記載の電力演算装置、および請求項19記載の電力演算方法では、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値における予め規定された周期内の代表電圧値を特定可能な電圧値データフレームをシリアルバスから読み取ると共に電力ラインを流れている電流の電流値を測定し、電圧値データフレームに基づいて特定される代表電圧値、測定した電流値における予め規定された周期内の代表電流値、および電流値に基づいて特定される電流の波高率に基づいて電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する。
したがって、請求項5記載の電力演算装置、および請求項19記載の電力演算方法によれば、シリアルバスから読み取った電圧値データフレームに基づいて特定される代表電圧値、および波高率データフレームに基づいて特定される波高率と、電流測定部によって測定した電流値における予め規定された周期内の代表電流値とに基づき、電力ラインを介して供給している電力の電力値を演算することで、電力ラインの電力供給用導体に印加されている第1の電圧の電圧値を測定するための測定装置が不要となる分だけ、電力値を低コストで演算することができる。
請求項6記載の電力演算装置、および請求項20記載の電力演算方法では、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値における予め規定された周期内の代表電圧値を特定可能なCANフレーム、および予め規定された周期内における第1の電圧の電圧波形の種別を特定可能な電圧波形種別データフレームをシリアルバスからそれぞれ読み取ると共に電力ラインを流れている電流の電流値を測定し、電圧値データフレームに基づいて特定される代表電圧値、および電圧波形種別データフレームに基づいて特定される電圧波形の種別に基づいて第1の電圧の電圧波形を再現すると共に、再現した電圧波形、および測定した電流値の電流波形に基づいて電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する。
したがって、請求項6記載の電力演算装置、および請求項20記載の電力演算方法によれば、シリアルバスから読み取った電圧値データフレームおよび電圧波形種別データフレームに基づいて特定される代表電圧値および電圧波形の種別に基づいて再現される電圧値の電圧波形と、電流測定部によって測定した電流値の電流波形とに基づき、電力ラインを介して供給している電力の電力値を演算することで、電力ラインの電力供給用導体に印加されている第1の電圧の電圧値を測定するための測定装置が不要となる分だけ、電力値を低コストで演算することができる。
請求項7記載の電力演算装置、およびその電力演算方法によれば、電力ラインの電力供給用導体に対して非接触で電流値を測定可能な非接触式電流センサを使用して電流値を測定することにより、電力ラインの電力供給用導体を覆っている絶縁被覆を剥がすことなく電力供給用導体を流れている電流の電流値を測定することができるため、電力値の演算のために電力供給用導体の絶縁性が低下した状態となるのを好適に回避することができると共に、実使用時の運用状態と同様の状態で電力値を特定することができる。
請求項8記載の電力演算装置、および請求項21記載の電力演算方法では、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの電力ラインを流れている電流の電流値における予め規定された周期内の代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および電力ラインに印加されている第1の電圧と電流との間の位相差を特定可能な位相差データフレームをシリアルバスからそれぞれ読み取ると共に第1の電圧の電圧値を測定し、測定した電圧値における予め規定された周期内の代表電圧値、電流値データフレームに基づいて特定される代表電流値、および位相差データフレームに基づいて特定される位相差に基づいて電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する。
したがって、請求項8記載の電力演算装置、および請求項21記載の電力演算方法によれば、電圧測定部によって測定した電圧値における予め規定された周期内の代表電圧値、シリアルバスから読み取った電流値データフレームに基づいて特定される代表電流値、および位相差データフレームに基づいて特定される位相差に基づき、電力ラインを介して供給している電力の電力値を演算することで、電力ラインの電力供給用導体を流れている電流の電流値を測定するための測定装置が不要となる分だけ、電力値を低コストで演算することができる。
請求項9記載の電力演算装置、および請求項22記載の電力演算方法では、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの電力ラインを流れている電流の電流値における予め規定された周期内の代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および電流の波高率を特定可能な波高率データフレームをシリアルバスからそれぞれ読み取ると共に電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値を測定し、測定した電圧値における予め規定された周期内の代表電圧値、電流値データフレームに基づいて特定される代表電流値、および波高率データフレームに基づいて特定される波高率に基づいて電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する。
したがって、請求項9記載の電力演算装置、および請求項22記載の電力演算方法によれば、電圧測定部によって測定した電圧値における予め規定された周期内の代表電圧値、シリアルバスから読み取った電流値データフレームに基づいて特定される代表電流値、および波高率データフレームに基づいて特定される波高率に基づき、電力ラインを介して供給している電力の電力値を演算することで、電力ラインの電力供給用導体を流れている電流の電流値を測定するための測定装置が不要となる分だけ、電力値を低コストで演算することができる。
請求項10記載の電力演算装置、および請求項23記載の電力演算方法では、CAN通信用のシリアルバスを介して伝送されるCANフレームのうちの電力ラインを流れている電流の電流値における予め規定された周期内の代表電流値を特定可能な電流値データフレーム、および予め規定された周期内における電流の電流波形の種別を特定可能な電流波形種別データフレームをシリアルバスからそれぞれ読み取ると共に電力ラインに印加されている第1の電圧の電圧値を測定し、電流値データフレームに基づいて特定される代表電流値、および電流波形種別データフレームに基づいて特定される電流波形の種別に基づいて電流の電流波形を再現すると共に、測定した電圧値の電圧波形、および再現した電流波形に基づいて電力ラインを介して供給されている電力の電力値を演算する。
したがって、請求項10記載の電力演算装置、および請求項23記載の電力演算方法によれば、シリアルバスから読み取った電流値データフレームおよび電流波形種別データフレームに基づいて特定される代表電流値および電流波形の種別に基づいて再現される電流値の電流波形と、電圧測定部によって測定した電圧値の電圧波形とに基づき、電力ラインを介して供給している電力の電力値を演算することで、電力ラインの電力供給用導体を流れている電流の電流値を測定するための測定装置が不要となる分だけ、電力値を低コストで演算することができる。
請求項11記載の電力演算装置、およびその電力演算方法によれば、電力ラインの電力供給用導体に対して非接触で電圧値を測定可能な非接触式電圧センサを使用して電圧値を測定することにより、電力ラインの電力供給用導体を覆っている絶縁被覆を剥がすことなく電力供給用導体に印加されている第1の電圧の電圧値を測定することができるため、電力値の演算のために電力供給用導体の絶縁性が低下した状態となるのを好適に回避することができると共に、実使用時の運用状態と同様の状態で電力値を特定することができる。
請求項12記載の電力演算装置、および請求項24記載の電力演算方法によれば、中継器を介してCANフレームが中継される複数のシリアルバスのうちの電力値の演算に必要なCANフレームを出力するCANフレーム出力機器が接続されたシリアルバスから電力値の演算に必要なCANフレームを読み取ることにより、CANフレームの中継を指示する制御コマンドを中継器に出力することなく、電力値の演算に必要なCANフレームを読み取ることができると共に、CANフレーム出力機器が接続されたシリアルバスから他のシリアルバスに、電力値の演算に必要な大量のCANフレームが中継される事態が回避されるため、他のシリアルバスにおけるCANフレームの伝送を阻害することなく、電力値を演算することができる。
請求項13記載の電力演算装置、および請求項25記載の電力演算方法では、CANフレームの伝送時にシリアルバスのフレーム伝送用導体に印加される第2の電圧をフレーム伝送用導体に対して非接触で検出可能な非接触式電圧センサを使用して第2の電圧を検出すると共に、検出した第2の電圧の電圧レベルの変化に基づいてシリアルバスを介して伝送されたCANフレームを特定する。したがって、請求項12記載の電力演算装置、および請求項23記載の電力演算方法によれば、シリアルバスの各信号線におけるフレーム伝送用導体を覆っている絶縁被覆を剥がすことなくCANフレームを読み出すことができるため、電力値の演算のためにフレーム伝送用導体の絶縁性が低下した状態となるのを好適に回避することができる。
請求項14記載の電力演算装置、および請求項26記載の電力演算方法によれば、演算した電力値を特定可能なCANフレームとしての電力値データフレームを生成してシリアルバスに出力することにより、演算した電力値が供給されている設備側で、電力値を演算するための構成を備えることなく、電力演算装置から出力した電力値データフレームに基づいて特定される電力値を利用することができる。
以下、電力演算装置および電力演算方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
本件発明に係る電力演算装置および電力演算方法については、電源から負荷に電力ラインを介して電力が供給される構成を備え、かつ電力ラインに印加されている電圧の電圧値(第1の電圧の電圧値)における予め規定された周期内の代表値、電力ラインを流れている電流の電流値における予め規定された周期内の代表値、および電圧と電流との間の位相差などの諸情報についてのCANフレームがシリアルバスを介して伝送される構成を備えた各種の設備において使用することができる。以下、一例として、図1に示す電気自動車100において使用する例について説明する。
この場合、電気自動車100は、駆動用バッテリ101、補機用バッテリ102、バッテリ制御ユニット103、電圧制御部104、充電機構105、インバータユニット106、モータ107、空調機器制御部108、空調機器109、主制御部110およびシリアルバスSB1を備えると共に、「電力演算装置」の一例である電力測定システム10が取り外し可能に取り付けられている。なお、電気自動車100において、後述の電力測定システム10による電力値の特定に関連のない構成要素については、図示および詳細な説明を省略する。
駆動用バッテリ101は、主として電気自動車100の走行によって消費される電力を蓄電可能な二次電池で構成されている。補機用バッテリ102は、バッテリ制御ユニット103、電圧制御部104、空調機器制御部108および主制御部110や、後述する電力測定システム10の中継器3などの電子機器の動作に必要な電力を蓄電可能な二次電池で構成されている。バッテリ制御ユニット103は、主制御部110の制御下で駆動用バッテリ101の状態をモニタリングすると共に、駆動用バッテリ101からの電力の出力を制御する。
電圧制御部104は、DC/DCコンバータを備えて電圧値の変換が可能に構成されると共に、商用交流から、電力ラインL0、充電機構105および電力ラインL1を介して供給される電力や、図示しない発電機構から供給される電力を駆動用バッテリ101に電力ラインL2を介して伝送する処理(駆動用バッテリ101を充電する処理)、および駆動用バッテリ101から供給される電力、商用交流から充電機構105を介して供給される電力、および図示しない発電機構から供給される電力を補機用バッテリ102に電力ラインL3を介して供給する処理(補機用バッテリ102を充電する処理)を主制御部110の制御下で実行可能に構成されている。
また、電圧制御部104は、駆動用バッテリ101から供給される電力をインバータユニット106に電力ラインL4を介して伝送する処理、および駆動用バッテリ101から供給される電力を空調機器制御部108に電力ラインL6を介して伝送する処理を主制御部110の制御下で実行可能に構成されている。充電機構105は、商用交流から電力ラインL0を介して供給される電力をAC/DC変換して電圧制御部104に電力ラインL1を介して伝送する。
