A.実施形態:
A-1.装置構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1(および後述する図6,7,9)のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1(および後述する図6,7,9)のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では10個の)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、金属部材107と、下端用セパレータ189と、一対のエンドプレート104,106とを備える。10個の発電単位102と金属部材107は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。金属部材107は、上から5番目(下から6番目)に位置する発電単位102の下側に隣接するように配置されている。従って、金属部材107は、金属部材107よりも上側に配置された発電単位102が備える後述の接合部138と、金属部材107よりも下側に配置された発電単位102が備える接合部138との間に位置している。下端用セパレータ189は、10個の発電単位102および金属部材107から構成される集合体の下側に隣接して配置されている。一対のエンドプレート104,106は、10個の発電単位102と金属部材107と下端用セパレータ189とから構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)を上下から挟むように配置されている。なお、上記配列方向(上下方向)は、特許請求の範囲における第1の方向に相当する。
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、金属部材107、下端用セパレータ189、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。なお、ボルト22およびナット24は、特許請求の範囲における締結部材に相当する。連通孔108は、特許請求の範囲における「締結部材が挿入される貫通孔」に相当する。
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス供給マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿通された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、後述の孔104A,106Aが形成された略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
上側のエンドプレート104には、中央付近に上下方向に貫通する孔104Aが形成されている。下側のエンドプレート106には、中央付近に上下方向に貫通する孔106Aが形成されている。この結果、上側のエンドプレート104の孔104Aによって取り囲まれた空間は、発電ブロック103側に開口し、上下方向視で輪郭線が単セル110を内包している。下側のエンドプレート106の孔106Aによって取り囲まれた空間は、発電ブロック103側に開口し、上下方向視で輪郭線が単セル110を内包している。また、上側のエンドプレート104における孔104Aの周囲部分は、空気極側フレーム130の周縁部に対向している。下側のエンドプレート106における孔106Aの周囲部分は、燃料極側フレーム140の周縁部に対向している。なお、エンドプレート104,106は、特許請求の範囲におけるエンド部材に相当する。
(下端用セパレータ189の構成)
下端用セパレータ189は、板状の部材であり、例えば、金属により形成されている。下端用セパレータ189の中央付近には、発電ブロック103において最も下に位置する発電単位102の燃料極側集電体144が接合されている。下端用セパレータ189の周縁部は、発電ブロック103と下側のエンドプレート106との間に挟み込まれている。
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102および金属部材107のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102および金属部材107のYZ断面構成を示す説明図である。図5の上部には、発電単位102の一部分のYZ断面構成が拡大して示されている。また、図6は、図4のVI-VIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図7は、図4のVII-VIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図4および図5に示すように、発電単位102は、単セル110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿通される連通孔108に対応する孔が形成されている。
