JP7021773B2 - パッションフルーツ果皮に含まれる赤色系色素及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、植物に含まれる色素、特に赤色系色素及び赤色系色素の製造方法に関する。
パッションフルーツは、トケイソウ科の植物であり、和名をクダモノトケイソウ(果物時計草)と称し、学名をPassiflora edulis Simsとする。パッションフルーツは、熟した果実が可食部分となる。パッションフルーツ果実は、略卵形で、堅い表皮(果皮)は滑らかで黄色、濃紫色若しくは赤色を呈する。果実内部に小さくて堅い種を多く含み、黄色のゼリー状の果肉と果汁が含まれる。
パッションフルーツの果肉には、β‐カロテンが豊富に含まれており、血流をよくする効果があるといわれるナイアシンも含まれる。しかしながら非可食部である果皮については、特に有効な利用法は見いだされておらず、より付加価値の高い利用法の開発が望まれている。
例えば、特許文献1には、パッションフルーツ果皮の水性抽出物に高分子マトリックスを接触させ、特定の構造を有する化合物を抽出する技術が開示されている。特許文献1には、得られた抽出物が収縮期血圧を低下させること、抗酸化作用を有することが示唆されている。また、特許文献2には、パッションフルーツ果皮抽出物について、哺乳動物における喘息又は変形性関節症における炎症障害の症状を改善する用途が開示されている。
また、特許文献3には、パッションフルーツ果皮のメタノール抽出物が血圧降下作用並びに血管拡張作用を有するプロスタグランジンI2の合成を促進することが開示されている。特許文献4には、パッションフルーツ果皮の抽出物や、ルテオリン及び/又はその配糖体がエンドセリン-1の産生を抑制することが開示されている。
しかしながら、パッションフルーツ果皮に含まれるアントシアニン系の色素、すなわち赤色系色素を抽出した例、当該赤色系色素の特性について検討した例は知られていない。
特表2007-531734号公報 特開2007-302659号公報 特開2005-350433号公報 特開2005-75766号公報
ところで、1970年代から、合成系着色料の使用量は減少に転じ、天然系着色料の需要が増加している。現在、約30品目の天然系着色料が流通しており、着色加工食品の多くに利用されている。このような状況において、特に、pHや熱、光に対して安定性に優れた赤色系色素が少なく、着色加工食品等への利用が制限されているといった問題があった。
そこで、本発明者らは、上述した課題について鋭意検討した結果、廃棄処理されているパッションフルーツ果皮より抽出した赤色系色素が安定性に非常に優れていることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明は以下を包含する。
(1)パッションフルーツ果皮に由来し、シアニジン-3-グルコシドを含む赤色系色素。
(2)ペオニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド及びカリステフィンを更に含むことを特徴とする(1)記載の赤色系色素。
(3)上記パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬して得られる抽出物に含まれることを特徴とする(1)記載の赤色系色素。
(4)上記溶媒は、水、エタノール、メタノール、アセトニトリル及び食塩水からなる群から選ばれる1つであることを特徴とする(3)記載の赤色系色素。
(5)上記抽出物は、パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した後、加熱及び/又は超音波処理することで得られることを特徴とする(3)記載の赤色系色素。
(6)パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬して抽出物を得る工程を含む、赤色系色素の製造方法。
(7)上記抽出物から赤色系色素を単離・精製する工程を更に含むことを特徴とする(6)記載の赤色系色素の製造方法。
(8)上記溶媒は、水、エタノール、メタノール、アセトニトリル及び食塩水からなる群から選ばれる1つであることを特徴とする(6)記載の赤色系色素の製造方法。
(9)パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した後、加熱及び/又は超音波処理することを特徴とする(6)記載の赤色系色素の製造方法。
