以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
(実施例1)
図1は、電動機組立体100の一実施形態を示す図である。図1に示すように、電動機組立体100は、モータ部(電動機部)10と、モータ部10に隣接して配置されたインバータ部20とを備えている。モータ部10は、駆動軸2と、駆動軸2を回転させるモータ(電動機)3と、モータ3を収容するモータケーシング4と、を備える。インバータ部20は、モータ3に可変周波数の交流電力を供給する可変速手段であるインバータ22と、インバータ22の動作を制御する制御装置23と、インバータ22を収容するインバータハウジング24とを備えている。制御装置23は、インバータ22を介してモータ3やモータ3が駆動する回転機器の回転速度を制御する。インバータ22は、基板と、該基板の上に実装されたスイッチング素子やコンデンサなどの各要素を備えており、インバータ22の基板は環状形状を有している。駆動軸2は、インバータ22の中央に形成された貫通孔を貫通しており、インバータ22は駆動軸2と同心状に配置されている。
モータケーシング4およびインバータハウジング24は封水部19を介して互いに接続されている。封水部19は、例えば、環状形状を有する弾性シール部材であり、モータケーシング4とインバータハウジング24との間からの液体の浸入を防止する。
モータケーシング4およびインバータハウジング24は駆動軸2と同心状に配置されており、駆動軸2はモータケーシング4の中央部分およびインバータハウジング24の中央部分を貫通している。駆動軸2は軸受21、軸受25によって回転自在に支持されている。本実施形態では、インバータハウジング24は駆動軸2の軸方向に配置されるため、電動機組立体100はコンパクトな構造を有することができる。以下、本明細書において、モータケーシング4およびインバータハウジング24を総称して電動機組立体100の筐体と呼ぶことがある。
図1において、モータ3は模式的に描かれている。モータ3は、例えば、ロータに永久磁石を用いた永久磁石型モータである。しかしながら、モータ3は、永久磁石型モータに限定されず、誘導モータやSRモータなど、様々な種類のモータであってもよい。
電動機組立体100は、駆動軸2に固定された冷却ファン8をさらに備えている。冷却ファン8は、駆動軸2と同心状に配置されており、インバータハウジング24の外部に位置している。モータ3が駆動すると、その駆動力は駆動軸2に伝えられ、駆動軸2に固定された冷却ファン8は駆動軸2とともに回転する。結果として、冷却ファン8は周囲の空気を吸い込み、吸い込まれた空気はインバータハウジング24およびモータケーシング4の外面上を流れ、インバータ部20およびモータ部10を冷却する。インバータ部20は冷却ファン8とモータ部10との間に配置されており、冷却ファン8、インバータ部20、およびモータ部10はこの順に直列に配置されている。
本実施形態では、インバータハウジング24の周壁部はモータケーシング4の外形形状に合わせて円筒形状を有している。一実施形態では、モータケーシング4がフィンや端子箱などの部材によって特殊な外形形状を有している場合、インバータハウジング24は、このモータケーシング4の形状に合わせた構造を有してもよい。
電動機組立体100の主たる振動源としては駆動軸2が考えられる。例えば、モータ3の運転中に、軸受21、軸受25の摩耗が進行し異常が発生すると駆動軸2の振動に変化が現れる場合が多い。また、駆動軸2が接続される回転機器の振動は駆動軸2を伝わる。したがって、制御装置23は、この駆動軸2を支持している軸受21、軸受25の振動を測定することが望ましい。そこで、電動機組立体100は、インバータ22側の軸受21に隣接して配置された第1モータ側振動センサ31と、不図示の負荷側の軸受25に隣接して配置された第2モータ側振動センサ35とを備えている。第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35のそれぞれは、信号線を介して制御装置23に電気的に接続されており、駆動軸2やモータ部10の振動を検出する。
軸受21はインバータ部20に隣接して配置されており、軸受25はモータ3を挟んで軸受21の反対側(負荷側)に配置されている。軸受21はモータケーシング4の軸受支持部4aに支持されており、軸受25はモータケーシング4の軸受支持部4bに支持されている。第1モータ側振動センサ31は軸受支持部4aに取り付けられており、第2モータ側振動センサ35は軸受支持部4bに取り付けられている。
軸受21、軸受25は定期的に交換される消耗部品であり、交換可能な構造を有しているため、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35は、軸受21、軸受25の交換が妨げられない箇所に配置されるとよい。一実施形態では、軸受支持部4aの内面(すなわち、軸受21に接触する面)に溝(図示しない)を形成し、この溝に軸受21を配置してもよい。同様に、軸受支持部4bの内面(すなわち、軸受25に接触する面)に溝(図示しない)を形成し、この溝に軸受25を配置してもよい。
更には、軸受21、軸受25を着脱することなく、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35のそれぞれを交換可能とするために、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35のそれぞれは、交換可能な構造を有しているとよい。一実施形態では、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35のそれぞれは着脱可能に信号線に接続されているとよい。
第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35によって検出された振動値は、制御装置23に入力される。第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35の信号線は、モータ3の動作および/または電動機組立体100の設置(縦置きまたは横置き)の妨げにならないように、例えば、電動機組立体100の筐体に沿って配線され、制御装置23に接続されるとよい。モータ3とインバータ22とを接続する動力線を含む接続線は、この接続線が電動機組立体100の外部に露出しないようにモータケーシング4およびインバータハウジング24の内部を延びているとよい。
インバータ部20の振動、より具体的には、インバータ22およびインバータハウジング24の何れかにおける振動を検出するために、電動機組立体100は、インバータ部20に配置されたインバータ側振動センサ36を備えている。本実施形態では、インバータ側振動センサ36は、インバータハウジング24の内部の気密性(および水密性)を保つために、インバータハウジング24の内面に取り付けられている。また、振動源である駆動軸2から離間した位置に配置されているため、インバータ22に起因する振動(例えば、インバータ22の不図示の電解コンデンサなどの重心位置が高い部品が共振する等)を測定することができる。一実施形態では、インバータ側振動センサ36は、インバータ22に取り付けられてもよい。この場合、インバータ側振動センサ36は、インバータ22の駆動軸2から離間した位置、すなわち、インバータ22の外周部分に取り付けられてもよい。また、封水部19に、ゴム等の弾性体から構成された防振パッドを用いることで、インバータハウジング24は、駆動軸2の振動の影響をより抑えることができる。インバータ側振動センサ36は、信号線を介して制御装置23に電気的に接続されており、インバータ22の振動を検出する。
本実施形態では、電動機組立体100は、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、およびインバータ側振動センサ36を備えているが、これら振動センサとしては、例えば、加速度、速度、変位等を検出する各種センサのうち、ひとつまたは複数種類のセンサが組合せで用いられてもよい。また、振動センサの個数や配置箇所は本実施形態には限定されない。駆動軸2やインバータ22の他に振動源となる部材が存在し、この部材の振動を特に検出する必要がある場合、この部材の振動を検出するセンサをさらに配置してもよい。
図2は、電動機組立体100および電動機組立体100の負荷側にポンプ50等の回転機器を備えるポンプ装置200を模式的に示す断面図である。図2に示すように、ポンプ50は例えば遠心ポンプであって、回転軸52に固定された羽根車53と、羽根車53を収容するポンプケーシング54とを備え、吸込口50aから流入した搬送流体を加圧して吐出し口50bへ吐出する。そして、ポンプ装置200は、カップリング51を介して駆動軸2に連結された回転軸52と、回転軸52をポンプケーシング54から回転自在に支持する軸受55とを備えている。軸受55はポンプケーシング54の軸受支持部54aに支持されている。
本実施形態では、回転軸52も振動源となる。ポンプ50の搬送流体の脈動が回転軸52に伝わる。また、例えば、搬送流体に異物が混在していると、異物が羽根車53に当たりその振動が回転軸52にも伝わる。更には、軸受55の摩耗が進行しても回転軸52の振動が変化する。したがって、この軸受55を支持する軸受支持部54aにはポンプ側振動センサ56が取り付けられている。ポンプ側振動センサ56は、制御装置23に電気的に接続されており、軸受支持部54aの内面(すなわち、軸受55に接触する面)に形成された溝に配置されている。ポンプ側振動センサ56は、信号線を介して制御装置23に電気的に接続されており、ポンプ50の振動を検出する。
