JP7020349B2 - レジスト用インクジェットインク - Google Patents
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Description
しかしながら、前記ホットメルトインクは、室温で100%固体であり、かつ、酸ワックスの添加量が0.5~40質量%で、比較的ワックス量が多くなっている。そのため、装置内のインク供給や射出時にモノマー中への溶解の負荷が大きく、また、射出時の温度変動に伴う射出不良が発生しやすいという問題がある。また、ワックス量が多いことから、酸化膜への密着性が得られにくく、アルカリによるレジスト膜の除去性が悪い。さらに、酸ワックスを用いていることから、ワックスの酸価により、顔料と併用するときに分散を不安定化させてしまう。
また、例えば、特許文献2に示すような通常のUVインクを用いたレジスト用インクジェットインクは、インクジェット描画時におけるピニング性が悪く、特にPCBに用いられる吸収性のない基板上では、インク滴の合一を抑制できず、細線の不均一性を招いたり細線再現性が難しい。また、インク膜厚を稼ぐために重ね打ちすると、インク滴が横に広がるため、線幅と膜厚の両立が困難であった。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
一般式(G1):R1-CO-R2
一般式(G2):R3-COO-R4
[式中、R1~R4は、それぞれ独立に、炭素数12以上の直鎖部分を持ち、かつ、分岐を持ってもよいアルキル鎖を表す。]
当該(メタ)アクリレート化合物が、インク全体に対して1~30質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のレジスト用インクジェットインク。
当該(メタ)アクリレート化合物が、インク全体に対して10~40質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載のレジスト用インクジェットインク。
当該(メタ)アクリレート化合物が、インク全体に対して30~70質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする第6項に記載のレジスト用インクジェットインク。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明のレジスト用インクジェットインクは、ピニング性を有することを特徴としているが、インクのピニング性を高めるためには、ゾル・ゲル相転移速度を高くすることが好ましく、本発明に用いられる酸性基を有しない光重合化合物と、酸性基を有しないゲル化剤を用いることで、少量のゲル化剤で、高いピニング性を発現することを見いだし、同時に溶解安定性、射出安定性、細線再現性が保たれていると考えている。また、酸性基を有する光重合化合物を添加することで、アルカリ溶解性や基材密着性が良好になると考えている。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
前記ゲル化剤が、インク全体に対して0.5~5質量%の範囲内で含有されていることが、射出安定性に優れる点で好ましい。
本発明のレジスト用インクジェットインク(以下、単に、インクともいう。)は、酸性基を有しない光重合性化合物と、酸性基を有する光重合性化合物と、酸性基を有しないゲル化剤と、光重合開始剤とを含み、温度によりゾル・ゲル相転移することを特徴とする。
本発明のレジスト用インクジェットインクは、例えば、金属加工、電子回路、プリント基板、製版、半導体分野、カラーフィルターなどの各種分野で、基板上にエッチングパターンを形成する際に用いるレジストとして機能するものである。
具体的には、基板上に形成された銅、亜鉛などの導電性を有する酸化膜上に、本発明のインクでインクジェット印刷にてパターニングし、レジスト膜を形成する。次いで、当該レジスト膜で覆われていない部分の酸化膜を酸によるエッチング溶液で除去し、さらにアルカリによって酸化膜を覆っていたレジスト膜を除去することによって、精緻な回路やパターンが形成される。
「活性光線」とは、その照射によりインク組成物中に開始種を発生させるエネルギーを付与できる光線であり、α線、γ線、X線、紫外線、電子線等を包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
本発明に係る酸性基を有しない光重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステルであることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物(以下、単に(メタ)アクリレートともいう。)であることがより好ましい。
(メタ)アクリレートは、変性物であってもよい。変性物である(メタ)アクリレートの例には、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを含むエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどを含むカプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ならびにカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを含むカプロラクタム変性(メタ)アクリレートなどが含まれる。
