JP7024355B2 - ランダム共重合体及びこれを含有する負極 - Google Patents

ランダム共重合体及びこれを含有する負極 Download PDF

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Description

本発明は、たとえば電池用バインダーとして好適に用いることができるランダム共重合体、及びこれを含む負極に関する。
近年、携帯電話やパソコン、タブレット端末に代表されるスマートデバイスの技術革新に伴い、小型で重量エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池の需要が急速に拡大している。この潮流は環境意識の高まりも相俟って、ハイブリット車を含む電気自動車や、人工衛星、家庭用蓄電デバイスなどへも波及している。
一般にリチウムイオン二次電池の電極は活物質と導電助剤、バインダー、塗工用溶剤からなるスラリーを集電箔上に塗工し乾燥させたものが用いられている。例えば負極は、グラファイト等の炭素系活物質、シリコン系活物質のような活物質と、カーボンブラック等の導電助剤と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等のバインダーと、増粘剤と、を水に分散させたスラリーを、銅箔に塗工することで形成されている。このうちバインダーは、充放電に伴い膨張・収縮を繰り返す活物質と、集電箔もしくは集電箔までの導電パスを形成する導電助剤とを結着させるために添加されている。しかしながら、絶縁物であるバインダーは電極の導電性を低下させる原因となり得るため、バインダーの導電性を高める取り組みがなされている。
例えば、電解液に対するバインダーの膨潤性を高めることで電池の導電性を上げることが可能である。しかしながら、電解液の膨潤性を高めると、粒子同士の結着力が弱まるため、サイクル特性は低下する傾向にある。
このような中、メタクリル酸(1-ピレン)メチルと、メタクリル酸トリエチレングリコールメチルエーテルとを共重合させて得られた導電性バインダーが提案されている(非特許文献1)。
しかしながら非特許文献1に記載の方法では、ピレン同士の相互作用にのみ依存した導電性発現を期待する手法であるため、実用場面では導電性が十分でない場合があった。また、非特許文献1に記載の重合体の構造上、近年求められる水系分散媒には適用できないという課題もある。
Journal of the American Chemical Society誌、2015年、137巻(7号)、2565-2571頁
このような中、本発明が解決しようとする課題は、電池用電極に用いた場合に高い導電性を有する導電性バインダーを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、導電性を有する骨格をバインダー構造に導入することにより、電池の導電性向上を試みた。導入する導電性骨格を試行錯誤した結果、負極活物質として用いられることが多い黒鉛とのπ電子相互作用により導電性を示すペリレンジイミド構造をバインダー構造に導入することにより、上記課題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
構造単位(A)、構造単位(B)、構造単位(C)とを含有するランダム共重合体であって、構造単位(A)は下記式(1):
Figure 0007024355000001
で表される構造単位であり、
構造単位(B)は下記式(2):
Figure 0007024355000002
で表される構造単位であり、
構造単位(C)は下記式(3):
Figure 0007024355000003
又は下記式(4):
Figure 0007024355000004
で表される構造単位であり、
Arは置換又は無置換のアリール基を示し、
は-O-、-NH-又は-N(R)-を示し(Rは水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基を示す)、
は水素原子又はメチル基を示し、
は式(5)で表される化合物、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、フェニル基、アルカリ金属又は置換若しくは無置換のアミノ基を示し、
は式(5)で表される化合物、水素原子、アルカリ金属又は置換若しくは無置換のアミノ基を示し、
は式(5)で表される化合物、水素原子、アルカリ金属又は置換若しくは無置換のアミノ基を示し、
は式(5)で表される化合物を示し、
前記式(5)は
Figure 0007024355000005
(R及びRは各々独立して単結合、炭素原子数1~16の2価の炭化水素基(但し、該炭化水素基は置換基を有していてもよく、分岐あるいは環構造を形成してもよく、また途中にエーテル結合、エステル結合、フェニレン基を介してもよい)を表し、
~R15は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基を表し(但し、R~R15は、それらの内の2つで互いに結合して飽和若しくは不飽和の5員環又は6員環を形成してもよい)、
は単結合、-O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CONH-、-NHCO-、-N(R16)-、-N(R17)CON(R18)-、-N(R19)COO-、又は-OCON(R20)-を表し(但し、前記R16~R20は各々独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基を表す)、
Pはビニル系ポリマー鎖、ポリシロキサン鎖、ロジン変性フェノール樹脂鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリウレタン鎖、メラミン鎖、エポキシ鎖、ポリシラン鎖、ポリカーボネート鎖、ポリイミド鎖、ポリウレア鎖及びポリペプチド鎖からなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー鎖を表す)である、
ことを特徴とするランダム共重合体(以下、本発明のランダム共重合体と称する場合がある)に関する。
本発明のランダム共重合体によれば、電池用バインダーとして用いた際に、従来より電池の導電性を向上させることができる。また、上記式(5)のPで表されるポリマー鎖の選択により、分散媒として有機溶剤系分散媒のみならず水分散媒を適用することができる。
<ランダム共重合体の説明>
