JP7019531B2 - 固体電解質担持用不織布及び固体電解質シート - Google Patents

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Description

本発明は、固体電解質担持用不織布(以下、「固体電解質担持用不織布」を「担持用不織布」と略記する場合がある)及び該担持用不織布に固体電解質を含む塗層を有する固体電解質シートに関する。
近年、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、モーターを動力源とする自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いられる大容量で高性能なリチウム電池等二次電池の需要が増加している。使用する用途が広がるに伴い、二次電池の更なる安全性の向上及び高性能化が要求されている。
リチウム電池の安全性を確保する方法としては、有機溶媒電解質に代えて固体電解質を用いることが有効である。固体電解質は、その性質上不燃で、通常使用される有機溶媒電解質と比較し安全性が高いためである。このような固体電解質を用い、高い安全性を備えた全固体リチウム電池の開発が望まれている。この全固体リチウム電池は、固体電解質層と、正極活物質層及び負極活物質層と、各活物質層に接合された集電部材を備えて構成されている。固体電解質としては、例えば、リチウムイオン伝導性に優れた硫化物系固体電解質が重用されている。
全固体リチウム電池において使用される固体電解質は、通常、粉末状である。従って、取り扱いの便宜上、シート状の固体状態にすることが求められている。しかしながら、粉末の固体電解質だけからなる単一層の薄膜シートは形成が困難であった。一方、電池を構成した際の電解質中のリチウムイオン伝導性は電解質層の厚みに依存するため、固体電解質層の薄膜化が望まれている。
このような問題に対し、特許文献1では、固体電解質を含む塗工液を、不織布の平方メートル当たりの重量が8g以下で、その厚さが10μm以上25μm以下である不織布にスクリーン印刷などの手法を用いて塗工、乾燥する固体電解質シートが開示されている。
しかしながら、開示された3~8g/mのポリエチレンテレフタレート不織布は、引張強度が極めて低く、プロセス走行性が困難であり、実施例においても、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをサポート基材として使用しており、量産性と生産コストが高くなるという課題があった。
特開2016-31789号公報
本発明の課題は、厚みが薄く、引張強度が強く、プロセス走行性と固体電解質の含浸性に優れた固体電解質担持用不織布と自立性、可撓性に優れた固体電解質シートを提供することにある。
上記課題を解決するために鋭意研究した結果、下記発明を見出した。
(1)不織布の表面及び内部に固体電解質を担持させる固体電解質担持用不織布において、該固体電解質担持用不織布はフィブリル化耐熱性繊維と合成樹脂短繊維とを含有してなり、該固体電解質担持用不織布に含まれる全繊維成分に対して、フィブリル化耐熱性繊維の含有率が2質量%以上40質量%以下であり、合成樹脂短繊維として、融点160℃以上の樹脂を芯成分とし、ポリエチレン樹脂を鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含み、前記芯鞘型複合繊維の芯成分がポリプロピレン樹脂であり、平均繊維径が6μm以下であることを特徴とする固体電解質担持用不織布。
)(1)に記載の固体電解質担持用不織布と、該固体電解質担持用不織布の表面及び内部に担持されている固体電解質とを有していることを特徴とする固体電解質シート。
本発明の固体電解質担持用不織布は、厚みが薄く、引張強度が強く、固体電解質を含む塗工液を塗工する際のプロセス走行性に優れる。また、リチウムイオン伝導性の固体電解質と本発明の固体電解質担持用不織布とを有する固体電解質シートは、自立性、可撓性に優れるという効果を達成できる。
最初に、全固体リチウム電池の構造の一例について説明する。全固体リチウム電池は、正極集電部材、正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層、負極集電部材から構成される。なお、本発明は後述の実施形態に限定されるものではない。
正極集電部材と負極終電部材は、導電体であれは、特に限定されず、例えば、銅、マグネシウム、ステンレス鋼、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、ゲルマニウム、インジウム、リチウム、又は、これらの合金等からなる板状体や箔状体等が使用できる。
正極活物質層は、固体電解質、正極活物質、正極層導電助剤及び正極層結着剤を含有する。
固体電解質は、第1成分として、少なくとも硫化リチウムを含み、第2成分として、硫化ケイ素、硫化リン及び硫化ホウ素からなる群より選ばれる一つ以上の化合物を含むことが好ましく、特に、LiS-Pが好ましい。この硫化物系の固体電解質は、リチウムイオン伝導性が他の無機化合物より高いことが知られている。LiS-Pに、さらに、SiS,GeS,B等の硫化物を含んでいてもよい。また、固体電解質には、適宜、Li、ハロゲン、ハロゲン化合物等を添加した固体電解質を用いても良い。
