以下では、図面を参照しながら本発明に係る塗布材繰出容器の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し重複する説明を適宜省略する。
(第1実施形態)
図1及び図2に示されるように、第1実施形態に係る塗布材繰出容器1は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状を成し良好な外観を呈するもので、キャップC(図12参照)が装着される。塗布材繰出容器1は固形状の塗布材Mを備える。塗布材Mは、例えば、棒状化粧料であるが、描画材等であってもよい。本実施形態では、塗布材Mはアイブロウであり、塗布材繰出容器1はアイブロウ繰出容器である。
例えば、塗布材繰出容器1は、容器前部を構成する先筒3、及び容器後部を構成する容器本体4を含む筒状の容器2と、容器2の内部に収容された移動体5と、容器本体4の内部に収容された雌螺子部材6と、雌螺子部材6の後方に設けられるバネ部材7と、容器本体4の後方且つ容器本体4の内部で軸線方向に延びる筒状の尾栓8と、先筒3及び容器本体4の間に位置する中筒9とを備える。
本明細書において、「軸線」とは、塗布材繰出容器1の前後に延びる中心線を示しており、「軸線方向」とは、前後方向であって且つ軸線L(図3参照)に沿った方向を示している。塗布材Mの繰り出し方向を前方(前進する方向)とし、その反対方向を後方とする。
先筒3は、全体として軸線方向に延びる細長い筒状を呈する。先筒3は、その前端部3aに、軸線方向に対して傾斜する先筒傾斜面3bを有する。先筒3の前端部3aには、塗布材Mが露出する開口部3cが形成されている。開口部3cは、先筒3の側面の片側が切り欠かれた形状とされており、先筒3の前端3dから斜め後方に延在している。なお、前端部3aは、前端3dを含む先筒3の前側の一定の領域を示している。先筒3については後に詳述する。
中筒9は、先筒3に後方から挿入される前側部9aと、外方に露出する鍔部9bと、鍔部9bの後方に位置して容器本体4に前方から挿入される後側部9cとを有する。中筒9は、前側部9aが先筒3に挿入された状態で先筒3に固定されている。後側部9cは筒状とされており、後側部9cには後方から雌螺子部材6が挿入される。雌螺子部材6は、略円筒状に形成されている。雌螺子部材6の内周面の前側には、螺合部10の一方を構成する雌螺子6aが設けられており、雌螺子6aには移動体5が螺合する。
移動体5は、全体として丸棒状を成している。移動体5は、先筒3、中筒9、雌螺子部材6及びバネ部材7の内部に配置されて軸線方向に延在する。移動体5は、先筒3、中筒9、雌螺子部材6及びバネ部材7に対して軸線方向に移動可能とされている。移動体5は、その外周面に、螺合部10の他方を構成する雄螺子5aを備える。
雌螺子部材6及びバネ部材7の間には、先筒3と容器本体4との相対回転を一方向のみ許容して塗布材Mの繰り出しのみに規制するラチェット機構12が設けられている。ラチェット機構12は、例えば、バネ部材7の前端に設けられたクリック突起と、雌螺子部材6の後端に設けられたクリック孔によって形成される。クリック突起はバネ部材7の前端から軸線方向外側に突き出すと共に周方向に沿って並設されており、クリック孔は筒状の雌螺子部材6の後端に設けられて上記のクリック突起と係合可能とされている。
バネ部材7は、筒状に形成されている。バネ部材7は、落下時等の外力作用時に、塗布材繰出容器1の内部に伝わる衝撃を緩和し、塗布材繰出容器1を保護する機能を有する。バネ部材7の前端は、例えば、前述したクリック突起及びクリック孔を介して、雌螺子部材6の後端に後方から突き当てられる。バネ部材7は、雌螺子部材6に当接する前側筒部7aと、容器本体4の軸線方向中央付近で容器本体4の内面に係合する後側筒部7bと、前側筒部7a及び後側筒部7bを接続するバネ部7cとを備える。
バネ部7cは、軸線方向に伸縮可能とされている所謂樹脂バネである。バネ部7cは、その周面に沿って螺旋状に延び且つ内外を連通するスリット7dによって形成される。バネ部7cは、外力が作用したときに伸縮することによって塗布材繰出容器1に加えられた衝撃を緩和する。
先筒3の内部には塗布材Mを支持する塗布材支持部11が収容されており、塗布材支持部11は塗布材Mと移動体5の間に介在している。移動体5は、塗布材支持部11に対して相対回転可能とされている。塗布材支持部11は、全体として軸線方向に延びる棒状を成している。塗布材支持部11は、後側に移動体5が挿入される第1筒部11aを備え、前側に塗布材Mの後端部が挿入される第2筒部11bを備える。第2筒部11bに前側から塗布材Mが挿入されることによって、塗布材支持部11が塗布材Mを支持する。