前記分子量が300~1500の範囲内で、ClogP値が4.0~7.0の範囲内にある(メタ)アクリレートとしては、例えば、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート(分子量471、ClogP 4.9)、1,10-デカンジオールジメタクリレート(分子量310、ClogP 5.75)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(分子量304、ClogP4.69)及びトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(分子量332、ClogP5.12)等が挙げられる。
また、前記分子量が300~1500の範囲内で、ClogP値が4.0~7.0の範囲内にある(メタ)アクリレートは、インク全体に対して10~40質量%の範囲内で含有されていることが、射出安定性及びゲル化剤の溶解安定性の点で好ましい。
1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の二液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPで示す。すなわち、「logP値」とは、1-オクタノール/水の分配係数の対数値であり、分子の親疎水性を表す重要なパラメータとして知られている。
ソフトウェアパッケージ1:MedChem Software (Release 3.54,1991年8月、Medicinal Chemistry Project, Pomona College,Claremont,CA)、
ソフトウェアパッケージ2:Chem Draw Ultra ver.8.0.(2003年4月、CambridgeSoft Corporation,USA)
本願明細書等に記載したClogP値の数値は、ソフトウェアパッケージ2を用いて計算した「ClogP値」である。
前記分子量が300~1500の範囲内で、分子内に(-CH2-CH2-O-)で表されるユニット構造を3~14個有している(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量508、ClogP 0.5)、4EO変性ヘキサンジオールジアクリレート(分子量358、ClogP 2.5)、6EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量560、ClogP 3.6)、4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子量528、ClogP 2.3)等が挙げられる。
また、分子量が300~1500の範囲内で、分子内に(-CH2-CH2-O-)で表されるユニット構造を3~14個有している(メタ)アクリレートは、インク全体に対して30~70質量%の範囲内で含有されていることが、硬化膜の硬化収縮性の点で好ましい。
本発明に係る酸性基を有する重合性化合物は、その分子内にカルボキシ基、リン酸基(又はホスホ基ともいう。)、スルホン酸基(又はスルホ基ともいう。)などの酸性基を有する(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。
また、当該(メタ)アクリレートは、インク全体に対して1~30質量%の範囲内で含有されていることが、レジスト膜の耐久性に優れ、また、アルカリに対する溶解剥離性に優れる点で好ましい。
本発明に係る酸性基を有しないゲル化剤は、酸化膜に着弾したインクの液滴をゲル状態にして仮固定(ピニング)することができる。インクがゲル状態でピニングされると、インクの濡れ広がりが抑えられて隣り合うドットが合一しにくくなるため、より高精細な画像を形成することができる。ゲル化剤は、本発明のインクジェットインク中に、1種のみが含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
一般式(G1):R1-CO-R2
一般式(G2):R3-COO-R4
[式中、R1~R4は、それぞれ独立に、炭素数12以上の直鎖部分を持ち、かつ、分岐を持ってもよいアルキル鎖を表す。]
また、直鎖状又は分岐鎖状の炭化水素基(アルキル鎖)の炭素数は26以下であることが好ましく、26以下であると、ゲル化剤の融点が過度に高まらないため、インクを出射するときにインクを過度に加熱する必要がない。
上記観点からは、R1及びR2、又は、R3及びR4は炭素原子数12以上23以下の直鎖状の炭化水素基であることが特に好ましい。
また、インクのゲル化温度を高くして、着弾後により急速にインクをゲル化させる観点からは、R1若しくはR2のいずれか、又はR3若しくはR4のいずれかが飽和している炭素原子数12以上23以下の炭化水素基であることが好ましい。
上記観点からは、R1及びR2の双方、又は、R3及びR4の双方が飽和している炭素原子数11以上23未満の炭化水素基であることがより好ましい。
これらの市販品は、2種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製してインクに含有させてもよい。これらのゲル化剤のうち、よりピニング性を高める観点からは、ケトンワックス、エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコール及び脂肪酸アミドが好ましい。
