本発明の解決課題であるシェルカバーに起因する余水の問題について、浚渫用グラブバケットの基本的仕様とともに検証する。浚渫作業は、浚渫用グラブバケットが次の条件を満たしていることが前提となる。
[バケットの容量×掴み対象物の比重+バケットの自重≦クレーンの直巻能力]
例えば、直巻能力100トンのクレーンを使用して、ヘドロの浚渫作業を行うとすると、掴み対象物としてのヘドロの比重は1.6程度であるため、バケットの容量としては20m3,バケット自重60トン程度のバケットが使用可能である。
[20m3×1.6+60トン=92トン≦100トン]
一方、土砂の浚渫作業を行うとすると、掴み対象物としての土砂の比重は2.0程度であるため、前記した仕様の浚渫用グラブバケットが使用できる上限となる。
[20m3×2.0+60トン=100トン≦100トン]
これは、「バケットの容量×掴み対象物の比重+バケットの自重」の値が「クレーンの直巻能力」を超えてしまうと、クレーンがオーバーロードとなり、浚渫用グラブバケットを巻上ることができなくなってしまったり、クレーン本体の損傷を引き起こすおそれがあるからである。掴み対象物の比重とクレーンの直巻能力は、浚渫用グラブバケットの設計において変更することができない事項である。そのため、作業効率を向上させるためには、前記した浚渫作業完了までのサイクル回数を1回でも減らすために、バケットの容量とバケットの自重に関する構成を工夫する必要があり、必要な強度を維持することを前提として、容量がより大きく、かつ、より自重の軽い浚渫用グラブバケットの開発が歴史的に行われてきた。
しかしながら、近時要求されることが多い薄層浚渫では、土厚が、20cm~1メートル程度の範囲で一定に規制されているため、単にバケットの容量を多くしても浚渫作業完了までのサイクル回数を減らすことはできない。即ち、浚渫すべき土厚が一定である以上、その範囲を超える土厚の掴み対象物は浚渫対象外であって、浚渫不要であるばかりか、誤って浚渫した場合には、逆に埋め戻し作業を行う必要があり、結果的に作業効率を著しく悪化させることとなる。即ち、薄層浚渫では、シェルが水底を掘削する範囲である[シェルの開幅寸法×シェルの口幅寸法の範囲の面積](以下、「切取面積」という)が一定であれば、バケットの容量の大小に関わらず、掴み量(切取面積×土厚)は実質的に変わらない。換言すれば、薄層浚渫では、切取面積が同じであれば、設定される土厚が少ないほど、バケットの容量に占める掴み対象物の量は少なくなって、残部は余水が占めることとなる。その結果、全体として含水比の高い収納物(掴み対象物+余水)を、水底から巻上て、そのまま土運船へ掴み降ろしている。その結果、浚渫用グラブバケット内の余水がそのまま土運船の容量を占めることとなる。
土運船に積載された余水が多くなると、浚渫作業完了までに必要とする土運船の総隻数の増加をきたし、更には掴み対象物とともに余水の陸揚や、その後の処理が必要となり、特に一定の含水比を超えると産業廃棄物としての処理が要求され、そのための設備,燃料,人員,時間,費用等が必要となり、作業効率を悪化させることとなる。土運船内の余水の処理としては、掴み対象物と余水を一体として、即ち含水比の高い状態のまま陸揚して、乾燥させる手段や、陸揚に際して余水のみを水中ポンプで吸い上げて分離し、含水比を下げる手段が知られている。しかしながら、前者の手段は、そのための場所や時間が必要となり、後者の手段は、分離手段や分離した余水を処理するための場所や時間が必要となる。加えて、いずれの手段も法律に準拠した近隣環境に負荷を与えない処理が要求される。
シェルの口幅寸法を広くして、幅広構造を採用するとともに、シェルカバーを密接配置して掴み対象物を密閉する特許文献1にかかる浚渫用グラブバケット(以下、「文献1バケット」という)は薄層浚渫であっても、幅広構造を採用していない同一容量の浚渫用グラブバケットに比較して、切取面積が広いため、1回当たりの掴み量が多く、その分、浚渫用グラブバケット内の収納物に占める余水は少なくなり、その点では余水軽減に資することができる。
文献1バケットにおいては、掴み対象物を密閉するために、シェルの上部に密接配置したシェルカバーは、水底への巻下時の空気抜孔を形成するとともに、幅広構造を採用することによる強度不足を補うために、更には薄層浚渫以外の浚渫作業において、より多くの掴み対象物を掴む汎用性を付与するため、一定の容量を有する立体構造を採用している。このシェルカバーの容量はシェルの容量に付加されて、文献1バケット全体の容量を増加させるとともに、掴み対象物がシェルカバーの容量内に届かない場合は、付加されたシェルカバーの容量分だけ余水を掴んで密閉することとなる。即ち、文献1バケットは、掴み対象物を密閉し、幅広構造を採用するために不可欠なシェルカバーに起因して、余水が増加することがある問題点を有している。このことは、薄層浚渫において顕著である。