本実施形態に係る電動機組立体100は、寸法互換性がある限り、様々なポンプに適用可能である。本実施形態に係る電動機組立体100とポンプ50の駆動軸である回転軸52との接続は、カップリングの有無および/または設置状況(例えば、縦置きまたは横置き)に左右されない。例えば、電動機組立体100とポンプ50は直動式として、駆動軸2をポンプケーシング54の内部まで延伸して羽根車53を固定してもよい。また、ポンプ50は立軸形ポンプでも横軸形ポンプでもよいし、羽根車53は単段でも多段でもよい。なお、本実施形態では、図2に示すポンプ装置200は、陸上に設置される給水用ポンプ装置であるとして説明するが、ポンプ装置200の用途は本実施形態には限定されない。例えば、ポンプ装置200は、水中に設置される水中ポンプ装置であってもよく、または、真空を形成する真空ポンプ装置であってもよい。ポンプ装置200の用途は使用環境等に応じて変更されてもよい。
図3は、制御装置23の構成を示す模式図である。図3に示すように、制御装置23は、制御プログラムや各種データなどが格納(記憶)される記憶部60と、記憶部60に格納されている各種制御プログラムに従って演算を行う演算部61と、演算部61に接続されたタイマー62と、外部端末63と通信可能な外部通信部64と、各種信号を入出力する入出力部65と、を備えている。また、制御装置23には、ポンプ装置200の状態表示や各種操作を行うことができる運転パネル66を備えてもよい。
記憶部60は、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが用いられ、ポンプ50の自動運転、手動運転、および後述する試験運転等のポンプ装置200を制御するための制御プログラムと、装置情報、設定値情報、メンテナンス情報、履歴情報、異常情報、運転情報等のポンプ装置200に関する各種データを記憶する。また、記憶部60は、詳細を後述する第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36、ポンプ側振動センサ56による計測振動値と、所定の基準振動値と、ポンプ装置200の異常振動の基準となるしきい値と、を記憶する。
演算部61は、例えば、CPU(中央処理装置)などが用いられ、記憶部60に記憶された制御プログラムや各種情報に基づいてポンプ装置200を制御するための演算を行う。演算部61は、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36、ポンプ側振動センサ56から入出力部65へ入力される振動(振動データまたは振動情報)に対してフーリエ変換を実行して、周波数帯域ごとの振動レベルを算出し「計測振動値」として記憶部60に記憶する。さらに、演算部61は、該計測振動値と所定のしきい値とを比較して計測振動値がしきい値よりも大きい場合、ポンプ装置200の異常振動と判断する。また、記憶部60の各種制御プログラムや各種データに基づいてモータ3の回転速度を算出し、入出力部65を介してインバータ22へ出力する。
タイマー62は、計時部であって、例えば、セラミック発振子、水晶振動子及び発振器等が用いられる。また、タイマー62に代えて演算部61のCPUのクロックを用いてもよい。
外部通信部64は外部端末63と通信可能である。外部端末63は、専用のコントローラ、PC(パーソナルコンピュータ)、またはスマートフォンなどのPDA(Personal Digital Assistant)であって、制御情報を任意に表示変更することができる端末であれば、特に限定されない。制御装置23は、有線通信または無線通信によって外部端末63に接続されている。なお、運転パネル66と外部端末63は、同一の機能を有するGUI(Graphical User Interface)であるとよい。
入出力部65は、例えば、ポートや通信等が使用され、各種信号の入出力を行う。入力信号の例としては、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36、および、ポンプ側振動センサ56の検出値、インバータ22の状態(電圧、電流、異常、周波数の現在値等)等である。また、出力信号の例としては、演算部にて算出したモータ3の運転信号、停止信号、回転速度等をインバータ22や不図示の外部出力端子へ出力する。また、入出力部65は、後述する圧力センサ73、圧力センサ74、および、流量センサ72による検出信号を入力できるとよい。入出力部65は、後述する試験運転モードへの切り替え並びに試験運転を実行するための外部入力端子(不図示)を備えてもよい。
以下、本明細書中において、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36、ポンプ側振動センサ56を特に区別する必要がない場合、単に「振動センサ」と呼ぶことがある。これら振動センサとしては、例えば、加速度、速度、および、変位を検出するセンサであり、これらセンサのうちひとつまたは複数種類を組合せて用いられてもよい。
図4は、ポンプ装置200が備えられたポンプ設備210の模式図である。図4に示すように、ポンプ設備210は、ポンプ50の流入口50aに接続された流入管70と、ポンプ50の吐出し口50bに接続された吐出し管71と、ポンプ50を流れる流体の流量を検出する流量センサ(流量検出器)72と、ポンプ50の流入圧力を検出する圧力センサ(圧力検出器)73と、ポンプ50の吐出し圧力を検出する圧力センサ(圧力検出器)74が設けられている。また、吐出し管71における圧力センサ(圧力検出器)74の下流側には、ポンプ50の吐出し側の流路を止水するバルブ75が設けられている。
流入管70には、ポンプ50の内部を流れる流体の流量を検出する流量センサ(流量検出器)72と、ポンプ50の流入圧力を検出する圧力センサ(圧力検出器)73とが取り付けられているとよい。吐出管71には、ポンプ50の吐出側の圧力を検出する圧力センサ(圧力検出器)74が取り付けられている。流量センサ72、および圧力センサ73,74は制御装置23の入出力部65に電気的に接続されており、流量センサ72によって検出された流量信号、圧力センサ73,74によって検出された圧力信号は制御装置23の入出力部65に出力される。制御装置23は、流量センサ72によって検出された流量に基づいて流量値を取得し、圧力センサ73,74によって検出された圧力に基づいて圧力値を取得する。なお、流入管70に設けられた流量センサ72はポンプ50の吐出し流量を計測する。また、流入管70に設けられた流量センサ72に代えて、もしくは加えて吐出管71に流量センサ72を備えてもよい。
ポンプ装置200の設置環境およびポンプ装置200の寸法誤差、ポンプ50の出力や羽根車53の外径、揚程や流量、発停頻度等の使用環境を含む各要素によって、ポンプ装置200に発生する振動の大きさには、ばらつきが存在する。そこで、後述する試験運転を行ってポンプ装置200の計測振動値を記憶部60に記憶し、該計測振動値によってポンプ50の揚水運転中の異常振動を検出するとよい。例えば、ポンプ装置200の異常振動を決定するための基準となるしきい値を計測振動値により補正することで、制御装置23は、ポンプ装置200の異常振動の発生をより正確に決定することができる。以下、ポンプ装置200の試験運転方法について説明する。
試験運転は、試験運転モードにて実行され、ポンプ装置200の工場出荷時、ポンプ装置200の初期設置後またはポンプ装置200のメンテナンス(例えば、軸受などの部品の交換)が終了した後等で、ポンプ装置200に何れの故障も発生しておらず正常な揚水運転ができるタイミングに行われるとよい。より具体的には、給水装置200は、外部端末63や運転パネル66に不図示の試験運転ボタンを設け、モータ3の初起動時(電源投入時)または再起動時(電源再投入時)等に、ユーザーによる試験運転ボタンの操作によって、試験運転モードへの切り替え並びに試験運転が実行されるとよい。また、試験運転モードは、ユーザーの操作等による任意のタイミングで中断できるとよい。
図5は、試験運転モードにおける動作フローチャートを示す図である。まず、ユーザーは、試験運転を開始する準備を行う。本実施例では、配管設備に対する影響を考慮して、バルブ75を全閉にして、ポンプ50の締切運転にて試験運転を行う。そのため、まず、ステップS101では、ユーザーは、ポンプ50の吐出し側の流路を一旦開放した後にバルブ75を全閉にする。また、ユーザーは、ポンプ装置200の電源投入し、試験運転モードに切り替える等の準備を行う(図5のステップS101参照)。次に、ユーザーによる操作等をトリガとして、ポンプ装置200の試験運転を開始する(図5のステップS102参照)。
制御装置23は、モータ3の回転速度を所定の回転速度(例えば、定格回転速度)まで段階的に上昇させ、各段階における回転速度に対応する振動値(計測振動値)を取得する(図5のステップS103参照)。一実施形態では、制御装置23は、インバータ22の周波数を0Hzから最大周波数(例えば、50Hz)まで5Hzの間隔で段階的(0Hz,5Hz,10Hz,・・・・・45Hz,50Hz)に上昇させる。また、目標圧力を段階的に上昇させ、ポンプ50の吐出し圧力が該目標圧力となるようにモータ3の回転速度を制御することで、モータ3の回転速度を段階的に上昇させてもよい。各段階における周波数では、周波数や吐出し圧力が安定するまで所定時間(例えば10秒間程度)待機させた後の計測振動値を記憶部60に記憶する。なお、制御装置23もしくは外部端末に不図示の「記憶ボタン」を設ける等して、ユーザーによるボタン操作にて、各段階における計測振動値を記憶部60に記憶してもよい。
