実施形態に係る眼科検査装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[構成]
図1に、実施形態に係る眼科検査装置の外観構成の概略を模式的に示す。実施形態に係る眼科検査装置1は、自覚検査と他覚測定とが可能な眼科装置である。自覚検査は、被検者の眼(被検眼)に視標を呈示し、その見え方に関する被検者からの応答に基づいて被検眼に関する情報を取得するための検査である。他覚測定は、被検者からの応答を参照することなく、主として物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得するための測定である。
眼科検査装置1は、自覚検査において被検眼に視標を呈示した光学系を用いて、カバーテストとカバーアンカバーテスト等の眼位検査が可能である。カバーテストは、被検者に視標を両眼視させた状態で一方の眼を遮蔽したときの他方の眼の眼位の変化を評価するための検査である。カバーアンカバーテストは、片眼を遮蔽した状態から遮蔽を外したときの遮蔽されていた眼の眼位の変化を評価するための検査である。
眼科検査装置1は、有線又は無線の通信路を介して図示しない検者用コントローラ(例えば、タブレット端末)や被検者用コントローラ(例えば、コントロールレバーユニット)などと通信接続が可能である。眼科検査装置1は、検者用コントローラや被検者用コントローラに対する操作に基づいて制御される。以下では、被検者から見て左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とし、被検者から見て測定ヘッド100の奥行き方向をZ方向として説明する場合がある。
眼科検査装置1は、測定ヘッド100と、制御装置200とを含む。測定ヘッド100には、上記の自覚検査や他覚測定等を行うための光学系や光学素子を移動させる移動機構系が設けられている。制御装置200は、測定ヘッド100に対する制御や、検者用コントローラや被検者用コントローラに対する制御を行う。
眼科検査装置1は、検眼用テーブル3を備える。検眼用テーブル3は、測定ヘッド100の支持や検者用コントローラ又は被検者用コントローラの載置などのための机である。検眼用テーブル3は、支持部4によって床の上に支持された状態で設置される。検眼用テーブル3は、高さを上下に調節可能である。
検眼用テーブル3には、支柱5が立設される。支柱5の先端部には、横アーム6の基端部が保持される。横アーム6の先端部には、測定ヘッド100が吊り下げられている。例えば、支柱5は、アーム移動機構7により軸回り方向(矢印方向j、矢印方向k)に回動可能である。それにより、横アーム6は、軸回り方向に回動される。すなわち、測定ヘッド100は、軸回り方向に回動される。それにより、検眼用テーブル3の上方の検査空間から測定ヘッド100を退避させることが可能になり、検眼用テーブル3上の空きスペースを利用して効率的に検査を進めることができるようになる。
アーム移動機構7は、アーム上下動機構として、支柱5の先端部を上下方向(矢印方向h)に移動させるようにしてもよい。それにより、横アーム6は、上下方向に移動される。すなわち、測定ヘッド100は、上下方向に移動される。アーム移動機構7は、アーム伸縮機構として、検眼用テーブル3から上方に突出する支柱5を伸縮させることにより横アーム6を上下方向に移動させてもよい。この場合でも、測定部100を被検者の座高に合わせて上下したり、検眼用テーブル3の上方の検査空間から測定ヘッド100を退避させたりすることが可能になる。
測定ヘッド100を保管するための台などを別途に設け、前述の回動や上下方向の移動により測定ヘッド100を安定した位置に配置するようにしてもよい。この場合、測定ヘッド100の重さに起因した横アーム6への継続的な負荷の低減が可能になる。
アーム移動機構7は、操作者による操作を受け、手動により軸回り方向や上下方向に横アーム6を移動させることが可能である。アーム移動機構7は、電気的な機構で横アーム6を移動させてもよい。この場合、アーム移動機構7を移動させるための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、例えばパルスモータにより構成される。伝達機構は、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。
支持部4の側面には格納部9が設けられ、制御装置200などが格納される。なお、検眼用テーブル3の構成は、図1に示す構成に限定されるものではない。
〔測定ヘッド〕
測定ヘッド100は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rを含む。左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rには、それぞれ検眼窓130L、130Rが形成されている。被検者の左眼(左被検眼)は、検眼窓130Lを通じて検査が行われる。被検者の右眼(右被検眼)は、検眼窓130Rを通じて検査が行われる。
図2に、実施形態に係る測定ヘッド100の構成例のブロック図を示す。測定ヘッド100は、移動機構系110と、左眼用検査ユニット120Lと、右眼用検査ユニット120Rとを含む。移動機構系110は、横アーム6に吊り下げられる。左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rは、移動機構系110により独立に又は連動して3次元的に移動される。左眼用検査ユニット120Lは、左被検眼の検査用の光学系を収容する。右眼用検査ユニット120Rは、右被検眼の検査用の光学系を収容する。
(移動機構系)
移動機構系110は、水平動機構111と、回動機構112L、112Rと、上下動機構113L、113Rとを含む。移動機構系110は、アーム移動機構7をさらに含んでもよい。
水平動機構111は、回動機構112L、112R、上下動機構113L、113R、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rを水平方向(横方向(X方向)、前後方向(Z方向))に移動させる。それにより、被検眼の配置位置に応じて、検眼窓130L、130Rの水平方向の位置を調整することができる。水平動機構111は、例えば、パルスモータや送りネジなどを用いた公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて回動機構112L、112R等を水平方向に移動させる。水平動機構111は、操作者による操作を受け、前述の回動機構112L、112R等を水平方向に手動で移動させることも可能である。
回動機構112Lは、水平動機構111に連結された所定の第1軸を中心に上下動機構113L及び左眼用検査ユニット120Lを回動させる。第1軸は、略垂直方向の延びる軸であり、水平面に対して任意の角度で傾斜可能であってよい。回動機構112Lは、例えば、パルスモータや回動軸などを用いた公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて第1軸を中心に左眼用検査ユニット120L等を回動させる。回動機構112Lは、操作者による操作を受け、第1軸を中心に左眼用検査ユニット120L等を手動で回動させることも可能である。
