JP7027185B2 - ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチとポリオレフィン系架橋発泡体とポリオレフィン系架橋発泡体の製造方法 - Google Patents

ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチとポリオレフィン系架橋発泡体とポリオレフィン系架橋発泡体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチとポリオレフィン系架橋発泡体とポリオレフィン架橋発泡体の製造方法に関する。
ポリオレフィン系架橋発泡体は、耐久性があり、かつ耐薬品性や耐候性に優れるために、住宅の床材や壁材、建築の目地材、自動車の内装材、梱包用部材など衝撃緩衝用途に広く使用されている。
ポリオレフィン系架橋発泡体の発泡は、コストや発泡体の厚み制御が容易な熱分解型発泡剤を用いる熱分発泡で行うのが主流である。熱分解型発泡剤としては、作業性の良好なアゾジカルボンアミド(ADCA)系発泡剤が一般的に用いられている(特許文献1)。アゾジカルボンアミド系発泡剤は、熱分解で発生するガスの量が多く、高発泡のポリオレフィン系架橋発泡体を得ることができる。また、アゾジカルボンアミド系発泡剤は、分解温度がポリオレフィン系樹脂の融点よりも高い200℃近傍であるため、ポリオレフィン系樹脂との混練をポリオレフィン系樹脂の融点付近で行ってもアゾジカルボンアミド系発泡剤が分解するおそれがなく、混練時の粘度を低くでき、混練作業が容易である。
しかし、アゾジカルボンアミド系発泡剤は、分解残渣としてアンモニアが発生するため、アゾジカルボンアミド系発泡剤を用いたポリオレフィン系架橋発泡体を梱包用緩衝部材として使用する場合に、電子機器や医療部品、自動車の内装材、ヘッドランプなどを、ポリオレフィン系架橋発泡体に残留するアンモニアによって汚染、腐食させる問題がある。例えば、ヘッドランプにあっては、アンモニアによって曇る問題がある。
ポリオレフィン系架橋発泡体に残留するアンモニアの影響を抑えるために、アンモニア吸着剤を含有させてアンモニア濃度を減らしたポリオレフィン系架橋発泡体が提案されている(特許文献2)。
しかし、ポリオレフィン系架橋発泡体は、独立気泡構造のため、発泡体の表面に存在するアンモニア吸着剤しか効果を発揮せず、発泡体の内部に埋没したアンモニア吸着剤は十分な効果を発揮できない問題がる。
また、アゾジカルボンアミド(ADCA)系発泡剤やアンモニア吸着剤を使用せず、熱分解型発泡剤として重曹(炭酸水素ナトリウム)を使用することが検討されている。
しかし、重曹は、ポリオレフィン系樹脂の融点よりも低い100℃付近で熱分解し始めるため、ポリオレフィン系樹脂との混練時に重曹が別分解するのを防ぐには、混練をポリオレフィン系樹脂の融点よりも低い100℃未満で行う必要がある。その結果、混練時の粘度が高くなって混練時間が長くなる問題がある。また、作業の効率化等のために、100℃未満で行う混練時間を短縮させると、混練が不足してポリオレフィン系樹脂の発泡時に発泡不良を生じるようになる。
特開平11-228725号公報 特開2012-131848号公報
この発明は前記の点に鑑みなされたものであり、ポリオレフィン系架橋発泡体のアンモニア濃度を低くでき、かつ効率良く製造できる、ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチとポリオレフィン系架橋発泡体とポリオレフィン系架橋発泡体の製造方法の提供を目的とする。
請求項1の発明は、酢酸ビニル含有量が18重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体及び/又はムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20~40のエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体と、発泡剤として重曹及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドとを含むポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチである。
請求項2の発明は、請求項1において、前記発泡剤は、重曹の量よりもp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの量が大であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2において、前記発泡剤は、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの量/重曹の量=5.5/4.5~77/23であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記発泡剤の粒子径は、8~30μmであることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1から4の何れか一項に記載のポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチと、ポリオレフィン系樹脂と、架橋剤とを含む混練物より得られたポリオレフィン系架橋発泡体であって、密度が20~160kg/m、アンモニア濃度が0ppm~100ppm、ガラス霞度が5%以下であるポリオレフィン系架橋発泡体である。
請求項6の発明は、請求項5において、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、前記ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチが7~80重量部であることを特徴とする。