図6は、記憶部60における計測振動値を記憶する記憶テーブルの一例を示す図である。本実施形態では、記憶テーブルTbl1とTbl2、Tbl3、Tbl4は同じ配列構造をもつ記憶テーブルであり振動センサ毎の計測振動値を試験計測振動値として記憶する。つまり、試験運転中では、第1モータ側振動センサ31の計測振動値は記憶テーブルTbl1、第2モータ側振動センサ35の計測振動値は記憶テーブルTbl2、インバータ側振動センサ36の計測振動値は記憶テーブルTbl3、ポンプ側振動センサ56の計測振動値は記憶テーブルTbl4に、制御装置23によって記憶される。記憶テーブルTbl1に示すように、記憶部60には、回転速度に対応する振動の周波数帯域(例えば、f1、f2、f3・・・)ごとの振動レベルを記憶するとよい。具体的には、制御装置23は、各回転速度にて振動センサから送られた振動に対してフーリエ変換を実行して、複数の周波数帯域(例えば、f1、f2、f3・・・FN)ごとの振動レベルを計測振動値として、該当する周波数毎に記憶するとよい。
ここで、ポンプ50の試験運転中に特定の回転速度において過剰な振動が発生した場合には、制御装置23は、該回転速度時のポンプ装置200の状態を記憶するとよい。具体的には、記憶部60は、過剰な振動が発生した回転速度時のポンプ装置200の状態を記憶する「振動異常領域」を有し、振動異常領域には、例えば、該回転速度、該回転速度時の吐出し圧力、該回転速度時の吐出し流量等のポンプ装置200の状態のうち少なくともひとつを記憶するとよい。そして、制御装置23は、ポンプ装置200の自動運転における揚水運転時において、この過剰な振動が発生した「振動異常領域」の状態を回避するようにポンプ50を制御してもよい。具体的には、制御装置23は、振動異常領域に記憶された回転速度や吐出し流量を回避するようにモータ3の回転速度を制御したり、目標圧力が振動異常領域に記憶された吐出し圧力と同じとなるのを回避するようにポンプ50を制御するとよい。そうすることで、特定の回転数または吐出し圧力における振動を抑制することができる。なお、制御装置23は、所定のしきい値より大きな振動が発生した場合や、他の回転速度の振動値との差分が所定のしきい値より大きい場合に、特定の回転速度において過剰な振動が発生したと判断し、ポンプ装置200の状態を振動異常領域に記憶するとよい。また、ポンプ50の試験運転中に「振動異常領域」を記憶するのに加えて、または、代えて、ユーザーが「振動異常領域」を運転パネル66や外部端末63にて変更可能としてもよい。記憶部60は、ひとつまたは複数の「振動異常領域」を有するとよい。
制御装置23は、更に、試験運転の各段階における回転速度に対応する吐出し圧力を取得し、記憶テーブルTbl1、Tbl2、Tbl3、Tbl4に記憶するとよい。そうすれば、制御装置23は、吐出し圧力と振動値とを関連付けることができ、ポンプ50に作用する流体の圧力に起因する振動を特定することができる。ポンプ装置200が、例えば直結給水装置用のブースタポンプ等であって、吸込圧力が変動する場合は、記憶テーブルTbl1、Tbl2、Tbl3、Tbl4には、更に各段階における回転速度に対応する吸込圧力を記憶してもよい。この場合、吐出し圧力から吸込圧力を差し引いた圧力値を記憶してもよい。
次に、図5のステップS103にて所定の回転速度まで計測振動値の測定が終了したら、ユーザーによる操作等をトリガとしてポンプ装置200の試験運転モードを終了し、ポンプ装置200の試験運転を終了する(図5のステップS104参照)。ステップS103にて記憶された記憶テーブルTbl1~Tbl4の計測振動値は、正常時におけるポンプ装置200の振動値であるので、制御装置23は、記憶テーブルTbl1~Tbl4の計測振動値に基づいてポンプ装置200の異常振動を検出することができる。
このように、制御装置23は、計測振動値を記憶部60の記憶テーブルTbl1~Tbl4に記憶することで、ポンプ装置200毎の個体差や設置環境等に応じて異常振動を検出することができる。
次に、ポンプ装置200の運転中における異常振動の検出について説明する。異常振動は、例えば、ポンプ50が自動運転にて揚水しているとき、すなわちモータ3が運転中に検出されるとよい。ここで、ポンプ装置200の電動機組立体100は、軸受21、軸受25に隣接して配置された第1モータ側振動センサ31と、第2モータ側振動センサ35と、インバータ部20に配置されたインバータ側振動センサ36とを備えており、各振動センサの異常振動の組み合わせにて電動機組立体100の構成要素の異常振動の原因を特定することができる。以下の実施形態では、電動機組立体100の異常を決定し、異常振動の原因を特定する方法について説明する。
制御装置23は、自動運転もしくは手動運転でモータ3が運転中に、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36によって検出された振動を分析(フーリエ変換の実行)し、複数の周波数帯域(f1,f2,f3・・・)に対応する振動レベルを計測振動値の現在値として記憶部60に記憶する。そして、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35およびインバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルのうち、少なくとも1つが所定のしきい値を超えた状態で所定の時間継続したときに振動異常として、制御装置23は、電動機組立体100に何らかの異常が発生していると判断する。
ここで、振動異常を検出するしきい値は基本的に振動レベルの値である。しきい値は、予め制御装置23の記憶部60に、ひとつまたは複数個記憶されてもよいし、制御装置23は、外部通信部64を介して外部端末63のメモリ(図示しない)に格納されている初期値として読み込んでもよい。しきい値は、固定値でもよいし、ユーザーにより設定変更できる設定値でもよい。また、しきい値は試験運転時に記憶テーブルTbl1~Tbl4に記憶された計測振動値により算出されたり、補正されてもよい。
ここで、以下の説明にて使用する所定のしきい値について説明する。しきい値は、2段階のしきい値、すなわち、しきい値A1,A2,A3と、しきい値A1,A2,A3よりも大きなしきい値B1,B2,B3とを含んでいる。しきい値A1,B1は、インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値との比較対象となる。しきい値A2,B2は、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値との比較対象となる。しきい値A3,B3は、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値との比較対象となる。
一実施形態では、しきい値A1~A3のそれぞれは同じ値であってもよく、他の実施形態では、しきい値A1~A3のそれぞれは異なる値であってもよい。同様に、しきい値B1~B3のそれぞれは同じ値であってもよく、他の実施形態では、しきい値B1~B3のそれぞれは異なる値であってもよい。しきい値は、ポンプ装置200の運転や外部に及ぼす影響に基づいて決定されてもよい。例えば、軸受21、軸受25、軸受55の少なくとも1つが破損しているときに発生する振動、騒音が発生してしまう振動、またはポンプ装置の構成部品の欠落および/またはねじのゆるみ等の機械的な要素によって発生してしまう振動等によりしきい値の値が異なってもよい。以下、しきい値A1~A3を総称してしきい値A(第1しきい値)と呼ぶことがあり、しきい値B1~B3を総称してしきい値B(第2しきい値)と呼ぶことがある。
制御装置23は、振動センサの計測振動値の現在値のうちの少なくとも1つがしきい値B以上(第3状態)の場合、異常振動を示す警報を発報してモータ3の運転を停止する。振動センサの計測振動値の現在値のうちの少なくとも1つがしきい値Aよりも大きい(第2状態)場合、制御装置23は、異常振動を検出する。そして、振動センサの計測振動値の現在値全てがしきい値B未満であり、なお且つ、振動センサの計測振動値の現在値のうちの少なくとも1つがしきい値Aよりも大きい場合、運転パネル66や外部端末63に警報を発報してモータ3の運転を継続する。計測振動値の現在値の全てがしきい値A以下(第1状態)の場合、振動は正常な範囲内であり異常振動でないとする。
ここで、制御装置23は、図5にて説明した試験運転によって得られた記憶テーブルTbl1~Tbl3の各計測振動値によって、ポンプ50の回転速度もしくは吐出し圧力と、各振動センサに対応したしきい値A,Bを算出する例を説明する。
例えば、制御装置23は、記憶テーブルTbl1からTbl3の各計測振動値に所定の割合を示す数値(例えば、数パーセント)を加算または乗算してしきい値A,Bを決定してもよい。また、ポンプ装置200が推定末端圧力制御を行う場合には、流量(ポンプ50の回転速度)が増加するほど目標圧力も高くなるため、ポンプ装置には振動が発生しやすくなる。したがって、ポンプ50の回転速度が高くなるほど、記憶テーブルTbl1からTbl3の計測振動値に加算または乗算される上記数値を大きくしてもよい。もしくは、記憶テーブルTbl1~Tbl4の各計測振動値の平均値、最大値、又は、最小値等の何れかを代表値として算出し、該代表値に所定の値を加算もしくは乗算等することで、しきい値A,Bを算出するとよい。
また、記憶テーブルTbl1~Tbl3よりしきい値A,Bを決定する方法の他の例として、記憶テーブルTbl1からTbl3の計測振動値と所定の基準振動値との差分である補正量(補正値)を算出し、算出された補正量に基づいて予め記憶部60に記憶されている所定のしきい値A,Bの初期値を補正してもよい。ここで、上述した基準振動値は、同一設計および同一機種の多数のポンプ装置を運転したときの代表性能値に相当し、記憶テーブルTbl1からTbl3と同じ配列を有する記憶テーブル(不図示)に計測振動値が記憶されているとよい。例えば、制御装置23は、補正量を所定のしきい値A,Bの初期値に加算または減算してしきい値を算出する。制御装置23は、初期値から補正されたしきい値(補正しきい値)をしきい値A,Bとして記憶部60に格納する。