本発明のランダム共重合体は、構造単位(A)(上記式(1)で表される構造単位)、構造単位(B)(上記式(2)で表される構造単位)及び構造単位(C)(上記式(3)又は(4)で表される構造単位)からなるランダム共重合体である。
本発明は、バインダー機能を有し、かつ導電性骨格を導入可能な部位を有する観点からスチレン-マレイン酸-アクリル酸エステルの重合体構造を採用し、黒鉛とのπ電子相互作用発現を意図して後記するペリレンビスイミド構造を、該重合体構造の側鎖に導入したことにより、従来より電池の導電性を向上させることに成功したものである。
導入されるペリレンビスイミド構造は、ランダム共重合体中に複数導入される場合には、当該ペリレンビスイミド構造は同一であっても異なっていても良い。
上記式(1)中のArは、置換又は無置換のアリール基を示す。ここでアリール基としては、炭素数6~20のアリール基が挙げられる。具体的には、フェニル基、4-メチルフェニル基、2-メチルフェニル基、p-メトキシフェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、3-フェナントリル基、2-アントリル基などが挙げられる。この中でも入手性、重合性、生成物の安定性という観点からフェニル基が好ましい。上記式(2)中のXは、-O-、-NH-又は-N(R)-を示す。ここで、-N(R)-におけるRは水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基を示す。
上記式(2)中のRは、水素原子又はメチル基を示す。
上記式(2)中のRは、式(5)で表される化合物、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、フェニル基又はアルカリ金属又は置換若しくは無置換のアミノ基を示す。ここで、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
上記式(3)中のRは、式(5)で表される化合物、水素原子、アルカリ金属、置換若しくは無置換のアミノ基を示す。ここで、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
上記式(3)中のRは、式(5)で表される化合物、水素原子、アルカリ金属、置換若しくは無置換のアミノ基を示す。ここで、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。
アルカリ金属については、上述した中でも、純度、取扱の容易さ、バインダーとしての結着性の観点から、ナトリウムがより好ましい。
また、上記式(3)中のRとRで示される置換基のモル量の総計のうち、式(5)で表される化合物の割合が5~60モル%であることが好ましく、式(5)で表される化合物の割合が10~40モル%であることがより好ましい。式(5)で表される化合物の割合が上述の範囲内であると、導電性とバインダーとしての結着性を両立することができる。
上記式(4)中のRは、式(5)で表される化合物を示す。
ここで、式(5)は
Figure 0007024355000006
(R及びRは各々独立して単結合、炭素原子数1~16の2価の炭化水素基(但し、該炭化水素基は置換基を有していてもよく、分岐あるいは環構造を形成してもよく、また途中にエーテル結合、エステル結合、フェニレン基を介してもよい)を表し、R~R15は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基を表し(但し、R~R15は、それらの内の2つで互いに結合して飽和若しくは不飽和の5員環又は6員環を形成してもよい)、Xは単結合、-O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CONH-、-NHCO-、-N(R16)-、-N(R17)CON(R18)-、-N(R19)COO-、又は-OCON(R20)-を表し(但し、前記R16~R20は各々独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基を表す)、Pはビニル系ポリマー鎖、ポリシロキサン鎖、ロジン変性フェノール樹脂鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリウレタン鎖、メラミン鎖、エポキシ鎖、ポリシラン鎖、ポリカーボネート鎖、ポリイミド鎖、ポリウレア鎖及びポリペプチド鎖からなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー鎖を表す)で表されるペリレンジイミド化合物である。
例えばビニル系ポリマー鎖は、各種公知のビニル系モノマーを重合または共重合させたポリマー鎖である。
ビニル系モノマーとして具体的には、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等の脂肪族ビニル系炭化水素や、シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン等;テルペン類、例えばピネン、リモネン、インデン等の脂環式ビニル系炭化水素や、スチレンおよびそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキルおよび/またはアルケニル)置換体、例えばα-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系炭化水素や、酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4-ビニルベンゾエート、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2-エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、アミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の置換基を有する(メタ)アクリレート等のビニルエステルや、各種官能基を有するビニル系モノマー、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニル系モノマーやビニルスルホン酸等のスルホン基含有ビニル系モノマー、ヒドロキシスチレン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル系モノマー、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、N-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4-ビニルピリジン、2ービニルピリジン等、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’-メチレン-ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N-メチルN-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート等の含窒素ビニル系モノマー、塩化ビニル等を使用することができる。