次に、先筒3及び塗布材Mについて詳細に説明する。図3に示されるように、先筒3は、その内部に、塗布材Mを収容する第1収容空間3e及び第2収容空間3fを有する。第1収容空間3eは、第2収容空間3fの後方に設けられており、塗布材M及び塗布材支持部11を収容する。第2収容空間3fは、第1収容空間3eの前側に位置しており、第1収容空間3eよりも狭い空間とされている。第2収容空間3fには、塗布材Mのみが挿通されている。第2収容空間3fは、先筒3の前端3dの開口部3cに連通している。
図3及び図4に示されるように、先筒3の内部において、塗布材Mは長軸方向D1及び短軸方向D2に延びている。また、第2収容空間3fは、長軸方向D1及び短軸方向D2に延びる形状とされており、軸線方向に沿って同一の形状を維持している。先筒3の第1収容空間3eの幅Y1(長軸方向D1の長さ)は第2収容空間3fの幅Y2よりも短く、塗布材Mと先筒3との間のクリアランスZは軸線方向に沿って一定とされている。このように、第1収容空間3eの幅Y1を第2収容空間3fの幅Y2よりも短くしてクリアランスZを軸線方向に沿って一定とすることにより、先筒3の内部における塗布材Mのがたつきを抑制することができる。
先筒3の外面は、前述した前端3dから延びる先筒傾斜面3bと、先筒傾斜面3bから後方に延びる後側傾斜面3gとを含む。先筒傾斜面3bと後側傾斜面3gの間には、境界線3nが延びている。先筒傾斜面3b及び後側傾斜面3gは、共に、軸線方向に対して傾斜する方向に延びている。軸線方向に対する先筒傾斜面3bの傾斜角度は、軸線方向に対する後側傾斜面3gの傾斜角度よりも大きい。
図3、図5及び図6に示されるように、塗布材Mは、開口部3cから前方に繰り出されると共に、軸線方向に交差する長軸方向D1に沿って延びる先端M1を有する。前側から見たときの塗布材Mの形状は、長軸方向D1及び短軸方向D2に拡がる形状とされている。先端M1は、鋭角状を成している。
塗布材Mは、先端M1から軸線方向に対して傾斜する方向に延びる塗布材傾斜面M2を有する。塗布材傾斜面M2は、軸線方向及び短軸方向D2の双方に対して傾斜する方向に延びている。塗布材傾斜面M2は、先筒3の先筒傾斜面3bに沿って形成される面であり、例えば、塗布材傾斜面M2の傾斜角度は、先筒傾斜面3bの傾斜角度と略同一である。
前側から見たときの先筒3の形状は、全体として円形状とされており、前端3dは、長軸方向D1に延びる形状とされている。前側から見たときに、先筒傾斜面3bは前端3dの短軸方向D2の一方側に設けられており、先筒傾斜面3bの形状は長軸方向D1及び短軸方向D2に延びる長円状とされている。先筒傾斜面3bは前端3dに対して短軸方向D2の片側(図6では上側)に設けられており、塗布材傾斜面M2は先端M1に対して短軸方向D2の片側に形成されている。先筒傾斜面3bは、塗布材傾斜面M2の延長線に沿うように設けられる。
図6及び図7に示されるように、先筒3は、開口部3cの内側に塗布材Mと対向する内壁面3hを有する。内壁面3hは、塗布材Mの長軸方向D1の一方側を向く第1側面M3に対向する。第1側面M3は平坦状とされている。
図8及び図9に示されるように、塗布材傾斜面M2は、塗布材Mの外側に膨らむように湾曲した曲面状とされている。塗布材傾斜面M2及び先筒傾斜面3bは、軸線方向及び短軸方向D2の双方に対して傾斜する鋭角線Aに沿って直線状に延在すると共に塗布材M及び先筒3の外側に膨らむように湾曲した曲面である。
すなわち、軸線Lに対して鋭角を成す鋭角線Aを塗布材M及び先筒3の外側に膨らむように移動させたときにおける鋭角線Aの軌跡が塗布材傾斜面M2及び先筒傾斜面3bを形成する。塗布材傾斜面M2の第1側面M3との反対側には平坦状の第2側面M4が設けられており、塗布材傾斜面M2の短軸方向D2の一方側には平坦状の第3側面M5が設けられている。
図10及び図11に示されるように、先筒3の前端3dは、先筒3の外側に膨らむように湾曲している。前端3dから見て先筒傾斜面3bの反対側には傾斜面3pが設けられている。傾斜面3pは、軸線方向に対して先筒傾斜面3b及び塗布材傾斜面M2の反対側に傾斜している。傾斜面3pと先筒傾斜面3bとの成す角度は鋭角とされている。先筒傾斜面3bと傾斜面3pの間には、前端3dから後方に延びる境界部3qが設けられている。境界部3qは、前端3dに連続しており、前端3dから先筒3の後方に線状に延びている。