なお、しきい値A,Bを算出するタイミングは、図5のステップS103が終了したタイミングでもよいし、ポンプ50の運転開始でもよい。また、基準振動値やしきい値A,Bの初期値が変更された際にもしきい値A,Bは算出されるとよい。また、「振動異常領域」における記憶テーブルTbl1~Tbl4の計測振動値に代えて所定の初期値を用いるなどして、「振動異常領域」の計測振動値は除外されるしきい値A,Bを算出してもよい。このように、記憶テーブルTbl1からTbl3の計測振動値を用いてしきい値A,Bを決定することで、試験運転にて記憶した計測振動値に基づいてポンプ装置200の異常振動を検出することができるので、ポンプ装置200の設置環境や用途に応じた異常振動を検出することができる。
以下、異常振動を検出し、更に、電動機組立体100の構成要素の異常振動の原因を特定する方法について説明する。
図7、図10、図13、および、図16は、何らかの原因により異常振動が発生している場合における計測振動値を示す図である。図9、図12、図15、および、図18は、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36の異常振動の検出の有無を示す図である。図7において、横軸は振動の周波数帯域[Hz]を示しており、縦軸は振動レベル[dB]を示している。なお、後述する図10、図13、および図16においても、同様に、横軸は振動の周波数帯域[Hz]を示しており、縦軸は振動レベル[dB]を示している。図7、図10、図13、および図16のそれぞれの(1)は、インバータ側振動センサ36にて検出した計測振動値を示す図であり、図7、図10、図13、および図16のそれぞれの(2)は、第1モータ側振動センサ31にて検出した計測振動値を示す図であり、図7、図10、図13、および図16のそれぞれの(3)は、第2モータ側振動センサ35にて検出した計測振動値を示す図である。図8、図11、図14、および、図17は、制御装置23による電動機組立体100の構成要素の異常振動の原因を特定するフローチャートを示し、電動機組立体100の運転中に任意のタイミングにて繰り返し実行される。また、制御装置23は、図8、図11、図14、および、図17のフローチャートを、並列に処理するように実行し、同時に複数の異常振動の原因を検出できるとよい。
電動機組立体100の構成要素の異常振動の第1原因の例として、駆動軸2に異常が発生している場合について図7、図8、および、図9を参照しつつ説明する。図7は、駆動軸2に異常が発生している場合における計測振動値を示す図である。回転する駆動軸2が曲がっていたり歪んだりした場合、駆動軸2を支持する軸受21と軸受25に概ね同じ周波数帯域で異常振動が発生していることが考えられる。したがって、この場合、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35は異常振動を同時に検出するが、駆動軸2と直接接していないインバータ側振動センサ36は異常振動を検出しない(図9参照)。
具体的には、図8に示すように、制御装置23は、インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A1とを比較し(図8のステップS150参照)、インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A1以下の場合(ステップS150:NO)、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A2とを比較する(図8のステップS152参照)。第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A2よりも大きい場合(ステップS152:YES)、制御装置23は、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A3とを比較する(図8のステップS154参照)。第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A3よりも大きい場合(ステップS154:YES)、制御装置23は、第1モータ側振動センサ31、および第2モータ側振動センサ35によってしきい値Aより大きな振動が検出された周波数帯域が同じか否かを判断し(図8のステップS156参照)、当該周波数帯域が同じであると判断した場合(ステップS156:YES)、駆動軸2の異常が異常振動の原因であると判断(ステップS158)し、図8のフローチャートを終了する。また、ステップS156にて、しきい値Aより大きな振動が発生した周波数帯域が異なる場合(ステップS156:NO)は、制御装置23は異常振動の原因を特定することなく、図17のフローチャートを終了する。
インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A1よりも大きい(ステップS150:YES)、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A2以下(ステップS152:NO)、または、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A3以下(ステップS154:NO)、の何れかの場合では、制御装置23は異常振動の原因を特定することなく、図8のフローチャートを終了する。
図7に示すように、制御装置23は、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値と第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値との振動レベルが概ね同じ周波数帯域(ここでは、f3)においてしきい値A以上であり、なお且つ、インバータ側振動センサ36の計測振動値の当該周波数帯域(ここでは、f3)において振動レベルがしきい値A以下の場合は、制御装置23は、駆動軸2に異常が発生していると判断する。
電動機組立体100の構成要素の異常振動の第2原因の例として、軸受21、軸受25のうちのいずれかに異常が発生している場合について図10、図11、および、図12を参照しつつ説明する。図10は、軸受21に異常が発生している場合における計測振動値を示す図である。図11は、制御装置23による電動機組立体100の構成要素の異常振動の原因を特定するフローチャートである。図12は、図10における第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36の異常振動の検出の有無を示す図である。
軸受21、軸受25のいずれかに異常(例えば、損傷)が発生している場合、異常が発生している軸受が特に大きく振動するため、該軸受のみの異常振動(特定の振動)が発生する。したがって、この場合、異常が発生している軸受に対応する振動センサのみが他の振動センサよりも先にしきい値Aを超える振動を検出する(図12)。
具体的には、図11に示すように、制御装置23は、インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A1とを比較し(図11のステップS160参照)、インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A1以下の場合(ステップS160:NO)、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A2とを比較する(図11のステップS162参照)。第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A2よりも大きい場合(ステップS162:YES)、制御装置23は、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A3とを比較する(図11のステップS164参照)。第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A3以下の場合(ステップS164:NO)、制御装置23は、異常振動の原因が軸受21であると判断(図11のステップS168参照)して、図11のフローチャートを終了する。
インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A1よりも大きい(ステップS160:YES)、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A2以下(ステップS162:NO)、または、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A3よりも大きい(ステップS164:YES)、の、何れかの場合は、制御装置23は、異常振動の原因を特定せずに、フローチャートを終了する。
例えば、軸受21が損傷し駆動軸2が軸受支持部4aに接触すると、まずは、第1モータ側振動センサ31は、一定の周波数帯域(ここではf2)で、他の振動センサに比べて大きな振動レベルを検出する。そのため、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の振動レベルの何れかが一定の周波数帯域(ここではf2)において特定のしきい値A2を超え、なお且つ、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の振動レベルは何れの周波数帯域でもしきい値A3を超えておらず、更に、インバータ側振動センサ36の計測振動値の振動レベルが何れの周波数帯域でもしきい値A1を超えていない場合は、制御装置23は、軸受21に異常が発生したと判断することができる。