請求項7の発明は、密度が20~160kg/m、アンモニア濃度が0ppm~100ppm、ガラス霞度が5%以下であるポリオレフィン系架橋発泡体の製造方法において、請求項1から4の何れか一項に記載のポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチと、ポリオレフィン系樹脂と、架橋剤とを含む混練物を一段発泡又は二段発泡によって発泡倍率6~50倍で発泡させることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項7において、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、前記ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチが7~80重量部であることを特徴とする。
本発明では、ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチの母材は、酢酸ビニル含有量が18重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体及び/又はムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20~40のエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体からなるため、発泡剤としての重曹及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの熱分解温度よりも低い温度で母材を軟化状態にでき、母材と発泡剤としての重曹及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの熱分解を防ぎ、かつ効率良く混練することができる。なお、重曹の熱分解温度は140~170℃に熱分解のピークがあり、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの熱分解温度は155~165℃に熱分解のピークがある。
発泡剤を含むマスターバッチとすることで、ポリオレフィン系架橋発泡体の製造時に、ポリオレフィン系樹脂と発泡剤との混練を、ポリオレフィン系樹脂とマスターバッチとの混練に代えることができる。発泡剤を含むマスターバッチとポリオレフィン系樹脂との混練は、発泡剤を直接ポリオレフィン系樹脂と混練するのと比べて、混練が容易になり、発泡剤の熱分解を抑えた良好な混練、混練時間の短縮を実現することができ、発泡状態が良好なポリオレフィン系架橋発泡体を得ることができるようになる。
重曹は、分解ガスが炭酸ガス、分解残渣が炭酸ナトリウムであり、一方、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドは、分解ガスが窒素ガス、分解残渣がポリジチオフェニルエーテル、ポリチオフェニルベンゼンスルホニルエーテルであり、何れも分解残渣としてアンモニアを生じない。そのため、本発明のポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチを用いたポリオレフィン系架橋発泡体は、アンモニア濃度を0~100ppmの低いものにすることができ、残存するアンモニアによる汚染、腐食を防止することができる。
マスターバッチの実施例及び比較例の配合と熱分解の有無を示す表である。 ポリオレフィン系架橋発泡体の実施例及び比較例について、ポリオレフィン系樹脂とマスターバッチとの配合及び物性測定結果等を示す表である。
本発明のポリオレフィン系架橋発泡体は、住宅の床材や壁材、建築の目地材、自動車の内装材、梱包用部材など衝撃緩衝用途に好適なものであり、密度(JIS K 6767準拠)が20~160kg/m、アンモニア濃度が0ppm~100ppm、ガラス霞度(ISO6452準拠)が5%以下である。アンモニア濃度は、丸底フラスコ500ccにサンプルを0.1g投入し、80℃のオーブン中に2時間放置した後、取り出して放冷し、アンモニア検知管(ガステック製)にて測定した。
ポリオレフィン系架橋発泡体を、例えば梱包用緩衝部材として使用した場合、ポリオレフィン系架橋発泡体の密度が低すぎると発泡体が柔軟化されすぎて形状が保持できず緩衝材として好ましくない結果となる。一方、密度が高過ぎると発泡体は硬くなって柔軟性にかけ緩衝材として好ましくない結果となる。このため、密度は20~160kg/mが好ましい。
ポリオレフィン系架橋発泡体のアンモニア濃度が高すぎると、梱包した製品に対する汚染、腐食の問題が大きくなるため、アンモニア濃度は0ppm~100ppmが好ましい。
ポリオレフィン系架橋発泡体のガラス霞度が高すぎると、梱包したヘッドランプに曇りを生じ易くなるため、ガラス霞度は5%以下が好ましい。
密度(JIS K 6767準拠)が20~160kg/m、アンモニア濃度が0ppm~100ppm、ガラス霞度(ISO6452準拠)が5%以下のポリオレフィン系架橋発泡体は、ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチと、ポリオレフィン系樹脂と、架橋剤を含む混練物より得られる。
ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチは、酢酸ビニル含有量が18重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)及び/又はムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20~40のエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)を母材とし、発泡剤として重曹(炭酸水素ナトリウム)及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)を含むものである。