また、硫化物系固体電解質は、LiSとPとを溶融温度以上に加熱して所定の比率で両方を溶融混合し、所定時間保持した後、急冷することにより得られる(溶融急冷法)。熱処理の所定時間は、0.1時間以上が好ましい。急冷方法としては、液体窒素中に投入して急冷し、目的とするガラス化した固体電解質を得る方法、ガラス管中に真空封止し、これを加熱溶融した後、氷水などで急冷する方法等が挙げられる。また、LiS-Pメカニカルミリング法によって得ることもできる。上記のLiS-Pで示される硫化物としては、LiSとPをモル比で、好ましくは50:50~80:20、より好ましくは60:40~75:25で混合させて得られる硫化物が挙げられる。
固体電解質として、硫化物系固体電解質の他に、無機化合物からなるリチウムイオン伝導体を無機固体電解質として含有するものが例示される。このようなリチウムイオン伝導体としては、例えば、LiN、LISICON、LiPON(Li3+yPO4-x)、Thio-LISICON(Li3.25Ge0.250.75)、LiO-Al-TiO-P(LATP)がある。
固体電解質は、非晶質、ガラス状、結晶(結晶化ガラス)等の構造をとる。正極活物質層、負極活物質層、電解質層の各々における固体電解質は、例えば、非晶体と結晶体との混合物から構成される。非晶体は、前述の硫化物の第1成分と第2成分とを混合して、メカニカルミリング法によって処理することによって製造することができる。結晶体は非晶質体を焼成処理することなどによって製造することができる。
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出することが可能な物質であれば、特に限定されず、例えば、コバルト酸リチウム(LCO)、ニッケル酸リチウム、ニッケルコバルト酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(以下、「NCA」と略記する場合がある)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(以下、「NCM」と略記する場合がある)、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、硫化ニッケル、硫化銅、硫黄、酸化鉄、酸化バナジウム等が挙げられる。これらの正極活物質は、単独で用いられても良く、2種類以上が併用されても良い。
正極活物質としては、特に、層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩であることが好ましい。ここで言う「層状」とは、薄いシート状の形状のことを意味し、「岩塩型構造」とは、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型構造のことであり、陽イオン及び陰イオンのそれぞれが形成する面心立方格子が、互いに単位格子の稜の1/2だけずれた構造を指す。このような層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩として、例えば、Li1.1-xNiCoAl1-y-z(NCA)又はLi1.1-xNiCoMn1-y-z(NCM)(0<x<0.6、0<y<1、0<z<1かつy+z<1)で表される3元系の遷移金属酸化物のリチウム塩が挙げられる。
正極層導電助剤は、正極活物質間に導電ネットワークを構成して、正極活物質層の抵抗を低減するために添加される。導電助剤は正極活物質層中に適量含有されれば良い。正極層導電助剤としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、天然黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。正極層の導電性を高めるものであれば特に制限されず、単独で使用されても良いし、複数を併用しても良い。
正極層結着剤としては、例えば、SBS(スチレンブタジエンスチレンブロック重合体)、SEBS(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック重合体)、スチレン-スチレンブタジエン-スチレンブロック重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー類、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、NR(天然ゴム)、IR(イソプレンゴム)、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体)、NBR(ニトリルゴム)、CR(クロロプレンゴム)、及びこれらの部分水素化物、あるいは完全水素化物、ポリアクリル酸エステルの共重合体、PVDF(ポリビニリデンフロライド)、PDF-HFP(ビニリデンフロライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)及び、それらのカルボン酸変性物、CM(塩素化ポリエチレン)、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等が例示される。その他、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリシクロオレフィン、シリコン樹脂等が例示される。
正極活物質層中の固体電解質、正極活物質、正極層導電助剤、及び、正極層結着剤の含有量の比については、特に制限されない。例えば、正極活物質層の総質量に対して、固体電解質は3~50質量%、正極活物質は45~95質量%、正極層導電助剤は1~10質量%、正極層結着剤は0.5~4質量%であることが好ましい。