カードハウス構造が形成されると、液体のインク媒体が前記空間内に保持されるため、インク液滴がより濡れ広がりにくくなり、インクのピニング性がより高まる。インクのピニング性が高まると、記録媒体に着弾したインク液滴同士が合一しにくくなり、より高精細な画像を形成することができる。
カードハウス構造を形成するには、インク中の溶媒、光重合性化合物等のインク媒体とゲル化剤とが相溶していることが好ましい。これに対して、インク中の溶媒、光重合性化合物等のインク媒体とゲル化剤とが相分離していると、カードハウス構造を形成しにくい場合がある。
光重合開始剤は、前記光重合性化合物がラジカル重合性化合物であるときは、光ラジカル開始剤を用い、前記光重合性化合物がカチオン重合性化合物であるときは、光酸発生剤を用いることが好ましい。
光重合開始剤は、本発明のインク中に、1種のみが含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。光重合開始剤は、光ラジカル開始剤と光酸発生剤の両方の組み合わせであってもよい。
光ラジカル開始剤には、開裂型ラジカル開始剤及び水素引き抜き型ラジカル開始剤が含まれる。
アセトフェノン系の開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンが含まれる。
ベンゾイン系の開始剤の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
アシルホスフィンオキシド系の開始剤の例には、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
ベンゾフェノン系の開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4′-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチル-ジフェニルスルフィド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び3,3′-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンが含まれる。
チオキサントン系の開始剤の例には、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン及び2,4-ジクロロチオキサントンが含まれる。
アミノベンゾフェノン系の開始剤の例には、ミヒラーケトン及び4,4′-ジエチルアミノベンゾフェノンが含まれる。
光重合開始剤の含有量は、インクが十分に硬化できる範囲であればよく、例えば、本発明のインクの全質量に対して0.01~10質量%の範囲内とすることができる。
光重合開始剤の市販品の例には、Irgacure TPO(BASF社製)、819(BASF社製)、Irgacure 379(BASF社製)、Genocure ITX(Rahn A.G.社製)Genocure EPD(Rahn A.G.社製)等が含まれる。
光重合開始剤助剤は、第3級アミン化合物であってよく、芳香族第3級アミン化合物が好ましい。
芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミン及びN,N-ジメチルヘキシルアミン等が含まれる。中でも、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステルが好ましい。これらの化合物は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
本発明のインクは、必要に応じて着色剤をさらに含有してもよい。
着色剤は、染料又は顔料でありうるが、インクの構成成分に対して良好な分散性を有し、かつ耐候性に優れることから、顔料が好ましい。顔料は、特に限定されないが、例えば、カラーインデックスに記載される下記番号の有機顔料又は無機顔料が挙げられる。
黄顔料の例には、Pigment Yellow 1、3、12、13、14、17、34、35、37、55、74、81、83、93、94,95、97、108、109、110、137、138、139、153、154、155、157、166、167、168、180、185、193から選ばれる顔料又はその混合物等が含まれる。
黒顔料の例には、Pigment Black 7、28、26から選ばれる顔料又はその混合物等が含まれる。
顔料の分散は、顔料粒子の体積平均粒子径が、好ましくは0.08~0.5μmの範囲内、最大粒子径が好ましくは0.3~10μmの範囲内、より好ましくは0.3~3μmの範囲内となるように行われることが好ましい。
顔料の分散は、顔料、分散剤、及び分散媒体の選定、分散条件、及び濾過条件等によって、調整される。
分散剤の例には、ヒドロキシ基を有するカルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、及びステアリルアミンアセテート等が含まれる。分散剤の市販品の例には、Avecia社のSolsperseシリーズや、味の素ファインテクノ社のPBシリーズ等が含まれる。