インターコネクタ190は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略四角柱状の空気極側集電部134とを備えている。インターコネクタ190は、導電性部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。インターコネクタ190の上下方向の厚さは、1mm未満である。空気極側集電部134の構成については後述する。インターコネクタ190は、上下方向視で空気極側フレーム130の後述の孔131の内側に収まっている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。なお、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102のインターコネクタ190は、後述するIC用セパレータ180に接触しており、IC用セパレータ180を介して上側のエンドプレート104に電気的に接続されている。
なお、本実施形態では、インターコネクタ190の表面に、例えばCr酸化物により構成された酸化被膜層194が形成されており、さらに酸化被膜層194の上に、例えばスピネル型酸化物により構成された被覆層196が形成されている。以下では、表面に酸化被膜層194が形成され、さらに被覆層196に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。
単セル110は、電解質層112と、電解質層112の上下方向(第1の方向)の一方側(下側)に配置された燃料極(アノード)116と、電解質層112の上下方向の他方側(上側)に配置された空気極(カソード)114と、電解質層112と空気極114との間に配置された中間層118とを備える。すなわち、空気極114および燃料極116は、電解質層112を挟んで上下方向に互いに対向している。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、中間層118を支持する燃料極支持形の単セルである。
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、緻密な層である。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。すなわち、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。本実施形態では、空気極114は、ペロブスカイト型酸化物であるLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)とLSC(ランタンストロンチウムコバルト酸化物)との少なくとも一方から構成されている。本実施形態では、空気極114は、特許請求の範囲における第1の電極に相当する。
燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同一の大きさの略矩形の平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Niと酸化物イオン伝導性セラミックス粒子(例えば、YSZ)とからなるサーメットにより形成されている。本実施形態では、燃料極116は、特許請求の範囲における第2の電極に相当する。
中間層118は、略矩形の平板形状部材であり、GDC(ガドリニウムドープセリア)を含むように形成されている。中間層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO3)が生成されることを抑制する。
なお、単セル110を構成する各部材(電解質層112,燃料極116,空気極114,中間層118)の厚さ(板厚)(上下方向の厚さ)はいずれも1mm未満である。
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120における孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。言い換えると、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部は、単セル110の周縁部と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、単セル用セパレータ120は、特許請求の範囲における第1のセパレータに相当する。孔121は、特許請求の範囲における第2の貫通孔に相当する。
電解質層112における接合部124に対して空気室166側には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
IC用セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。IC用セパレータ180における孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150における上側の表面の周縁部と、例えば溶接により接合されている。IC用セパレータ180は、発電単位102の上側と下側にそれぞれ配置されている。上側のIC用セパレータ180は、発電単位102の最上層の周縁部を構成している。上側のIC用セパレータ180により、空気室166と、上側に隣接する発電単位102における燃料室176とが区画される。なお、金属部材107の下側に隣接する発電単位102が備える上側のIC用セパレータ180は、金属部材107に、例えば溶接により接合されている。下側のIC用セパレータ180は、発電単位102の最下層の周縁部を構成している。下側のIC用セパレータ180により、燃料室176と、下側に隣接する発電単位102における空気室166とが区画される。上記のように区画するIC用セパレータ180により、単セル110の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、IC用セパレータ180は、特許請求の範囲における第2のセパレータに相当する。孔181は、特許請求の範囲における第3の貫通孔に相当する。