インバータユニット106は、電圧制御部104から供給される電力をDC/AC変換してモータ107に電力ラインL5を介して伝送する処理を主制御部110の制御下で実行可能に構成されている。モータ107は、インバータユニット106を介して供給される電力によって電気自動車100の駆動輪を回転させる(電気自動車100を走行させる)。なお、電気自動車100では、インバータユニット106からモータ107に供給する交流電力の周波数や電流量を変化させることでモータ107による動輪の回転速度(すなわち、車速)を変化させる構成が採用されているが、「電力演算装置」および「電力演算方法」についての理解を容易とするために、インバータユニット106におけるDC/AC変換の手順に関する詳細な説明を省略する。
空調機器制御部108は、電圧制御部104から供給される電力をDC/AC変換して空調機器109(電動コンプレッサや発熱器)に電力ラインL7を介して伝送する処理を主制御部110の制御下で実行可能に構成されている。空調機器109は、空調機器制御部108から供給される電力により、電動コンプレッサを駆動させて冷気を生成したり発熱器によって暖気を生成したりして、電気自動車100の車内温度を調整する。
主制御部110は、電気自動車100の各電子機器を総括的に制御する。この場合、本例の電気自動車100では、電気自動車100の各部の動作状態を検出するための検出器(センサユニット等:図示せず)や、主制御部110の制御下で各種の処理を実行する電子機器(バッテリ制御ユニット103、電圧制御部104、インバータユニット106および空調機器制御部108など)がシリアルバスSB1(「CAN通信用のシリアルバス」に相当する車両内通信ネットワークの一例)に接続されている。この場合、シリアルバスSB1や、後述の電力測定システム10におけるシリアルバスSB2を構成する信号線(「CANH(CAN high)」、「CANL(CAN low )」および「SG」などの信号線)は、絶縁被覆された導線(「フレーム伝送用導体」の一例)を備えて構成されている。
また、主制御部110は、検出器による検出結果を特定可能に検出器からシリアルバスSB1に出力されるCANフレームFcや、電子機器の動作状態を特定可能に電子機器からシリアルバスSB1に出力されるCANフレームFcを取得して電気自動車100の各部の動作状態を特定する。さらに、主制御部110は、特定した動作状態に応じて、動作プログラムに従い、各電子器機器を制御するための制御コマンドを特定可能なCANフレームFcをシリアルバスSB1に出力する。これにより、CANフレームFcに基づいて特定される制御コマンドに応じて、各電子機器によって予め規定された処理が実行される。なお、シリアルバスSB1(CAN通信用の通信網)に接続された検出器および電子機器などの各種ノードによるCAN通信(CANフレームの伝送)については公知のため、詳細な説明を省略する。
一方、電力測定システム10は、「電力演算方法」に従って電力値を演算可能に構成された「電力演算装置」の一例であって、図1,2に示すように、電力演算装置1、記録装置2、中継器3およびシリアルバスSB2を備えて構成されている。また、電力演算装置1は、一例として、電気自動車100等の電力演算対象設備に対して着脱可能な装置であって、図2に示すように、電圧検出部11、操作部12、表示部13、信号出力部14、処理部15および記憶部16を備えている。
電圧検出部11は、「電圧検出部」に相当し、「非接触式電圧センサ」の一例であるクランプ型の非接触式電圧センサ11aを備えて処理部15と相俟って「CANフレームをシリアルバスから読み取る読取部」を構成する。具体的には、電圧検出部11は、処理部15の制御に従い、後述するように各種機器からのシリアルバスSB1への各種CANフレームFcの伝送時にシリアルバスSB1のフレーム伝送用導体に印加される電圧(「第2の電圧」の一例)を非接触式電圧センサ11aを介してフレーム伝送用導体に対して非接触で検出し、検出した電圧の電圧レベルを特定可能な情報を処理部15に出力する。
操作部12は、電力演算装置1の動作条件(電力の演算や、演算結果の報知および記録等に関する条件)の設定操作が可能な複数の操作スイッチを備え(図示せず)、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部15に出力する。表示部13は、電力演算装置1の動作状態や、処理部15による演算結果(演算された電力値)等を処理部15の制御下で表示する。信号出力部14は、処理部15および中継器3と相俟って「CANフレーム出力部」を構成し、後述するように、演算した電力値を特定可能に処理部15によって生成されるCANフレームFcとしての電力値データフレームFcpをシリアルバスSB2に出力することで中継器3に対して電力値データフレームFcpをシリアルバスSB1に中継させる処理を実行する。
処理部15は、電力演算装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部15は、「フレーム特定部」として機能して、電気自動車100のシリアルバスSB1におけるCANフレームFcの伝送時に電圧検出部11によって検出される電圧の「電圧レベル」の変化に基づき、シリアルバスSB1を伝送されているCANフレームFcを特定する処理(「読取部」として機能して「処理部」としての処理部15自身に特定したCANフレームFcを出力する処理:「電圧値および電流値を周期的に特定する」との処理の一例)を実行する。
また、処理部15は、「処理部」として機能して、CANフレームFcのうちの電圧値データフレームFcv(「電圧値データフレーム」の一例)に基づいて特定される後述の「代表電圧値」と、CANフレームFcのうちの電流値データフレームFca(「電流値データフレーム」の一例)に基づいて特定される後述の「代表電流値」と、CANフレームFcのうちの位相差データフレームFcd(「位相差データフレーム」の一例)に基づいて特定される「位相差」、およびCANフレームFcのうちの波高率データフレームFcc(「波高率データフレーム」の一例)に基づいて特定される「波高率」のいずれかとに基づき、電力ラインを介して供給されている交流電力の電力値を演算する処理を実行する。
さらに、処理部15は、演算した電力値を特定可能な電力値データフレームFcpを生成して信号出力部14からシリアルバスSB2に出力させ、後述するように電力値データフレームFcpに基づいて記録装置2において生成される電力値データDpを記録装置2に記録させると共に、中継器3を介して電力値データフレームFcpをシリアルバスSB1に出力させる。また、処理部15は、演算した電力値を表示部13に表示させる。なお、処理部15による上記の各処理の具体的な内容については、後に詳細に説明する。
記憶部16は、処理部15の動作プログラム、およびCANフレームFcを特定するためのフレーム特定用データや、処理部15の演算結果(演算された電力値)を記憶する。
記録装置2は、図3に示すように、記録媒体21、データ入出力部22、処理部23および記憶部24を備え、電力演算装置1や中継器3と共にシリアルバスSB2に接続されている。記録媒体21は、HDDやSSD等の大容量記録媒体で構成され、処理部23の制御下で各種のデータ(後述の電力値データDp等)を記録する。データ入出力部22は、処理部23の制御に従い、外部装置(携帯型電子端末等)から入力された各データを処理部23に伝送して記録媒体21に記録させたり、記録媒体21に記録されているデータを外部装置(携帯型電子端末等)に出力したりする。
処理部23は、記録装置2を総括的に制御する。具体的には、処理部23は、電力演算装置1(信号出力部14)によってシリアルバスSB2に出力された電力値データフレームFcpを取得すると共に、取得した電力値データフレームFcpに基づいて電力値データDpを生成して記録媒体21に記録させる。また、処理部23は、外部装置からデータ入出力部22を介して各種データが伝送されたときに、そのデータを記録媒体21に記録させると共に、外部装置からの要求に従って記録媒体21から電力値データDp等を読み出してデータ入出力部22を介して外部装置に出力する。記憶部24は、処理部23の動作プログラムや、CANフレームFcを特定するためのフレーム特定用データなどを記憶する。
中継器3は、一例として、電気自動車100のシリアルバスSB1に常設される機器(電気自動車100の構成要素以外の機器から出力されたCANフレームFcをシリアルバスSB1に出力するための機器)であって、図4に示すように、電圧検出部31、信号出力部32、処理部33および記憶部34を備えている。
電圧検出部31は、電力演算装置1における電圧検出部11と同様にして、非接触式電圧センサ11aと同様のクランプ型の非接触式電圧センサ31aを備え、処理部33と相俟って「シリアルバスSB2からCANフレームFcを読み取る[読取部]」を構成する。具体的には、電圧検出部31は、処理部33の制御に従い、電力演算装置1からシリアルバスSB2に電力値データフレームFcpが出力されたときにシリアルバスSB2のフレーム伝送用導体に印加される電圧の電圧値を非接触式電圧センサ31aを介してフレーム伝送用導体に対して非接触で測定し、測定結果を処理部33に出力する。
信号出力部32は、シリアルバスSB1に常時接続されており、処理部33の制御下で電力値データフレームFcpをシリアルバスSB1に出力する。処理部33は、中継器3を総括的に制御する。具体的には、処理部33は、電力演算装置1の処理部15と同様に「フレーム特定部」として機能して、電力演算装置1からシリアルバスSB2に電力値データフレームFcpが出力されたときに電圧検出部31によって検出される(測定される)電圧値の変化に基づき、シリアルバスSB2を伝送されている電力値データフレームFcpを特定する処理を実行する。
また、処理部33は、特定した電力値データフレームFcpを信号出力部32に出力することで信号出力部32からシリアルバスSB1に電力値データフレームFcpを出力させる。なお、処理部33による上記の各処理の具体的な内容については、後に詳細に説明する。記憶部34は、処理部33の動作プログラムや、CANフレームFcを特定するためのフレーム特定用データを記憶する。
次に、電力測定システム10による電力値の特定や、特定した電力値の表示および記録の各処理の一例について説明する。なお、上記したように、中継器3については、電気自動車100のシリアルバスSB1に接続された状態(電気自動車100の装備の1つとして電気自動車100に常設された状態)となっているものとする。また、充電機構105等を介しての駆動用バッテリ101の蓄電については既に完了しているものとする。
一例として、電気自動車100の走行時にモータ107の動作に伴って消費される電力の電力値を電力測定システム10によって特定する際には、図1,2に示すように、電力演算装置1の電圧検出部11における非接触式電圧センサ11aを電気自動車100のシリアルバスSB1に装着する(シリアルバスSB1の信号線を非接触式電圧センサ11aによってクランプする)と共に、シリアルバスSB1に接続されている中継器3の電圧検出部31における非接触式電圧センサ31aを電力測定システム10のシリアルバスSB2に装着する(シリアルバスSB2の信号線を非接触式電圧センサ31aによってクランプする)。
なお、図1などでは、シリアルバスSB1に対して1つの非接触式電圧センサ11aを装着し、かつシリアルバスSB2に対して1つの非接触式電圧センサ31aを装着した状態を図示しているが、実際には、シリアルバスSB1における「CANH」および「CANL」毎の電圧値を検出するために両信号線毎に別個の非接触式電圧センサ11aを装着すると共に、シリアルバスSB2における「CANH」および「CANL」毎の電圧値を検出するために両信号線毎に別個の非接触式電圧センサ31aを装着する。以下、電力測定システム10の動作原理についての理解を容易とするために、「CANH」および「CANL」を区別することなく各部の動作について説明する。
この際には、シリアルバスSB1に対する非接触式電圧センサ11aの装着により、シリアルバスSB1を構成する上記の信号線のフレーム伝送用導体と非接触式電圧センサ11aの電極とが信号線の絶縁被覆を介して近接した状態となり、フレーム伝送用導体と電極とが容量結合した状態となる。また、シリアルバスSB2に対する非接触式電圧センサ31aの装着により、シリアルバスSB2を構成する上記の信号線のフレーム伝送用導体と非接触式電圧センサ31aの電極とが信号線の絶縁被覆を介して近接した状態となり、フレーム伝送用導体と電極とが容量結合した状態となる。