油溶性染料は、以下の各種染料が挙げられる。マゼンタ染料の例には、MS Magenta VP、MS Magenta HM-1450、MS Magenta HSo-147(以上、三井東圧社製)、AIZENSOT Red-1、AIZEN SOT Red-2、AIZEN SOTRed-3、AIZEN SOT Pink-1、SPIRON Red GEH SPECIAL(以上、保土谷化学社製)、RESOLIN Red FB 200%、MACROLEX Red Violet R、MACROLEX ROT5B(以上、バイエルジャパン社製)、KAYASET Red B、KAYASET Red 130、KAYASET Red 802(以上、日本化薬社製)、PHLOXIN、ROSE BENGAL、ACID Red(以上、ダイワ化成社製)、HSR-31、DIARESIN Red K(以上、三菱化成社製)、Oil Red(BASFジャパン社製)が含まれる。
本発明のインクは、本発明の効果が得られる範囲において、重合禁止剤及び界面活性剤を含むその他の成分をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、本発明のインク中に、1種のみが含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム及びシクロヘキサノンオキシムが含まれる。
重合禁止剤の市販品の例には、Irgastab UV10(BASF社製)、Genorad 18(Rahn A.G.社製)等が含まれる。
重合禁止剤の量は、インクの全質量に対して、例えば0.001質量%以上1.0質量%未満とすることができる。
界面活性剤の例には、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類及び脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類及びポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、及び第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、並びにシリコーン系やフッ素系の界面活性剤が含まれる。
フッ素系の界面活性剤の例には、Megafac F、DIC社製(「Megafac」は同社の登録商標)、Surflon、AGCセイケミカル社製(「Surflon」は同社の登録商標)、Fluorad FC、3M社製(「Fluorad」は同社の登録商標)、Monflor、インペリアル・ケミカル・インダストリー社製、Zonyls、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社製、Licowet VPF、ルベベルケ・ヘキスト社製、及びFTERGENT、ネオス社製(「FTERGENT」は同社の登録商標)が含まれる。
本発明のインクの25℃における粘度は、1~1×104Pa・sの範囲内であることが、着弾して常温に降温した際にインクを十分にゲル化させ、ピニング性が良好となる点で好ましい。
また、インクジェットヘッドからの吐出性をより高める観点からは、本発明のインクの80℃における粘度は、3~20mPa・sの範囲内であることが好ましく、7~9mPa・sの範囲内であることがより好ましい。
より低温でインクを吐出可能にし、画像形成装置への負荷を低減させる観点からは、本発明のインクの相転移点は、40~60℃の範囲内であることがより好ましい。
本発明において、これらの粘度及び相転移点は、以下の方法によって得られた値である。
本発明のインクを100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータPhysica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°)、Anton Paar社製によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃までインクを冷却して、粘度の温度変化曲線を得る。
80℃における粘度及び25℃における粘度は、粘度の温度変化曲線において80℃、25℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求めることができる。相転移点は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度として求めることができる。
本発明における顔料粒子の平均分散粒子径とは、データサイザーナノZSP、Malvern社製を使用して動的光散乱法によって求めた値を意味する。なお、着色剤を含むインクは濃度が高く、この測定機器では光が透過しないので、インクを200倍で希釈してから測定する。測定温度は常温(25℃)とする。
本発明のインクを適用したレジスト膜の形成方法は、(1)本発明のインクをインクジェットヘッドのノズルから吐出して基板上の酸化膜に着弾させる工程と、(2)前記酸化膜に着弾したインクに活性光線を照射してインクを硬化させる工程とを含む。
(1)の工程では、図2(b)に示すように、インクの液滴をインクジェットヘッド5から吐出して、記録媒体である基板1上に形成された導電性を有する酸化膜2上の、形成すべきレジスト膜3に応じた位置に着弾させて、パターニングする。
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式とコンティニュアス方式のいずれでもよい。
オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型及びシェアードウォール型等の電気-機械変換方式、並びにサーマルインクジェット型及びバブルジェット(登録商標)(バブルジェットはキヤノン社の登録商標)型等の電気-熱変換方式等のいずれでもよい。