特許文献2にかかる浚渫用グラブバケット(以下、「文献2バケット」という)は、シェル自体に開閉蓋付の水抜き口を装備するものの、シェルカバーによる密閉構造を採用しないことを前提とするものであり、対象とする余水は水底における掴み作業時に掴んでしまう余水に限定されている。よって、本発明が解決課題とする巻上による水中からの離脱時にシェルカバーに起因する余水を排水することは不可能であり、そもそもシェルカバーに起因する余水は発生しようがない。また、文献2バケットは、最も強度の要求されるシェル自体に孔をあけるという根本的な問題を内包している。よって、文献2バケットは、本発明の解決課題を形式的に上位概念化・抽象化すると、両者は余水排水という点において共通するものの、文献2バケットはシェルカバーに起因する余水を排水するという本発明の解決課題を開示も示唆もしておらず、両者は解決課題を異にしている。
文献1バケットを使用して、次の仕様の薄層浚渫(以下、「試験浚渫」という)を行う場合を仮定して、本発明の解決課題を敷衍する。
浚渫面積 :60000m2
土厚(切り取り深さ) :0.5m
掴み対象物の総量 :30000m3
バケットの容量 :30m3
(シェル内の容量:20m3+シェルカバー内の容量:10m3)
切取面積 :30m2
シェルの口幅寸法 :10m
シェルの開幅寸法 :3m
土運船の積載容量 :3000m3
上記試験浚渫の場合、バケットが1サイクル当りに掴む掴み対象物の量は、15m3(切取面積30m2×土厚0.5m)で、バケットの容量の残部(15m3)は余水となり、掴み対象物と余水を併せて30m3をバケット内に密閉して、土運船に積載している。100サイクル(3000m3/30m3)浚渫作業を行うと土運船の積載容量3000m3に達し、土運船に積載された掴み対象物は、積載容量の半分の1500m3であって、残り1500m3は余水となる。よって、土運船は積載容量の半分の掴み対象物を積載すると余水によって満杯となってしまう。土運船から汚濁防止枠外への余水の排水は近隣海域の汚染を招くため許されておらず、1500m3の余水は陸揚して処理せざるを得ない。その結果、土運船による陸揚の運行回数が増加し、そのための設備,燃料,人員,時間,費用等あらゆる面において悪影響を受けて、浚渫作業全体の作業効率が悪化する。
そこで、本発明はシェルカバーによって掴み対象物を密閉して巻上する浚渫用グラブバケット、特にはシェルの口幅寸法を広くした、幅広構造の浚渫用グラブバケットを使用した浚渫作業において、シェルカバーに起因する余水を、浚渫用グラブバケットの巻上時における水中からの離脱時にシェルカバーから汚濁防止枠内に排水可能とすることによって、土運船に積載する余水の量を減らし、土運船の積載容量における掴み対象物の比率を上げるとともに、陸揚する余水の量を減らす浚渫用グラブバケット及び浚渫方法を提供することを目的としている。
本発明の課題を解決するために、請求項1により、左右一対のシェルを開閉可能に軸支するとともに、シェルの開放上端部に所定容量のシェルカバーを密接配置することによって、掴み対象物を余水とともに密閉して巻上する浚渫用グラブバケットにおいて、シェルの開口方向におけるシェルカバーの端部近傍に、開状態又は閉状態に保持可能な余水抜機構を装備し、余水抜機構を開状態に保持することにより、シェルカバーの有する容量に起因してシェルカバー内に収納されている余水を、浚渫用グラブバケットの巻上時における水中からの離脱時に余水抜機構から外部に排水するとともに、余水抜機構を閉状態に保持することにより、シェルカバーの有する容量に起因してシェルカバー内に収納されている掴み対象物や余水を、浚渫用グラブバケットの巻上時における水中からの離脱時にシェルカバー内に密閉する浚渫用グラブバケットを基本として提供する。
また、請求項2により、余水抜機構は、シェルカバーに形成された第1余水抜口と、第1余水抜口と連通するとともに第1余水抜口を覆蓋して配置された第2余水抜口を有し、第1余水抜口は常時開口しているとともに、第2余水抜口は開閉扉によって、開状態又は閉状態に保持可能な構成と、請求項3により、第1余水抜口を覆蓋するように、取付台座をシェルカバーに固定し、取付台座に開閉扉を装備した第2余水抜口を開口形成し、開閉扉を操作して第2余水抜口を閉塞して第1余水抜口と第2余水抜口の連通を遮断するとともに、開閉扉を操作して第1余水抜口と第2余水抜口を連通させる構成を提供する。
さらに、請求項4により、第2余水抜口を開口形成した前枠を後枠と対面させて配置し、後枠と前枠の両端を側枠で連結するとともに、開閉扉の操作窓を開口形成した上枠を上面に連結した取付台座を、第1余水抜口を覆蓋してシェルカバーに固定し、前枠の両端に装備した軸受に、支持軸を介して第1開閉扉と第2開閉扉を連結してなる開閉扉を軸支し、開閉扉を回動操作して第1開閉扉を操作窓に固定することによって、第2開閉扉で第2余水抜口を閉塞して第1余水抜口と第2余水抜口の連通を遮断するとともに、開閉扉を回動操作して第2開閉扉を第2余水抜口から開放して操作窓に固定することによって、第1余水抜口と第2余水抜口を連通させる構成を提供し、請求項5により、第1開閉扉又は第2開閉扉を操作窓に固定する固定具を装備した構成と、請求項6により、第2余水抜口に鉛直方向に開口した排水フードを装備した構成と、請求項7により、余水抜機構をシェルカバーに複数装備した構成を提供する。