図4から図6に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の厚さ(板厚)(上下方向の厚さ)は、1mm未満である。空気極側フレーム130の熱伝導率は0.67W/m・Kである。空気極側フレーム130は、空気極114に面する空気室166を構成する。すなわち、空気極側フレーム130の孔131は、空気室166を取り囲んでいる。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、上側のIC用セパレータ180における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対の単セル用セパレータ120およびインターコネクタ190間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。なお、空気極側フレーム130は、特許請求の範囲におけるフレーム部材に相当する。本実施形態では、孔131は、特許請求の範囲における第1の貫通孔に相当する。本実施形態では、空気室166は、特許請求の範囲における第1のガス室に相当する。
図4,5,7に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の上下方向の厚さは、1mm未満である。燃料極側フレーム140の熱伝導率は19W/m・Kである。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、下側のIC用セパレータ180における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。なお、燃料極側フレーム140は、特許請求の範囲におけるフレーム部材に相当する。本実施形態では、孔141は、特許請求の範囲における第1の貫通孔に相当する。本実施形態では、燃料室176は、特許請求の範囲における第2のガス室に相当する。
図4,5,7に示すように、燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。燃料極側集電体144の上下方向の厚さは、1mm未満である。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190における燃料極116に対向する側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、当該発電単位102におけるインターコネクタ対向部146は、下端用セパレータ189に接触しており、下端用セパレータ189を介して下側のエンドプレート106に電気的に接続されている。燃料極側集電体144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(またはエンドプレート106)とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ190(またはエンドプレート106)との電気的接続が良好に維持される。
図4から図6に示すように、上述したインターコネクタ190を構成する空気極側集電部134は、単セル110の空気極114の側、すなわち、空気室166内に配置されている。空気極側集電部134は、空気極114に対向しており、後述する接合部138を介して空気極114と電気的に接合されている。なお、金属部材107の上側に隣接する発電単位102における空気極側集電部134は、金属部材107に対向しており、接合部138を介して金属部材107と電気的に接合されている。空気極側集電部134は、特許請求の範囲における集電部に相当する。
図4および図5に示すように、空気極114と、インターコネクタ190を構成する空気極側集電部134とは、空気極114と空気極側集電部134との間に配置された導電性の接合部138により接合されている。接合部138は、Mnを含有する材料、例えばMnを含有するスピネル型結晶構造を有する酸化物(例えば、Mn1.5Co1.5O4やMnCo2O4、ZnMn2O4、ZnMnCoO4、CuMn2O4)により形成されている。接合部138により、空気極114と空気極側集電部134とが電気的に接続される。本実施形態では、接合部138は、各空気極側集電部134について互いに独立して設けられている。ただし、一の空気極側集電部134に設けられた接合部138と、他の空気極側集電部134に設けられた接合部138とが、一体的に(連続的に)構成されていてもよい。
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は接合部138を介してインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介してインターコネクタ190に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給された酸化剤ガスOGの一部は、後述のガス流路167に供給され、酸化剤ガス排出マニホールド162を経て、上記と同様にガス通路部材27等を経て燃料電池スタック100の外部に排出される。
A-3.単セル用セパレータ120,IC用セパレータ180の詳細構成:
図8は、単セル用セパレータ120,IC用セパレータ180の詳細構成を示す説明図である。単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部(単セル用セパレータ120における孔121を取り囲む部分)を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126は、平坦形状であり、上下方向に直交する方向(X軸方向)に略平行である。外側部127は、単セル用セパレータ120の周縁部を含んでいる。本実施形態では、外側部127は、平坦形状であり、上下方向に直交する方向(X軸方向)に略平行である。
連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部128における下側(燃料室176側)の部分は凸部となっており、連結部128における上側(空気室166側)の部分は凹部となっている。このため、連結部128は、上下方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。連結部128は、例えば、プレス加工により形成される。
単セル用セパレータ120は、上下方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる連結部128を含んでいるので、上下方向に垂直な方向に容易に伸び縮みするばね性を有する。ばね性を有する単セル用セパレータ120により、燃料電池スタック100の内、上下方向視で単セル110に重なる部分(単セル110、インターコネクタ190など)と、ボルト22とナット24とによって直接締結された側の部分(空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、エンドプレート104,106など)との間の圧力の伝達が分離される。
単セル用セパレータ120の厚さ(板厚)(上下方向の厚さ)t1は、1mm未満である。単セル用セパレータ120の厚さt1は、0.01mm以上であればよく、耐酸化性の低下を抑制する観点から、好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.05mm以上であって、0.2mm以下であることが好ましい。単セル用セパレータ120の厚さt1を0.03mm以上とすることにより、単セル用セパレータ120の耐酸化性の低下を抑制することができ、単セル用セパレータ120の厚さt1を0.2mm以下とすることにより、連結部128のバネ性を一定程度以上確保することができる。このため、熱サイクルやヒートショック等によって単セル110またはインターコネクタ190を面方向に変形させる圧縮荷重がかかった場合に、単セル用セパレータ120の連結部128の存在により、単セル110やインターコネクタ190に発生する応力が緩和される。
単セル用セパレータ120の連結部128の凹部の深さ(上下方向の深さ)(以下、「連結部深さH1」という。)は単セル用セパレータ120の板厚t1より大きいことが好ましい。連結部深さH1を単セル用セパレータ120の板厚t1より大きくすることにより、単セル110やインターコネクタ190に発生する応力が緩和される効果を確保することができる。
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部(IC用セパレータ180における孔181を取り囲む部分)を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。外側部187は、IC用セパレータ180の周縁部を含んでいる。本実施形態では、内側部186は、平坦形状であり、上下方向に直交する方向(X軸方向)に略平行である。本実施形態では、外側部187は、平坦形状であり、上下方向に直交する方向(X軸方向)に略平行である。
連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部188における下側(燃料室176側)の部分は凸部となっており、連結部188における上側(燃料室176側)の部分は凹部となっている。このため、連結部188は、上下方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。連結部188は、例えば、プレス加工により形成される。
IC用セパレータ180は、上下方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる連結部188を含んでいるので、IC用セパレータ180は上下方向に垂直な方向に容易に伸び縮みするばね性を有する。ばね性を有するIC用セパレータ180が、燃料電池スタック100の内、上下方向視で単セル110に重なる部分(単セル110、インターコネクタ190など)と、ボルト22とナット24とによって直接締結された側の部分(空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、エンドプレート104,106など)との間の圧力の伝達が分離される。
IC用セパレータ180の厚さ(板厚)(上下方向の厚さ)t2は、1mm未満である。IC用セパレータ180は、単セル用セパレータ120の場合の上記理由と同様の理由から、単セル用セパレータ120の厚さ(板厚)(上下方向の厚さ)t2は、0.01mm以上であればよく、耐酸化性の低下を抑制する観点から、好ましくは0.03mm以上、より好ましくは0.05mm以上であって、0.2mm以下であることが好ましい。熱サイクルやヒートショック等によって単セル110またはインターコネクタ190を面方向に変形させる圧縮荷重がかかった場合に、IC用セパレータ180の連結部188の存在により、単セル110やインターコネクタ190に発生する応力が緩和される。