回動機構112Rは、水平動機構111に連結された所定の第2軸を中心に上下動機構113R及び右眼用検査ユニット120Rを回動させる。第2軸は、第1軸と同様に略垂直方向の延びる軸であり、水平面に対して任意の角度で傾斜可能であってよい。第2軸は、第1軸から所定の距離だけ離間した位置に配置された軸である。第1軸と第2軸との間の距離は、調整可能である。回動機構112Rは、回動機構112Lの回動に連動して右眼用検査ユニット120R等を回動させてもよいし、回動機構112Lの回動とは独立に右眼用検査ユニット120R等を回動させてもよい。回動機構112Rは、回動機構112Lと同様の公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて第2軸を中心に右眼用検査ユニット120R等を回動させる。回動機構112Rは、操作者による操作を受け、第2軸を中心に右眼用検査ユニット120R等を手動で回動させることも可能である。
回動機構112L、112Rにより左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rを回動させることにより、左眼用検査ユニット120Lと右眼用検査ユニット120Rとの向きを相対的に変更することが可能である。例えば、左眼用検査ユニット120Lと右眼用検査ユニット120Rとが、被検者の左右眼の眼球回旋点を中心にそれぞれ逆方向に回転される。それにより、被検眼を開散、輻輳させることができる。
上下動機構113Lは、左眼用検査ユニット120Lを上下方向(Y方向)に移動させる。それにより、被検眼の配置位置に応じて、検眼窓130Lの高さ方向の位置を調整することができる。上下動機構113Lは、例えば、パルスモータや送りネジなどを用いた公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて左眼用検査ユニット120Lを上下方向に移動させる。上下動機構113Lは、操作者による操作を受け、左眼用検査ユニット120Lを上下方向に手動で移動させることも可能である。
上下動機構113Rは、右眼用検査ユニット120Rを上下方向に移動させる。それにより、被検眼の配置位置に応じて、検眼窓130Lの高さ方向の位置を調整することができる。上下動機構113Rは、上下動機構113Lによる移動に連動して右眼用検査ユニット120Rを移動させてもよいし、上下動機構113Lによる移動とは独立に右眼用検査ユニット120Rを移動させてもよい。上下動機構113Rは、上下動機構113Lと同様の公知の構成を備え、制御装置200からの制御信号を受けて右眼用検査ユニット120Rを上下方向に移動させる。上下動機構113Rは、操作者による操作を受け、右眼用検査ユニット120Rを上下方向に手動で移動させることも可能である。
(各検査ユニットの構成)
左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rは、個別に動作可能である。
左眼用検査ユニット120Lは、第1視標呈示部122Lと、第1他覚測定部123Lと、第1撮影部124Lとを含む。第1視標呈示部122Lは、複数の視標を選択的に左被検眼に呈示する。第1他覚測定部123Lは、左被検眼の他覚屈折測定を行うために用いられる。第1撮影部124Lは、左被検眼の前眼部を撮影する。左眼用検査ユニット120Lには、左被検眼と後述の偏向部材Pとの間に配置可能な複数の光学素子を選択的に左被検眼に適用する光学素子適用部が設けられていてもよい。
右眼用検査ユニット120Rは、第2視標呈示部122Rと、第2他覚測定部123Rと、第2撮影部124Rとを含む。第2視標呈示部122Rは、複数の視標を選択的に右被検眼に呈示する。第2他覚測定部123Rは、右被検眼の他覚屈折測定を行うために用いられる。第2撮影部124Rは、右被検眼の前眼部を撮影する。右眼用検査ユニット120Rには、右被検眼と後述の偏向部材Pとの間に配置可能な複数の光学素子を選択的に右被検眼に適用する光学素子適用部が設けられていてもよい。
左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rには、図3に示すような光学系が収容されている。左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rは、その光学系を動作させることで、左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれに対して、視標呈示部を用いた自覚検査と他覚測定部及び撮影部を用いた他覚屈折測定とを実行するように構成されている。検者や被検者は、コントローラ等を適宜操作することにより検査を行う。また、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rのそれぞれは、視標呈示部を用いたカバーテストやアンカバーテストと撮影部により取得された被検眼の画像の解析結果に基づく眼位の変化の算出とを実行するように構成されている。
各検査ユニットに上記の光学素子適用部が設けられる場合、光学素子適用部は、複数の光学素子と駆動機構とを含む。複数の光学素子は、被検眼の視機能を検査するための各種レンズからなる集合であり、例えば、球面レンズ、円柱レンズ及びプリズムレンズのうち少なくとも1つを含む。複数の光学素子は、検眼パラメータの種別ごとに組分けされる。例えば、検眼パラメータの種別は、球面度数、乱視度数、乱視軸角度、加入度数、瞳孔間距離、プリズム度数及びプリズム基底方向のうち少なくとも1つを含む。検眼パラメータの種別ごとの組分けとして、球面度数の組は、複数の球面レンズを含み、それぞれ異なる球面度数の球面レンズにより構成される。乱視度数の組は、複数の円柱レンズを含み、それぞれ異なる乱視度数の円柱レンズにより構成される。なお、乱視度数の組は、さらに乱視軸角度に合わせて回転可能となっていてもよい。加入度数の組は、挿脱可能なプラス度数の球面レンズやマイナス度数の球面レンズにより構成される。プリズム度数の組は、複数のプリズムレンズを含み、それぞれ異なるプリズム度数のプリズムレンズにより構成される。なお、プリズム度数の組は、さらにプリズム基底方向に合わせて回転可能となっていてもよい。瞳孔間距離は、被検眼の瞳孔間距離に合わせて設定される検査条件である。瞳孔間距離は、左眼用検査ユニット120Lと右眼用検査ユニット120Rの一方又は双方が、水平方向(図1の矢印方向m)にスライドすることにより設定される。
各検査ユニットに含まれる駆動機構は、複数の光学素子のそれぞれを検眼窓に配置させ、且つ、検眼窓から退避させることが可能に構成される。各検査ユニットに含まれる駆動機構は、制御装置200から制御信号を受けて光学素子を切り替える。それにより、球面度数、乱視度数、乱視軸角度、加入度数、瞳孔間距離、プリズム度数及びプリズム基底方向のうち少なくとも1つを切り替えて被検眼に適用することが可能である。
〔光学系の構成〕
