JP7025710B2 - 密閉型電池 - Google Patents
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Description
この密閉型電池では、電極体の内部(すなわち、正極と負極との間)に非水電解液が保持されている。この電極体内に保持された非水電解液(以下「保持電解液」ともいう)を介して、正極と負極との間で電荷担体が移動することによって充放電が行われる。
このため、一般的な密閉型電池では、電極体の外部(電極体と電池ケースとの間)にも非水電解液が注液されている。このように電極体と電池ケースとの間に非水電解液(以下「余剰電解液」とも言う)を注液すると、上述した保持電解液の減少に応じて電極体内へ余剰電解液が供給されるため液枯れの発生を抑制できる。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電池ケース内に存在する余剰電解液を電極体内に好適に供給することができ、液枯れによる充放電性能の低下をより好適に抑制することができる密閉型電池を提供することを目的とする。
そして、ここで開示される密閉型電池では、絶縁ホルダを貫通し、当該絶縁ホルダの外側に存在する余剰電解液を絶縁ホルダの内側に流入させる流入口が絶縁ホルダの底部近傍の領域に形成されている。
上述したように、金属製の電池ケースを備えた密閉型電池では、電池ケースと電極体とを絶縁するために、電極体を収容する箱状の絶縁ホルダが用いられている。この場合、電極体と電池ケースとの間に存在する余剰電解液のうち、絶縁ホルダの外側に存在する余剰電解液は、絶縁ホルダに遮られるため、電極体内に供給することが困難になる。
したがって、ここで開示される密閉型電池によれば、電池ケース内に存在する余剰電解液を電極体内に好適に供給することができるため、液枯れによる充放電性能の低下を好適に抑制することができる。
図1は本実施形態に係る密閉型電池を模式的に示す斜視図である。また、図2は本実施形態に係る密閉型電池の内部構造を模式的に示す側面図であり、図3は図2中のIII-III線に沿う断面構造を模式的に示す縦断面図である。なお、本明細書の各図における符号Xは密閉型電池の幅方向を示し、符号Yは厚み方向を示し、符号Zは高さ方向を示している。
図1に示すように、本実施形態に係る密閉型電池100は、扁平な角型の電池ケース50を備えており、当該電池ケース50の内部に電極体と非水電解液とが収容されている。本実施形態における電池ケース50は、充分な物理的強度を確保するために、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルめっき鋼などの金属製材料によって構成されている。
また、この電池ケース50は、ケース本体52と、蓋体54とを備えている。ケース本体52は、上面が開口した扁平な箱型の容器であり、蓋体54は、当該ケース本体52の上面の開口を塞ぐ板状の部材である。また、電池ケース50の上面をなす蓋体54には、正極端子70と負極端子72とが設けられている。この正極端子70と負極端子72は、車両のモーターや他の電池などの外部機器と接続される。
図2に示すように、本実施形態に係る密閉型電池100では、電池ケース50の内部に電極体10が収容されている。詳しい図示は省略するが、電極体10は、シート状の正極と、シート状の負極とを備えている。具体的には、図2に示される電極体10は、正極と負極とをセパレータ(シート状の絶縁部材)を介して積層させ、当該積層体を長手方向に捲回することによって形成された捲回電極体である。また、この電極体10は、扁平形状になるように押し潰されており、高さ方向Zにおける上端部と下端部に、表面が曲面となるR部12(図3参照)が形成され、厚み方向Yにおける前面と背面に、表面が平面となる平坦部14が形成されている。
なお、電極体の構造は、特に限定されず、上述した捲回電極体以外の構造を採用することもできる。かかる電極体の他の例として、セパレータを介して複数枚の正極と負極とを積層させることによって形成される積層電極体などが挙げられる。
一方、負極についても、上述の正極と同様に、箔状の負極集電体の表面に負極合材層を付与することによって形成される。また、負極合材層に含まれる負極活物質には、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出し得る炭素材料が用いられる。そして、負極の幅方向の一方の側縁部には、負極合材層が付与されていない負極集電体露出部が形成されている。そして、かかる負極集電体露出部のみが捲回された負極接続部10Bが、幅方向Xにおける電極体10の他方の端部に形成されており、当該負極接続部10Bに負極端子72が電気的に接続される。
なお、上述した正極、負極、セパレータを構成する各材料については、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様のものを制限なく使用可能であり、本発明を特徴づけるものではないため詳細な説明を省略する。
本実施形態に係る密閉型電池100では、電池ケース50の内部に非水電解液が収容されている。かかる非水電解液の組成は、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(例えば体積比3:4:3)に、支持塩を所定の濃度(例えば1mol/L程度)で含有させたものを用いることができる。なお、支持塩としては、フッ素を含んだリチウム化合物、例えば、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等が用いられる。
また、本実施形態では、上述した保持電解液と同様の組成を有する余剰電解液20が、電極体10と電池ケース50との間(電極体10の外側)に存在している。このように、電極体10の外側に余剰電解液20を注液することによって、電極体10内の保持電解液が減少した際に、電極体10内に新たな非水電解液を供給することができるため、液枯れによる電池性能の低下を抑制できる。
本実施形態に係る密閉型電池100では、上述した金属製の電池ケース50と電極体10とが導通することを防止するために、箱状の絶縁ホルダ30が用いられている。図4は本実施形態に係る密閉型電池100の絶縁ホルダ30の展開図である。