IC用セパレータ180は、単セル用セパレータ120の場合の上記理由と同様の理由から、IC用セパレータ180の連結部188の凹部の深さ(上下方向の深さ)H2はIC用セパレータ180の厚さt2より大きいことが好ましい。
A-4.金属部材107の詳細構成:
図9は、図4のIX-IXの位置における金属部材107のXY断面構成を示す説明図である。図4,5,9に示すように、金属部材107は、略矩形の板状の導電性部材であり、ステンレス(例えば、SUS材)で形成されている。金属部材107の熱伝導率は20W/m・Kである。金属部材107の厚さ(板厚)(上下方向の厚さ)t3は、1mm以上(例えば、2.0mm)である。ここでいう「金属部材107の厚さt3は1mm以上」は、金属部材107の上下方向(Z軸方向)の厚さをX軸方向とY軸方向に1mmピッチで計測することにより得られる各測定値の平均値が1mm以上であることを意味する。なお、上述した通り、金属部材107は、金属部材107の下側に隣接する発電単位102が備える上側のIC用セパレータ180に、例えば溶接により接合されている。
金属部材107の上側に隣接する発電単位102における下側のIC用セパレータ180の表面(当該発電単位102の電解質層112に対向する側とは反対側の表面)の周縁部には、空気極側フレーム130が接続されている。以下、当該空気極側フレーム130を特に指すときは、「特定空気極側フレーム130A」という。金属部材107の上側の表面の周縁部は、特定空気極側フレーム130Aに接触している。特定空気極側フレーム130Aの孔131Aは、ガス流路167を取り囲んでいる。すなわち、特定空気極側フレーム130Aは、ガス流路167を構成している。ガス流路167は、酸化剤ガス供給マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。金属部材107の上面は、ガス流路167に面している。
図9に示すように、金属部材107におけるZ軸方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。
なお、金属部材107には、空気極側フレーム130における孔131や燃料極側フレーム140の孔141のように中央付近(上下方向視で単セル110に重なる部分)に上下方向に貫通する孔は形成されていない。従って、金属部材107は、当該孔が形成されている場合よりも高い剛性を有する。
A-5.燃料電池スタック100の製造方法:
上述した構成である燃料電池スタック100の製造方法は、例えば、以下の通りである。はじめに、10個の発電単位102の構成要素となる各部材(単セル110など)と、金属部材107と、一対のエンドプレート104,106とが所定の配列方向(例えば上下方向。以下、上下方向とした場合を例として説明する。)に並べて配置した積層体を作製する。この際、接合部138については、接合部138となる部材であって硬化前の部材(例えばペースト状接合剤)を、単セル110と空気極側集電部134の間と、金属部材107と空気極側集電部134の間とに配置する。
次に、各部材に形成された連通孔108にボルト22を挿入し、ボルト22の両側にナット24を嵌めることにより、上記積層体を締結する。
次に、上記積層体における上下方向視で単セル110に重なる部分(つまり、ボルト22とナット24とによって直接締結されている部分でない側の部分)を上方から治具により押圧することにより、上記積層体の当該部分に上下方向の圧縮荷重(以下、単に「圧縮荷重」という。)を加える。これにより、各発電単位102において、空気極114と空気極側集電部134が硬化前の接合部に密着した状態となる。空気極114と空気極側集電部134が硬化前の接合部に密着した状態で硬化前の接合部を焼成する処理を行うことにより、接合部138を形成する(以下、このように接合部138を形成する工程を「接合工程」という。)。
その他、残りの組み立て工程を行うことにより、上述した構成である燃料電池スタック100の製造が完了する。
A-6.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、発電ブロック103を備える。発電ブロック103は、複数の発電単位102を備える。発電単位102は、単セル110と、インターコネクタ190と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、単セル用セパレータ120と、IC用セパレータ180と、接合部138とを備える。単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向に互いに対向する空気極114および燃料極116とを含む。インターコネクタ190は、空気極114に対向する空気極側集電部134を有する。単セル用セパレータ120は、孔121が形成され、孔121を取り囲む部分である貫通孔周囲部が単セル110の周縁部と接合され、空気室166と燃料室176とを区画する。IC用セパレータ180は、孔181が形成され、孔181を取り囲む部分である貫通孔周囲部がインターコネクタ190の周縁部と接合されている。接合部138は、空気極114と空気極側集電部134との間に配置され、空気極114と空気極側集電部134とを接合する導電性の部材である。