先筒3には、図12(a)及び図12(b)に示されるキャップCが装着される。キャップCは、軸線方向に延びる棒状に形成される。キャップCは、後方側に向けられると共に先筒3が後方から挿入される筒状部C1と、筒状部C1の前方に位置する削り部C2とを備える。例えば、筒状部C1及び削り部C2は一体成形されている。筒状部C1は、その内周面に、挿入された先筒3に係合する複数の突条C3を有する。軸線方向に延びる複数の突条C3の間に先筒3が挿入されることによって先筒3がキャップCに係合する。
削り部C2は、前側から見たときに長円形状とされる先端部C4と、先端部C4の後方に位置する刃部C5とを含む。キャップCの長手方向に直交する平面で刃部C5を切断したときの断面形状は、長円の長軸に沿った一方の端部を長軸方向に突き出すように尖らせた端部を備えた形状(涙形)とされている。
先筒3からキャップCを外して刃部C5を塗布材Mに当てることにより塗布材Mを削ることが可能である。具体的には、キャップCを手で持って刃部C5を先筒3の先筒傾斜面3b(又は鋭角線A)に沿って移動させて塗布材Mを削ることにより、図10に示されるような、先筒傾斜面3bに沿った塗布材傾斜面M2が形成される。
塗布材Mの繰り出しについて説明する。先筒3から塗布材Mを繰り出すときには、図1及び図2に示されるように、キャップCを外した状態で先筒3と容器本体4とを一方向(例えば時計回り)に相対回転する。すると、先筒3、中筒9及び雌螺子部材6が同期回転すると共に、容器本体4、バネ部材7、尾栓8及び移動体5が同期回転し、雌螺子部材6の雌螺子6a及び移動体5の雄螺子5aによって構成された螺合部10の螺合作用が働いて移動体5が前進する。
移動体5の前進によって塗布材Mが先筒3の開口部3cから前方に突出し、塗布材Mの繰り出しが行われ、被塗布部に塗布材Mが当てられることによって塗布材Mの塗布が行われる。以上の先筒3、容器本体4、移動体5、雌螺子部材6、バネ部材7、尾栓8及び中筒9により、塗布材Mを軸線方向に繰り出す繰り出し機構が構成される。
以上、塗布材繰出容器1は、軸線方向に延びる固形状の塗布材Mと、塗布材Mを保持する先筒3とを備え、図3、図5及び図6に示されるように、前側から見たときの塗布材Mの形状は、長軸方向D1及び短軸方向D2に拡がる形状とされている。前側から見たときに、塗布材Mは、長軸方向D1に長く延びる形状を成している。また、塗布材Mの先端M1は、鋭角状とされると共に、長軸方向D1に延びている。よって、長軸方向D1に延びる塗布材Mの先端M1を被塗布部に当てて、長軸方向D1に沿うように塗布材Mを移動させることにより、被塗布部に細い線をきれいに描くことができる。
また、塗布材Mの先端M1が長軸方向D1に延びる形状とされていることにより、例えば塗布材の先端が錐体状である場合と比較して、塗布を継続しても先端M1が丸くなりにくい。従って、細い線を描いているときに塗布材Mを削る手間を減らすことができるので、細い線を容易に描くことができる。
更に、塗布材Mの塗布を継続して先端M1が丸みを帯びた場合、塗布材Mを少し繰り出して、刃部C5又はカッター等で先筒傾斜面3bに沿って塗布材Mを削ることにより、先端M1を容易に鋭角状に復帰させることができ、細い線を容易に描くことができる。また、先筒傾斜面3bに沿って、紙、紙やすり、表面を凸凹に加工したフィルム、又はティッシュペーパー等、粗さが異なる面を有するもので塗布材Mを研磨しても、所望の鋭角を備えた先端M1を容易に再生することができる。
また、先端M1は、長軸方向D1に沿って線状に延びている。すなわち、塗布材Mの先端M1は、長軸方向D1に長く延びる線状とされている。よって、長軸方向D1に沿うように塗布材Mを移動させて塗布を行うと、線状とされた先端M1に沿って細い線をきれいに描くことができる。従って、細い線を先端M1に沿ってスムーズに描くことができる。
また、塗布材傾斜面M2は、先筒傾斜面3bに沿って形成されると共に、先端M1に対して短軸方向D2の片側に形成されている。すなわち、塗布材Mの先端M1の片側に塗布材傾斜面M2が形成され、塗布材傾斜面M2は先筒傾斜面3bに沿って形成される。よって、先筒傾斜面3bに沿ってカッター等の刃物を移動させて塗布材Mを削ることにより、容易に塗布材傾斜面M2を形成することができる。従って、細い線をきれいに描ける先端M1及び塗布材傾斜面M2を備えた塗布材Mを容易に形成することができる。