図3に、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rに収容された光学系の構成例のブロック図を示す。左眼用検査ユニット120Lは、偏向部材Pと、視標呈示光学系10Lと、撮影光学系20Lと、アライメント光学系30L、31Lと、レフ測定光学系40Lと、ケラト測定光学系50Lとを含む。左眼用検査ユニット120Lには、対物レンズ60と、移動レンズ70と、反射ミラーMと、ビームスプリッタBS1~BS3とが設けられている。右眼用検査ユニット120Rは、偏向部材Pと、視標呈示光学系10Rと、撮影光学系20Rと、アライメント光学系30Rと、レフ測定光学系40Rと、ケラト測定光学系50Rとを含む。右眼用検査ユニット120Rには、対物レンズ60と、移動レンズ70と、ビームスプリッタBS1~BS3とが設けられている。左眼用検査ユニット120Lの光学系と右眼用検査ユニット120Rの光学系とは左右対称に構成されている。以下、特に指摘しない限り、左眼用検査ユニット120Lの光学系について説明することとする。
視標呈示光学系10Lは、左被検眼ELの眼底Efに視標を投影するための光学系である。視標呈示光学系10Lは、LCD(Liquid Crystal Display)11と、移動レンズ70と、反射ミラーMとを含む。LCD11は、検眼用や眼位検査用の各種の視標(チャート)を表示する。LCD11には、風景チャートからなる固視標、視力検査用のランドルト環等の視力チャート、クロスシリンダテストチャート、乱視検査用の放射チャート、斜位検査用の十字チャート、レッドグリーンテストチャート、後述の眼位検査用のチャートなどの視標が選択的に表示される。視標が呈示されていたLCD11を消灯する(表示をオフにする)ことにより、検眼窓130Lを通じて検査が行われる左被検眼ELの前面に遮蔽部材が配置された状態と同等の状態を再現することが可能である。視標呈示光学系10Lには、LCD11に代えて、EL(エレクトロルミネッセンス)などを利用した電子表示デバイスや、回転するガラス板等に描画された複数の視標のいずれかを光軸上に適宜配置するもの(ターレットタイプ)が設けられていてもよい。
移動レンズ70は、視標呈示光学系10Lの光軸方向に移動可能である。移動レンズ70は、駆動機構70Lにより移動される。駆動機構70Lは、制御装置200からの制御信号を受けて移動レンズ70を移動させる。それにより、左被検眼ELに付加される球面度を変更することが可能である。例えば、レフ測定時に左被検眼ELの屈折力に応じた移動量だけ移動レンズ70を光軸方向に移動させることにより、左被検眼ELに対する固視雲霧を行うことができる。また、自覚検査時に、被検眼の遠点に相当する位置、近点に相当する位置、又はその中間の任意の位置に視標を呈示することができ、任意の検査距離で検査を行うことができる。
LCD11からの光は移動レンズ70を通過し、反射ミラーMにより反射される。反射ミラーMにより反射された光は、ビームスプリッタBS2を透過し、ビームスプリッタBS1により反射される。ビームスプリッタBS1により反射された光は、対物レンズ60を通過し、偏向部材Pにより左被検眼ELの眼底Efに向けて偏向される。
視標呈示光学系10Lには、左被検眼ELの乱視度数及び乱視軸角度を調整するためのVCCレンズが設けられていてもよい。
撮影光学系20Lは、左被検眼ELの前眼部を撮影するための光学系である。撮影光学系20Lは、CCD(Charged-Coupled Device)21を含む。例えば図示しない前眼部照明系により左被検眼ELの前眼部が照明されると、偏向部材Pには、左被検眼ELの前眼部からの反射光が入射する。偏向部材Pは、反射光を対物レンズ60に向けて偏向する。偏向部材Pにより偏向された反射光は、対物レンズ60を通過し、ビームスプリッタBS1、BS3を透過し、図示しないCCDレンズ等によりCCD21の受光面に結像される。また、撮影光学系20Lは、レフ測定やケラト測定において左被検眼ELに投影された測定光束の反射光を受光する受光系として機能する。
アライメント光学系30Lは、左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のXY方向のアライメントを行うための光学系である。アライメント光学系30Lは、アライメント用の光束(スポット光)を左被検眼ELに投影する。アライメント用の光束は、ビームスプリッタBS3により反射され、ビームスプリッタBS1を透過し、対物レンズ60を通過して略平行光束とされ、偏向部材Pにより左被検眼ELの角膜に向けて偏向される。左被検眼ELに投射されたアライメント用の光束の角膜による反射光は、入射経路と同じ経路で戻り、ビームスプリッタBS3を通過し、撮影光学系20LのCCD21により受光される。
アライメント光学系31Lは、互いに異なる2以上の方向から左被検眼ELの前眼部を撮影するための2以上のカメラを含む。これらのカメラを用いて取得された互いに異なる2以上の方向からの前眼部の撮影画像に基づいて得られる視差からZ方向(作動距離方向)のアライメントが行われる。
レフ測定光学系40Lは、左被検眼ELのレフ測定(他覚屈折測定)を行うための光学系である。レフ測定光学系40Lにより出射されたレフ測定用の光束は、ビームスプリッタBS2により反射され、ビームスプリッタBS1により反射され、対物レンズ60を通過し、偏向部材Pにより左被検眼ELの眼底Efに向けて偏向される。左被検眼ELに投射されたレフ測定用の光束の眼底からの反射光は、入射経路と同じ経路で戻り、ビームスプリッタBS1、BS3を通過し、撮影光学系20LのCCD21により受光される。
ケラト測定光学系50Lは、左被検眼ELのケラト測定を行うための光学系である。ケラト測定光学系50Lにより出射されたケラトリング光源からのリング状光束は、偏向部材Pにて偏向され左被検眼ELの角膜を照明する。左被検眼ELの角膜からの反射光は偏向部材Pにより偏向され、対物レンズ60を通過し、ビームスプリッタBS1、BS3を透過し、図示しないCCDレンズ等によりCCD21の受光面にリング状の像として結像される。
測定ヘッド100は、後述の制御系の制御により、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rのそれぞれの光学系のアライメント、他覚式検眼測定、自覚式検眼測定などを自動的に実行するようになっている。測定ヘッド100は、さらに、両眼バランステストを自動的に実行するようにしてもよい。自覚検査においては、他覚測定にて得られた値(他覚値)が利用される。特に、自覚検査のうちのクロスシリンダテストにおいては、他覚検査にて得られた乱視度数及び乱視軸角度が利用される。
〔制御系〕
次に、図4を参照しながら、実施形態の眼科検査装置1の制御系について説明する。図4に示すブロック図は、眼科検査装置1の制御系の主要部分の概略構成を表している。図4において、図1~図3と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