固体電解質層は、本発明の固体電解質シートからなり、後述の担持用不織布及び、担持用不織布の表面及び内部に、固体電解質が電解質結着剤とともに含まれることによって、自立性の固体電解質シートとして作製される。固体電解質、特に、硫化物系固体電解質は反応性が高いため、固体電解質結着剤は、極性官能基を有しない非極性樹脂である方が好ましい。固体電解質層の電解質結着剤としては、前述の正極層結着剤として例示した結着剤を含むのが好ましい。
固体電解質層内において、固体電解質及び電解質結着剤の含有量の比については、特に制限されない。例えば、固体電解質及び電解質結着剤の総質量に対して、固体電解質は95~99.5質量%、電解質結着剤は0.5~5質量%であることが好ましい。
本発明の固体電解質シートを製造する方法について説明する。本発明の固体電解質シートは、固体電解質を溶媒に溶かしてスラリー化し、担持用不織布に塗工し、乾燥することで作製できる。固体電解質のスラリー化に用いる媒体は、固体電解質の性能に悪影響を与えないものであれば、特に限定されない。該媒体としては、例えば、非水系溶媒が挙げられる。非水系溶媒としては、例えば、乾燥ヘプタン、トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート等の電解液に用いられる溶媒が挙げられる。媒体の水分含有量は100ppm以下が好ましく、より好ましくは50ppm以下である。
スラリー化した固体電解質(固体電解質を含む塗工液)を担持用不織布の両面又は片面に塗工する場合の装置としては、各種の塗工装置を用いることができる。例えば、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ロールコーター、キスタッチコーター、ディップコーター等の各種コーターを用いることができる。
スラリー化した固体電解質を塗工後、乾燥を行い、固体電解質の塗層を形成する。乾燥には、熱風、ヒーター、高周波等による乾燥装置を用いることができる。乾燥は、固体電解質シートの両面から行っても良いし、片面から行っても良い。この時、スラリー中の溶媒の取り除きが不十分にならないように、乾燥条件を調整する必要がある。例えば、熱風乾燥の場合、温度と風量を最適に調整する必要がある。乾燥した固体電解質シートをそのまま用いることもできるが、さらに加圧して強度を高くすることもできる。加圧には、シートプレスやロールプレス等を用いることができる。加圧時の圧力が低いと、固体電解質層の厚さが不均一になるおそれがあり、該圧力が高いと、固体電解質と担持用不織布を含めて破損するおそれがある。
負極活物質層は、負極活物質と負極層結着剤と固体電解質を含有する。負極活物質層結着剤としては、前述の正極層結着剤と同様の結着剤を使用することができる。
負極活物質として、黒鉛系活物質グラファイト(例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛と天然黒鉛との混合物、人造黒鉛を被覆した天然黒鉛等)、金属リチウム、シリコン合金、スズ合金などが挙げられる。グラファイトの粉末は、無機化合物や金属などで少なくとも一部分を被覆しても良い。
負極活物質、固体電解質、負極層結着剤の含有量の比については、特に制限されない。例えば、負極活物質層の総質量に対して、硫化物系固体電解質は0~40質量%、負極活物質は60~99.5質量%、負極層結着剤は0.5~5質量%含んでいることが好ましい。
次に、本発明の固体電解質担持用不織布について説明する。
本発明の固体電解質担持用不織布は、フィブリル化耐熱性繊維と合成樹脂短繊維とを含有してなり、該固体電解質担持用不織布に含まれる全繊維成分に対して、フィブリル化耐熱性繊維の含有率が2質量%以上40質量%以下であり、合成樹脂短繊維として、融点160℃以上の樹脂を芯成分とし、ポリエチレン樹脂を鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含むことを特徴とする。
本発明において、フィブリル化耐熱性繊維としては、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンゾイミダゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリテトラフルオロエチレン等の耐熱性樹脂からなるフィブリル化繊維が用いられる。これらの中でも、フィブリル化しやすい全芳香族ポリアミドが好ましい。
本発明におけるフィブリル化耐熱性繊維の変法濾水度は0ml以上700ml未満であることが好ましく、より好ましくは0ml以上600ml未満であり、さらに好ましくは0ml以上450ml未満である。変法濾水度が700ml以上の場合、フィブリル化があまり進んでいないことから、太い幹繊維が多く存在するため、固体電解質の含浸性や塗層の平滑性が低下する場合がある。また、太い幹繊維の存在により、リチウムイオン伝導性を阻害される場合や、固体電解質の担持性が低下する場合がある。一方、変法濾水度が0ml未満である場合、フィブリル化耐熱性繊維のフィブリル化が進み過ぎて、一定量の芯鞘型複合繊維で接合する細い繊維の本数が増えるため、担持用不織布の引張強度が低下する場合や固体電解質が担持用不織布の内部に入り込みにくくなり、リチウムイオン伝導性が悪化する場合がある。フィブリル化耐熱性繊維のフィブリル化が進むと、変法濾水度は下がり続ける。そして、変法濾水度が0mlに達した後も、さらにフィブリル化すると、繊維がメッシュを通りすぎるようになり、変法濾水度が逆に上昇し始める。本発明では、このように、変法濾水度が逆上昇し始めた状態を「変法濾水度が0ml未満」と称している。
本発明において、変法濾水度とは、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの80メッシュ金網を用い、試料濃度を0.1%にした以外はJIS P8121-2:2012に準拠して測定した値のことである。
