JP2004155454A - 断熱性ポリエチレン容器およびその製造方法 - Google Patents

断熱性ポリエチレン容器およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温の液体を収容した場合や、電子レンジ等で内容物を加熱した場合に、直接手で持つことができる断熱性を有し、成形加工性に優れ、低温領域における容器の衝撃強度の改良、昨今の環境問題への適応性、リサイクル性、焼却性等に優れる容器およびその製造方法を提供する。
【解決手段】密度0.94g/cm以上、MFR0.1〜10g/10分の高密度ポリエチレン(A)97〜60質量%と、MFR0.01〜20g/10分の高圧ラジカル法によって得られたエチレン(共)重合体(B)3〜40質量%、および密度0.88〜0.94g/cm未満、MFR0.1〜10g/10分のエチレン共重合体(C)0〜37質量%からなるポリエチレン樹脂組成物を発泡成形してなる断熱性ポリエチレン容器。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷凍時の耐低温特性と加熱時の断熱性に優れ、高温の液体を収容した場合や、電子レンジ等で内容物を加熱した場合においても、直接手で持つことができる断熱性ポリエチレン容器およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カップラーメン等においては、容器中に直接熱湯を注いで麺類をもどしたり、あるいは容器ごと電子レンジで加熱調理することが一般に行われている。この際に、容器を直接手で持つことができることが要求される。
このような、特に断熱性を要求されるカップラーメン等のカップ麺をはじめ、乾燥食品、冷凍食品、弁当容器等のインスタント食品の容器はポリスチレン製発泡体、ポリプロピレン製発泡体等から製造された容器が主流を占めている。
しかし、ポリスチレン製容器の場合においては、廃棄焼却・回収等の昨今の環境問題からその代替が迫られている。また、ポリプロピレン製発泡体容器の場合においては、耐熱性に優れるものの、低温領域での耐衝撃性が低いという問題点を有し、該低温耐衝撃性を改良するために、ポリプロピレン系樹脂にポリエチレン系樹脂を配合した樹脂組成物からなる発泡体等も提案されている。(例えば特開平6−321265号公報、特開平9−39086号公報、特開平9−52300号公報、特開平10−86924号公報、特開2001−2820号公報、特開2001−261019号公報、特開2001−261021号公報など)。
しかしながら、これらについては、いまだ十分な解決をみていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、高温の液体を収容した場合や、電子レンジ等で内容物を加熱した場合に、直接手で持つことができる断熱性を有し、成形加工性に優れ、−40℃〜0℃の環境下という低温領域においても衝撃強度が優れ、さらに昨今の環境問題への適応性、リサイクル性、焼却性等に優れる断熱性ポリエチレン容器およびその製造方法を提供することを目的としている。特に、冷凍時の耐低温特性と加熱時の断熱性に優れる容器を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来のカップ麺等の断熱容器の欠点を改良するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の断熱性ポリエチレン容器は密度0.94g/cm以上、MFR(測定温度190℃、荷重2.16kg)0.1〜10g/10分の高密度ポリエチレン(A)97〜60質量%と、MFR(測定温度190℃、荷重2.16kg)0.01〜20g/10分の高圧ラジカル法によるエチレン(共)重合体(B)3〜40質量%、および密度0.88〜0.94g/cm未満、MFR(測定温度190℃、荷重2.16kg)0.1〜10g/10分のエチレン共重合体(C)0〜37質量%からなるポリエチレン樹脂組成物を発泡成形してなることを特徴とする。
また、前記容器の発泡倍率が1.2〜5倍であることを特徴とする。
また、前記容器が、高密度ポリエチレン(A)97〜60質量%、高圧ラジカル法によって得られたエチレン(共)重合体(B)3〜40質量%、およびエチレン共重合体(C)0〜37質量%からなるポリエチレン樹脂組成物100質量部に対して、熱分解型発泡剤(D)0.5〜10質量部を配合してなるポリエチレン樹脂組成物を発泡成形したことを特徴とする。