エチレン酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニル含有量が18重量%未満の場合、樹脂の融点が高く、混練温度が高くなることにより発泡剤が分解する。酢酸ビニル含有量のより好ましい範囲は20~28重量%である。酢酸ビニル含有量は、JIS K 6924-1に準拠して測定される値である。酢酸ビニル含有量が18重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体は、融点が93℃以下であり、重曹の熱分解温度140~170℃及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの熱分解温度は155~165℃よりも低い。
ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20~40のエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体は、重曹及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの熱分解温度よりも低い温度において粘性が低いものである。ムーニー粘度は、JIS K 6300に準拠して測定される値である。
酢酸ビニル含有量が18重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体と、ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20~40のエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体は、何れか一方の単独使用または両方が併用される。
発泡剤としては、重曹とp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが併用される。重曹単独では、ポリオレフィン系架橋発泡体の発泡後に収縮を生じ易くなり、一方、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド単独では、発泡不足を生じ易くなる。重曹とp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを併用することにより、発泡後の収縮や発泡不足を生じ難くできる。重曹の量(重量部)とp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの量(重量部)は、重曹の量よりもp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの量を多くするのが好ましい。重曹の量よりもp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの量を多くすることによって、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの分解ガスである窒素ガスを重曹の分解ガスである炭酸ガスよりも多くすることが可能となる。発泡成形後には、炭酸ガスだけでなく、拡散係数が低い窒素ガスで保持されているため、発泡成形後の急激な収縮、変形を抑制することができる。より好ましくは、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの量(重量部)/重曹の量(重量部)=5.5/4.5~77/23である。
重曹及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドは、ポリオレフィン系架橋発泡体の製造時における加熱によって、それぞれ熱分解してガスを発生し、ポリオレフィン系樹脂を発泡させる。重曹は、140℃~170℃で熱分解により炭酸ガスを発生し、分解残渣として炭酸ナトリウムを生じる。一方、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドは、155℃~165℃で熱分解により窒素ガスを発生し、分解残渣としてポリジチオフェニルエーテル、ポリチオフェニルベンゼンスルホニルエーテルを生じる。重曹及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの何れも分解残渣としてアンモニアを生じないため、ポリオレフィン架橋発泡体のアンモニア濃度を減らすことができる。
また、重曹とp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの両者の熱分解温度の範囲の差が±15℃以内と近く、155℃~165℃の範囲で、ともに熱分解可能であるため、発泡バランスがよく、混合する発泡剤として好ましい。
発泡剤としての重曹及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドは、母材である酢酸ビニル含有量が18重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体及び/又はムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20~40のエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)との混練の際に、発泡剤の分散を良好とするため、粒子径が8~30μmであることが好ましい。
ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチの製造は、発泡剤の分解温度よりも低い温度で、母材と発泡剤をニーダーで混練して行う。好ましい混練温度は95~135℃であり、より好ましくは、100~125℃である。なお、ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチは、混練後、冷却した後にペレタイザでカットしてペレットにし、ポリオレフィン系架橋発泡体の製造時に扱い易いようにするのが好ましい。ペレットの粒径は3~5mmが好ましい。
ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチにおける発泡剤の量は、母材100重量部に対して40~250重量部が好ましく、より好ましくは70~150重量部である。発泡剤の好ましい量を、ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチ全重量中の発泡剤の重量%に換算すると、25~70%、より好ましくは30~60%である。発泡剤の量が少なすぎると、発泡体は硬くなって柔軟性にかけ緩衝材として好ましくない結果となり、一方、多すぎると発泡体が柔軟化されすぎて形状が保持できず緩衝材として好ましくない結果となる。
ポリオレフィン系架橋発泡体を製造する際のポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチの量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して7~80重量部が好ましく、より好ましくは10~60重量部であり、ポリオレフィン系架橋発泡体の発泡倍率に応じた発泡剤の含有量となるように決定される。
ポリオレフィン系樹脂としては、低密度、中密度、高密度、直鎖状低密度などのポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレンとメチル、エチル、プロピル若しくはブチルの各アクリル酸エステル(このエステルの含有量;45モル%以内)との共重合体、又はこれらのそれぞれ塩素含有率60重量%まで塩素化したもの等を挙げることができる。特に低密度のポリエチレンが好ましい。
架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス-ターシャリーブチルパーオキシヘキサン、1,3-ビス-ターシャリーパーオキシ-イソプロピルベンゼンなどの有機過酸化物等を挙げることができる。架橋剤の量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1.0~5.0重量部が好ましい。
混練物には、適宜助剤が含まれる。助剤としては、発泡助剤、造核剤、その他の無機フィラー、着色剤などが挙げられる。発泡助剤としては、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、低級又は高級脂肪酸あるいはそれらの金属塩等を挙げることができる。造核剤としては、重炭酸カルシウムなどを挙げることができる。その他の無機フィラーとしては、導電性カーボンブラックなどを挙げることができる。
ポリオレフィン系架橋樹脂発泡体の製造は、ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチと、ポリオレフィン系樹脂と、架橋剤及び適宜の助剤とを含む発泡性樹脂組成物の混練物を一段発泡又は二段発泡によって行う。
前記発泡性樹脂組成物の混練は、ニーダー等を用い、ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチに含まれる発泡剤の熱分解温度よりも低い温度で行う。
一段発泡では、前記発泡性樹脂組成物の混練物を発泡型に充填し、加熱加圧して発泡剤を分解させた後、発泡型を開放して発泡させることにより、所望のポリオレフィン系架橋樹脂発泡体を得る。
二段発泡では、前記発泡性樹脂組成物の混練物を一次発泡型に充填し、加熱加圧させることにより一次発泡させて一次発泡体を形成し、次に一次発泡体の外形よりも内面形状の大きい二次発泡型に一次発泡体を収容し、常圧下加熱することにより二次発泡させて所望のポリオレフィン系架橋発泡体を得る。二段発泡では、一段発泡よりも発泡倍率の高い発泡体が得られる。
一段発泡の場合の加熱及び加圧は、発泡倍率によって異なるが、例として加熱温度130~170℃、加熱時間30~60分、圧力5~35Pa程度を挙げる。
二段発泡の場合の加熱及び加圧は、発泡倍率によって異なるが、例として一次発泡時の加熱温度100~150℃、加熱時間30~60分、圧力5~35Pa程度、二次発泡時の加熱温度140~170℃、加熱時間25~180分程度を挙げる。
発泡倍率は、一段発泡及び二段発泡の何れの場合でも6~50倍が好ましい。発泡倍率は、未発泡樹脂を1000kg/mとし、以下式1で算出される値である。
1000kg/m(未発泡) ÷ 発泡体密度実測値(kg/m) (式1)
発泡体密度実測値は、JIS K 6767に準拠して測定した値である。
発泡倍率が低すぎると発泡体が柔軟化されすぎて形状が保持できず緩衝材として好ましくない結果となり、逆に高すぎると発泡体は硬くなって柔軟性にかけ緩衝材として好ましくない結果となる。また、一段発泡及び二段発泡時における発泡倍率の調整は、ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチに含まれる発泡剤の量によって6~50倍となるようにする。
<マスターバッチ>
図1の配合で実施例のマスターバッチ(a)~(h)と、比較例(i)~(l)を作製した。マスターバッチの作製は、母材と発泡剤をニーダーにより100℃、25分間混練することにより行った。混練後、5分間養生したものを100g採取し、70℃で熱プレスし、50×50mm×5mmの平板を作製し、次の式で密度を測定して発泡剤が熱分解しているか否かを判断した。
密度=平板の重量/(平板の縦×横×厚み)
密度の値が1000kg/m未満の場合は発泡しているために発泡剤が分解していると判断し、密度の値が1000kg/m以上の場合は未発泡であるため、発泡剤が分解していないと判断した。図1における熱分解の評価欄の「〇」は、発泡剤が分解していない場合を示し、一方、「×」は、発泡剤が分解している場合を示す。