フィブリル化耐熱性繊維において、質量加重平均繊維長は、0.02mm以上1.50mm以下であることが好ましい。また、長さ加重平均繊維長は、0.02mm以上1.00mm以下であることが好ましい。平均繊維長が好ましい範囲よりも短い場合、担持用不織布からフィブリル化耐熱性繊維が脱落する場合がある。平均繊維長が好ましい範囲よりも長い場合は、固体電解質の含浸性や塗層の平滑性が低下する場合がある。
本発明において、フィブリル化耐熱性繊維の質量加重平均繊維長と長さ加重平均繊維長は、KajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して、投影繊維長(Proj)モードにおいて測定した質量加重平均繊維長(L(w))と長さ加重平均繊維長(L(l))である。
フィブリル化耐熱性繊維の平均繊維幅は、0.5μm以上30μm以下が好ましく、3μm以上25μm以下がより好ましく、5μm以上20μm以下がさらに好ましい。平均繊維幅が30μmを超えた場合、スラリー化した固体電解質の塗工性や平滑性が悪化する場合があり、平均繊維幅が0.5μm未満の場合、担持用不織布から脱落する場合がある。
本発明において、フィブリル化耐熱性繊維の平均繊維幅は、KajaaniFiberLabV3.5(Metso Automation社製)を使用して測定した繊維幅(Fiber Width)である。
フィブリル化耐熱性繊維は、耐熱性繊維をリファイナー、ビーター、ミル、摩砕装置、高速の回転刃によりせん断力を与える回転式ホモジナイザー、高速の回転する円筒の内刃と固定された外刃との間でせん断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも20MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより、繊維にせん断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等を用いて処理することによって得ることができる。
本発明の担持用不織布に含まれる全繊維成分に対して、フィブリル化耐熱性繊維の含有率は、2質量%以上40質量%以下である。5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。フィブリル化耐熱性繊維の含有率が2質量%未満である場合、担持用不織布の引張強度は強くなるものの、担持用不織布表面がフィルム化しやすく、固体電解質が担持用不織布内部に入り込みにくくなる場合や固体電解質の担持性が低下する場合がある。一方、フィブリル化耐熱性繊維の含有率が40質量%を超えた場合、担持用不織布の坪量が低いと、引張強度が悪化するため、プロセス走行性が悪化する。また、担持用不織布が緻密になり過ぎるため、固体電解質が内部に入り込みにくくなる場合や固体電解質の担持性が低下する場合がある。
本発明において、合成樹脂短繊維として、融点160℃以上の樹脂を芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含むことを特徴としている。本明細書で、特に断りのない限り、「融点160℃以上の樹脂を芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維」を「芯鞘型複合繊維」と略記する場合がある。芯鞘型複合繊維は、フィブリル化されていない短繊維である。
本発明において、該担持用不織布に含まれる全繊維成分に対して、芯鞘型複合繊維の割合は60~98質量%が好ましく、70~95質量%であることがより好ましく、80~90質量%であることがさらに好ましい。該担持用不織布が芯鞘型複合繊維を含有すると、芯鞘型複合繊維の溶融により、繊維同士の接着点が強固になり、担持用不織布の引張強度が向上するという効果が得られる。また、担持用不織布表面に存在する芯鞘型複合繊維の溶融により、担持用不織布表面の接着も強固となり、表面の毛羽が抑えられるという効果が得られる。
芯鞘型複合繊維の割合が60質量%より少ない場合、繊維同士の接着点が増えないため、引張強度を向上させる効果が低下する場合がある。また、目が詰まり過ぎることにより、担持用不織布内部に固体電解質が入り込みにくくなり、含浸性が低下し、担持用不織布と塗層の接着性が悪化する場合がある。一方、芯鞘型複合繊維の割合が98質量%より多い場合、芯鞘型複合繊維同士の接着点が増加し、引張強度は強くなるが、担持用不織布表面がフィルム化しやすく、固体電解質が担持用不織布内部に入り込まないため、含浸性の悪化や担持用不織布と塗層との接着性の悪化が起こり、リチウムイオン伝導性が阻害される場合がある。
本発明において、芯鞘型複合繊維の芯成分として用いられる融点160℃以上の樹脂には、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエーテル、全芳香族ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリ-p-フェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-ビニルアルコール共重合体などの樹脂を挙げることができる。