また、本発明の断熱性ポリエチレン容器の製造方法は、上記(A)〜(D)からなるポリエチレン樹脂組成物を、発泡シートに成形する工程、該シートを容器成形型金型を用いて真空成形および/又は圧空成形により容器に成形する工程、および該容器を所望によりエージングする工程を含むことを特徴とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
[高密度ポリエチレン(A)]
本発明の高密度ポリエチレン(A)は、チーグラー系触媒あるいはフィリップス系触媒、あるいはメタロセン系触媒を用いて重合されるエチレンの単独重合体またはエチレンとα−オレフィンとの共重合体である。該エチレン・α−オレフィン共重合体とはエチレンと炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンとを共重合させることにより得られるエチレン・α−オレフィン共重合体である。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどが挙げられる。
【0006】
本発明の高密度ポリエチレン(A)の密度は0.94g/cm以上、好ましくは密度0.94〜0.98g/cm、より好ましくは0.95〜0.97g/cmであり、密度が0.94g/cm未満では、剛性、耐熱性が劣るものとなる。また、密度が0.98g/cmを超えるものは、成形性が劣り、かつ工業的に生産するための経済性に難点を有する。
【0007】
本発明の高密度ポリエチレン(A)のメルトフローレート(MFR:測定温度190℃、荷重2.16kg)は0.1〜10g/10分、好ましくはMFRが、0.3〜8g/10分、より好ましくはMFRは0.5〜5g/10分の範囲である。該MFRが、0.1g/10分未満では成形性に劣り、MFRが10g/10分を超える場合においては耐熱性等が劣る懸念がある。
【0008】
[高圧ラジカル法によって得られたエチレン(共)重合体(B)]
上記高圧ラジカル重合法によって得られたエチレン(共)重合体(B)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン・ビニルエステル共重合体、エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体などが挙げられる。これらのなかでも特に低密度ポリエチレンが好ましい。
【0009】
低密度ポリエチレン(LDPE)のMFRは、0.01〜20g/10分、好ましくは0.05〜10g/10分、さらに好ましくは0.1〜5g/10分の範囲である。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、発泡性、成形性等が良好となる。また、密度は0.91〜0.94g/cm、さらに好ましくは0.912〜0.935g/cmの範囲である。この範囲であれば、メルトテンションが適切な範囲となり、発泡性が向上する。メルトテンションは、1.5〜25g、好ましくは3〜20g、さらに好ましくは3〜15gである。また、分子量分布Mw/Mnは、3.0〜12、好ましくは4.0〜8.0である。メルトテンションは樹脂の弾性項目であり、上記の範囲であれば発泡性が良好となる。
【0010】
本発明のエチレン・ビニルエステル共重合体とは、高圧ラジカル重合法で製造されるエチレンを主成分とする、エチレンとプロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオル酢酸ビニルなどのビニルエステル単量体との共重合体である。
中でも、特に好ましいものとしては、酢酸ビニルを挙げることができる。また、エチレン50〜99.5質量%、ビニルエステル0.5〜50質量%、他の共重合可能な不飽和単量体0〜49.5質量%からなる共重合体も好ましい。特に、ビニルエステルの含有量は3〜30質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲である。エチレン・ビニルエステル共重合体のMFRは、0.01〜20g/10分、さらに好ましくは0.05〜10g/10分、さらに0.1〜5g/10分の範囲である。
【0011】
エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体としては、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸またはそのアルキルエステル共重合体等が挙げられ、これらのコモノマーとしては、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等を挙げることができる。この中でも特に好ましいものとして、無水マレイン酸や、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル等のアルキルエステルを挙げることができる。特に、(メタ)アクリル酸エステルの含有量は3〜30質量%、好ましくは5〜25質量%の範囲である。エチレンとα,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体のMFRは0.01〜20g/10分、さらに好ましくは0.05〜10g/10分、さらに好ましくは0.1〜5g/10の範囲である。