本燃料電池スタック100は、さらに、一対のエンドプレート104,106と、ボルト22およびナット24とを備える。一対のエンドプレート104,106は、発電ブロック103における上下方向の両側にそれぞれ位置する。ボルト22およびナット24は、空気極側フレーム130と燃料極側フレーム140と単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180と一対のエンドプレート104,106とを上下方向に貫く貫通孔に挿入され、発電ブロック103を締結するエンドプレート104,106には、発電ブロック103側に開口する空間であって、上下方向視で輪郭線が単セル110を内包する空間が形成されている。
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部(単セル用セパレータ120における孔121を取り囲む部分)を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出している。
IC用セパレータ180は、内側部186と、外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。内側部186は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部(IC用セパレータ180における孔181を取り囲む部分)を含んでいる。外側部187は、IC用セパレータ180の周縁部を含んでいる。連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出している。
上述の通り、本実施形態の燃料電池スタック100では、エンドプレート104,106には、発電ブロック103側に開口する空間であって、上下方向視で輪郭線が単セル110を内包する空間が形成されている。本燃料電池スタック100は、上述の構成である単セル用セパレータ120およびIC用セパレータ180を備える。そのため、本燃料電池スタック100では、発電ブロック103の内、燃料電池スタック100の製造の際に治具により直接押圧される側の部分(つまり、上下方向視で単セル110に重なる部分)と、治具により直接押圧される側でない部分(つまり、ボルト22とナット24とによって直接締結された側の部分)との間の圧力の伝達が分離される。そのため、圧縮荷重の大きさの調整を、ボルト22とナット24とによる締結力の調整(すなわち、シール性の調整)から比較的独立して行うことができる。
ここで、金属部材107を備えない従来の構成では、上記の接合工程において、治具による圧縮荷重が一方側(上下方向の内、治具で押圧される側。例えば上側)に位置する発電単位102に偏り、その結果、他方側(例えば下側)に位置する発電単位102にかかる圧縮荷重が比較的小さくなることがある。そのため、一方側に位置する発電単位102における空気極114と接合部138との界面および/または空気極側集電部134と接合部138との界面の接触面積が小さくなり、これにより、燃料電池スタック100の使用時において当該発電単位102における空気極114と接合部138との界面および/または空気極側集電部134と接合部138との界面が剥離することがある。
上述の連結部128を含む単セル用セパレータ120と、上述の構成である連結部188を含むIC用セパレータ180とを備える構成では、上述したように圧力の伝達が分離されるため、ボルト22およびナット24による圧縮力が接合箇所(空気極114,接合部138,空気極側集電部134)に伝達されにくい。そのため、金属部材107を備えない従来の構成では、接合部138の剥離が生じ易い。
これに対し、本実施形態の燃料電池スタック100は、金属部材107を備える。金属部材107の厚さは1mm以上である。金属部材107には、燃料電池スタック100を締結するボルト22が挿入される連通孔108が形成されている。金属部材107は、金属部材107よりも上側に配置された発電単位102(以下、「第1の発電単位」という。)の接合部138と、金属部材107よりも下側に配置された発電単位102(以下、「第2の発電単位」という。)の接合部138との間に位置している。
本燃料電池スタック100は、このような構成である金属部材107を備えるので、下記の通り、接合部138の剥離を抑制することができる。金属部材107は、厚さが1mm以上であるので剛性が高い。金属部材107は、金属部材107に形成された連通孔108に挿入されたボルト22およびナット24により、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、エンドプレート104,106などと共に締結されている。本燃料電池スタック100では、そのような構成である金属部材107が第1の発電単位の接合部138と第2の発電単位の接合部138の間に備えられるので、上記の接合工程において、治具による圧縮荷重は、金属部材107に対して上下方向の第1の発電単位の側(例えば上側)に位置する発電単位102と、金属部材107に対して上下方向の第2の発電単位の側(例えば下側)に位置する発電単位102とに比較的均等に分散される。これにより、上述の圧縮荷重の偏りが緩和される。そのため、本燃料電池スタック100によれば、一部の発電単位102(例えば、前記上下方向の第2の発電単位の側に位置する発電単位102)における空気極114と接合部138との界面および/または空気極側集電部134と接合部138との界面の接触面積が小さくなることが抑制され、ひいては、燃料電池スタック100の使用時における接合部138の剥離を抑制することができる。従って、本実施形態の燃料電池スタック100によれば、燃料電池スタック100の使用時における第1の接合部138Aの剥離に起因して燃料電池スタック100の電気的性能が低下することを抑制することができる。