芯成分として用いられる融点160℃以上の樹脂が異なる芯鞘型複合繊維は、単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも、芯成分として、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミド、ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリアミドが好ましく、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレンがさらに好ましく、ポリプロピレンが、紡糸の点から特に好ましい。
芯成分として用いられる樹脂の融点が160℃以上であることにより、芯部分が形状を保つことができる。樹脂の融点は163℃以上がより好ましい。融点は、JIS K7121:2012に準拠して測定した値である。
本発明において、鞘部分にポリエチレン樹脂を用いた芯鞘型複合繊維を含有させることにより、他の合成樹脂短繊維と比較して、フィブリル化耐熱性繊維と均一に絡み合ってネットワーク構造を形成しやすく、熱をかけることで溶融し、表面の平滑性が高く、緻密性や引張強度に優れ、固体電解質の担持性に優れた固体電解質担持用不織布を得ることができる。
鞘成分のポリエチレンの融点は115℃以上であることが、担持用不織布表面の過度のフィルム化を抑える効果の点から好ましく、140℃以下であることが、芯鞘型複合繊維の接着性を高める効果の点から好ましい。融点は、JIS K7121:2012に準拠して測定した値である。
芯鞘型複合繊維の平均繊維径は、6μm以下が好ましく、1.0~6.0μmがより好ましく、1.5~5.8μmがさらに好ましく、2.0~5.5μmが特に好ましい。平均繊維径が1.0μm未満の場合、繊維が細すぎて、担持用不織布がフィルム化しやすくなる。一方、平均繊維径が6μmを超えて大きくなるほど、質量あたりの繊維本数が減るため、繊維同士の接着部分が減少し、担持用不織布の引張強度が低下する場合がある。より好ましくは、平均繊維径を1.0~6.0μmにすることにより、担持用不織布を所望の薄さにすることができ、また、緻密性も十分とすることができ、担持用不織布と塗層との接着性やスラリー化した固体電解質の含浸性を良好にすることができる。
芯鞘型複合繊維の平均繊維径は、担持用不織布断面の走査型電子顕微鏡観察により、担持用不織布を形成する繊維から無作為に選んだ40本の各繊維の断面積を計測し、繊維の断面形状が真円であると見なして繊維径を算出した際の、40本の繊維径の平均値である。本発明においては、全ての芯鞘型複合繊維の繊維径が6.0μm以下であることが好ましい。
本発明において、担持用不織布は、フィブリル化耐熱性繊維と芯鞘型複合繊維だけでなく、芯鞘型複合繊維以外の合成樹脂短繊維を含有しても良い。芯鞘型複合繊維以外の合成樹脂短繊維としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ジエン、ポリウレタン、フェノール、メラミン、フラン、尿素、アニリン、不飽和ポリエステル、フッ素、シリコン、これらの誘導体等の合成樹脂からなる、フィブリル化されていない短繊維が挙げられる。芯鞘型複合繊維以外の合成樹脂短繊維を含むことによって、担持用不織布の引張強度や突刺強度を強くすることができる。
芯鞘型複合繊維以外の合成樹脂短繊維は、単一の樹脂からなる繊維(単繊維)であっても良いし、2種以上の樹脂からなる複合繊維であっても良い。また、本発明の担持用不織布に含まれる芯鞘型複合繊維以外の合成樹脂短繊維は、1種でも良いし、2種類以上を組み合わせて使用しても良い。複合繊維としては、芯鞘型、偏芯型、サイドバイサイド型、海島型、オレンジ型、多重バイメタル型が挙げられる。
芯鞘型複合繊維以外の合成樹脂短繊維の繊度は、0.01dtex以上0.6dtex以下が好ましく、0.02dtex以上0.3dtex以下がより好ましい。繊度が0.6dtexを超えた場合、厚さ方向における繊維本数が少なくなるため、担持用不織布の細孔径分布が広くなり、その結果として、固体電解質スラリーの塗工性が悪化しやすく、担持用不織布と塗層との接着性も悪化する場合がある。一方、繊度が0.01dtex未満の場合、繊維が非常に高価になり、繊維の安定製造が困難になる場合や、湿式抄紙法により担持用不織布を製造する場合、脱水性が低下するため、生産性が低下する場合がある。
合成樹脂短繊維の繊維長としては、1mm以上10mm以下が好ましく、1mm以上5mm以下がより好ましい。繊維長が10mmを超えた場合、地合不良となることがある。一方、繊維長が1mm未満の場合、担持用不織布の引張強度が低くなって、塗層を形成する際に担持用不織布が破損する場合がある。なお、合成樹脂短繊維として含まれている芯鞘型複合繊維における好ましい繊維長も上記と同様の範囲である。
本発明の固体電解質担持用不織布は、フィブリル化耐熱性繊維と合成樹脂短繊維以外の繊維を含有しても良い。例えば、セルロース繊維、セルロース繊維のパルプ化物やフィブリル化物、合成樹脂からなるフィブリッド、合成樹脂からなるパルプ化物、無機繊維等が挙げられる。無機繊維としては、ガラス、アルミナ、シリカ、セラミックス、ロックウールが挙げられる。セルロース繊維としては、天然セルロース、再生セルロース等が挙げられる。
本発明の固体電解質担持用不織布の厚みは、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましく、20μm以上がさらに好ましい。また、35μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。担持用不織布の厚みを上記の範囲とした場合においても、本発明の担持用不織布では、スラリー化した固体電解質の塗工工程で必要な引張強度を維持できるため、担持用不織布の抄造工程も含め、各工程での作業性を損なうことがない。担持用不織布の厚みが35μmを超えると、担持用不織布のリチウムイオン伝導性が低下する場合がある。また、電池を高容量にすることができなくなる場合がある。担持用不織布の厚みが10μm未満であると、担持用不織布の引張強度が弱くなり過ぎて、担持用不織布の取り扱い時やスラリー化した固体電解質の塗工時に破損するおそれがあり、プロセス走行性が悪化する場合がある。