眼科検査装置1の制御系は、図4に示すように、装置各部を制御する制御装置200を中心に構成されている。制御装置200は、例えば、格納部9に格納されている。制御装置200は、制御部201と、記憶部202とを含む。
記憶部202には、後述するような処理を実行するための制御プログラムを含む眼科検査用のコンピュータプログラムや、LCD11に表示される視標パターンの画像データなどが記憶されている。また、記憶部202には、撮影光学系20L、20Rを用いて取得された左被検眼ELの前眼部の画像、右被検眼ERの前眼部の画像、レフ測定結果、ケラト測定結果などが保存される。制御部201は、記憶部202に記憶されたコンピュータプログラムを読み出し、記憶部202に記憶された画像データなどを参照しつつコンピュータプログラムを順次に実行する。このような制御部201は、CPU(Central Processing Unit)等の演算制御用プロセッサを含む。
眼科検査装置1にはコンピュータ装置(図示せず)が接続されていてもよい。この場合、コンピュータ装置は、眼科検査装置1のコンソールとして用いられるとともに、眼科検査装置1による検査結果を蓄積して管理するために用いられる。なお、このコンピュータ装置のCPUや記憶装置を制御装置200として構成することも可能である。
制御装置200(制御部201)は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rの動作制御を行う。具体的には、制御装置200は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rを水平動させる水平動機構111を制御する。制御装置200は、左眼用検査ユニット120Lを回動させる回動機構112Lと、左眼用検査ユニット120Lを上下動させる上下動機構113Lとをそれぞれ制御する。同様に、制御装置200は、右眼用検査ユニット120Rを回動させる回動機構112Rと、右眼用検査ユニット120Rを上下動させる上下動機構113Rとをそれぞれ制御する。制御装置200は、横アーム6を上下動させたり回動させたりするアーム移動機構7を制御するようにしてもよい。
制御装置200(制御部201)は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rに格納された光学系の動作を制御する。制御装置200は、例えば、LCD11の表示制御、移動レンズ70を光軸方向に移動させる駆動機構70L、70Rの動作制御などを実行する。LCD11の表示制御には、視標の切り替え制御、視標の点灯制御、視標の消灯制御等がある。
制御装置200は、視標呈示光学系10L、10Rを制御することにより、融像刺激を弱めるように視標の切り替えを行うことが可能である。例えば、制御装置200は、図5に示すように、左被検眼EL及び右被検眼ERの双方に同一の十字チャートである視標FL、FRをLCD11に表示させた後、視標FRだけをLCD11の画面から消去する。すなわち、左被検眼EL及び右被検眼ERの双方に呈示される視標FL、FRを点灯させた後、視標FRだけを消灯させる。より具体的には、制御装置200は、所定の背景(例えば、白地の背景)に十字パターン(所定のパターン)が描かれた視標を呈示させた後に、所定の背景からなる背景視標に切り替える。それにより、被検者に両眼視させた後、右被検眼ERの前面に遮蔽部材が配置された状態と同等の状態を再現することができる。制御装置200は、視標FLだけを消灯させたり、視標FL、FRを同時に消灯させたりすることも可能である。
制御装置200は、CCD21による受光制御、アライメント光学系30L、31L、30R、31R、レフ測定光学系40L、40R、ケラト測定光学系50L、50Rなどの動作制御などを実行する。アライメント光学系30Lにより左被検眼ELに投影されたスポット光の像の位置と左被検眼ELの瞳孔中心の位置とのずれがキャンセルされるように、左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のXY方向のアライメントを行うことが可能である。アライメント光学系30Rも同様に、右被検眼ERに対する右眼用検査ユニット120Rの光学系のXY方向のアライメントを行うことが可能である。アライメント光学系31Lを用いて取得された互いに異なる2以上の方向からの左被検眼ELの前眼部の撮影画像に基づいて得られる視差からZ方向のアライメントを行うことが可能である。アライメント光学系31Rも同様に、互いに異なる2以上の方向からの右被検眼ERの前眼部の撮影画像に基づいて得られる視差からZ方向のアライメントを行うことが可能である。レフ測定光学系40L、40Rの動作制御には、レフ測定用の光束を出射する測定用光源の制御などがある。ケラト測定光学系50L、50Rの動作制御には、ケラトリング光源の制御などがある。
各検査ユニットに光学素子適用部が設けられる場合、制御装置200(制御部201)は、複数の光学素子を選択的に左被検眼EL及び右被検眼ERの少なくとも一方に適用するための駆動機構の制御などを実行する。
制御装置200(制御部201)は、演算部210を制御する。演算部210は、左眼用検査ユニット120L又は右眼用検査ユニット120Rを用いた他覚屈折測定による測定結果に基づいて他覚値を求める。演算部210は、例えば、レフ測定光学系40L、40Rにより眼底Efに投影されたリング状の測定光束をCCD21により受光することにより取得されたリング視標像の形状を公知の手法で解析することにより他覚値を求める。演算部210は、例えば、ケラト測定光学系50L、50Rにより被検眼の角膜に投影されたリング状光束の角膜による反射光束をCCD21により受光することにより取得された像に対して所定の演算処理を施す。それにより、角膜の形状を表すパラメータを他覚値として算出することが可能である。制御装置200は、演算部210を含んでもよい。
演算部210は、画像解析部210Aを含む。画像解析部210Aは、制御装置200(制御部201)による視標の切り替えの前及び後のそれぞれに撮影光学系20L、20Rにより取得された前眼部の画像を解析することにより、左被検眼EL及び右被検眼ERの少なくとも一方の眼位の変化を求める。画像解析部210Aは、例えば、眼球回旋点Oを中心とする視軸の回旋角度θを眼位の変化として求める。
画像解析部210Aは、視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像における眼球に入射したスポット光により形成される輝点像の位置の移動量に基づいて回旋角度θを求めることが可能である。図6に示すように、眼球に平行光束が入射すると、角膜内部の位置Q(角膜曲率の半分、R/2)にスポット状の虚像(プルキンエ像)が形成される。角膜の曲率中心点Rと眼球回旋点Oとが異なるため、眼球が眼球回旋点Oを中心に回旋角度θで回旋すると、前眼部の画像中における輝点像の位置Qが図6に示すように移動する。例えば、図6に示すように、視標が呈示された状態で眼位が正常である被検眼に対して視標が消灯されたとき当該被検眼の眼位が変化するものとする。この場合、画像解析部210Aは、視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像から輝点像の位置Qの移動量dを特定する。例えば、画像解析部210Aは、視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像中の特徴部位を基準に輝点像の位置Qの位置を特定し、これらの位置の変位を移動量dとして特定する。