これらのビニル系モノマーは、公知の重合方法、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、またはリビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合等を適用することができる。また、これらのビニル系モノマーは、単独重合であっても共重合であってもよい。
例えば、前記エチレンやプロピレン等の脂肪族ビニル系炭化水素を単独若しくは共重合させたポリアルキレン鎖や、ブタジエンを単独若しくは共重合させたブタジエン樹脂鎖や、前記(メタ)アクリレートを単独若しくは共重合させた(メタ)アクリレート樹脂鎖や、前記(メタ)アクリレートと前記スチレン等の芳香族ビニル系炭化水素を共重合させたスチレン-(メタ)アクリレート樹脂鎖や、前記スチレン等の芳香族ビニル系炭化水素と前記酢酸ビニルを共重合させたスチレン-酢酸ビニル樹脂鎖や、塩化ビニルを単独若しくは共重合させたポリ塩化ビニル樹脂鎖、等が好ましく使用できる。
また、ポリシロキサン鎖としては、鎖状のポリシロキサン鎖は、環状シロキサンの塩基又は酸によるアニオン開環重合又はカチオン開環重合により、環状シロキサン鎖は、環状三量体及び環状四量体をモノマーに使用した共重合により、ジクロロシランやジアルコキシシランの加水分解又は重縮合により得られる、ジメチルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、メチルヒドロゲンポリシロキサン等が挙げられる。
また、ロジン変性フェノール樹脂鎖としては、ロジン、n-アルキルフェノール及びパラホルムアルデヒドの合成から得られる、オフセット印刷用インキや塗料用インク等の印刷インキに一般的に使用されるロジン変性フェノール樹脂が挙げられる。
また、ポリエステル鎖としては、例えばエチレングリコールやプロピレングリコール等のジオールとテレフタル酸ジメチルエステル等のジアミン類のエステル交換反応によって得られるポリエチレンテレフタラート鎖やポリプロピレンテレフタラート鎖や、ビスフェノールA等のビスフェノールと、m-フタル酸ジクロライド等のカルボン酸ジクロライドの縮合反応によって得られるポリアリレート鎖等が挙げられる。
また、ポリエステルであるアルキッド樹脂鎖も好ましく使用できる。アルキッド樹脂鎖としては、例えば無水フタル酸、グリセリン等を加熱溶融させて脱水反応を行いながら進める方法や、油脂とグリセリン及び無水フタル酸を2段階のエステル化反応を進める方法等から得られる、オフセット印刷用インキや塗料用インク等の印刷インキに一般的に使用される鉱物油変性アルキッド樹脂や植物油変性アルキッド樹脂等が挙げられる。
また、ポリエーテル鎖としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロロヒドリン、トリオキサン、オキセタン等の開環重合により得られるポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール、ポリエピクロロヒドリン、ポリオキシメチレン、ポリオキセタン等が挙げられる。
また、ポリウレタン鎖としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクタンポリオール等のポリオールの縮合反応で得られる、ポリ炭酸エステル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリラクトン系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタンなどが挙げられる。
また、メラミン鎖としては、メラミンとホルムアルデヒドを加熱混合して得られるメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミンのメチレン化反応やジメチレンエーテル化反応等の付加縮合反応で得られるメラミン鎖があげられる。
また、エポキシ鎖としては、ビスフェノールAとエピクロリドンの付加縮合反応や、前記反応を経て得られたクレゾール型ノボラック樹脂とエピクロリドンの付加縮合反応で得られるエポキシ鎖があげられる。
このほか、ポリシラン鎖、ポリカーボネート鎖、ポリイミド鎖、ポリウレア鎖、ポリペプチド鎖等も、公知のものを使用することができる。
このようなペリレンジイミド構造を採用することは試行錯誤により見出されたものであり効果発現メカニズムは定かではないが、負極活物質との効果的な相互作用により導電性が向上するものと考えられる。特に負極活物質として黒鉛を採用した場合に、ペリレンジイミド構造同士の相互作用に加えて、ペリレンジイミド構造が黒鉛の結晶面に対してπ電子相互作用で効果的に吸着するため高い導電性を発現すると考えられる。
また、ペリレンジイミド構造は、当該構造の末端窒素原子部分(上記式中のR7-X2-Pの連結部分)を修飾することは容易である。たとえば、電池設計においては分散媒として有機溶媒が使用される場合もあれば水が使用される場合もあるが、R7-X2-P部分を適宜選択することにより、多様な分散媒の選択が可能であり、実用場面で大きな貢献が期待される。近年、環境負荷低減・安全性向上のために水系が求められる傾向にあるが、このような観点からは、式(II)におけるPがポリエーテル鎖、ポリビニルアルコール鎖、ポリビニルピロリドン鎖などの親水性ポリマーである場合に、より水への可溶性が高まるため好ましい。
このようなことから、本発明のランダム共重合体は、導電性を有するバインダーとして好適であり、特に水溶性バインダーとして環境負荷低減などの要求にも応えることができるものである。
以下に、本発明のランダム共重合体を構成する各構造単位の具体例を示す。
構造単位(A)としては、たとえば次のようなものが挙げられる。
Figure 0007024355000007
構造単位(B)としては、たとえば次のようなものが挙げられる。
Figure 0007024355000008