一方、電気自動車100では、アクセルペダルの操作によって走行を開始するよう指示されたときに、主制御部110が、ポジションセンサ(アクセル開度を検出するセンサ:図示せず)からシリアルバスSB1に出力されたCANフレームFc(アクセル開度を特定可能なCANフレームFc)、および車速センサ(図示せず)からシリアルバスSB1に出力されたCANフレームFc(車速を特定可能なCANフレームFc)などに基づき、モータ107をどのように動作させるかを決定する。また、主制御部110は、決定内容を示す制御データを特定可能なCANフレームFcをシリアルバスSB1に出力する。
これに応じて、インバータユニット106は、主制御部110からシリアルバスSB1に出力されたCANフレームFcに従い、モータ107を任意の回転速度で動作させるための電力の供給を要求するCANフレームFcをシリアルバスSB1に出力する。また、電圧制御部104は、インバータユニット106からシリアルバスSB1に出力されたCANフレームFcに応じて駆動用バッテリ101から電力ラインL2を介して供給される電力を予め規定された電圧値に変換して電力ラインL4を介してインバータユニット106に供給する。
また、インバータユニット106は、主制御部110からのCANフレームFcに従い、電力ラインL4を介して供給される電力(直流電力)をDC/AC変換してモータ107に電力ラインL5を介して供給する。これにより、モータ107が回転して駆動輪が回転させられる結果、車両の走行が開始される。
さらに、インバータユニット106は、モータ107に対する上記の電力供給と並行して、電力ラインL5の電力供給用導体(以下、単に「供給用導体」ともいう)に印加している電圧の電圧値(「電圧値」の一例)における予め規定された周期内の代表値である「代表電圧値」を特定可能な電圧値データフレームFcv、電力ラインL5の供給用導体を流れている電流の電流値(「電流値」の一例)における予め規定された周期内の代表値である「代表電流値」を特定可能な電流値データフレームFca、供給用導体に印加している電圧と供給用導体に流している電流との間の位相差を特定可能な位相差データフレームFcd、および供給用導体に流している電流の波高率(ピーク値と実効値との比率:クレストファクタ)を特定可能な波高率データフレームFccなどのCANフレームFcをシリアルバスSB1に出力する。
この場合、シリアルバスSB1に接続されたノードが多数のとき、すなわち、シリアルバスSB1を使用したCAN通信を行う機器が多いことでシリアルバスSB1によって何らかのCANフレームFcが伝送されている比率が高いときには、インバータユニット106から多数のCANフレームFcを短時間で周期的に出力することができない。したがって、インバータユニット106は、電力ラインL5の供給用導体に印加している「第1の電圧」の「電圧値」や、電力ラインL5の供給用導体を流れている「電流」の「電流値」として、予め規定された期間内の平均値、実効値および最大値のうちの少なくとも1つを「期間内の代表値」として規定して電圧値データフレームFcvや電流値データフレームFcaとして出力する。
この状態において、モータ107の動作に伴って消費される電力(インバータユニット106からモータ107に供給される電力)の電力値を電力測定システム10によって特定する際には、電力演算装置1の操作部12を操作することで処理開始を指示する。この際に、処理部15は、まず、シリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFcの読取りを開始する。
この場合、シリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFcは、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体に印加される電圧(「SG」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位に対する「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位)の変動、および「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体に印加される電圧(「SG」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位に対する「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電位)の変動に基づく「2線差動電圧方式」で伝送される。このCANフレームFcの伝送方式については公知のため詳細な説明を省略するが、以下、理解を容易とするために、主として「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧に着目してCANフレームFcの読取りについて説明する。
この場合、CANフレームFcの伝送時に、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体(以下、単に「伝送用導体」ともいう)の電圧と、「SG」に対応する信号線の伝送用導体の電圧(すなわち、電圧検出部11内の基準電位の電圧)との電位差が増加しているときには、伝送用導体から非接触式電圧センサ11aの電極に容量結合を介して流れ込む電流信号の電流量が増加する。また、CANフレームFcの伝送時に、「CANH」に対応する伝送用導体の電圧と、「SG」に対応する伝送用導体の電圧(電圧検出部11内の基準電位の電圧)との電位差が減少しているときには、伝送用導体から非接触式電圧センサ11aの電極に容量結合を介して流れ込む電流信号の電流量が減少する。
したがって、本例の電力測定システム10における電力演算装置1では、一例として、電圧検出部11が、非接触式電圧センサ11aの電極が「CANH」の伝送用導体と同電位となって上記の電流値が「0」となるように、電極の電位をフィードバック制御する処理を行い、その状態において電極の電位を測定することで、「CANH」の伝送用導体に印加されている電圧の「電圧レベル」を特定(測定)する処理を予め規定された周期で繰り返し実行する。また、電圧検出部11は、特定結果(電圧レベル)示す電圧データを処理部15に順次出力する。
これに応じて、処理部15は、電圧検出部11から出力される電圧データによって示される電圧値に基づき、シリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFcの内容を特定して記憶部16に記憶させる。具体的には、「CANH」に対応する伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベルを超え、かつ「CANL」に対応する伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベルを下回っているとき(「CANH」と「CANL」との電位差が予め規定されたレベルを超えているとき)に、デジタル信号の「0」が伝送されていると判別する。また、「CANH」に対応する伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベル以下で、かつ「CANL」に対応する伝送用導体に容量結合している電極の電圧が予め規定された電圧レベル以上のとき(「CANH」と「CANL」との電位差が予め規定されたレベル以下のとき)に、デジタル信号の「1」が伝送されていると判別する。
このように、非接触式電圧センサ11aにおける電極の電圧に基づいてデジタル信号の「0」および「1」のいずれが伝送されているかを逐次判定することにより、非接触式電圧センサ11aが装着されているシリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFcを特定する。
なお、本例では、電気自動車100のインバータユニット106が、CANフレームFcとして、電圧値データフレームFcvおよび電流値データフレームFcaと共に位相差データフレームFcdおよび波高率データフレームFccの双方をシリアルバスSB1に出力する構成を採用している。また、モータ107の動作時には、電圧値データフレームFcv、電流値データフレームFca、位相差データフレームFcdおよび波高率データフレームFcc以外の各種のCANフレームFcがシリアルバスSB1に出力されている。
したがって、処理部15は、電圧値データフレームFcv、電流値データフレームFca、位相差データフレームFcdおよび波高率データフレームFcc以外のCANフレームFcについても上記の方法に従って特定するが、特定したCANフレームFcのうち、電力値の演算には不要なCANフレームFcについては使用せずに、電圧値データフレームFcvと、電流値データフレームFcaと、位相差データフレームFcdおよび波高率データフレームFccの少なくとも一方(一例として、双方)とを使用して以下のような電力値の演算を実行する。
具体的には、処理部15は、まず、電圧値データフレームFcvに基づいて特定される代表電圧値(電力ラインL5の供給用導体に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」における予め規定された周期内の平均値、実効値および最大値のうちの少なくとも1つ)、電流値データフレームFcaに基づいて特定される代表電流値(電力ラインL5の供給用導体に印加を流れている「電流」「電流値」における予め規定された周期内の平均値、実効値および最大値のうちの少なくとも1つ)、位相差データフレームFcdに基づいて特定される位相差、および波高率データフレームFccに基づいて特定される波高率を表示部13にそれぞれ表示させる。
次いで、処理部15は、代表電圧値、代表電流値および位相差に基づく演算処理と、代表電圧値、代表電流値および波高率に基づく演算処理との予め規定された少なくとも一方を実行することにより、電気自動車100のインバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている電力(モータ107の動作に伴って消費されている電力)の電力値を演算すると共に、演算した電力値を表示部13に表示させる。
なお、本例とは異なるが、インバータユニット106が波高率データフレームFccを出力しない構成のときには、電圧値データフレームFcv、電流値データフレームFcaおよび位相差データフレームFcdを取得して、代表電圧値、代表電流値および位相差に基づく演算処理を実行し、インバータユニット106が位相差データフレームFcdを出力しない構成のときには、電圧値データフレームFcv、電流値データフレームFcaおよび波高率データフレームFccを取得して、代表電圧値、代表電流値および波高率に基づく演算処理を実行することで上記の電力値を演算することができる。
また、処理部15は、演算した電力値を特定可能な電力値データフレームFcpを生成すると共に、生成した電力値データフレームFcpを信号出力部14からシリアルバスSB2に出力させる。この際に、記録装置2では、処理部23が、シリアルバスSB2に出力された電力値データフレームFcpを取得すると共に、取得した電力値データフレームFcpに基づいて特定される電力値を示す電力値データDpを生成して記録媒体21に記録させる。これにより、電力演算装置1によって演算された電力値が記録装置2(記録媒体21)に記録される。
一方、本例の電力測定システム10では、電力演算装置1による電力値の演算や、記録装置2による電力値データDpの記録の処理と並行して、中継器3では、シリアルバスSB2を介して伝送されているCANフレームFc(本例では、電力値データフレームFcp)をシリアルバスSB1に出力する(中継する)処理が実行される。
この場合、前述したシリアルバスSB1でのCANフレームFcの伝送時と同様にして、シリアルバスSB2でのCANフレームFcの伝送時にも、シリアルバスSB2における「CANH」に対応する伝送用導体の電圧と、「SG」に対応する伝送用導体の電圧(すなわち、電圧検出部31内の基準電位の電圧)との電位差が増加しているときには、伝送用導体から非接触式電圧センサ31aの電極に容量結合を介して流れ込む電流信号の電流量が増加する。また、シリアルバスSB2でのCANフレームFcの伝送時に、「CANH」に対応する伝送用導体の電圧と、「SG」に対応する伝送用導体の電圧(電圧検出部31内の基準電位の電圧)との電位差が減少しているときには、伝送用導体から非接触式電圧センサ31aの電極に容量結合を介して流れ込む電流信号の電流量が減少する。
したがって、本例の電力測定システム10における中継器3では、前述した電力演算装置1における電圧検出部11と同様にして、電圧検出部31が、非接触式電圧センサ31aの電極が「CANH」の伝送用導体と同電位となって上記の電流値が「0」となるように、電極の電位をフィードバック制御する処理を行い、その状態において電極の電位を測定することで、「CANH」の伝送用導体に印加されている電圧の電圧値を特定(測定)する処理を予め規定された周期で繰り返し実行する。また、電圧検出部31は、測定結果(電圧値)示す電圧データを処理部33に順次出力する。