(10)上記抽出物はシアニジン-3-グルコシドを含むことを特徴とする(6)記載の赤色系色素の製造方法。
(11)上記抽出物はペオニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド及びカリステフィンを更に含むことを特徴とする(10)記載の赤色系色素の製造方法。
本発明に係る赤色系色素は、安定性に優れるため、様々な加工食品等に広範囲に利用することができる。本発明に係る赤色系色素の製造方法は、安定性に優れ、様々な加工食品等に広範囲に利用できる赤色系色素を製造することができる。
パッションフルーツ果皮に含まれる赤色系色素を含む抽出液の写真である。 パッションフルーツ果皮抽出物についてHPLCで分析した結果を示す特性図である。 赤色系色素を含む溶液における、pHによる色調の変化を示す写真である。 加熱時間と色度との関係を示す特性図である。 加熱時間とcyd-3-glu当量との関係を示す特性図である。 照射時間と色度との関係を示す特性図である。 照射時間とcyd-3-glu当量との関係を示す特性図である。 経過時間と色度との関係を示す特性図である。 経過時間とcyd-3-glu当量との関係を示す特性図である。
以下、本発明に係る赤色系色素及びその製造方法を詳細に説明する。
本発明に係る赤色系色素は、パッションフルーツ(Passiflora edulis Sims)果皮の抽出物に含まれている。具体的には、後述の実施例に示すように、本発明に係る赤色系色素はパッションフルーツ果皮に由来し、シアニジン-3-グルコシドを含んでいる。また、本発明に係る赤色系色素は、シアニジン-3-グルコシドの他にもペオニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド及びカリステフィンを更に含んでいても良い。
特に、本発明に係る赤色系色素には、シアニジン-3-グルコシドが、ペオニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド及びカリステフィン等のアントシアニン系色素と比較して、重量比で4倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは8倍以上、更に好ましくは9倍以上含まれる。
ここで、パッションフルーツ果皮とは、少なくとも、シアニジン-3-グルコシド等のアントシアニン系色素を含む外皮を含む部分を意味する。パッションフルーツ果皮において、シアニジン-3-グルコシド等のアントシアニン系色素は、外果皮、中果皮及び内果皮のうち外果皮及び中果皮に多く含まれる。したがって、パッションフルーツ果皮としては、少なくとも外果皮及び中果皮を含んでいれば良い。なお、パッションフルーツ果皮としては、外果皮、中果皮及び内果皮の全てを利用しても良い。例えば、パッションフルーツ果皮としては、パッションフルーツの果肉及び種子を除いた部分全体を使用することができる。或いは、パッションフルーツを搾汁して果汁を取り除き、残査部分をパッションフルーツ果皮として利用することもできる。
ここで、パッションフルーツとは、クダモノトケイソウとも呼称される植物を意味し、その品種と産地は、特に限定されるものではない。パッションフルーツとしては、例えば、パッシフロラ・エドゥリス(passiflora edulis)、パッシフロラ・アラタ(passiflora alata)、パッシフロラ・フォエニケア(passiflora phoenicea)、パッシフロラ・クアドラングラリス(passiflora quadrangularis)、パッシフロラ・デカイスネアナ(passiflora decaisneana)、パッシフロラ・ラウリフォリア(passiflora laurifolia)、パッシフロラ・リグラリス(passiflora ligularis)、パッシフロラ・モリッシマ(passiflora mollissima)、善翁桜(ぜんおうざくら)といった品種を挙げることができる。特に、パッションフルーツとしては、パッシフロラ・エドゥリス(passiflora edulis)を使用することが好ましい。パッシフロラ・エドゥリス(passiflora edulis)は、果皮における赤色系色素の含有量が高く、且つ特に安定性に優れた赤色系色素を含有するためである。