Figure 0007024355000009
Figure 0007024355000010
構造単位(C)としては、たとえば次のようなものが挙げられる。
Figure 0007024355000011
Figure 0007024355000012
Figure 0007024355000013
Figure 0007024355000014
Figure 0007024355000015
Figure 0007024355000016
なお、前記各構造単位の例示中、Rは前述の通りである(式(5)で表される化合物)。またMはアルカリ金属、又は置換若しくは無置換のアミノ基を示す。
本実施形態において、ランダム共重合体は構成単位(A)、(B)及び(C)からなり、(A)、(B)、(C)の各成分において、(A)の割合が10~70重量%、(B)の割合が5~60重量%、(C)の割合が10~70重量%であることが好ましく、(A)の割合が20~60重量%、(B)の割合が15~50重量%、(C)の割合が20~60重量%であることがより好ましい。また、重量平均分子量が10,000~5,000,000であるランダム共重合体であることが好ましい。
<製法の説明>
このような本発明のランダム共重合体を得るための一例として以下説明する。ただし、本発明のランダム共重合体はいずれの方法で製造されても良く、以下の記載によって、本発明を限定的に解釈されるべきものではない。
<各工程の説明>
(ランダム共重合体の製造方法)
上述の各単量体を用いて、例えばラジカル重合により本発明のランダム共重合体を製造することができる。その際、使用する重合開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤が好ましい。前記重合開始剤の使用量は、重合させる単量体の全質量100質量%に対して0.1~5質量%となる範囲を必要とするが、好ましくは0.5~3.5質量%である。重合開始剤およびモノマーの添加方法として重合初期にまとめて添加しても良いが、重合の進行にあわせて遂次添加する方法が望ましい。
重合温度は特に制限されないが、製造時間や単量体の共重合体への転化率などを考慮に入れると40℃~150℃であることが好ましく、60℃~120℃の範囲であることがより好ましい。
本実施形態におけるランダム共重合体は、重量平均分子量が10,000~5,000,000であることが好ましく、重量平均分子量が15,000~4,500,000であることがより好ましい。本実施形態のランダム共重合体の重量平均分子量が10,000以上であれば、作製される電極における電極合剤層及び集電体間等の密着性に優れ、5,000,000以下であると負極スラリーの塗工性に優れたものとなる。
本実施形態におけるランダム共重合体の重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法による測定値を、標準ポリスチレン換算することにより求めることができる。
<各工程の説明>
一般式(5)で表される化合物は、公知の方法(例えば特許文献:特開昭56-139477、特開昭56-169691、特開昭61-238853、特開平11-286489、特開2000-297224、特許第6160217号等)に従い得ることができる。以下に具体例を挙げる。
一般式(5)で表される化合物は、例えば、式(P1)
Figure 0007024355000017
のペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物と、式(P2)
Figure 0007024355000018
の反応性置換基(A)とアミノ基が一分子中に含まれる化合物(ここで、反応性置換基(A)は、ヒドロキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基)と、式(P3)の
Figure 0007024355000019
ポリマー(B)に直接アミンが導入されたポリマーアミン(ここで、ポリマー(B)は、ポリアルキレン鎖、ポリシロキサン鎖、ポリアクリレート鎖、ロジン変性フェノール樹脂鎖、アルキッド樹脂鎖、ポリエステル鎖、エポキシ鎖、メラミン鎖、ポリウレタン鎖、ポリエーテル鎖、ポリブタジエン鎖、ポリスチレン鎖、ポリスチレン-酢酸ビニル鎖、ポリ塩化ビニル鎖、ポリシラン鎖、ポリカーボネート鎖、ポリアミド鎖、ポリイミド鎖、ポリウレア鎖、又はポリペプチド鎖であるポリマー鎖を表す)を公知の方法で反応させることで調製することができ、その化合物は式(P4)
Figure 0007024355000020
のように一方に反応性置換基(A)、他方にポリマー(B)をもつ非対称ペリレンジイミド化合物として調製することができる。
一般式(5)で表される化合物の製造方法の別の態様を示すとすれば、例えば、式(P1)と1当量の式(P5)
Figure 0007024355000021
のアミノアルコール(nは2以上)の合成は、公知の方法で調製することができ、その反応物は、式(P6)
Figure 0007024355000022
のペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸一無水物モノアミノアルコールイミドで表すことが出来る。式(P6)と、式(P3)のポリマーアミンの合成は、公知の方法で調製することで得ることができ、その反応物は、式(P7)
Figure 0007024355000023
のように一方にアミノアルコール、他方にポリマー(B)をもつ非対称ペリレンジイミド化合物として表すことができる。
前記2つの製造方法は、公知の一般的な方法で調製することができるが、反応は、水性、有機、または水性-有機媒体中、250℃まで、好ましくは180℃までの温度で行うことができる。好適な有機媒体としては、不活性有機溶媒が挙げられ、好ましくは沸点が水より高温であるものであり、例としてDMSO、NMP、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン類、トリクロロベンゼン類、比較的高沸点のアルコール類、カルボキサミド類、キノリン、イミダゾール、ナフタレン、フェノール、および比較的高沸点のエーテル類が挙げられる。アミンは同時に溶媒としての役割をすることもできる。水性または水性-有機媒体のpHは、酸性、中性、またはアルカリ性でもよく、好ましくはpH3~14の間である。生成する式(5)の生成物は、好ましくはろ過、分液操作、または一般的なカラム分離によって反応混合物から分離される。