これに応じて、処理部33は、電圧検出部31から出力される電圧データによって示される電圧値に基づき、シリアルバスSB2を介して伝送されているCANフレームFc(本例では、電力演算装置1の信号出力部14から出力された電力値データフレームFcp)の内容を特定して信号出力部32からシリアルバスSB1に出力させる。これにより、電力測定システム10から電気自動車100のシリアルバスSB1に対して電力値データフレームFcpが出力される。したがって、例えば、主制御部110が、シリアルバスSB1を介して伝送される電力値データフレームFcpを取得し、電力ラインL5を介して供給されている電力(モータ107の動作に伴って消費されている電力)の電力を把握して、例えばテスト動作モード時の予め規定された処理を実行する。
なお、詳細な説明を省略するが、シリアルバスSB2には、電力演算装置1から出力された電力値データフレームFcp以外の各種のCANフレームFcが出力されることがある。この際に、本例の電力測定システム10(中継器3)では、一例として、処理部33が、各種CANフレームFcを特定し、特定したCANフレームFcのうちの予め規定されたCANフレームFcだけをシリアルバスSB1に出力する。これにより、電気自動車100において利用可能な任意のCANフレームFcが中継器3を介してシリアルバスSB1に出力される。
この後、電力演算装置1の操作部12の操作によって電力値の演算、表示および記録の一連の処理が指示されるまで、電力演算装置1、記録装置2および中継器3は、上記の処理を継続的に繰り返し実行する。
一方、上記のような処理を完了し、電力測定システム10による電力値の演算、表示および記録を継続する必要がなくなったときには、中継器3を除く構成要素(電力演算装置1、記録装置2およびシリアルバスSB2)を電気自動車100から取り外す。
この際に、本例の電力測定システム10では、電力演算装置1における電圧検出部11の非接触式電圧センサ11aをシリアルバスSB1の伝送用導体に対して非接触の状態(信号線を非接触式電圧センサ11aによってクランプした状態)でCANフレームFcの伝送に伴う「電圧レベル」の変化を特定する構成を採用している。したがって、シリアルバスSB1から非接触式電圧センサ11aを取り外した状態において、非接触式電圧センサ11aの装着前の状態から伝送用導体の絶縁性が低下する事態が回避される。
また、シリアルバスSB2からCANフレームFc(電力値データフレームFcp)を読み取ってシリアルバスSB1に出力する中継器3については、電気自動車100の常設機器として電気自動車100に装着した状態が維持される。したがって、シリアルバスSB1にCANフレームFcを出力するための構成要素の存在によってシリアルバスSB1の伝送用導体の絶縁性が低下する事態も回避される。
以上により、電力測定システム10による電力値の演算等に関する一連の作業が終了する。また、上記の作業によって記録装置2(記録媒体21)に記録された電力値データDpについては、記録装置2のデータ入出力部22に外部装置としての各種情報処理端末を接続することにより、記録装置2から情報処理端末に出力させることができる。これにより、外部装置としての情報処理端末によって電力値データDpを解析したり、電力値についての任意の情報を表示・印刷したりすることが可能となる。
このように、この電力測定システム10、およびその「電力演算方法」では、CAN通信用のシリアルバスSB1を介して伝送されるCANフレームFcのうちの電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」を特定可能な電圧値データフレームFcv、電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」を特定可能な電流値データフレームFca、および「第1の電圧」と「電流」との間の「位相差」を特定可能な位相差データフレームFcdをシリアルバスSB1からそれぞれ読み取り、電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、および位相差データフレームFcdに基づいて特定される「位相差」に基づいて電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算する。
したがって、この電力測定システム10および「電力演算方法」によれば、シリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、シリアルバスSB1から読み取った電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、およびシリアルバスSB1から読み取った位相差データフレームFcdに基づいて特定される「位相差」に基づき、電力ラインL5を介して供給している「電力」の「電力値」を演算することで、電力ラインL5の電力供給用導体に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」を測定するための測定装置や、電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」の「電流値」を測定するための測定装置が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
また、この電力測定システム10、およびその「電力演算方法」では、CAN通信用のシリアルバスSB1を介して伝送されるCANフレームFcのうちの電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」を特定可能な電圧値データフレームFcv、電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」を特定可能な電流値データフレームFca、および「電流」の「波高率」を特定可能な波高率データフレームFccをシリアルバスSB1からそれぞれ読み取り、電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、および波高率データフレームFccに基づいて特定される「波高率」に基づいて電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算する。
したがって、この電力測定システム10および「電力演算方法」によれば、シリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、シリアルバスSB1から読み取った電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、およびシリアルバスSB1から読み取った波高率データフレームFccに基づいて特定される「波高率」に基づき、電力ラインL5を介して供給している「電力」の「電力値」を演算することで、電力ラインL5の電力供給用導体に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」を測定するための測定装置や、電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」の「電流値」を測定するための測定装置が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
さらに、この電力測定システム10、およびその「電力演算方法」では、CANフレームFcの伝送時にシリアルバスSB1のフレーム伝送用導体に印加される第2の電圧をフレーム伝送用導体に対して非接触で検出可能な非接触式電圧センサを使用して第2の電圧を検出すると共に、検出した第2の電圧の電圧レベルの変化に基づいてシリアルバスSB1を介して伝送されたCANフレームFcを特定する。したがって、この電力測定システム10および「電力演算方法」によれば、シリアルバスSB1の各信号線におけるフレーム伝送用導体を覆っている絶縁被覆を剥がすことなくCANフレームFcを読み出すことができるため、電力値の演算のためにフレーム伝送用導体の絶縁性が低下した状態となるのを好適に回避することができる。
また、この電力測定システム10、およびその「電力演算方法」によれば、演算した電力値を特定可能なCANフレームFcとしての電力値データフレームFcpを生成してシリアルバスSB1に出力することにより、演算した電力値が供給されている設備側で、電力値を演算するための構成を備えることなく、電力測定システム10から出力した電力値データフレームFcpに基づいて特定される電力値を利用することができる。
続いて、電力測定システム10による「電力値の演算」の他の実施の形態について説明する。
上記の電力測定システム10(電力演算装置1)では、前述のような「電力値」の演算処理に代えて、電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧波形」を再現可能な情報、および電力ラインL5を流れている「電流」の「電流波形」を再現可能な情報を電気自動車100から取得することで、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算することが可能に構成されている。
この場合、電力測定システム10(電力演算装置1)が「電力値」の演算に使用する各種のCANフレームFcを伝送しているシリアルバスSB1では、接続されている各種のノードから様々なCANフレームFcが逐次出力されている。このため、シリアルバスSB1では、電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧波形」や、電力ラインL5を流れている「電流」の「電流波形」を正確に再現可能な程度に電圧値データフレームFcvや電流値データフレームFcaを短い時間間隔で次々と伝送するのが困難となっている現状がある。
一方、例えばインバータユニット106から供給される電力によって動作するモータ107は、周波数が等しくても、「電圧波形の種類(電圧波形の形状)」や「電流波形の種類(電流波形の形状)」の相違により、発生トルクや回転速度の上昇・下降率が相違する。したがって、例えば電気自動車100では、主制御部110が、モータ107に対する電力供給時の「電圧波形」や「電流波形」を特定することで、適切な走行状態を維持可能か否かを監視する構成が採用されている。
具体的には、一例として、電気自動車100では、インバータユニット106がモータ107への電力供給時(電圧制御部104から電力ラインL4を介して供給される直流電力のDC/AC変換時)に、電力ラインL5に印加する「第1の電圧」の「電圧波形」が予め区分けされた複数種類の「波形形状(「電圧波形の種別」の一例)」のうちのいずれに該当するかを特定可能な電圧波形種別データフレームFctv(「CANフレームとしての電圧波形種別データフレーム」の一例)をシリアルバスSB1に出力する。具体的には、予め区分けされた各「電圧波形の形状(種別)」毎に「種別符号」が規定されており、電圧波形種別データフレームFctvとして、この「種別符号」を特定可能なCANフレームFcが出力される。
また、インバータユニット106は、インバータユニット106がモータ107への電力供給時に、電力ラインL5に流す「電流」の「電流波形」が予め区分けされた複数種類の「波形形状(「電流波形の種別」の一例)」のうちのいずれに該当するかを特定可能な電流波形種別データフレームFcta(「CANフレームとしての電流波形種別データフレーム」の一例)をシリアルバスSB1に出力する。具体的には、予め区分けされた各「電流波形の形状(種別)」毎に「種別符号」が規定されており、電流波形種別データフレームFctaとして、この「種別符号」を特定可能なCANフレームFcが出力される。
これにより、主制御部110が、電圧波形種別データフレームFctvおよび電流波形種別データフレームFctaに基づき、どのような「電圧波形」で、どのような「電流波形」の交流電力がインバータユニット106から充電機構105に供給されているかを監視することが可能となっている。
このような電圧波形種別データフレームFctvおよび電流波形種別データフレームFctaがシリアルバスSB1を介して伝送されているときに、本例の電力測定システム10(電力演算装置1)では、電圧値データフレームFcv、電圧波形種別データフレームFctv、電流値データフレームFcaおよび電流波形種別データフレームFctaをシリアルバスSB1から読み取り、これらに基づき、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算することが可能となっている。