同様に、制御装置23は、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の振動レベルの何れかがしきい値A3を超え、なお且つ、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の振動レベルの何れもしきい値A2を超えておらず、更に、インバータ側振動センサ36の計測振動値の振動レベルの何れもしきい値A1を超えていない場合は、制御装置23は、軸受25に異常が発生していると判断できる。
電動機組立体100の構成要素の異常振動の第3原因の例として、インバータ部20に異常が発生している場合について図13、図14、および、図15を参照しつつ説明する。図13は、インバータ部20の異常が原因の異常振動が発生している場合における計測振動値を示す図である。図15は、図13における第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36の異常振動の検出の有無を示す図である。
インバータ22のインバータハウジング24への固定の不安定および/またはインバータ22を構成する素子の共振などの原因によりインバータ部20に異常振動が発生していることが考えられる。この場合、まずは、インバータ側振動センサ36の計測振動値は異常振動を検出し、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35の計測振動値のいずれも異常振動を検出しない(図15参照)。
具体的には、図14に示すように、制御装置23は、インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A1とを比較し(図14のステップS170参照)、インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A1よりも大きい場合(ステップS170:YES)、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A2とを比較する(図14のステップS172参照)。第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A2以下の場合(ステップS172:NO)、制御装置23は、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A3とを比較する(図14のステップS174参照)。第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A3以下の場合(ステップS174:NO)、制御装置23は、異常振動の原因がインバータ部20であると判断(ステップS178)し、図14のフローチャートを終了する。
インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A1以下(ステップS170:NO)、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A2よりも大きく(ステップS172:YES)、または、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A3よりも大きい(ステップS174:YES)、の何れかの場合には、制御装置23は、異常振動の原因を特定せずに、図14のフローチャートを終了する。
制御装置23は、インバータ側振動センサ36の計測振動値の振動レベルの何れかが一定の周波数帯域(ここではf1)において特定のしきい値A1を超え、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の振動レベルが何れの周波数帯域でもしきい値A2を超えておらず、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の振動レベルが何れの周波数帯域でもしきい値A3を超えていない場合、インバータ部20が振動異常の原因であると判断する。
ここで、図13に示すように、インバータ側振動センサ36が異常振動を検出し、その他の第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35が異常振動を検出しない場合、制御装置23は、しきい値A1~A3のみに基づいて、インバータ部20の異常の発生を決定するとよい。この場合、制御装置23がインバータ部20の異常の発生を決定した後に、警報を発報しつつ、電動機組立体100の運転を継続するとよい。ポンプ装置200が給水や排水用のポンプ装置等のライフラインとして用いられる場合もあり、過大な振動によってインバータ部20の素子が脱落するなどのモータ3へ電力が供給できない異常が発生するまではポンプ50の運転を継続することが好ましい。
電動機組立体100の構成要素の異常振動の第4原因の例として、モータケーシング4およびインバータハウジング24(電動機組立体100の筐体)に異常が発生している場合について図16、図17、および、図18を参照しつつ説明する。図16は、電動機組立体100の筐体に異常が発生している場合における計測振動値を示す図である。図18は、図16における第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36の異常振動の検出の有無を示す図である。
例えば、電動機組立体100の据え付けの不安定などの原因により、電動機組立体100の筐体に異常(例えば、騒音)が発生する場合、モータケーシング4およびインバータハウジング24に異常振動が発生していることが考えられる。したがって、この場合、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36のいずれもが同時に異常振動を検出する(図18参照)。
具体的には、図17に示すように、制御装置23は、インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A1とを比較し(図17のステップS180参照)、インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A1よりも大きい場合(ステップS180:YES)、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A2とを比較する(図17のステップS182参照)。第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A2よりも大きい場合(ステップS182:YES)、制御装置23は、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルとしきい値A3とを比較する(図17のステップS184参照)。第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A3よりも大きい場合(ステップS184:YES)、制御装置23は、これらインバータ側振動センサ36、第1モータ側振動センサ31、および第2モータ側振動センサ35によってしきい値Aより大きな振動が検出された周波数帯域が同じか否かを判断し(図17のステップS186参照)、これら振動が発生した周波数帯域が同じであると判断した場合(ステップS186:YES)、電動機組立体100の筐体に異常が発生していると判断(ステップS188)し、図17のフローチャートを終了する。また、ステップS186にて、しきい値Aより大きな振動が発生した周波数帯域のうち、少なくともひとつが異なる場合(ステップS186:NO)は、制御装置23は異常振動の原因を特定することなく、図17のフローチャートを終了する。
インバータ側振動センサ36の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A1以下(ステップS180:NO)、第1モータ側振動センサ31の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A2以下(ステップS182:NO)、または、第2モータ側振動センサ35の計測振動値の現在値の振動レベルがしきい値A3以下(ステップS184:NO)、の何れかの場合では、制御装置23は異常振動の原因を特定することなく、図17のフローチャートを終了する。
制御装置23は、第1モータ側振動センサ31の計測振動値、第2モータ側振動センサ35の計測振動値、およびインバータ側振動センサ36の計測振動値のいずれの振動レベルがしきい値A1~A3を超えた場合、モータケーシング4およびインバータハウジング24の全体、すなわち、電動機組立体100の筐体に異常が発生していると判断する。電動機組立体100の筐体に異常が発生する場合には、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36は、同じ周期(この例では、f1、f2、f3)である一定の振れ幅以上の異常振動を検出する。
図16に示すように、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36のいずれもが異常振動を検出する場合、制御装置23は、しきい値A1~A3のみに基づいて、電動機組立体100の筐体の異常の発生を決定するとよい。制御装置23は、電動機組立体100の筐体の異常が発生した場合、警報を発報しつつ、電動機組立体100の運転を継続する。これは、電動機組立体100の筐体に異常が発生している場合には、電動機組立体100自体が重大な影響を受ける可能性は低いので、運転を継続することが好ましい。