また、縮合反応は、水溶液中、アルカリ性pH条件において、50~180度の範囲の温度で行うことが特に好ましい。縮合は、過剰のアミンを使用することが適切であり、適切には8倍まで、好ましくは4倍までのモル過剰にする。生成する式(5)の生成物は、好ましくはろ過、分液操作、または一般的なカラム分離によって反応混合物から分離される。
また、前記Bで表されるポリマー鎖は、前記式(P1)で表されるペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物の、ペリレン骨格の両端に存在する2つのアシル基に挟まれて酸無水物を形成する酸素原子と反応する基、例えばアミノ基と、前記Bで表されるポリマー鎖とを有する化合物を使用するのが好ましい。
アミノ基と、前記Bで表されるポリマー鎖とを有する化合物としては、例えば、ビニル系ポリマー鎖を導入するのであれば、アミン変性ビニル系ポリマー鎖を、ポリエステル鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリエステル鎖を、ポリエーテル鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリエーテル鎖を、ポリアクリレート鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリアクリレート鎖を、ポリブタジエン鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリブタジエン鎖を、ポリスチレン鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリスチレン鎖を、ポリスチレン-酢酸ビニル鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリスチレン-酢酸ビニル鎖を、ポリ塩化ビニル鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリ塩化ビニル鎖を、ポリシラン鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリシラン鎖を、ポリシロキサン鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリシロキサン鎖を、ポリカーボネート鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリカーボネート鎖を、ポリアミド鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリアミド鎖を、ポリイミド鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリイミド鎖を、ポリウレタン鎖を導入するのであればアミン変性ポリウレタン鎖を、ポリウレア鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリウレア鎖を、ポリペプチド鎖を導入するのであれば、アミン変性ポリペプチド鎖を反応させることで得られる。ポリマー中のアミンの位置はポリマー鎖の末端でも側鎖でも良い。
また、前記式(P1)で表されるペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物の、ペリレン骨格の両端に存在する2つのアシル基に挟まれて酸無水物を形成する酸素原子と、アミノ基及び他の反応性官能基、例えばヒドロキシル基とを有する化合物を反応させた後、該反応性官能基と反応しうる反応性基、及びポリマー鎖を有する化合物を反応させることによっても、前記Bで表されるポリマー鎖を導入することができる。
また、前記反応性官能基と反応しうる反応性基、及びポリマー鎖を有する化合物としては、例えば反応性官能基がヒドロキシル基の場合は、カルボン酸基を有するポリマー鎖、C(=O)-Cl基を有するポリマー鎖、エポキシ基を有するポリマー鎖、イソシアナト基を有するポリマー鎖、等が挙げられる。
このような材料は、ここに挙げた材料だけではなく、前記のアミノ基を含む化合物と、一般的な公知の方法で反応することができる材料であればよい。
このとき、得られる顔料分散剤において、Bのポリマー鎖は、アミノ基-(R-X)-基を介して結合する。
<一般式(5)で表される化合物のランダム共重合体への導入方法>
上記のランダム共重合体に対する一般式(5)で表される化合物の導入は、重合前でも重合後でもよいが、モノマーの安定性、製造安定性の観点から重合後に導入するのが好ましい。
例えば、構成単位(A)、(B)、(C)からなるランダム共重合体(但しR2~R5は一般式(5)で表される化合物を含まない)と、前記式(P4)又は(P8)で表される化合物とを公知の一般的な製造方法で調製することができるが、反応は、水性、有機、または水性-有機媒体中、250℃まで、好ましくは180℃までの温度で行うことができる。好適な有機媒体としては、不活性有機溶媒が挙げられ、好ましくは水と共沸することが可能であるものであり、例として比較的高沸点のアルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素、および比較的高沸点のエーテル類が挙げられる。水性または水性-有機媒体のpHは、酸性、中性、またはアルカリ性でもよく、好ましくはpH3~14の間である。
また、ランダム共重合体の中和は重合前若しくは重合後のいずれの段階でも行ってよいが、製造安定性の観点から重合後に行うことが好ましい。
またランダム共重合体のpHは特に制限されないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン等の一般的な中和剤でpH調整を行ってもよく、その場合にはpHを5~11の範囲に調整することが好ましい。
<負極>
本実施形態のランダム共重合体は、上述の通り優れた性能を示すことから、リチウムイオン二次電池の負極用電極として使用することで、優れた導電性をもつ負極用電極を提供することができる。具体的には、本発明のランダム共重合体と負極活物質と分散媒とを必須成分として、必要に応じてさらに増粘剤と導電助剤などの成分を含んで構成される負極用スラリーを集電体銅箔上へ塗布してから分散媒を除去することにより負極用電極を形成することができる。
本実施形態の負極スラリーの作成方法は、特に限定されないが、例えば、二次電池用負極活物質と、前述のランダム共重合体とを、溶剤とともに撹拌機、ボールミル、スーパーサンドミル、加圧ニーダ等の分散装置により混練して、負極用スラリーを調製し、これを集電体に塗布して負極層を形成することで得ることができる。また、ペースト状の負極用スラリーをシート状、ペレット状等の形状に成形し、これを集電体と一体化することでも得ることができる。