本発明の固体電解質担持用不織布の密度は、0.25g/cm以上0.50g/cm以下が好ましく、0.28g/cm以上0.35g/cm以下がより好ましい。密度が0.25g/cm未満である場合、担持用不織布の引張強度が弱くなり過ぎて、担持用不織布の取り扱い時や塗工時に破損するおそれがあり、プロセス走行性が悪化する場合がある。0.50g/cmを超えた場合、担持用不織布が緻密になり、フィルム化が進み、スラリー化した固体電解質の含浸性が悪化し、その結果、固体電解質シートの自立性が悪化する場合がある。
本発明の固体電解質担持用不織布は、湿式抄造法によって製造される湿式不織布であることが好ましい。湿式抄造法は繊維を水に分散して均一な抄紙スラリーとし、この抄紙スラリーを抄紙機で漉きあげて湿式不織布を製作する。抄紙機としては、円網抄紙機、長網抄紙機、傾斜型抄紙機、傾斜短網抄紙機、これらの複合機が挙げられる。湿式不織布を製造する工程において、必要に応じて水流交絡処理を施しても良い。湿式不織布の加工処理として、熱処理、カレンダー処理、熱カレンダー処理などを施しても良い。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例において百分率(%)及び部は、断りのない限り全て質量基準である。また、塗工量は乾燥塗工量である。なお、実施例6は参考例である。
実施例1
<不織布の作製>
芯成分がポリプロピレン樹脂で、鞘成分がポリエチレン樹脂である繊度0.2dtex(平均繊維径5.6μm)、繊維長3mmの芯鞘型複合繊維98部と、全芳香族ポリアミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を、高圧ホモジナイザーを用いて、変法濾水度50mlにまでフィブリル化させたフィブリル化耐熱性繊維2部とを、パルパーにより水中に分散し、濃度0.5質量%の均一な抄紙スラリーを調製し、円網型抄紙機を用いて湿紙ウェブを得て、表面温度135℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、シートを得た。片方のロールがクロムメッキされた鋼製ロールであり、他方のロールが硬度ショアーD92の樹脂ロールであり、鋼製ロールの表面温度が128℃の熱カレンダー装置により、得られたシートを熱カレンダー処理し、坪量が8.5g/m、厚さ28μmの固体電解質担持用不織布を作製した。
<スラリー化した固体電解質の調製>
LiS-P(80:20モル%)非晶質粉末に、SBR(電解質層結着剤)のキシレン溶液をSBRが非晶質粉末の質量に対して1質量%となるように添加することで、1次混合液を調製した。さらに、この1次混合液に、NBR(電解質層結着剤)のキシレン溶液をNBRが非晶質粉末の質量に対して0.5質量%となるように添加することで、2次混合液を調製した。さらに、この2次混合液に、粘度調整のために、脱水キシレンを適量添加することで、3次混合液を調製した。さらに、粉末の分散性を向上させるため、空間、混合液、ジルコニアボールがそれぞれ混錬容器の全容積に対して、3分の1ずつを占めるように、3次混合液及び直径5mmのジルコニアボールを混練容器に投入した。これにより調製された4次混合液を自転公転ミキサーに投入し、3000rpmで3分間攪拌することで、スラリー化した固体電解質を調製した。
<固体電解質シートの作製>
実施例1の固体電解質担持用不織布は、連続して上方からガイドローラーを経て、前述のスラリー化した固体電解質を入れた塗工槽内に導かれる。塗工槽内において、スラリー化した固体電解質に浸漬され、固体電解質を担持用不織布の内部まで含浸させることを目的として、塗工槽内のロールプレスでニップされ、ガイドローラーを経て上に引き上げられる。その後、担持用不織布の両面は、プラスチックブレードを当てて平滑にされ、余分なスラリーが掻き落とされ、固体電解質を含浸させた担持用不織布を熱風乾燥機に導き、両面から乾燥し、固体電解質シートを作製した。
実施例2
芯成分がポリプロピレン樹脂で、鞘成分がポリエチレン樹脂である繊度0.2dtex(平均繊維径5.6μm)、繊維長3mmの芯鞘型複合繊維90部と、全芳香族ポリアミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を、高圧ホモジナイザーを用いて、変法濾水度50mlにまでフィブリル化させたフィブリル化耐熱性繊維10部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量8.5g/m、厚さ28μmの固体電解質担持用不織布を作製した。ついで、実施例1と同様の方法で、固体電解質シートを作製した。
実施例3
芯成分がポリプロピレン樹脂で、鞘成分がポリエチレン樹脂である繊度0.2dtex(平均繊維径5.6μm)、繊維長3mmの芯鞘型複合繊維80部と、全芳香族ポリアミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を、高圧ホモジナイザーを用いて、変法濾水度350mlにまでフィブリル化させたフィブリル化耐熱性繊維20部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量8.5g/m、厚さ28μmの固体電解質担持用不織布を作製した。ついで、実施例1と同様の方法で、固体電解質シートを作製した。