また、本燃料電池スタック100では、金属部材107の厚さは、発電単位102を構成する他のどの部材よりも厚い。そのような構成では、比較的薄い他の部材の剛性が低い。従って、そのような構成において金属部材107が備えられない場合には、上記の接合工程における圧縮荷重が特に偏り易い。一方で、比較的厚い金属部材107は剛性が高いので、このような金属部材107を備えることにより、上述の圧縮荷重の偏りがより確実に緩和される。従って、そのような構成(金属部材107が燃料電池スタック100を構成する他のどの部材よりも厚い構成)で本発明を適用すると特に効果的である。
また、本燃料電池スタック100では、金属部材107は、上から5番目(下から6番目)に位置する発電単位102の下側に隣接するように配置されている。従って、金属部材107は、燃料電池スタック100に含まれる10個の接合部138の内、上から5番目に位置する接合部138と、6番目に位置する接合部138との間に挟まれる。言い換えれば、金属部材107は、燃料電池スタック100の内、上下方向(単セル110や接合部138の並び方向)の中央付近に位置する2つの接合部138の間に配置される。金属部材107がこのような位置に配置されるので、上記の接合工程において、治具による圧縮荷重は、金属部材107に対して上下方向の一方側に位置する発電単位102と、他方側に位置する発電単位102とに、より均等に分散される。その結果、上述の圧縮荷重の偏りが、より効果的に緩和される。そのため、本燃料電池スタック100によれば、圧縮荷重の偏りに起因して空気極114と接合部138との界面および/または空気極側集電部134と接合部138との界面の接触面積が小さくなることをより効果的に抑制することができる。
また、本燃料電池スタック100では、金属部材107と、IC用セパレータ180と、インターコネクタ190とがいずれもステンレスで形成されている。
ここで、金属部材107と、IC用セパレータ180と、インターコネクタ190とが互いに異なる材料で形成された場合、金属部材107と、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190との間で熱膨張係数が異なると、金属部材107とIC用セパレータ180およびインターコネクタ190との間の熱膨張係数の差に起因して金属部材107とIC用セパレータ180およびインターコネクタ190とが変位し、これにより金属部材107とIC用セパレータ180との間の接合強度が不十分となるおそれがある。
これに対し、本燃料電池スタック100では、上記の通り、金属部材107と、IC用セパレータ180と、インターコネクタ190とがいずれもステンレスで形成されている。これにより、金属部材107と、IC用セパレータ180と、インターコネクタ190とのいずれかがステンレス以外の材料で形成されている場合に比べて、金属部材107と、IC用セパレータ180およびインターコネクタ190との間の熱膨張係数の差が小さくなる。そのため、本燃料電池スタック100によれば、金属部材107とIC用セパレータ180およびインターコネクタ190との間の熱膨張係数の差に起因して金属部材107とIC用セパレータ180との間の接合強度が損なわれることを抑制することができる。
また、本燃料電池スタック100では、空気極側フレーム130の形成材料よりも熱伝導率の高い材料で形成されている金属部材107を備えている。そのため、燃料電池スタック100の放熱性をより向上させることができる。
また、本燃料電池スタック100では、金属部材107はガス流路167に面している。そのため、燃料電池スタック100内を通るガス(ガス流路167を通る酸化剤ガスOG)の熱をより効果的に放出することができる。従って、本燃料電池スタック100によれば、燃料電池スタック100の放熱性をより向上させることができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
また、上記実施形態において、上側のエンドプレート104の孔104Aと下側のエンドプレート106の孔106Aの一方が形成されていなくてもよい。上側のエンドプレート104の孔104Aと下側のエンドプレート106の孔106Aの一方が形成されていない構成では、形成されていない部材は特許請求の範囲におけるエンド部材に含まれない。
また、上記実施形態では、発電単位102を構成する金属部材107以外の各部材の上下方向の厚さ(板厚)は、いずれも1mm未満である(つまり、金属部材107の厚さ(板厚)よりも薄い)が、上記実施形態において、発電単位102を構成する金属部材107以外の各部材の上下方向の厚さ(板厚)が1mm以上であってもよい。
上記実施形態では、金属部材107は、上側のIC用セパレータ180に接合されているが、発電単位102の最上層を構成するインターコネクタ190に接合されていてもよく、当該IC用セパレータ180と当該インターコネクタ190の両方に接合されていてもよい。