角膜頂点から眼球回旋点Oまでの距離をLとし、角膜の曲率をrとすると、輝点像の位置Qの移動量dは、式(1)のように表される。
式(1)から画像解析部210Aは回旋角度θを求めることができる。なお、角膜頂点から眼球回旋点Oまでの距離Lは予め決められた値(例えば、平均的な値である13mm)であってよい。あるいは、別の機器による測定において、実距離が既知である場合にはこの値を入力可能としてもよい。角膜の曲率rは、ケラト測定により取得された値を用いることが可能である。
画像解析部210Aは、求められた回旋角度θに基づいて眼位の変化の有無を表す評価情報を生成することも可能である。例えば、回旋角度θが所定の閾値以上であるか否かを判定し、閾値以上であると判定されたとき、画像解析部210Aは、眼位の変化があることを示す評価情報を生成する。画像解析部210Aは、求められた回旋角度θに基づいて眼位の変化の程度を表す評価情報を生成してもよい。
制御装置200は、以上のような制御の他に、眼科検査装置1のあらゆる動作制御やデータ処理を実行する。
制御装置200は、検者用コントローラ300と被検者用コントローラ310とそれぞれ有線又は無線の通信路を介して接続可能である。制御装置200は、検者用コントローラ300や被検者用コントローラ310に対する操作内容に対応した操作信号を受けて、眼科検査装置1の各部を制御する。制御装置200は、操作画面や測定を行うための各種情報などを検者用コントローラ300や被検者用コントローラ310の表示部に表示させることが可能である。
なお、前述の光学系を用いたアライメントの動作原理、自覚検査の測定原理、他覚測定の測定原理、角膜形状の測定原理などは既に公知であるので、詳細な説明は省略する。
第1視標呈示部122Lの機能は、左眼用検査ユニット120Lに含まれる視標呈示光学系10Lにより実現される。第2視標呈示部122Rの機能は、右眼用検査ユニット120Rに含まれる視標呈示光学系10Rにより実現される。
第1他覚測定部123Lの機能は、左眼用検査ユニット120Lに含まれるレフ測定光学系40Lやケラト測定光学系50Lにより実現される。第2他覚測定部123Rの機能は、右眼用検査ユニット120Rに含まれるレフ測定光学系40Rやケラト測定光学系50Rにより実現される。
視標呈示光学系10L、10Rは、実施形態に係る「視標呈示部」の一例である。撮影光学系20L、20Rは、実施形態に係る「撮影部」の一例である。
[動作例]
次に、実施形態に係る眼科検査装置1の動作について説明する。
図7に、眼科検査装置1の動作例の全体のフロー図を示す。
(S1)
検者用コントローラ300又は被検者用コントローラ310に対する所定の操作を受け、制御装置200は、動作を開始する。まず、制御装置200は、視標呈示光学系10L、10Rにより左被検眼EL及び右被検眼ERの双方に同一の風景チャートを呈示させる。被検者は、呈示された風景チャートを両眼で視認できるように図示しない額当てに顔を固定する。額当て自体の位置を自動又は手動で調整してもよい。
(S2)
制御装置200は、検者用コントローラ300又は被検者用コントローラ310に対する操作により検査開始が指示されるまで待機する(S2:N)。検査開始が指示されたとき(S2:Y)、眼科検査装置1の動作はS3に移行する。
(S3)
検査開始が指示されたとき(S2:Y)、制御装置200は、左右眼についてアライメントを実行する。すなわち、制御装置200は、アライメント光学系30Lにより左被検眼ELに対する左眼用検査ユニット120Lの光学系のアライメントを実行し、アライメント光学系30Rにより右被検眼ERに対する右眼用検査ユニット120Rの光学系のアライメントを実行する。
(S4)
制御装置200は、ケラト測定光学系50L、50Rにより左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれに対して上記のようにケラト測定を実行する。左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれに対するケラト測定の結果は、記憶部202に保存される。
(S5)
制御装置200は、レフ測定光学系40L、40Rにより左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれに対して上記のようにレフ測定を実行する。左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれに対するレフ測定の結果は、記憶部202に保存される。
(S6)
制御装置200は、視標呈示光学系10L、10Rを制御することにより検者又は制御装置200により選択された視標をLCD11に表示させる。それにより、視標が被検者に呈示される。被検者は視標に対する応答を行う。応答内容の入力を受けて、制御装置200は、更なる制御や、自覚検査値の算出を行う。例えば、制御装置200は、ランドルト環等に対する応答に基づいて、次の視標を選択して呈示し、これを繰り返し行うことで矯正値を決定する。
(S7)
制御装置200は、遠用眼位検査を行うか否かを判定する。遠用眼位検査では、被検眼の遠点に相当する位置に視標を呈示した状態でカバーテストやカバーアンカバーテストが行われる。検者又は被検者は、検者用コントローラ300又は被検者用コントローラ310を用いて遠用眼位検査を行うか否かを指定し、検査情報として事前に記憶部202に記憶させておくことが可能である。この場合、制御装置200は、記憶部202に記憶された検査情報に基づいて遠用眼位検査を行うか否かを判定することができる。遠用眼位検査を行うと判定されたとき(S7:Y)、眼科検査装置1の動作はS8に移行する。遠用眼位検査を行わないと判定されたとき(S7:N)、眼科検査装置1の動作はS9に移行する。
(S8)
遠用眼位検査を行うと判定されたとき(S7:Y)、制御装置200は、遠用眼位検査を実行する。S8の詳細については、後述する。
(S9)
遠用眼位検査が終了したとき、又はS7において遠用眼位検査を行わないと判定されたとき(S7:N)、制御装置200は、近用眼位検査を行うか否かを判定する。近用眼位検査では、被検眼の近点に相当する位置に視標を呈示してカバーテストやカバーアンカバーテストが行われる。検者又は被検者は、検者用コントローラ300又は被検者用コントローラ310を用いて近用眼位検査を行うか否かを指定し、検査情報として事前に記憶部202に記憶させておくことが可能である。この場合、制御装置200は、記憶部202に記憶された検査情報に基づいて近用眼位検査を行うか否かを判定することができる。近用眼位検査を行うと判定されたとき(S9:Y)、眼科検査装置1の動作はS10に移行する。近用眼位検査を行わないと判定されたとき(S9:N)、眼科検査装置1の動作はS11に移行する。