なお、ポンプ50と電動機組立体100の構成および/または設置環境等により、発生する異常とそれに対応する特定の計測振動値は異なる。したがって、それらに対応できるよう、単体あるいは複数の振動センサによる異常振動の検出の組み合わせは変更してもよい。また、上述した異常振動の第1原因から第4原因にて、しきい値A,Bは同じ記号を用いて説明したが、第1原因から第4原因にて、それぞれ異なるしきい値を用いてもよい。
本実施形態によれば、複数の振動センサの異常振動を検出することで、制御装置23は、異常振動の原因を特定することができる。したがって、作業者は、部品交換など、異常振動を解消するための対応を迅速に行うことができる。
なお、上述した方法にて一旦特定した異常振動の原因は、制御装置23にて原因が除去されたと確認できるまで保持されてもよい。具体的には、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36の全てにおいて、運転中の計測振動値の現在値がしきい値A以下となるまで、および/または、操作者によりリセット操作されるまで継続してもよい。また、これに限らず、異常振動の原因を特定する条件の全てを満たしている間のみ継続してもよい。なお、異常振動の原因を特定した際に、制御装置23は、運転パネル66、外部端末63、および/または、入出力部65にて報知してもよい。また、特定した振動の原因を記憶部60に履歴として記憶してもよい。
上述した実施形態では、電動機組立体100の異常振動の原因を特定する方法について説明したが、異常振動を判断する方法は、ポンプ側振動センサ56が設けられたポンプ装置200(図2参照)にも適用することができる。
上述した実施形態では、制御装置23が電動機組立体100の異常振動を判断する方法について説明したが、給水や排水設備用のようなライフラインとしてポンプ装置200が用いられる場合は、ポンプ50の運転を可能な限り継続することが好ましい。そこで、制御装置23は、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、および、インバータ側振動センサ36のうちの少なくともひとつの振動検出器の値に基づいて、モータ3の回転速度を変更する振動抑制運転(第1振動抑制運転、第2振動抑制運転)を実行する。以下の実施形態では、可能な限り、運転を継続することができる振動抑制運転を実行する方法について、図面を参照しつつ説明する。
図19は、電動機組立体100の運転状態の変化を示す状態還移図である。図19の状態還移図は、制御装置23の電源起動後に任意(例えば、数msec~数100msec)のタイミングにて、繰り返し実行されるとよい。また、図19の状態還移図は、図8、図11、図14、および、図17のフローチャートと並列に処理するように実行されるとよい。なお、図19において、後述する図20~図23と同じ処理については、同じ符号を付与し一部説明を省略する。
まず、図19に示す電動機組立体100の運転状態の変化について説明する。ポンプ装置200が設置された後もしくはメンテナンス終了時の最初の電源起動時には、電動機組立体100の運転状態は、S00の運転停止状態である。ここで、ユーザーの操作により必要に応じて試験運転モードS10(図5参照)にて試験運転を行う場合は、図5のフローチャートを実行し、試験運転モードのS10の終了(図5のステップS104参照)にて運転停止状態S00にもどる。運転停止状態S00から、ユーザーの手動操作等により、制御装置23の初期化等の処理を行うSTART状態S01になり、続いて、吐出し圧力が低下する等の自動操作もしくは手動操作等によって、電動機組立体100の運転状態は、通常運転状態S30へ移行する。ここで、START状態S01は省略してもよい。
通常運転状態S30中は、制御装置23はモータ3の回転速度Fを後述する通常回転速度F0に設定する。そして、第1振動抑制運転状態S40中に並行して実行中の図20のフローチャートにて計測振動値がしきい値B以上(ステップS208:YES)となり運転停止(ステップS209)となると、電動機組立体100の運転状態は、運転停止状態S00にもどる。通常運転状態S30中に、電動機組立体100の計測振動値がしきい値Aよりも大きく、且つ、しきい値B未満となり異常発生フラグ=1(ステップS206)となる異常振動が発生した場合(ステップS302:YES)、電動機組立体100の運転状態は、第1振動抑制運転状態S40に移行する。
第1振動抑制運転状態S40中は、制御装置23はモータ3の回転速度Fを後述する第1回転速度F1に設定する。そして、第1振動抑制運転状態S40中に並行して実行中の図20のフローチャートにて計測振動値がしきい値B以上(ステップS208:YES)となり運転停止(ステップS209)となると、電動機組立体100の運転状態は、運転停止状態S00にもどる。第1振動抑制運転状態S40中に、第1振動抑制運転状態S40が終了(ステップS406:YES)すると、電動機組立体100の運転状態は、通常運転S30にもどる。さらには、図22のステップS408にて第1振動抑制運転状態S40が所定回数連続的に実行された(ステップS408:YES)ら、電動機組立体100の運転状態は、第1振動抑制運転状態S40から第2振動抑制運転状態S50に移行する。
第2振動抑制運転状態S50中は、制御装置23はモータ3の回転速度Fを後述する第2回転速度F2に設定する。そして、第2振動抑制運転状態S50中に並行して実行中の図20のフローチャートにて、計測振動値がしきい値B以上(ステップS208:YES)となり運転停止(ステップS209)となると、電動機組立体100の運転状態は、運転停止状態S00にもどる。また、第2振動抑制運転状態S50中は、ユーザーによる警報リセット(S508:YES)をトリガとして、電動機組立体100の運転状態を通常運転S30に戻すことができる。
このように、制御装置23は、第1振動抑制運転状態S40と第2振動抑制運転状態S50の2段階において振動を抑制する運転を実行することができるため、可能な限り、電動機組立体100の運転を継続することができる。
ここで、通常運転状態S30、第1振動抑制運転状態S40並びに第2振動抑制運転状態S50について、図20、図21、図22、図23のフローチャートを用いて詳細に説明する。図20は、制御装置23による電動機組立体の異常振動の検出フローチャートを示す。図21は、制御装置23による通常運転のフローチャートを示す。図22は、制御装置23による第1振動抑制運転のフローチャートを示す。図23は、制御装置23による第2振動抑制運転のフローチャートを示す。また、図19の状態還移図における通常運転状態S30では、図20と図21のフローチャートが並行して実行され、第1振動抑制運転状態S40では、図20と図22のフローチャートが並行して実行され、第2振動抑制運転状態S50では、図20と図23のフローチャートが並行して実行される。
電動機組立体100の運転時における制御装置23の動作について、図20を参照して説明する。電動機組立体100が自動運転中に、制御装置23は、図20のフローチャートを任意の周期(タイミング)で繰り返し実行する。
まず、制御装置23は、電動機組立体100が停止中である場合(ステップS201:NO)は、詳細を後述する異常振動発生フラグ=0(ステップS210)として、一旦、図20のフローチャートを抜ける。制御装置23は、電動機組立体100が運転中である場合(ステップS201)、任意の周期(タイミング)で振動センサから送られる振動を取得する(ステップS202)。その後、制御装置23は、振動センサから送られた振動を分析(フーリエ変換の実行)して複数の振動の周波数帯域(f1,f2,f3・・・fn)に対応する振動値(V1,V2,V3・・・Vn)を計測振動値として取得する(ステップS203)。
制御装置23は、振動の周波数帯域ごとの計測振動値と、しきい値Aおよびしきい値Bとを比較(ステップS204)し、比較した計測振動値のうち、少なくともひとつがしきい値Aよりも大きく、かつしきい値Bよりも小さい場合(ステップS205:YES)、電動機組立体100(モータ部10およびインバータ部20の少なくとも1つ)に異常振動が発生しているとして、異常振動発生フラグを値1にセットする(ステップS206)。このとき、制御装置23は、上述した図8、図11、図14、および、図17のフローチャートを実行し、電動機組立体100の構成要素の異常振動の原因を特定してもよい。異常振動発生フラグは、しきい値A<計測振動値<しきい値Bにて値1にセットされるフラグであり、制御装置23の電源起動時、モータ3停止時、および、しきい値A≧計測振動値等のタイミングにて値0に初期化される。
図20のステップS205が「NO」の場合、制御装置23は、振動の周波数帯域ごとの計測振動値と、しきい値Bとを比較する(ステップS207)。制御装置23は、比較した計測振動値のうちの少なくともひとつがしきい値B以上の場合(ステップS208:YES)、電動機組立体100の運転を停止する(ステップS209)。この場合、制御装置23は、モータ3の停止と同時にエラー情報を外部に出力、すなわち、運転パネル66および外部端末63にて警報を発報するとよい。その後、制御装置23は、異常振動発生フラグをクリアする(ステップS210)。
比較した計測振動値の全てがしきい値B未満の場合(ステップS208:NO)、制御装置23は、全ての計測振動値が正常値内(計測振動値≦しきい値A)であると判断して、異常振動発生フラグを値0に初期化する(ステップS210)。