また、請求項8により、シェルカバーの一部に圧力抜孔を形成し、該圧力抜孔に、浚渫用グラブバケットの内側から外側に収納物が流出することを可能とし、収納物が外側から内側に流入することはできない逆止蓋を装備した構成を提供し、請求項9により、左右一対のシェルを下部フレームに開閉可能に軸支し、左右一対のタイロッドの下端部をシェルに、上端部を上部フレームに回動自在に軸支するとともに、シェルの口幅方向の両端をタイロッドを超えて延長し、シェルの開幅基準寸法に対して、口幅寸法を0.6倍以上の幅広とした構成と、請求項10により、同一掴み容量の浚渫用グラブバケットに対して、シェルの切取面積を拡大した構成を提供する。
さらに、請求項11により、前記した構成の浚渫用グラブバケットを使用して、余水抜機構を開状態としてシェルの開閉動作により水底の掴み対象物を掴んで水上に巻き上げることにより、掴み対象物とともに巻き上げられるシェルカバー内の余水を大気中に排水する浚渫方法を提供し、請求項12により、掴み対象物を密閉状態で浚渫するとともに、シェルカバーによる密閉に起因して、掴み対象物とともに巻き上げられる余水を軽減する方法を提供する。
以上記載した本発明によれば、シェルカバーによって掴み対象物を密閉できるため、水底での掘削時や水中移動時、或いは土運船への積載時等の浚渫作業の各場面において、掴み対象物の汚濁防止枠外への飛散や濁り等を効果的に防ぐことができ、浚渫作業の質を高めることができる。この点は、文献1バケットと同様である。
薄層浚渫等の土厚の制限や土質等の条件によって、シェルカバー内の容量を余水が占める浚渫作業においては、余水抜機構を開状態としておくことにより、巻上時に浚渫用グラブバケットが水面から離脱して大気中に吊支された状態に至ると、シェルカバー内の余水が余水抜機構を介して、大気中に排水される。具体的には、開状態に保持した余水抜機構では、第2開閉扉で操作窓を閉塞し、第1開閉扉を開放することにより、第2余水抜口が外部に対して開口しているとともに、第1余水抜口と第2余水抜口が連通した状態となる。よって、第2余水抜口より上方のシェルカバー内に収納されている余水は、第1余水抜口を経由して第2余水抜口から大気中に排水される。第2余水抜口から排出される余水は、排水フードによってガイドされて鉛直方向の大気中に排水されることとなる。そのため、余水は過度の飛散を伴うことなく、浚渫水域内に設置された汚濁防止枠内の水面に排水される。
このようにシェルカバーに起因する余水を、土運船への積載前段階の浚渫用グラブバケットが水中から離脱する際に排水することにより、土運船に積載する余水の量を減少させ、土運船の積載容量における掴み対象物の比率を上げるとともに、陸揚げする余水の量を減らすことができる。その結果、土運船による陸揚の運行回数を減少させることができ、浚渫作業全体の作業効率を向上させることができる。これらの効果は土厚の規制があるため、掴み対象物でシェルやシェルカバーの容量が満杯となることが少ない薄層浚渫において、特にはシェルカバーをシェルに密接配置するとともに、切取面積を拡大するために幅広構造を採用した浚渫用グラブバケットを使用する薄層浚渫において顕著である。
一方、土厚の規制がなく、シェルカバーの容量内にも掴み対象物を掴むことが許される浚渫作業では、余水抜機構を閉状態としておくことにより、巻上時に浚渫用グラブバケットが水面から離脱して大気中に吊支された状態に至っても、シェルカバーは密閉された状態を保持している。具体的には、閉状態に保持した余水抜機構では、第2開閉扉で第2余水抜口を閉塞し、第1開閉扉で操作窓を閉塞して固定することにより、第2余水抜口が外部に対して閉じられている。よって、シェルカバー内に収納されている掴み対象物や余水は、巻上に伴って、浚渫用グラブバケットが水中から離脱したとしても、第2余水抜口から、即ちシェルカバーから外部に排出されることはない。
そのため、シェルの容量に加算してシェルカバーの容量を、掴み対象物を収納するために利用することができ、1回のサイクル当たりの掴み量を増加させることができ、その結果、土運船への掴み対象物の積載量を増加させて土運船による陸揚の運行回数を減少させることができ、浚渫作業全体の作業効率を向上させることができる。これらの効果は土厚の規制がなく、掴み対象物でシェルやシェルカバーの容量を満杯とすることが許容される浚渫作業において顕著である。
更に、本発明にかかる余水抜機構は、開状態と閉状態を切替て、それぞれの状態に保持することができるため、1つの浚渫用グラブバケットを多用途に利用することが可能である。しかも、その切替作業は、クレーン等の作業機械を使用したり、バケットを本体ごと交換したり、シェルカバーの容量調整等が不要であり、作業員が手動で簡単に作業できるため、浚渫対象に応じて掴み対象物の土厚を変える浚渫作業における作業効率が飛躍的に向上する。