実施例4
芯成分がポリプロピレン樹脂で、鞘成分がポリエチレン樹脂である繊度0.2dtex(平均繊維径5.6μm)、繊維長3mmの芯鞘型複合繊維70部と、全芳香族ポリアミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を、高圧ホモジナイザーを用いて、変法濾水度350mlにまでフィブリル化させたフィブリル化耐熱性繊維30部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量8.1g/m、厚さ26μmの固体電解質担持用不織布を作製した。ついで、実施例1と同様の方法で、固体電解質シートを作製した。
実施例5
芯成分がポリプロピレン樹脂で、鞘成分がポリエチレン樹脂である繊度0.2dtex(平均繊維径5.6μm)、繊維長3mmの芯鞘型複合繊維60部と、全芳香族ポリアミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を、高圧ホモジナイザーを用いて、変法濾水度350mlにまでフィブリル化させたフィブリル化耐熱性繊維40部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量8.5g/m、厚さ28μmの固体電解質担持用不織布を作製した。ついで、実施例1と同様の方法で、固体電解質シートを作製した。
実施例6
芯成分がポリプロピレン樹脂で、鞘成分がポリエチレン樹脂である繊度0.5dtex(平均繊維径8.1μm)、繊維長3mmの芯鞘型複合繊維80部と、全芳香族ポリアミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を、高圧ホモジナイザーを用いて、変法濾水度350mlにまでフィブリル化させたフィブリル化耐熱性繊維20部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量8.5g/m、厚さ28μmの固体電解質担持用不織布を作製した。ついで、実施例1と同様の方法で、固体電解質シートを作製した。
実施例7
芯成分がポリプロピレン樹脂で、鞘成分がポリエチレン樹脂である繊度0.2dtex(平均繊維径5.6μm)、繊維長3mmの芯鞘型複合繊維60部と、0.3dtex(平均繊維径6.7μm)、繊維長3mmのポリプロピレン短繊維20部と、全芳香族ポリアミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を、高圧ホモジナイザーを用いて、変法濾水度350mlにまでフィブリル化させたフィブリル化耐熱性繊維20部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量8.5g/m、厚さ28μmの固体電解質担持用不織布を作製した。ついで、実施例1と同様の方法で、固体電解質シートを作製した。
比較例1
芯成分がポリプロピレン樹脂で、鞘成分がポリエチレン樹脂である繊度0.2dtex(平均繊維径5.6μm)、繊維長3mmの芯鞘型複合繊維100部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量8.5g/m、厚さ28μmの固体電解質担持用不織布を作製した。ついで、実施例1と同様の方法で、固体電解質シートを作製した。
比較例2
芯成分がポリプロピレン樹脂で、鞘成分がポリエチレン樹脂である繊度0.2dtex(平均繊維径5.6μm)、繊維長3mmの芯鞘型複合繊維98.6部と、全芳香族ポリアミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を、高圧ホモジナイザーを用いて、変法濾水度50mlにまでフィブリル化させたフィブリル化耐熱性繊維1.4部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量8.5g/m、厚さ28μmの固体電解質担持用不織布を作製した。ついで、実施例1と同様の方法で、固体電解質シートを作製した。
比較例3
芯成分がポリプロピレン樹脂で、鞘成分がポリエチレン樹脂である繊度0.2dtex(平均繊維径5.6μm)、繊維長3mmの芯鞘型複合繊維59.5部と、全芳香族ポリアミド繊維のパルプ状物(平均繊維長1.7mm、平均繊維径10μm)を、高圧ホモジナイザーを用いて、変法濾水度350mlにまでフィブリル化させたフィブリル化耐熱性繊維40.5部とした以外、実施例1と同様な方法で坪量8.5g/m、厚さ28μmの固体電解質担持用不織布を作製した。ついで、実施例1と同様の方法で、固体電解質シートを作製した。
比較例4
繊度0.1dtex、繊維長3mmの配向結晶化PET系合成樹脂短繊維を50部と、繊度0.2dtex、繊維長3mmの単一成分型バインダー用未延伸PET系合成樹脂短繊維を50部とをパルパーにより水中に分散し、濃度0.5質量%の均一な抄紙スラリーを調製し、円網型抄紙機を用いて湿紙ウェブを得て、表面温度135℃のシリンダードライヤーによって乾燥し、シートを得た。片方のロールがクロムメッキされた鋼製ロールであり、他方のロールが硬度ショアーD92の樹脂ロールであり、鋼製ロールの表面温度が195℃の熱カレンダー装置により、熱カレンダー処理を行い、坪量が8.0g/m、厚さ25μmの固体電解質担持用不織布を作製した。ついで、実施例1と同様の方法で、固体電解質シートを作製した。
実施例及び比較例の固体電解質担持用不織布及び固体電解質シートについて、下記物性の測定と評価を行い、結果を表1及び表2に示した。
<不織布の坪量>