次に、図21にて通常運転状態S30について説明する。図19の状態還移図のSTART状態S01から通常運転状態S30へ移行したタイミングにて、制御装置23は、図21のフローチャートを開始する。ここで、ポンプ装置200における通常運転時とは、規定点でポンプ50が揚水運転を行っている状態をいう。通常運転状態S30では、図21のステップS301に示すように、制御装置23は、モータ3の回転速度Fを任意の回転速度である通常回転速度F0に決定し、モータ3を通常回転速度F0で駆動する。この通常回転速度F0は、電動機組立体100の通常運転時におけるモータ3の回転速度(通常回転速度)である。一実施形態では、通常回転速度F0はポンプ50の性能曲線図に示された規定揚程と規定吐出し量との交点である規定点における回転速度である。
なお、通常運転状態S30にて、制御装置23によるポンプ50の通常回転速度F0の制御方法の例としては、ポンプ50の吐出し圧力の目標圧力を所定の設定圧力とするようにポンプ50の回転速度を制御する吐出し圧力一定制御、給水先の末端の圧力が所定の設定圧力となるようにポンプ50の回転速度を制御する推定末端圧力一定制御、不図示の電流センサの値が所定の値となるようにポンプ50の回転速度を制御する電流一定制御、流量センサ72の流量が所定の値となるようにポンプ50の回転速度を制御する流量一定制御、電動機3の回転速度が所定の値となるようにポンプ50の回転速度を制御する回転数一定制御等が挙げられる。
次に、ステップS302にて異常振動発生フラグが値1か否かを判断する。異常振動発生フラグが図20のステップS206にて値1にセットされていたら、つまり振動レベルの現在値がしきい値Aより大きい状態であれば(ステップS302:YES)、図22の第1振動抑制運転に移行(ステップS40)し、異常振動発生フラグが値0(ステップS302:NO)であれば、ステップS301に戻り通常運転状態ステップS30を継続する。
図22にて第1振動抑制運転状態S40について説明する。図22の第1振動抑制運転では、モータ3の回転速度Fを通常回転速度F0とは異なる第1回転速度F1にて運転する。モータ3の回転速度Fを変更することにより、例えば、ポンプ50内の流体が攪拌され羽根車53等に当たっていた異物が除去されるなど、振動の原因が取り除かれる可能性が高い。第1回転速度F1の値は任意の値であってもよい。一実施形態では、第1回転速度F1の値は、通常回転速度F0の値に任意の値を加算、減算、または乗算した値であってもよい。他の実施形態では、第1回転速度F1の値は、第1回転速度F1でのモータ3の駆動回数を示す第1駆動回数CN1に応じて変化してもよい。また、ポンプ50の試験運転S10で「振動異常領域」を記憶していれば、この「振動異常領域」を回避するように目標圧力や第1回転速度F1を設定してもよいし、回転速度ごとの基準振動値が記憶部60に記憶されていれば、該基準振動値の振動レベルの最大値に対応する回転速度から1つ以上の回転速度を選択して、この選択された回転速度を回避するように第1回転速度F1を設定してもよい。これにより、計測振動値がしきい値A以上となる回転速度を基準振動値より想定し、第1振動抑制運転で回避できる。
まず、通常運転状態S30から第1振動抑制運転状態S40に移行したら、図22のステップS401に示すように、制御装置23は、第1駆動回数CN1のカウント数を確認し、このカウント数が存在する場合、駆動回数CN1のカウント数をクリアする。次に、制御装置23は、モータ3の回転速度Fを第1回転速度F1に決定し(図22のステップS402参照)、モータ3を第1回転速度F1で所定の時間T10(ステップS403:NO)の間運転した後(ステップS403:YES)に、モータ3の回転速度Fを再び通常回転速度F0に変更する(ステップS404参照)。
その後、制御装置23は、モータ3を通常回転速度F0で所定の時間T11(ステップS405:NO)の間運転した後(図22のステップS405:YES)、異常振動発生フラグが値1か否かを判断(ステップS406)する。ここで、時間T10(第1時間),T11(第2時間)は、例えば数秒間から数10分間であり、また、時間T10,T11は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
異常振動発生フラグが図20のステップS206にて値1にセットされていたら(ステップS406:YES参照)、制御装置23は、第1駆動回数CN1に1を加算する(ステップS407)。第1駆動回数CN1のカウント数は制御装置23の記憶部60に格納される。制御装置23は、第1駆動回数CN1が所定の回数N(N:1以上の任意の自然数)よりも大きい場合(図22のステップS408の「YES」参照)、すなわち、第1振動抑制運転が連続的に所定回数、実行された場合、制御装置23は、図23の第2振動抑制運転状態S50へと移行(図22のステップS50参照)する。ここで、以下、第1振動抑制運転が連続的に所定回数実行された場合(ステップS408の「YES」)、制御装置23は、図23の第2振動抑制運転状態S50へと移行する動作を説明するが、これに限らず、ステップS406がYESの場合に、第2振動抑制運転を実行せずに第1振動抑制運転を継続してもよい。その場合、第2振動抑制運転状態S50へと移行せずに、S402に戻るとよい。モータ3の回転速度Fを所定回数変更することにより、更に、振動の原因が取り除かれる可能性が高くなる。
ここで、図22のステップS406にて、異常振動発生フラグが値0の場合(図20のステップS206にて値1にセットされていない場合)ステップS406はNOとなり、第1振動抑制運転は終了して図21の通常運転状態S30へ移行(ステップS30)する。
図23にて第2振動抑制運転状態S50について説明する。図23の第2振動抑制運転状態S50では、モータ3の回転速度Fを通常回転速度F0、第1回転速度F1とは異なる第2回転速度F2に変更して運転する。第2回転速度F2の値は任意の値であってもよい。一実施形態では、第2回転速度F2の値は、通常回転速度F0の値または第1回転速度F1の値に任意の値を加算、減算、または乗算した値であってもよい。他の実施形態では、第2回転速度F2の値は、第2回転速度F2でのモータ3の駆動回数を示す第2駆動回数CN2に応じて変化してもよい。また、第1回転速度F1と同様にポンプ50の試験運転S10中の計測振動値や基準振動値に基づいて第2回転速度F2を設定してもよい。回転速度に応じた振動レベルが記憶部60に記憶されている場合、第1回転速度F1に対応する振動レベルよりも小さな振動レベルに対応した回転速度を第2回転速度F2とするとよい。また、一般的に回転機器では回転速度が低い方が振動の影響を受けにくいことから、第2回転速度F2を第1回転速度F1よりも小さな値に設定してもよい。
図23のステップS501に示すように、制御装置23は、モータ3の回転速度Fを任意の第2回転速度F2に決定し、モータ3を第2回転速度F2で所定の時間T20(ステップS502:NO)の間、運転した後(ステップS502:YES)、異常振動発生フラグの値が1か否かを判断する。
制御装置23は、異常振動発生フラグの値が1(図20のステップS206にて値1にセット)の場合(ステップS503:YES)、第2駆動回数CN2に1を加算する(ステップS504)。第2駆動回数CN2のカウント数は制御装置23の記憶部60に格納される。
制御装置23は、第2駆動回数CN2が所定の回数NN(NN:1以上の任意の自然数)よりも大きい場合(ステップS506:YES)、すなわち、第2振動抑制運転が連続的に所定回数、実行された場合、エラー情報を外部に出力、すなわち、警報を発報する(ステップS507)。その後、制御装置23は、警報がリセットされるまでの間(ステップS508:NO)、モータ3の回転速度Fを第2回転速度F2に決定した状態で電動機組立体100を運転する(ステップS508)。警報がリセットされた場合(ステップS508:YES)、制御装置23は、電動機組立体100の運転を図21の通常運転状態S30に戻す。警報がリセットされるまでの間、モータ3の回転速度Fを第2回転速度F2に決定した状態で電動機組立体100を運転することで、電動機組立体100の運転を継続することができる。
ここで、ステップS503に説明を戻す。ステップS503にて異常振動発生フラグの値が0の場合(図23のステップS503の「NO」参照)は、第2駆動回数CN2のカウント数をクリア(ステップS505)し、再び図23のステップS501を実行する。ステップS503がNOとなった要因は、モータ3の回転速度Fを第2回転速度F2に変更したことで異常振動が抑えられた、と考えることができる。よって、ステップS503でNOとなっても、モータ3の回転速度Fを第2回転速度F2のままポンプ50の運転を継続することで、モータ3の回転速度Fを通常回転速度F0や第1回転速度F1に戻すよりも確実に給水を継続できる。また、制御装置23は、第2駆動回数CN2が所定の回数以下の場合(ステップS506:NO)は、再び図23のステップS501を実行し、警報の発報を回避する。
このように、第1振動抑制運転、第2振動抑制運転を実行することで、計測振動値がしきい値B以上となりポンプ50が振動異常で停止することを回避することができる。
以上、上述した実施形態では、電動機組立体100に異常振動が発生した場合における振動抑制運転について説明したが、制御装置23は、ポンプ50に異常振動が発生した場合であっても、振動抑制運転を実行することができる。また、上述した振動抑制運転では、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36、および、ポンプ側振動センサ56の何れかの検出値に基づいて振動抑制運転を実行したが、これに限らず、電動機組立体100は少なくともひとつの振動検出器を備え、該振動検出器の検出値に基づいて振動抑制運転を実行してもよい。