(S10)
近用眼位検査を行うと判定されたとき(S9:Y)、制御装置200は、近用眼位検査を実行する。S10の詳細については、後述する。S10は、後述するようにS8とほぼ同様である。
(S11)
近用眼位検査が終了したとき、又はS9において近用眼位検査を行わないと判定されたとき(S9:N)、制御装置200は、図6に示すように画像解析部210Aにより眼位の変化を定量的に求めたり、求められた回旋角度θに基づいて評価情報を生成したりする。
(S12)
制御装置200は、S11において求められた回旋角度や、求められた回旋角度に基づく眼位の変化に対する評価情報を検者用コントローラ300又は被検者用コントローラ310の表示部に表示させる。以上で、眼科検査装置1の動作は終了する(エンド)。
図8に、図7のS8及びS10の動作例のフロー図を示す。S8とS10の動作はほぼ同様であるため、以下、S8の動作例について説明する。
(S21)
まず、制御装置200は、自覚検査やレフ測定の結果を用いて左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれの遠点に相当する位置(例えば、-0.2Dの位置)を求める。制御装置200は、駆動機構70L、70Rを制御することにより、求められた上記の位置に各検査ユニットの移動レンズ70を移動させる。
(S22)
次に、制御装置200は、視標呈示光学系10L、10Rを制御することにより左被検眼EL及び右被検眼ERの同一の視標を呈示させる。
(S23)
続いて、眼科検査装置1は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rの少なくとも一方を回動軸の回りに内側に回動させる。それにより、被検者があたかも5m先の同じ視標を両眼視しているようにS22で呈示された視標を視認させる。
(S24)
制御装置200は、アライメント光学系30L、30Rを制御してXYスポット光LEDを点灯させることで、左被検眼EL及び右被検眼ERの双方にスポット光を入射させる。また、制御装置200は、アライメント光学系31L、31Rを制御して、左被検眼ELの前眼部及び右被検眼ERの前眼部の画像の取得を開始させる。
(S25)
制御装置200は、検者用コントローラ300又は被検者用コントローラ310に対する操作により眼位検査開始が指示されるまで待機する(S25:N)。眼位検査開始が指示されたとき(S25:Y)、眼科検査装置1の動作はS26に移行する。このとき、被検眼へのアライメント状態が許容量以上ずれている場合は、再度アライメント動作を実施してもよい。
(S26)
眼位検査開始が指示されたとき(S25:Y)、制御装置200は、撮影光学系20L、20Rを制御することにより左被検眼EL及び右被検眼ERの双方の前眼部に対する動画像の撮影を開始させる。撮影光学系20L、20Rにより撮影された左被検眼EL及び右被検眼ERの双方の前眼部の動画像のデータは、記憶部202に順次に保存される。
(S27)
制御装置200は、視標呈示光学系10Rを制御することにより、右被検眼ERに呈示されている視標(右眼視標)FRを消灯させる。左被検眼ELに呈示されている視標FLは、点灯状態が継続される。それにより、右被検眼ERの前面に遮蔽部材が配置された状態と同等の状態が再現される。S26において撮影が開始されており、S27における視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像の取得が可能であるため、視標の切り替えの前及び後の画像を用いて左被検眼ELの眼位の変化を評価することができる(カバーテスト)。
(S28)
続いて、制御装置200は、視標呈示光学系10Rを制御することにより、右被検眼ERに視標(右眼視標)FRを点灯させる。それにより、左被検眼EL及び右被検眼ERの双方に同一の視標FL、FRが呈示された状態となる。S28における視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像の取得が可能であるため、これら画像を用いて左被検眼ELの眼位の変化を評価することができる(カバーアンカバーテスト)。
(S29)
次に、制御装置200は、視標呈示光学系10Lを制御することにより、左被検眼ELに呈示されている視標(左眼視標)FLを消灯させる。右被検眼ERに呈示されている視標FRは、点灯状態が継続される。それにより、左被検眼ELの前面に遮蔽部材が配置された状態と同等の状態が再現される。S29における視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像の取得が可能であるため、これら画像を用いて右被検眼ERの眼位の変化を評価することができる(カバーテスト)。
(S30)
続いて、制御装置200は、視標呈示光学系10Lを制御することにより、左被検眼ELに視標(左眼視標)FLを点灯させる。それにより、左被検眼EL及び右被検眼ERの双方に同一の視標FL、FRが呈示された状態となる。S30における視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像の取得が可能であるため、これら画像を用いて右被検眼ERの眼位の変化を評価することができる(カバーアンカバーテスト)。
(S31)
予め決められた既定回数(例えば、3回又は5回)だけ終了したとき(S31:Y)、眼科検査装置1の動作はS32に移行する。既定回数だけ終了していないとき(S31:N)、眼科検査装置1の動作はS27に移行する。
(S32)
既定回数だけ終了したとき(S31:Y)、制御装置200は、撮影光学系20L、20Rを制御することにより左被検眼EL及び右被検眼ERの双方の前眼部に対する動画像の撮影を停止させる。以上で、S8及びS10の動作は終了である(エンド)。なお、それぞれのテストの前(カバーテストで消灯前、アンカバーテストで点灯前)にアライメント状態を確認し、アライメントが所定量以上ずれている場合にはアライメント動作を実施するようにしてもよい。
S10は、S8と同様に動作する。S10の場合、S21では制御装置200は、左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれの近点に相当する位置(例えば、-3.3Dの位置)に各検査ユニットの移動レンズ70を移動させる。また、S10の場合、S23では、眼科検査装置1は、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rの少なくとも一方を回動軸の回りに内側に回動させることにより、輻輳を誘導し、被検者があたかも30cm先の同じ視標を両眼視しているようにS22で呈示された視標を視認させる。
なお、S23において、左眼用検査ユニット120L及び右眼用検査ユニット120Rの少なくとも一方を回動させることなく、LCD11における視標の表示位置を内側に移動させることで、輻輳状態を再現してもよい。