パッションフルーツ果皮より赤色系色素を含む抽出物を得る際には、パッションフルーツ果皮を含むのであれば、植物全体を使用しても良いし、果肉、果実、葉又は根を併せて使用しても良い。また、赤色系色素を含む抽出物を得る際には、パッションフルーツ果皮若しくはパッションフルーツ果皮を含む植物全体、果肉、果実、葉又は根を破砕又は粉砕等により粉末化処理したものを用いてもよい。ここで、「抽出物」とは、パッションフルーツ果皮に含まれる赤色系色素を、水、エタノール等の溶媒に溶解させて抽出したものを意味する。したがって、抽出物とは、赤色系色素が溶媒に溶解した溶液、当該溶液を乾燥させた濃縮液又は固体を含む意味である。また、赤色系色素が溶媒に溶解した溶液、当該溶液を乾燥させた濃縮液又は固体に対して精製処理等を行うことにより赤色系色素を高純度に得ることができる。
パッションフルーツ果皮より赤色系色素を含む抽出物を得る際、抽出溶媒は、任意の溶媒であってよく、例えばメタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、その他の有機溶媒、水及び食塩水のうち1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、エタノール溶媒を用いる。
エタノール溶媒を使用する場合、抽出時間は5分~1時間程度、特に10分~30分とすることが好ましい。また、抽出に使用する溶媒量はパッションフルーツ果皮に対して質量比で1~10倍量とすることが好ましい。
また、赤色系色素を含む抽出物を得る際には、パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した状態で加熱処理することが好ましい。加熱処理の温度条件としては、例えば40~100℃とすることができ、特に40~60℃とすることが好ましい。パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した状態で加熱処理することで、赤色系色素をより効率よく抽出することができる。
さらに、赤色系色素を含む抽出物を得る際には、パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した状態で超音波処理することが好ましい。超音波処理の条件としては、例えば20~170kHzの周波数で5~30分間処理する条件とすることができ、40kHzで10分間とすることが好ましい。パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した状態で超音波処理することで、赤色系色素をより効率よく抽出することができる。
さらにまた、赤色系色素を含む抽出物を得る際には、パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した状態で加熱処理及び超音波処理することが好ましい。すなわち、パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した状態で加熱しながら超音波を付加することで、赤色系色素の抽出効率を更に高めることができる。
さらにまた、赤色系色素を含む抽出物を得る際には、パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した状態で振盪あるいは混合することが好ましい。すなわち、パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した状態で振盪あるいは混合することで、赤色系色素の抽出効率を更に高めることができる。
上述のように、抽出物を溶液として得た場合には、糖分や有機酸が非常に多く含まれるため、それらを除く精製工程を行うことも好ましい。精製処理の方法として、順相又は逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過等が挙げられる。これらの方法を適宜組合せて用いることもできる。例えばパッションフルーツ果皮をミキサー等で細かく破砕した後、抽出溶媒中で攪拌し、遠心分離又は濾過により不溶物を除去し、上清または濾液を減圧下で乾燥することにより赤色系色素を含む粉末を得ることができる。
或いは、抽出物を溶液として得た場合には、当該溶液を吸着樹脂に通液し、パッションフルーツ由来赤色系色素を樹脂に吸着させ、その後、有機溶媒を用いて樹脂より赤色系色素を溶出し、当該赤色系色素を精製して、より鮮やかな赤色系色素を得ることもできる。吸着樹脂としては、ビニルポリマー、スチレン-ジビニルベンゼン、ヒドロキシプロピル化デキストランなど、通常工業的に用いられているものを一般に使用できる。樹脂に吸着した赤色系色素を溶出する際の溶媒としては、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノールなどの、水と任意に混和する溶媒を用いることができる。樹脂と溶出溶媒の組み合わせとしては、上記のものを任意に組み合わせて使用することができるが、食品などの用途に供する場合は、食品衛生の観点から、特に親水性ビニルポリマー樹脂に吸着させた後、30%以上のエタノールで溶出することが好ましい。