JIS P8124:2011に準拠して、不織布の坪量を測定した。
<不織布の厚さ>
JIS B7502:2016に規定された外側マイクロメーターを用いて、5N荷重時の厚さを測定した。
<不織布の引張強度>
各固体電解質担持用不織布につき、長辺が流れ方向になるように、流れ方向250mm×幅方向50mmのサンプル片を切り出し、卓上型材料試験機(株式会社オリエンテック製、商品名STA-1150)を用いて、JIS P8113:2006に準じて、引張速度200mm/minで引張試験を行った。引張応力の最大値をもって引張強度とした。
<プロセス走行性>
固体電解質シートを作製する際に、固体電解質担持用不織布をスラリー化した固体電解質に連続して浸漬し、プレスロールでニップし、乾燥する際に、担持用不織布が工程の張力に耐えられず、担持用不織布の幅方向における収縮や走行中の皺を目視にて観察し、次の評価基準で評価した。
○:走行中の担持用不織布において、幅の収縮や皺が発生しない。
△:走行中の担持用不織布において、幅がわずかに収縮するが、皺が発生しない。
×:走行中の担持用不織布において、幅が収縮し、皺が発生する。
<固体電解質の含浸性>
固体電解質シートの断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、固体電解質の含浸状態を次の評価基準で評価した。
○:担持用不織布の内部まで十分に固体電解質が含浸されている。
△:担持用不織布の内部に固体電解質が含浸されていない部分がわずかに見られる。
×:担持用不織布の内部に固体電解質が含浸されていない部分がある。
<固体電解質シートの自立性>
固体電解質シートを100mm角のトムソン刃で打ち抜き、得られた固体電解質シートをピンセットで挟み、揺らして、自立性を目視にて観察し、次の評価基準で評価した。
○:シート形状を維持でき、固体電解質の脱落がない。
△:シート形状を維持できているが、固体電解質がわずかに脱落する。
×:固体電解質が不織布から脱落する。
<固体電解質シートの可撓性>
固体電解質シートを、3cmφの丸棒に巻き付け、折れ曲がりや固体電解質の脱落がないかを目視にて観察し、次の評価基準で評価した。
○:折れ曲がりや固体電解質の脱落がない。
△:折れ曲がりと固体電解質の脱落がわずかに見られる。
×:折れ曲がりや固体電解質の脱落がある。
Figure 0007019531000001
Figure 0007019531000002
表1に示したように、実施例1~7で作製した固体電解質担持用不織布は、フィブリル化耐熱性繊維と合成樹脂短繊維とを含有し、該担持用不織布に含まれる全繊維成分に対して、フィブリル化耐熱性繊維の含有率が2質量%以上40質量%以下であり、合成樹脂短繊維として、ポリプロピレン樹脂を芯成分とし、ポリエチレン樹脂を鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含んでいる。実施例1~7の固体電解質担持用不織布は、引張強度が強く、プロセス走行性に優れていた。また、実施例1~7の固体電解質シートは、自立性と可撓性に優れていた。
実施例6の担持用不織布は、ポリプロピレン樹脂を芯成分とし、ポリエチレン樹脂を鞘成分とする芯鞘型複合繊維の平均繊維径が6μmを超え、8μmの場合である。固体電解質の含浸性には問題がないが、引張強度の低下により、実施例1~5及び7の担持用不織布と比較して、プロセス走行性の低下が見られた。
比較例1の担持用不織布は、フィブリル化耐熱性繊維を含まないため、担持用不織布の表面がフィルム化しやすくなる。そのため、引張強度が強くなって、プロセス走行性に優れるものの、固体電解質が担持用不織布内部に含浸しにくくなった。その結果、固体電解質シートの自立性の低下が見られた。
比較例2の担持用不織布は、フィブリル化耐熱性繊維の含有率が2質量%未満の場合である。比較例1と同様、担持用不織布の表面がフィルム化しやすくなる。そのため、引張強度が強くなって、プロセス走行性に優れるものの、固体電解質が担持用不織布内部に含浸しにくくなった。
比較例3の担持用不織布は、フィブリル化耐熱性繊維の含有率が40質量%を超えた場合である。担持用不織布が緻密になり過ぎたため、担持用不織布内部への固体電解質の含浸性が低下し、その結果、固体電解質シートの自立性が低下した。
比較例4の担持用不織布は、ポリエチレンテレフタレート(PET)系繊維のみで構成した場合である。低密度とした場合、引張強度が低くなるため、プロセス走行性に問題があった。
本発明の固体電解質担持用不織布及び固体電解質シートは、全固体リチウム電池に好適に使用できる。

Claims (2)

  1. 不織布の表面及び内部に固体電解質を担持させる固体電解質担持用不織布において、該固体電解質担持用不織布はフィブリル化耐熱性繊維と合成樹脂短繊維とを含有してなり、該固体電解質担持用不織布に含まれる全繊維成分に対して、フィブリル化耐熱性繊維の含有率が2質量%以上40質量%以下であり、合成樹脂短繊維として、融点160℃以上の樹脂を芯成分とし、ポリエチレン樹脂を鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含み、前記芯鞘型複合繊維の芯成分がポリプロピレン樹脂であり、平均繊維径が6μm以下であることを特徴とする固体電解質担持用不織布。
  2. 請求項1に記載の固体電解質担持用不織布と、該固体電解質担持用不織布の表面及び内部に担持されている固体電解質とを有していることを特徴とする固体電解質シート。
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