また、図8では前眼部の動画像を記録する場合について説明したが、視標の切り替えの前及び後の前眼部の静止画像を記録するようにしてもよい。各テスト前後での輝点像の変位量を計測する方法以外でも、テスト前にアライメントを実施、テスト後に再度アライメントを実施して、テスト前後での測定ヘッドの移動量から変位量を求めてもよい。また、遠点に相当する位置や近点に相当する位置以外の任意の位置においても同様の検査を行うことが可能である。
以上のように、実施形態によれば、LCD11に表示されている視標を消灯させたり点灯させたりすることで片眼の前面に遮蔽部材を配置した状態を再現することができるため、遮蔽部材やこれを挿脱させる機構を設ける必要がなくなる。また、今までは、遮蔽されて確認が困難であった遮蔽された側の被検眼の眼位の変化も確認することができる。
また、メガネやトライアルフレームを装着することなく、移動レンズ70の移動により被検者に対して視標を明瞭に呈示することが可能になる。それにより、被検者に融像を確実に働かせることが可能になり、高い精度で眼位の変化を評価することができる。
また、被検者が検眼窓130L、130Rをのぞき込むことで検査が行われるので、被検者にとって検者が視界に入ることなく被検者は検査に集中することができる。例えば、検者が被検者の視界に入ることにより固視が不安定なる状態を回避することができる。
視標の消灯や点灯にかかわらず被検者の前眼部の画像の取得が可能であるため、検者は被検者の前方から眼位の変化を観察する必要がなく、画像で観察することができる。例えば、遮蔽部材が前面に配置された状態と同等の被検眼である被遮蔽眼の眼位の変化を観察することができる。また、取得された画像を解析することにより、眼位のずれの有無だけではなく、眼位の変化(ずれ量)を定量的に評価することも可能である。
撮影光学系20L、20Rは被検眼の前眼部を正面から撮影しているため、眼位の微小な変化も確認することができる。また、視標の切り替えの前及び後の眼位の変化が描出された動画像を取得可能であるため、検者による見落としがなく、検査を何度も繰り返す必要がなくなる。また、眼位の変化をリアルタイムで観察する必要もない。
眼科検査装置1により取得された画像を遠隔地の端末装置に送ることで、遠隔地で被検眼の眼位の変化を観察(評価)することができる。
〔変形例〕
(第1変形例)
被検眼に呈示されるパターンの変更態様により、眼位の変化について種々の観点で評価することが可能である。
制御装置200は、視標の一部が消去されるように視標を切り替えることが可能である。例えば、図9A~図9Eに示すように、制御装置200は、所定の視標(第1視標)を呈示させた後に、当該視標の一部からなる別の視標(第2視標)に切り替えることが可能である。
図9Aは、切り替え前に十字パターンが描かれた視標から垂直方向のパターンだけからなる別の視標(水平方向のパターンが消去された別の視標)に切り替えられる場合を表している。図9Bは、切り替え前に十字パターンが描かれた視標から水平方向のパターンだけからなる別の視標(垂直方向のパターンが消去された別の視標)に切り替えられる場合を表している。図9Cは、切り替え前にその交差部に矩形パターンを含む十字状のパターンが描かれた視標から矩形パターンだけからなる別の視標(垂直方向及び水平方向のパターンが消去された別の視標)に切り替えられる場合を表している。図9Dは、切り替え前にその中心部に矩形パターンを含む矩形の枠パターンが描かれた視標から矩形パターンだけからなる別の視標(枠パターンが消去された別の視標)に切り替えられる場合を表している。図9Eは、図9Dに示す視標の切り替えを両眼について同時に行う場合を表している。この場合、両眼について同時に眼位の変化を観察することが可能になる。
図9A~図9Dでは、視標FRを切り替える場合を表しているが、視標FLも同様に切り替えることが可能である。図9A~図9Dに示す視標の切り替えを両眼について同時に行ってもよい。
制御装置200は、視標のサイズが変更されるように視標を切り替えることが可能である。例えば、図10A及び図10Bに示すように、制御装置200は、所定の視標(第1視標)を呈示させた後に、当該所定の視標とサイズが異なる別の視標(第2視標)に切り替える。
図10Aは、両眼について、切り替え前にリング状パターンが描かれた視標からサイズが異なる別の視標(より小さいサイズの視標)に同時に切り替えられる場合を表している。図10Aに示すように、切り替え後の視標は、切り替え前の視標と同じパターンであってよい。
図10Bは、両眼について、切り替え前に中心部が一致し互いにサイズが異なる複数の矩形状の枠パターンからなる視標から外側が消去された視標に同時に切り替えられる場合を表している。図10Bは、中心部が一致し互いにサイズが異なる複数の矩形状の枠パターンを例に説明したが、中心部が一致し互いにサイズが異なる複数のリング状のパターンであってもよい。
制御装置200は、段階的に視標のサイズを切り替えることが可能である。例えば、制御装置200は、視標の切り替えが行われるたびに視標のサイズを切り替える。図10Aに示す場合、制御装置200は、視標の切り替えを複数回実行し、切り替えのたびにサイズがより小さくなるパターンが描かれた視標を呈示させる。図10Bに示す場合、制御装置200は、視標の切り替えを複数回実行し、切り替えのたびに外側から順次に消去されたパターンが描かれた視標を呈示させる。いずれの場合でも、画像解析部210Aは、制御装置200による視標の切り替えが行われるたびに眼位の変化を求める。
図9A~図9E、図10A、図10Bのいずれの場合も、視角が大きく融像刺激が強い視標を呈示した後、視角が小さく融像刺激が弱い視標に切り替えられる。特に、図10A及び図10Bのように視標を切り替えることで、視標を切り替えるたびに眼位の変化を評価することができるので、眼位の変化の程度を評価することが可能になる。
図9A~図9E、図10A、図10Bは視標の切り替えの一例を表したものである。例えば、切り替え前の視標を反転させることにより視標の切り替えを行うようにしてもよい。視標の一部を消去することなく、視角が大きい視標を呈示した後に、視角が小さい視標に切り替えるようにしてもよい。
以上のように、左被検眼EL及び右被検眼ERのそれぞれについて別個に視標を切り替えることができるため、従来では困難であった様々な眼位の変化を観察することが可能になる。
(第2変形例)
前述の実施形態又は第1変形例では、画像解析部210Aが角膜に入射したスポット光により形成される輝点像の位置に基づいて回旋角度θを求める場合について説明したが、実施形態に係る眼科検査装置1の構成はこれに限定されるものではない。
図11に、実施形態の第2変形例に係る画像解析部210Aの動作説明図を示す。図11において、図6と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