また、塗布材傾斜面M2及び先筒傾斜面3bは、軸線方向に対して傾斜する鋭角線Aに沿って直線状に延在すると共に塗布材M及び先筒3の外側に膨らむように湾曲した曲面である。従って、塗布材傾斜面M2及び先筒傾斜面3bが外側に膨らむように湾曲した曲面であることにより、塗布材Mの先端M1を曲線状にすることができる。
また、先端M1は、塗布材M及び先筒3の外側に膨らむように湾曲する曲線状とされている。よって、先端M1が外側に膨らむように湾曲した曲線状とされるため、先端M1を被塗布部に当てることによって細くて短い線や細くて長い線を一層容易に描くことができる。すなわち、先端M1が外側に膨らむ曲線であることにより、先端M1に沿うように塗布を行うことによって、毛のような細くて短い線や細くて長い線を一層容易に描くことができる。
また、先筒3は、塗布材Mを保持する開口部3cを有し、開口部3cは、その前端3dから長軸方向D1の一方側及び後側に延びるように形成されている。従って、開口部3cが長軸方向D1の一方側に延びることにより、開口部3cの長軸方向D1の他端側に塗布材Mが対向する内壁面3hを設けることができる。
また、開口部3cは、長軸方向D1の他方側に、塗布材Mと対向する内壁面3hを有する。従って、塗布材Mで塗布を行っているとき又は塗布材Mを削っているとき等に、塗布材Mに外力が付与されても塗布材Mの欠け及び折損を抑制することができる。すなわち、塗布材Mに外力が加えられたときに塗布材Mが内壁面3hに押し当てられ内壁面3hが塗布材Mを保持することにより、塗布材Mの欠け及び折損を防止することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る塗布材繰出容器21について図13~図18を参照しながら説明する。第2実施形態は、先筒23及び塗布材Nの構成が第1実施形態と異なっている。図13及び図14に示されるように、塗布材繰出容器21は、第1実施形態と同様、容器前部を構成する先筒23、及び容器後部を構成する容器本体4を含む筒状の容器22と、容器22の内部に収容された移動体5と、容器本体4の内部に収容された雌螺子部材6と、雌螺子部材6の後方に設けられるバネ部材7と、容器本体4の後方且つ容器本体4の内部で軸線方向に延びる筒状の尾栓8と、先筒23及び容器本体4の間に位置する中筒9とを備える。以下では、第1実施形態に係る塗布材繰出容器と重複する説明を適宜省略する。
図15に示されるように、先筒23の外面は、先筒23の前端23dから延びる先筒傾斜面23bと、先筒傾斜面23bから後方に延びる後側傾斜面23gとを含む。先筒傾斜面23bと後側傾斜面23gの間には境界線23nが延びている。先筒傾斜面23b及び後側傾斜面23gは、共に、軸線方向に対して傾斜する方向に延びている。先筒傾斜面23bの傾斜角度は、後側傾斜面23gの傾斜角度よりも大きい。
図15及び図16に示されるように、塗布材Nは、先筒23の開口部23cから前方に繰り出されると共に、軸線方向に交差する長軸方向D1に沿って延びる先端N1を有する。前側から見たときの塗布材Nの形状は、長軸方向D1及び短軸方向D2に拡がる形状とされている。先端N1は、鋭角状を成している。先端N1は、長軸方向D1に延びる線状とされており、先端N1の幅は長軸方向D1の一方側(図16の左側)から他方側(図16の右側)に向かうに従って徐々に狭くなっている。
塗布材Nは、先端N1から軸線方向に対して傾斜する方向に延びる塗布材傾斜面N2を有する。塗布材傾斜面N2は、軸線方向及び短軸方向D2の双方に対して傾斜する方向に延びている。塗布材傾斜面N2は、先筒23の先筒傾斜面23bに沿って形成された面であり、例えば、塗布材傾斜面N2の傾斜角度は、先筒傾斜面23bの傾斜角度と略同一である。
前側から見たときの先筒23の形状は、全体として円形状とされており、前端23dは、長軸方向D1及び短軸方向D2に延びる長円状とされている。前側から見たときに、先筒傾斜面23bは、前端23dを囲むと共に長軸方向D1及び短軸方向D2に延びる長円状とされている。
各先筒傾斜面23bは、前端23dに対して上下一対に設けられる。先筒傾斜面23b及び塗布材傾斜面N2は、先端N1に対して短軸方向D2の両側に一対に形成されている。すなわち、先端N1の短軸方向D2の両側に塗布材傾斜面N2が形成されており、各塗布材傾斜面N2の延長線に沿うように一対に先筒傾斜面23bが設けられる。例えば、先筒傾斜面23b及び塗布材傾斜面N2は、先端N1に対して上下に対称に設けられる。