具体的には、前述の例と同様に電気自動車100の走行が開始されてインバータユニット106から上記の各CANフレームFcがシリアルバスSB1に出力されている状態において、操作部12の操作によって「電力値」の演算処理の開始を指示されたときに、処理部15が、まず、シリアルバスSB1を介して伝送されている各CANフレームFcの読取りを開始する。なお、シリアルバスSB1からのCANフレームFcの読み取りに関する具体的な処理については前述の例と同様のため、詳細な説明を省略する。
次いで、処理部15は、シリアルバスSB1から読み取った各CANフレームFcのうちの電圧値データフレームFcv、電圧波形種別データフレームFctv、電流値データフレームFcaおよび電流波形種別データフレームFctaだけを使用して以下のような電力値の演算を実行する。具体的には、処理部15は、まず、電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、および電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」を表示部13にそれぞれ表示させる。
また、処理部15は、電圧波形種別データフレームFctvに基づいて特定される「電圧波形の種別(形状)」、および電圧値データフレームFcvに基づいて特定した上記の「代表電圧値」に基づき、インバータユニット106によって電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の予め規定された周期内における「電圧波形」を再現し、再現した「電圧波形」を表示部13に表示させる。また、処理部15は、電流波形種別データフレームFctaに基づいて特定される「電流波形の種別(形状)」、および電流値データフレームFcaに基づいて特定した上記の「代表電流値」に基づき、インバータユニット106によって電力ラインL5に流れている「電流」の予め規定された周期内における「電流波形」を再現し、再現した「電流波形」を表示部13に表示させる。
次いで、処理部15は、再現した「電圧波形」および「電流波形」に基づき、電気自動車100のインバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている電力(モータ107の動作に伴って消費されている電力)の「電力値」を演算すると共に、演算した「電力値」を表示部13に表示させる。
また、処理部15は、演算した「電力値」を特定可能な電力値データフレームFcpを生成すると共に、生成した電力値データフレームFcpを信号出力部14からシリアルバスSB2に出力させる。これにより、前述の例と同様にして、記録装置2によって電力値データフレームFcpに対応する電力値データDpが記録されると共に、中継器3によってシリアルバスSB1に電力値データフレームFcpが中継(出力)される。この後、電力演算装置1の操作部12の操作によって電力値の演算、表示および記録の一連の処理が指示されるまで、電力演算装置1、記録装置2および中継器3によって上記の処理が継続的に繰り返し実行される。
このように、この電力測定システム10、およびその「電力演算方法」では、CAN通信用のシリアルバスSB1を介して伝送されるCANフレームFcのうちの電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」を特定可能な電圧値データフレームFcv、予め規定された周期内における「第1の電圧」の「電圧波形の種別」を特定可能な電圧波形種別データフレームFctv、電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」を特定可能な電流値データフレームFca、および予め規定された周期内における「電流」の「電流波形の種別」を特定可能な電流波形種別データフレームFctaをシリアルバスSB1からそれぞれ読み取り、電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、および電圧波形種別データフレームFctvに基づいて特定される「電圧波形の種別」に基づいて「第1の電圧」の「電圧波形」を再現し、かつ電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、および電流波形種別データフレームFctaに基づいて特定される「電流波形の種別」に基づいて「電流」の「電流波形」を再現すると共に、再現した「電圧波形」および「電流波形」に基づいて電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算する。
したがって、この電力測定システム10および「電力演算方法」によれば、シリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcvおよび電圧波形種別データフレームFctvに基づいて特定される「代表電圧値」および「電圧波形の種別」に基づいて再現される「電圧値」の「電圧波形」と、シリアルバスSB1から読み取った電流値データフレームFcaおよび電流波形種別データフレームFctaに基づいて特定される「代表電流値」および「電流波形の種別」に基づいて再現される「電流値」の「電流波形」とに基づき、電力ラインL5を介して供給している「電力」の「電力値」を演算することで、電力ラインL5の電力供給用導体に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」を測定するための測定装置や、電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」の「電流値」を測定するための測定装置が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
次に、「電力演算装置」および「電力演算方法」の他の実施の形態について添付図面を参照して説明する。なお、上記の電力測定システム10と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図5に示す電力測定システム10Aは、「電力演算方法」に従って電力値を演算可能に構成された「電力演算装置」の他の一例であって、前述の電力測定システム10における電力演算装置1に代えて電力演算装置1Aを備えると共に、記録装置2、中継器3(いずれも図示せず)およびシリアルバスSB2を備えて構成されている。また、電力演算装置1Aは、電力演算装置1と同様に電気自動車100等の電力演算対象設備に対して着脱可能な装置であって、電圧検出部11、操作部12、表示部13、信号出力部14、処理部15および記憶部16を備えると共に、電流測定部17を備えて構成されている。
電流測定部17は、「電流測定部」に相当し、「非接触式電流センサ」の一例であるクランプ型の非接触式電流センサ17aを備えている。この電流測定部17は、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して電力が供給されている状態において電力ラインL5の供給用導体を流れている電流の電流値(「電流値」の一例)を非接触式電流センサ17aを介して供給用導体に対して非接触で測定し、測定結果を示す電流値データDa(「電流値データ」の一例)を処理部15に出力する。
この電力測定システム10Aによる電力値の演算(測定)、表示および記録に際しては、図5に示すように、電圧検出部11の非接触式電圧センサ11aを電気自動車100のシリアルバスSB1に装着する(シリアルバスSB1の信号線を非接触式電圧センサ11aによってクランプする)と共に、シリアルバスSB1に接続されている中継器3の電圧検出部31における非接触式電圧センサ31aを電力測定システム10AのシリアルバスSB2に装着し(シリアルバスSB2の信号線を非接触式電圧センサ31aによってクランプし)、さらに、電気自動車100の電力ラインL5に非接触式電流センサ17aを装着する(電力ラインL5を非接触式電流センサ17aによってクランプする)。この際には、電力ラインL5に対する非接触式電流センサ17aの装着により、電力ラインL5の供給用導体と非接触式電流センサ17aの検出用コイルとが電線の絶縁被覆および非接触式電流センサ17aのケーシング等を介して近接した状態となる。
次いで、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して電力が供給されている状態において、電力演算装置1Aの操作部12を操作することで処理開始を指示する。
この際に、処理部15は、まず、シリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFc(電圧値データフレームFcv、位相差データフレームFcd、および波高率データフレームFcc等)の読取りを開始させる。なお、電圧検出部11によるCANフレームFcの特定については、電力演算装置1における上記の処理と同様のため、詳細な説明を省略する。これにより、電力ラインL5の供給用導体に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」を特定可能な電圧値データフレームFcv、「第1の電圧」と「電流」との間の「位相差」を特定可能な位相差データフレームFcd、および/または「電流」の「波高率」を特定可能な波高率データフレームFccが特定される。
また、処理部15は、「第1の電圧」に関する上記のCANフレームFcの読み取りと並行して、電流測定部17を制御して「電流値」の測定を開始させる。これに応じて、電流測定部17は、電力ラインL5の供給用導体を流れている電流の電流値を予め指定された測定周期(サンプリング周期)で測定して電流値データDaを生成し、生成した電流値データDaを処理部15に出力する。また、処理部15は、電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、および電流値データDaに基づいて特定される電流値における予め規定された周期内の「代表電流値」を表示部13に表示させる。
次いで、処理部15は、「代表電圧値」および「代表電流値」と、位相差データフレームFcdに基づいて特定される「位相差」とに基づく「電力値」の演算処理と、「代表電圧値」および「代表電流値」と波高率データフレームFccに基づいて特定される「波高率」とに基づく「電力値」の演算処理とのいずれか少なくとも一方を実行する。これにより、前述した電力測定システム10による演算処理時と同様にして、電気自動車100のインバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている「電力(モータ107の動作に伴って消費されている電力)」の「電力値」が演算され、演算された「電力値」が表示部13に表示される。
また、処理部15は、演算した電力値を特定可能な電力値データフレームFcpを生成すると共に、生成した電力値データフレームFcpを信号出力部14からシリアルバスSB2に出力させる。これにより、前述した電力測定システム10による一連の処理時と同様にして、電力演算装置1Aから出力された電力値データフレームFcpに基づいて特定される電力値を示す電力値データDpが記録装置2の記録媒体21に記録されると共に、中継器3を介してシリアルバスSB1に電力値データフレームFcpが出力される。
このように、この電力測定システム10A、およびその「電力演算方法」では、CAN通信用のシリアルバスSB1を介して伝送されるCANフレームFcとしての電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」を特定可能な電圧値データフレームFcv、および「第1の電圧」と電力ラインL5を流れている「電流」との間の「位相差」を特定可能な位相差データフレームFcdをシリアルバスSB1からそれぞれ読み取ると共に「電流値」を測定し、電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、測定した「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」、および位相差データフレームFcdに基づいて特定される「位相差」に基づいて電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算する。
したがって、この電力測定システム10Aおよび「電力演算方法」によれば、シリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、および位相差データフレームFcdに基づいて特定される「位相差」と、電流測定部17によって測定した「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」とに基づき、電力ラインL5を介して供給している「電力」の「電力値」を演算することで、電力ラインL5の電力供給用導体に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」を測定するための測定装置が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