【0012】
[エチレン共重合体(C)]
本発明におけるエチレン共重合体(C)は必須成分ではないが、それを使用する場合には、密度が0.88〜0.94g/cm未満、MFRが0.1〜10g/10分であるエチレン・α−オレフィン共重合体が用いられ、チーグラー系触媒あるいはフィリップス系触媒、あるいはメタロセン系触媒を用いて重合される。このようなエチレン共重合体としては、エチレンと炭素数3〜20、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィンとを共重合させることにより得られるエチレン・α−オレフィン共重合体であるいわゆる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンが挙げられる。
またLLDPE、VLDPE以外としてエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムが包含される。
【0013】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、密度が0.91〜0.94g/cm未満、好ましくは0.915〜0.935g/cm、より好ましくは0.92〜0.93g/cm範囲で選択されることが望ましい。また、MFRは0.1〜10g/10分、好ましくは0.5〜8g/10分、さらに好ましくは0.5〜5g/10分の範囲で選択されることが望ましい。
【0014】
超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、密度が0.88〜0.91g/cm未満、好ましくは0.89〜0.905g/cmの範囲で選択することが望ましい。MFRは0.1〜10g/10分、好ましくは0.1〜8g/10分の範囲のものである。該超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とエチレン・α−オレフィン共重合体ゴム(EPR、EPDM)との中間の性状を示すものである。また、超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、示差走査熱量測定法(DSC)による最大ピーク温度(Tm)が60℃以上、好ましくは100℃以上、かつ沸騰n−ヘキサン不溶分10質量%以上の性状を有する特定のエチレン・α−オレフィン共重合体である。これらはメタロセン系触媒あるいは少なくともチタンおよび/またはバナジウムを含有する固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とからなる触媒等を用いて重合され、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が示す高結晶部分とエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムが示す非晶部分とを合わせ持つ樹脂である。このような超低密度ポリエチレン(VLDPE)は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の特徴である機械的強度、耐熱性等と、エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムの特徴であるゴム状弾性、耐低温衝撃性などがバランスよく共存しているものである。
【0015】
[エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム]
エチレン・α−オレフィン共重合体ゴムとは、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム等が挙げられ、エチレンおよびプロピレンを主成分とするランダム共重合体(EPM)、および第3成分としてジエンモノマー(ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等)を加えたものを主成分とするランダム共重合体(EPDM)が挙げられる。また、他の例としてエチレン・1−ブテン共重合体ゴム等の非結晶性または低結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体ゴム等が挙られる。