図17及び図18に示されるように、先筒23は、開口部23cの内側に塗布材Nと対向する内壁面23hを有する。内壁面23hは、塗布材Nの長軸方向D1の一方側の幅広とされた第1側面N3に対向する。第1側面N3と先端N1の間には、塗布材Nの外側に湾曲する湾曲面N5が形成されている。
第1側面N3には湾曲面N5を介して先端N1の幅広とされた部位が連続している。第1側面N3は平坦状とされており、湾曲面N5及び先端N1は曲面状とされている。先端N1は、長軸方向D1の一方側から他方側に向かうに従って幅が狭くなると共に、後方に湾曲している。
すなわち、先端N1は、長軸方向D1の一方側から他方側に向かうに従って、塗布材Nの外側に膨らむように湾曲している。先端N1の長軸方向D1における他方側の端部には、後方に向かうに従って幅広とされた第2側面N4が設けられている。このように、幅広とされた第1側面N3、湾曲面N5、第1側面N3から離れるに従って幅が狭くなる線状の先端N1、及び先端N1から離れるに従って幅広となる第2側面N4が形成されることにより、塗布材Nで一層きれいな線を描くことが可能となる。
塗布材傾斜面N2は、第1側面N3から第2側面N4に向かうに従って、長軸方向D1の一方側及び後側に湾曲している。塗布材傾斜面N2は、第1側面N3から第2側面N4に向かうに従って塗布材Nの外側に膨らむように湾曲している。換言すれば、塗布材傾斜面N2は、第1側面N3から第2側面N4に向かって曲線状に湾曲しており、第1側面N3から第2側面N4までの間において塗布材傾斜面N2の幅は略一定とされている。
先筒23の前端部23aは、前述した前端23dと、前端23d及び先筒傾斜面23bを接続する湾曲面23jとを含む。前端23dは、前側を向く平坦面とされており、湾曲面23jは、前端23dから先筒傾斜面23bに向かって湾曲している。先筒傾斜面23bは、内壁面23hを有する第1側部23kから、第1側部23kの長軸方向D1の反対側に位置する第2側部23mまで膨らむように湾曲している。先筒傾斜面23bと後側傾斜面23gの境界線23nは、第1側部23kから第2側部23mに向かうに従って膨らむように湾曲している。
以上のように構成される塗布材繰出容器21の塗布材Nは、第1実施形態と同様、キャップCの刃部C5を塗布材Nに当てることにより削ることが可能である。具体的には、キャップCを手で持って刃部C5を先筒23の先筒傾斜面23bに沿って移動させて塗布材Nを削ることにより、図15~図18に示されるような、先筒傾斜面23bに沿った塗布材傾斜面N2が形成される。
先筒23から塗布材Nを繰り出すときには、図13及び図14に示されるように、キャップCを外した状態で先筒23と容器本体4とを一方向(例えば時計回り)に相対回転する。すると、先筒23、中筒9及び雌螺子部材6が同期回転すると共に、容器本体4、バネ部材7、尾栓8及び移動体5が同期回転し、螺合部10の螺合作用が働くことにより移動体5が前進する。移動体5の前進によって塗布材Nが先筒23の開口部23cに対して前方に突出し、塗布材Nの繰り出しが行われ、被塗布部に塗布材Nが当てられることによって塗布材Nの塗布が行われる。
以上、塗布材繰出容器21は、軸線方向に延びる固形状の塗布材Nと、塗布材Nを保持する先筒23とを備え、図15及び図16に示されるように、前側から見たときの塗布材Nの形状は、長軸方向D1及び短軸方向D2に拡がる形状とされている。前側から見たときに、塗布材Nは、長軸方向D1に長く延びる形状を成している。また、塗布材Nの先端N1は、鋭角状とされると共に、長軸方向D1に延びている。よって、長軸方向D1に延びる塗布材Nの先端N1を被塗布部に当てて、長軸方向D1に沿うように塗布材Nを移動させることにより、被塗布部に細い線をきれいに描くことができる。従って、塗布材繰出容器21からは第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、塗布材傾斜面N2は、先筒傾斜面23bに沿って形成されると共に、先端N1に対して短軸方向D2の両側に形成される。従って、塗布材Nの先端N1の両側に塗布材傾斜面N2が形成され、先筒傾斜面23bの延長上に塗布材傾斜面N2が形成される。よって、先筒傾斜面23bに沿って塗布材Nを削るときに、先筒23の先端側で塗布材傾斜面N2が自然と露出するため、削った直後に塗布を行うことができる。すなわち、削った後に塗布材Nを繰り出さなくても塗布材Nを塗布することができる。従って、細い線の描写を一層容易に行うことができる。