第2変形例に係る画像解析部210Aは、視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像における瞳孔領域を特定し、特定された瞳孔領域の瞳孔中心の位置の移動量に基づいて回旋角度θ1を求める。眼球が眼球回旋点Oを中心に回旋すると、図11に示すように、視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像中における瞳孔中心の位置Q1が移動する。例えば、図11に示すように、視標が呈示された状態で眼位が正常である被検眼に対して視標が消灯されたとき当該被検眼の眼位が変化するものとする。この場合、第2変形例に係る画像解析部210Aは、視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像から瞳孔中心の位置Q1の移動量d1を特定する。例えば、画像解析部210Aは、視標の切り替えの前及び後の前眼部の画像中の瞳孔領域を特定し、特定された瞳孔領域の中心位置を瞳孔中心の位置Q1として特定し、これらの位置の変位を移動量d1として求める。
角膜頂点から眼球回旋点Oまでの距離をLとし、角膜頂点から瞳孔中心の位置Q1までの距離をNとすると、瞳孔中心の位置Q1の移動量d1は、式(2)のように表される。
式(2)から画像解析部210Aは回旋角度θ1を求めることができる。なお、角膜頂点から眼球回旋点Oまでの距離Lは予め決められた値(例えば、平均的な値である13mm)であってよい。角膜頂点から瞳孔中心の位置Q1までの距離Nは予め決められた値(例えば、平均的な値である3mm)であってよい。あるいは、別の機器による測定において、LやQ1の実距離が既知である場合にはこの値を入力可能としても良い。
[効果]
実施形態に係る眼科検査装置の効果について説明する。
実施形態に係る眼科検査装置(眼科検査装置1)は、視標呈示部(第1視標呈示部122L、第2視標呈示部122R、視標呈示光学系10L、10R)と、撮影部(第1撮影部124L、第2撮影部124R、撮影光学系20L、20R)と、制御部(制御装置200又は制御部201)と、画像解析部(画像解析部210A)とを含む。視標呈示部は、左被検眼(左被検眼EL)及び右被検眼(右被検眼ER)のそれぞれに視標を呈示する。撮影部は、左被検眼及び右被検眼のそれぞれの前眼部を撮影する。制御部は、左被検眼及び右被検眼の少なくとも一方に呈示される視標を切り替えるように視標呈示部を制御する。画像解析部は、制御部による視標の切り替えの前及び後のそれぞれに撮影部により取得された前眼部の画像を解析することにより、左被検眼及び右被検眼の少なくとも一方の眼位の変化を求める。
このような構成によれば、視標の切り替えを行うことにより融像刺激を変化させることができるため、遮蔽部材やこれを挿脱させる機構を設けることなく、簡素な構成で眼位の変化を評価することが可能になる。また、撮影部により視標の切り替えの前及び後の前眼部の正面画像の取得が可能であるため、検者は被検者の前方から眼位の変化を観察する必要がなく、眼位の微小な変化も確認することができる。また、左被検眼及び右被検眼のそれぞれについて別個に視標を切り替えることができるため、左被検眼及び右被検眼の双方に共通の視標を呈示する場合に比べて様々な眼位の変化を観察することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科検査装置において、制御部は、第1視標を呈示させた後に、第1視標の一部からなる第2視標に切り替えてもよい。
このような構成によれば、パターンの一部が消去されるように視標の切り替えが行われた場合の眼位の変化を求めることが可能になり、新たな観点で眼位の変化を評価することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科検査装置において、制御部は、第1視標を呈示させた後に、第1視標とサイズが異なる第2視標に切り替えてもよい。
このような構成によれば、サイズが異なるように視標の切り替えが行われた場合の眼位の変化を求めることが可能になり、新たな観点で眼位の変化を評価することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科検査装置において、第2視標は、第1視標と同じパターンであってよい。
このような構成によれば、切り替え間の視標と同じパターンで、かつ、サイズが異なる視標に切り替えられた場合の眼位の変化を求めることが可能になり、新たな観点で眼位の変化を評価することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科検査装置において、制御部は、視標の切り替えを複数回実行し、画像解析部は、制御部による視標の切り替えが行われるたびに眼位の変化を求めてもよい。
このような構成によれば、眼位の変化の程度を評価することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科検査装置において、制御部は、所定の背景に所定のパターンが描かれた視標を呈示させた後に、所定の背景からなる背景視標に切り替えてもよい。
このような構成によれば、被検眼の前面に遮蔽部材が配置された状態と同等の状態を再現することが可能になり、遮蔽部材やこれを挿脱させる機構を設けることなく、簡素な構成で、カバーテストやカバーアンカバーテストを実行することが可能になる。
また、実施形態に係る眼科検査装置において、制御部は、融像刺激を弱めるように視標の切り替えを行ってもよい。
このような構成によれば、融像刺激を弱めるように視標の切り替えを行うようにしたので、切り替えられた視標が呈示された被検眼の眼位の変化の有無や程度を評価することができる。
また、実施形態に係る眼科検査装置において、制御部は、被検眼の遠点に相当する位置、近点に相当する位置、又はその中間の任意の位置に視標を呈示させてもよい。
このような構成によれば、上記の効果に加えて、任意の検査距離で検査可能な眼科検査装置を提供することができる。
[その他]
なお、前述の実施形態又はその変形例は、図3で説明した光学系の構成や図4で説明した制御系の構成や制御内容に限定されるものではない。例えば、他覚測定には、被検眼に関する値を測定するための他覚測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれてよい。このような他覚測定には、例えば、他覚屈折測定、角膜形状測定、眼圧測定、眼底撮影、OCTの手法を用いたOCT(Optical Coherence Tomography)計測などがある。また、自覚検査には、例えば、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレアー検査などの自覚屈折測定や、視野検査などがある。
また、実施形態に係る眼科検査装置は、自覚検査として、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレアー検査などを実行可能であり、且つ、他覚測定として、他覚屈折測定、角膜形状測定、OCT計測などを実行可能な装置であってよい。OCT計測では、眼軸長、角膜厚、前房深度、水晶体厚などの被検眼の構造を表す眼球情報の取得が行われてもよい。
以上に説明した構成は、この発明を好適に実施するための一例に過ぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加など)を適宜に施すことが可能である。