実施例(a)は、母材としてEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体):VA値(酢酸ビニル含有量)20重量%、東ソー株式会社製ウルトラセン638を100重量部、発泡剤としてOBSH(p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド):永和化成工業社製ネオセルボンN#5000、平均粒径15μmの60重量部と、重曹:三協化成株式会社製セルマイク266、平均粒径12μmの40重量を用いた例である。実施例(a)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
実施例(b)は、実施例(a)におけるOBSHの量を75重量部、重曹の量を25重量部とし、他は実施例(a)と同様の例である。実施例(b)は、OBSH/重曹の値が75/25であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
実施例(c)は、実施例(a)における母材としてのEVAに代えてEPDM(エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体):ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が30、三井化学株式会社製1035を使用し、他は実施例(a)と同様の例である。実施例(c)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
実施例(d)は、実施例(c)におけるOBSHの量を75重量部、重曹の量を25重量部とし、他は実施例(c)と同様の例である。実施例(d)は、OBSH/重曹の値が75/25であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
実施例(e)は、実施例(a)の母材を、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体):VA値(酢酸ビニル含有量)20重量%、東ソー株式会社製ウルトラセン638を50重量部と、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体):ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が30、三井化学株式会社製1035の50重量部を使用し、他は実施例(a)と同様の例である。実施例(e)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
実施例(f)は、実施例(a)のOBSHとして三協化成株式会社製セルマイクS、平均粒径50μmを使用し、他は実施例(a)と同様の例である。実施例(f)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
実施例(g)は、実施例(a)のOBSHとして永和化成工業製N#1000M、平均粒径4μmを使用し、他は実施例(a)と同様の例である。実施例(g)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
実施例(h)は、実施例(g)における母材としてのEVAに代えてEPDM(エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体):ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が30、三井化学株式会社製1035を使用し、他は実施例(g)と同様の例である。実施例(h)は、OBSH/重曹の値が6/4であり、発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
比較例(i)は、実施例(a)における発泡剤としてADCA(アゾジカルボンアミド):永和化成工業社製パンスレンH7310、平均粒径15μmを100重量部使用し、OBSH及び重曹の何れも含まない例である。比較例(i)は発泡剤の熱分解が無く、評価は「〇」である。
比較例(j)は、実施例(c)における発泡剤として重曹を単独で100重量部使用した例である。比較例(j)は発泡剤の熱分解が有り、評価は「×」である。
比較例(k)は、実施例(c)における母材としてEPDM(エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体):ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が10、JSR株式会社製JSR EP912Pを使用し、他は実施例(c)と同様の例である。比較例(k)は、発泡剤の熱分解が有り、評価は「×」である。
比較例(l)は、実施例(a)における母材としてEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体):VA値(酢酸ビニル含有量)15重量%、東ソー株式会社製ウルトラセン630を使用し、他は実施例(a)と同様の例である。比較例(l)は、発泡剤の熱分解が有り、評価は「×」である。
<ポリオレフィン系架橋発泡体>
ポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE):MFR2、密度0.924kg/m、品番UBEポリエチレンF224C、宇部丸善ポリエチレン株式会社製を用い、マスターバッチ(a)~(i)を図2の配合とした。さらに架橋剤(図2に示さず)として化薬アクゾ株式会社製カヤクミルD-40CをLDPE100重量部に対して2.7重量部配合した混合物をニーダーにて混練し、その後ロールにて混練し、実施例1~9及び比較例1~5の発泡性樹脂組成物を得た。混練は、1Lニーダーを用いて90℃の温度で20分間行った。