【0016】
[ポリエチレン樹脂組成物]
本発明のポリエチレン樹脂組成物は、密度0.94g/cm以上、MFR0.1〜10g/10分の高密度ポリエチレン(A)97〜60質量%、好ましくは95〜65質量%、より好ましくは95〜70質量%と、MFR0.01〜20g/10分の高圧ラジカル法によって得られたエチレン(共)重合体(B)3〜40質量%、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは5〜30質量、および密度0.88〜0.94g/cm未満、MFR0.1〜10g/10分のエチレン共重合体(C)0〜37質量%、好ましくは0〜35質量%、より好ましくは0〜30質量%からなる樹脂組成物である。上記の範囲の組成物であると発泡時の加工性、耐熱性、機械強度、発泡セルの均一性等バランスのよい発泡体が提供される。
また、高密度ポリエチレン(A)が、97質量%を超える場合には、剛性が高く、成形加工性、発泡セルの均一性が低下し、60質量%未満では耐熱性、剛性が劣り、発泡セルの均一性が消失する懸念が生じる。
【0017】
上記樹脂組成物には、その趣旨を損なわない範囲で各種の添加剤、配合剤、充填剤を使用することが可能である。これらを具体的に示せば、酸化防止剤(耐熱安定剤)、滑剤(スリップ剤)、着色剤(染料、顔料)、香料、結晶核剤等が挙げられる。
【0018】
[発泡剤]
発泡剤としては、揮発性発泡剤と熱分解型発泡剤とが挙げられる。揮発性発泡剤としては、炭酸ガス、窒素ガス、空気、プロパン、ブタン、フレオン12、フレオン11、フレオン113等のフレオン類等の気体、イソペンタン、エーテル、n−ペンタン、石油エーテル、アセトン、ヘキサン、ベンゼン、ヘプタン等の揮発性液体が挙げられる。また、熱分解型発泡剤(D)として、炭酸水素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ、炭酸アンモニウムなどの不活性ガスを発生する無機系熱分解型発泡剤、またアゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルヒドラジド、N,N’−ニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボン酸バリウム、ニトログアニン、5−フェニルテトラゾール、トリヒドラジノトリアジン、ヒドラゾジカルボンアミド、p−トルエンスルホニルセミカルバジドなどの有機系熱分解型発泡剤が上げられる。
中でも、本発明においては、発泡剤として熱分解型発泡剤(D)が好ましく、特に食品容器として炭酸ガスなどの不活性ガスを発生する無機系熱分解型発泡剤が好適に使用される。これらの発泡剤は、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記熱分解型発泡剤(D)の配合量は(A)成分、(B)成分および所望により(C)成分とを含むポリエチレン樹脂組成物100質量部に対して0.5〜10質量部の範囲であり、好ましくは1〜5質量部の範囲で配合することが望ましい。また不活性ガスを用いる場合には、押出機内で樹脂が溶融状態にあるゾーンに押出機の途中から炭酸ガス、窒素ガス等を注入して発泡体としてもよい。
【0020】
上記ポリエチレン樹脂組成物中に、更に、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤などの従来公知の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0021】
[発泡助剤]
上記発泡助剤として、具体的には、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物;炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;塩化亜鉛等の金属塩化物;尿素;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、二塩基性フタル酸鉛等の金属石鹸;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート等の有機錫化合物;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛等の無機塩類;ジブチル錫ジラウレート系、ジブチル錫ジマレート系、カルシウム−亜鉛系、バリウム−亜鉛系等のポリ塩化ビニル(PVC)用複合安定剤などを挙げることができる。
【0022】
[架橋剤]