以下、本発明にかかる浚渫用グラブバケット及び浚渫方法の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態を示す浚渫用グラブバケット80の全体斜視図、図2は正面図、図3は側面図、図4は要部斜視図、図5は余水抜機構10を除いたシェルカバー50の全体斜視図であって、口幅寸法Bを広くした、幅広構造を採用している。
100は左右対称構成にかかる左右一対のシェル、85は下部フレーム、90は上部フレーム、95は左右一対のタイロッドである。シェル100は図3に示す側面視において、両側2ケ所で下部フレーム85に軸87を介し回動自在に軸支され、タイロッド95は、その下端部が軸97によってシェル100に、上端部が軸99によって上部フレーム90に回動自在に軸支されている。下部フレーム85と上部フレーム90の内部には、それぞれ所定数のシーブ(図示略)が回転自在に軸支されており、作業船のクレーンから吊支した2本の開閉ロープ(図示略)を上部フレーム90の上面に配置されたガイドローラ92を介して、上部フレーム90のシーブから下部フレーム85のシーブへと順番に掛け回し、先端を所定の位置に固定している。また、上部フレーム90の上面には浚渫用グラブバケット80全体をクレーンから昇降自在に吊支するための2本の吊支ロープ(図示略)を吊環94を介して連結している。よって、浚渫用グラブバケット80は、開閉ロープの巻取,繰出動作によって、下部フレーム85が上下動するとともに、シェル100を軸87を中心として開閉操作することができる。
シェル100の全閉時における開放上端部には、所定容量を有する立体的形状のシェルカバー50をシェル100と一体となるように強固に固定して密接配置している。そのため、シェル100の全閉時において、掴み対象物と余水からなる収納物は、シェル100とシェルカバー50によって形成される空間に密閉されて巻上られる。第1実施形態では、シェル100の口幅方向の両端をタイロッド95を超えて延長し、シェル100の全閉時におけるシェル100の開幅基準寸法A(シェル100とタイロッド95を軸支する軸97の軸心間の距離)に対して、シェル100の口幅寸法Bを0.6倍以上とする幅広構造を採用して切取面積を拡大するものであり、図示例では1.4倍としており、更により幅広に、例えば1.8倍以上に拡大することも可能である。なお、幅広構造を採用しない第2実施形態では、後述するように開幅基準寸法Aに対して口幅寸法Bを0.5倍としている。よって、土厚が一定に制限される薄層浚渫でもヘドロ等の掴み対象物の1回当たりの掴み量を多くすることができる。なお、シェル100の実際の開口寸法は、シェル100が開く分だけ、前記した開幅基準寸法Aより広くなるが、シェル100の開口度によって異なるため、本発明では寸法を特定可能なシェルの全閉時におけるシェルの開口方向の幅寸法である前記した開幅基準寸法Aを基準として説明する。
第1実施形態では、口幅寸法Bを大きくすることによって生じる下部フレーム85の重量増加やモーメントの発生を抑えるために、下部フレーム85を口幅寸法Bより短く形成している(図3参照)。具体的には、シェル100の両端部がシェルカバー50及び下部フレーム85並びに下部フレーム85とシェル100を軸支する軸87の外方に張り出すようにしている。併せて、口幅寸法Bの拡大によるシェル100のねじれや刃先の変形等については、下部フレーム85とともに、シェル100の開放上端部に密接配置したシェルカバー50によって、シェル100に必要な強度を付与している。即ち、シェルカバー50は、口幅寸法Bを長くしたシェル100の強度を維持するための強度部材としても機能する。
図6は、本発明の第2実施形態を示す浚渫用グラブバケット80の全体斜視図、図7は正面図、図8は側面図、図9はシェルカバー50の全体斜視図である。第2実施形態では、第1実施形態に比較して、シェル100の口幅寸法Bを広くする幅広構造は採用していない。即ち、第2実施形態では、シェル100の口幅方向の両端をシェルカバー50を下部フレーム85の範囲内に収めており、浚渫用グラブバケット80の容量に対する切取面積の占める割合が少ない。第2実施形態では、シェル100の口幅寸法Bを、シェル100の全閉時におけるシェル100の開幅基準寸法A(シェル100とタイロッド95を軸支する軸97の軸心間の距離)に対して、シェル100の口幅寸法Bを0.5倍程度に短くしており、第1実施形態のように切取面積の拡大を図っていない。その他の構成については、第1実施形態と同一であり、同一の符号を付してその説明を省略する。