リチウムイオン二次電池負極の負極層中のランダム共重合体の含有比率は、炭素材料を用いた場合には0.1~10質量%であることが好ましく、0.3~7質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることがさらに好ましい。共重合体の量が過度に少ないと負極用スラリーの粘度が低くなり負極層の厚みが薄くなるおそれがあり、逆に、共重合体が過度に多いと放電容量が低下する可能性がある。
一方、上記負極用スラリーにおける分散媒の量は、負極活物質100重量部に対し、通常、40~150重量部であることが好ましく、70~130重量部であることがより好ましい。
本実施形態の負極用スラリーにおける分散媒としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、N-メチルピロリドンなどの環状アミド類、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類などを用いることができるが、環境負荷低減、安全性向上の観点から、水の使用が好ましい。
本実施形態の負極用スラリーに添加される負極活物質としては、特に限定されないが、例えば、天然黒鉛、黒鉛黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料や、珪素、SiOx、SiOCなどの珪素材料、LiTiOxで表される複合金属酸化物や、その他の金属酸化物や金属リチウムなどが挙げられる。
本実施形態では、前記負極用スラリーに、必要に応じて、さらに増粘剤を添加することができる。増粘剤としては、特に限定されないが、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース類、でんぷんなどの多糖類、ポリビニルアルコールなどのアルコール類などが挙げられる。
負極用スラリーに必要に応じて添加される増粘剤の使用量は、負極活物質100重量部に対し0.1~5重量部であることが好ましく、0.3~3重量部であることがより好ましく、0.5~2重量部であることがさらに好ましい。増粘剤の量が過度に少ないと負極用スラリーの粘度が低くなり負極層の厚みが薄くなるおそれがあり、逆に、共重合体が過度に多いと放電容量が低下する可能性がある。
また、上記負極用スラリーには、必要に応じて、導電助材を混合してもよい。導電助材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、あるいは導電性を示す酸化物や窒化物等が挙げられる。導電助剤の使用量は、負極活物質に対して1~15質量%程度が好ましい。
また前記集電体の材質および形状については、特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いればよい。また、多孔性材料、たとえばポーラスメタル(発泡メタル)やカーボンペーパーなども使用可能である。
上記負極用スラリーを集電体に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。塗布後は、必要に応じて平板プレス、カレンダーロール等による圧延処理を行うことが好ましい。
また、シート状、ペレット状等の形状に成形された負極用スラリーと集電体との一体化は、例えば、ロール、プレス、若しくはこれらの組み合わせ等、公知の方法により行うことができる。
負極用スラリーに含まれる水などの分散媒の乾燥方法については、特に限定されず、例えば温風、熱風による通気感想、真空乾燥、赤外線、遠赤外線、電子線などの照射線乾燥が挙げられる。乾燥条件は、応力集中によって活物質層に亀裂が入ったり、活物質層が集電体から剥離しない程度の速度範囲となる中で、できるだけ早く分散媒が除去できるよう調整するとよい。
<電池>
さらに本発明には、上記リチウムイオン二次電池負極と、正極と、電解液を備えたリチウムイオン二次電池も包含される。例えば、正極と、本発明の負極とを、セパレータを介して対向して配置し、電解液を注入することにより構成することができる。
前記正極は、前記負極と同様にして、集電体表面上に正極層を形成することで得ることができる。この場合の集電体はアルミニウム、チタン、ステンレス鋼等の金属や合金を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いることができる。
前記正極層に用いる正極材料としては、特に制限されない。非水系電解質二次電池の中でも、リチウムイオン二次電池を作製する場合には、例えば、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、または導電性高分子材料を用いればよく、特に限定されない。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、およびこれらの複合酸化物(LiCoxNiyMnzO2、x+y+z=1)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、リチウムバナジウム化合物、V2O5、V6O13、VO2、MnO2、TiO2、MoV2O8、TiS2、V2S5、VS2、MoS2、MoS3、Cr3O8、Cr2O5、オリビン型LiMPO4(M:Co、Ni、Mn、Fe)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素等などを単独或いは混合して使用することができる。
前記セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム又はそれらを組み合わせたものを使用することができる。なお、作製する非水系電解質二次電池の正極と負極が直接接触しない構造にした場合は、セパレータを使用する必要はない。
前記電解液としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSO3CF3等のリチウム塩を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、シクロペンタノン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン、3-メチル-1,3-オキサゾリジン-2-オン、γ-ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル等の単体若しくは2成分以上の混合物の非水系溶剤に溶解した、いわゆる有機電解液を使用することができる。