以上のようにして得られたパッションフルーツ果皮由来の赤色系色素の主成分は、紫キャベツや紫芋と同様に、アントシアニジン系化合物である。したがって、パッションフルーツ果皮由来の赤色系色素及び当該赤色系色素を含む上記抽出物は、安全に食品や衣料品に用いることができる。
また、パッションフルーツ果皮由来の赤色系色素は、他の果実や野菜由来の同色素と比較して安価に製造することができる。これは、ジュース加工後の搾汁残渣の使用や青果として市場に出せない規格外の果実を使用することが可能だからである。したがって、パッションフルーツ果皮由来の赤色系色素を利用することで、加工食品等の製造コストを低下することができる。
さらに、パッションフルーツ果皮由来の赤色系色素は、他の果実や野菜由来の同色素と異なり、酸性域では鮮紅色であり、中性域でも退色することなく色調が濃いといった特徴を有している。したがって、パッションフルーツ果皮由来の赤色系色素は、広範な用途に利用することができる。
さらにまた、パッションフルーツ果皮由来の赤色系色素は、他の果実や野菜由来の同色素と比較して、熱、光及び経過時間による変質が少なく、色素安定性が高いといった特徴を有している。したがって、パッションフルーツ果皮由来の赤色系色素は、広範な用途に利用することができる。
以下、本発明に係るパッションフルーツ果皮由来の赤色系色素及び製造方法について、実施例により更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本実施例では、以下の手順に従って、パッションフルーツ果皮に含まれる赤色系色素(アントシアニン系化合物)を抽出した。
2gのパッションフルーツ果皮に水又はエタノール20mLを入れて浸し、ボルテックスミキサーで混合後に静置あるいは30kHzの超音波洗浄機を用いて10分間抽出した。
結果を図1に示した。図1に示すように、抽出溶媒として水を使用した場合、エタノールを使用した場合のいずれも目的とする赤色系色素を抽出する事に成功した。特に、水又はエタノールを抽出溶媒として使用し、上述した超音波処理を行った場合には、赤色系色素を高濃度に回収できることがわかった。
また、パッションフルーツ果皮の成分分析をHPLCで行った結果を図2に示した。なお、図2には、パッションフルーツ果皮に含まれていたアントシアニン系色素を同定した結果を示した。図2に示すように、パッションフルーツ果皮に含まれるアントシアニン系色素としてシアニジン-3-グルコシド、ペオニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド及びカリステフィンを同定することができた。
また、10mgのパッションフルーツ果皮に含まれる各アントシアニン系色素の量を計算したところ、シアニジン-3-グルコシドが9.8μgであり、ペオニジン-3-グルコシドが0.8μgであり、シアニジン-3-ルチノシドが1.1μgであり、カリステフィンが0.2μgであった。このように、パッションフルーツ果皮に含まれるアントシアニン系色素としてシアニジン-3-グルコシドの含有量が最も高く、シアニジン-3-グルコシドの含有量が他のアントシアニン系色素の合計よりも約9倍高いことが明らかとなった。
〔実施例2〕
本実施例では、パッションフルーツ果皮由来赤色系色素を含む抽出液を用いて、溶液のpHが色調に及ぼす影響を調べた。具体的には、パッションフルーツを1gずつ分注し、各pH緩衝液を2mLずつ添加した。充分に混合した後、40kHz超音波処理を10分間おこない、遠心分離(3,200rpm、10分、4℃)をおこなった。上清を回収後、比較のため、96穴マイクロプレートに100μLずつ入れた。
また、本実施例では、比較のため紫キャベツ及び紫イモ(アヤムラサキ)についても、同様に赤色系色素を含む抽出液を準備し、溶液のpHが色調に及ぼす影響を調べた。
結果を図3に示した。図3に示すように、パッションフルーツ果皮由来赤色系色素を含む抽出液は、紫キャベツ由来赤色系色素及び紫イモ由来赤色系色素と異なり、酸性域では鮮紅色であり、中性域でも退色することなく色調が濃いといった特徴を有していることがわかった。