図4に示すように、本実施形態における絶縁ホルダ30は、絶縁樹脂製のフィルムを点線部分(折り曲げ部)Lで折り曲げることによって成形される。かかる箱状の絶縁ホルダ30は、図2に示すように、上面が開口しており、当該上面の開口部から電極体10を挿入することによって内部に電極体10を収納することができる。この状態の電極体10を電池ケース50内に収容することによって、発電要素である電極体10と金属製の電池ケース50とを隔離し、これらの部材の導通を防止することができる。なお、絶縁ホルダ30は、絶縁部材として機能し得る材料で構成されていればよく、特に限定されないが、材料コストや成形の容易さなどを考慮すると、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などの樹脂材料で構成されていると好ましい。
以上、本発明の一実施形態に係る密閉型電池について説明したが、ここで開示される密閉型電池は、上述の実施形態に限定されず、必要に応じて適宜変更することができる。
例えば、上述の実施形態では、図4に示すように、幅方向Wに沿って延びるスリット状の流入口32が絶縁ホルダ30の底面30aに形成されている。しかし、絶縁ホルダの流入口は、絶縁ホルダの外側の余剰電解液を内側に適切に流入させることができるように形成されていればよく、その形状や形成位置は上述の実施形態に限定されない。
さらに、流入口32の形状は、図4~図6に示されるようなスリット状でなくてもよい。例えば、図7や図8に示すように、平面視において円形の流入口32を形成した場合でも、絶縁ホルダの外側の余剰電解液を絶縁ホルダの内側へ流入させることができる。
例えば、図9に示される密閉型電池100では、絶縁ホルダ30の側壁30bの底面30a近傍の領域に流入口32が形成されている。このような位置に流入口32を形成した場合であっても、流入口32を介して絶縁ホルダ30内に余剰電解液20を好適に流入させることができるため、液枯れによる電池性能の低下を好適に抑制できる。
また、図1に示すような扁平な角型の密閉型電池100は、複数の電池同士を電気的に接続した組電池の状態で使用されることがあり、このような組電池を構築する際には、電池ケース50の扁平面(幅広面)に所定の圧力が掛かるように各々の密閉型電池100が拘束される。このような場合、拘束圧が掛かる領域に流入口32を形成すると、絶縁ホルダ30内に余剰電解液20を流入させ難くなる。このため、組電池の構築に用いられる密閉型電池の場合には、拘束圧が掛かる領域よりも低い位置(高さ方向Zにおける下方)に流入口32を形成すると好ましい。
以下、本発明に関する試験例を説明するが、以下の試験例は本発明を限定することを意図したものではない。
本試験例では、流入口が形成されている絶縁ホルダと、当該流入口が形成されていない絶縁ホルダとを用いて、2種類の密閉型電池を構築した。
試験例1では、正極活物質(リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物:LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2)と、導電材(アセチレンブラック:AB)と、バインダ(ポリフッ化ビニリデン:PVdF)とを98:1:1の割合で混合し、分散媒(水)に分散させて正極ペーストを調製した。そして、調製した正極ペーストを、正極集電体(アルミニウム箔)の両面に塗布した後に乾燥させることによってシート状の正極を作製した。
次に、本試験例では、負極活物質(黒鉛)と、バインダ(スチレンブタジエンゴム:SBR)と、増粘剤(カルボキシメチルセルロース:CMC)とを98:1:1の割合で混合し、分散媒(N-メチルピロリドン:NMP)に分散させて負極用ペーストを調製した。そして、負極用ペーストを負極集電体(銅箔)の両面に塗布した後に、乾燥、圧延することによってシート状の負極を作製した。
試験例2では、図4に示すような幅方向Xに沿って延びるスリット状の流入口32が底面30aに形成されている絶縁ホルダ30を用いた点を除いて、試験例1と同じ条件でリチウムイオン二次電池を作製した。
本試験例では、上述した試験例1、2のリチウムイオン二次電池に急速充電試験を繰り返し実施し、各試験例の電池に液枯れによる電池性能の低下が生じているか否かを調べた。具体的には、各試験例の電池を放電状態から初期容量の80%まで125Aで急速充電を行った後に、10Aで放電する充放電サイクル試験を2500回繰り返した。そして、かかる充放電サイクルを繰り返している間、100サイクル毎にIV抵抗を測定し、試験開始前のIV抵抗を1.00とした場合の抵抗上昇率を算出した。測定結果を図10に示す。
10A 正極接続部
10B 負極接続部
12 R部
14 平坦部
20 余剰電解液
30 絶縁ホルダ
30a 絶縁ホルダの底面
30b 絶縁ホルダの側壁
32 流入口
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
70 正極端子
72 負極端子
100 密閉型電池
D 流入口の長さ
L 点線部分(折り曲げ部分)
X (密閉型電池の)幅方向
Y (密閉型電池の)厚み方向
Z (密閉型電池の)高さ方向
Claims (1)
- シート状の正極と負極とを有する電極体と、
非水電解液と、
前記電極体と前記非水電解液とが収容される金属製の電池ケースと、
前記電極体が収容される箱状の絶縁部材であり、前記電極体と前記電池ケースとを隔離する絶縁ホルダと
を備える密閉型電池であって、
前記非水電解液が、前記電極体の内部に保持された保持電解液と、前記電極体と前記電池ケースとの間に存在する余剰電解液とを含んでおり、
前記絶縁ホルダを貫通し、当該絶縁ホルダの外側に存在する前記余剰電解液を前記絶縁ホルダの内側に流入させる流入口が、前記絶縁ホルダの底部近傍の領域に形成されており、
前記流入口は、所定の方向に延びるスリット状の流入口であり、前記流入口の長さは、10mm~30mmである、密閉型電池。
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