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係る塗布材繰出容器31について図19(a)及び図19(b)を参照しながら説明する。塗布材繰出容器31は、先筒33及び塗布材Pの形状が前述した各実施形態と異なっている。先筒33の外面は、先筒33の前端33dから延びる先筒傾斜面33bと、先筒傾斜面33bから後方に延びる後側傾斜面33gとを含む。
先筒傾斜面33bは、軸線方向及び短軸方向D2の双方に対して傾斜すると共に、前端33dから長軸方向D1の一方側及び後側に向かって湾曲している。先筒傾斜面33bは、先筒33の外側に膨らむように湾曲している。先筒33は、塗布材Pを露出する開口部33cを有する。
開口部33cは、先筒傾斜面33bと同様、前端33d側から長軸方向D1の一方側及び後側に向かって湾曲して延びている。開口部33cは、前端33dの反対側に山状の突出部33eを有する。突出部33eは、開口部33cの幅を狭める方向に突出している。この突出部33eにより、開口部33cの幅は、長軸方向D1の両端において最も広く、長軸方向D1の中央において最も狭い。すなわち、長軸方向D1の一端から長軸方向D1の中央に向かって開口部33cの幅は徐々に狭くなり、長軸方向D1の中央から長軸方向D1の他端に向かって開口部33cの幅は徐々に広くなる。
塗布材傾斜面P2の形状は、先筒傾斜面33b及び開口部33cに沿った形状となっている。塗布材Pは、鋭角状の先端P1と、先端P1から先筒傾斜面33bに沿う方向に傾斜する塗布材傾斜面P2を有する。また、塗布材Pは、短軸方向D2の一方側に、開口部33cの突出部33eに沿った凹状部P3を有する。塗布材傾斜面P2は、前述の各実施形態と同様、キャップCを手で持って刃部C5を先筒傾斜面33bに沿って移動させることにより、形成される。
以上、塗布材繰出容器31は、固形状の塗布材Pと、塗布材Pを保持する先筒33とを備え、前側から見たときの塗布材Pの形状は、長軸方向D1及び短軸方向D2に拡がる形状とされている。前側から見たときに、塗布材Pは、長軸方向D1に長く延びる形状を成している。また、塗布材Pの先端P1は、鋭角状とされると共に、長軸方向D1に延びている。よって、長軸方向D1に延びる塗布材Pの先端P1を被塗布部に当てて、長軸方向D1に沿うように塗布材Pを移動させることにより、被塗布部に細い線をきれいに描くことができる。従って、塗布材繰出容器31からは前述の各実施形態と同様の効果が得られる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る塗布材繰出容器41について図20(a)及び図20(b)を参照しながら説明する。塗布材繰出容器41は、前述した各実施形態とは形状が異なる先筒43及び塗布材Qを備える。先筒43の先筒傾斜面43bは、軸線方向及び短軸方向D2の双方に対して傾斜している。
先筒43の開口部43cは、先筒43の前端43d側から長軸方向D1の一方側及び後側に向かって湾曲している。前側から見て、開口部43cは、長軸方向D1及び短軸方向D2に延びる長円形状(角丸長方形状)を呈する。開口部43cの長軸方向D1の両端は円弧状に湾曲している。塗布材Qは、鋭角状の先端Q1と、先端Q1から先筒傾斜面43bに沿って延びる塗布材傾斜面Q2とを有する。塗布材傾斜面Q2の形状は、先筒傾斜面43bに沿った形状とされている。
以上、塗布材繰出容器41は、固形状の塗布材Qと、塗布材Qを保持する先筒43とを備え、前側から見たときの塗布材Qの形状は、長軸方向D1及び短軸方向D2に拡がる形状とされている。塗布材Qは、長軸方向D1に長く延びる長円形状を成している。また、塗布材Qの先端Q1は、鋭角状とされると共に、長軸方向D1に延びている。よって、塗布材Qの先端Q1を被塗布部に当てて、長軸方向D1に沿うように塗布材Qを移動させることにより、被塗布部に細い線をきれいに描くことができる。従って、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。
(第5実施形態)