〔実施例3〕
本実施例では、パッションフルーツ果皮由来赤色系色素を含む、各種pHに調整した抽出液を用いて熱安定性、光安定性及び経時的安定性を評価した。具体的には、色差計を使った色差(微妙な色の違い)の測定、色相と彩色を数量的に表した色度測定、総アントシアニン量を算出するための吸光度法、シアニジン-3-グルコシド当量によるアントシアニン色素量を算出するためのpH differential法、色の強さを表す色価測定をおこなった。
色差測定は、試料200μLをろ紙に垂らし、色差計を用いてL*a*b*表式系で表した。色度測定は、試料の525nmと420nmの吸光度測定をおこない、数式[525nmの吸光度]/[420nmの吸光度]にて算出した。吸光度法は、525nmの吸光度測定をおこない、下記式より算出した。
Figure 0007021773000001
pH differential法は、pH1.0とpH4.5の試料を用いて520nmと700nmの測定をおこない、下記式より算出した。
Figure 0007021773000002
上記式においてA値は、[(pH1.0の試料における520nm吸光度)-(pH1.0の試料における700nm吸光度)]-[(pH4.5の試料における520nm吸光度)-(pH4.5の試料における700nm吸光度)]で求められる値である。式中、449.2g/molはシアニジン-3-グルコシドの分子量である。
色価測定に際しては、先ず、パッションフルーツ果皮粉末25mgをコニカルチューブに精密に量り取り、Mcllvaine緩衝液(pH3.0)を1mL添加した。よく混合して40kHz超音波処理を10分おこなった。更にMcllvaine緩衝液を正確に10mL量り取り、よく混合してから遠心分離(3,200rpm、10分、4℃)し、上清を回収した。その後、最大吸収波長を測定し、吸光度が0.3~0.7の範囲に入るように調整してから色価を下記式より算出した。
Figure 0007021773000003
上記式において吸光度の値は、200nmの吸光度から700nmの吸光度を引いた値である。
本方法は、食品添加物公定書に収載の方法およびAOAC 2005.02法(Association of Official Agricultural Chemists)に準拠している。
なお、本実施例では、温度条件として100℃を採用したが、レトルト加工食品への用途を考慮して121℃で4分間の加熱処理も行った。121℃で4分間の加熱処理を行った場合も、抽出に要する時間は100℃の加熱処理と同じとした。
熱安定性について検討した結果を図4及び5に示した。なお、図4は、抽出液に対する加熱温度と色度(A525nm/A420nm)との関係を示している。縦軸の「色度(A525nm/A420nm)」の値は高いほど赤色度が強く、値が低いほど褐色度が強いことを示している。図5は、抽出液に対する加熱温度とcyd-3-glu当量(μg/ml)との関係を示している。縦軸の「cyd-3-glu当量(μg/ml)」は、アントシアニン含量をシアニジン-3-グルコシド当量で示しており、値が高いほどアントシアニン系化合物の含量が高いことを示している。
図4及び5に示すように、pH3のサンプルでは100℃、加熱時間5分でやや色度が低下し、pH1及びpH3のサンプルでは赤色系色素であるシアニジン-3-グルコシド量がやや減少していることがわかる。なお、結果を図示しないが、色差測定の結果、全てのサンプルにおいてL*a*b*表式系が変化しておらず、得られた赤色系色素は加熱に対して安定していることが明らかとなった。また、結果を図示しないが、pH differential法によっても、アントシアニン色素量は加熱により変化しないことが明らかとなった。以上のように、本実施例で調製したパッションフルーツ果皮由来赤色系色素を含む抽出液では、色度及びシアニジン-3-グルコシド量の大幅な低下は見られず、全てのpHにおいて熱安定性に優れることが明らかとなった。
また、光安定性について検討した結果を図6及び7に示した。なお、図6は、抽出液に対する照射時間と色度(A525nm/A420nm)との関係を示している。図7は、抽出液に対する照射時間とcyd-3-glu当量(μg/ml)との関係を示している。