本発明の電池の構造は、特に限定されないが、通常、正極および負極と、必要に応じて設けられるセパレータとを、扁平渦巻状に巻回して巻回式極板群としたり、これらを平板状として積層して積層式極板群としたりし、これら極板群を外装体中に封入した構造とするのが一般的である。
<導電率の測定条件>
導電率を測定する装置として、三菱化学社製ロレスタGP(MCP-T610)を使用した。測定手法としては、まず、スライドガラス(松浪硝子工業製:S1111)に日東電工製両面テープ(No.515、幅20mm)を貼り、そこに幅20mmに切り取った負極シートを貼った。ローラーで密着させた後、銅箔を剥離することでスライドガラスに負極シートを転写した。膜厚は、転写前の負極シートの厚みから銅箔の厚みを引いて算出した。このように調整した試料の導電率を、三菱化学社製ロレスタGP(MCP-T610)にて測定した。
<導電率測定の仕様>
機材:三菱化学社製ロレスタGP(MCP-T610)
プローブ:PSPプローブ(MCP-TP06P、RMH112)
<用途などその他説明>
本発明の負極活物質を用いた二次電池は、特に限定されないが、ペーパー型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層型電池、円筒型電池、角型電池などとして使用される。
上述した本発明の負極活物質は、リチウムイオンを挿入脱離することを充放電機構とする電気化学装置全般、例えば、ハイブリッドキャパシタ、固体リチウム二次電池などにも適用することが可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において特に断りがない場合は、「部」及び「%」は質量基準である。
<化合物1の合成>
窒素導入管、還流管、滴下ロート、温度計をセットした1Lセパラブルフラスコにメチルエチルケトン 102gを仕込み80℃に加熱した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル 1.6gをメチルエチルケトン 14.4gに溶解させ、滴下ロートにセットした。また別の滴下ロートには無水マレイン酸 29.1g(40wt%)、メタクリル酸メチル 21.8g(30wt%)、スチレン 29.1g(40wt%)の混合溶液を入れた。これら重合開始剤を含む溶液とモノマー溶液とを2.5時間かけて滴下した後、80℃で3時間反応させた。その後、アゾビスイソブチロニトリル 0.4gをメチルエチルケトン 3.6gに溶かした溶液を添加し、さらに3時間反応させ、その後一旦室温まで冷却した。翌日、再度80℃まで加温した後、アゾビスイソブチロニトリル 0.4gをメチルエチルケトン 3.6gに溶かした溶液を添加し、さらに7時間反応させ、化合物1を得た。
<化合物2の合成>
温度計、還流管、マグネチックスターラーバーをセットした1000mL四口フラスコに、ペリレンテトラカルボン酸二無水物(20.0g、51mmol)及びイオン交換水(200mL)を加えた。室温で攪拌しながら、水酸化カリウム(85%、13.5g、204mmol、4equiv)を加えた。続いて90℃に加熱し、ペリレンテトラカルボン酸二無水物が完全に溶けるまで攪拌した。溶液温度を90℃に保ったまま、35%塩酸(15.9g、153mmol、3equiv)を加え溶液のpHを4.5~5.0の間に調節した。pHの調整が終えた後、90℃でさらに1時間加熱攪拌した。得られた固体を熱時濾過し、ろ液が中性になるまで熱水で洗浄した。最後に乾燥機(100℃)で試料を乾燥させることで化合物2(22.8g、収率99%)を得た。
Figure 0007024355000024
<化合物3の合成>
温度計、還流管、マグネチックスターラーバーをセットした500mL三口フラスコに、化合物2(22.8g、51mmol)及びイオン交換水(200mL)を加えた。ここにエタノールアミン(14.0g、229mmol、4.5equiv)を加え、室温で1時間攪拌した後、得られた赤色溶液を90℃で加熱した。溶液を室温まで冷却し、1N塩酸で酸析させた。得られた固体を吸引濾過し、ろ液が中性になるまでイオン交換水で洗浄した。最後に乾燥機(100℃)で試料を乾燥させることで化合物3(22.1g、収率99%)を得た。
Figure 0007024355000025
<化合物4の合成>
温度計、還流管、窒素導入管、マグネチックスターラーバーをセットした2000mL三口フラスコに、化合物3(12.2g、28mmol)、イミダゾール(19.1g、280mmol、10equiv)、NMP(1000mL)を加え、窒素下で化合物3が完全に溶解するまで80℃で加熱攪拌した。均一溶液が得られたら、SURFONAMINE L207(HUNTSMAN社製、57.1g、28mmol、1.0equiv)を加え、80℃でさらに6時間攪拌した。溶液を室温まで冷却し、エバポレーターで大部分のNMPを留去した。得られた粘性液体にクロロホルム500mLを加え分液ロートに移し、6N塩酸(200mL)で3回洗浄した。得られた赤色溶液を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過後、エバポレーターで溶剤を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:CHCl 100%→CHCl:MeOH=30:1)で精製し、化合物4(54.3g、収率79%)を得た。化合物4の構造は次の通りであり、PO/EO(n/m)は、3/19であった。
Figure 0007024355000026
<化合物5の合成>
SURFONAMINE L207の代わりにSURFONAMINE L100を用いた以外は化合物4の合成と同様に行った。得られた化合物5の構造は、PO/EO(n/m)が10/32であること以外は、上記化合物4と同様であった。
<化合物6の合成>
SURFONAMINE L207の代わりにSURFONAMINE L300を用いた以外は化合物4の合成と同様に行った。得られた化合物6の構造は、PO/EO(n/m)が8/58であること以外は、上記化合物4と同様であった。
<本発明のランダム共重合体Aの合成>
温度計、還流管、マグネチックスターラーバーをセットしたシュレンク管に化合物1(3g)、化合物4(6.5g)、MEK(50g)を加えた。窒素下80℃で加熱攪拌することで脱水縮合を進行させた。エバポレーターで溶剤を留去し、ランダム共重合体Aを得た。
<本発明のランダム共重合体Bの合成>