続いて、第5実施形態に係る塗布材繰出容器51について図21(a)及び図21(b)を参照しながら説明する。第5実施形態に係る塗布材繰出容器51は、先筒傾斜面53bを有する先筒53の開口部53c、並びに、先端R1及び塗布材傾斜面R2を有する塗布材Rの形状が第4実施形態と異なっている。第4実施形態では、開口部43c及び塗布材傾斜面Q2の形状が長円形状(角丸長方形状)であったのに対し、第5実施形態では、開口部53c及び塗布材傾斜面R2の形状が楕円形状とされている。
塗布材Rの先端R1は、鋭角状とされている。先端R1は、楕円状とされた塗布材傾斜面R2の短軸方向D2一方側の外周に形成されている。すなわち、先端R1は、長軸方向D1に長く延びるとともに、長軸方向D1の中央から長軸方向D1の両端側に向かって緩やかに跳ね上がるように湾曲している。
以上、塗布材繰出容器51は、塗布材Rと、塗布材Rを保持する先筒53とを備え、前側から見たときの塗布材Rの形状は、長軸方向D1及び短軸方向D2に拡がる形状とされている。塗布材Rは、長軸方向D1に長く延びる楕円形状を成している。先端R1は、鋭角状とされると共に、長軸方向D1に延びている。よって、先端R1を被塗布部に当てて、長軸方向D1に沿うように塗布材Rを移動させることにより、被塗布部に細い線をきれいに描くことができるので、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態に係る塗布材繰出容器61について図22(a)及び図22(b)を参照しながら説明する。塗布材繰出容器61の先筒63の開口部63cは、前端63dの反対側に山状の突出部63eを有する。第3実施形態(図19)の突出部33eは、長軸方向D1の中央に1つ設けられていたのに対し、突出部63eは、長軸方向D1に沿って2つ設けられている。
また、突出部33eは、その先端が尖っていたのに対し、突出部63eの先端、及び2つの突出部63eの間の谷部63fは湾曲している。更に、2つの突出部63eの長軸方向D1両端側に位置する谷部63gも湾曲している。開口部63cの前端63d側の面63hは、長軸方向D1に沿って延びると共に緩やかに開口部63cの外側に湾曲している。
塗布材繰出容器61は、前述の各実施形態と同様、固形状の塗布材Sを備える。塗布材Sは、長軸方向D1に沿って延びる鋭角状の先端S1と、軸線方向及び短軸方向D2の双方に対して傾斜する塗布材傾斜面S2とを有する。先端S1は、短軸方向D2の一方側において、開口部63cの面63hに沿って延びており、塗布材傾斜面S2の外側に緩やかに湾曲している。塗布材傾斜面S2は、先筒63の先筒傾斜面63b及び開口部63cに沿って延びている。
以上、塗布材繰出容器61は、先筒63と、塗布材Sとを備え、前側から見たときの塗布材Sの形状は、長軸方向D1及び短軸方向D2に拡がる形状とされている。塗布材Sは、長軸方向D1に長く延びる形状を成しており、先端S1は、鋭角状とされると共に長軸方向D1に延びている。従って、先端S1を被塗布部に当てて長軸方向D1に沿うように塗布材Sを移動させることにより被塗布部に細い線をきれいに描くことができるので、前述と同様の効果が得られる。
(第7実施形態)
続いて、第7実施形態に係る塗布材繰出容器71について図23(a)及び図23(b)を参照しながら説明する。塗布材繰出容器71は、先筒73の前端73dの開口部73cの形状、及び塗布材Tの形状が前述した各実施形態と異なっている。開口部73cは、前端73d側に複数の山状の突出部73fを有する。
複数の突出部73fは、長軸方向D1に沿って並設されており、突出部73fの数は例えば3である。複数の突出部73fの間は谷部73gとされており、複数の突出部73fの長軸方向D1の両端側も谷部73hとされている。このように、開口部73cの前端73d側には、長軸方向D1に沿って並設される山谷形状が形成されている。
塗布材Tは、長軸方向D1に沿って延びる鋭角状の先端T1と、塗布材傾斜面T2とを有する。先端T1は、先筒73の突出部73f及び谷部73g,73hに沿って延びている。すなわち、先端T1は、長軸方向D1に沿って並設される山谷形状を有する。塗布材傾斜面T2は、先筒73の先筒傾斜面73b及び開口部73cに沿って延びている。前側から見たときの塗布材Tの形状は、長軸方向D1及び短軸方向D2に拡がる形状とされている。塗布材Tは、長軸方向D1に長く延びる形状を成しており、先端T1は鋭角状とされると共に長軸方向D1に延びている。従って、前述した各実施形態と同様、被塗布部に細い線をきれいに描くことができる。
(第8実施形態)