本発明の特徴は、掴み対象物と余水からなる収納物を密閉状態で巻上るとともに、シェルカバー50の有する容量に起因して掴み対象物とともに浚渫用グラブバケット80内に密閉して収納される余水(以下、単に「シェルカバー50に起因する余水」という)を、浚渫用グラブバケット80の巻上時における水中からの離脱時にシェルカバー50から排水して軽減することにあり、そのために、シェルカバー50には、余水抜機構10を装備している。そこで、シェルカバー50の構成について説明した上で、余水抜機構10の構成について説明する。
左右一対のシェルカバー50は、第1実施形態では図4,図5に示すように、水平面51と水平面51から一定角度で下方に斜設した第1斜面52からなり、第2実施形態では図9に示すように、水平面51と第1斜面52に加えて、第1斜面52から更に一定角度で下方に斜設した第2斜面53からなり、シェル100の全閉時において、左右一対のシェルカバー50内に所定容量を有する立体的形状である。このシェルカバー50の構成は、両実施形態共に掴み対象物をより多く掴む必要性のある浚渫作業にも対応できるように浚渫用グラブバケット80に汎用性を持たせるとともに、シェル100に強度を付与するためのものである。そのため、シェルカバー50の適宜の箇所には強度を保持するための補強部材54を複数付設している。
よって、シェル100の全閉時において、シェル100とシェルカバー50によって、所定容量の密閉空間が形成され、シェルカバー50の容量分だけ、浚渫用グラブバケット80の容量は、シェルカバー50を装備していないシェル100のみの容量から増量される。即ち、浚渫用グラブバケット80はシェル100内の容量とシェルカバー50内の容量が合計された容量の掴み対象物と余水からなる収納物をサイクルタイム毎に巻き上げることとなる。そして、この巻上る収納物の内、掴み対象物以外は余水となり、シェルカバー50によって、密閉構造を実現できるものの、反面において余水の増加を来すこととなる。この傾向は薄層浚渫において、より顕著であり、シェルカバー50内の容量は殆どの場合、余水となり、土運船の積載容量を占めることとなる。
図23に示すように、シェルカバー50の第1斜面52又は第2斜面53の所定の位置に、1又は複数の矩形状の圧力抜孔55を穿設する。図示例では、第1実施形態,第2実施形態ともに第1斜面52に圧力抜孔55を穿設しているが、第2実施形態では第2斜面53に穿設してもよく、又第1実施形態においても第1斜面52に連接して第2斜面53を形成してもよい。この圧力抜孔55に、浚渫用グラブバケット80の内側から外側に掴み対象物と余水からなる収納物が流出することを可能とするとともに、外側から内側に流入することを阻止する逆止弁として機能する逆止蓋70を装備している。逆止蓋70は、平面視がコ字状の上フレーム71と下フレーム72との間に特殊ゴム蓋73の3方向の開放端部を挟持して一体に固定するとともに、残る1端部を上下から一対の固定フレーム74a,74bで固定してなる。
そして、圧力抜孔55を囲繞するように所定高さの中空角筒状の枠体56を立設し、枠体56の上端開口面には、圧力抜孔55と連通し、シェルカバー50の水平面51と同様にシェル100の全閉時において水平状態となるように固定した支持フレーム57に、前記構成の逆止蓋70の固定フレーム74a,74bを固定する。よって、逆止蓋70は上下一対の固定フレーム74a,74bのみが支持フレーム57に固定されているため、シェルカバー50上において、固定フレーム74a,74bを支点として上方向において開閉可能である。なお、逆止蓋70の固定手段等は、図23において例示したボルト,ワッシャ,ナット等の公知の治具を適宜用いればよい。以下、本発明における余水抜機構10の構築においても同様である。
次に本発明の特徴的構成である開状態又は閉状態に保持可能な余水抜機構10の構成を図10~図21に基づいて明らかとする。なお、余水抜機構10の構成は、第1実施形態及び第2実施形態において共通である。図17に示すように、シェル100の開口方向におけるシェルカバー50の端部近傍に1又は複数の第1余水抜口5を形成する。本実施形態では、シェル100の口幅方向においてシェル100と固定されるシェルカバー50の端部をコ字状に切り欠くとともに、隔壁45を介して圧力抜孔55と隣接するように第1余水抜口5を形成する。第1余水抜口5を形成する箇所や個数,形状に特に限定はない。そして、圧力抜孔55を囲繞する枠体56の第1余水抜口5方向の壁面に開口部58を形成し、この開口部58に連接してコ字状の後支持枠26を枠体56に固定するとともに、第1余水抜口5の両側端部のシェルカバー50に、後支持枠26に連接して左右一対の矩形状の側支持枠25を固定する。
この第1余水抜口5を覆蓋するように、図18に示すように取付台座20をシェルカバー50に固定する。取付台座20は、第2余水抜口15を開口形成した前枠21を後枠22と対面させて配置し、後枠22と前枠21の両端を側枠23で連結するとともに、開閉扉30の操作窓40を開口形成した上枠24を上面に連結してなる。詳細には、第2余水抜口15を開口形成した前枠21の両端を左右一対の側支持枠25の第1余水抜口5方向の端部に固定するとともに、後枠22を後支持枠26と側支持枠25の圧力抜孔55方向の端部に固定することによって両者を対面させ、側枠23で後枠22と前枠21の両端を連結するとともに、側枠23を側支持枠25上に固定する。その上で、操作窓40を開口形成した上枠24を側枠23の上面に固定する。よって、第2余水抜口15は、第1余水抜口5を覆蓋して配置されている。