架橋剤(ラジカル発生剤)は、架橋発泡体を調製する場合に用いられ、具体的には、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどの有機ペルオキシドなどが挙げられる。
【0023】
架橋剤を使用する際、架橋助剤を併用してもよい。架橋助剤としては、具体的には、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)などが挙げられる。
【0024】
[耐熱性ポリエチレン容器]
本発明の耐熱性ポリエチレン容器とは、カップ麺等のインスタント食品用容器、アイスクリーム容器、ゼリー、プリン等の容器、惣菜等のトレー、刺身、魚介類等のトレー等に使用される容器であり、特に電子レンジで調理するインスタント食品等の断熱容器に適用される。とりわけ電子レンジで多用される冷凍食品のように、保存時の耐低温衝撃性と使用時の高温耐熱性の要求される容器として好適である。
【0025】
[断熱性ポリエチレン容器の製造方法]
本発明の断熱性ポリエチレン容器の製造方法は、特に限定されるものではない。
例えば、▲1▼ポリエチレン樹脂組成物に発泡剤を配合して発泡シートを成形し、次いで容器の成形を行う方法、あるいは▲2▼ポリエチレン樹脂組成物に発泡剤を含浸後に発泡させずにシート成形し、ついで加熱発泡して発泡シートとし、さらに容器に成形する方法、あるいは▲3▼ポリエチレン樹脂組成物を押出機に導入して、溶融し、押出機のサイドから不活性ガス等を導入しながら発泡シートに成形し、容器に成形する方法、▲4▼ポリエチレン樹脂組成物に発泡剤を含浸した発泡ビーズを容器金型内に導入し、加熱蒸気等で発泡成形する方法、▲5▼ポリエチレン樹脂組成物と発泡剤を配合した組成物を射出成形にて成形体に成形する方法等があるが、いずれの方法も採用することができる。
特に好ましい態様としては、前記(A)、(B)および(C)からなるポリエチレン樹脂組成物にさらに(D)を配合したポリエチレン樹脂組成物を発泡シートに成形する工程と、該シートを容器成形型金型を用いて真空成形および/又は圧空成形により容器に成形する工程、所望により該容器を緩和エージングする工程を含む断熱性ポリエチレン容器の製造方法である。
なお、熱分解型発泡剤を用いて発泡シートを成形する場合、未発泡のシート(発泡性シート)を成形し、その後に発泡シートとする場合と、直接発泡シートを成形する場合がある。以下具体例を示す。
【0026】
[発泡性シートを成形する工程]
発泡性シートを成形する工程は、高密度ポリエチレン(A)、高圧ラジカル法によるエチレン(共)重合体(B)およびエチレン共重合体(C)からなるポリエチレン樹脂組成物と熱分解型発泡剤(D)を配合し所定割合でヘンシェルミキサー等で混合し、バンバリーミキサー、押出機等の混練機で発泡剤(D)が分解しない温度にて溶融可塑化し、均一に混合分散させて造粒機により調製し、ペレット化する。次に得られた組成物のペレットを押出機に供給してTダイまたは環状ダイを通してシート化する方法、あるいはまたはカレンダー成形機などにより、未発泡状態のシート(発泡性シート)を得る工程である。
なお、後述するが、この際に上記成分に加えて架橋剤を配合しておくことにより、後の工程において発泡性シートを架橋剤の分解温度以上に加熱することにより、任意の工程での架橋が可能となる。
【0027】
[ポリエチレン系樹脂発泡体の調製]
この発泡性シートを、熱分解型発泡剤(D)が熱分解する温度以上の温度で加熱発泡させることにより発泡シートを調製することができる。
本発明では、この熱分解型発泡剤(D)が熱分解する温度以上の温度は、100〜240℃である。該発泡性シートを加熱し発泡剤を発泡することにより、発泡倍率1.2〜5倍、好ましくは1.5〜4倍、更にカップ麺等に使用する場合には1.5〜3.5倍の範囲の発泡シートとする。
また、場合により前記発泡性シートを直接成形体の成形工程に供し、加熱により発泡シートを調整すると同時に発泡性成形体を成形してもよい。
なお、発泡シートは上記(A)〜(D)からなるポリエチレン樹脂組成物を、熱分解型発泡剤(D)の分解温度以上で成形して直接発泡シートを成形してもよい。その場合には、上記の未発泡状態のシート(発泡性シート)を得る工程を省略することができる。
【0028】
また、本発明では、シートを予め架橋しておくことにより、架橋ポリエチレンシートからなる架橋断熱容器を得ることができる。
このような架橋を行なう方法としては、一般的には、(1)ポリエチレン樹脂組成物中に配合した架橋剤(ラジカル発生剤)を加熱分解させてポリエチレンを架橋させる方法、(2)電離性放射線照射によるポリエチレン架橋方法、(3)多官能モノマーの存在下での電離性放射線照射によるポリエチレン架橋、および(4)シラン架橋などを例示することができる。
【0029】