吐出される際のインクの液滴量は、記録速度及び画質の面から、2~20pLの範囲内であることが好ましい。
また、導電性の酸化膜としては、例えば、銅、金、銀、アルミ、ニッケル、ITO等が挙げられる。
(2)の工程では、(1)の工程で酸化膜に着弾させたインクに活性光線を照射して、該インクが硬化してなるレジスト膜を形成する。
活性光線は、例えば電子線、紫外線、α線、γ線、及びエックス線等から選択することができるが、好ましくは紫外線である。
紫外線の照射は、例えばPhoseon Technology社製の水冷LEDを用いて、波長395nmの条件下で行うことができる。LEDを光源とすることで、光源の輻射熱によってインクが溶けることによるインクの硬化不良を抑制することができる。
活性光線の照射は、インク着弾後0.001~1.0秒の間に行うことが好ましく、高精細なレジスト膜を形成するためには、0.001~0.5秒の間に行うことがより好ましい。
まず、インクが着弾した後0.001~2.0秒の間に活性光線を照射してインクを仮硬化させ、全印字終了後、さらに活性光線を照射してインクを本硬化させてもよい。活性光線の照射を2段階に分けることで、インク硬化の際に起こる記録材料の収縮がより生じにくくなる。
エッチング溶液としては、第二塩化鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アンモニア銅水溶液、高濃度水酸化ナトリウム水溶液、高濃度塩酸、フッ化水素水、硝酸第二鉄水溶液などが挙げられ、アルカリ溶液としては、水酸化カリウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液、(メタ)ケイ酸ナトリウム水溶液などが挙げられる。
[インクジェットインク材料]
インクジェットインク材料として、以下のものを用いた。
<光重合性化合物>
光重合性化合物として、下記表に示すものを用いた。
ゲル化剤として、下記表に示すものを用いた。
・KF-352A(信越化学工業社製)
・IRGACURE TPO(BASF社製)
・819(BASF社製)
・ITX(2-イソプロピルチオキサントン)
・Irgastab UV10(BASF社製)
(顔料分散液1の調製)
下記分散剤及び分散媒をステンレスビーカーに入れ、65℃のホットプレート上で加熱しながら1時間加熱撹拌溶解し、室温まで冷却した後、これに下記顔料を加えて、直径0.5mmのジルコニアビーズ200gとともにガラス瓶に入れ密栓した。これをペイントシェーカーにて、所望の粒径になるまで分散処理した後、ジルコニアビーズを除去した。
分散剤:BYKJET-9151(BYK社製) 7質量部
分散媒:トリプロピレングリコールジアクリレート(Irgastab UV10を熱重合禁止剤として分散媒に0.2%含有)
70質量部
顔料:Pigment Blue 15:4(大日精化社製、クロモファインブルー6332JC)
23質量部
前記顔料分散液1の調製において、分散媒としてトリプロピレングリコールジアクリレートの代わりに、NKエステルA-400(新中村化学社製)(酸性基を有しない光重合性化合物:分子量が300~1500の範囲内で、分子内に(-CH2-CH2-O-)で表されるユニット構造を3~14個有している(メタ)アクリレート化合物)を用いた以外は同様にして顔料分散液2を調製した。
下記表III-1~表III-3に記載されたインク成分(光重合性化合物、光重合開始剤、ゲル化剤、界面活性剤、光重合開始剤、増感助剤、重合禁止剤及び顔料分散液)に従って混合し、当該混合液を80℃に加熱しながらADVANTEC社製テフロン(登録商標)3μmのメンブレンフィルターで濾過を行い、インク1~25を得た。
また、Physica社製粘弾性測定装置 MCR300、シェアレート11(1/s)にて、各インクの25℃粘度及びゾル・ゲル相転移温度を測定した。測定結果を下記表に示す。
調製したインクを、ピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有するインクジェット記録装置に装填した。この装置を用いて、プリント配線板用銅張積層板上(FR-4 厚さ1.6mm、大きさ150mm×95mm)にパターン形成を行った。
インク供給系は、インクタンク、インク流路、インクジェット記録ヘッド直前のサブインクタンク、金属フィルター付き配管、ピエゾヘッドからなる。インクタンクからヘッド部分までインクを90℃に加温する。ピエゾヘッドにもヒーターを内蔵させ、記録ヘッド内のインク温度を90℃に加熱した。ピエゾヘッドは、ノズル径22μmで、ノズル解像度600dpiのヘッドを千鳥に配置して1200dpiのノズル列を形成した。このインクジェット記録装置を用いて、液滴量が8.0plのドットになるように電圧を印加し、基板上に、20mm×50mmのベタパターンとライン&スペースが100μmの櫛型パターンを、それぞれ厚さが20μmになるように印字したのち、Phoseon Technology社製LEDランプ(395nm、8W/cm2、water cooled unit)を500mJ/cm2になるよう照射してインク層を硬化して硬化膜を得た。
<ゲル化剤溶解性>
前記インクを調液後、100℃で4時間静置後の溶解状態を目視で観察した。
◎:分離、析出なし。
○:4時間放置後1mm以下の油滴が2個以下析出するが、撹拌で消滅した。