図16は開閉扉30の全体斜視図であり、所定厚さの矩形状の第1開閉扉31と第2開閉扉33を長手方向において、1又は複数の補強リブ36を介在させて略直角状に連結するとともに、連結部の長手方向全長に渡って軸孔34を穿設して、貫通させている。また、第1開閉扉31の外面には、操作員が握持して操作するための1又は複数の把手35を突設している。第1開閉扉31及び第2開閉扉33は略同一寸法であり、図11に示すように、第1開閉扉31で操作窓40を、第2開閉扉33で第2余水抜口15をそれぞれ閉塞することにより第1余水抜口5と第2余水抜口15の連通を遮断し、余水抜機構10を閉状態として、掴み対象物や余水をシェルカバー50内に密閉することができる。また、図14に示すように、第2開閉扉33で操作窓40を閉塞し、第1開閉扉31を開放することによって、第1余水抜口5と第2余水抜口15を連通させて、余水抜機構10を開状態として、シェルカバー50内の余水を第1余水抜口5から第2余水抜口15を経て、又圧力抜孔55から第2余水抜口15を経て外部に排水することができる。
なお、開閉扉30は操作窓40及び第2余水抜口15を覆蓋して閉止することが可能な寸法とシェルカバー50に付設される部材として必要な強度を有している。また、第1開閉扉31と第2開閉扉33の連結角度は、略直角状に限ることなく、操作窓40と第2余水抜口15を閉塞することによって、余水抜機構10を閉状態に保持し、又は操作窓40を閉塞するとともに、第2余水抜口15を開放することができれば、適宜の連結角度や連結構造を選択すればよい。
上記構成の開閉扉30の軸孔34を、取付台座20の前枠21の両端に装備した軸受27間に嵌合させ、支持軸28を軸受27と軸孔34間に挿入して軸支する。これにより第1開閉扉31と第2開閉扉33は軸受27を中心として回動可能であり、第1開閉扉31又は第2開閉扉33のどちらか一方により操作窓40を閉塞して固定することが可能である。
上枠24の操作窓40の外周には、図19に示すように、上面にシールパッキン43を敷設した所定幅のコ字状のストッパ41を押板42で圧接して固定する。ストッパ41は、上枠24の開放端より、操作窓40側に一定幅だけ庇状に張り出す張出部41aを有して固定され、図11、図12に示すように張出部41aの上面に第1開閉扉31の下面が衝接して停止し、又図14、図15に示すように張出部41aの下面に第2開閉扉33の上面が衝接して停止する。
シールパッキン43は、第1開閉扉31で操作窓40を閉塞して余水抜機構10を閉状態に保持する場合(図11,図12参照)に、操作窓40からの余水の漏出を防ぐためのものであり、ストッパ41と同一平面形状であり、ストッパ41上面に配置され、押板42によってストッパ41との間に挟持されている。なお、押板42は上枠24の域内に位置しており、ストッパ41の張出部41a及び張出部41a上のシールパッキン43は押板42の開放端より突出している。
上枠24には操作窓40に臨んで、第1開閉扉31又は第2開閉扉33を操作窓40に固定するために、図22に示す固定具60を装備する。固定具60は、上枠24の上面に固定した中空筒状のボス68を介して作動軸61を上枠24に回動自在に貫通させ、上枠24の上面側に位置する作動軸61に上枠24と一定距離離間させて第1固定板62を固定するとともに、上枠24の下面側に位置する作動軸61に上枠24の下面と摺接させて第2固定板64を固定し、第1固定板62と第2固定板64は上枠24を挟んで対面させている。また、作動軸61の上端を跨いで門形のブラケット69を第1固定板62の上面に立設して固定し、棒状の操作杆65を第1固定板62と平行となるようにブラケット69を貫通させて作動軸61の上端に固定する。よって、操作杆65を握持して作動軸61を中心として回動させることにより、第1固定板62及び第2固定板64は一体として、上枠24の上下両面において操作窓40の領域内に侵入・離脱自在に回動する(図11,図14参照)。
そして、第1固定板62及び第2固定板64によって余水抜機構10を閉状態に保持するときは、図11、図12に示すように操作窓40の領域内に第1開閉扉31を固定し、一方、余水抜機構10を開状態に保持するときは、図14、図15に示すように第2開閉扉33を操作窓40の領域内に固定する。固定具60は第1固定板62及び第2固定板64で第1開閉扉31又は第2開閉扉33を挟持し、かつ、いずれの部材も重量物であるため、固定具60が外れることはないと思われる。しかしながら、浚渫作業は目視が不可能な水中での作業であるため、フェイルセイフの観点から、固定具60による第1固定板62又は第2固定板64の固定状態を確実に保持するため、第1固定板62に穿設した貫通孔63に連通するように緊締受具67を固定し、緊締具66を緊締受具67から貫通孔63に挿通することによって、第1固定板62を押板42に対して押圧して第1固定板62の回動を阻止する。本実施形態では、緊締受具67として内周面に雌螺子を刻設したナットを固定し、緊締具66として雄螺子を刻設した蝶螺子をナットに螺合させることによって、第1固定板62を押板42に押圧した。なお、緊締具66としては、第1固定板62の回動を阻止することができれば、特に限定はない。