得られたランダム共重合体Aを1mol/L水酸化ナトリウム溶液で中和し、ランダム共重合体Bを得た。
<本発明のランダム共重合体Cの合成>
化合物4の代わりに化合物5を用いた以外は、ランダム共重合体Aの合成と同様の操作を行った。
<本発明のランダム共重合体Dの合成>
化合物4の代わりに化合物6を用いた以外は、ランダム共重合体Aの合成と同様の操作を行った。
実施例
<負極スラリーの調製>
黒鉛(日本黒鉛製:CGB-10)/アセチレンブラック(デンカ製:粉状品)/カルボキシメチルセルロースNa塩(MTI製:EQ-Lib-CMC)/ランダム共重合体B/希釈剤(水)=940mg/10mg/10mg/40mg/1000mgを混合し、泡取り錬太郎(シンキー社製)にて攪拌分散して負極スラリーを調製した。
<負極シートの作製>
銅箔上に調製した負極スラリーを76μmのアプリケーターを用いて塗布し、100℃の乾燥機中で1時間乾燥した。油圧式プレス機でプレスし(20MPa、1分)、負極シートを作製した。
<導電率測定>
導電率を測定した結果、測定値は2.72S/cmであった。ランダム共重合体C及びDについても同様に試験し、評価した。
比較例1
黒鉛(日本黒鉛製:CGB-10)/アセチレンブラック(デンカ製:粉状品)/カルボキシメチルセルロースNa塩/SBR(日本ゼオン製:BM-400B)/希釈剤(水)=940mg/10mg/25mg/25mg/1000mgを混合し、「泡取り錬太郎」(シンキー社製)にて攪拌分散してスラリーを調製した。前記実施例と同様に負極シートを作製し導電率を測定した結果、測定値は2.17S/cmであった。
比較例2
黒鉛(日本黒鉛製:CGB-10)/アセチレンブラック(デンカ製:粉状品)/カルボキシメチルセルロースNa塩/化合物4/希釈剤(水)=940mg/10mg/25mg/25mg/1000mgを混合し、「泡取り錬太郎」(シンキー社製)にて攪拌分散してスラリーを調製した。次に、銅箔上に調製したスラリーを76μmのアプリケーターを用いて塗布し、100℃の乾燥機中で1時間乾燥させたが、結着力が低いため銅箔から剥がれ落ち、負極シートが得られなかった。
実施例1、2、3及び比較例1の結果を表にまとめて示す。
Figure 0007024355000027

Claims (5)

  1. 構造単位(A)、構造単位(B)、構造単位(C)とを含有するランダム共重合体であって、
    構造単位(A)は下記式(1):
    Figure 0007024355000028
    式(1)
    で表される構造単位であり、
    構造単位(B)は下記式(2):
    Figure 0007024355000029
    式(2)
    で表される構造単位であり、
    構造単位(C)は下記式(3):
    Figure 0007024355000030
    式(3)
    又は下記式(4):
    Figure 0007024355000031
    式(4)
    で表される構造単位であり、
    Arは置換又は無置換のアリール基を示し、
    は-O-、-NH-又は-N(R)-を示し(Rは水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基を示す)、
    は水素原子又はメチル基を示し、
    は式(5)で表される化合物、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、フェニル基、アルカリ金属又は置換若しくは無置換のアミノ基を示し、
    は式(5)で表される化合物、水素原子、アルカリ金属又は置換若しくは無置換のアミノ基を示し、
    は式(5)で表される化合物、水素原子、アルカリ金属又は置換若しくは無置換のアミノ基を示し、
    ,R ,又はR の少なくとも1つが式(5)で表される化合物であり、
    は式(5)で表される化合物を示し、
    前記式(5)は
    Figure 0007024355000032
    式(5)
    (R及びRは各々独立して単結合、炭素原子数1~16の2価の炭化水素基(但し、該炭化水素基は置換基を有していてもよく、分岐あるいは環構造を形成してもよく、また途中にエーテル結合、エステル結合、フェニレン基を介してもよい)を表し、
    ~R15は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族複素環基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリールオキシ基、置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、又はカルボキシル基を表し(但し、R~R15は、それらの内の2つで互いに結合して飽和若しくは不飽和の5員環又は6員環を形成してもよい)、
    は単結合、-O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-CONH-、-NHCO-、-N(R16)-、-N(R17)CON(R18)-、-N(R19)COO-、又は-OCON(R20)-を表し(但し、前記R16~R20は各々独立して、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基又はフェニル基を表す)、
    Pはビニル系ポリマー鎖、ポリシロキサン鎖、ロジン変性フェノール樹脂鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリウレタン鎖、メラミン鎖、エポキシ鎖、ポリシラン鎖、ポリカーボネート鎖、ポリイミド鎖、ポリウレア鎖及びポリペプチド鎖からなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマー鎖を表す)である
    (但し、上記式(5)の構造が、ランダム共重合体中に複数ある場合には、各々の式(5)の構造は同一であっても異なっていてもよい)
    ことを特徴とするランダム共重合体。
  2. Pがポリエーテル鎖である、請求項1に記載のランダム共重合体。
  3. 請求項1又は2に記載のランダム共重合体を少なくとも含む電池電極用バインダー組成物。
  4. 負極活物質と、請求項1又は2に記載のランダム共重合体とを含む電池用負極。
  5. 請求項4に記載の負極を有することを特徴とする電池。
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