(実施例2)
上述した実施例1では、ポンプ50の吐出し側のバルブ75を全閉した状態での試験運転について説明したが、以下の実施形態では、バルブ75を開いた状態でのポンプ50の運転時における試験運転について説明する。なお、以下の実施形態において、上述した実施形態と同様の方法並びに構成については、その説明を省略することがある。
本実施形態では、制御装置23は、ポンプ50が最高効率点もしくは規定点で運転されるように、バルブ75が開かれた状態でモータ3の回転速度を段階的に上昇させる。このとき、流量センサ72によって検出された流量に基づいて、各段階における回転速度に対応する流量値(計測流量値)を取得してもよい。
図5にて、本実施形態の試験運転モードにおける動作フローチャートを説明する。まず、ユーザーは、試験運転を開始する準備を行う。本実施例では、まず、ステップS101では、ユーザーは、ポンプ50が最高効率点もしくは規定点で運転されるようにバルブ75の開度を調整する。また、ユーザーは、ポンプ装置200の電源投入し、試験運転モードに切り替える等の準備を行う(図5のステップS101参照)。次に、ユーザーによる操作等をトリガとして、ポンプ装置200の試験運転を開始する(図5のステップS102参照)。
制御装置23は、モータ3の回転速度を所定の回転速度(例えば、定格回転速度)まで段階的に上昇させ、各段階における回転速度に対応する振動値(計測振動値)を取得する(図5のステップS103参照)。一実施形態では、制御装置23は、インバータ22の周波数を0Hzから最大周波数(例えば、50Hz)まで5Hzの間隔で段階的(0Hz,5Hz,10Hz,・・・・・45Hz,50Hz)に上昇させる。また、目標圧力を段階的に上昇させ、ポンプ50の吐出し圧力が該目標圧力となるようにモータ3の回転速度を制御することで、モータ3の回転速度を段階的に上昇させてもよい。各段階における周波数では、周波数や吐出し圧力が安定するまで所定時間(例えば10秒間程度)待機させた後の計測振動値を記憶部60に記憶する。
本実施形態でも図6に示す記憶テーブルTbl1、Tbl2、Tbl3、および、Tbl4に振動センサ毎の計測振動値を記憶するとよい。
また、ポンプ50の試験運転中に特定の回転速度において過剰な振動が発生した場合には、制御装置23は、実施形態1と同様に該回転速度、該回転速度時の吐出し流量、および、該回転速度時の吐出し圧力の少なくともひとつを「振動異常領域」として記憶部60にて記憶するとよい。
制御装置23は、更に、各段階における回転速度に対応する吐出し圧力、吐出し流量を取得し記憶するとよい。そうすれば、制御装置23は、吐出し圧力および吐出し流量と振動値とを関連付けることができ、ポンプ50に作用する流量に起因する振動を特定することができる。ポンプ装置200が、例えば直結給水装置用のブースタポンプ等であって、吸込圧力が変動する場合は、記憶テーブルTbl1、Tbl2、Tbl3、Tbl4には、更に各段階における回転速度に対応する吸込圧力を記憶してもよい。この場合、吐出し圧力から吸込圧力を差し引いた圧力値を記憶してもよい。
次に、図5のステップS103にて所定の回転速度まで計測振動値の測定が終了したら、ユーザーによる操作等をトリガとしてポンプ装置200の試験運転モードを終了し、ポンプ装置200の試験運転を終了する(図5のステップS104参照)。ステップS103にて記憶された記憶テーブルTbl1~Tbl4の計測振動値は、正常時におけるポンプ装置の振動値であるので、制御装置23は、記憶テーブルTbl1~Tbl4の計測振動値に基づいてポンプ装置200の異常振動を検出することができる。
ポンプ50の吐出し流量は回転速度に比例するため、制御装置23は、ポンプ50の吐出し流量と振動値とを関連付けることができ、結果として、ポンプ装置200によって移送される流体の流量に起因する計測振動値を得ることができる。
制御装置23は実施例1と同様に計測振動値に基づいて振動異常を検出するとよい。また、ポンプ装置200によって移送される流体の流量が増加するほど、ポンプ装置200に発生する振動が大きくなる可能性があるため、流体の流量が高くなるほど、記憶テーブルTb11からTb13の計測振動値に加算または乗算される数値(記憶テーブルTbl1からTbl3の各計測振動値に所定の割合を示す数値)を大きくしてもよい。
本実施形態によれば、制御装置23は、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36、ポンプ側振動センサ56の少なくとも1つの計測振動値と、上述した手段と同様の手段によって得られたしきい値とを比較して、ポンプ装置200の構成要素の異常振動の発生をより正確に決定することができる。
上述した実施形態では、ポンプ装置200の異常振動の基準となるしきい値を補正する方法について説明したが、しきい値の補正方法は、電動機組立体100(図1参照)に対しても適用することができる。
(変形例)
また、上述した実施例1、実施例2では、計測振動値の記憶テーブルTb11~Tbl4への記憶は、制御装置23の試験運転モードにて実行したが、これに代えて、ポンプ50の手動運転にて計測振動値を記憶してもよい。本変形例のポンプ装置200の運転パネル66の一例を図24に示す。運転パネル66は、記憶部60の各種情報を表示する複数桁の(ここでは4桁)7セグメントLED660、7セグメントLED660の表示内容を切り替える表示切替ボタン661、ユーザーの設定変更を確定する設定ボタン662、7セグメントLED660の値や表示項目を加算するアップボタン663、7セグメントLED660の値や表示項目を減算するダウンボタン664、ポンプ50の手動運転を選択する手動運転ボタン665、ポンプ50の自動運転を選択する自動運転ボタン666、および、ポンプ50の運転可不可を選択する運転選択スイッチ667を有する。なお、運転パネル66は、後述する各機能が満たされれば、タッチパネル式の液晶表示等にて構成されてもよい。
運転パネル66は、ユーザーの手動運転によるポンプ50の回転速度を入力可能な手段を有し、手動運転によってインバータ22の周波数を0Hzから最大周波数(例えば、50Hz)までの間で任意に設定することができる。具体的には、手動運転ボタン665、を押下して手動運転を選択し、運転選択スイッチ667を運転可にした状態で、アップボタン663またはダウンボタン664にて7セグメントLED660に表示されたポンプ50の回転速度を加算または減算することで、ユーザーはポンプ50の回転速度を任意に設定することができる。
また、運転パネル66や外部端末63は、ポンプ50の回転速度と計測振動値の現在値を表示するとよい。具体的には、ユーザーが表示切替ボタン661を押下することで7セグメントLED660にポンプ50の回転速度と計測振動値の現在値を表示する。さらには、運転パネル66は、計測振動値を入力し、入力された計測振動値を記憶テーブルTbl1~Tbl4に設定する設定手段を有する。具体的には、表示切替ボタン661にて入力する計測振動値を選択し7セグメントLED660に表示し、アップボタン663またはダウンボタン664にて設定する計測振動値の値を入力し、設定ボタンを押下することで、ユーザーは、入力した計測振動値の値を記憶テーブルTbl1~Tbl4に設定することができるとよい。
本変形例では、図5のステップS101の準備の後に、ユーザーは、ステップS102でポンプ装置200の手動運転を開始し、ステップS103でモータ3の回転速度を所定の回転速度(例えば、定格回転速度)まで段階的に上昇させ、且つ、ユーザーは各段階における回転速度に対応する振動値(計測振動値)を取得する。
一実施形態では、ユーザーは、手動運転によってインバータ22の周波数を0Hzから最大周波数(例えば、50Hz)まで5Hzの間隔で段階的(0Hz,5Hz,10Hz,・・・・・45Hz,50Hz)に上昇させる。そして、ユーザーは、各段階における周波数の計測振動値を運転パネル66や外部端末63より視認し、該計測振動値を図6に示す記憶テーブルTbl1~Tbl4に記憶する。具体的には、制御装置23もしくは外部端末63に不図示の「記憶ボタン」を設け、ユーザーが該「記憶ボタン」を操作すると計測振動値が記憶テーブルTbl1~Tbl4に記憶されてもよいし、ユーザーは、7セグメントLED660に段階毎の計測振動値を表示し、表示された計測振動値を紙媒体や記憶メディア等に記録し、記録した計測振動値を運転パネル66や外部端末から入力して記憶テーブルTbl1~Tbl4に設定してもよい。また、外部端末63の記憶部(不図示)に各段階における計測振動値を記憶し、外部端末63に記憶した計測振動値を制御装置23に通信等にて書き込みしてもよい。
次に、図5のステップS103にて所定の回転速度まで計測振動値の測定が終了したら、ユーザーは、ポンプを停止して、手動運転によるポンプ装置200の試験運転を終了する(図5のステップS104参照)。なお、ポンプ装置200の試験運転を終了した後に、ユーザーは、S103にて取得した記憶テーブルTbl1~Tbl4の計測振動値を記憶してもよい。
本変形例によっても、制御装置23は、第1モータ側振動センサ31、第2モータ側振動センサ35、インバータ側振動センサ36、ポンプ側振動センサ56の少なくとも1つの計測振動値と、記憶テーブルTbl1~Tbl4より得られたしきい値と、を上述した実施例と同様の手段によって比較して、ポンプ装置200の構成要素の異常振動の発生をより正確に決定することができる。
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。