上記(1)の架橋方法により架橋発泡体を得るには、まず、(A)〜(C)のポリエチレン樹脂組成物、熱分解型発泡剤(D)、架橋剤(有機ペルオキシドなど)および他の添加剤を、熱分解型発泡剤(D)および架橋剤の分解温度未満の温度で溶融混練し、得られた混練物をたとえばシート状に成形し発泡性シートを得る。
次いで、得られた発泡性シートを架橋剤が分解する温度で、かつ、熱分解型発泡剤(D)の分解温度未満の温度でポリエチレン樹脂組成物を架橋させて得られた発泡性の架橋シートを、熱分解型発泡剤(D)の分解温度以上に加熱して発泡させることによって、架橋発泡シートを得ることができる。
【0030】
また、上記方法(2)の電離性放射線照射による架橋方法により架橋発泡体を得るには、まず、前記(A)〜(C)からなるポリエチレン樹脂組成物、熱分解型発泡剤(D)、および他の添加剤を熱分解型発泡剤(D)の分解温度未満の温度で溶融混練し、得られた混練物を例えばシート状に成形し、発泡性シートを得る。
次いで、得られた発泡性シートに電離性放射線を所定量照射してポリエチレン樹脂組成物を架橋させた後、得られた発泡性の架橋シートを熱分解型発泡剤(D)の分解温度以上に加熱して発泡させることによって、架橋発泡シートを得ることができる。
電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、中性子線、X線などが用いられる。このうちコバルト−60のγ線、電子線が好ましく用いられる。この電離性放射線の照射量としては、約1〜20Mrad、好ましくは2〜18Mradであり、かつ、得られる架橋発泡体の発泡倍率が1.2〜5倍になるような照射量であることが望ましい。
【0031】
[容器に成形する工程]
次いで上記発泡シートを、容器成形型金型を用いて真空成形および/又は圧空成形により容器に成形するものである。その際プラグアシスト等の固相成形等でもよい。該熱成形温度は40℃〜樹脂組成物の融点以下、好ましくは80〜130℃、より好ましくは50〜100℃の範囲で熱成形される。次いで所望により該容器をエージング工程においてエージングし、容器の歪みをとることが望ましい。
【0032】
[作用]
本発明に係る断熱性ポリエチレン容器は、高密度ポリエチレン(A)とエチレン(共)重合体(B)および所望によりエチレン共重合体(C)を特定の割合で含有しているポリエチレン樹脂組成物を使用しているので、成形性がよく、発泡特性、耐摩耗特性、耐熱性および外観、耐衝撃強度、遮光性、光沢等に優れている。また架橋発泡容器は、非架橋発泡容器よりも外観等に優れるものとなる。また、充填剤を配合した場合には耐熱性に優れたものとなる。
【0033】
さらにハロゲンを使用しないメタロセン系オレフィン重合用触媒を用いて重合された、特定の高密度ポリエチレン(A)と高圧ラジカル法エチレン(共)重合体(B)、所望により、エチレン共重合体(C)からなる本発明に係る断熱性ポリエチレン系容器は、耐衝撃強度、引裂き強度、光沢が優れ、低分子量成分やステアリン酸カルシウム(CaSt)、ステアリン酸亜鉛(ZnSt)のような塩素キャッチャー等の添加物のブリードによる麈発生が少なく、とりわけ食品包装等の分野に好適である。また、リサイクル性や焼却性に優れるものとなる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例に何ら限定されるものではない
本実施例における樹脂組成物の試験方法は次の試験方法に従って行なった。
【0035】
[MFR]
JIS K692−2に準拠した。
[見かけ密度]
電子比重計(ミラージュ社製MD−200S型)により測定した。
【0036】
[発泡の均一性]
発泡シートの断面を肉眼で目視観察した。
○:気泡が均一になっているもの。
△:若干気泡が不均一なものが混在しているもの。
×:気泡が不均一なもの。
[断熱性]
厚み2mmの容器に沸騰水を8分目まで入れてテストした。
○:手でもって使用することができる。
×:手でもって使用することができない。
[耐熱性]
深さ27mm、間隔110mmの溝の上に、幅50mm、厚み2mm、長さ200mmの試験シートを架け渡し、試験シートの中心の位置に10gの重りを載せて110℃のオーブンに入れ、たわみ状態を目視観察する熱変形試験により評価した。
○:たわみが発生せず。
×:たわみが発生した。
【0037】
実施例に用いた各種成分は以下の通りである。
1)高密度ポリエチレン(A):HDPE
密度:0.961g/cm、MFR:2.0g/10分、商品名:ジェイレクスHD(KM490K) 日本ポリオレフィン(株)製
2)高圧ラジカル法低密度ポリエチレン(B):LDPE
密度:0.922g/cm、MFR:0.25g/10分、商品名:ジェイレクスLD(JF121N) 日本ポリオレフィン(株)製