図6及び7に示すように、全てのpHにおおいて殆ど変化していないが、pH3及びpH4.5のサンプルでは色度がやや変化し、pH1のサンプルでシアニジン-3-グルコシド量がやや増加していることがわかる。なお、結果を図示しないが、色差測定の結果、全てのサンプルにおいてL*a*b*表式系が変化しておらず、得られた赤色系色素は光照射に対して安定していることが明らかとなった。また、結果を図示しないが、pH differential法によっても、アントシアニン色素量は光照射により変化しないことが明らかとなった。以上のように、本実施例で調製したパッションフルーツ果皮由来赤色系色素を含む抽出液では、色度及びシアニジン-3-グルコシド量の大幅な低下は見られず、全てのpHにおいて光安定性に優れることが明らかとなった。なお、pH1のサンプルでシアニジン-3-グルコシド量がやや増加したことは、色度が変化していないことから、他の色素物質が増加したことが予想される。
さらに、経時的安定性について検討した結果を図8及び9に示した。なお、図8は、経過時間と色度(A525nm/A420nm)との関係を示している。図9は、経過時間とcyd-3-glu当量(μg/ml)との関係を示している。
図8及び9に示すように、pH3のサンプルでは一週間で色度がやや低下し変化し、pH1のサンプルでシアニジン-3-グルコシド量がやや増加していることがわかる。なお、結果を図示しないが、色差測定の結果、全てのサンプルにおいてL*a*b*表式系が変化しておらず、得られた赤色系色素は経時的に安定していることが明らかとなった。また、結果を図示しないが、pH differential法によっても、アントシアニン色素量は経時的に変化しないことが明らかとなった。以上のようにしかしながら、本実施例1で調製したパッションフルーツ果皮由来赤色系色素を含む抽出液では、色度及びシアニジン-3-グルコシド量の大幅な低下は見られず、全てのpHにおいて経時的安定性に優れることが明らかとなった。なお、pH1のサンプルでシアニジン-3-グルコシド量がやや増加したことは、色度が変化していないことから、他の色素物質が増加したことが予想される。
以上の結果から、本実施例で調製したパッションフルーツ果皮由来赤色系色素は、非常に安定性に優れ、且つpHの変化に対する色調の変化が特徴的なものであることが明らかとなった。
なお、パッションフルーツ果皮由来赤色系色素、パッションフルーツ以外の他の果実由来赤色系色素の色価を測定した。その結果、本実施例で調製したパッションフルーツ果皮由来赤色系色素の色価が40.8であったのに対して、紫キャベツ由来赤色系色素の色価は172.0であり、紫イモ(アヤムラサキ)由来赤色系色素の色価は108.8であった。

Claims (11)

  1. パッションフルーツ果皮に由来し、シアニジン-3-グルコシド、ペオニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド及びカリステフィンを含む着色剤
  2. パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬して得られる抽出物に含まれるシアニジン-3-グルコシドを含む着色剤
  3. 上記溶媒は、水、エタノール、メタノール、アセトニトリル及び食塩水からなる群から選ばれる1つであることを特徴とする請求項記載の着色剤
  4. 上記抽出物は、パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した後、加熱及び/又は超音波処理することで得られることを特徴とする請求項記載の着色剤
  5. パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬して抽出物を得る工程を含む、着色剤の製造方法。
  6. 上記抽出物から赤色系色素を単離・精製する工程を更に含むことを特徴とする請求項記載の着色剤の製造方法。
  7. 上記溶媒は、水、エタノール、メタノール、アセトニトリル及び食塩水からなる群から選ばれる1つであることを特徴とする請求項記載の着色剤の製造方法。
  8. パッションフルーツ果皮を溶媒に浸漬した後、加熱及び/又は超音波処理することを特徴とする請求項記載の着色剤の製造方法。
  9. 上記抽出物はシアニジン-3-グルコシドを含むことを特徴とする請求項記載の着色剤の製造方法。
  10. 上記抽出物はペオニジン-3-グルコシド、シアニジン-3-ルチノシド及びカリステフィンを更に含むことを特徴とする請求項記載の着色剤の製造方法。
  11. 請求項1乃至4いずれか一項記載の着色剤を含む加工食品。
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