△:4時間放置後1mm以下の油滴が5個以下析出するが、撹拌で消滅した。
×:油玉が表面に集まって、撹拌しても残留している(層分離している)。
インクに含有される顔料粒子について、それぞれのインクにおける平均粒径をデータサイザーナノZSP(Malvern社製)を使用して動的光散乱法によって測定した。それぞれのインクを耐熱管に採取して、60℃で1ヶ月間恒温槽に保存した。保存後のそれぞれのインクにおける顔料粒子の平均粒径を同様に測定し、保存前の平均粒径(PA)と保存後の平均粒径(PB)との差(PA-PB)を計算した。
○:平均粒径の差が7nm未満である。
△:平均粒径の差が7nm以上15nm未満である。
×:平均粒径の差が15nm以上である。
前記ピエゾヘッドを用いて、液滴量3.5pl、液滴速度7m/sec、射出周波数40kHz、印字率100%となる条件で連続吐出(駆動)させ、駆動開始から1分後、5分後、10分後に射出していないノズル数をカウントした。
◎:欠ノズルの数が2個未満である。
○:欠ノズルの数が2個以上10個未満である。
△:欠ノズルの数が10個以上50個未満である。
×:欠ノズルの数が50個以上である。
前記櫛型パターンの印字サンプルについて、マイクロスコープ(KEYENCE社製 VHX-5000)を用い500倍に拡大し観察を行った。
○:シャープなラインで、100μmのライン&スペースを誤差が±10μm以内で再現し、サテライト等の飛び散りが発生していない。
△:ラインに僅かな太り細りが見られるが、100μmのライン&スペースを誤差が±10μmより大きく、±20μm以内で再現している。
×:ラインがデコボコしており、ライン&スペースが潰れる箇所が見られる。
ベタパターンの印字サンプルについて、硬化膜にJIS K5600のクロスカット法に準じて碁盤目状に切り込みを入れ、粘着テープを貼付し、引き剥がすことで、硬化膜の剥離状態を観察した。
◎:付着残留率が100%である。
○:付着残留率が80%以上100%未満である。
△:付着残留率が60%以上80%未満である。
×:付着残留率が60%未満である。
ベタパターンの印字サンプルについて、塩化第二鉄水溶液中に60℃30分浸漬した後、水洗し、乾燥後、粘着テープを貼付し、引き剥がすことで、硬化膜の剥離状態を観察した。
◎:剥離を生じなかった。
○:剥離を生じなかったが、やや変色があった。
△:一部剥離を生じた。
×:全面に剥離を生じた。
ベタパターンの印字サンプルについて、40℃、2.5%水酸化ナトリウム水溶液中に1分間浸漬し、硬化膜の溶解剥離性を目視にて観察した。
○:完全に溶解剥離した。
△:完全に溶解しないが、剥離した。
×:剥離しなかった。
2 酸化膜
3 レジスト膜
4 マスク
5 インクジェットヘッド
Claims (8)
- 酸性基を有しない光重合性化合物と、酸性基を有する光重合性化合物と、酸性基を有しないゲル化剤と、光重合開始剤とを含有し、かつ、温度によりゾル・ゲル相転移することを特徴とするレジスト用インクジェットインク。
- 25℃での粘度が1~1×104Pa・sの範囲内であり、かつ、40℃以上100℃未満の範囲内に相転移点を有することを特徴とする請求項1に記載のレジスト用インクジェットインク。
- 前記ゲル化剤が、下記一般式(G1)及び(G2)で表される構造を有する化合物のうちの少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレジスト用インクジェットインク。
一般式(G1):R1-CO-R2
一般式(G2):R3-COO-R4
[式中、R1~R4は、それぞれ独立に、炭素数12以上の直鎖部分を持ち、かつ、分岐を持ってもよいアルキル鎖を表す。] - 前記ゲル化剤が、インク全体に対して0.5~5質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のレジスト用インクジェットインク。
- 前記酸性基を有する光重合性化合物として、カルボキシ基、リン酸基及びスルホン酸基から選ばれる酸性基を有する(メタ)アクリレート化合物を含有し、かつ、
当該(メタ)アクリレート化合物が、インク全体に対して1~30質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のレジスト用インクジェットインク。 - 前記酸性基を有しない光重合性化合物として、分子量が300~1500の範囲内で、ClogP値が4.0~7.0の範囲内にある(メタ)アクリレート化合物を含有し、かつ、
当該(メタ)アクリレート化合物が、インク全体に対して10~40質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のレジスト用インクジェットインク。 - 前記酸性基を有しない光重合性化合物として、分子量が300~1500の範囲内で、分子内に(-CH2-CH2-O-)で表されるユニット構造を3~14個有している(メタ)アクリレート化合物をさらに含有し、かつ、
当該(メタ)アクリレート化合物が、インク全体に対して30~70質量%の範囲内で含有されていることを特徴とする請求項6に記載のレジスト用インクジェットインク。 - 着色剤を含有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のレジスト用インクジェットインク。
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