3)エチレン共重合体(C):LLDPE
密度:0.927g/cm、MFR:1.9g/10分、商品名:ジェイレクスLL(AC440R) 日本ポリオレフィン(株)製
【0038】
<実施例1〜8>
表1に示す配合割合で配合した樹脂組成物100質量部に発泡剤として炭酸水素ナトリウム1.0質量部、無水クエン酸モノソーダ1.0質量部、および発泡核剤としてタルク0.03質量部を加え、二軸押出機(口径65mm)で溶融混練し、この押出機に連結しているコートハンガータイプのTダイから140℃の温度で押出し、チルロール温度50℃で約2mm厚の発泡シートを得た。得られた発泡シートの見かけ密度の測定と発泡の均一性の観察、断熱性および耐熱性を評価し、その結果を表1に示した。
【0039】
【表1】
Figure 2004155454
【0040】
<比較例1〜3>
表1に示す配合割合で配合した樹脂組成物を用いて実施例1と同様に評価しその結果を表2に示した。
【0041】
【表2】
Figure 2004155454
【0042】
<実施例9、比較例4、5>
HDPE95質量%とLDPE5質量%の樹脂組成物を用いて実施例1同様にして成形した発泡倍率3.15倍の発泡シート(PEシート)を用いて、サンプルシートを作成し、その低温耐衝撃強度を評価した結果を表3に示した。またこれとほぼ同等の発泡倍率約3の発泡ポリスチレンシート(PSシート)およびポリプロピレンシート(PPシート)で耐低温衝撃の評価を行った結果を表3に示した。
なお、上記耐低温衝撃性は以下のようにして評価した。
ポリエチレン製発泡シートおよびポリプロピレン製発泡シートは1mm厚シートのサンプルを用い、ポリスチレン製発泡シートは2mm厚シートを用いて、直径38mm±1mmのダート先端部をもつアルミニウム製ダートを高さ66cmの位置から落下し、温度を変えて50%破壊時のダート質量(g)で表示した。
【0043】
【表3】
Figure 2004155454
上記の結果、ポリエチレン製発泡シートの場合には−40℃の極低温においても割れなかった。これに比して、ポリスチレン製発泡シートは0℃において、62gで50%破壊が生じ、ポリプロピレン製発泡シートにおいては0℃において、32gで全部破壊された。
【0044】
【発明の効果】
本発明の断熱性ポリエチレン容器は、高温の液体を収容した場合や、電子レンジ等で内容物を加熱した場合に、直接手で持つことができる断熱性を有し、また、成形加工性に優れ、昨今の環境問題への適応性、リサイクル性、焼却性等に優れている。これらは電子レンジで多用される冷凍食品のように、保存時の耐低温衝撃性と使用時の高温耐熱性の要求される容器として好適である。

Claims (4)

  1. 密度0.94g/cm以上、MFR(測定温度190℃、荷重2.16kg)0.1〜10g/10分の高密度ポリエチレン(A)97〜60質量%と、MFR(測定温度190℃、荷重2.16kg)0.01〜20g/10分の高圧ラジカル法によって得られたエチレン(共)重合体(B)3〜40質量%、および密度0.88〜0.94g/cm未満、MFR(測定温度190℃、荷重2.16kg)0.1〜10g/10分のエチレン共重合体(C)0〜37質量%からなるポリエチレン樹脂組成物を発泡成形してなることを特徴とする断熱性ポリエチレン容器。
  2. 前記容器の発泡倍率が1.2〜5倍であることを特徴とする請求項1に記載の断熱性ポリエチレン容器。
  3. 前記容器が、高密度ポリエチレン(A)、高圧ラジカル法によって得られたエチレン(共)重合体(B)、およびエチレン共重合体(C)からなるポリエチレン樹脂組成物100質量部に対して、熱分解型発泡剤(D)0.5〜10質量部を配合して発泡成形してなることを特徴とする請求項1または2に記載の断熱性ポリエチレン容器。
  4. 密度0.94g/cm以上、MFR0.1〜10g/10分の高密度ポリエチレン(A)97〜60質量%と、MFR0.01〜20g/10分の高圧ラジカル法によって得られたエチレン(共)重合体(B)3〜40質量%、および密度0.88〜0.94g/cm未満、MFR0.1〜10g/10分のエチレン共重合体(C)0〜37質量%からなるポリエチレン樹脂組成物100質量部に対して、熱分解型発泡剤(D)0.5〜10質量部を配合してなるポリエチレン樹脂組成物を、発泡シートに成形する工程、該シートを容器成形型金型を用いて真空成形および/又は圧空成形により容器に成形する工程、および該容器を所望によりエージングする工程を含む断熱性ポリエチレン容器の製造方法。
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