前記発泡性樹脂組成物を用い、実施例1、2、4、5、8、9及び比較例1~5については一段発泡によりポリオレフィン架橋発泡体を製造し、実施例3、6、7については二段発泡よりポリオレフィン系架橋発泡体を製造した。
一段発泡では、混練後の発泡性樹脂組成物を、発泡型に充填して加圧下加熱し、除圧して発泡させ、発泡型からポリオレフィン系架橋発泡体を取り出した。発泡型の成形空間は、縦160mm、横160mm、深さ33mm、容積0.85Lである。発泡性樹脂組成物の充填量は、何れも900g、加圧は7Pa、加熱は135℃で50分間である。
二段発泡では、混練後の発泡性樹脂組成物を一次発泡型に充填して加圧下加熱し、除圧して発泡させ、その後に一次発泡型から一次発泡体を取り出す一次発泡工程を行い、得られた一次発泡体を二次発泡型に収容し、常圧下二次加熱による二次発泡を行って、二次発泡型からポリオレフィン系架橋発泡体を取り出した。
一次発泡型の成形空間は、縦160mm、横160mm、深さ33mm、容積0.85Lである。発泡性樹脂組成物の充填量は、何れも900g、加圧は7Pa、加熱は130℃で50分間である。
二次発泡型の成形空間は、縦300mm、横300mm、深さ55mm、容積1.5Lである。加熱は150℃で50分間である。
各実施例及び各比較例における密度(JIS K 6767準拠)、発泡倍率、アンモニア濃度、ガラス霞度(ISO6452準拠)を測定した。測定結果は図2に示す。
発泡倍率は、上記式1により算出した。
アンモニア濃度は、丸底フラスコに0.1gのサンプルを投入し、80℃のオーブンで2時間加熱し、その後冷えないうちに10~1000ppmを測定できるガステック製検知管(品番:3M)で粗々の値を測定した後、100ppm未満を測定できる、精度の良いガステック検知管(品番:3L)にてアンモニア濃度を測定した。
ガラス霞度(フォギング)は、サンプルをガラス板で遮蔽した状態で80℃×20時間加熱し、ガラス板に付着した曇り度を日本電色工業株式会社製(品番:NDH-20H)により測定した。
総合評価は、密度が20~160kg/m、アンモニア濃度が0ppm~100ppm、ガラス霞度が5%以下の条件全てを満たす場合に「〇」とし、一つでも外れる場合、あるいは発泡せず又は発泡不良の場合に「×」とした。
実施例1は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(a)が10重量部の例である。実施例1は、密度93kg/m、発泡倍率10.8倍、アンモニア濃度10ppm、ガラス霞度0.4%、総合評価「〇」である。
実施例2は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(a)が30重量部の例である。実施例2は、密度68kg/m、発泡倍率14.7倍、アンモニア濃度15ppm、ガラス霞度0.4%、総合評価「〇」である。
実施例3は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(a)が70重量部の例である。実施例3は、密度24kg/m、発泡倍率41.7倍、アンモニア濃度15ppm、ガラス霞度0.6%、総合評価「〇」である。
実施例4は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(b)が10重量部の例である。実施例4は、密度98kg/m、発泡倍率10.2倍、アンモニア濃度40ppm、ガラス霞度2.2%、総合評価「〇」である。
実施例5は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(c)が10重量部の例である。実施例5は、密度100kg/m、発泡倍率10倍、アンモニア濃度15ppm、ガラス霞度0.2%、総合評価「〇」である。
実施例6は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(c)が30重量部の例である。実施例6は、密度62kg/m、発泡倍率16.1倍、アンモニア濃度15ppm、ガラス霞度0.3%、総合評価「〇」である。
実施例7は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(c)が70重量部の例である。実施例7は、密度29kg/m、発泡倍率34.5倍、アンモニア濃度20ppm、ガラス霞度0.7%、総合評価「〇」である。
実施例8は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(d)が10重量部の例である。実施例8は、密度107kg/m、発泡倍率9.3倍、アンモニア濃度45ppm、ガラス霞度2.9%、総合評価「〇」である。
実施例9は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(g)が10重量部の例である。実施例9は、密度95kg/m、発泡倍率10.5倍、アンモニア濃度10ppm、ガラス霞度0.3%、総合評価「〇」である。
比較例1は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(a)が4重量部の例である。比較例1は、発泡せず、密度が900kg/m、発泡倍率1.1倍、総合評価「×」である。発泡しなかったため、アンモニア濃度及びガラス霞度は測定しなかった。なお、マスターバッチ(a)は、実施例のマスターバッチの一つであるが、配合量が少ないため、密度が高くなった。
比較例2は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(f)が10重量部の例である。比較例2は、発泡不良であり、密度が230kg/m、発泡倍率4.3倍、総合評価「×」である。発泡不良のため、アンモニア濃度及びガラス霞度は測定しなかった。なお、マスターバッチ(f)は、実施例のマスターバッチの一つであるが、OBSHの平均粒径が50μmと大きいために発泡不良を生じた。