また、図20に示すように、前枠21の前面には第2余水抜口15と連通して、第2余水抜口15から排水される余水を鉛直方向にガイドするための排水フード29を装備することによって、図10に示す余水抜機構10の組み付けが完了する。そこで、余水抜機構10を閉状態に保持する場合について、閉状態の余水抜機構10の全体斜視図である図10、及びその要部断面図である図11並びにその要部拡大図である図12に基づいて説明する。
余水抜機構10を閉状態とするためには、先ず、緊締具66を緩めた後、固定具60の操作杆65を操作して第1固定板62及び第2固定板64を回動させて、図20に示すように操作窓40(図18参照)の領域外に位置させる。この状態で、操作員が第1開閉扉31の把手35を把持して、支持軸28を中心としてシェル100の内方に向けて回動させて、先端の下面をシールパッキン43を介してストッパ41の張出部41aの上面に衝接させて支持させる。そして、固定具60の操作杆65を操作して第1固定板62及び第2固定板64を一体として回動させて、張出部41aの上面と第1固定板62の下面で第1開閉扉31を挟持して操作窓40を閉塞するとともに、緊締具66によって第1固定板62を押板42に押圧して、固定具60を回動不能に固定する。この動作により第2開閉扉33は第1開閉扉31に連動して回動し、その先端の下面がシェル100の内面に衝接して、図11に示すように第2余水抜口15を閉塞して保持する。
このように余水抜機構10を閉状態に保持して浚渫作業を行うため、図24に示すように、シェルカバー50内の余水は圧力抜孔55や第1余水抜口5を通過可能ではあるが、第2余水抜口15が閉塞されているため、外部に排水されることなく、シェルカバー50内に密閉される。そのため、シェル100の上端部である吃水線Wを超えて、シェルカバー50の容積内に収納されている収納物Y(余水)は全て密閉されたままの状態で浚渫され、土運船に収納される。よって、土厚が限定されることなく、1回のサイクル回数における掴み対象物の量を、より多く掴むことが望ましい浚渫作業に対応することができる。
次に、余水抜機構10を開状態に保持する場合について、開状態の余水抜機構10の全体斜視図である図13,その要部断面図である図14,その要部拡大図である図15及びその作用説明図である図25~図27に基づいて説明する。余水抜機構10を開状態とするためには、図10,図11に示す閉状態から、先ず緊締具66を緩め、固定具60の操作杆65を操作して第1固定板62及び第2固定板64を回動させて、図20に示すように操作窓40の領域外に位置させる。この状態で、操作員が第1開閉扉31の把手35を把持して、第1開閉扉31を支持軸28を中心としてシェル100の外方に向けて回動させて開放することにより、第2開閉扉33が連動して回動し、先端の上面をストッパ41の張出部41aの下面に衝接させて支持させる。そして、固定具60の操作杆65を操作して第1固定板62及び第2固定板64を一体として回動させて、張出部41aの下面と第2固定板64の上面で第2開閉扉33を挟持して操作窓40を閉塞するとともに、緊締具66によって第1固定板62を押板42に押圧して、固定具60を回動不能に固定する。
この操作により、第2余水抜口15は外部に向けて開口し、その状態が保持される。巻上時における浚渫用グラブバケット80が水面110より下の水中にあるときは、図25に示すように第2余水抜口15が開口していたとしてもシェルカバー50内の収納物Y(余水)が第2余水抜口15から水中に排水されることはない。この状態から浚渫用グラブバケット80が水中から離脱すると、第2余水抜口15が水面110から大気に開放されるため、第2余水抜口15より上方のシェルカバー50内に収納された収納物Y(余水)、即ち、シェル100の吃水線Wより上方のシェルカバー50内の収納物Y(余水)は、図26の矢印に示すように、圧力抜孔55及び第1余水抜口5を経由して第2余水抜口15から排水フード29によってガイドされて鉛直方向の大気中に排水される。そのため、収納物Y(余水)は過度の飛散を伴うことなく、浚渫水域内に設置された汚濁防止枠内の水面に排水される。その結果、図27に示すようにシェルカバー50内の収納物Y(余水)を軽減することができ、土運船に積載する余水の量を軽減することができる。