また、この電力測定システム10A、およびその「電力演算方法」では、CAN通信用のシリアルバスSB1を介して伝送されるCANフレームFcのうちの電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」を特定可能な電圧値データフレームFcvをシリアルバスSB1から読み取ると共に電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」を測定し、電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、測定した「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」、および「電流値」に基づいて特定される「電流」の「波高率」に基づいて電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算する。
したがって、この電力測定システム10Aおよび「電力演算方法」によれば、シリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、および波高率データフレームFccに基づいて特定される「波高率」と、電流測定部17によって測定した「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」とに基づき、電力ラインL5を介して供給している「電力」の「電力値」を演算することで、電力ラインL5の電力供給用導体に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」を測定するための測定装置が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
さらに、この電力測定システム10A、およびその「電力演算方法」によれば、電力ラインL5の電力供給用導体に対して非接触で「電流値」を測定可能な非接触式電流センサ17aを使用して電流値を測定することにより、電力ラインL5の電力供給用導体を覆っている絶縁被覆を剥がすことなく電力供給用導体を流れている「電流」の「電流値」を測定することができるため、「電力値」の演算のために電力供給用導体の絶縁性が低下した状態となるのを好適に回避することができると共に、電気自動車100の実使用時の運用状態と同様の状態で「電力値」を特定することができる。
続いて、電力測定システム10Aによる「電力値の演算」の他の実施の形態について説明する。
上記の電力測定システム10A(電力演算装置1A)では、前述のような「電力値」の演算処理に代えて、電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧波形」を再現可能な情報を電気自動車100から取得すると共に、電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」を測定することで、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算することが可能に構成されている。
具体的には、電気自動車100において前述の電圧波形種別データフレームFctvが電圧値データフレームFcvと共にシリアルバスSB1を介して伝送されているときに、本例の電力測定システム10A(電力演算装置1A)では、これらのCANフレームFcをシリアルバスSB1から読み取り、読み取ったCANフレームFcに基づいて「第1の電圧」の「電圧波形」を再現する。また、処理部15は、電流測定部17を制御して「電流値」を測定させ、出力される電流値データDaに基づいて「電流波形」を再現する。
次いで、処理部15は、再現した「電圧波形」および「電流波形」に基づき、電気自動車100のインバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている電力(モータ107の動作に伴って消費されている電力)の「電力値」を演算すると共に、演算した「電力値」を表示部13に表示させる。
また、処理部15は、演算した「電力値」を特定可能な電力値データフレームFcpを生成すると共に、生成した電力値データフレームFcpを信号出力部14からシリアルバスSB2に出力させる。これにより、前述の例と同様にして、記録装置2によって電力値データフレームFcpに対応する電力値データDpが記録されると共に、中継器3によってシリアルバスSB1に電力値データフレームFcpが中継(出力)される。この後、電力演算装置1の操作部12の操作によって電力値の演算、表示および記録の一連の処理が指示されるまで、電力演算装置1、記録装置2および中継器3によって上記の処理が継続的に繰り返し実行される。
このように、この電力測定システム10A、およびその「電力演算方法」では、CAN通信用のシリアルバスSB1を介して伝送されるCANフレームFcのうちの電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」を特定可能なCANフレームFc、および予め規定された周期内における「第1の電圧」の「電圧波形の種別」を特定可能な電圧波形種別データフレームFctvをシリアルバスSB1からそれぞれ読み取ると共に電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」を測定し、電圧値データフレームFcvに基づいて特定される「代表電圧値」、および電圧波形種別データフレームFctvに基づいて特定される「電圧波形の種別」に基づいて「第1の電圧」の「電圧波形」を再現すると共に、再現した「電圧波形」、および測定した「電流値」の「電流波形」に基づいて電力ラインL5を介して供給されている電力の電力値を演算する。
したがって、この電力測定システム10Aおよび「電力演算方法」によれば、シリアルバスSB1から読み取った電圧値データフレームFcvおよび電圧波形種別データフレームFctvに基づいて特定される「代表電圧値」および「電圧波形の種別」に基づいて再現される「電圧値」の「電圧波形」と、電流測定部17によって測定した「電流値」の「電流波形」とに基づき、電力ラインL5を介して供給している「電力」の「電力値」を演算することで、電力ラインL5の電力供給用導体に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」を測定するための測定装置が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
次いで、「電力演算装置」および「電力演算方法」のさらに他の実施の形態について添付図面を参照して説明する。なお、上記の電力測定システム10,10Aと同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図6に示す電力測定システム10Bは、「電力演算方法」に従って電力値を演算可能に構成された「電力演算装置」のさらに他の一例であって、前述の電力測定システム10における電力演算装置1や電力測定システム10Aにおける電力演算装置1Aに代えて電力演算装置1Bを備えると共に、記録装置2、中継器3(いずれも図示せず)およびシリアルバスSB2を備えて構成されている。また、電力演算装置1Bは、電力演算装置1と同様に電気自動車100等の電力演算対象設備に対して着脱可能な装置であって、電圧検出部11、操作部12、表示部13、信号出力部14、処理部15および記憶部16を備えると共に、電圧測定部18を備えて構成されている。
電圧測定部18は、「電圧測定部」に相当し、「非接触式電圧センサ」の一例であるクランプ型の非接触式電圧センサ18aを備えている。この電圧測定部18は、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して電力が供給されている状態において電力ラインL5の供給用導体に印加されている電圧の電圧値(「第1の電圧」の「電圧値」の一例)を非接触式電圧センサ18aを介して供給用導体に対して非接触で測定し、測定結果を示す電圧値データDv(「電圧値データ」の一例)を処理部15に出力する。
この電力測定システム10Bによる電力値の演算(測定)、表示および記録に際しては、図6に示すように、電圧検出部11の非接触式電圧センサ11aを電気自動車100のシリアルバスSB1に装着する(シリアルバスSB1の信号線を非接触式電圧センサ11aによってクランプする)と共に、シリアルバスSB1に接続されている中継器3の電圧検出部31における非接触式電圧センサ31aを電力測定システム10BのシリアルバスSB2に装着し(シリアルバスSB2の信号線を非接触式電圧センサ31aによってクランプし)、さらに、電気自動車100の電力ラインL5に非接触式電圧センサ18aを装着する(電力ラインL5を非接触式電圧センサ18aによってクランプする)。この際には、電力ラインL5に対する非接触式電圧センサ18aの装着により、電力ラインL5の供給用導体と非接触式電圧センサ18aの電極とが電線の絶縁被覆を介して近接した状態となり、供給用導体と電極とが容量結合した状態となる。
次いで、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して電力が供給されている状態において、電力演算装置1Bの操作部12を操作することで処理開始を指示する。
この際に、処理部15は、まず、シリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFc(電流値データフレームFca、位相差データフレームFcdおよび波高率データフレームFcc等)の読取りを開始させる。なお、電圧検出部11によるCANフレームFcの特定については、電力演算装置1,1Aにおける上記の処理と同様のため、詳細な説明を省略する。これにより、電力ラインL5の供給用導体を流れている「電流」の「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」を特定可能な電流値データフレームFca、「第1の電圧」と「電流」との間の「位相差」を特定可能な位相差データフレームFcd、および/または「電流」の「波高率」を特定可能な波高率データフレームFccが特定される。
また、処理部15は、「電流値」に関する上記のCANフレームFcの読み取りと並行して、電圧測定部18を制御して「電圧値」の測定を開始させる。これに応じて、電圧測定部18は、電力ラインL5の供給用導体に印加されている電圧の電圧値を予め指定された測定周期(サンプリング周期)で測定して電圧値データDvを生成し、生成した電圧値データDvを処理部15に出力する。なお、電圧測定部18による非接触式電圧センサ18aを介しての「電圧値」の測定は、電圧検出部11による非接触式電圧センサ11aを介しての「電圧値」の測定等の同様の原理のため、詳細な説明を省略する。また、処理部15は、電圧値データDvに基づいて特定される「電圧値」の予め規定された周期内の「代表電圧値」、および電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」を表示部13に表示させる。
次いで、処理部15は、「代表電圧値」、「代表電流値」、および位相差データフレームFcdに基づいて特定される「位相差」に基づく「電力値」の演算処理と、「代表電圧値」、「代表電流値」、および波高率データフレームFccに基づいて特定される「波高率」に基づく「電力値」の演算処理とのいずれか少なくとも一方を実行する。これにより、前述した電力測定システム10,10Aによる演算処理時と同様にして、電気自動車100のインバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている「電力(モータ107の動作に伴って消費されている電力)」の「電力値」が演算され、演算された「電力値」が表示部13に表示される。
また、処理部15は、演算した電力値を特定可能な電力値データフレームFcpを生成すると共に、生成した電力値データフレームFcpを信号出力部14からシリアルバスSB2に出力させる。これにより、前述した電力測定システム10,10Aによる一連の処理時と同様にして、電力演算装置1Bから出力された電力値データフレームFcpに基づいて特定される電力値を示す電力値データDpが記録装置2の記録媒体21に記録されると共に、中継器3を介してシリアルバスSB1に電力値データフレームFcpが出力される。