次に、第8実施形態に係る塗布材繰出容器81について図24(a)及び図24(b)を参照しながら説明する。塗布材繰出容器81の先筒83の開口部83c及び塗布材Uは、形状が前述した各実施形態と異なっている。前述の各実施形態では、前側から見たときの開口部及び塗布材の形状が長軸方向D1中央を通る中心線に対して対称であったが、本実施形態では、前側から見たときの開口部83c及び塗布材Uの形状が長軸方向D1中央を通る中心線Xに対して非対称である。
前側から見たときの開口部83cの形状は、長軸方向D1に延びる流線形状とされている。長軸方向D1の一方側、すなわち先筒83の前端83dにおいて、開口部83cはU字状に湾曲する湾曲部83eを有する。長軸方向D1の他端側において、開口部83cは先細りとなる尖端部83fを有する。
塗布材Uは、鋭角状の先端U1と、軸線方向及び短軸方向D2の双方に対して傾斜する塗布材傾斜面U2とを有し、先端U1は、短軸方向D2の一方側において開口部83cに沿って延びている。また、塗布材傾斜面U2は、先筒83の先筒傾斜面83b及び開口部83cに沿って延びている。以上、前側から見たときの塗布材Uの形状は、長軸方向D1及び短軸方向D2に拡がる形状とされており、塗布材Uは、長軸方向D1に長く延びる形状を成している。先端U1は鋭角状とされると共に長軸方向D1に延びているため、先端U1を被塗布部に当てることによって細い線をきれいに描くことができる。従って、前述した各実施形態と同様の効果が得られる。
以上、本発明に係る塗布材繰出容器の各実施形態について説明したが、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。すなわち、塗布材繰出容器の各部品の構成は、上記の要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。例えば、前述の実施形態では、第1~第8実施形態において、種々の形状を備える先筒及び塗布材について説明したが、上記の要旨の範囲内であれば、先筒及び塗布材の形状を更に変更することも可能である。例えば、前側から見た塗布体の形状は、長軸方向に延びる長辺及び短軸方向に延びる短辺を備えた長方形状であってもよいし、菱形状、又は他の多角形状であってもよい。
また、前述の実施形態では、先筒傾斜面3bに沿って延びる塗布材傾斜面M2を有する塗布材Mについて説明したが、塗布材Mを削る前の初期状態において塗布材傾斜面M2を有しなくてもよい。すなわち、製造販売等の直後には塗布材傾斜面M2が形成されておらず、塗布材Mの使用前に削られることによって塗布材傾斜面M2が形成されてもよい。このように、塗布材傾斜面が形成されるタイミングは特に限定されない。
また、前述の実施形態では、容器2、移動体5、雌螺子部材6、バネ部材7、尾栓8、中筒9及び塗布材支持部11を備えた塗布材繰出容器1について説明した。しかしながら、塗布材繰出容器の各部品の構成は、上記塗布材繰出容器1の部品に限定されず、適宜変更可能である。例えば、前述の実施形態では、中筒9が先筒3に固定されている例について説明したが、中筒9と先筒3は一体成形されていてもよい。
また、前述の実施形態では、雌螺子部材6及びバネ部材7の間に、先筒3と容器本体4との相対回転を一方向のみ許容して塗布材Mの繰り出しのみに規制するラチェット機構12が設けられている例について説明した。しかしながら、このラチェット機構12に代えて、塗布材Mの繰り出し及び繰り戻しを許容するクリック機構が設けられていてもよい。すなわち、先筒3と容器本体4との相対回転に従ってクリック音と共に抵抗感(クリック感)を発生し、塗布材Mの出し過ぎを防止することが可能なクリック機構が設けられていてもよい。
また、前述の実施形態では、先筒3、容器本体4、移動体5、雌螺子部材6、バネ部材7、尾栓8及び中筒9を備える繰り出し機構、すなわち、螺合部10による回転式の繰り出し機構を備えた塗布材繰出容器1について説明した。しかしながら、塗布材繰出容器の繰り出し機構は、前述の実施形態に限られず適宜変更可能である。例えば、繰り出し機構は、ノック式等の機械的な押出機構、又は、スクイーズ式の押出機構であってもよい。
また、前述の実施形態では、塗布材Mがアイブロウであり、塗布材繰出容器1がアイブロウ繰出容器である例について説明した。しかしながら、本発明に係る塗布材繰出容器は、例えば、アイライナー、コンシーラー又はリップライナー等、種々の棒状化粧料に対しても適用させることができる。更に、本発明に係る塗布材繰出容器は、筆記具、デザイン用ペンシル、及び描画材等にも適用させることができる。