本発明にかかる余水抜機構10は、シェル100の開口方向におけるシェルカバー50の端部近傍に装備するものであって、シェル100には装備しない。余水抜機構10をシェル100の開口方向のシェルカバー50の端部近傍に装備するのは、シェルカバー50に起因する余水を排水するという課題を解決でき、かつ、設置するスペースを確保し易く、メンテナンスが容易に行えるためである。また、シェル100に装備しないのは、シェル100は浚渫用グラブバケットの構造上、強度に影響の大きい部材であるため、余水抜機構10のために開口部を設けると、浚渫用グラブバケット全体の強度が低下してしまい、浚渫用グラブバケットとして合理性を欠く。特に幅広構造を採用した浚渫用グラブバケットでは強度保持に留意する必要があるからである。
上記したシェルカバー50に余水抜機構10を装備した浚渫用グラブバケット80を使用して港湾,河川,湖沼等の水底の土砂やヘドロ等の各種の浚渫作業を次の要領で行う。汚濁防止枠を浚渫水域の水面に設置した上で、作業船のクレーンから浚渫用グラブバケットを吊支する。このとき浚渫作業の目的に応じて余水抜機構10を開状態又は閉状態に保持しておく。本発明の課題であるシェルカバー50に起因する余水を排水するためには、余水抜機構10を開状態に保持しておき、シェルを全開させて、「(水底への)巻下」を行う。このとき、逆止蓋70が水圧により上方に開いて、シェル100内の空気や水が上方に抜けて水中での抵抗が減少するので、降下時間を短縮することができる。
浚渫用グラブバケット80が水底に着底すると、シェル100を閉じて掴み対象物を掴んでシェル100とシェルカバー50によって形成される空間に余水とともに収納する「(水底での)掴み」を行う。この動作において、シェル100が掴み対象物を所定容量以上に掴んだ場合には、内圧が上昇するが、内圧の上昇に伴って逆止蓋70が上方に開いて、内圧を降下させることができるので、切取面積を拡大した幅広構造の浚渫用グラブバケット80であっても、シェル100の変形及び破損が引き起こされる惧れがない。なお、余水抜機構10が開状態に保持されている場合は、余水抜機構10も内圧の降下に寄与し得る。
次に、浚渫用グラブバケット80の「(水底からの)巻上」を行う。この動作によって、浚渫用グラブバケット80が水中から離脱することにより、開状態に保持した余水抜機構10の第2余水抜口15が大気に開放されると、シェルカバー50の余水が第2余水抜口15から汚濁防止枠内の水面に排水される。これにより、シェルカバー50に起因する余水が排水されて減少する。余水抜機構10が閉状態のときは、第2余水抜口15及び操作窓40は、それぞれ第2開閉扉33と第1開閉扉31で閉塞されているため、シェルカバー50の余水が排水されたり、粘度の低い掴み対象物が流出することはない。
前記した「(水底からの)巻上」における水中移動時には、外圧によって逆止蓋70は閉じられており、又余水抜機構10が開状態のときはシェルカバー50内は水中と同じ余水で満たされているため、掴み対象物の散乱とか水中移動は発生することがない。
シェルカバー50内の余水を排水した余水抜機構10は、「(空中での土運船への)旋回」を行い、「(土運船への)掴み降ろし」をして、「(土運船での)開口」により土運船に収納物を積載し、「(土運船からの)巻上」から「(空中での浚渫箇所への)旋回」により、再び「(水底への)巻下」られて、新たなサイクル動作を行う。
文献1バケットを使用して行った試験浚渫を、文献1バケットに代えて余水抜機構10を開状態とした本発明にかかる浚渫用グラブバケット80を用いて行うとすると、1サイクル当りに掴む掴み対象物の量は、15m3(切取面積30m2×土厚0.5m)で、浚渫用グラブバケット80の容量の残部(15m3)は余水となり、掴み対象物と余水を併せて30m3をシェル100とシェルカバー50によって形成される空間に密閉する。ここまでは文献1バケットを用いた場合と同様である。
次に、浚渫用グラブバケット80の「(水底からの)巻上」動作によって、浚渫用グラブバケット80が水中から離脱することにより、開状態に保持した余水抜機構10の第2余水抜口15が大気に開放されると、シェルカバー50内の余水10m3が第2余水抜口15から汚濁防止枠内の水面に排水される。これにより、浚渫用グラブバケット80内に収納されているのは、シェル100に収納された15m3の掴み対象物と5m3の余水となり、合計20m3を土運船に積載することとなる。よって、土運船に積載する余水の量を1サイクル当たり、10m3減少させることができる。
そのため、150サイクル(3000m3/20m3)浚渫作業を行うと土運船の積載容量3000m3に達し、土運船に積載された掴み対象物は、2250m3であって、残り750m3は余水となる。よって、シェルカバー50内の余水を排水することによって、文献1バケットに比較して、土運船1艘に積載される掴み対象物の量は750m3(2250m3-1500m3)増加し、陸揚げ後に処理する余水の量は750m3(1500m3-750m3)減少する。