このように、この電力測定システム10B、およびその「電力演算方法」では、CAN通信用のシリアルバスSB1を介して伝送されるCANフレームFcのうちの電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」を特定可能な電流値データフレームFca、および電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」と「電流」との間の「位相差」を特定可能な位相差データフレームFcdをシリアルバスSB1からそれぞれ読み取ると共に「第1の電圧」の「電圧値」を測定し、測定した「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」、電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、および位相差データフレームFcdに基づいて特定される「位相差」に基づいて電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算する。
したがって、この電力測定システム10Bおよび「電力演算方法」によれば、電圧測定部18によって測定した「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」、シリアルバスSB1から読み取った電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、および位相差データフレームFcdに基づいて特定される「位相差」に基づき、電力ラインL5を介して供給している「電力」の「電力値」を演算することで、電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」の「電流値」を測定するための測定装置が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
また、この電力測定システム10B、およびその「電力演算方法」では、CAN通信用のシリアルバスSB1を介して伝送されるCANフレームFcのうちの電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」を特定可能な電流値データフレームFca、および「電流」の「波高率」を特定可能な波高率データフレームFccをシリアルバスSB1からそれぞれ読み取ると共に電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」を測定し、測定した「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」、電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、および波高率データフレームFccに基づいて特定される「波高率」に基づいて電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算する。
したがって、この電力測定システム10Bおよび「電力演算方法」によれば、電圧測定部18によって測定した「電圧値」における予め規定された周期内の「代表電圧値」、シリアルバスSB1から読み取った電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、および波高率データフレームFccに基づいて特定される「波高率」に基づき、電力ラインL5を介して供給している「電力」の「電力値」を演算することで、電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」の「電流値」を測定するための測定装置が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
さらに、この電力測定システム10B、およびその電力演算方法によれば、電力ラインL2の電力供給用導体に対して非接触で「電圧値」を測定可能な非接触式電圧センサ18aを使用して「電圧値」を測定することにより、電力ラインL5の電力供給用導体を覆っている絶縁被覆を剥がすことなく電力供給用導体に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」を測定することができるため、電力値の演算のために電力供給用導体の絶縁性が低下した状態となるのを好適に回避することができると共に、電気自動車100の実使用時の運用状態と同様の状態で「電力値」を特定することができる。
続いて、電力測定システム10Bによる「電力値の演算」の他の実施の形態について説明する。
上記の電力測定システム10B(電力演算装置1B)では、前述のような「電力値」の演算処理に代えて、電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」を測定し、かつ、電力ラインL5を流れている「電流」の「電流波形」を再現可能な情報を電気自動車100から取得することで、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算することが可能に構成されている。
具体的には、電気自動車100において前述の電流波形種別データフレームFctaが電流値データフレームFcaと共にシリアルバスSB1を介して伝送されているときに、本例の電力測定システム10B(電力演算装置1B)では、これらのCANフレームFcをシリアルバスSB1から読み取り、読み取ったCANフレームFcに基づいて「電流値」の「電流波形」を再現する。また、処理部15は、電圧測定部18を制御して「電圧値」を測定させ、出力される電圧値データDvに基づいて「電圧波形」を再現する。
次いで、処理部15は、再現した「電圧波形」および「電流波形」に基づき、電気自動車100のインバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている電力(モータ107の動作に伴って消費されている電力)の「電力値」を演算すると共に、演算した「電力値」を表示部13に表示させる。
また、処理部15は、演算した「電力値」を特定可能な電力値データフレームFcpを生成すると共に、生成した電力値データフレームFcpを信号出力部14からシリアルバスSB2に出力させる。これにより、前述の例と同様にして、記録装置2によって電力値データフレームFcpに対応する電力値データDpが記録されると共に、中継器3によってシリアルバスSB1に電力値データフレームFcpが中継(出力)される。この後、電力演算装置1の操作部12の操作によって電力値の演算、表示および記録の一連の処理が指示されるまで、電力演算装置1、記録装置2および中継器3によって上記の処理が継続的に繰り返し実行される。
このように、この電力測定システム10B、およびその「電力演算方法」では、CAN通信用のシリアルバスSB1を介して伝送されるCANフレームFcのうちの電力ラインL5を流れている「電流」の「電流値」における予め規定された周期内の「代表電流値」を特定可能な電流値データフレームFca、および予め規定された周期内における「電流」の「電流波形の種別」を特定可能な電流波形種別データフレームFctaをシリアルバスSB1からそれぞれ読み取ると共に電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」を測定し、電流値データフレームFcaに基づいて特定される「代表電流値」、および電流波形種別データフレームFctaに基づいて特定される「電流波形の種別」に基づいて「電流」の「電流波形」を再現すると共に、測定した「電圧値」の「電圧波形」、および再現した「電流波形」に基づいて電力ラインL5を介して供給されている「電力」の「電力値」を演算する。
したがって、この電力測定システム10Bおよび「電力演算方法」によれば、シリアルバスSB1から読み取った電流値データフレームFcaおよび電流波形種別データフレームFctaに基づいて特定される「代表電流値」および「電流波形の種別」に基づいて再現される「電流値」の「電流波形」と、電圧測定部18によって測定した「電圧値」の「電圧波形」とに基づき、電力ラインL5を介して供給している「電力」の「電力値」を演算することで、電力ラインL5の電力供給用導体を流れている「電流」の「電流値」を測定するための測定装置が不要となる分だけ、「電力値」を低コストで演算することができる。
なお、「電力演算装置」の構成、および「電力演算方法」の手順は、上記の電力測定システム10,10A,10Bの構成、およびその「電力演算方法」の手順の例に限定されない。例えば、電気自動車100のシリアルバスSB1からの非接触式電圧センサ11aを介してのCANフレームFcの読み取りに際して、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧、および「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体の電圧を電圧検出部11によってそれぞれ検出し、処理部15が、検出された両フレーム伝送用導体の電圧の差に基づいて、シリアルバスSB1を介して伝送されているCANフレームFcの内容を特定する構成・方法の例について説明したが、次の構成を採用することもできる。
具体的には、「2線差動電圧方式」で伝送されるCANフレームFcの読み取りに際しては、前述の例の電力演算装置1,1A,1Bにおける電圧検出部11に代えて、図7に示す電圧検出部50を備えて「電力演算装置」を構成することにより、処理部15によるCANフレームFcの読み取り(内容の特定)を正確かつ容易に行うことが可能となる。この電圧検出部50は、同図に示すように、増幅器51h,51l、差分回路(一例として、トランス)52、増幅器53およびA/D変換器54を備えて構成されている。
前述の電圧検出部11に代えて上記の電圧検出部50を備えた電力演算装置1,1A,1BによってシリアルバスSB1からCANフレームFcを読み取る際には、「CANH」に対応する信号線、および「CANL」に対応する信号線に非接触式電圧センサ11aをそれぞれ装着する。この状態においてシリアルバスSB1にCANフレームFcが伝送されたときには、「CANH」に対応する信号線のフレーム伝送用導体(以下、「「CANH」の伝送用導体」ともいう)と非接触式電圧センサ11aの検出用電極との間の容量結合を介して、「CANH」の伝送用導体の電位に応じて流れる電流に応じた電圧が増幅器51hによって増幅されると共に、「CANL」に対応する信号線のフレーム伝送用導体(以下、「「CANL」の伝送用導体」ともいう)と非接触式電圧センサ11aの検出用電極との間の容量結合を介して、「CANL」の伝送用導体の電位に応じて流れる電流に応じた電圧が増幅器51lによって増幅される。
また、増幅器51hからの出力電圧と増幅器51lからの出力電圧の差分に対応する電圧が差分回路52から出力され、この出力電圧が増幅器53によって増幅されてA/D変換器54によってA/D変換されて電圧値データとして処理部15に出力される。一方、処理部15は、A/D変換器54から出力された電圧値データの値が予め規定された電圧値レベル以上のときに、デジタル信号の「0」が伝送されていると判別する。また、処理部15は、A/D変換器54から出力された電圧値データの値が予め規定された電圧値レベルを下回っているときに、デジタル信号の「1」が伝送されていると判別する。これにより、前述した電圧検出部11を備えた電力演算装置1,1A,1BにおけるCANフレームFcの読み取り時と同様にして、シリアルバスSB1を伝送されているCANフレームFcの内容が特定される。
また、電気自動車100のシリアルバスSB1からのCANフレームFcの読み取りに際して、フレーム伝送用導体に対して非接触で非接触式電圧センサ11aを介して「第2の電圧」を検出し、その「電圧レベル」の変化に基づいてCANフレームFcを特定する「読取部」を有する電力測定システム10,10A,10Bの例について説明したが、シリアルバスSB1のフレーム伝送用導体に対して直接接触(直接接続)した信号線を介してシリアルバスSB1からCANフレームFcを読み取る「読取部」を備えて「電力演算装置」を構成することもできる(図示せず)。
また、電気自動車100の電力ラインL5を流れている電流の「電流値」の測定に際して、電力供給用導体に対して非接触で非接触式電流センサ17aを介して「電流値」を測定する電流測定部17を有する電力測定システム10Aの例について説明したが、電力ラインL5の電力供給用導体に対して直接接触して「電流値」を測定する「電流測定部」を備えて「電力演算装置」を構成することもできる(図示せず)。さらに、電気自動車100の電力ラインL5に印加されている「第1の電圧」の「電圧値」の測定に際して、電力供給用導体に対して非接触で非接触式電圧センサ18aを介して「電圧値」を測定する電圧測定部18を有する電力測定システム10Bの例について説明したが、電力ラインL5の電力供給用導体に対して直接接触して「電圧値」を測定する「電圧測定部」を備えて「電力演算装置」を構成することもできる(図示せず)。