また、上記実施形態では、単セル用セパレータ120の連結部128は、内側部126と外側部127よりも下側に突出するように湾曲した形状となっているが、上側に突出するように湾曲した形状となっていてもよい。この場合においても、単セル用セパレータ120は、上下方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる連結部128を含んでいるので、上下方向に垂直な方向に容易に伸び縮みするばね性を有する。同様に、IC用セパレータ180の連結部188が、上側に突出するように湾曲した形状となっていてもよい。
上記実施形態では、単セル用セパレータ120とIC用セパレータ180の形状は、平板状であるが、平板状でなくてもよい。また、上記実施形態では、単セル用セパレータ120の内側部126と外側部127と、IC用セパレータ180の内側部186と外側部187は、いずれも形状が平坦形状であるが、平坦形状でなくてもよい。
また、上記実施形態では、単セル用セパレータ120の内側部126と外側部127と、IC用セパレータ180の内側部186と外側部187は、いずれも、上下方向に直交する方向(X軸方向)に略平行であるが、上下方向に直交する方向(X軸方向)に対して傾いていてもよい。
また、上記実施形態において、金属部材107は、ステンレス以外の金属で形成されていてもよい。また、上記実施形態において、インターコネクタ190は、ステンレス以外の金属で形成されていてもよい。
また、本発明における発電単位102の個数や金属部材107の位置は特に限定されるものではないが、上記実施形態において、下記の(A)および(B)の条件を満たす構成とされれば上記実施形態と同様の効果が得られる。
(A)金属部材107は、上下方向においてM(Mは1以上の整数)番目に位置する接合部138と、N(NはMより大きい整数)番目に位置する接合部138との間に挟まれる。
(B)式:L×0.3≦M<N≦L×0.7
ただし、
L:燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の総数
を満たす。
すなわち、上記の(1)および(2)の条件を満たす構成とされた場合には、金属部材107は、燃料電池スタック100の内、上下方向(単セル110や接合部138の並び方向)の中央付近に位置する2つの発電単位102の接合部138の間に配置される。そのため、上記の接合工程において、治具による圧縮荷重は、金属部材107に対して上下方向の一方側に位置する発電単位102と、他方側に位置する発電単位102とに、より均等に分散される。その結果、上述の圧縮荷重の偏りが、より効果的に緩和される。そのため、本燃料電池スタック100によれば、圧縮荷重の偏りに起因する接合部138の剥離をより効果的に抑制することができる。
また、上記実施形態では、インターコネクタ190は酸化被膜層194および被覆層196を含んでいるが、酸化被膜層194および/または被覆層196を含んでいなくてもよい。酸化被膜層194および/または被覆層196が含まれていない構成では、含まれていない部材は特許請求の範囲におけるインターコネクタに含まれない。
また、上記実施形態において説明した単セル用セパレータ120,IC用セパレータ180の構成は、燃料電池スタック100に含まれるすべての発電単位102において採用されていてもよいし、燃料電池スタック100に含まれる一部の発電単位102のみにおいて採用されていてもよい。また、単セル用セパレータ120が内側部126と外側部127と連結部128とを備える構成と、IC用セパレータ180が内側部186と外側部187と連結部188とを備える構成の一方のみが採用されてもよい。
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100は、金属部材107が空気室166および/または燃料室176に面する構成とされていてもよい。この場合、「空気室166および/または燃料室176」は、特許請求の範囲における「酸化剤ガス供給マニホールドおよび酸化剤ガス排出マニホールドに連通するガス流路」に相当する。これらの場合においても、燃料電池スタック100の放熱性を向上させることができる。
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号公報に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成である電解セル単位および電解セルスタックにおいても、上述した構成である金属部材107を採用することにより、燃料電池スタック100の使用時における接合部138の剥離を抑制することができる。
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100は、燃料極116と燃料極側集電体144との間に配置され、燃料極116と燃料極側集電体144とを接合する導電性の接合部(例えば、接合部138の形成材料と同様の材料で形成される部材)(以下、「燃料極側接合部」という。)が設けられていてもよい。この場合においては、上記実施形態の場合と同様の理由から、上記の燃料極側接合部の剥離を抑制することができる。この場合、燃料極116は、特許請求の範囲における第1の電極に相当する。燃料極側集電体144は、特許請求の範囲における集電部に相当する。燃料極側接合部は、特許請求の範囲における接合部に相当する。