比較例3は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(h)が10重量部の例である。比較例3は、発泡不良であり、密度が200kg/m、発泡倍率5.0倍、総合評価「×」である。発泡不良のため、アンモニア濃度及びガラス霞度は測定しなかった。なお、マスターバッチ(h)は、実施例のマスターバッチの一つであるが、OBSHの平均粒径が4μmと小さいために発泡不良を生じた。
比較例4は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(g)が10重量部の例である。比較例4は、発泡不良であり、密度が210kg/m、発泡倍率4.8倍、総合評価「×」である。発泡不良のため、アンモニア濃度及びガラス霞度は測定しなかった。なお、マスターバッチ(g)は、実施例のマスターバッチの一つであるが、OBSHの平均粒径が4μmと小さいために発泡不良を生じた。
比較例5は、LDPE100重量部に対してマスターバッチ(i)が10重量部の例である。比較例5は、発泡剤がADCAであるマスターバッチ(i)を使用したため、アンモニア濃度900ppm、ガラス霞度22%、総合評価「×」である。
このように、本発明では、残留するアンモニア濃度が低く、アンモニアによる汚染、腐食を防ぐことができるポリオレフィン系架橋発泡体が得られる。

Claims (8)

  1. 酢酸ビニル含有量が18重量%以上のエチレン酢酸ビニル共重合体及び/又はムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20~40のエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体と、発泡剤として重曹及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドとを含み、
    前記発泡剤は、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドの量/重曹の量=5.5/4.5~77/23であるポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチ。
  2. 前記発泡剤の粒子径は、8~30μmであることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチ。
  3. 請求項1又は2に記載のポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチと、ポリオレフィン系樹脂と、架橋剤とを含む混練物より得られたポリオレフィン系架橋発泡体であって、密度が20~160kg/m 、アンモニア濃度が0ppm~100ppmであるポリオレフィン系架橋発泡体。
  4. 前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、前記ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチが7~80重量部であることを特徴とする請求項3に記載のポリオレフィン系架橋発泡体。
  5. 密度が20~160kg/m 、アンモニア濃度が0ppm~100ppmであるポリオレフィン系架橋発泡体の製造方法において、請求項1又は2に記載のポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチと、ポリオレフィン系樹脂と、架橋剤とを含む混練物を一段発泡又は二段発泡によって発泡倍率6~50倍で発泡させることを特徴とするポリオレフィン系架橋発泡体の製造方法
  6. 前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、前記ポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチが7~80重量部であることを特徴とする請求項5に記載のポリオレフィン系架橋発泡体の製造方法。
  7. ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20~40のエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体と、発泡剤として重曹及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドとを含むポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチと、
    ポリオレフィン系樹脂と、
    架橋剤と
    を含む混練物より得られたポリオレフィン系架橋発泡体であって、密度が20~160kg/m 、アンモニア濃度が0ppm~100ppmであるポリオレフィン系架橋発泡体。
  8. 密度が20~160kg/m 、アンモニア濃度が0ppm~100ppmであるポリオレフィン系架橋発泡体の製造方法において、
    ムーニー粘度(ML1+4、100℃)が20~40のエチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体と、発泡剤として重曹及びp,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドとを含むポリオレフィン系架橋発泡体用マスターバッチと、
    ポリオレフィン系樹脂と、
    架橋剤と
    を含む混練物を一段発泡又は二段発泡によって発泡倍率6~50倍で発泡させることを特徴とするポリオレフィン系架橋発泡体の製造方法
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