また、演算した「電力値」を特定可能な電力値データDpを記録する記録装置2を備えた電力測定システム10,10A,10Bの例について説明したが、「電力値データ」を記録する構成は「電力演算装置」に必須の構成要素ではないため、「電力値データ」を記録しない構成を採用することもできる。さらに、演算した「電力値」を特定可能な電力値データフレームFcpを中継器3からシリアルバスSB1に出力する構成の電力測定システム10,10A,10Bを例に挙げて説明したが、「シリアルバス」に「電力値データフレーム」を出力する構成は「電力演算装置」に必須の構成要素ではないため、「電力値データフレーム」を出力しない構成を採用することもできる。
また、インバータユニット106からモータ107に電力ラインL5を介して供給されている交流電力の「電力値」を演算する例について説明したが、「電力演算装置」および「電力演算方法」によって演算する「電力値」は、これに限定されず、例えば、空調機器制御部108から空調機器109に電力ラインL7を介して供給されている交流電力を上記の例と同様の構成・方法に従って演算することもできる。
また、バッテリ制御ユニット103、電圧制御部104、インバータユニット106、空調機器制御部108および主制御部110などが1つのシリアルバスSB1に接続されている電気自動車100の電力ラインL5,L7を対象として「電力値」を演算する例について説明したが、「電力値」を演算する対象の「電力ライン」が配設された装置やシステムのなかには、「中継器」を介して「CANフレーム」が中継される複数の「シリアルバス」が配設されているものも存在する。
一例として、図8に示す電気自動車100Aは、前述した電気自動車100におけるシリアルバスSB1に代えて、中継器130を介して接続された複数の(本例では、2つの)シリアルバスSB1m,SB1sを備えている点を除き、電気自動車100と同様に構成されている。なお、電気自動車100Aにおいて電気自動車100と同様の機能を有する構成要素や、電力測定システム10,10A,10Bの各構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
中継器130は、「中継器」の一例であって、シリアルバスSB1m,SB1sと相俟って電気自動車100AにおけるCANフレームFCの伝送路(通信ネットワーク)を構成する。具体的には、中継器130は、シリアルバスSB1m,SB1sの間(シリアルバスSB1mに接続された機器と、シリアルバスSB1sに接続された機器との間)で各種のCANフレームFcを中継する。また、シリアルバスSB1m,SB1sは、「中継器を介してCANフレームが中継される複数のシリアルバス」に相当し、一例として、両シリアルバスSB1m,SB1sが同一のCANプロトコルに従って各種のCANフレームFcを伝送可能に構成されている。
この場合、電気自動車100Aでは、一例として、前述の電圧値データフレームFcvや電流値データフレームFcaなどの「電力値」の演算に必要なCANフレームFCを出力するインバータユニット106など(以下、「電力値」の演算に必要なCANフレームFCを出力する機器(CANフレーム出力機器)を総称して「出力機器120」ともいう)、および主制御部110等の主要機器がシリアルバスSB1mに接続されると共に、主要機器を補完する機器がシリアルバスSB1sに接続されている。また、本例の電気自動車100Aでは、一例として、中継器130が、シリアルバスSB1mを介して伝送される各種CANフレームFcのうちの予め規定されたCANフレームFcをシリアルバスSB1sに中継すると共に、シリアルバスSB1sを介して伝送される各種CANフレームFcのうちの予め規定されたCANフレームFcをシリアルバスSB1mに中継する構成が採用されている。
さらに、本例の電気自動車100Aでは、一例として、電気自動車100Aの整備作業時に電気自動車100Aの各所の状態を診断するための診断機を接続可能な接続用コネクタ140(Data Link Connector )がシリアルバスSB1sに配設されており、シリアルバスSB1sを介して伝送されている各種CANフレームFcを接続用コネクタ140に接続した機器によって読み取ったり、接続用コネクタ140に接続した機器からシリアルバスSB1sに各種のCANフレームFcを出力したりすることが可能となっている。なお、本例では、シリアルバスSB1mに接続された主制御部110および出力機器120を除くノードや、シリアルバスSB1sに接続されたノードの図示および説明を省略する。
一方、上記のような電気自動車100Aを対象として前述の電力測定システム10,10A,10Bによって「電力値」を演算する際には、両シリアルバスSB1m,SB1sのうちの「電力値の演算に必要なCANフレームを出力するCANフレーム出力機器が接続されたシリアルバス」の一例であるシリアルバスSB1mに非接触式電圧センサ11aを装着して、電圧値データフレームFcvや電流値データフレームFcaなどをシリアルバスSB1mから読み取るのが好ましい。
具体的には、「電力値」を演算する対象の電気自動車100Aでは、前述したように、シリアルバスSB1mを介して伝送される各種CANフレームFcのうちの一部が中継器130によってシリアルバスSB1sに中継されてシリアルバスSB1sを介して伝送される。しかしながら、出力機器120からシリアルバスSB1mに出力される電圧値データフレームFcvや電流値データフレームFcaのように、出力頻度が高いCANフレームFcや、劣化や改竄が生じたときに電気自動車100Aの安全性が損なわれるおそれのあるCANフレームFcについては、常態においてシリアルバスSB1mからシリアルバスSB1sに中継されない構成や、予め規定された数おきに1つのCANフレームFcが抽出されてシリアルバスSB1mからシリアルバスSB1sに伝送される構成が採用されている。このため、シリアルバスSB1mから読み取ることができるCANフレームFcだけでは、電力測定システム10,10A,10Bによって「電力値」を正確に演算するのが困難となっている。
また、シリアルバスSB1mからシリアルバスSB1sに中継されていないCANフレームFcのうちの「電力値」の演算に必要なCANフレームFcをシリアルバスSB1mからシリアルバスSB1sに中継させるように中継器130に対して制御コマンドを送信して、必要なCANフレームFcのすべてを中継させることにより、シリアルバスSB1sから読み取ったCANフレームFcに基づいて「電力値」を演算できる可能性がある。しかしながら、中継器130によるCANフレームFcの中継に要する時間に起因して、「電力値」の演算に必要なCANフレームFcの取得に遅延が生じたり、シリアルバスSB1mからシリアルバスSB1sに中継されるCANフレームFcの増加に伴って、常態においてシリアルバスSB1sを介して伝送されるべきCANフレームFcの伝送が妨げられたりするおそれがある。
したがって、中継器130を介してCANフレームFcが中継される複数のシリアルバスSB1m,SB1sのうちの「電力値」の演算に必要なCANフレームFcを出力する出力機器120等が接続されたシリアルバスSB1mから「電力値」の演算に必要なCANフレームFcを読み取ることにより、CANフレームFcの中継を指示する制御コマンドを中継器130に出力することなく、「電力値」の演算に必要なCANフレームFcを読み取ることができると共に、シリアルバスSB1mからシリアルバスSB1sに、「電力値」の演算に必要な大量のCANフレームFcが中継される事態が回避されるため、シリアルバスSB1sにおけるCANフレームFcの伝送を阻害することなく、「電力値」を演算することができる。
なお、同一のCANプロトコルに従って各種のCANフレームFcを伝送可能なシリアルバスSB1m,SB1sが中継器130によって接続された電気自動車100Aを対象として「電力値」を演算する例について説明したが、「電力値」の演算対象のなかには、互いに相違するCANプロトコルに従って各種のCANフレームを各々伝送可能な複数のシリアルバスが配設されたもの、すなわち、いずれかのシリアルバスから他のシリアルバスにCANフレームを中継する際に、「中継器(ゲートウェイ)」においてプロトコル変換を行う必要があるものも存在する。
このような環境下で、CANフレーム出力機器が接続されたシリアルバス以外のシリアルバス(CANフレーム出力機器が接続されたシリアルバスのCANプロトコルとは相違するCANプロトコルでCANフレームが伝送されるシリアルバス)から「電力値」の演算に必要なCANフレームを読み取るときには、「中継器」におけるプロトコル変換処理に長い時間を要するため、演算に必要な電圧値や電流値をリアルタイムに特定するのが困難となるおそれがある。また、「中継器(ゲートウェイ)」の処理能力が低いときには、「電力値」の演算に必要なCANフレームのすべてを中継(プロトコル変換)することが困難となる。したがって、上記の例のように、「CANフレーム出力機器」が接続されているシリアルバスから必要なCANフレームを読み取るのが好ましい。
また、本例の電気自動車100AのようにシリアルバスSB1sに接続用コネクタ140が配設されているときには、電力測定システム10,10A,10Bにおける非接触式電圧センサ11aに代えて接続用コネクタ140に接続可能な接続用コネクタ(図示せず)を電力演算装置1,1A,1Bに接続して、シリアルバスSB1bのフレーム伝送用導体に対して直接接触(直接接続)した信号線を介してシリアルバスSB1sからCANフレームFcを読み取ることもできる。
しかしながら、「電力値」の演算に必要なCANフレームFc(出力機器120から出力されたCANフレームFc)のすべてをシリアルバスSB1mからシリアルバスSB1sに中継させることができないときには、接続用コネクタ140から読み取ったCANフレームFcだけでは「電力値」を演算することができない。したがって、「電力値」の演算に必要なCANフレームFcをシリアルバスSB1mから読み取る必要が生じるが、上記の電力測定システム10,10A,10Bにおける非接触式電圧センサ11aを備えた「読取部」を備えていないときには、シリアルバスSB1mの各信号線におけるフレーム伝送用導体を覆っている絶縁被覆を剥がすなどして、フレーム伝送用導体からCANフレームに対応する電圧信号を読み取らなくてはならない。
これに対して、上記の電力測定システム10,10A,10Bでは、非接触式電圧センサ11aを介してフレーム伝送用導体に対して非接触でCANフレームFcを読取り可能に構成されているため、「電力値」の演算に必要なCANフレームFcのすべてをシリアルバスSB1sに中継可能であるか否かや、シリアルバスSB1sに接続用コネクタ140が配設されているか否かを問わず、また、いずれの信号線も傷付けることなく、「電力値」の演算に必要なCANフレームFcのすべてを確実に読み取ることができる。
この場合、例えば、新型車両の開発時には、シリアルバスSB1m,SB1sの耐ノイズ性に関して車両の出荷後の状態と同様の環境で「電力値」を演算するのが好ましい。このため、上記の電力測定システム10,10A,10Bのように非接触式電圧センサ11aを介してフレーム伝送用導体に対して非接触でCANフレームFcを読取り可能とすることにより、シリアルバスSB1m,SB1sにおけるフレーム伝送用導体の絶縁被覆を傷付ることなく「電力値」を演算可能とするのが好ましい。また、出荷後の車両の点検等に際して「電力値」の演算のためにフレーム伝送用導体の絶縁被覆を剥がしたときには、「電力値」の演算を完了した後に、剥がされている絶縁被覆を修復する必要が生じる。このため、出荷後の車両を対象として「電力値」を演算するときにも、上記の電力測定システム10,10A,10Bのように非接触式電圧センサ11aを介してフレーム伝送用導体に対して非接触でCANフレームFcを読取り可能とするのが好ましい。
また、電気自動車100,100Aの「電力ライン(本例では、電力ラインL5)」を介して供給される電力の電力値を、電気自動車100のシリアルバスSB1や電気自動車100AのシリアルバスSB1mから読み出したCANフレームFc(電圧値データフレームFcv、および/または電流値データフレームFca)を読み取って演算する形態を例に挙げて説明したが、電気自動車100,100Aなどの車両以外の各種の分野(工場内設備用のネットワークや、耕作地内ネットワーク等の分野)における任意の「電力値」を上記の電力測定システム10,10A,10B等による「電力演算方法」と同様の構成・方法によって演算することができる。
加えて、「シリアルバス」から読み取る「電圧値データフレーム」および/または「電流値データフレーム」は、CANフレームFc等の「CANフレーム」に限定されず、「CAN FD」、「FlexRay(登録商標)」および「LIN」などの各種通信規格に準ずるフレーム(デジタルデータ)や、「LVDS」による小振幅低消費電力通信が可能な各種通信規格に準ずるフレーム(デジタルデータ)を利用して「電力値」を演算する構成・方法を採用することができる。